- 1二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 14:28:36
「これは……間違いなくスカイ!」
「ブッブー。不正解〜。これはスペちゃんでしたー」
放課後のトレーナー室。いつもならトレーニングを始めてる時間に私はトレーナーさんに目隠しをして。
彼に小さな白いプラスチックを握らせては、否定の言葉を投げかける。
「そんなことは……あれ、本当だ。もう一回、もう一回やらせてくれ」
そう言ってトレーナーさんは目隠しを解き、横に積まれていた白いプラスチックを握り込んで。親指の感覚だけでその模様を覚えようとする。
URA公式グッズ、ウマ娘ドンジャラ。
数年に一回、牌の絵柄や役が入れ替わるそれに今年は私、セイウンスカイが採用されて。
今日のお昼にその見本が1セット、トレーナー室に届けられていた。
「しょうがないですねえ。あと一回だけですよ」
「ああ。俺が当てたら、今日もちゃんとトレーニングに出てもらうからな」
「はいはい。約束は守りますよーっと」
そして私は再びトレーナーさんに目隠し代わりのタオルを結んだ。 - 2二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 14:28:59
指先の感覚だけで牌の絵柄を当てる。それを盲牌と呼ぶそうな。
そんな無駄知識を、私はさっきトレーナーさんから教わったばかりだった。
「大学時代はよくやったもんだよ。俺の得意技だったんだけど」
届いたドンジャラの見本を触りながら、彼が懐かしそうに言う。
「ふーん。こんなの、わかるんですか?」
スペちゃんやグラスちゃんの顔が描かれた牌を手に、私は彼に問いかける。
トレーナーさんは私の描かれた牌を手に「かわいい、かわいい」と言いまくってる。
……尻尾の付け根がムズムズしてくるのでやめてほしい。
「これだけ精緻だとさすがに厳しいかもな……。でもスカイのやつだけなら当てられるかも」
そう言ってトレーナーさんは私の牌を手の中で転がした。
「おっ、言いましたね? …じゃあ当てられなかったら今日のトレーニングはお休みということで」
「いや、それは……」
「おやおや〜? 自信がないんですかねえ〜?」
「くっ……やってやろうじゃないか」
かくして、ウマ娘ドンジャラ盲牌勝負が始まったのだった。 - 3二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 14:29:20
3回やって、トレーナーさんはすべて外した。
私は彼にグラスちゃん、キング、そしてスペちゃんを渡したのだけど。
どれを渡しても彼は「これはスカイだ」としか言わなかったのだ。
「うーん、これは失敗したなあ」
私は小さくボヤく。トレーナーさんならきっと私の名前しか言わない。
そのことを想定していなかったのだ。
「まったく、ズルいんだから」
目隠しをして手を差し出しているトレーナーさんの横に回り込んで、ヒト耳に息を吹きかけてやる。
「うおっ。そういうイタズラはやめてくれよ。耳は弱いんだ」
「へぇー。いいこと聞いちゃいました。今度いじめてあげよっかな〜。にゃはは」
……彼の弱みを一つ握ったことで、帳尻が取れたかな。
そういうことで自分を納得させて。
私は、私をトレーナーさんに握らせたのだった - 4二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 14:29:42
おしまい
ウマ娘ドンジャラ欲しい……。 - 5二次元好きの匿名さん22/11/09(水) 14:37:46
当てるのも良い、変に裏をかいて外すのもまた良い…