- 1二次元好きの匿名さん22/11/24(木) 22:30:56
一仕事を終えて校外へ足を伸ばす。ことさらデスクワークが多くなっている中堅トレーナーの息抜きである。チームを持つようになってからの雑務とは別に、トレーナー会の役職まで回ってきてしまったが故の雑務が割りと精神上の負担にはなる。こういった仕事を苦にしないウマ娘を彼は担当しているが、彼女のことはそういった意味でも尊敬している。
見慣れた河川敷の道を冬の風を感じながら歩む。凍えるような寒さとまではいかない。遠くからウマ娘たちの掛け声が聞こえる。こうしているとトレセン学園に入ったばかりの頃、まだ担当すら持たなかった頃のことを思い出す。懐かしい記憶に耽ろうとしたトレーナーの横を、颯爽と一人のウマ娘が駆け抜けていく。
一瞬でもわかる凛とした雰囲気、レース場でなくても人目を引く嫋やかな黒髪。そんなウマ娘が駆け抜けた背中を思わず振り返ってしまう。
が、彼の記憶には彼女の姿はまだ無い。となると、恐らくはまだターフに出ていないウマ娘ということになるだろう。
「なるほど、彼女は…デビュー前のウマ娘だろうか」 - 2二次元好きの匿名さん22/11/24(木) 22:52:59
川沿いのベンチに腰をかけ、ぼんやりと彼女の駆ける先を目で追う。姿はとうに消えているが、向こう岸の道を嫋やか髪のウマ娘が髪を靡かせて駆けるのがみえてきた。
そんな彼女を見て、目を細める。
「明らかにオーバーワークですね」
だが、彼の目にはただそのウマ娘が無茶をやっているようにも見えない。やろうとしていること自体は計算づくに見える。体がまだまだ追いついていないことをやろうとしていることに問題がある。
「指導者の立場としては放っておけない、か」
ウマ娘には頑固な娘も多いので素直に聞くかはともかく、この場合には忠告の一つでもするのがトレーナー業にかかわるものの役目であろう。それに何故だろうか。彼女がターフを駆ける姿を空想してしまう。が、その湧いてきた想いと裏腹に何故か自分の腰が重い。
そのことを疑問に思う刹那に、胸元にトレーナーのバッジをつけた爽やかな男が彼の横を通り過ぎて彼女の元へ向かった。
妙に絵になる爽やかなトレーナーと黒髪のウマ娘が話し込んでいるのを見ると、いつのまにか腰の重さは消えている。これは彼にまかせろ、ということなのであろうか。不思議なこともあるものだ。彼らから背を向け学園に向かいつつ、からりと彼は笑って、小さな声で呟いた。
「これは、振られてしまったかな?」 - 3二次元好きの匿名さん22/11/24(木) 23:24:22
「ほう?それはどういう意味かな?私に聞かせてくれるかね?」
一瞬そのトレーナーは顔を引きつらせる。もっともこの学園で聞き覚えのあるウマ娘の声を耳にしたからだ。
「盗み聞きのつもりはなかったけれど、君がやたら嬉しそうな顔で独り言を言うものだからどうしても気になってね」
一見平静だが、付き合いの長さで少々ご機嫌斜めなのは流石に察すことは出来る。が、別に疚しいことは無い。
「なに、気になるウマ娘が一人いてね」
「ほう?それは珍しい」
目を丸くしつつもそのウマ娘は耳をピンと立てる。
「すると、つまり、君は新しく担当を増やそうとしたということかな?」
至極語調は冷静だが妙に迫力がある。これも皇帝の名を冠するが故か。しかしその原因が稚気にあることは見て取れるので、トレーナーの瞳にはむしろそれは彼女の可愛げの表出に映る。
「…何か私が可笑しいことをいったかな?」
「いいや、ただ君は前には私に新しいウマ娘を担当しては?と言っていたような覚えがあったからね」 - 4二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 00:02:49
「皇帝としては、と言っただろう?それにチームを持つことには反対しなかった。だけれども、私個人としての気持ちも君には伝えたと思うのだが?」
これ以上のらりくらりとかわそうとすると拗ねるな、とトレーナーはそのウマ娘のわずかに膨らむ頬から推察する。
「ああ、まぁ気になりはしたけれども、声をかけたわけでもないからね」
「…なのに、振られた?」
皇帝は訝しげな目でトレーナーを見やる。
「なに、美しいウマ娘には私のような草臥れた男は似合わんということさ。相応しいフレッシュなトレーナーがついたようだ」
「…マルゼンスキーのいうナウでヤングな、ということか。それにしても君だって草臥れてるようには見えないが」
最近妙に皇帝は彼女の友人に悪い影響を受けている気がしてくる。 - 5二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 00:05:18
次回へ続く…になるかはわかりませんが眠気にまけそうなのですみません…勢いで書くんじゃなかった
- 6二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 00:07:25
ほう…いいものですな…そして筆者は例のお方とお見受けする
長期シリーズ読んでるとスッとわかるのが嬉しい瞬間ではある
まぁまた気が向いた時に書いてくれ - 7二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 00:09:05
背後にライオンが居たよトレーナー…
- 8122/11/25(金) 00:13:21
やっぱり書かないと書けなくなっちゃうものですな
というかフラトレかきまくってた時期がおかしかったんですが。
明日書ければ明日、そうでなければまた次回立て直してかくとはおもいまする。 - 9二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 00:26:29
ルドルフ独占欲どんなもんやろうか
- 10二次元好きの匿名さん22/11/25(金) 00:28:51
ルドトレを毛頭手放すつもりはない(公式)ぞ