- 1二次元好きの匿名さん22/11/17(木) 20:24:19
「あら……?トレーナーさん?トレーナーさんも風待ちにきたのですか?」
「ゼファーがいたからね。今日は何処から風が吹くのかな?」
「夕風ですね。冬の予感をつげる北風を浴びに。」
「……そうか。木枯らしも拭き終わったから、そろそろ冬か。」
今の時刻は5時頃。まだ夕日がゆっくりと沈み始める時間帯だ。日に日に日が落ちるのが早くなり、今では6時になる頃には、真っ暗で肌寒く感じる季節になった。
今日は学園の外で仕事があってから、その帰り道に通る公園で、俺の担当バであるヤマニンゼファーがベンチに座っていた。
彼女は風をこよなく愛し、こうして風を浴びるために、色々な場所に風が吹くように自由奔放に行動している。
この公園も彼女のお気に入りの場所で、よく彼女を探しに来て、ここに立ち寄ることが多く、今日、公園にいる理由は冬の到来をつげる風を浴びにきているみたいだ。
「トレーナーさんよければ、あちらで風を受けに行きませんか」
ゼファーが指を指した先には、茜色に照らされているジャングルジムが公園の真ん中で堂々と佇んでいた。どうやら、彼女は高い所から風を浴びたいみたいで、ジャングルジムを登ることを提案しているみたいだと俺は察した。
「いいよ。じゃぁ行こっか」
「えぇ、共に」
俺は彼女に促されるまま、一緒にジャングルジムの方へ向かっていった。
ジャングルジムに登るなんて、小学生以来だろうか。そんな事を考えながら、ジャングルジムを掴み登っていく。背が伸びたからだろうか、昔よりも簡単に天辺に駆け登る。
ジャングルジムの上に登ってみると、吹き渡る風に髪がなびかれる中、夕日の光が差し込み、町全体を照らしている。とても幻想的で綺麗な光景があった。
昔の自分はこんな景色を見たことがあっただろうか。いや、あったとしても忘れていただろう。大きくなって、色々なことを覚え、経験したが、こういう自然を感じ取れる感動を忘れてしまっていたんだろう。 - 2二次元好きの匿名さん22/11/17(木) 20:26:11
いつの間にか、隣に来たゼファーが
「ここからだと、より一層、風を感じることができますね……」
と言いながら、風を感じたいのか、目を瞑り深呼吸していた。
「あぁ……、いい風だ」
俺も同じようにしてみた。昔は感じなかったはずの匂いや音まで鮮明に触れるたような気がした。それはきっと、自分が成長した証なんだろうと実感できた瞬間でもあった。
「ゼファー、ここの景色は綺麗だね。昔登ったときとはまた違う感覚だ。大人になって見てみるとまた違ったことに気付かされるよ」
「そうですか……。清風のような心地よい空気を感じ取れましたか。それは良かったです。この風を貴方と共に受けることができて良かったです」
「―――あぁ、本当に」
彼女が大人になっても、今の有り様のまま、自由な風であってほしいと思いながら、ジャングルジムの上で、彼女と一緒に夕日が落ちるまで二人で共に、紅く照らさた街から吹く風を目一杯受け取めた。 - 3二次元好きの匿名さん22/11/17(木) 20:41:33
素敵です
ジャングルジムって郷愁を感じますね
幼い頃と比べて変わって見える景色を成長の証と捉えつつ、変わってほしくないものもあると願う。季節が移ろうようでもあります
秋が夕日として紅く沈み、冬が白み朝日として昇ろうとする今日この頃、爽やかなワンシーンでした。ありがとうございました