- 1二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 01:26:44
「姉様がご結婚なさって無事に子供が産まれた今、私も王家であることにこだわる必要はありません。日本国におけるアイルランド大使としてこの国で家庭を持つことも問題はないはずです」
元王家の者が一般の家庭へと入る。それがどういうことを意味するのかファインモーションはわからないほど愚かではない。ましてや他国での結婚となると生活のギャップ、安全性、国民の反対、何もかもが逆風となる。しかしファインモーションの意思は固い。
「それに、私が王家に残ったまま子供が産まれてしまうと王位の継承問題等が発生するでしょう。王家に明確な跡取りがいる以上、私とその子どもの存在は癌にしかならない。お父様もご理解なさっているはずです」
ファインモーションが述べているのは全て建前である。そんなものはお互い百も承知。だからこそ父である王は娘がそれほどまでに執心である相手を思い浮かべる。
父親である自分が不自由な思いをさせてきた娘を解き放ち、全ての責任を背負うと正面から言い切った男。そして娘に栄誉あるG1を複数制覇させた男。なによりもファインモーションという一ウマ娘の魅力と能力を余すところなく引き出させた男。多少不作法な部分はあれど芯の通った男である。娘を不幸にすることは決してないだろう。いや、絶対にない。そう確信させるほどの相手だ。
『今まで、お前には様々な不便を強いてきた。王家の者として相応しくあるようにと教育してきた。それは王家として産まれた義務を果たさせるためだ』
王は続ける
『そして今、その義務を放棄しようとしている。それがどういうことか、わからぬはずもない』
王族として産まれたのならば、王族として死ぬべきである。それが古来から続く王族の最大の義務。生まれる前から決まっていた宿命。 - 2二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 01:28:16
『そんな聡明な娘が、それでもなお1人の女として抗おうとしている。ならば私も、1人の親として祝福しなければならない』
古来からの義務なんぞ、現代にはそぐわない。そんなものは犬にでも食わせてしまえばいい。王は娘として本音を話したファインに対して己の心を曝け出す。
『王籍に留まれとは言わないよ。それがお前の幸せなのだったら、親である私は応援するのみだ。そしていずれは1人の祖父として、孫に合わせてくれると嬉しい』
「お父様!」
愛娘の人生最大の決心を無下にしてしまっては国民にも三女神様に顔向けできない。王は国民の代表であり模範である。ならば示すべきは子の幸福を祈る姿であろう。そう信じ、娘の想いを受け止める。
「ありがとう、お父様。私、必ず幸せになります。そしていつかあなたの孫を連れて、顔を見せると約束いたします」
その後少しの雑談を交えた後、通信を切る。そして、ファインモーションのするべきことはあと一つ。
「それじゃあトレーナーのお家に挨拶に行かないとね!」
こうして気ままな王女様はその身分を捨て、歩み出した。何を勘違いしたのか蕎麦を手に持って───。
「ファイン、それは引越しの挨拶の品だよ」
「えーっ!?そうなの!?じゃあ蕎麦と一緒に持ってきたこのラーメンは!?」
「………後で一緒に食べようか」
他の何でもないファインモーションとして、新たな人生を歩みだした。 - 3二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 01:31:20
やはり彼女にはハッピーエンドが似合うね!
最高の王道SSをありがとうございました! - 4二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 01:38:09
オチ好き
蕎麦のついでにラーメン買うんじゃありません - 5二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 01:38:19
深夜に最高のSSをありがとう
ファインにはハッピーエンドがよく似合う - 6二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 01:40:10
幸せにな…
- 7二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 01:57:49
めっちゃいい話からの芝で蕎麦
- 8二次元好きの匿名さん22/11/11(金) 02:15:45