朝九時五十分。俺は、十時開店のモールの入り口にいた。

1二次元好きの匿名さん22/11/26(土) 18:20:22

目的はもちろん話題沸騰中の彼女だ。
周囲では餌を目の前にぶら下げられた獣のような目をした十数人のライバル達が自分と同じように大人しく決戦のゴングを待つ。

緊張感に似た何かが満ちた空気が、辺りを覆う。
言語を介することをなくとも、皆の狂気にも等しい闘志をじんわりと感じる。もう12月だというのに、体中から汗が染みだす。

五分、六分、七分。時計は冷酷にその針を進めてゆく。針が一つ進むたび、周囲の緊張も増してゆく。
八分、九分、十分。時計の針が十時を指し示すと同時に自動ドアの扉が静かに開く。それと同時に走り出す複数の影。開戦のゴングは鳴った。
俺も遅れぬよう、緩やかに駆け出す。今日の為に、何度も綿密なルート構築を行ってきたのだ。負けるはずはない。
たくさんのライバルが、周囲の迷惑にならぬよう速度を抑えつつも、丁寧に人を避けて進む。まだ誰もいないスカレーターを駆け上がり、店舗に滑り込む。
そして皆その足を止めることなく、迷い無く一つの棚に向かう。

2二次元好きの匿名さん22/11/26(土) 18:28:21

ゴールが見えた！一瞬歓喜が湧き上がるが、それはすぐに不安に塗り潰される。すでに人がそれなりにいる。マズい。不安が一層足を早くする。
人混みにたどり着いた俺は、懸命に人々を掻き分ける。まるで荒れ狂った海の中を遠泳しているようだ。そして目的地に辿り着き、伸ばした手でソレを掴む。
手元には確かに目的の箱。
俺は勝利したのだ。

ふと気になって再び棚を見る。
どうやら俺の物が最後の一つだったようだ。
その棚にはもはや何も残されてはいなかった。
時刻は十時二分。総準備数であろう十数個は、その二分の間に幻かのように棚から消えた。

まあつまり何が言いたいかっていうと
「開店待ちしてミオリネ買いにいったらリリネル共々二分で全部売り切れてたわコワ〜…」ってことです