- 1二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 18:18:37
なっ!?バカなっ
このおれの動きをさらに読み気配を悟られる事なく
稲妻の如く掲示板に入り込むだと…
貴様は一体!!?
本スレは「自分がウマ娘だったら」を妄想するスレです。
スレを開いたあなたも自分のウマ娘になった姿を想像してみましょう。
前スレ
あにまんウマ娘になりたい部Part159|あにまん掲示板私は偶然の勝利など求めませんわ本スレは「自分がウマ娘だったら」を妄想するスレです。スレを開いたあなたも自分のウマ娘になった姿を想像してみましょう。前スレhttps://bbs.animanch.com…bbs.animanch.com過去スレ一覧
@Wiki
umamusumeninaritai @ ウィキ【12/15更新】@wikiへようこそ ウィキはみんなで気軽にホームページ編集できるツールです。 このページは自由に編集することができます。 メールで送られてきたパスワードを用いてログインすることで、各種変更(サイト名...w.atwiki.jp - 2二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 18:19:12
参考になりそうなもの↓
https://bbs.animanch.com/board/199950/?res=3
自分みたいにお絵描きできない人向け
https://bbs.animanch.com/board/199950/?res=4
https://bbs.animanch.com/board/246596/?res=141
診断メーカー↓
ウマ娘になったらの診断をプログラミングして作った!|あにまん掲示板https://shindanking.wixsite.com/my-site-1おかしくなったから立て直した画像のような結果が出ますbbs.animanch.com※入部希望者へ※
際限なくウマ娘が増えてしまうことを避けるため、原則一人一ウマ娘でお願いします!
次スレは>>190を踏んだ人が建てること!
建てられない場合は他の人にスレ建て代行をお願いすること!
スレの管理ができなくなるモバイル回線で建てないこと!
いいー?
- 3メジロエスキーの人22/11/18(金) 18:21:58
立ておつー
牡馬ニキにアホ呼ばわりされてて草 - 4二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 18:21:59
たておつ
- 5二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 18:23:58
くっそ
次回、ボバニキ死す!
レーススタンバイ
で締めたかったのに - 6二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 18:25:08
スレ画芸の掲示板に滑り込むまでだとブーケドール感を感じる───
- 7二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 18:25:18
たておつです
- 8二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 18:26:24
- 9フラのひと22/11/18(金) 18:28:18
フラリンの超絶蹄鉄死滅撃破保守蹴!
トレーナー💮に93882371043894076167針を縫うダメージを与えた!
トレーナー💮は生命活動を停止……死んだのだ - 10メジロエスキーの人22/11/18(金) 18:32:37
もうそれ縫う場所、ある?
- 11カンパナーレボバー22/11/18(金) 18:41:17
おい
- 12二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 20:32:39
そも1周年記念何するよ?
- 13二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 20:54:54
鍋に飽きたから焼き肉で
- 14ライトニングホラーの中身22/11/18(金) 21:01:56
立て乙(タイミング遅い)
一周年も経ったのかここ 時間の流れは早いなぁ - 15二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 21:10:24
正確にはあと5日だけどね
- 16二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 21:23:07
もうやってる!
- 17二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 21:39:30
- 18二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 22:03:23
- 19メジロエスキーの人22/11/18(金) 22:04:11
とりあえず枕投げ大会でもまたする?
- 20二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 22:06:12
登山回は普通にありだと思われる
- 21二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 22:08:36
なんだいなんだい
今日はやけにアホの子をよく見るが - 22二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 22:08:36
エベレスト違い!
- 23レッカの中身22/11/18(金) 22:12:23Crack my Clock - uma-musumeになりたい部 @ ウィキ【8/3更新】▽タグ一覧 SS スイセイレッカ 最終更新:Lap.2を改めて公開しました。 スイセイレッカの育成ストーリー的なものを公開していきます。 ひとまず、トレセン入学までは頑張って書こうと思います。 ・ ト...w.atwiki.jp
第4話、完成・公開しました。とりあえず入学に至るまでは完成です。
昔から牡馬ニキは奇行してたのね
謎の安心感を感じる
- 24二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 22:24:52
むしろ最近は心なし落ち着いてたまである気が
- 25二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 22:30:29
牡馬ニキ→奇行ではなく
奇行→血統→イラスト→牡馬ニキに集約されたんだよなぁ - 26二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 22:40:03
新しいことしたいし登山かキャンプしとく?
- 27二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 22:53:59
ウマ娘本家でもカフェとスズカが登山やってたっけ
- 28二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 22:58:51
賞金の暴力で全身アークテリクス野郎が増殖します
- 29二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 23:01:33
モブウマ娘になってウオスカのイチャイチャとかキタスイのイチャイチャとかシャカファイのイチャイチャとかにいちいちキャーキャー言いたい
卒業後は特に職が見つからず自衛隊に入って心壊したい - 30二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 23:24:51
一部ミリタリーラインのアークテリクスリーフ買うやつが出るんですねわかりません
- 31二次元好きの匿名さん22/11/18(金) 23:39:15
バ鹿高くて草
www.swat.bz - 32二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 00:02:11
登山と言えば高山病、高山病といえば低圧低酸素だけど競走馬は脾臓の血液量が多くて大容量の酸素運搬が行われるから人に比べて相対的に低酸素トレーニングは効果が薄いんじゃないかって言われてたんだ。でも実際には幾つかの研究結果で有意な差が見られたことで大体1年前からエクワインレーシングでも導入する事例があるんだ。
競走馬もアスリートと同様、科学の力で常に進化を続けることにロマンを感じているわけだがな…今だセーラームーン!
株式会社エクワインレーシング 公式サイト「株式会社エクワインレーシング」は、 北海道にある獣医師が代表をつとめる育成牧場です。 獣医師4名、 騎乗スタッフ8名、 厩舎スタッフ3名、 計15人体制で約60頭の育成・休養馬の管理・調教を行っています。equineracing.jp - 33二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 00:19:24
このスタミナは…宝塚トップスター仮面様!
- 34二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 06:33:44
ぼくはアルピニスタちゃん!
- 35メジロエスキーの人22/11/19(土) 06:57:51
- 36メジロエスキーの人22/11/19(土) 06:59:17
─────
大門坂を抜け、表参道を抜け、そして社務所の横を抜けた先に現れたのは霊験あらたかな礼殿と御本殿。そしてこの社に祀られているのは通称「熊野権現」と呼ばれる熊野夫須美大神、とのこと。トレーナーが携帯で調べてくれた。
「ご神徳により結宮(むすびのみや)と呼ばれている、らしい」
「結び……それって人の縁を結ぶってことなのかな」
私が結びたいのはもちろんトレーナーとの縁。ただそれは心の繋がりという意味だけではなく、体の繋がり、すなわち離れ離れにならないという意味の繋がり。
「あとは諸々の願いを結ぶって意味もあるらしい。諸々の願いってなんだよって思っちゃうけど」
願い。それはさっきと同じ、トレーナーとずっと一緒でいられますように、ただそれだけ。むしろそれさえ叶えば他には何もいらない。
(そうか、それを神様に願えば……)
願いは決まった。私は本殿へと歩き、財布から一番大きいお札を取り出すと躊躇なく賽銭箱へと放り込む。そして強く、強く、神様に願う。
(どうか、どうか、トレーナーとずっと一緒にいられますように……離れ離れになりませんように……神様、お願いします……)
何度も繰り返し願い続ける。愛する人と別れることがないように……例え「この世界」であの人から遠くへ行ってしまっても、どうか「元の世界」で再会できますようにと。そう強く、力を籠めて。
『その願い、確かに聞き入れた』
すると、なぜかそのときどこからか声が聞こえた。周りを見渡しても誰もこの声が聞こえていなさそう。ということはこの声の主は……
「神、様……?」
一緒に参拝していたトレーナーや他の2人にそれとなく聞いてみても納得のいく回答を得ることができず、少し信じがたいけどそう結論づける他に思いつく答えが見つからなかった。
─────
次に向かったのは境内から歩いて数分のところに位置する那智の滝。華厳の滝や袋田の滝と合わせて日本三名瀑の1つに数えられているらしい。これもトレーナーが調べてくれた。滝自体を御神体として祀っているとのこと。物の1つ1つに神様が宿ると考えられているこの国ならではの神様なのかもしれない。私はまたここで強く未来を願った。縋る思いで、どうか、どうかと。 - 37メジロエスキーの人22/11/19(土) 07:00:43
「……それじゃ行こっか」
「エスキモー、ちゃん……?」
何やらエスキーが変な物を見たような不思議な顔をして私をじっと見つめていた。何か顔についているのかとぺたぺた自分の顔を触っても何もなかったから、そんな顔してどうしたのと彼女に問いかける。
「なんか私ゴミでもくっつけちゃってる?」
「いえ、そうではなくて……」
何やら深刻そうな顔をして見つめられるからなぜかこっちまで深刻な面持ちになってきた。
「……何か心配ごとでもあるんですか? もしかしてもうすぐ……とか」
やっぱりこの子には敵わない。洞察力というのか、人を見る目というのか、何に対しても物事の核を見抜く能力は周りの人たちと比べてずば抜けている。おそらく石段を上がっている途中からここに来るまでの間に見た私の顔でいろいろと察したのだろう。ここまで見抜かれてしまってはこれ以上黙っていても仕方ないと、少しみんなから離れて小さな声で本当のことを伝える。夢の話も含めて全部。
「……なるほど。トレーナー試験の時にスポーツ心理学を触ったぐらいで本格的な心理学は修めていませんけど、『そういうこと』なんだと思います」
「やっぱりエスキーもそう思うよね……」
漠然と考えていた訪れるだろう未来、それが他者からの意見が加わると、「訪れるだろう」ではなく「訪れる」ものとして固定されてしまう。主観的ではなく客観的、しかもエスキーからの意見であればそうなるとしか思えなくなる。
「……たぶんもうすぐだと思うんです。それこそ今日の夜とか、もしかしたらそれより前なのかも……うぅ……」
「……家に帰れるかな。帰れたらいいけど……ってなに泣きそうになってんの! アンタが泣くことじゃ……!」
そう言いかけるも続きの言葉が出ない。だって私と同じだから、置かれている状況は同じだから。
- 38メジロエスキーの人22/11/19(土) 07:01:35
(そうか、もう会えなくなるのはこの子も一緒か……)
ママは「元の世界」でまた会える。トレーナーは……分からないけど、きっと会えるって信じてる。だけどこの子とはここで別れたら二度と……
「約束する、エスキーと会えたこと絶対忘れないって。アンタとの思い出は絶対忘れたりなんかしないって」
「ぐすっ……本当、ですか?」
彼女の瞳から流れる涙を指で掬って、彼女を強く抱き締める。そして約束、いや誓いの言葉を小さくとも気持ちを籠めた声で彼女に届ける。
「うん、この命に代えても、一生」
1分、2分……どれぐらい経っただろうか、エスキーの涙が止まるまで私はずっと彼女のことを抱き締め続けた。
─────
「エスキー、なんだか目元腫れてるけど大丈夫?」
トレーナーとママたちと合流し、帰りのバスに乗り込む4人。後部座席に全員並んで座っていると、彼女の顔の異変に気づいたのか、ママが心配そうに彼女の頬に手を当て、顔をじっと見つめる。
「こ、これは滝が凄いなと考えていたら涙が出てきちゃっただけで……全然気にしなくて大丈夫ですからっ!」
そう言って自分のカバンで顔を見られないように隠すエスキー。傍から見ても絶対何かあったのはバレバレな彼女からママは目を離すと、ギロリと隣に座っている私の方にその視線を向けた。
「エスキモー?」
「わ、私には何がなんだか分からないかな……?」
相変わらず嘘をつくのが下手くそな私。これはエスキー、いやパパからの遺伝なのかなと顔を必死に隠している彼女を見て思う。
「……ご飯食べる時に全部聞くから」
「ハイ……」
- 39メジロエスキーの人22/11/19(土) 07:03:09
有無を言わさぬその言葉。クールビューティーと呼ばれた意味を声と表情だけで示したママはかっこよく……いや少し怖かった。その時なぜか昔パパと遊んでいた時こんな顔で怒られた気がしたのを思い出した。
(……全部話すしかないか)
バスは走る、終点へとただひたすらに。私は走る、夢の終点へと。
──ゴールまで残り50m、夢の終わりはすぐそこだ。
─────
バスが駅に到着し、駅前のロッカーからそれぞれのキャリーバッグを取り出したあと、バス停と駅の間に位置するごはん屋さんに入る。テーブル席に案内された私たちは、自然と私とエスキーが店の入口側に、トレーナーとママが店の奥側の椅子へと腰かけた。面接か、それとも二者面談か、いや子どもが親にテストで悪い点を取ったことを報告する場か……本来楽しいはずの昼食の場に重々しい雰囲気が漂っていた。注文を取りに来た店員さんも少しよそよそしい感じで水を運びに来て、4人分の生まぐろの定食の注文を受けると、とっとと奥へと引っ込んだぐらい。
「……とりあえずエスキーに伝えたこと全部教えて?」
ママはただ真実を知りたいだけなんだと思うんだけど、その声のトーンと真剣な表情からはまるで怒られているようにも感じられる。そういえば小さい頃同じシチュエーションがあったかもなんてことが一瞬頭によぎったものの、ママの言うとおりエスキーに言ったことを洗いざらい話した。私がゆっくりと話している間、2人とも相槌を打つように時折うんうんと頷いていたのがなぜか印象に残っている。全部話し終わったタイミングでまるで計ったかのように4人全員の注文が運ばれてきた。
- 40メジロエスキーの人22/11/19(土) 07:04:31
「……これまでありがと。どんな感じでお別れするのか分からないけど、たぶんみんながこの状態で会うのはもうないと思う。ママはもちろん私を産んでからの再開だからもっと大人になってるし、エスキーは……アレだし、トレーナーとはそもそも出会えるかも分かんないし……うぅ……」
ある意味今生の別れが近づく中、話す言葉も徐々に涙混じりになってしまう。こんな悲しい結末なんて誰も望んでいないはずなのに、せめて笑ってハッピーエンドで幕を下ろしたかったのに、泣いてしまっては全ておじゃんだ。取り出したハンカチで最初は目尻を押さえ涙が下へと落ちないように、そして涙が零れる目を見られないようにハンカチを広げて目を隠す。そんな私に向かってママは優しい声で語りかけてくれた。
「ねえエスキモー? 確かにもうすぐアタシたちはお別れなのかもしれない。もう二度とこうやって会えないかもしれない。でも、でもさ、エスキモーが覚えてさえくれていれば、何かの形でアタシたちとの出会いを残してくれてさえいれば、それは間違いなく出会った証になるんじゃないかな」
「出会った、証……?」
目元を隠していたハンカチを膝に置いてママの方を見つめる。涙はまだ流れているけど、もう零れるのを止めたり隠したりはしない。
「そう。もちろんアタシたちも忘れないよ? けどそもそもこの……世界線だっけ? それが残るかどうかなんて分からない。消えてなくなってしまうかもしれない。だったらさ、『元の世界』に戻るエスキモーが覚えてて、出会ったことを残してくれればアタシたちはその中で生き続ける」
「うん……うん……!」
もう一度だけハンカチで目元を押さえ涙を拭く。1秒、2秒と押さえたハンカチを外すともう涙は出てこない。代わりに出てきたの相手を睨みつけるような鋭い視線。もう泣かないよと言わんばかりのその瞳。未来を、「夢」の先を見つめるその目は「今」この時を記憶に焼きつけんとばかりに強く、強く前を見つめていた。
「……オレのことも覚えていてほしい」
「……わたしも」
トレーナーとエスキーがおずおずと手を挙げる。私は当然でしょと2人に笑顔を向ける。
「嫌って言っても覚えていてあげる! だって私、みんなのこと大好きなんだから!」
- 41メジロエスキーの人22/11/19(土) 07:06:13
─────
そのあとはみんな笑顔で定食を食べきり、帰りの電車の中でみんなで食べるおやつを駅からほど近いお土産物屋さんで購入した。せっかくだからと私が選ばせてもらったのは、この季節ならでは、そしてこの県ならではのお土産、みかんだった。
「ここでみかんを選ぶセンス……見習いたいものです」
「ちょっとエスキー、それバカにしてない?」
「……ノーコメントで」
明らかにからかっている顔と台詞にちょっとムカッときて彼女のほっぺをむにむにと両手でつねる。彼女は両手で自分のほっぺを弄る私の手を引き剥がそうとするけど、なんだかその力が強くない。
(……こういうやりとりも最後だから、なのかな……ってしんみりするのはもうなし! こうなったら最後まで楽しんでやるんだから!)
そう心に誓うと、3人を引き連れて駅の方に戻り車内で飲むお茶を自動販売機で買うと、駅前の足湯で少しばかり足を休める。5分、10分のことだったけど足だけでなく体もぽかぽかと暖かくなり、お昼のあとということもあってか、少しずつ頭がぼんやりとしてきた。
「……ってもう電車来るよ! エスキモー急いで!」
ママのかけ声ではっとなり、腕時計で時間を確認する。そこでもうあと数分で電車が到着することに気がついた私たちはカバンから取り出したタオルで急いで足の水気を取り靴を履く。靴を履ききった人から順に荷物を抱えダッシュで駅の階段を駆け上がり、改札を通り抜け、またホームへと駆け下りる。
「はぁ……はぁ……なんとか間に合った……」
最後にトレーナーがホームへたどり着いたタイミングで電車が停車し扉が開く。呼吸を落ち着けながらも電車に乗り込んだ私たちは特急券に記載された席までゆっくりと車内を歩いていった。
- 42メジロエスキーの人22/11/19(土) 07:06:35
「ふぅ……これでひと安心……ふあぁ……」
2人掛けの席をくるりと反転させ、各自のキャリーバッグを上の荷物棚に入れたところで向かい合わせになった座席に腰かける。既に電車が動き始めていたせいか、少しよろけながらも自分の席へ腰を落ち着かせることができた。ちなみに私とトレーナーが隣で、私の前にママ、トレーナーの前にエスキーといった席順になっている。
「ねえ、せっかくだからエスキモーが選んだみかん食べようよ」
「うん……はい、みんなの分……ふあぁ……」
眠気が再度襲来し、みんなにみかんを配りきったところで頭ががくんがくんと上下に揺れ始める。まだ話していたいのに……まだ話し足りないこといっぱいあるのに……
「ゆっくり休め、エスキモー。そしてまた会おう、絶対に」
「次に会うときもママって呼んでよね」
「また会いましょう、エスキモーちゃん」
みんなの声が徐々に薄れ、意識が少しずつ夢の中へと落ちていく。眩しい光へと駆けていく夢、それの道のりはついに終わりを迎え、私は「自分の意志で」最後は光の中へと飛び込んだ。
─────
夢が終わる。楽しい夢が、今ここで。
これはハッピーエンド? バッドエンド? それは誰にも分からない。だけどこれだけは言える。
──私の「物語」は、まだ終わってなんかいない。
- 43メジロエスキーの人22/11/19(土) 07:07:57
今日はここまで。まだもう少しお話は続くよ
- 44二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 10:08:01
- 45二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 10:52:22
草
- 46二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 10:55:44
- 47二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 11:55:59
申し訳ないけど吹いた
- 48二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 12:17:37
ファーストアニバーサリー、>>18はオーストラリア遠征のつもりで提案したと思うんすけどいいんすか…これ
- 49メジロエスキーの人22/11/19(土) 12:17:38
悲しいなあ……
- 50二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 12:43:55
オーストラリアは短距離修羅の国だけどうちで勝てそうなやつおるんか?
- 51二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 12:48:09
それこそライジョウドウとかスピネルとか他にもたくさん
層が厚い - 52二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 12:50:34
オーストラリア…動物…ライジョウドウ……うっ頭が
- 53二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 13:19:57
流石にコアラも攻撃してこんやろ
- 54二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 13:37:21
スッピー雨降らないとだし…
- 55二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 13:39:32
オーストラリア雨降るどころかパッサパサで山火事起きてるからな
- 56二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 13:43:55
オーストラリアのハイアットリージェンシー・シドニー泊まったことあるけどシャワー固定式でケツ流せなかったから嫌い
手でシャワーのお湯貯めてケツパシャパシャしなきゃボディソープ流せねぇの - 57二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 14:30:22
- 58カンパナーレボバー22/11/19(土) 14:37:58
そっちよりダート三冠の改称早く決めてくれ
- 59メジロエスキーの人22/11/19(土) 19:59:10
まあ新ダート3冠の仕組みが始まるのは再来年からだし……2歳戦は来年から変更になるけど
- 60二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 20:38:18
結局オーストラリア遠征とエベレスト弾丸登山どっちで話進めれば……。
- 61二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 20:47:25
殺す気か?
>エベレスト弾丸登山
- 62二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 20:54:24
低酸素トレーニング使えるって宝塚トップスター仮面が言ってたから。。。
- 63二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 21:07:48
そもそももう登山時期は過ぎたぞ
- 64二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 21:17:46
- 65二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 21:22:00
- 66メジロエスキーの人22/11/19(土) 21:23:25
部室を豪邸か何かにするおつもりで……?
- 67二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 21:24:25
全員で賞金出し合えば多分メジロ邸宅に匹敵するもの作れるぜ!
- 68二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 21:32:31
洋芝(路盤改修あり)
洋芝(路盤改修なし)
野芝
野芝(オーバーシード)
ダート
ダート(園田・門別仕様)
ダート(メイダン仕様)
ダート(サウジアラビア仕様)
ダート(アメリカ西海岸仕様)
ダート(アメリカ東海岸仕様)
オールウェザー(ニューポリトラック)
オールウェザー(タペタ)
ウッドチップ
を全て備えたコースを作れ - 69二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 21:34:48
部室って言ってるダルルォ!?
- 70二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 21:35:07
それはもう第二トレセン学園だぞ
- 71二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 21:35:48
もはやトレセンですらねえよ
- 72二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 21:39:32
※参考までにメイダン競馬場の建設費は1800億円です
- 73二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 21:46:13
足りない…足りなくない?
- 74二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 22:17:11
- 75二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 22:21:02
その画像はうちのペチャパイ共に宣戦布告しとんのかい
- 76二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 22:33:21
急にフラリンとか多くのメンバーに流れ弾飛んでったな
- 77ツキノミフネの背後霊22/11/19(土) 22:33:42
うちのトレーナーの特技:缶蹴り、鉄棒、口笛、指笛、指パッチン
トレーナーとして?
新人トレーナーに得意分野なんてないのですわ……ですわ…… - 78二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 22:43:21
- 79二次元好きの匿名さん22/11/19(土) 22:45:34
リュ・・リュージ・・・
- 80カンパナーレボバー22/11/19(土) 22:54:18
SSのプロット前のメモ段階から全く進まないけど、アメリカでトレーナーにヘッドハンティングされたのでトレーナーは英語得意
多分 - 81メジロエスキーの人22/11/20(日) 07:46:46
エスキーはともかくエスキモートレは……レース分析とかその辺り? 普通か
それではSSの続き投げていきますね - 82メジロエスキーの人22/11/20(日) 07:49:09
─────
「……モー! ……キモー! エスキモー!」
「……ママ?」
疲れが溜まっていたのか、それとも電車の揺れが心地よかったのか、すっかり眠ってしまっていた。車窓から外を見ると、すっかり日も落ち、通り過ぎていく街には灯りが灯っていた。
「やっと起きた! ほら、次の駅で乗り換えるから、早くそのみかん食べちゃって」
そうママに言われて目線を下に下ろすと、膝の上に置いた両手の手の上にちょこんと小さなみかんが置いてあることに気づいた。私は急いで皮を向いて一房一房口の中に放り込んでいく。あまりにもパクパク食べるものだから、パパは私の方を見て軽く噴き出していた。
「そんなに焦らなくていいって……ははっ!」
ママはママで私が喉を詰まらせないか、詰まらせたときのために手元にペットボトルのお茶を用意しながら少し心配そうな顔をしていた。
「もぐもぐ……ごっくん……よし、なんとか食べ切れたよ」
「じゃあ皮は乗車口の近くのゴミ入れに捨てておいで」
「はーい」
左手にみかんの皮を握り締め立ち上がろうとしたその時、ふと左手に嵌めている腕時計が目に入る。確かこれは誕生日にトレーナーからもらった腕時計だったはず。どうして今私が着けているんだろう?
「どうした、エスキモー? 何かおかしなことでもあった?」
「……この腕時計、誰にもらったんだっけ」
私のその言葉にパパもママも不思議そうな顔をする。2人が顔を見つめあい、パパの方から心配そうな声で教えてくれた。
「誰って……パパとママからの誕生日とトレセン学園合格祝いにプレゼントしたばっかりじゃないか」
「パパとママから……合格祝い……ああ、そっか」
そう言われて思い出した。そうだ、私が2人にねだって買ってもらったんだ。誕生日と一緒でいいからって言ったら私の年齢からすると高級品なこの腕時計を買ってもらったんだった。しかもこの旅行も合わせてのプレゼントなんだった。頭の中では3年以上も前の話だったから忘れかけていた。 - 83メジロエスキーの人22/11/20(日) 07:50:24
「大丈夫? 寝ぼけてる?」
「ううん、心配しないでママ。もうばっちり目も覚めたから」
まだ心配そうなママに笑顔で問題ないことを伝えて、再び手に持ったみかんの皮を捨てに行く。ゴミ入れに皮を放り込むと少し手を洗おうと洗面台へと足を運ぶ。
「そっか……戻ってきたんだ……」
流れる冷水で手を洗い、軽く手を振って水気を飛ばすとポケットに入っていたハンカチで手を拭きながら自分の席へと戻る。席に戻るとあと数分で終点及び乗り換えの駅に到着するという車内放送が流れ、パパとママとで荷物棚からみんなのキャリーバッグを下ろしていたところだった。
「ありがとパパ、ママ」
「はい、これがエスキモーの分。座ってないでデッキに行くよ」
ママから自分の分のキャリーバッグと席に置いていたリュックを渡され、押されるように電車の降車口へと歩いていく。リュックを背負いながらキャリーバッグを引いて、前にいた人の後ろに並ぶ格好で駅へ着くのを待つ。
『新大阪〜新大阪〜終点です。お忘れ物なきようお降りください。新幹線にお乗り換えのお客様は〜』
電車が停車し、降車側の扉が開く。前の人に続いて順番に駅のホームへと降り立ち、扉から少し離れたところでパパとママと一度集まる。
「このあとは新幹線?」
「そ。ホーム離れてるし、改札抜けないとだから早く行くよ」
20分ほどの乗り換えの間にぱぱっと駅弁を購入し、急いで新幹線のホームへと急いで進む私たち3人。エスカレーターで歩くのは危険なため、少し長い階段をキャリーバッグを持ちながら一段飛ばしで他の人とぶつからないよう駆け上がっていく。やはりここでもウマ娘と人との差が出たのか、ママと私が同時にホームに到着し、少し遅れてパパが息を切らせて広いホームへとたどり着いた。
「はぁ……はぁ……エスキモーもすっかり成長したなあ……」
「当たり前でしょ。この子も春からトレセン学園に入るんだから、むしろパパに負けてたら駄目なんだから」
パパとママが私のことを話しているところを少し離れた場所でぼーっと見つめる。
(「あの世界」はやっぱりただの夢で、私はまだトレセン学園に入学していない身……もちろんトレーナーとは会えてない)
- 84メジロエスキーの人22/11/20(日) 07:52:23
新幹線が到着しパパとママの後ろにくっついてぞろぞろと乗り込む。手元の切符に記載されている席の番号と、座席上部の荷物棚の部分に書かれている座席番号とをチラチラ見比べながら、自分たちの席へとたどり着く。3人の座席を横並びに購入していたから特に席を反転させる必要もなく、荷物棚に3人分のキャリーバッグを押し込むとパパ、私、ママの順に奥から詰めて座っていく。
「これでよしっと……あとは東京駅までずっとこのままだからエスキモーは寝ててもいいぞ」
「ううん、さっき寝てたから眠くなくなっちゃった」
そっかと言って私の頭を何度か撫でると、車窓を眺めるパパ。少し疲れていたのか、私に寝ないのと言いながら自分がうとうととし始めている。私はさっきとは逆にパパの頭を撫でてあげると、逆側に座っていたママの方に振り向き、さっきまで見ていた夢のことをかいつまんで伝えた。突拍子もない夢のはずなのに、ママは小さく頷きながら、私の話を真剣に聞いてくれた。
「──それで最後は電車で寝ちゃったところで終わっちゃったの」
「……そっか。ねえ、エスキモー、その夢、見てて楽しかった?」
「もちろん! いろんな人と走れたし、夢の中だけど好きな人もできたし、みんなで旅行にも行けたし……すっごい楽しかった!」
ママの問いかけに満面の笑みで答えると、ママも嬉しそうに笑った。夢の中で見たママと同じ素敵な笑顔を浮かべて。
「よかった……じゃあさ、いつか夢の中でどんなことがあって、こんな場所に行って、どんな気持ちになったとか全部何かでまとめてママとパパに教えて? これでもまだ一部だけなんでしょ?」
「全部……うん、頑張ってみる! 絵はママと違って苦手だから……文章にして……できるかな?」
見た夢を全部だなんて一体どれほど時間がかかるのだろう。しかも文字でだなんて私にできるだろうか。だけどママからのお願いなんだから頑張らないと!
「ふふっ……頑張って、エスキモー」
気合いが入った様子の私を見て、ママが応援してるよと頭を撫でてくれる。その優しい手の温もりにまた笑みが零れるのだった。
─────
それから1ヶ月、2ヶ月と経ち、いよいよ春が近づいてくる。私は入学前に体が鈍らないようパパとママ指導のトレーニングを日々繰り返していた。もちろんその最中にも夢を携帯のメモ帳アプリでまとめることは怠っていない。
- 85メジロエスキーの人22/11/20(日) 07:54:41
「えーっとあの時は確か……エスキーとのメッセージはどこだった……あっ」
一旦メモ帳アプリを閉じ、彼女とのやりとりを確認しようとメッセージアプリを開く。ただそこには彼女の名前はなく、あったのは家族や親戚、友人の名前ばかりだった。
「またやっちゃった……」
夢を書き起こし始めてから一体何度繰り返したことだろう。エスキーだけじゃなく、「向こうの世界」でのママやクラスメイト、チームのみんな、カジっちゃん先輩とどんな話をしていたのか思い出そうとアプリを開き、名前がないことに気づき肩を落とす、そんな動作を幾度となく。
「ううん、落ち込んでる場合じゃないでしょ私! ちゃんと書き残すことが私とみんなとの約束なんだから!」
そう、夢の最後で約束したんだ。みんなとの日々を絶対忘れないということを、いつまでもいつまでも覚えているということを。
「よーし! 頑張るぞ私!」
そうして再びメモ帳のアプリを立ち上げ、あの世界での記憶を覚えている限り書き連ねていく。下手な文章だったとしても、少し感情的な言い回しだったとしても、あの時何を見て何を感じて何をしたのか、記憶の限り書いていった。記憶が薄れない間にただひたすらに。
─────
そうして書き終わったのは入学前の最後の土曜日。学園の寮へと入る前になんとか書き上げることができた。あっ、もちろん恥ずかしい部分は端折ってるからね? 流石にあの話をパパやママに開けっ広げに伝えるのはいくらなんでも憚れるから……
「──これでよしっと! ほんとだったら1回読み直したいところなんだけど……日記みたいなものだから気にしなくていいかな?」
そう呟き、2階の自分の部屋から飛び出し、1階へと駆け下りていく。急いで階段を下りてリビングへのドアを開けたその瞬間、12時の鐘が部屋中に鳴り響いた。
- 86メジロエスキーの人22/11/20(日) 07:55:00
- 87メジロエスキーの人22/11/20(日) 07:57:00
ちょっと短めですが今日はここまで。それではまた次回
- 88二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 11:39:03
ついメッセージアプリの確認しちゃって記録に残ってないところ切なくて震える
- 89二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 12:55:16
野生のカンガルーにヘッドロックを掛けられる日本のサラブレッド(5歳)
- 90二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 12:57:09
このレスは削除されています
- 91二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 13:01:21
これは所属してるチームカオスに問題があるな!
オラァ!責任者出てこい!! - 92二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 13:58:28
すみません責任者は先程謝罪行脚に行ってしまったんですよ〜
戻るまでこちらでお待ちになられますか?
こちら粗茶になります(ロイヤルビタージュース) - 93メジロエスキーの人22/11/20(日) 15:28:04
だからロイヤルビタージュース出すなっつってるだろ。既製品? 一緒だよ
- 94二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 15:31:15
待てよ
TSクライマックスでの恩を忘れたとは言わせないんだぜ - 95二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 15:54:40
カーネリアン単勝外したのでウロに刺さってくる
- 96メジロエスキーの人22/11/20(日) 16:00:24
- 97二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 16:03:45
そろそろ部室に簡易ウロでも用意しとくか
- 98二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 16:06:26
レース結果が芳しくなかったときのトレーナー達がやけ酒でエチケット袋代わりにしそう
- 99二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 16:07:35
ハナ差で3連単のがしたんだけど?
- 100二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 16:11:07
チームカオスバ券爆死部開園!
- 101二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 16:14:42
担当で賭け事すな
- 102二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 16:15:24
頭ブックメーカーだからね
仕方ないね - 103メジロエスキーの人22/11/20(日) 19:34:23
- 104二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 19:52:43
- 105キタサンアイドルの人22/11/20(日) 20:00:34
- 106二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 20:02:42
- 107二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 20:38:03
う あ あ あ あ(PC書き文字)
ば、化け物が部室を練り歩いてる - 108メジロエスキーの人22/11/20(日) 21:23:49
- 109二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 21:28:46
- 110二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 23:49:03
Bobberaijo-barakave?(難聴)
- 111二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 00:05:11
ぶつけるならまとも枠のまとも力で相殺しろ定期
- 112メジロエスキーの人22/11/21(月) 08:14:52
まあマイナスにはマイナスをぶつけろとも言うし……
では今日もSSの続き失礼しますね - 113メジロエスキーの人22/11/21(月) 08:15:57
─────
「それで勢いよく階段下りてきたけど、何か急ぎの用事か?」
パソコンとにらめっこしていたはずのパパがぱっと顔を上げて何の用かと聞いてきた。私は前にパパにも話していた夢の話が完成したことを伝えると、ちょっぴり驚いた顔をしてソファの自分とママの間に座るよう促す。私は空いたスペースにちょこんと入り込み、携帯を見ながら2人に夢の話を思うがままに語り始めた。途中で誰かのお腹が鳴り、お昼ごはんを食べている間もずっと。パパとママもしっかりと私の話に耳を傾けてくれていて、時折笑ったり、時には悲しんだりと真剣に聞いてくれていた。そうやって全てを語り終えた頃には日も傾き、窓から夕焼けの光が差し込んでいた。
「……それでさ、パパってエスキーなの?」
しゃべり続けたせいか喉がからっからになり、ソファから立ち上がるとキッチンへ向かい、冷蔵庫からお茶を取り出す。それを棚にあったコップに注いでぐびぐびと一気に飲み干し、コップを水ですすいだところで再びソファに腰かける。
「……言ってもいい?」
「……うん。エスキモー、絶対に他のみんなには秘密だからね?」
パパとママが顔を見合わせ、問題ないことを確認すると、私に他言無用を申しつけた。私はこくりと頷くと、「この世界」でのエスキーのことをパパが教えてくれた。
「そう、エスキモーが夢で見たのと同じでここでもパパはウマ娘になっていたんだ。走ったレースはちょっと違うけど海外にも行った。だけど負けることは最後までなかったかな……映像残っていたっけな……」
目の前のパソコンをカタカタと叩き出すといくつかの映像ファイルを見せてくれた。そこで走っていたのは私が夢で一緒に走っていたエスキーの姿そのままだった。
「ほんとエスキーは凄かったよ。その代わりいろいろあったけどね。ね、パパ」
「あー、うん……本当にごめん」
ジト目でパパを見つめるママと、そんなママに間髪入れずに頭を下げるパパ。何があったのかは今は詳しくは聞かないことにするけど、いつか教えてもらおっと。 - 114メジロエスキーの人22/11/21(月) 08:17:09
─────
全部のレースを見終わる頃にはすっかり日も落ち、外も暗くなっていた。ママは急いで晩ごはんの支度を始め、パパはお風呂の準備をして、お湯が一杯になる間に洗濯物をダッシュで取り入れていた。私はパパが取り入れた洗濯物を畳み、みんなの分を分けて整理すると、ママの料理を少しだけ手伝った。
「あれ、エスキモーって料理できた?」
「夢の中でだけど……ちょっとはできるようになってる、と思う」
自信はないけど夢を頼りにママのサポートを行う。たまたまなのか、それとも夢で身についた実力の成果か、自分でも驚くほど上手く作ることができた。
「……凄いね」
「私もこんなに上手くいくなんて思ってなかった」
味もばっちりで盛りつけも完璧、まさに言うことなしだった。やっぱりあの夢のおかげなんだろうか。ママに偉い偉いと頭を撫でられながらそんなことを考えていた。
─────
お風呂に入り、ママと私で作ったご飯を家族みんなで食べている最中、パパが明日の予定について話し始めた。入学前最後の日曜日、メジロのお屋敷の外庭で人を呼んでパーティーをするとかなんとか。
「そのパーティーって誰が来るの? パパの友達?」
パパはまだトレーナーを続けているから同僚の人たちだろうか。それにしてもわざわざお屋敷まで行ってするものなのかと不思議に思っていると、ママが横から教えてくれた。
「パパが率いてるチームのOGが久しぶりに集まるんだって」
「OG? というかパパってチーム率いてたんだ」
- 115メジロエスキーの人22/11/21(月) 08:18:23
そんな話を前に聞いたような聞いていないような。たぶん聞いてはいたが、右から左に聞き流していたんだろう、パパは少し肩を落としながらそうだよと教えてくれた。
「それでなんて名前のチームなの?」
「チーム名か? それは……」
ひと呼吸置いてパパの口が紡いだその名前は──
「カオスだよ。チームカオス」
あの世界で私が入っていたチームの名だった。
─────
「ふあぁ……よく寝た……」
土曜日の朝、窓から零れる太陽の光に目が覚め、ベッドの上でうんと伸びをする。ゆっくりと立ち上がるとカーテンを開け日光を体中に浴び、体内時計をリセットさせる。
「なんだかめっちゃ長い夢を見ていた気がする……」
この春からやっと独立できるとあって、新しく入ってくる新人への引き継ぎの書類作成であったり、独立するにあたっての手続きなどに追われ忙しない日々を過ごしていた。そのせいなのか、それとも書類整理が無事に終わった気の緩みなのか、今日は随分と遅い起床となった。
「もう昼前か……えーっと、朝ごはんは作って……ないか」
見ていた夢のせいなのか、誰かが朝食を作ってくれていると錯覚していた。というよりその前にいつもだったら起こしてくれるのになといった勘違いもしてしまっていた。
「夢の話、だもんな……」
朝から晩までご飯を作ってくれ、しかも毎朝起こしてくれるあの子はいない。全ては夢のおはなし。
「……冷凍のご飯温めるか」
- 116メジロエスキーの人22/11/21(月) 08:19:27
冷蔵庫の下の段から何個も冷凍していたご飯を1つ取り出し、電子レンジの中に放り込み、温めを開始する。温められている間に電動ポットでお湯を沸かし、インスタントの味噌汁を作る。
「料理勉強するかな……」
夢の中ですら完全に任しきりになっていたキッチン周り。もう一人暮らしを始めて長いんだから、いい加減簡単な料理でも覚えないとなと思い始めてどれほどの時間が過ぎただろう。とりあえず形から入るかと考えこのあと本屋に行く予定を頭の中で組んでいると、レンジとポットから同時に音が鳴った。
「いただきます、と」
コップにお茶を、ご飯にはふりかけをかけ、あっさりとした朝食を食べる。携帯でニュースやスケジュールを確認しながら、咀嚼の音が聞こえるほど1人で黙々と箸を進めていた。
「今日は本屋とスーパー寄って、明日は……あっぶな、忘れるところだった」
明日の昼からこれまでお世話になっていたチームのパーティーがあるのをスケジュールを確認するまで忘れてしまっていた。大事な予定を危うくすっぽかすところだった……
「お土産は……別にいいか。とりあえずジャージじゃなくてちゃんとした服装で行かないとな」
頭の中で衣装棚の服をとっかえひっかえし、一番まともそうな組み合わせをなんとかチョイスする。服を選んだあとは小物類。ただアクセサリーに疎い自分は大した物を持っていなく、あえて言うならトレーナー試験に受かった時に親から買ってもらった腕時計ぐらいだった。
「まあ……あれでいいか。デザインは好きだし」
円盤の中に世界地図がドットで描かれた、世界中どこでも使える時計。親から「トレーナーになるんだったら、夢は大きく世界制覇!」なんて勝手に決められちょっと引きながら受け取ったプレゼントだけど、今ではすっかり左腕に馴染んでいる。
「……夢の中でもらった物とたまたま同じ名前なんだよな」
そう、何かの偶然か、それとも己の深層意識が夢に影響したのか、細部は異なっているけど今自分が持っている物とほぼ同じ造形をしていたあの時計。しかも名前は同じ──
「ワールドトラベラー。世界旅行者……偶然か?」
箸を止め考え込むも答えは出ない。しばらく考えていると、携帯が突然鳴り響き現実に引き戻される。
- 117メジロエスキーの人22/11/21(月) 08:20:17
「こんな時に電話? 相手は……チームトレーナー? はい、もしもし」
『休みの日にごめんな。そういえば明日のことで伝え忘れていたことあってさ』
「なんでしょう? 予定が変更になったとか?」
『変更というか、オレの娘も連れて行くの言ってなかったな。この春から学園に入学するんだけど、せっかくだし顔見せでもって思って』
「へぇ、チームトレーナーその奥さんとの間の娘さんだったらまさにサラブレッドですね。会えるの楽しみにしています」
『ああ。だけどスカウトはまだだからな? あっ、娘が話あるみたいだからもう切るぞ』
「分かってますって。では失礼します」
そう言って電話を切り携帯を机に置いて、少し冷たくなった味噌汁を啜る。冷たくてもホッとひと息つけるこの味、自分が日本人だということを改めて自覚する。
「そういえば娘さんの名前聞いてなかったな……まあいいか、明日聞けば。さて、早く食べて本屋とか行きますか」
急いでご飯を食べきり、味噌汁とお茶を飲み干すとちゃちゃっと食器を洗う。そのあと歯磨きや着替えを済ませて小走りで玄関を飛び出し駅へと向かう。
「……誰か美味しいご飯作ってくれないかなあ」
そんな夢のまた夢の話を1人呟きながら先を急ぐ。そういえば包丁も全然使ってないなと思い出しながら駅への道を駆けていった。
- 118メジロエスキーの人22/11/21(月) 08:20:49
今日はここまで。それではまた次回
- 119二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 09:20:45
大団円の気配来たわね…!
- 120メジロエスキーの人22/11/21(月) 17:20:58
なお明日はお休みです。明後日か3日後が最終回かな?
- 121二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 17:49:48
>「……誰か美味しいご飯作ってくれないかなあ」
安心しろ、ガッツリ胃袋を掴んでくれる未来の担当がすぐに
- 122二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 00:07:05
- 123二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 00:13:09
運動前のマッサージの効果であってオイルの効果かって言われると怪しい
なんでもそうだけど定量化しない限りはプラシーボの域を出ないわなとは
脚攣るの防ぐ目的なら日頃からカルシウム取るのが一番堅実なので - 124メジロエスキーの人22/11/22(火) 06:59:08
リンク先読んでる限り結局マッサージのおかげなんじゃねえのこれ……オイルがどれほど寄与してるかが分からない以上、おいそれと手を出すのはどうなのかなと思わなくはない
あっ、エスキモーSSは明日でクライマックスまで突っ走る予定ですのでご承知おきをば
- 125二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 09:41:57
Wikiの更新時刻見たら草
しっかり寝てもろて - 126二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 13:18:32
1周年直前だけどここ数日は特に過疎りすぎててやべぇ
需要あるかわからんけど個人的な備忘録も兼ねてウマ娘錬成に使えるサイトを再整理+大幅増刊作業中 - 127二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 14:14:58
変な想像だけど、ディスコの方に人流れたりしたんかね?それともそっちも過疎ってて単純に人が来てないのか…
- 128二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 14:24:32
ディスコ不参加組だからわからんな
あっちにもSSとかイラスト投げられてると聞くが… - 129アルケミー22/11/22(火) 15:18:28
みんなポケモンで忙しいんだよ(適当)
- 130ライトニングホラーの中身22/11/22(火) 15:20:31
あんまりこっち来てないから存在忘れられてる気がする
マズイ - 131二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 15:23:02
- 132メジロエスキーの人22/11/22(火) 15:28:56
絵面がシュールすぎるんだが……?
- 133二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 15:32:06
このレスは削除されています
- 134二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 15:33:53
- 135レッカの中身22/11/22(火) 15:34:56
頻繁に覗いてはいるんだけど、話のタネを作るのが苦手すぎてね…
- 136メジロエスキーの人22/11/22(火) 16:16:00
ではただいまよりポケモン禁止令を発令する!(大嘘)
- 137二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 16:17:44
うるせえ芝にマメバッタ大量配置すっぞ
- 138プログレスの人22/11/22(火) 16:20:41
やめてほしいのれす。
やめろ。 - 139ライトニングホラーの中身22/11/22(火) 16:21:33
うるせぇのだ!ギラティナの空間に送ってやるぞなのだ
- 140メジロエスキーの人22/11/22(火) 16:49:55
- 141ライトニングホラーの中身22/11/22(火) 16:54:58
もうみんなでポケモンでもやる?(1番だめなやつ)
- 142二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 16:55:43
ほんとにダメなやつはルールで禁止すよね
- 143メジロエスキーの人22/11/22(火) 17:03:13
そもそもトレセン学園ってゲーム機持ち込みできるっけ?
携帯が問題ないのは分かってるけど - 144二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 17:05:06
シャカがノートPCでゲームやってたので平気じゃね?
頭良さげな学校ほど校則緩いよね - 145ライトニングホラーの中身22/11/22(火) 17:05:29
タイシンも持ってきてなかったけ?
- 146二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 17:09:28
- 147メジロエスキーの人22/11/22(火) 18:22:40
怒らないでくださいね。トレーニングをせずにゲームを長時間して頭を良くしても、それでレースに勝てなかったらバカみたいじゃないですか
- 148二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 18:35:37
なんでトレーニングしない前提なん?
- 149メジロエスキーの人22/11/22(火) 18:51:03
失礼、語弊があったね。トレーニング減らしてまですることではないかなって言いたかったんだ
- 150ラプ中22/11/22(火) 19:36:59
SSを投げます(唐突)
数レスお付き合いくださいませ - 151ラプ中22/11/22(火) 19:39:20
「本馬場入場を終え、各ウマ娘がゲート前でレースの始まりを待っています。実力派のウマ娘が揃いましたが、どのような展開に…」
発走時刻が近づいている。
今日の1番人気を背負う私-ケイティファミリアにとって、G2の舞台は初めてだった。
本格化が遅かったために春のクラシックには間に合わなかったものの、オープン戦で力を付け、年初のの京都金杯で重賞を初制覇。人気を背負うだけの実力はあると自負している。才覚は平均を大きく超えているし、それを引き出す相応の努力もしてきたはずだ。
シニア級の重賞だけあって、なかなかの面子が揃っているが、「一人分からないのを除けば、君の実力は間違いなく最高だろうね」とトレーナーは言っていた。今の勢いのままなら、確かに私もそうと信じれる。
そうなれば問題なのは、「分からない」相手。今日の2番人気、アドマイヤラプラス。去年の春を賑わせた彼女は、怪我明け第1戦にこのレースを選んでいるのだ。
実力は確かだが、怪我によるブランクや心の根底にこびり付く走りへの恐れは大きな要素になりえる。彼女の怪我は復帰できる程度のものではあったようだが、それでも練習を長らく休まなければならないダメージではあったのだ。
勿論恐れないわけではない。彼女は去年の最優秀クラシックウマ娘、我が世代のダービーウマ娘たるグロリアスブレイズにすら先着したこともある強者だ。しかし、私の心は、確実に強者の打倒のために盛り上がっていた。
待機の中、私はターフの上で彼女を見据える。やがて強い視線に気づいたか、彼女もこちらに視線を向けてくる。
レース前の割には微妙に緊張感に欠けた気楽そうな表情が、記憶に残った。
ターフ上のそんな雰囲気に見て見ぬふりをするように、楽団の鳴らす音が、観客席の拍手を呼び込んだ。
「最後に大外枠がゲートイン終了。勢いに乗るか、あるいは猛者の復活か、それとも新星登場か?金鯱賞、スタートしました!」 - 152ラプ中22/11/22(火) 19:42:03
門が開かれ、肉体が一気に活力を得る。
今日のレースには積極的な逃げ組はいない。好スタートだったであろう強敵も無論先行しているが、先頭には立たない。最終的に、スタートの良かった6番が先頭に押し出される形になった。私はその様を見ながら、後方でレースを進める。
向こう正面に入っても大きく変化はなく、レースははよどみなく流れていく。バ群のやや外側を進み、コーナリングをやや犠牲にはしつつも、直線で確実に決めることを狙う筋書きだ。
仮に6番の彼女…プリンピキアが逃げの巧者だったら、また異なる走りをする必要があっただろう。しかし彼女は逃げているのではなく、単に先頭で走っているというだけだったから、変更の必要はあるまい。
直線の出口に達し、第3コーナー。
緩やかな下りと中京のコーナーは、私のような後方仕掛け組を優位にする。学園で繰り返したコーナリング練習の成果は確かにあった。スムーズに外側に持ち出し、視野が広がる。外側の荒れていない馬場と、最後の急坂が視線上に広がる。
ラプラスを見れば、さすがにうまく立ち回っている。急なコーナーでありながら速度を維持…むしろ加速するような勢いで、逃げているプリンピキアを交わす寸前にまでたどり着いた。とはいえ、彼女もこれで足をある程度使ったはず。実際、直線の速度そのものはやや落ちているように感じられる。 - 153ラプ中22/11/22(火) 19:43:40
今や先頭に立ち、押し切らんとする2番人気との距離が縮まっていくのが見て取れる。眼前の坂すら一気に飛び越えるような力が沸き上がり、観客の歓声を肌で浴びる。確かに彼女は猛者だったが、それでもなお私の勢いが上回ろうとしていた。
ここはまだ通過点。今の私なら、さらに上に向かえるという信念が、先頭を進むアドマイヤラプラスを捉える-
妙だ。確かに距離は詰まってきている。しかし接近の速度は、依然として遅いまま。これまでで勝ってきた中で、最も遅いのだ。まるで、相手がこのまま勝ち切るかのような速度。
違う、「ような」ではない。
自分の推測が違うと、理解できた。
彼女の勢いは「弱まった」わけではない。彼女は「弱めた」に過ぎなかったのだ。おそらく相手の実力と展開とを割り出し、脚への負担を抑えるために若干流すことにしていたのだろう。これから近づいたところで、彼女のスタミナはまだ残されているだろう。
そう、勝ちを狙っている私と違い彼女にとってこのレースは…あくまで「叩き」でしかない。
気づいた時には…いや、気づく前の段階から、自分と彼女との差はあまりに大きかった。
次の瞬間、こちらに一瞬視線を向けていた彼女が、即座に向き直し、足をより前に踏み込む。直後、もうすぐで追いつけそうな距離は、少しばかり、しかし絶対的な距離に拡張されていた。
「アドマイヤラプラスだ!世代の強者が、復帰戦を勝利で飾りました!」
やはり、王者候補は何かが違う。その思いのまま、1着のゴールからほとんど時を置かず、私はゴール板を通り抜けていた。 - 154ラプ中22/11/22(火) 19:50:07
目の前にはペンライトと観客の群れ。歌詞の最後の部分と同時に、最後のポーズを決める。同時に喝采が巻き起こり、無事なライブの終了への安堵を感じた。
一応非センターダンスの練習をしておいたのは無駄ではなかった。勿論無駄にはしたかったのだが…
袖を抜けて、衣装の着替えのために控室に向かう最中、ふいに彼女に声を掛けられた。
「いやー、正直思ったより強かったよ。実際焦ったし。後200長かったら正直まずかった」
謙遜だろうが、しかし本音にも聞こえた。勝者から肯定されると、自尊心も多少は守られるというものである。言ってて悲しいが。
「それはそれとして、金杯のレース運びほんとによかったよね。ちょうど中継で見てたんだけど…」
急に私のことに話が変わる。話によれば、彼女は幼少期からのレース視聴ファン。自分のレースも見守っていたとのこと。自分たちの世代が勝つのはやはりうれしい、なるほど、それなら勝つ甲斐も新たに生まれるものだーそんな風体の会話が、脈絡もなく行われた。
「ところで、思ってたことがあるんだけどさ」
妙に真面目な顔になる彼女。何か相談でもあるのだろうか?いや、1回走っただけの相手に相談というのもアレだが。とはいえ「一度走ればみんな友達」なんてセリフも子供向けアニメにはあるくらいだし…
「一般ライブ服の露出って強めじゃない?へそは言わずもがな、トモ部分も結構出てるし…前に『トゥインクルシリーズ ライブ衣装写真スレ』ってのを見つけたことがあって、そこに…」
え?あ、うん…話題がコロコロ変わるな…脈絡なく…
自由気ままでマイペース、それでいて実力者。それが彼女なのだと、なんとなく理解できた。
部屋に向かいながら、ふと先まで会話していた今日の最大の敵を振り返った。
強いとしか言いようが無い。おそらくこのまま2週間後に挑んだとしても、勝てるかどうか。自身皆無ではないが、喪失があるのも事実。
いっそ予備登録しておいた香港に…海外に「逃げる」なんてのも妙な話だな。そんなことを考えつつ、私は控室のドアノブに手をかけた。 - 155ラプ中22/11/22(火) 19:50:52
控室。勝者とその育成者とが合流する。
「ほい、お疲れ。前途洋々でいいじゃないか」
「まー、思ったより気分よく走れましたかね。感覚はそこまで覚えてなかったんですけど、その分事前予習しといてよかったです」
「この分なら大阪杯もかなり行けそうだな。じゃあ、勝利祝いと行くか。何食う?」
「名古屋名物ひつまぶし」
「高級志向な奴…まあいいか、重賞祝いだしな。幸いトレーナー業の給料はそのくらいの余裕はあるもんでな」
「さすがは我らがトレーナー、話が分かる!」
こういうわけで、勝者たちの1日は少しだけ続く。
愉悦の中で、彼ら彼女らは、2週後のさらなる戦いへの緊張を一時隅に置いていた。
以上です
今回は別視点で書くことにチャレンジしてみました - 156カンパナーレボバー22/11/22(火) 20:19:03
- 157メジロエスキーの人22/11/22(火) 20:31:21
- 158キタサンアイドルの人22/11/22(火) 20:37:00
ラプラスさんの別視点美味しいです。強さにいい意味でドン引きしたのでアイちゃん横になりますね…(まだ2戦1勝アイちゃん)
そして小説投下注意報です! - 159キタサンアイドルの人22/11/22(火) 20:43:48
【番外編、番外編、番外編】
目が覚めると白い部屋に居た。
[…ん?私トレーナー室で寝たような……]
辺りを見渡すとアイドルを見かけ、起こした。
「……んんっ…あれ?トレーナーさん…なんでワタシの部屋に……ってここ…ワタシの部屋じゃないですよね…??」
[大丈夫、私も正直混乱してるから]
混乱している彼女を落ち着かせながら周囲を見渡す。すると一枚の張り紙を見つけ、読み上げた。
[〔キスをしないと出られない部屋〕?]
発想が小学生みたいな部屋だな…と思いつつ困ったと思った。それは同性とはいえ担当とのスキャンダルは絶好のネタだ、もしそのような記事を書いている者やそれを売っている者であった場合非常にマズイ。アイドルの心も今はあまり乱したくない…とはいえ出られない方もマズイ。
「……き…キス…!?それをすると…その……できちゃうんじゃ……」
[アイドルは純粋なままで良いよ。でもキスじゃ…その…デキないってことはわかってほしい]
「は…ハイ…///じゃあなにで」
[はいその話終わり。とりあえず試したいことがあるからやってみても良い?]
「はい、何をするんですか?」
[キスをする対象は生物だと書かれていない。つまり壁にキスをしてもした判定になるんじゃない?ってこと。まあ試しにやるだけだけどさ]
これなら私の尊厳が破壊されるだけで済む。…ファーストキスが壁に奪われるなんて思いもしなかった。そうくだらないことを思いながらキスをしたら… - 160キタサンアイドルの人22/11/22(火) 20:44:03
【ガチャン】
「開きましたね」
[意外と緩いのね。あとアイドルは先に行ってて、私はやることがあるから]
「はい、でも無理はしないでください」
アイドルを先に出した後、視線を感じる所に対してこう言った。
[どこの誰か知らないけどさ、次こういうことしたらタダじゃ済まないよ。…まあ]
[ 次 は 永 遠 に 来 な い け ど ね ]
……これで誰も見てなかったらどうしよう…そう思ったのは言い切ってからだったので遅かった。しかし脅しただけなので特に何も手立てはないが。一応警察には連絡した。
そして次の日、怯えながら自首する犯人がニュースに出ていたとさ、めでたしめでたし(?)
〜えぬじーしーん〜
【ボキッ!バキッ!グシャア…】
「…開きました」
[…まあ良いか!]
犯人「ウソダドンドコドーン!!」
__
イチャイチャが見れると思ったのにカオスだったのでアイちゃん横になりますね…… - 161ラプ中22/11/22(火) 20:53:25
混
沌
! - 162メジロエスキーの人22/11/22(火) 21:29:00
ファーストキス……つまり学生時代は……あ、これ以上追及したら消されそう
- 163二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 22:16:54
- 164二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 00:25:05
本日17:39:23でなりたい部もといチームカオス1周年
部長は果たして気づいているのか - 165シュウマツノカジツの人22/11/23(水) 00:49:50
Q.ひつまぶしって現地の人食べるんですか?
A.中京記念勝ったときにトレーナーさんが食べさせてくれました。つまりはそういうことッス。
Q.手羽先は食べますよね?
A.中京記念勝ったときにトレーナーさんがお土産で買ってました。つまりはそういうことッス。 - 166二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 01:12:51
普通に美味しければ食べない理由がないという
- 167エノラの中の人(連執筆中)22/11/23(水) 05:45:47
お久しぶりです&投下
右手が痛い。
ギプスがやっと外れた右腕を見下ろすと、カラレスが私の手を離すまいと掴んでいる。
リハビリを終え自由に動かせるようになった手で、しっかりと握り返す。
今日は退院最初のトレーニング。感覚を思い出す為に、さっと走って終わりにするはずだった。
「あれは………」
潮風の匂いがした。
「来てたんだ…」
海の浅瀬のような髪色を靡かせ。
「……………よろしく、エノラさん。」
ツキノミフネが芝に立っていた。 - 168エノラの中の人(連執筆中)22/11/23(水) 05:46:16
「どこに行ってたの?見るのも久々。」
ストレッチをしながら話しかけてくる。
「少し忙しくて……もうデビューはしたの?」
「したよ、もう。」
何やら言葉の端々が浮き足立っている。
「いい事でもあった?」
「うん、戦って、試したい。どこまでやれるか。」
どうやら私と戦って腕試しをするようだ。
「テレビで見たわよ。最近活躍してるんだってね。」
「うん、重賞も何回か勝ってる。」
これは……丁度いいだろう。
「わかった。並走しましょう。」
「いいの?ありがとう……行ってるよ、先。」
見送って、カラレスの所に戻る。
カラレスは不安げな目線をしているが、頭を撫でて宥めてやる。
「大丈夫。できるだけ抑えるから。」
「…うん、気をつけて。」
カラレスの不安は消えないが、多少収まったようだ。
ツキノミフネの元まで歩く。
リハビリ明けの、模擬レースが始まる。 - 169エノラの中の人(連執筆中)22/11/23(水) 05:46:38
送り出してしまった。
エノラに負けてしまった。
自責と後悔に押しつぶされそうになりながら、ツキノミフネの元まで歩くエノラの背中を見ていた。
私が壊してしまった右腕は、リハビリ明けでろくに使える状態じゃないだろう。
ツキノミフネがまだジュニア級だからといって、彼女の実力は底知れないものがある。
恐らく、彼女の自信はそこから来ているのだろう。
エノラはまともに動くのが久しぶりな状況。対してツキノミフネは……
考えるほど、エノラに不利な条件だ。
「……ごめん、エノラちゃん…」
誰に向ける訳でもない謝罪。許しを求めるための行為で、より1層自己嫌悪が強くなる。
2人が並ぶ。それにつられて、普段の通りゴール板になりに2人の元に走る。
到着し、2人が目を合わせた。
「コイントスで行くよ。」
宣言し、コインを手に取った。
申し訳なさを込めて、親指の上に置く。
ピンッ!
軽快な音と共にコインが宙を舞う。
ツキノミフネはぐっと両足を構え、手をいつでも振り出さんとする。
エノラは、両足で踏み込みつつも、右腕はだらんと垂らしている。
ストン
2人が、一斉に駆け出した。 - 170エノラの中の人(連執筆中)22/11/23(水) 05:47:14
私フラワリングタイムは、今日もミントクラウンさんと一緒に歩いていた。
「遅咲きの桜も風流だと思わないかい?」
「ですねっ!」
グラウンドに通りかかると、なにやら走っている影が見えた。
「むむむ……」
目を凝らして見ると、走っているのはエノラさんとツキノミフネさん、ゴール板担当はミラージュさんらしい。
「並走……模擬レースかな?」
面白そうな事をやっているので、ミントクラウンの手を引いて見に行くことにした。 - 171エノラの中の人(連執筆中)22/11/23(水) 05:47:35
エノラ。今のところ1番大きな壁。それは私にとって……ウマ娘にとって。
無敗の三冠という栄光。それを持つウマ娘と走れる喜び。
逃げて、並ばせず、離れる。今までと同じ勝利のビジョン。
ちらりと後ろを見ると、エノラは右腕を殆ど動かしていない。
(舐められてる…?)
そう意識した瞬間、口からぎりりと音がした。
幾らデビューしてすぐといえ、私にも力はある。
それを舐めて掛かられたらこちらも困る。
(最大限を出してよ…)
「…舐めるなぁっ!」
思わず叫んでしまったが、気にしない。
脚に力を込め、加速。このままぶっちぎる…… - 172エノラの中の人(連執筆中)22/11/23(水) 05:47:55
スタート地点から、ゴール板として2人の走りを見ていた。
ツキノミフネは逃げ、エノラは差しの位置。
流石、と言うべきか、ミフネはどんどんと距離を離していく。
「エノラちゃん……」
そのまま、あと半分に差し掛かった。
瞬間、エノラがプレッシャーの様なものを放った気がした。
ゆっくりとエノラの口が動く。
それは、遠くから見ると……
「これぐらいか」
と、聞こえた。
[Electragedy-Alone lv 4]
背後から、気配が消えた。
はっとなり後ろを振り向く。
(…………いない…?)
死角に回り込まれたか、反対側から見ても、何も見えない。
(デビューみたいに突き放したか…?ならいいや…)
そう考えが纏まり、速度を上げ続ける。
少し走り、何の気なしに第4コーナーに目を向けた。
「…はぁ?」
その少し手前……自分から見て何バ身か先に…彼女はいた。 - 173エノラの中の人(連執筆中)22/11/23(水) 05:48:27
浮く。
芝の少し上をスケートするように、ゴール目掛けて走る。
視界はクリアになり、全てがハッキリと視覚できる。
この感覚は、今までのレースでもあった。
しかし、いつもより鋭敏に感覚が研ぎ澄まされている。
ちらりと後ろを見ると、走っていたウマ娘と位置が逆転している。
目線を戻し、もう少し滑ればカラレスの目の前だ。
ゆっくりと減速。速度が落ちるほど感覚が消え、普段の調子に戻っていく。
芝に足が着いた感覚が戻ると、そのまま少し走る。
「……ご、ゴール…」
カラレスの声は、やに呆気ないようなものを見たような声だった。 - 174エノラの中の人(連執筆中)22/11/23(水) 05:48:47
「はぁっ…はぁ……」
やっと、ゴールを通過した。
地に伏して息を整えていると、上から影がさした。
「え…のら、さん……」
「無理に喋らないで。はい、落ち着いたら飲んで。」
そう言われ、ペットボトルを差し出される。
ラベルはスポーツドリンクのもの。
受け取り、エノラの顔を見上げる。
「うそ……」
汗ひとつかいていない。息も上がっていない。
極めて普通、平常の状態だ。
「いいリハビリにはなったわ。ありがとう。」
「……リハビリ…?」
息が整ってきたのでやっとまともに喋れる。
「少し右腕をやってね…最近までギプス付けて入院していたのよ。あなたに会えなかったのもそれのせい。」
(……万全ですら、無かった…)
右腕が半ば使えないようなウマ娘に、走って、正面から…負けを突きつけられる。
それは、負けを知らなかったツキノミフネにとっては……あまりに衝撃的で、屈辱的だった。 - 175エノラの中の人(連執筆中)22/11/23(水) 05:49:58
「エノラちゃん…」
レースの後、部室に顔を出そうとカラレスかれ声がかかった。
「どうしたの?カラレス」
「その……あの走り…」
あの走りと言われ、少し考える。
「……あぁ、あれ?」
恐らく領域の事だろう。そう考えた。
「うん…あれ、凄かった。凄かったけど…」
何やら言葉が澱んでいるようだ。何か不安なのだろうか?
「大丈夫…ゆっくりでいいわよ。」
言いながらカラレスをそっとハグする。
焦る節も見えるし、何より彼女との時間はゆっくり過ごしたい。
「……私、怖いよ。あんな走りしてたら、いつか壊れちゃうんじゃないかって…」
私の腕の中で紡がれた言葉は私に刺さる。
ぎりぎりと強まる抱き返される力は私を押さえつける。
彼女の、鼓動が……私の心を砕く。
違う。違うの。
私はもう壊れているの。
壊れていて、そこから流れていくものなだけなの………
そう言うだけの勇気は、私には無かったようだ。 - 176エノラの中の人(連執筆中)22/11/23(水) 05:50:15
ただ彼女を抱きしめることしかできない私を…私は、許さない。
いや、きっと世界も許していない。
私はいずれ忘れられる存在だから。
なら、なんで私は生きているのだろう?
人の死とはふたつあると、どこかで見た。
ひとつは肉体の死。
もうひとつは、記憶からの死。
私は常に死に続けている。
さすれば、誰が私の「生」を証明できようか?
問いが頭を巡る中、胸に抱いていた彼女の声が聞こえた。
「その…そろそろ、いいかな…?」
「……あっ、ごめんなさい…」
慌てて解放する。
「腕は大丈夫そう?」
「ええ。この調子ならすぐ復帰できそうよ。」
実際右腕は好調だ。今回は殆ど使わなかったが、軽い散歩ぐらいなら問題ないだろう。
「先、部室で待ってるね。」
そう言って走り出したカラレスの背中は、とても小さくて……
思わず追いかけそうになってしまった自分を抑え、少し息を整えることにした。 - 177エノラの中の人(連執筆中)22/11/23(水) 05:51:23
以上。
レス食い虫は相変らずですね あはは
補足しますが今時空のツキノミフネさんは改定前です。マエノミフネです。
では - 178メジロエスキーの人22/11/23(水) 07:55:08
- 179メジロエスキーの人22/11/23(水) 07:57:28
─────
その日の夜、寝る前に夕方パパから聞いた話を少し思い出す。パパがチームカオスを率いていた話、それにみんなの話。
「フラりんは実家の花屋さんを継いで、バラカ先輩はイラストレーター、だっけ? クイン先輩はトレーナーやってて、ミラちゃんは学園の養護教諭……」
そういえば夢の中の話だけど、将来何になりたいかってみんなで話し合ったことがあったのを思い出した。たぶんほとんどみんなその時なりたいと言っていた職業な就くことができたんじゃないかなって思う。そういえば政治家になりたいって言っていた子もいたような……?
「みんな、前に進んでるんだなあ……」
みんなが夢を掴む中、私は1人前に進むどころか後ろに下がってまた学園生活を最初からやり直すみたいになっている。もちろん夢の中の話だから実際には初めての学園生活なんだけど、ひと通り経験し終わった感じが凄くある。
「エスキーみたいに仲のいい子ができたらいいけど」
夢の世界では学級委員長なんかやっちゃったりして、みんなから慕われていた私だけど、その実わりと気にしいな部分があるから、一挙手一投足何かする度陰口を叩かれてないか気にしてしまう。もちろんそんなことは一切なかったんだけどさ。
「とりあえず入ってみなくちゃ分かんないか……」
ベッドにうつ伏せで倒れ込み、枕へ顔を埋める。ひとしきりうんうん唸ったあとに顔を横に向け枕元に置いていた携帯で時間を見ると、もう22時を回るところだった。
「やば! 明日パパとママと出かけるんだから夜ふかししてる暇ないじゃん!」
携帯のアラームをセットすると、急いで部屋の電気を消して布団に籠もって目を閉じる。さっきまではっきりしていた頭も部屋を暗くして目も閉じると、次第に眠りの海へと沈んでいくのであった。 - 180メジロエスキーの人22/11/23(水) 07:58:57
─────
ピピピッピピピッ
「もう7時……うーん……」
携帯のアラームを止め、部屋のカーテンを全開にするとうんと伸びをする。まだまだ眠いと思っていた頭も太陽の光を浴び、背筋をぐぐっと伸ばしてあげると徐々にはっきりと世界を認識し始める。朝の陽射しが差し込んでいる部屋をぐるりと見渡すと、机の上にパパとママからもらった腕時計と旅行で買ってもらったパンダのぬいぐるみが置いてあるのが目に入った。
「なんだか不思議なぐらいにリンクしてたんだよね、夢の中での最後の旅行と家族で行った旅行の内容」
旅行のあと携帯でたくさん撮った写真を見返していると、まるで夢の世界と繋がっているかのごとく同じ流れで、かつ同じ場所で撮っている写真を見つけた。初日の昼に空港に着いて市場に行って、旅の最後には大きい神社にお参りして……まるで夢が現実に引っ張られたような感覚を覚えた。
「……考えすぎるのもよくないかな。早く朝ごはん食べて出かける準備しよーっと」
頭をリセットするかのように、もう一度ぐるりと体を回転させてから部屋を飛び出す。階段を下りてリビングへのドアを開けるとそこには既にパパとママの姿があった。
「おはよ、パパ、ママ」
「「おはよう、エスキモー」」
いつものようにママの作った朝食から始まる1日。こっちの世界では初めて会う人ばかりだし、もしかすると少し特別な日になるかと胸を高鳴らせていた私。
──少しどころか人生で一番の特別な日になるなんてこの時はまだ知る由もなかった。
─────
「エスキモー、そろそろ行くぞー」
「はーい、もう行くー」
既に車のエンジンをかけたパパがまだ玄関にいる私を呼ぶ声が聞こえた。ママはとっくに車の助手席に乗っていたから、私は急いで靴を履いてショルダーバッグを肩から掛ける。最後に忘れ物がないかだけ軽くチェックしてから家の鍵をかけて庭の車へと小走りで向かう。そのままの勢いで後部座席に滑り込むと、パパも運転席へと乗り込み車を発進させた。
- 181メジロエスキーの人22/11/23(水) 08:01:04
「なんだかお屋敷行くの久しぶりな気がする」
「そういえば最近行ってなかったね。前行ったのいつだっけ? 先月とか?」
ママの質問にハンドルを握っているパパが答える。
「確か正月に挨拶に行ったっきりじゃないかな。本当だったらエスキモーの合格を伝えに行かなきゃだったんだけど、なかなかオレと向こうの予定が合わなくて」
「パパ最近忙しそうだったもんね」
なんだか1人チームを手伝ってくれていたトレーナーがこの春独立するからその人の分の仕事の整理とか、次に入ってくれる新人さんの選定とかいろいろあって毎日遅くまで忙しそうだった。もちろんあの旅行は絶対行くんだって無理にでも予定を空けてくれたんだけど、その次の日からはまたバタバタと仕事に追われていたみたいで、ママが晩ごはんの度に寂しそうな顔をしていたのを覚えている。ただそのことをママの前でパパに言ったら、ママは真っ赤な顔して否定していたんだけど。
「そういえばその独立する奴も今日来るから。もちろんスカウトは早いからって伝えてあるから安心して」
「ふーん……」
初めて会う人が1人増えたところで特に思うところはない。パパとママが前で話しているのをBGMにしながら、チームのみんながどんな活躍をしていたのかをお屋敷に着くまで携帯でずっと調べていた。
─────
お昼前、時間通りにお屋敷へと到着して私たちは使用人の人に中へ入るよう促される。ママと腕を組んでひっつきながら歩いていると、少し広い客間に案内された。そこには既に何人か立ち話をしていて、机の上には美味しそうな料理やお菓子が並んでいた。
「到着っと。えーっとあそこにいるのは……」
ピンクの髪の人はおそらくフラりん、相変わらず背の高い中性的な面持ちをしているのはバラカ先輩、そして綺麗なお団子を2つ頭につけているのはカジっちゃん先輩。他にも成長はしているけど見知った顔がいくつもあった。
「みんな久しぶり! 元気にしてたか?」
パパがそう言って談笑している輪に入っていくと、みんなが輪を崩しパパの方へと歩み寄ってきた。ママはおばあさまに挨拶してくるからと部屋を出ていっていたから、私はパパの後ろをおずおずと歩いていった。
- 182メジロエスキーの人22/11/23(水) 08:02:17
「お久しぶりです、元チームトレーナーさん。元気にされてました? あっ、これ私の店からのプレゼントです。よかったらどうぞ!」
「久しぶり、フラりん。ああ、最近忙しかったけどなんとか元気にしていたよ。花束もありがとう、家に帰ったら早速飾るよ」
色とりどりの花束を受け取り嬉しそうな顔をしているパパ。それからも元チームメンバーの人たちと話している中、そうそうと何かを思い出したかのように花束を崩れないよう一旦机の上に置くと、後ろに隠れていた私を自分の前へと引っ張り出してきた。パパは私の両肩をガッシリと掴み、みんなに私のことを紹介し始めた。私は花束の中にスズランの花が一輪あるのを視界の端に入れつつ、『元』チームメイトの顔をまっすぐ見つめる。
「今年の春から娘がトレセン学園に入学することになったんだ。ほらエスキモー、挨拶」
「子どもじゃないんだから言われなくてもできるって……ん゛っ! 春からトレセン学園に入学するメジロエスキモーです。今日はいろんな話が聞けたら嬉しいです、よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げると、万雷とは言えないけど大きな拍手に包まれる。とにかく噛まずに言えたことにホッとして頭を上げると、誰かがこっちを見つめていることに気がついた。
「どうしたカジツ? カップラーメンにお湯を入れたまま寝落ちして、目が覚めたら1時間経っていたことに気づいたみたいな顔して」
「具体的すぎません? いや……どこかで見たことあるようなないようなって思ってッスね……私の気のせいかもッスけど……」
それはカジっちゃん先輩だった。夢の中では同じ部屋で3年ほど過ごした、小動物感溢れる愛らしい先輩。今となってはその面影を残しつつも、すっかり大人のお姉さんに様変わりしていた。
「カジっちゃん先輩……?」
思わず漏らしてしまった声を隠すように慌てて手で口を塞ぐ。ただその小さな声は相手にしっかりと伝わっていて、頭の上にはてなマークが浮かんでいるのが見えるほど先輩は首を傾げていた。
「えっ、どうしてその呼び方を知ってるンスか? やっぱり私たちどこかで……?」
(カジっちゃん先輩はあの世界のことを覚えてる? でもそんなはずは……あれは私だけが見ていた夢のはず……)
- 183メジロエスキーの人22/11/23(水) 08:03:28
2人が考え込む様子を見て少し静まり返っている部屋。誰かが口を開きかけたその刹那、客間の扉が開き、使用人さんに連れられて男の人が1人部屋に入ってくるのを認めた。
「もしかして皆さん揃っています? 遅れてごめんなさい、オレは……」
その男の人は──
「トレー……ナー……?」
夢でよく見た顔をしていた。
─────
彼の顔を見て文字通り呼吸が止まる。時さえ止まってしまったような、世界が固まってしまったような感覚すら覚えたまま私の瞳は彼の姿に釘づけになってしまっていた。ただそんな彼も私の方を見つめたまま歩くのをやめ、見間違いでも起こしたのかとしきりに目を擦っていた。ただ見間違いではないと、幻覚ではないと認識したような彼の口から出てきたのはまるで想像もしていなかった言葉だった。
「え、エスキモー…なのか…?」
「な、なんで私の名前を……?」
『この世界』では会ったことがないはずの2人がまるで会ったことがあるかのように言葉を交わす。その時私の頭によぎったのは、本来起こり得ないはずの1つの可能性だった。それは──
彼と私が同じ夢を見ていた。そんな夢物語。あったらいいなと思っていたけど、そんなのありえないよねと笑って切り捨てた可能性の欠片。
だけど、だけどこうして今顔を合わせた今、夢の続き、いやあの夢の先へと一歩踏み出したかもしれない、そんな予感が胸の中で膨らんだ。
「……外で話がしたい」
「うん、分かった」
彼の誘いを承諾し、2人部屋から外に出る。向かった先は敷地内のトレーニングコースだった。
──夢の先がここから始まる。また貴方とともに。
- 184メジロエスキーの人22/11/23(水) 08:04:20
─────
コースまでの道中、互いに口を開こうとするも言い淀むか口を噤むかしてしまい、なかなか話が始まらない。コースがもうすぐ見えてくる時になって、私は意を決して彼に声をかけた。
「あ、あの!」
「ど、どうした急に?」
まるで飛び上がるかのように彼の肩がびくっと跳ねる。
「あのさ……夢の話、しない?」
コースへとたどり着き、外ラチの手前の芝生に2人横に並んで腰を下ろす。2人の間は夢の中よりは少し遠く、だけど初対面の相手にしては少し近い、そんな微妙な距離が空いていた。
「どこから話せばいい?」
「うーんっと……じゃあ初めて『あの世界』──夢って言った方がいいかな──に飛ばされたことに気づいたのっていつ?」
私の場合は旅行の帰りに寝ていたら、突然学園の門の前、しかも制服を着た状態で立っていたのに気づいたのが最初。彼はと聞くと、彼もほとんど同じ状況だったみたい。
「オレも旅行の帰り、和歌山からの帰りの電車の中でこっくりこっくり舟を漕いでいたら、なぜかトレーナールームで1人パソコンに向かって座っていてさ。もちろんこっちでもサブトレーナーとして既に働いていたから最初はあまり違和感がなかったんだけど、チームトレーナー──君のお父さん──は来ないし、部屋に来たたづなさんに『今日から1人で頑張ってくださいね!』なんて言われるしで訳が分からなかったよ。当然同期の姿はないし、サブで入っていたチームにも顔を出したんだけど見知った顔はなかったしで何が何やら状態だったな」
なるほど。入学前の私と違って既に学園で働いていたから最初はそんなに違和感を感じなかったのか。でもそこから現実と違うことが次々と起きておかしいことに気づいたという訳ね。
「でも私と初めて会った時は周りと馴染んでた気がするけど?」
「それは馴染んでいるように見えていただけだよ。向こうは自分を知っている体で話してくるけど、こっちは相手のこと全く知らないなんてザラだったしさ。たぶん会ったのが初日だったらボロボロだっただろうな」
エスキーに負けた模擬レースのあと初めて会ったこの人は若いながらも堂々とした雰囲気を醸し出していた。新人っぽく見えるけどそうじゃない、まさに新進気鋭のトレーナーという風に私には見えた。
「そっか……とりあえずさ、念のためあと何個か確認させてね」
- 185メジロエスキーの人22/11/23(水) 08:05:34
そう言って私は「あの世界」で私とトレーナーしか知らないと思われることをいくつか問いかける。例えばクリスマスに互いに何をプレゼントしたかとか、彼の実家に行った時のこととか……「初めて」の話とか。彼はその全てを私から見て右上、すなわち彼からしたら左上の方に視線を寄せながら答えを言っていった。もちろんその全てが私が「あの世界」で覚えている内容と一致していて、同じ世界、同じ夢を見ていたんだとはっきりと分かった。
「じゃあ最後……これは質問じゃなくて単に聞きたいことなんだけど……白い部屋にいた夢って見た記憶ある?」
私の言葉に彼は「あぁ……」と言いながら青い空を見上げる。彼の答えを聞かなくても、私はそのぼやきと動作で理解してしまった。
「見たよ。でも最初は誰も部屋にはいなかった。ある時突然なぜか顔だけ分からない女の子の前に出てきてさ、時計を軽く修理した気がする。ただ時計が直るやいなや、その子は扉から部屋の外に走り出していってしまったけど」
「あの時の男の人って、貴方だったんだ……」
私たちの中の全てが結びつき、1つの結論を導き出す。すなわち……
「「私(オレ)たちは同じ夢を見ていた……?」」
今芝生に並んで座り込む2人は奇跡か、それとも何かの理かに導かれ同じ夢を、同じ世界線を過ごしていたという事実。まるで漫画みたいなおはなしに胸が、頭が、体全部が熱くなる。たぶん、ううん、きっと、違う、絶対これは……
「運命、だよ。貴方と出会えたのも、今貴方と話しているのも運命」
じゃないと説明がつかない。あの時神様に祈ったからなのか、それとももっと前に彼と繋がる何かが存在したのかは分からない。だけどこれは運命としか私には言えない。
- 186メジロエスキーの人22/11/23(水) 08:06:26
「最後の2人の初詣の時に引いたおみくじのこと覚えてる?」
そう言いながらゆっくりと立ち上がり、うんと背伸びをする。そんな私に釣られて立ち上がろうとする彼の手を私は掴み、上へと引っ張り上げて立つのを手助けする。
「えーっと、確かオレが『待ち人来る喜びあり』で、君は……」
「『待ち人来る驚きあり』、だよ」
あの時のおみくじは「あの世界」の話を指し示していた訳ではなかった。こっちの世界、元の世界に戻ったときのことを言っていたんだ。
「だから、ね?」
今まで起きたことは全てこの日、この時、この言葉に繋がっていた。
「私のトレーナーになってくれない?」
もう一度世界を動かすその台詞。夢の先へと駆けていく最初の一歩。最後に交わした約束を守ってくれた彼に伝える始まりの言葉。
「ああ、喜んで!」
彼のその言葉に私は思わず勢いよく抱きつき、彼のことを押し倒してしまう。だけど2人とも笑いあって、だけどちょっぴり涙を流して。
──貴方と夢見たその先で、私は再び夢を見る。終わらない夢を2人で、ずっと、ずっと。
〜fin〜
- 187メジロエスキーの人22/11/23(水) 08:08:58
長らくお付き合いいただきましてありがとうございました。以上にてメジロエスキモー長編SS「貴方と夢見たその先へ」メインストーリー終了となります。2ヶ月弱ほどレス食いまくって申し訳なかったですが如何でしたでしょうか
- 188クアドラプルグロウ22/11/23(水) 08:16:51
感想!情緒!語彙!!!
何一つ出てこない!!!
とても大団円でしたね…良き
タイトル回収がとっても綺麗なのとても見習いたいです…
(190踏んでもスレは立てられません…申し訳ない) - 189二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 09:19:00
夢の終わりとは、新しい朝の始まりのことである。
(Lhapluspediaより引用)
それはそうと1レス少ないですが温めておいたスレ画芸があるので私が立てます - 190二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 09:22:43
あっじゃあ自分建てるんで大丈夫
ちょっと時間ほしいけど - 191二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 09:23:26
- 192ラプラスの中身22/11/23(水) 09:29:35
- 193二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 09:39:21
たておつうめ
- 194二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 09:39:52
埋立地
- 195二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 09:40:18
埋没毛穴
- 196二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 09:41:51
汚え!
- 197二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 09:42:07
梅酒
- 198二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 09:42:21
梅紫蘇
- 199二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 09:42:43
梅田駅埋立
- 200二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 09:43:16
おしり