【SS】麦わらの一味と幽霊島【オリキャラ注意】

  • 1122/11/20(日) 21:25:43

    昔の劇場版みたいな、本編とは別時空の話を思いついたので書いていきます。
    2年後のジンベエ加入前くらいのイメージです。
    あらすじは考えていますが、細かいところはダイスとかで決めて行きます。
    一味の誰かと幼い頃に関わりがあるキャラ(オリキャラ)が出てきますが、私の趣味です。

  • 2122/11/20(日) 21:27:01

    グランドラインの海の上、麦わらの一味は次の島へ向かおうとしていた。
    天気は快晴、波も穏やかでこのまま順調にいけばあと少しで到着するだろうと、航海士のナミは言う。各々好きな様に過ごし、この束の間の穏やかな時間を過ごす。

    「おい!あれを見ろ!」

    海の向こうを眺めていたウソップが声を上げる。
    指差す先は進路の方角、穏やかだった空にどす黒い雲がかかっている。

    「嘘!さっきまであんな雲なかったし、風も嵐が起きる様な雰囲気なんて…!」
    「なあ進路を少し変えて避けなくていいのか!?」

    慌ててロビンに縋り付いているチョッパーがナミに問いかける。しかし、彼女の様子はどこか混乱している様だった。

  • 3122/11/20(日) 21:28:36

    「ナミ、どうかしたの…?」

    それに気がついたロビンが聞けば、ナミは視界に広がる雲についてポツポツ語る。

    「おかしいのよあの雲…どうも雨雲じゃない…。本当になんだか分からないけど、他に浮かぶ雲と同じで嵐になる様な物じゃない…はず!」
    「それじゃあこのままで大丈夫なのか!?」

    未だ混乱と警戒に包まれる一味だったが、ふと全員の耳に声が響き渡る。それは仲間の誰のものでもなく、存在しないスピーカーから放たれる音の様だった。

    「止まりなさい。この雲の下へ入ってしまえばあなた達は恐ろしい目にあうでしょう。後悔したくないのであれば、使いの者を送り安全な航路をお教えします。生か死か、二つに一つです」

    全員が構えるが、声がするのみで姿が見えない。

    「おいウソップ、双眼鏡貸してくれ!」

    ルフィがウソップから双眼鏡を受け取り、船首から海を見渡す。波すら起きていない一面の海に、絶対に何かがいるはずだと目をこらすと…。

    「小屋だ!海の上に小屋が建ってるぞ!?きっとあそこだ!」
    「あっ、おい待てルフィ!」

    前方に小屋を見つけたと言うルフィが腕を伸ばす。仲間が止めようとするも間に合わず、ポーンと勢いよく飛んでいく。よく見てみれば、どす黒い雲によって影になって見えずらいが、確かに目の前に黒いちっぽけな小屋がなぜか海面に建っていた。

    「あのバカ...!みんな、急いでルフィを追うわよ!海の上なんて危なすぎる、きっと何かの罠だわ!」

    ナミが呆れながらも指示を出す。海の上に建つ小屋なぞ、誰が考えても怪しいというものだ。他の仲間達もそれに同意し、急いで船を進める。

  • 4二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 21:29:34

    期待

  • 5122/11/20(日) 21:32:00

    ルフィは勢いよく伸ばした手を小屋の屋根に引っ掛け、小屋に飛び乗る。
    その小屋は壁ばかりで、小さな扉と明かりをほんの少しだけ取り込むだけの格子付きの小窓しかなかった。

    「おい、誰かいるのか?後悔ってなんだよ、もしかしておもしれー何かがこの先にあるのか!?」

    小窓から必死に中を覗き込むルフィだが、うまいこと中の様子は分からなかった。外から見えたのは、中央に鎮座する人ほどのサイズの“毛玉”だった。

    「なんだあれ!?」
    「ひいっ!何ですかあなた!さ、さっきの船からきたのですか!?どうやって…かなりの距離があったはずなのに!」
    「しゃ、喋った!!」

    ルフィのあげた声に、その毛玉はびくんと跳ね上がるほど驚き喋り出す。

    「こ、酷いことしないでください…!私は金目のものも何も持っていませんから!」

    ビクビクと震える毛玉に、ルフィは落ち着く様に声をかける。毛玉もルフィの様子に、危害を加えるつもりがないのかと、ほんの少し落ち着く。

    「お前喋れるのか?不思議毛玉か!?」
    「わた、わ、私は毛玉じゃないです…。いや、毛玉に見えるかもしれませんが、これは髪の毛です…。しばらく切ってないだけです…」

    一言話すたびにビクビクする毛玉は海を渡ってくる船達に、この先にある島へ間違って上陸されないように警告する役目を担っているらしい。

    「島があんのか!でも俺たち島目指してんだ、上陸しないのは困る!」
    「いえ、あなた達が目指しているのはきっと別の島です…」
    「違うのか?」

    コクコクと首のあたりを振る毛玉は続けて説明する。どうもこの黒い雲はとある島の上にだけ存在するもので、その島はログを持たない奇怪な島だという。

    「だからあなたたちの向かうべき島はこの雲の下ではありません、どうか迂回して向かってください…」

  • 6122/11/20(日) 21:33:24

    すると、大声でルフィを呼ぶ声がする。ルフィが振り向けば、近くにサニー号が止まっていた。

    「このバカ!何があるか分からないのに勝手に飛んでくんじゃないわよ!」
    「何かあったのか?」

    叱責する声や心配する声、小屋の様子を聞く声。しかしルフィは楽しげな顔で仲間に告げる。

    「この先に不思議島があるんだってよ!冒険しに行こう!!」

    麦わらの一味だけでなく、毛玉ですら声をあげて驚く。ルフィはそのまま仲間に毛玉の紹介をする。

    「なあいいだろ?俺ワクワクするんだ、言って見てえよ不思議島!」

    島に上がることをほぼ決めているルフィに対して、ナミ・ウソップ・チョッパーが率先して拒否をする。

    「嫌よ!あんな怪しい雲がかかってる島!大体その毛玉だって生か死か選べとか言って物騒なのよ!」
    「あわわわわすみません、本当にすみません、ですが島に上がってはいけないんです…」

    小屋の中からでナミの姿が見えていないにも関わらず、毛玉はビクビクとその怒り声に怯える。怒り心頭といったナミを宥めるサンジが毛玉に向かって声をかける。

    「さっき言ってた後悔とかなんとか、そりゃ具体的にはなんだってんだ?」

    うっと口ごもる毛玉は、観念したように話す。

  • 7122/11/20(日) 21:36:16

    「すみません、そう警告するように陛下の命令が下っているんです、すみません。私も島には足を踏み入れたことがないので、分からないのです…」
    「アゥ!それじゃあ島に何かあるか分からねーのにあんな脅しを言ってんのか?!」
    「すみませんすみません!」

    ペコペコと高速で頭を下げているらしい毛玉は、姿が小窓からではっきりと見えないがとても怯えているようだ。

    「俺は島に行くぞ!」

    絶対に引かないと言う意志を見せるルフィに、とうとう仲間たちは折れる。こうなったルフィを止めるすべがないと言うことは、嫌という程わかっているからだった。

    「みなさん島に行くのですか…?ううう、お気をつけくださいね…」

    止められないのかと落ち込む毛玉に、ルフィは何を言っているのかと言う。

    「一緒に行くぞ!お前も行った事ないんだろ?」

    毛玉が止める間もなく、ルフィは小屋の壁を破壊する。潮風にさらされてきたであろうその小屋は、いとも簡単にバリバリと壊れてしまう。
    壁が取り払われ、中が露わになる。家具と呼べるものはほとんどなく、警告を伝える為に使っていたのであろうマイクがポツンと置いてあるだけだった。

    「ああああ!壁が!大体私この小屋から10年以上出ていないんです、だから急に外の世界だなんて…!」
    「なんだそれ?ずっとこん中にいた方がおかしくなるぞ」

    ルフィが毛玉の体にぐるぐると腕を巻きつけ、一緒になって船へ戻る。毛玉は情けない悲鳴を上げるしかなかった。
    突然船に乗せられた毛玉は、おどおどしながら麦わらの一味の顔を見渡す。そして一人に目を止めるのだった。

  • 8122/11/20(日) 21:37:43

    毛玉が目を留めたのは


    ①ルフィ

    ②ゾロ

    ③ナミ

    ④ウソップ

    ⑤サンジ

    ⑥ロビン

    dice1d6=1 (1)

  • 9122/11/20(日) 21:48:27

    「あれ…君、ルフィくん…?」
    「お前俺の名前知ってるのか?」

    突然モジモジとする毛玉。言いずらそうにするが、ルフィは構うものかと言うように迫る。

    「あの、あのですね、むかーし私とルフィくんは東の海で一度だけあったことがあるんです…。まさか、また会えるなんて思わなかったな…へへへ」
    「俺が?お前と?毛玉に知り合いなんていねーぞ」
    「あ、はい、あの、ほんの二、三日のことでしたので、覚えていないのも仕方ないかと…」

    ルフィはそんなこと言われても全く思い出せないのか、頭を傾げている。

    「それよりあなた、それ髪の毛なんでしょう?邪魔じゃないの?」

    ロビンが毛玉に向かって声をかけ、もしよかったら切ってあげましょうか?と尋ねる。

    「よ、よろしいんでしょうか…はい、実を言うととても邪魔でして…。小屋にハサミは置いていないので、伸び放題で困っていたのです…」

    ペコペコと頭を下げながら頼む。どこまでも腰の低い毛玉に、ロビンはニコニコとしながら鋏を入れる。
    ジョキジョキと切っていけば、中から姿を出したのは真っ白い肌の少女だった。

  • 10122/11/20(日) 21:59:55

    「あ、すごい、体がとても軽いです…。こんなにさっぱりしたのは何年振りかな…へへへ」
    「毛玉が人になった!」
    「あ、はい、最初から人だったんです。すみません」

    さっぱりとした頭をひたすらペコペコ下げながら、ロビンになんども感謝を伝える元毛玉。彼女の名前はニケと言うらしい。

    「島に行ったことのない私ですが、知っている限りのことをお教えしますね…」

    これから向かう島は、かつては豊かな島だったが大きな戦争が起きて以来島の磁場は乱れ、どす黒い雲がかかり常に薄暗い国となってしまっているらしい。
    誰が呼んだか分からないが、いつかその島は存在も朧げな“幽霊島”と呼ばれるようになったという。
    代々女王が統治する国らしいが、交易も行われないその島で何が起きているのか、ニケでさえ知らないと言う。

  • 11122/11/20(日) 22:24:11

    幽霊島に向かう麦わらの一味とニケ。薄暗い海を進んでいけば、ぼんやりと島の形が見えてくる。


    「なんだかスリラーバークを思い出しますねえ、ヨホホホ!あ、そういえばニケさん、パンツ見せてもらってもよろしいでしょうか?」

    「あ、パンツですか?はい、こちらで…」

    「やめんか!」


    島に近づき一味は上陸する。長年小さい小屋にいたと言うニケは足の筋肉が衰えているとチョッパーから診察を受け、フランキーとウソップに車椅子を作成してもらっていた。普段作らないようなものを作り、テンションが上がったのかいらない装備をつけようとしていたが叶わなかったらしい。

    一味はとりあえず船に残り見張りをするものと島を散策する3組に別れる事にした。


    ①散策A ②散策B ③居残り ルフィとニケは強制で1か2

    ルフィ&ニケdice1d2=1 (1)

    ゾロdice1d3=1 (1)

    ナミdice1d3=3 (3)

    ウソップdice1d3=3 (3)

    サンジdice1d3=1 (1)

    チョッパーdice1d3=2 (2)

    ロビンdice1d3=2 (2)

    フランキーdice1d3=2 (2)

    ブルックdice1d3=1 (1)

  • 12二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 22:34:29

    楽しみです!(((o(*゚▽゚*)o)))

  • 13122/11/20(日) 22:55:24

    「行くぞーーー!!幽霊島ーーー!」
    「ぎゃああああ!!!!」
    「ああ!待ってくださいルフィさーーーん!」

    勢いよくニケの乗る車椅子を押し、島へ駆け出す。ゾロ、サンジ、ブルックもそれに続いて駆ける。
    ゾロは数歩で逸れ出したが、ブルックとサンジが間に挟む事で軌道修正しようと奮闘する。
    島の中は石造りの街並みで、薄暗い街を照らすようにあちこちに街灯が並ぶ。幽霊島などというおどろおどろしい名前とは裏腹に、ほんのりと掛かる霧ですら輝いて見えどこか幻想的な雰囲気であった。
    市場のある大通りにでた5人は、キョロキョロと店を見て回る。特にニケは初めて見るものばかりなのか、目を輝かせルフィにこれは何かと聞いていき、ルフィもそれに楽しそうに答える。

    「暗いのに野菜もこんなに綺麗なものが育つんだな」
    「俺は酒を見てくる」
    「ヨホホホでは私はゾロさんを見張っておきましょう」

    他の3人も気になる店があるのか目移りしていく。

  • 14二次元好きの匿名さん22/11/20(日) 22:59:08

    面白そう
    ニケちゃん素直でいい子そうだけど訳ありやろなあ

  • 15122/11/20(日) 23:01:22

    「私が育てた自慢の野菜たちですよ、いかがですか?」

    美しい女性の声で話しかけられ、サンジはすぐさま顔を上げる。しかし、サンジがその瞳を輝かせることはなかった。むしろ、驚愕の色を濃くした。

    酒屋に入るゾロとブルック。その品揃えに二人とも舌を巻いていると、店の奥から幼い少女が「いらっしゃいませ!」と明るい声で顔を出す。
    ブルックが少女と会話しているうちに、ゾロが酒を探す。これだという品を見つけ会計をしようと、少女の方へ視線を向けた瞬間だった。

    ガチャン!

    ゾロの手から酒瓶が滑り落ち、床で砕け散る。ブルックがどうしたと声をかけるが、ゾロは驚くばかりでピクリともしない。

    「くいな…?」

    やっと動いた口から漏れたのは、懐かしい幼馴染の名前だった。

  • 16122/11/20(日) 23:28:05

    一方チョッパー、ロビン、フランキーの3人は街中ではなく、周りの森からぐるりと回って島の全体像を見ようとしていた。
    暗い森の中は街の中と違い、おとぎ話の魔女の森のような恐ろしい雰囲気で充満していた。怖がるチョッパーをニコニコ笑いながらロビンが抱きしめる。

    「見たところ、島の中央にデケー城があって周りを街が囲んでさらにその外を森が覆ってる感じか?」
    「ええそうね、まだ後悔するほど恐ろしい目には合っていないけれども。ふふふっ」
    「やめてくれロビンーー!おれ、怖いの嫌だーー!!」

    しばらく歩いていけば、森が開き広い場所に出る。
    その光景に3人は思わず言葉を失う。一面の墓場。見渡す限りの墓場。この広さに人が収められているとしたら、いったいどれだけの人数が亡くなっているのか考えただけで恐ろしくなるほどだった。

  • 17122/11/20(日) 23:52:50

    「なんておびただしい数の墓なの…」

    墓場の中央に巨大な石碑がそびえる。3人はそれに向かうと、石碑には文字が刻まれていた。文字が書けているところがあるが、ロビンが読み上げる。

    “偉大なる女王ドラキュリア・ドラクラーナと共に我ら○○の国民眠る。この国を侵す者たちよ心せよ、再び女王は蘇る”

    「読めねえところの国民ってのはこの国のことか。確かニケが言ってたな、代々女王が統治する島で過去にスーパーな戦争が起きたってよ」
    「じゃあこの墓はその戦争で死んじまった国民の墓か?それにしてもこんなに沢山…この人数じゃ国民全員でも足りないんじゃないか…?」
    「ええ、それにこの女王の名前を昔の文献で見たことがあるわ」

  • 18122/11/20(日) 23:53:11

    ロビンは城に視線を向け、険しい顔をする。

    「戦争で各国を襲い栄えていた大国があり、前線で指揮を執っていたのが殺されても死なない怪物女王と呼ばれていたのが彼女よ」
    「それじゃあ...ニケが言っていたこの島に入ってはいけないっつー理由はそれか?島に侵入者が入ったら、その怪物女王とやらが蘇るってことか?」
    「分からないわ…。もしかしたらあの城に何かあれば…」

    その時、地面を揺らす爆音がする。煙が上がるのはルフィたちが向かった街中だった。

  • 19二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 08:57:47

    期待

  • 20二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 15:43:02

    さてどうなるのか

  • 21二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 18:46:00

    続き待ち
    くいなちゃん出てきたけど、何らかの方法で島に入った人間の記憶を読み取ってるのかな

  • 22122/11/21(月) 19:16:49

    続き書いていくです。書き溜めた分が終わったので、今日からはライブ感多めの誤字脱字増えると思うです。

    ちなみに、毛玉ちゃんことニケのイメージ図がこちらになります

  • 23122/11/21(月) 19:18:04

    ゾロやサンジと離れた場所で、ルフィとニケは買ったばかりのお菓子を頬張る。しかしその味にルフィは首をかしげる。

    「なんだこれ?全然味がしねえぞ?」
    「見た目は美味しそうなのに、残念な味がします」

    この島の食べ物は美味しくないのだとガッカリするルフィに、ニケが食べる手を止めて話しかける。

    「ねえ、ルフィくん。本当に私のこと覚えてないですか?」
    「それがさーっぱり分かんねえ。本当に会ったことあんのか?」
    「…そっか。それじゃあ約束も覚えてないですよね」
    「約束?」
    「大きくなって、ルフィくんが海賊として海へ出た時は私を…わぁ!!」

    最後まで話し終えることなく、ニケの体が宙に浮く。いや正確には持ち上げられたのだ。
    腰を曲げたひょろりと背の高い男。目だけがぎょろぎょろと動き、顔の皮膚が蝋人形のようにピンと張っている様は異様なものだった。

  • 24122/11/21(月) 19:58:42

    「…なぜ、あなたがここにいるんです」

    とても冷えた声だった。その男に対してニケがガタガタと震えて「伯爵様…」と呼ぶ。

    「おい!そいつを離せ!怖がってんだろ!!」
    「なんですか?見ない顔ですね侵入者ですか?私恐ろしくて泣いてしまいそうです」

    口と瞳だけを動かし、他の表情筋が動かない顔でシクシクと泣くふりをする伯爵と呼ばれる男はそのまま側にいた部下にニケを渡す。上半身のみしか上手く動かせない彼女の抵抗は、相手にとって些細なものだった。

    「嘘つけ泣いてねーじゃねえか!返さねえってんならぶっ飛ばす!」
    「どうぞご随意に。しかし先にぶっ飛ばすべきものが多いのではないですか?ほら…」

    そう言ってルフィの後方から建物の壊れる音と土煙が舞う。すぐさま振り向けば、ゾロとサンジ、そしてブルックが住人と交戦していた。

    「ルフィさん大変です、ゾロさんとサンジさんの様子がおかしいんです!」

    ブルックの言葉に伯爵が眉根をピクリと動かす。

    「ルフィ…?」

  • 25122/11/21(月) 21:11:59

    その瞬間伯爵がルフィの顔を掴み、自分に見やすいように首を捻らせる。ぐえ!っと苦しそうな声を出すルフィだったが、伯爵が喋らせる前にその手を離す。

    「ルフィ…ルフィ…ルフィ…!ああ思い出しました!まさかあなたがこんなところにいるだなんて…忌々しいことこの上ない…!全くあなたのせいで私の計画が狂い出してしまいました!」

    伯爵はくるりと踵を返し城へ向かう。それを追いかけようとするルフィは、雪崩のように道を遮る伯爵の部下や住人たちによってその姿を見失ってしまった。
    4人が向かってくる人々を制圧していく。伯爵の部下はともかくとして、街の人間までもが襲ってくる。それをいなしていくうちに、ほとんどの人間を倒し気を失わせたようだった。

    「ヨホホホとんでもない人数でしたね。みなさんお怪我は?」

    他3人も数には手こずるが見た目に問題はなかった。ただ、足元に倒れる人物をみる表情はひどく強張っているようだった。

    「ゾロ、サンジどうしたんだよ、顔が真っ青だ」
    「ルフィ!みんな!いったい何が…!」

    そこに騒音を聞きつけたロビンとフランキーが現れる。

  • 26122/11/21(月) 21:42:28

    ルフィはその場にいる仲間たちにニケが伯爵と呼ばれる男に拐われたこと、そして今し方まで住人を相手取っていたことを説明する。そして改めて、ゾロとサンジに何があったのかを聞く。

    「彼女の姿を見て、冷静さを欠いたんだ…」

    そっとサンジが抱え上げた女性はぐったりとしており、死んだようにピクリとも動かない。外傷はないが、大勢の人間にもみくちゃにされ気を失ったのだろうか。
    金色のウェーブのかかった髪で顔の半分を隠す、どことなくサンジに似た女性。

    「…俺の死んだはずの身内にクソそっくりだったんだ…。似てるだけだと考えたんだが、見れば見るほど瓜二つなんだ…」

    息を飲む一味。ゾロに目をやれば、同じく動かない先ほどの少女の乱れた前髪を直している。その顔は複雑そうであり、やはりサンジと同じく昔亡くした誰かなのだろうと察するに難くなかった。

    「幽霊島という名前はつまり、死んだ人間が生き返るからということでしょうか…!?」
    「ブルック、お前じゃあるまいし死んだ人間がおいそれと生き返るかよ」

  • 27二次元好きの匿名さん22/11/21(月) 23:31:30

    面影のある住人は女の子オンリーなのかな

  • 28122/11/22(火) 00:13:37

    「おーい!みんな、大変だー!」

    ロビンたちとさらに別れて行動していたチョッパーが走ってくる。
    街中の騒音と島の様子からたった2人だけでは危険だと判断し、機動力のあるチョッパーがナミとウソップを呼びに行っていたのだ。
    だがそのチョッパーの様子ですらただならぬ様子であった。

    「チョッパーどうしたの、ナミとウソップはどこ?」
    「それが、戻ったら2人ともいなくなってたんだあああ!どこ行っちまったんだよおおお!」

    涙を流してベショベショになりながら伝えるチョッパー。しかし、船の周りに大量の足跡があったことから誰かに連れて行かれたのではないかと言う。

    突然現れた伯爵に連れて行かれたニケ、そして忽然と姿を消すナミとウソップ。城にいる男に関わっていると、全員の思考が一致する。怒りを抱き3人を取り返そうと、城を目指す。

  • 29122/11/22(火) 00:23:24

    ドンッ…
    ドンッ…
    ドンッ…
    ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
    ドアノブを無理に回そうとする音。扉を開けるように頼むように窓を叩く音。中に入れない苛立ちを孕む足踏み。騒音に包まれ、徐々に恐怖は増していく。

    「きゃあああ!」
    「うわあああ!」

    城の奥、檻の中の冷たい床の上でナミとウソップは、気絶する直前の恐ろしい状況を夢に見て目を覚ます。硬い床だったため、2人の体はバキバキと音を立てる。

    「お、おいここはどこだ?檻の中?」
    「分からない…ちょっと!誰かいるの!出しなさいよ!」

    扉を揺らすがビクともしない。ウソップが鞄を探すが、目当てのものは檻の外の机の上だった。その時、ガチャリと奥の扉が開く音がする。
    他に人がいないか、辺りを見回しながら中に入ってきたのはニケだった。

  • 30二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 07:23:58

    おっと…?

  • 31122/11/22(火) 18:29:02

    今日の分書き溜めてくるです。

  • 32二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 19:27:29

    楽しみにしています

  • 33二次元好きの匿名さん22/11/22(火) 20:29:41

    スリラーバーク編好きだから、こういう幽霊が出るのとか大好き
    続き、楽しみにしてます!

  • 34122/11/22(火) 21:22:01

    「ナミさん、ウソップさん…!」
    「ニケ、ここで何してるの!?」
    「お前も捕まったのか!」

    ニケは2人のいる檻へ向かって車椅子を進める。近くにあったらしい鍵束を手に取り、急いで鍵を開けようと一つずつ鍵穴へさしていく。しかし怯えているのかその手は震え、なかなか鍵を開けることはできなかった。

    「ごめんなさい、ご、ごめ…私もっと、ちゃんとみんなを引き止める、べきでした…」
    「なんでお前のせいになるんだよ!それよりも、早く開けてくれ!」

    やっと正解の鍵が嵌ったのか、ガチャンと音を立てて檻の扉が開く。いそいそと飛び出すナミとウソップは、早くこの場から逃げ出し仲間の元へ向かおうと決める。ウソップがニケの車椅子を押し出すと、ぞろぞろと人が歩いてくる音が聞こえる。

  • 35122/11/22(火) 21:23:05

    「やだ、誰か来る!早く逃げなきゃ!」
    「に…逃げるってどこにだよ!俺たちここがどこかも分からないんだぞ!」

    涙目になる2人に、ニケが部屋の隅を指差す。

    「その、そこの飾り棚を動かすと抜け道があります…。どうぞ、おふたりはそこから外へ、出てください…」
    「おふたりはって、ニケを置いて行けって言うの!嫌よ、助けてくれたのに」
    「お願いです、みんなで島から出て行ってください。道中、あなた達のよく知る人たちに会うかもしれません。ですが彼らは決してあなた達の知る人たちではありません、似ているだけの木偶人形です…!まっすぐ船へ行き、島を離れて…!」

    ナミたちが抵抗するも、ウソップと共にニケに抜け道に押し込まれる。抜け道の扉を閉める時、ニケの目からは大粒の涙が溢れる。

    「…ルフィくんに会ったら、伝えてください。もう一度会えてよかったって」
    「待って…!」

    止める間もなく扉が閉まる。すでに抜け道から扉を開ける術はなく、ナミとウソップはこのまま外へ出るために歩みを進めた。

  • 36122/11/22(火) 21:58:57

    拐われた3人を取り返すべくルフィ達は城へ進むが、先ほど制圧した住人達と同様、多くの人間達がそれを阻もうとする。決して強くないが、嫌になる程多い。
    そして何よりルフィ達の邪魔をするのは霧だった。街中や森の中でも霧はかかっていたが、それは薄く視界を遮るほどではなかった。しかし今はどうだろう、城にはいる手前のその場所では向かって来る住人達が突然現れてきたように見えるほど、霧は濃くなっていた。

    「邪魔だあああああ!!!」

    その瞬間ルフィの体が空気を吸い込み大きく膨らむ。顔が赤くなる程限界まで大きくなり、それを一気に突風のように吐き出す。濃くなっていた霧は薄まり、人々も風に煽られてバタバタと倒れる。
    まるで糸が切れた人形かのような異様な倒れ方に、チョッパーは思わず住人に駆け寄る。
    しかしチョッパーの口から出たのは、心配の言葉ではなく悲鳴だった。

    「ぎゃあああああ!死んでるううううう!!!!」

  • 37122/11/22(火) 22:08:50

    チョッパーが見たのは、倒れた人々の中にいる1人だった。
    それは他の住人と同様瞼を閉じ静かに倒れこむ。

    ただし閉じた瞼は片方だけだった。

    顔の左半分の皮膚がマスクをちぎり取ったようになくなり、頭蓋骨がむき出しになっていた。
    あまりの姿に皆が驚愕していると、また霧がかかり始める。だがそれは先ほどまでの視界を遮るものでなく、皮膚を失ったその顔に集まる。頭蓋骨に重なったかと思えば、徐々にその皮膚の面積は増えものの数秒で、普通の人の顔となったのだった。

    「この霧、ただの霧じゃあないのね。まるで生きてるみたい…」
    「ちょっと待ってろ、調べてみるぜ」

    フランキーが自分の頭を操作すると、顕微鏡のようなレンズが目にハマる。レンズをグリグリと回してピントを合わせて周りを見渡す。

    「なんだこりゃあ!こいつは霧じゃねえ!!」

    フランキーの驚きの声と共に、二つの影が近づいて来る。新手かと構えるが、それは拐われたはずのナミとウソップだった。

  • 38122/11/23(水) 01:15:12

    2人は仲間に再会できた喜びから仲間に飛びつくように喜ぶが、ハッと真剣な顔になる。
    大勢の人間に突然船を襲撃され、気を失ったあと連れて行かれた場所でニケに出会ったこと。これまでの経緯を伝える。

    「あいつ、俺たちにすぐに島を出ろって言ってたけどよ、取り残されたままだ!」
    「それにあの子の様子はかなりおかしかったわ。この状況が全部自分のせいだって言いたげな…」

    そしてナミは自分たちが捕らえられていた城の中での事、ニケの言伝を伝える。ルフィはニケの最後の言葉を黙って聞く。

    「ニケの言ってたっていう木偶人形って言葉で合点がいったぜ」

  • 39122/11/23(水) 01:19:35

    フランキーがナミ達の説明と、自身が見た霧の正体から至った推理を語る。
    空中に漂う霧はただの霧ではなく、人の目に捉えることも難しい極小の機械だという。先ほどの人間の頭蓋骨に集まり人の形をなしていたのも、この霧の機能であり本物の人間ではないのだと。
    それを聞いたチョッパーは慌てて倒れている人々の脈をとる。次々に確認していくが、脈打つ人間など全くいなかった。しかし先ほどの頭蓋骨は本物にしか見えない…。

    「推察通り人の遺体を使っているとしたら、私たちが森の中で見つけた墓場…あれが使われたら恐ろしい軍隊が生まれることになるわ」

    ロビンが顔を青くし語ると、チョッパーとフランキーもあの一面の墓場を思い出し唾を飲む。

    「ロビンちゃんの言う通り、今は俺たちを足止めするだけのこいつらが攻撃に回ったら厄介だ」
    「その前にさっさと大元をぶった斬ってやりゃあいい話だろ」

    9人は目の前にそびえ立つ城に足を踏み入れる。

  • 40122/11/23(水) 01:39:17

    城の扉が麦わらの一味を迎え入れるように、地響きのような音を立てながら開く。
    シルクハットを被り、顔の左右に白髪を伸ばした老人。
    側頭部を短く刈り上げ赤い髪を一つに結ぶ女性。
    鼻の長い、黒髪の病弱そうな女性。
    使用人として振る舞う彼らに、ナミとウソップ、チョッパーは顔を強張らせる。本人ではないとわかっているが、その精巧さと悪趣味さに苛立ちを感じる。

    案内されたガランとした、城の荘厳さとは真逆の薄汚れた部屋だった。
    中央には伯爵と呼ばれる男が、ソファに座り映像電伝虫から流れる映像を眺めていた。

    「あの子の忠告を聞いてこの島を出るべきでした。そして我々に関わらなければ、あなた達海賊ごときを殺す手間が省けたのに。非常に残念です」
    「オッサン、ニケを返せ」

    静かな怒りを孕むルフィの声など聞こえていないかのように、伯爵は目の前の映像をみる。

    「もともとあの子は私のモノです。私が作り、私の夢の為に存在する。あなたが関わると、私の計画にノイズが生じるのですよ、“ルフィくん”。…この時のようにね」

    伯爵が映像を指差す。映像は同じ映像を繰り返し繰り返し流し続ける。
    映し出されていたのは、フーシャ村にいた頃の小さなルフィだった。

  • 41二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 06:51:13

    伯爵怖いもの知らずだな

  • 42二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 10:24:45

    ナノマシンで動く死者を模した人形ってヤバいな

  • 43122/11/23(水) 17:33:26

    映像の中の子供達が会話に、全員が視線を奪われる。

    「なに、してるの?」
    「俺たち今勝負してたんだ!そんで俺が勝った!」
    「あ!嘘だ私が勝ったんだよ!」

    勝負をするルフィともう1人の紅白の髪の少女、そこに幼いニケが話しかける。

    「なんだと〜?じゃあ別の勝負だ!」
    「今度も私が勝つんだからね!」

    すぐさま別の勝負を始める2人に、ニケはケラケラと笑いながらそれを見ている。自分たちよりさらに幼く見える子供を前に、ルフィ達はおにいさんおねえさんになったような気分で、3人で遊び始めた。
    あっちで徒競走こっちでかくれんぼと、子供の無限の体力に物を言わせてはしゃいでいれば、マキノがジュースを持って子供達を呼ぶ。カラカラの喉に冷たい飲み物が通り、束の間の休憩を挟む。

    「お前、見ない顔だけどどっかから来たのか?」

    ルフィがニケに尋ねれば、ニケが村長と話す黒いフードを被る魔女のような女を指差す。

  • 44122/11/23(水) 17:34:00

    「船が壊れちゃった、迷子。ここでちょっとお休みしてる」
    「旅行か何かしてたの?船が壊れちゃうなんて大変ね」
    「きっと近海のヌシ仕業だな!みんなあいつに困ってるんだ!」
    「でも私たちの海賊船は襲われてないから、近海のヌシも赤髪の海賊団に恐れをなしてるのね」

    ふふんと得意げな顔をする少女に、すごいのはシャンクス達の方だろー!と言い返す。ニケは“海賊”という言葉にぽかんとして止まる。

    「海賊て、なに?すごい?」
    「「えー海賊知らないの!」」

    驚く2人にフルフルと首を横に振って答える。するとルフィが立ち上がりキラキラした顔で語った。

  • 45122/11/23(水) 17:39:59

    「海賊ってのは、この広い海を旅する強くて自由な奴のことだ!俺もいつか海賊になって海賊王になるんだ!」

    初めて聞く自由という言葉に、ニケの全身に素早く血がめぐり体を高揚させる。心臓が早鐘を打つのを抑えるように胸を抑え、ニケはルフィに恐る恐る尋ねる。

    「私も自由、なれる?海賊に…なれるかな?」
    「お前弱っちいからなー。そうだ、海賊になりたいなら俺の船に乗せてやる!そんで旅をすんだ!」
    「ほんとう?約束してくれる?」
    「おう!約束だ!」

    2人は小指を絡めあい指切りげんまんで約束をする。そして映像はまた再び同じシーンを繰り返す。

    「思い出した…おれ、昔ニケと約束したんだ。旅をしようって…」

  • 46122/11/23(水) 22:49:28

    「この映像は、霧を脳内に潜行させデータ化して抜き出したものです。必要な記憶を植え付けるのに邪魔なので取り出しましたが、こんなくだらない記憶を毎日毎日繰り返し反芻していたとは…」
    「ちょっと待て、記憶をデータ化だと!?そんなことできるわけ…!」

    思わず声をあげるウソップに、他の仲間も同様に考える。しかし伯爵は深くため息をつき首を振る。そして立ち上がったかと思えば壁にかかるカーテンを引き剥がす。中から現れたのは巨大な肖像画。

    「できる、できるんですよ。そうやって私は70年もの間、愛おしい女王を復活させて来たのですから…」

  • 47122/11/23(水) 22:50:43

    墨のように流れる黒髪という違いを除けば、真っ白な血の気のない肌をした女性は捉えられているニケに瓜ふたつの姿をしていた。

    「不死の女王ドラキュリア・ドラクラーナ!!彼女は私が用意したクローンたちに記憶を継承することで永劫の時を生きる!お前達が取り戻そうとするアレも!我が女王の記憶を入れる器にすぎない!!そのためには余計な記憶など要らない!」

    興奮し大声をあげる伯爵。頭に血が上り動きの悪い口を無理に動かしたせいか、口の周りの皮膚がベリベリと裂ける。

    「邪魔です、麦わらのルフィ。死になさい」

  • 48122/11/23(水) 22:52:49

    1スレ内で終わりそうれす。
    今日はここまで、続きは明日。

  • 49二次元好きの匿名さん22/11/23(水) 23:11:39

    クローンにナノマシンって……伯爵、元MADS?

  • 50二次元好きの匿名さん22/11/24(木) 10:31:36

    保守

  • 51二次元好きの匿名さん22/11/24(木) 15:19:45

    保守

  • 52二次元好きの匿名さん22/11/24(木) 23:55:51

    保守

  • 53122/11/25(金) 00:15:00

    その言葉を皮切りに、ルフィが伯爵に対して攻撃を始める。その拳が伯爵にあたり、壁を破壊しながら隣の広間に吹き飛ばされる。

    「あなた達が人の話をちゃんと聞く子達でよかったです。私のささやかな時間稼ぎに付き合ってくださり、ありがとうございます」

    土煙の中から現れた伯爵は人の姿をとどめていなかった。両腕は巨大な黒い翼を広げ、頭には大きな耳が立ち上がる。その姿は巨大な蝙蝠だった。
    その翼をふわりと羽ばたかせ、飛び降りた先には玉座が置かれる。玉座には黒い衣装に身を包んだニケが眠っていた。

    「ニケ!」

  • 54二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 00:16:22

    ルフィの呼びかけにゆっくりとニケが目を覚ます。駆け寄るルフィに視線を緩やかに動かし、ルフィを捉える。しかしその表情は今までの彼女とは違い、這いずる虫を見るかのように冷ややかだった。

    「待ってルフィ!彼女様子がおかしい!」

    ナミが制止する前に、ルフィがニケにたどり着く。しかし次の瞬間ルフィの体は勢いよく吹き飛び壁に叩きつけられる。
    何が起きたのかわからないルフィだが、その姿を見ていた仲間達はしっかりと見えていた。
    動きが悪いはずの足で、ニケがルフィを蹴り飛ばしたのだった。
    綿毛のようなニケの金色の髪が徐々にどす黒く変色し伸びていく。もはやその姿は先ほどの絵画の中の女王の姿そのものだった。

    「控えよ。我が前で膝をつく以外は不敬であると心得るがよい」

  • 55二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 00:16:46

    保守ありがとうごぜえます

  • 56122/11/25(金) 00:17:48

    >>54

    >>55

    名前欄の数字消えちゃってた…恥ずかしい

  • 57122/11/25(金) 01:53:09

    ニケ…女王ドラクラーナとなった彼女に伯爵が耳打ちをする。

    「奴らは女王の行く手を阻もうとする、愚かな海賊でございます。いかがでしょう、手始めに奴らを蹂躙するのです」
    「…よかろう。我が手ずから戯れてやるとしよう。貴様も転がしてやるがよい」

    ドラクラーナが飛び上がり、瓦礫から這い上がるルフィに摑みかかる。その腕は覇気によって硬化されギリギリと腕に食い込む。

    「準備運動くらいにはなれよ、小僧」
    「目を覚ませよ…ニケ!」

    愉悦に顔を綻ばせながら襲ってくるニケに対し、ルフィは防戦一方になるばかりだった。

  • 58122/11/25(金) 01:53:49

    一方の伯爵も、霧によって動く死体を使役し一味に襲いかかる。動物系悪魔の実…「バトバトの実」の蝙蝠人間となり、死体達に集中すれば超音波による攻撃、近づけば後ろ足が装備するレイピアによって邪魔される。よく知る人間に似た姿の死体達に苦戦する姿に、伯爵はさらに笑い声をあげる。

    「さあさあ皆さん、死者とのダンス楽しんでください!私と女王陛下が戦争で拵えた死体達は存分にありますよ!」
    「本当にあいつムカつく…人の一番嫌がる方法とって…」

    クリマタクトを握るナミの手に力がこもる。そしてタクトから大量の雷雲を生む。

    「みんな!悪いけどできたら避けて!!…サンダーブリード=テンポ!!」

    そう言って勢いよく雷をあたりに落とし、死者たちもその体を走る電撃に硬直し固まる。仲間達も難なく避けるが、ウソップやチョッパーが抗議の声をあげる。

  • 59二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 08:19:27

    ナミお得意の広範囲電撃、強力だけど無差別だからちょっと危ないよね(^_^;)

  • 60二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 18:06:21

    ナミさん無茶言いなさる…

  • 61122/11/25(金) 23:25:42

    続き上げていくです。完結までかけたので、ちょこちょこ上げていきます!

  • 62122/11/25(金) 23:29:12

    テヘッと舌を出しながら謝るナミ、しかしすぐ周りの様子に気がつく。雷を落とし終えたにも関わらず空中にはビリビリと電気が走る。その電気が死者から死者へ伝い、動きを鈍くさせる。

    「おいナミ!もしかしてお前のスーパーな雷撃で霧になってる機械どもをショートさせたんじゃあねえか!?」
    「えっ!本当に!?…さ、作戦通りよ!!」
    「さっすがナミさん、素敵だ♡」

    ナミの放った攻撃により逆転の目が見え一味に歓喜の色が見える。しかし伯爵はそれを見逃さなかった。

    「くだらない真似を…私があの女を始末してしまえば、霧を補充して終わりです」

    勢いよく滑空しナミを狙う。しかし伯爵の顔に何かが着弾した。伯爵は虚仮威しだと嘲笑おうとするもすぐさまその顔は苦痛に歪む。

  • 63122/11/25(金) 23:29:48

    「緑星・ラフレシア!」

    強烈な刺激臭にそのまま地面に墜落しもんどりうつ。動物系の悪魔の実によって嗅覚が強化された伯爵にとって、思わぬ攻撃に動きが鈍る。

    「ヨホホ。失礼、少々大人しくしていてください」

    ブルックが黄泉の冷気を纏わせた剣戟を浴びせ伯爵の体が凍る。この隙だと言わんばかりに、サンジとフランキーはまだ作動している霧を止めようと制御装置を探しに行く。
    しかし伯爵の目に諦めの色はなかった。必ずやかの女王が海賊たちを屠ると信じて止まなかったからだろう。

  • 64122/11/25(金) 23:31:42

    ルフィとドラクラーナの攻防は続いていた。ルフィがニケに戻す術がないかを諦めきれず、攻撃を躊躇っていたからだ。
    ドラクラーナが床に倒れる伯爵をちらりと目にし、ほんの少しだけ目を細める。

    「あれもやられたか…。奴もよく使えてくれた」

    ふとドラクラーナの手が止まる。

    「小僧、我が体を元に戻したいか?」
    「ああ、取り戻して元のニケに戻したい」
    「…そうか。よもやあの村でニケにここまで思ってくれる友ができるとは思わなかったよ」

    ルフィはキョトンとして、なんで知っているのか思わず聞く。

    「ニケを東の海へ連れて逃げたのは私…前の体の私だよ。姿はそう…魔女のようだっただろう」

  • 65二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 23:34:35

    このレスは削除されています

  • 66122/11/26(土) 01:13:42

    記憶の片隅のカケラと映像電伝虫の映像から、黒いローブの魔女のような女の姿を思い出す。

    かつてドラクラーナは長年続けられていたクローン技術と、記憶のインストールによる長寿に疲れ切っていた。それでもなお続けていたのは、すでにたった1人となった臣下の伯爵のためだった。しかしほんの気まぐれで唯一のクローンの少女と、束の間の休息として東の海へ逃げ出した。それがルフィたちと出会ったあの日のことだった。

    「結局伯爵に見つかって連れ戻されたが、あの子は1人の人間としてあの村で生まれ直した」
    「な、何が言いてえんだ?」

    ルフィの顔に混乱してると文字が浮かび上がりそうなほど戸惑う。

    「つまり人格のある人間のなかに、もう1人分の人間の記憶を入れて別人を作るなんて失敗するんだよ。可愛い臣下の為にこの体を受け入れるつもりだったが、奴が負けたのなら諦めるさ」

    ドラクラーナが向き直り両手を武装色の覇気で固める。再びの攻撃に警戒しルフィも構えた。

    「女王としての最後は戦いの中で終わらせてくれ、未来の海賊王よ」
    「…俺が勝ったらニケを返してもらうからな」
    「ああ…約束だ」

    覚悟を決めた2人が最後にぶつかる。

  • 67122/11/26(土) 12:44:17

    重なる拳の衝撃波からか、それとも2人の王がぶつけあう覇気のせいか。城全体が揺れ、広間の天井が崩れる。空には天井の代わりに黒い雲がかかっているが、それが徐々に晴れて行く。
    拳を合わせて行くうちに、ドラクラーナの体が大きく傾く。無理に動かしていたが、車椅子を必要とする足についに限界がきたようだった。ルフィが大きく振りかぶりその拳を叩きつける。腕でガードするも弾かれ、その体に拳が沈む。
    ガタリと膝をつくドラクラーナだったが、その顔は晴れていた。

    「…負けだな。約束は守る…っ!」

    最後まで言い切る前に、ドラクラーナのその体にレイピアが突き刺さる。それは伯爵が使っていたものだった。

  • 68122/11/26(土) 12:47:25

    「裏切り者…私を捨てるのか…!裏切り者!お前はドラクラーナじゃない!偽物が!!」

    人間の姿に戻り体を動かせるようにしたことで、伯爵は自由を取り戻していた。再び巨大な蝙蝠に変身し立ち上がった。

    「てめえいい加減にしろよ、男なら諦めも肝心だぞ」

    ゾロが刀を向け威圧するも、もはや正気とも言えない伯爵にその言葉も届かない。
    伯爵が足元に倒れる死者を1人掴みゾロに投げつける。しかしそれを見てゾロは静かに刀を構え、死者を避け伯爵に斬撃を与える。
    体から血を吹き出しながら倒れる伯爵を背にゾロは投げつけられた死者を寝かせる。奇しくもそれは幼馴染の姿をしていた。

  • 69122/11/26(土) 20:04:07

    体にレイピアが刺さったドラクラーナをルフィが抱きとめ、急いでチョッパーを呼ぶ。

    「ああまずいなあ…せっかく体を返すと約束したのにこのザマとは…」
    「チョッパーなら治してくれる!だから死ぬなよ!」

    ルフィが必死に呼びかけるもだんだんとその瞼を閉じ、その体から力が抜ける。それを見ていたナミや他の仲間たちも息を飲む。
    ドラクラーナの髪が色を薄めていきニケの髪色に戻る。約束を果たすようにその姿は完全に元の姿に戻った。

    「ぐぅ…すぴー」

    張り詰めた空気の中で間の抜けた寝息だけが響き渡る。それは死んだと思っていた彼女から漏れていた。

    「寝ただけかよ!ややこしいな!!」
    「ほぎゃあ!」

  • 70122/11/26(土) 20:04:42

    ルフィが思わず声をあげるとニケの体がびくりと震え、間抜けな声と共に目を覚ました。
    目をパチクリとさせ周りを見渡しすぐさま起きた事を理解する。チョッパーが傷を診ると、重要な臓器も傷付かず奇跡的に軽傷で済んでいたらしい。

    もはやニケと麦わら達しか残らない島に夕陽がさす。オレンジ色に輝く太陽を、機械などではない本物の水蒸気を含む霧がキラキラと反射させる。

    「幽かに麗しい島…」

    ポツリと呟くニケにルフィが聞き返す。

    「ドラクラーナさんの記憶がまだ少し残ってるんです…。この島の本当の名前は幽麗島って言うんです…本当に、綺麗だなあ…」

  • 71122/11/26(土) 20:08:51

    「私これからは海に出て世界を見ようかと思います…へへっ」

    傷の手当を終えたニケが宣言する。
    今まで海上の小屋に閉じ込められて育ち、自分を縛り付けるものは何もなくなったと気が付いたのだ。束の間のルフィとの街中の散策で見知らぬ物に出会う楽しみを見つけ、この広い海に出ようと決心した。

    「女王様ではない私ではやはり強くないので、か…海賊は難しいですから。ルフィくんとの約束、叶いませんね…すみません」
    「ちょっとニケ、航海術もないのにどうやって海に出るつもり?」
    「怪我しても治療できるのか?」
    「食事もちゃんとできるか心配だなあ」
    「ヨホホ、1人の海原で寂しさを紛らわせる音楽はできますか?」
    「海獣に会ったら食われちまいそうだしな」

    続々とニケに詰め寄る一味。何も知らないニケに対して当然と言えば当然な疑問ばかりだった。

  • 72122/11/27(日) 01:02:54

    「あっあっあっどうしよう、どれもできないです…すみません」
    「じゃあ俺たちの船に乗れよ」

    アワアワとするニケに大笑いしながらルフィは自らの船に誘う。

    「でも約束と違うのに、いいんですか…?」
    「いいじゃねーか!海賊にならなくても旅はできるんだからよ。分からねえ事は俺たちが教えてやる!」

    ほんの少しの間麦わらの一味に見習いがいた。島をほんのいくつか回る間の短い時間だったが、航海術や医術を学び襲い来る敵への攻撃方法や照準の狙い方を覚え、1人でもさみしくないように美味しいご飯の作り方や歌をうたうことができるようになった。
    何よりも大切な友達とその仲間と旅をしたという、かけがえのない想い出を手にすることができたのだった。
    大切な人たちから受け継いだものを胸に、少女はまだ見ぬ世界を目指して海に出た。

    おしまい

  • 73122/11/27(日) 01:06:12

    これにて麦わらの一味と幽霊島はおしまい!

    長々書きましたが初めてSSを書いたので、お見苦しいところもあったと思いますが書き上げることができてよかったです。
    ここどういう意味だみたいなのあったら、答えます!(めちゃくちゃ端折ったので)

  • 74二次元好きの匿名さん22/11/27(日) 02:45:27

    お疲れ様でした!
    ニケはこれから一味と一緒に強くなるのかな

  • 75二次元好きの匿名さん22/11/27(日) 14:42:24

    保守

オススメ

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