【FILM N.G.最終章】ルフィ「おいウタ!!」 ウタ「え!? ルフィ!?」 part10【SS】

  • 1FILM N.G.22/11/30(水) 20:37:18
  • 2二次元好きの匿名さん22/11/30(水) 20:39:53

    いよいよか…ここまで追い続けた甲斐があった

  • 3FILM N.G.22/11/30(水) 20:42:14
  • 4二次元好きの匿名さん22/11/30(水) 20:56:13

    縦乙
    ロゴができた

  • 5二次元好きの匿名さん22/11/30(水) 21:03:25

    保守

  • 6二次元好きの匿名さん22/11/30(水) 21:09:32

    支援

  • 7二次元好きの匿名さん22/11/30(水) 21:22:26

    立て乙です!

  • 8二次元好きの匿名さん22/11/30(水) 21:22:54

    たて乙!

  • 9二次元好きの匿名さん22/11/30(水) 21:26:44

    たておつ

  • 10二次元好きの匿名さん22/11/30(水) 21:26:54

  • 11二次元好きの匿名さん22/11/30(水) 21:29:02

    ロゴカッコいい

  • 12FILM N.G.22/11/30(水) 22:04:12

    ロゴはどう作ったら良いのかわからねェから継ぎ接ぎしたり描き足したりしながら作ったんだ。こういうの綺麗に作れる人マジで尊敬する

    それじゃあちょっと書けたので更新します

  • 13FILM N.G.22/11/30(水) 22:05:16

     元帥からの指令を受けた大将は矛を収めるとルフィ達に背を向ける。

    「ままならないね~本当に」

     討つなら絶好の機会……しかしウタの未知なる力によって戦闘行為を封じられそれを破る手立ても今は無いとなれば撤退も致し方なし。

    「麦わらのルフィ。あんたァやっぱり不思議な運を持ってやすね」

     ボルサリーノとイッショウは後続する部隊と合流する為に来た道を戻ろうと歩き始める。

    「……セラフィム? どうしたんで? 一時撤退ですが」
    「…………」

     座ってウタを見詰めていたセラフィムはイッショウから再度呼び掛けられたことで腰を上げる。そうして大将の後を追い掛けるのだが何度か後ろを振り向いてはウタを見る。その視線にどんな意味が有るのかわからないウタは取り敢えず手でも振っておく。

    「……えーっと……ばいばい?」

     本当に何となくだった。命を狙ってきた相手からの返事など期待はしていない。だからだろう……

    「バイバイ」
    「――――――」

     セラフィムがそう言ったことにウタは目を瞠る。

  • 14FILM N.G.22/11/30(水) 22:05:56

    無表情、しかしあの感情の読めない笑顔と比べれば素に近く思えるようなそんな表情でセラフィムは別れの言葉を告げた。
     ウタはそんなセラフィムに何かを言おうと口を開くが、しかしその時にはもう黒翼を大きく広げて飛び上がり大将2人の手を掴むと瞬く間に空高く飛翔して行ってしまった。

     大将とセラフィムが去った。それを見送ったルフィ達は―――

    「ぶへェ~~!!! 疲れたァ~~!!!」

     全員その場に座り込むか寝そべるかして緊張を解いていた。本当にもう色々と限界だった、ウタも彼等に倣って覚醒した能力を解除すると寝転がるルフィの隣りに腰を落とす。その際に消えていく黄金の蕾が僅かにだが“咲きそう”に見えたのが……何かの見間違いかとウタは気に留めずルフィに話し掛ける。

    「……人生で一番疲れた日かも……」
    「そうか? おれは何度目かもうわかんねェや」
    「あんた一体どんな人生歩んでんのよ」

     死に掛けた回数なんてもう片手では数えられないぐらいになってしまったルフィ。そんな壮絶な生き方を軽い様子で語る彼にウタはちょっと引く。それで生き残っているのだからルフィの生存能力か悪運は恐ろしく強いのだろう。

    「本当に無茶ばっかりして。こんな生き方続けてたんじゃ命が幾つ有っても足らないでしょ」
    「平気だ。おれは強ェからな!」
    「言うじゃない。どうせ仲間の皆に助けてもらってるくせに!」

     ウタはからかい混じりにそう言う。どうせ反論してくるだろうと思っての言葉だったがルフィの返答に意表を突かれることとなる。

  • 15FILM N.G.22/11/30(水) 22:08:53

    「当たり前だ」
    「……え?」
    「おれは誰かに助けてもらわねェと生きていけねェ自信がある!!!」
    「……!!?」

     堂々と言うにはあんまりな言葉にウタは絶句する。しかし周囲の仲間達は気を悪くする所か楽しそうに笑っている。
     そして誰よりも一番良い笑顔でルフィはウタを見上げる。

    「だからさ、ウタ」

     突き上げた拳をウタの目の前に掲げてルフィは伝える。

    「お前に何かあったら……おれ達が助けてやる」
    「――――――」
    「しししし!!」

     助ける。その言葉通りウタを救ったルフィの言葉。それを聞いて目の奥が熱くなったウタは笑顔を浮かべてその熱が溢れないようにする。

    「……そっか……うん、わかった! 何かあったら助けてって呼ぶね!」
    「おう!! 任せとけ!!」

     ルフィがそう言うと仲間達は続くように口を開く。

  • 16FILM N.G.22/11/30(水) 22:10:31

    「おいおれ達も忘れんじゃねーぞルフィ!!!」
    「そうだぜルフィばっかりカッコ付けんじゃねェぞ!」
    「おれも全力でウタちゅわんを助けるよー!!」
    「そうよ! 荒事ならこいつらに任せときなさい!」
    「怪我や病気もおれが治すからな!」
    「ふふふ。私も手を貸すわ」
    「あう! スーパー任せとけや!」
    「同じアーティストとして助力出来るかと」
    「わしも力になろう」

     海賊が言ってるとは思えないお人好し過ぎる言葉にウタは腹を抱えて笑う。

    「アハハハハハハ! あ~可笑しい! 笑いすぎて涙出ちゃうよもう……でもありがとう皆! すっごく嬉しいよ!!」

     微笑みながら目尻を手で拭うウタ。そんな彼女の頬をふわりとした温かな空気が撫でる。

    「あ……」

     温もりの出所、それは水平線の彼方。ウタとルフィ達も同じ方向へ顔を向ける。

    「……夜が……明ける」

     眩しさに目を細める。それはもう二度と見ることは無いと思っていた輝き。
     太陽が昇る。その大きな光がエレジアを照らしていく。

     長かった夜が明けた。太陽がもたらしたその光はルフィ達やウタに束の間の平穏を与えてくれる温かな光であった。

  • 17FILM N.G.22/11/30(水) 22:13:00

    本日の更新はここまで。次から息抜き回を挟んでのフィナーレに向かって行く予定です
    最終章が何スレ分になるかは未定ですがどうぞ最後までお付き合いください

    それではここまで読んでくれてありがとうございます

  • 18二次元好きの匿名さん22/11/30(水) 22:13:39

    お疲れ様です。最終章頑張ってください‼︎

  • 19二次元好きの匿名さん22/11/30(水) 22:52:48

    ここまでも最終戦並みの盛り上がりだというのに最終章はこれからとは
    この物語底が見えねェ…
    そしてウタウタの実の解釈が好きすぎる

  • 20二次元好きの匿名さん22/11/30(水) 23:35:58

    なんやかんやでpart1からもう3ヵ月か……
    ここまで来たらもう取りあえず頑張ってくれ!!としか言えない

  • 21二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 06:15:12

    平穏無事に終わりますように……

  • 22二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 12:55:53

    楽しみだ

  • 23二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 20:24:10

    保守やで

  • 24FILM N.G.22/12/01(木) 21:20:12

    保守ありがとう。色んな方々に読んで貰えて嬉しいかぎりです
    それではちょっと書けたので投稿します

  • 25FILM N.G.22/12/01(木) 21:21:14

     苦しい戦いを乗り越えたルフィ達。緊張の糸が解けた彼等は最低限の手当や事後処理をすると……辛うじて屋根の残る建物を見繕って(※住居として使っていたエレジアの城は崖の崩落と共に壊れた。ローの所為で)気を失うように眠りに落ちた。深い深い眠り、一度落ちれば自然と起きるまで何が有っても目覚めないような眠り。

    「―――う~ん、何でだろう?」

     ウタもそれは例外では無かった。その筈だった。

    「めちゃくちゃ元気なんだけどわたし!?」

     全員が寝静まっている中で何故かウタだけは昼前に目覚めてしまった。
     夜明けからまだ3~4時間ぐらいしか経っていない。それだけの睡眠でウタはすっかり回復してしまっていた。寧ろ昨日までの自分より調子が良いまで有る。死に掛けていたのが嘘のようだ。

    「どうしよう、皆まだ寝てるしなァ……痛たたたた。自分で刺しといて何だけど馬鹿じゃないこれ?」

     ウタは左手の包帯を巻き直そうと枕元に置かれていた治療道具に手を伸ばす。傷口は2人の医者によって縫い合わされ治療を施されているが僅かに滲み出る血が包帯を赤黒く汚していた。ウタは痛い痛いと言いながら張り付いたそれをベリベリと剥がし傷薬を塗って新しい包帯に巻き直した。

    「ん! これでよし!」

     セットもしていないボサボサの髪を適当に手櫛で撫で付けるとそのまま外へと向かう……廃墟の家なので扉も何も無いが。

  • 26FILM N.G.22/12/01(木) 21:21:58

     そうして外へと踏み出すと全身で日の光を浴びる。布団も無い固いベッドで寝てた体を解すように「う~ん!」と伸びをしたウタは今から“すべき”ことに取り掛かる。

    「さ~て……ライブの準備するぞー!!!」

     そう。ライブはもう明日に迫っているのだ。




    「―――何て言ったは良いものの……」

     ステージを見渡して独りごちる。

    「やること無いね」

     先日まで麦わらの一味総出で作業に取り掛かってくれたステージはこれ以上手の施しようが無い程に完成していた。流石に当初予定していた“ウタワールド”のライブステージと比べれば見劣りするだろうが……エレジアの現状を思えば上等過ぎるぐらいの出来映えである。

    「すっかり綺麗になっちゃって」

     メインステージに立つと以前までとの違いがはっきりと理解出来る。
     所々に罅割れや破損が目立っていたメイン・センターステージも一部を新しい石材に置き換えたりパテを塗り込んだりして新品同然に仕上がっており、備え付けられたカラーライトで照らせばそれだけで見る者を楽しませてくれるだろう。出来上がったこれを見せられた時はつい「変態みたいな出来映え」とちょっと失礼なことを言ってしまったりもした……まあルフィの所の船大工は喜んでいたので無問題だったが。

  • 27FILM N.G.22/12/01(木) 21:22:33

     ウタはステージの具合を確かめるようにステップを踏む。そして軽やかな足取りでメインステージからセンターステージまで一息に駆け抜ける。視界全体に広がる客席は当たり前だが無人、しかしこれも明日になれば空きが無い程に埋まるのだろう。

    「ふぅ」

     歌無しで振り付けを一通り熟すと休憩を入れる。クールダウンを兼ねて客席まで移動してゆっくりと歩いて回る。

    (……やっぱりおかしい)

     ライブ当日の来客の動線を確認しながらウタは自らの肉体の変調に意識を向け―――

    (能力を酷使して、吐いちゃったけど毒キノコ食べて、そして……トットムジカで死に掛けて)

     客席から小島のアリーナ席まで“跳躍”する。

    「よっ……と!」

     まるで飛ぶようにウタの体は跳ね……そして危うげ無く着地する。客席から一番近いアリーナ席だったとはいえ驚くべき跳躍。

    「まあルフィや皆と比べれば大したこと無いんだろうけど……」

     ウタにしてみれば大した身体能力なのである。ダンスやパフォーマンスで動き回るので運動には自信が有る方だったが今の跳躍力は以前の倍以上になっていた。

    「本当にどうしちゃったんだろうわたしの体?」

     アリーナ席からアリーナ席へ、そうしてセンターステージに程近い枡席へと飛び移って行ったウタはそこで「う~ん」と悩ましげに首を傾げる。ルフィ達に用意した枡席でウタは腕を組んで考えて考えて……

    「―――まあいっか! ぴょんぴょん動いた方がファンの皆も喜んでくれるでしょ!」

     気にしないことにした。何なら前よりも動けるようになってラッキーぐらいに思ってるのがこの歌姫である。
     だって仕方が無い、自分が動物(ゾオン)系の悪魔の実の能力者だなんて知らないんだから。覚醒したから身体能力や回復力が強化されたなんてわかる筈が無い。寧ろ知っている人間が誰一人として居ないので一生知らないままの可能性が大。ルフィの友達やってただけは有るメンタルの持ち主である。

  • 28FILM N.G.22/12/01(木) 21:23:57

    短いですが今日は以上です。読んでくれてありがとうございました

    元気なウタちゃん書くの楽しいです

  • 29二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 22:06:44

    乙です

  • 30二次元好きの匿名さん22/12/02(金) 00:05:12

    さらっと貶されるトラ男で草
    修繕費払わないから……

  • 31二次元好きの匿名さん22/12/02(金) 00:21:53

    よくよく考えなくても序盤にルフィと遊んでた時以外はトットムジカ戦の最後辺りまではずっと曇りっぱなしだったから…
    元気なウタはなんぼあってもいいですからね

  • 32二次元好きの匿名さん22/12/02(金) 00:26:02

    新時代マークを再びつけるかどうかは気になる

  • 33二次元好きの匿名さん22/12/02(金) 06:32:41

    おはよう
    ほしゅ

  • 34二次元好きの匿名さん22/12/02(金) 12:08:57

    保守

  • 35二次元好きの匿名さん22/12/02(金) 19:45:19

    保守

  • 36二次元好きの匿名さん22/12/03(土) 05:07:25

    保守

  • 37二次元好きの匿名さん22/12/03(土) 11:57:03

    ほしゅ

  • 38二次元好きの匿名さん22/12/03(土) 20:27:32

    保守

  • 39二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 04:24:46

    守るっつってんだろ!!

  • 40二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 07:25:22

    当たり前だ‼︎

  • 41二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 14:43:10

    保守

  • 42二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 21:18:54

    保守

  • 43FILM N.G.22/12/04(日) 23:27:19

    生存報告。ちょっと色々と立て込んでて書けてなかったですごめんね
    保守してくれたり続きを待ってくれたりした方々本当にありがとうございます。明日は更新出来そうなのでもうしばらくお待ちください


    急に冷え込んできたのであったかくして寝てくださいね。それではおやすみなさい

  • 44二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 23:28:09

    続き楽しみにしてます‼︎

  • 45二次元好きの匿名さん22/12/05(月) 06:25:22

    保守

  • 46二次元好きの匿名さん22/12/05(月) 11:41:31

    保守

  • 47二次元好きの匿名さん22/12/05(月) 19:00:50

    ほしゅ

  • 48FILM N.G.22/12/05(月) 21:50:06

    保守感謝です。長らくお待たせしました
    今回の更新はちょっとした能力検証回になります

  • 49FILM N.G.22/12/05(月) 21:54:00

     ウタはそうして少し助走を付けるとセンターステージ目掛けて幅跳びを敢行、危うげ無く降り立つと柔軟をしながら入念に“準備”を行う。

    「じゃあ試してみよっか、新しくなった力!」

     昨夜の戦いから様変わりしたウタウタの実の能力。ウタは今日それをライブ当日までにどう変質したのか確認する為にこの場所に赴いたのだ。

    「―――Ah~~♪―――」

     ウタは軽く発声を行いながら能力を使用する。そうすれば以前までとの違いは直ぐにわかった。

    (……やっぱり“ウタワールド”は無くなってる……わたしだけの夢の世界が)

     物心付いた頃から自分の中に存在していたもう一つの世界ウタワールド。それが一切感じ取れなくなっていたのをウタは自分の胸に手を当てながら受け止める。

    「さみしいな……」

     半身を失ったかのような寂寥感。歌を歌えばいつだって自分の心に寄り添ってくれていた世界が消えた……それを噛み締めて彼女は前を見据える。

    「でも、これが皆にとっての当たり前なんだ」

     手放したことを後悔しない。何故ならこの気持ちは言葉通りの寂寥感、別離に伴う隙間風。ウタの心に生まれた隙間にはもう新しい風が吹き込んできてくれている。

  • 50FILM N.G.22/12/05(月) 21:54:42

    「……楽しい歌にしてあげるって約束したしね」

     魔王の力なんかでは無い本来の力で以て“彼女”との約束を果たす。それが世界の平和を夢に見て、しかし世界に絶望してしまった“彼女”に贈れる唯一の餞(はなむけ)になるだろうから。

    「うん! しんみり終わり! 検証検証!! ライブまで時間無いんだし!!」

     気を取り直すと更に能力の検証を進めていく。

    「―――あーあーあー♪―――……う~ん何だろう? マイク使ってないのに使ってる感じ?」

     ウタワールド消失の次に気付くのは声量の変化だった。元々地声でもかなりの声量を誇っていたウタだが能力を併用した時の歌声はその比では無い。拡声器(マイク)を用いず同等以上の声を周囲に響かせられるようになっていたのだ。
     そして歌声の変化はそれだけでは無い。

    「―――ラ~♪ Ah~♪ ……ラ(Ah)~~♪―――……ってヤバ!? 独唱(ソロ)なのに二重唱(デュエット)出来そう!!? ぅははは~気持ち悪っ!!? でも楽しいんだけど!!!」

     歌声を“重ねた”。しかも同じ歌を重複させるのでは無くそれぞれ独立した歌を重ねられたのだ。人体でそれを行う不自然さは感じるがそれ以上にウタはこれを気に入った。

    「練習すれば三重唱(トリオ)でも四重唱(カルテット)……ううん、もっと沢山だって出来る。これは歌の幅が広がっちゃうね~」

  • 51FILM N.G.22/12/05(月) 21:55:37

     覚醒能力の一つである“風に乗る歌声”で上機嫌のままウタは能力を更に行使する。

    「ふんふん……これは海軍の大将が来てた時も出せてたな~。使い心地はウタワールドでの創造と似てる? でもこっちのは実体無しの立体映像みたいな物だね」

     ウタワールド内で行っていたように現実世界でも色彩豊かな音符や五線譜、円を描く虹に光の雨、果ては玩具やぬいぐるみまで宙に浮かべる。それらは手を伸ばせば触れられそうな程の現実感(リアリティ)を持っている、だが実際には触れずに透けるだけで其処に存在した物質では無いことが理解出来る。
     一言で言ってしまえば幻影。普通の人には見かけばかりのハリボテにしか思えないだろうが……ウタは別の視点から評価する。

    「……これも中々良いね。影響表現(エフェクト)として使えばこれ以上に優秀な力は無いんじゃない?」

     ウタはそう言いながら“花火”を打ち上げ光弾がピュ~と空高く上がって行きパーンッと“音を立てて”咲き燃えるのを確認すると頷く。

    「音の再現も出来る、っと。ふ~ん……じゃあこれは?」

     試しにグランドピアノの幻影を目の前に作り出して鍵盤を指で叩く。勿論触れはしないが……そのピアノはウタが“設定”したように指で触れた鍵盤に対応した音を奏でた。
     幻影に条件付与を行えることを確認出来たウタはその凄さに反して微妙そうな顔をする。

    「あ~……これはちょっと難しい。“重ね歌”一つ分……いや2つ分? ぐらいの意識をずっと割かないと維持出来ないや」

     花火のように単純で一瞬だけの音ならそう難しくは無いが楽器に関してははっきり言って割に合わない。これなら実物を用意した方がずっと楽である

    「でも良いフレーズやメロディが思い付いた時は即興で試せるから良さそう。それにこの能力……ライブをすっごく盛り上げられそう!」

  • 52FILM N.G.22/12/05(月) 21:57:02

     ウタはウタワールドの中でしか出来ないと思っていたファンを楽しませるアレやコレやを思い浮かべて色々とライブ当日の計画を組み直していく。
     もう一つの覚醒能力である“幻想を映す力”も非常に有用そうで更に御満悦になるウタ。

    「どっちも全然疲れないから使いやすいし楽しい~♡ ……で、最後の能力だけど―――」

     そうして二つの能力を確認したウタ。彼女最後に海軍大将との戦いで使ったあの戦闘力を奪う力を発動してみる。

    「……これはいったい何なんだろう?」

     ウタは能力発動と共に足下に生まれた黄金の結晶を屈んで見る。初めて使用した時との違いは小さな物がたった一つだけしか生まれなかったことか。

    「う~ん……やっぱり蕾っぽい。何かの花なのかな?」

     ウタが蕾と称したそれの出現に伴いシャボン玉のような光球が発生する。これも能力に付随する現象なのだとここで知る。それに触れればルフィが言っていたように温かく癒やされる気持ちになった。

    「こっちはちょっと疲れやすい……気がする」

     能力的には最初の二つよりも疲労度が高く多様は出来ないとウタは考えた。ただしそれもウタワールドを使っていた時と比べれば軽すぎる程の疲労度ではある。
     そうしてウタはそれを最後に能力を解除する。

    「能力の検証はこれぐらいで良いかな?」

     概ね今の能力に満足したウタは次にすることを考えて―――……ぐぅ~とお腹が鳴った。

    「……そういえば起きてから何も食べてないや。皆の分も用意した方が良さそうだね」

     時間的には昼食と言った所か。ウタは城の崩壊と共に食料も潰れてしまっただろうと(※ローの所為で)、自然で採取出来る物で何か代用出来ないかと考えながらルフィ達が眠る場所へと戻るのであった。

  • 53二次元好きの匿名さん22/12/05(月) 22:01:12

    一人で多重ハモリ出来るの凄いし強いな
    某ゲームのヒュムノス思い出したわ

  • 54FILM N.G.22/12/05(月) 22:03:16

    本日の更新はここまでです。読んでくれてありがとうございました
    そんな訳で『N.G.ウタ』の新しい能力はこんな感じになりました。ウタウタなので歌にちなんだ能力をメインにしてみました


    しかし本編は相変わらず面白い。早く次の話が読みたいですよ!
    それではみなさんおやすみなさい

  • 55二次元好きの匿名さん22/12/05(月) 23:52:33

    VRがARになったみたいな変化ですな
    よくここまで原作でもありそうな設定を思いつけるもんだと感心する

  • 56二次元好きの匿名さん22/12/06(火) 07:39:31

    保守!

  • 57二次元好きの匿名さん22/12/06(火) 15:19:49

  • 58二次元好きの匿名さん22/12/06(火) 19:33:01

  • 59二次元好きの匿名さん22/12/07(水) 00:03:52

  • 60二次元好きの匿名さん22/12/07(水) 06:37:17

  • 61二次元好きの匿名さん22/12/07(水) 07:22:23

    ローお前船降りろ

  • 62二次元好きの匿名さん22/12/07(水) 15:54:24

    保守

  • 63二次元好きの匿名さん22/12/07(水) 22:42:41

    保守

  • 64二次元好きの匿名さん22/12/08(木) 06:57:07

  • 65二次元好きの匿名さん22/12/08(木) 13:00:31

    保守

  • 66二次元好きの匿名さん22/12/08(木) 21:24:06

  • 67FILM N.G.22/12/08(木) 21:28:54

    どうも一応生きてます
    明日の晩には更新が出来そうなのでもうしばらくお待ちください

    あー毎日が休みにならないかなー

  • 68二次元好きの匿名さん22/12/08(木) 21:31:13

    了解保守

  • 69二次元好きの匿名さん22/12/09(金) 06:31:31

    年末は慌ただしいよね、お疲れさまです。

  • 70二次元好きの匿名さん22/12/09(金) 14:37:22

    待ちますよのほしゅ

  • 71二次元好きの匿名さん22/12/09(金) 22:03:07

    ほしゅ

  • 72二次元好きの匿名さん22/12/09(金) 22:45:53

    このss原作並みにどうなるのか気になるな

  • 73二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 05:19:57

    保守

  • 74二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 15:47:53

    ほしゅする

  • 75二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 16:47:11

    ほしゅ

    一か月ぶんくらいをまとめて読みました
    くっそ面白い、ウタの能力も凄くしっくりくる
    ワンピの二次創作SSとして完成度高すぎるんですけど

  • 76二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 23:12:23

    いつまででも待ちます ほしゅ

  • 77二次元好きの匿名さん22/12/11(日) 07:45:10

    見せて

  • 78FILM N.G.22/12/11(日) 09:32:06

    全然顔を出せず本当に申し訳ありませんでした。スレの保守本当にありがとうございます!

    ちまちま空いた時間を見つけて書いたので量は少ないですけど投稿します
    しかし書く時間無さ過ぎて頭シーザーになりそうですよ

  • 79FILM N.G.22/12/11(日) 09:32:56

     そうして皆の所に戻って来たウタは驚く。

    「よおウタちゃん! 飯が出来るのもう少し掛かるからあとちょっとだけ待っててくれるか?」

     青空の下、サンジが超巨大な鍋を前に大量の煮込み料理を作っていたのだ。ウタの驚きはもう目覚めたのかという驚き、そして起きていたのは彼だけでは無かったという理由。

    「お~いサンジ~! 使えそうな食材取ってきたぞォー!!」

     森や海の方からやって来るのは他の麦わらの一味達。彼等は各々が思い思いの食材を担ぎ此処まで運んで来ていた。
     ウソップとチョッパー、ナミにロビンやブルックは森での山菜・果実の採取。ローは別口で鳥獣の捕獲と簡単な解体。
     ゾロとフランキー、そしてジンベエは海での漁を担当。それにハンコック率いる九蛇海賊団が協力して海王類を仕留めていた。
     そうして用意された食材は正に山となって積み上がる程。これだけ有れば全員の胃袋を十分に満たせるだろう、そんな量の食材がバルトロメオを初めとした手空きの者達によってサンジの指示の下せっせと下処理を施されていく。

    「皆もう動いて大丈夫なの?」

     ウタは自分の出番は無かったなと考えながらも元気そうに動き回る彼等に心配の声を掛ける。それに答えたのは丁度彼女の横を通り過ぎようとしていたゾロだった。彼は巨大な海王類の肉を運びながら何でも無い風に言う。

    「大丈夫も何も普通だ。他の奴らも似たようなもんだぞ」
    「普通って……あんだけ戦った後だよ?」

     疲労がそう簡単に抜ける筈は無い。そう思っての言葉だったがウタは自分で言ってて気付く。

    「あれ? 人のこと言えないな、わたし」
    「バカなこと言える元気が有るなら手伝え」
    「おいクソマリモ!! てめェウタちゃんにバカって言ったか!!?」

  • 80FILM N.G.22/12/11(日) 09:33:31

     どうして皆元気なんだろう? ウタはそんなことを考えながら後ろで勃発するゾロとサンジの喧嘩を尻目に“とある人物達”を探す。

    「……ルフィとゴードンは?」

     そして見当たらぬ2人の存在に気付いたウタは近くの者に彼等の居場所を尋ねるのであった。




    「―――……ああ、ウタ。元気そうで何よりだ」

     とある廃屋。そこに足を踏み入れたウタを出迎えたのは椅子に座ったゴードンだった。彼はウタの無事を心から喜び微笑みを浮かべている。

    「ゴードン」
    「わかっている。ルフィ君に会いに来たんだろう?」

     ゴードンは昨夜負った傷が痛むのか緩慢な動きで立ち上がろうとする。それを見てウタは慌てて声を掛けて押し留める。

    「いいよいいよ動かないで! ……ごめん。痛いよね?」

     服で隠れてはいるがその傷は音符兵士によって負わされた物。ウタは目を伏せながら罪悪感で表情を曇らせ……ゴードンはそんな彼女の肩に優しく手を掛ける。

    「確かに、痛い。だがウタ」

     苦痛が残る体だというのにゴードンはそう感じさせない穏やかな声で伝える。

  • 81FILM N.G.22/12/11(日) 09:34:06

    「お前はもっと痛かった、辛かった筈だ」
    「ッ!」
    「こんな傷の痛みなんて些細な物。本当に謝るべきは私の方だ。恐れに囚われ……お前の心を自由にしてやることが出来なかった」

     あの事件から何年も経つというのにゴードンの目に映るウタの姿は幼かった日のままだった。それは再び悲劇が起きることを恐れた彼の心が見せていた虚像。どれだけ年月を重ねてもそれは心の奥深くにこびり付いていた。
     恐れ。そう、恐れだ。ゴードンもまたあの日の悲劇によって心に深い傷を負っていたのだ。エレジアの国王だった彼にとってこの島に住む国民は皆音楽を愛する同志であり、同時に守るべき家族であったのだから。それが一夜にして灰燼に帰した彼の喪失感は易々と語れる程軽くない。

     エレジアの悲劇を生き残った二人は心に昏い昏い影を落としていた。

    「ウタ」

     しかし光は在ったのだ。

    「お前は幸せになって良いんだ。少なくともそれを望む私(もの)が此処に一人、そして―――」

     伏せていた目を上げたウタにゴードンは指し示す。

    「きっと彼等だって。そう願ってくれている」

     陽光が差し込む部屋。ウタの為にその身を賭して戦った男が居る部屋へとゴードンは導いてやる。

    「……うん……うん。わかったよゴードン」

     ウタは僅かに滲んだ涙を拭うとその部屋に向かって歩き出し、そして自分を優しく見送るゴードンに一度振り返ると満面の笑みを見せる。

  • 82FILM N.G.22/12/11(日) 09:34:48

    「ありがとう!! 一緒に居てくれたのがゴードンで本当に良かった!!」
    「―――ッ!!!」

     ウタはそれだけを伝えると足早にルフィが居るであろう部屋へと踏み込んでいき、この部屋に一人残ったゴードンは止めどなく溢れ出す涙を抑えながら静かに言葉を紡ぐ。

    「……私の方こそ……お前が居てくれて……救われていたよ。ウタ」

     もう過去に囚われた幼い少女は居ない。立派な大人の女性へと成長したウタが光の方へ進んでいくのをゴードンは嬉しそうに、本当に嬉しそうに見届けた。




     ウタは静かに部屋を覗き込む。

    「……ルフィ~?」

     返事は無い。それもそうだ。

    「くか~……くか~……」
    「やっぱり寝てた」

     ルフィは口を大きく開け、気持ち良さそうにいびきを掻いて熟睡していた。
     ウタはベッドの近くで膝を着くとその縁に肘を付いて凭れ掛かりルフィの寝顔を横から眺める。

    「…………」

     間近で見ていても起きる気配の無いルフィ。彼女はそのまま手を伸ばすとルフィの頬を突く。押し付けられる指先に合わせて沈み込む頬と目の下の古傷。

  • 83FILM N.G.22/12/11(日) 09:35:19

    「間抜けな顔で眠っちゃって。子供みたい」
     ゴムらしくグニグニと変形する頬を弄くり回しながらウタはぽつりと呟く。

    「戦ってる時はあんなにカッコ良かったのにな~」

     悪戯をするのが楽しくなってきて今度は頬を摘まんで伸ばす。引っ張れば引っ張った分だけ伸びるのが面白い。腕の長さぐらい伸ばした所でパッと離せば勢いよく縮みバヂンと音を立ててルフィの顔がめり込む。

    「う゛……! ……すや~……」

     それでも目を覚まさない所か熟睡を続けるルフィ。本人の図太さも在るだろうが、無論それだけでは無い。

    「ふふ、バーカ。こんなに疲れるまで頑張っちゃうなんて」

     ウタは笑みを溢すとルフィの左手に自分の左手を重ね合わせる。

    「……ごめんね。わたし達のマークに穴空けちゃって」

     掌の傷の所為で上手く力が入らない手でウタはルフィの手を優しく一撫でし、そして手を離す。

    「ねえルフィ。わたし……頑張るから」

     眠るルフィに告げるのはこれからのこと。

    「世界中の皆を救うような人には成れなかったけど……それでも、だからこそ……聴いた人が笑って明日を迎えられる、そんな歌を届けられる歌手に成るから」

     まだはっきりとした形にはなっていない。しかしウタは前を向いて新しい“夢”を思い描いていく。

    「だから、ルフィ。その時は―――」

     ウタはそうして眠るルフィに“約束”を取り付けると……静かに部屋から立ち去るのであった。

  • 84FILM N.G.22/12/11(日) 09:36:22

    今日の更新はここまで。期間が空いた割りに少なくて本当に申し訳無いです
    ここまで読んでくださりありがとうございます

  • 85二次元好きの匿名さん22/12/11(日) 09:56:28

    >>84

    いいのだ、少なくても供給が確かにある事は良い事なのだ。

  • 86二次元好きの匿名さん22/12/11(日) 12:36:38

    上げ

  • 87二次元好きの匿名さん22/12/11(日) 21:40:47

    こっからバギーとかも来るんだよな
    どんな展開になるか楽しみすぎる

  • 88二次元好きの匿名さん22/12/11(日) 23:19:20

    ルフィは爆睡中か、まぁあんだけ無茶すればな…

  • 89二次元好きの匿名さん22/12/12(月) 07:45:55

    ほしゅ

  • 90二次元好きの匿名さん22/12/12(月) 14:18:14

    保守

  • 91二次元好きの匿名さん22/12/12(月) 22:27:36

  • 92FILM N.G.22/12/12(月) 23:54:12

    やあ。ちょっと書けたから投稿するよ。みんな保守してくれて本当にありがとう!

  • 93FILM N.G.22/12/12(月) 23:55:00

     食事が完成した。サンジが腕を振るった絶品料理の数々が芳しい香りを放ち腹を空かせた者達を魅了していく。

    「さあお前ら!! 腹一杯食いやがれェ!!!」
    「ヤッホォー!!!」

     もう我慢できないとばかりに料理に群がる海賊達。自分の取り分を手にするとパクパクと口に運んでいく。調理中も賑やかだったが今の騒々しさはその比では無い。

    「このキノコの炒め物美味しい~」
    「昨日の今日よ?」

     ニコニコしながら木の実とキノコの山菜ソテーを頬張るウタに隣りに座っていたナミが変な物を見るような目を向ける。昨晩に毒キノコを食らっていたとは思えない神経の図太さだ。皿に盛っていた分を早々に平らげたウタは次に香味野菜と海王類ミンチのキッシュを確保すると疑問に思っていたこを口にする。

    「でも本当にルフィ起こさなくて良かったの? あいつ絶対に後から文句言ってくるでしょ?」

     それはルフィを待たずにこの食事が始まったことに対しての疑問だった。いくら熟睡しているとは云えあんな食欲が人の形をして歩いているような男を放って置いて良いのかとウタは思っていた。そんな彼女にロビンがクスクスと笑いながら答える。

    「大丈夫よ。うちの船長さんならきっと―――」

     料理の香りが広がる。その広がりは森に棲む動物達さえ覗きに来る程に食欲を刺激する素晴らしい香り。そんな香りを嗅いであの男が目覚めない筈が無い。

  • 94FILM N.G.22/12/12(月) 23:56:01

    「香りに誘われて起きてくるから」
    「―――メ~~シィーーーーッ!!!」

     言った傍からだった。もし扉が有れば蹴り破りそうな勢いでルフィが廃屋から飛び出してきた。

    「サンジー!!! 飯飯飯メシ~~~~!!!」
    「もう出来てるから好きなだけ―――」
    「こりゃうめェ!!?」
    「早ェよ!? 何でおれに声掛けた!?」

     ルフィは料理に辿り着くなり豪快に口へと放り込んで舌鼓を打つ。彼の登場によりこの場の賑やかさは更に盛り上がっていく。

    「あ!? オイ麦わら屋!!! 今おれの皿から取りやがったな!!? 同盟も解消されたおれ達はもう敵同士だって忘れてんじゃねェだろうな!!?」
    「ル、ルルルルッ……ルフィ! わ、わらわも作ったのじゃが……た、食べてみぬか♡ あ、あとついでにわらわを娶らぬか?♡」
    「流石ルフィ先輩だべ!! 自分の体積以上の料理もあんな簡単に!!! おれも負けてらんねェべさ~!!! バクバクバクバク~!!! ……うぶっ……!」

     ルフィはローに詰め寄られると顔を逸らして口笛を吹いて誤魔化し(誤魔化せてない)、ハンコックが用意してくれた料理を喜んで食べ(結婚は断る)、無理に料理を掻き込んで蒼白になるバルトロメオを笑う(ローに脇腹を蹴られて顔を青くする)。

    「……いっきにうるさくなったなー」

     先程まで寝込んでいたとは信じられないぐらいに騒ぐルフィ達にウタは呆れながらも安心したように笑みを浮かべる。

    「ん?」

  • 95FILM N.G.22/12/12(月) 23:56:45

     そこでルフィとウタの目が合った。ルフィは自分を挟んで言い争いを始めたローとハンコックをスルーしてウタの方へと駆け寄る。

    「ぼほほ~い! くっふぇるふぁ~~!? ウファ!」
    「うん?」
    「おふぁふぇ、ふぃっふぁふぃふふぁふぇ~ふぉいふぇねェぼ!」
    「……う、うん。わたしは大丈夫、だよ?」
    「ん!!!」

     ウタの返事に満足したのかルフィは頷くと再び料理の山へと突進して行った。それを見送ってからウタは近くに居るナミやロビンに向かって尋ねる。

    「……で? ルフィは何て言ってたの?」
    「さあ? 気にする程のことでも無いでしょ」
    「ウタがご飯を食べてるか確認しに来たのかしら?」

     真意は本人のみぞ知る……ただしロビンの推測が正しくそしてナミが言うように気にする程のことでも無いので考えるだけ無駄である。ウタは「それもそっか」と納得すると新しい料理を取りに行く。そうして歩けば目に入る皆の笑顔、誰も彼もが楽しそうにこの宴を満喫していた。その輪の中には勿論ウタも居る。

  • 96FILM N.G.22/12/12(月) 23:57:40

    「あははははは!」

     程良くお腹が満たされた者達が芸人のように余興を始め、それを見て皆が笑う。
     戦いの日を間近に控えた一時だがそれでも彼等は腹の底から笑う。

    「よーし、次はウタ!! 歌っちゃいまーす!!!」
    「良いぞ良いぞォ~!!!」
    「歌姫の歌だー!」

     辛く苦しい現実。だからこそそんな世界で彼等は力の限り精一杯生きるのだ。

    「みなみの し~まは あったけェ~ あたまポカポカ アホばっか~♪」
    「選曲それかよ!? でも上手い!」
    「よ~しおれも歌うぞ~!!」

     この世界で見つけた掛け替えのない大切なものを守る為に。

    「―――明日のライブも!!! 頑張るからね!!!」

     先の見えない未来にも恐れず……例え恐れていようとも、歩みを続けるのだ。

  • 97FILM N.G.22/12/13(火) 00:00:06

    今日の更新は以上です。読んでくれてありがとうございました


    本誌は相変わらず面白いですね。次の話ではセラフィムの本格的戦闘が見られそうで楽しみ……次号休載……だと?

  • 98二次元好きの匿名さん22/12/13(火) 00:00:48

    お疲れ様です

  • 99二次元好きの匿名さん22/12/13(火) 07:06:34

    かつてボロクソに言ったルフィの持ち歌をウタが歌うとは…

  • 100二次元好きの匿名さん22/12/13(火) 12:53:12

    それよく覚えてたなウタ...

  • 101二次元好きの匿名さん22/12/13(火) 20:08:45

    実際に聞いてみたいな

  • 102二次元好きの匿名さん22/12/13(火) 23:54:56

    ほし

  • 103二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 08:12:12

    ほす

  • 104二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 08:12:13

    ほしゅする

  • 105二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 18:09:55

  • 106FILM N.G.22/12/14(水) 21:11:51

    保守感謝です。年末年始って忙しい……ハーメルンの方もこっちに追い付いてきたし沢山書きたい……しかし遅筆
    ちょっと書けたので投稿しますね

  • 107FILM N.G.22/12/14(水) 21:12:28

     数時間前、セラフィム“S-スネーク”の飛行によって軍艦へと戻ったボルサリーノとイッショウは部下である海兵達に出迎えられた所まで遡る。

    「ご無事での帰還なによりです!」
    「はいはいご苦労さ~ん、とォ」

     降り立ったセラフィムから手を離したボルサリーノは慌ただしい甲板の様子に首を傾げる。

    「……おや~? わっしらが居ない間に何か問題でも?」
    「そっ、それが……!」

     自分達が留守の間に発生していた問題の報告を受ける大将の2人。その内容を聞いて彼等は眉を顰める。

    「―――あ~あ~……参っちゃうね~」
    「これも歌姫の影響力……厄介事とは重なるもんですが、巻き込まれる方は溜まったもんじゃありやせんね」

     2人の纏う空気が張り詰める。近くに居た海兵達はただならぬ雰囲気に息を吞むも……その緊張感は次の瞬間には霧散した。

    「ふ~。“来る”ものは仕方が無いねェ~。元帥からの指示ならわっしは戦うのみ」

     ボルサリーノは「やれやれ疲れた疲れた」と船内へと引っ込む。それに続くようにイッショウも動き出し、扉の前で立ち止まると海兵達に言葉を掛ける。

    「……ライブ当日に備えてあんたらも休みなさい」
    「え? で、ですが……」
    「今から慌てても体力を無駄にするばかり。なら力を抜く所ではしっかり抜くべきじゃござんせんか?」

  • 108FILM N.G.22/12/14(水) 21:12:40

     “決戦”はウタのライブ当時。故にそれまで英気を養えとイッショウは言う。

    「わ、わかりました!! 他の艦にもそう伝達しておきます!!」
    「ええ、そうしなさい。それじゃああっしらは少し眠らせていただきやす」
    「おやすみなさいませ!!」

     ボルサリーノは早々に部屋へ入って横になりイッショウも自分の部屋で休息しようと艦内に足を踏み入れる。自分以外誰も居ない通路を進みながらイッショウは思う。

    (……ウタウタは強力な能力。その存在を“奴さん”が知っているならこの動きもそう不思議は無い)

     海兵から聞いた報告に初めは驚いた、だが冷静に考えれば理解出来る内容。

    「だが」

     イッショウは虚空を睨むように光の差さない目を開く。

    「無粋に感じるのは……それだけ彼等を気に入っちまったってことでしょうね」

     報告の内容はエレジアにとある“海賊”が向かって来ているという物。イッショウは顔を見たいと思った麦わらの男と懸命に生きようとする歌姫、その2人に迫るだろう脅威に僅かな怒りを滲ませる。

    「まったく。海軍なのにいけねェいけねェ、どっちも倒すべき相手だってのに」

     イッショウはしかしそんな怒りを飲み干して気持ちを静める。これから休もうというのにこれでは眠れなくなる。

    「“能力者狩り”……これは麦わらのルフィと歌姫ウタ、どっちが出した賽の目ですかい?」

     イッショウは部屋へ入ると扉を閉める。先までの戦いよりも尚激しくなるであろう明日のライブに備えて体を休める為に、今はただ眠るのであった。

  • 109二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 22:00:01

    黒ひげまで来るのか
    四皇が全員集合するとか赤犬の胃は大丈夫?

  • 110二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 22:00:48

    まあ残り三皇が何とかしてくれるでしょう。

  • 111二次元好きの匿名さん22/12/15(木) 06:57:33

    保守

  • 112二次元好きの匿名さん22/12/15(木) 14:23:03

    黒ひげも来るか…
    四皇勢ぞろいになるんか

  • 113二次元好きの匿名さん22/12/15(木) 21:37:13

    保守

  • 114二次元好きの匿名さん22/12/16(金) 07:13:46

  • 115二次元好きの匿名さん22/12/16(金) 13:55:04

    ho

  • 116二次元好きの匿名さん22/12/16(金) 22:07:07

    ほしゅ

  • 117二次元好きの匿名さん22/12/16(金) 22:27:23

    ハーメルンのも見てるから完結まで応援してる

  • 118二次元好きの匿名さん22/12/17(土) 00:48:10

    保守

  • 119二次元好きの匿名さん22/12/17(土) 09:24:02

    ほし

  • 120二次元好きの匿名さん22/12/17(土) 16:41:26

    保守

  • 121二次元好きの匿名さん22/12/17(土) 20:11:25

    ほし

  • 122二次元好きの匿名さん22/12/18(日) 06:39:58

    ほしゅう

  • 123二次元好きの匿名さん22/12/18(日) 16:28:30

    ほ!

  • 124二次元好きの匿名さん22/12/18(日) 22:38:39

    しゅ!

  • 125二次元好きの匿名さん22/12/19(月) 05:18:08

  • 126二次元好きの匿名さん22/12/19(月) 10:57:53

    しゅ

  • 127二次元好きの匿名さん22/12/19(月) 19:21:02

  • 128二次元好きの匿名さん22/12/20(火) 00:48:35

  • 129FILM N.G.22/12/20(火) 01:14:54

    こんなに長く顔を出せず申し訳ありません。スレの保守本当にありがとうございます
    リアルが忙しくそんなに書けていませんが何とか時間を見つけて書いた分を投稿します

  • 130FILM N.G.22/12/20(火) 01:16:29

     長い航海の果てに目的地へと辿り着いた乗客達の興奮はじわじわと高まり熱気を帯びていく。

    「着いた……遂に着いた!」

     ウタのファンの一人、羊飼いの少年ヨルエカは手摺りから身を乗りださんばかりに前のめりになる。目を輝かせながら彼は喜びと期待で体を震わせる。

    「ウタの歌を! ライブで聴けるんだ!!!」

     どれ程この日を待ち侘びたか。トーンダイヤルに収録された音源も電伝虫で配信される歌もそれはそれは素晴らしい、だがそれでもやはり現実で直接この耳で歌を聴きたくなるのがファンという生き物。ヨルエカもそれは例外で無く日が昇らぬ早朝から寝床を抜け出してエレジアが見えてくるのを今か今かと待っていたのだ。

    「それにしても霧が濃いなァ……ちゃんと港に入れるかな?」

     視界に漂う白い霧。夜が明けてくるにつれて発生したそれの所為でエレジアの島も船からでは影しか見えない。まったく見通せない程では無いが航行の安全を考えると些か不安が過ぎる。そう思ったのは一人だけでは無く幾人かはヨルエカ同様心配になっていたのだが―――

    「ピピピ」
    「……鳥?」

     霧の中、小鳥が羽ばたいた。
     エレジアへと入港しようとする全ての船へと近付く鳥達。それが船首の上に降り立つと自分の小さな姿がよく見えるよう翼を大きく広げる。

  • 131FILM N.G.22/12/20(火) 01:17:20

    「あー! ハッピ着てる、可愛いー!」
    「ピピッピ!」

     ウタのライブシンボルが背面に描かれた法被(はっぴ)。それに袖を通した鳥は翼を器用に使って二つの旗を掴むと掲げる。赤と白の旗に描かれているのは「進め」と「止まれ」。
     客船の船長は小鳥に歩み寄ると尋ねる。

    「もしかしてアンタが水先案内してくれんのかい?」
    「ピー!」

     船長の言葉に肯定した小鳥は進めの描かれた旗を振ると、とある“水路”を指し示す。
     その水路とは海面から顔を出す“海草”によって作られた即席の路。大きな海草ではあるが例え船がぶつかろうとしっかりと受け止めてくれるだろう頼もしい海草……ポップグリーンの“サルガッソ”だった。

    「へー、ここを通りゃ良いのか。それで他の船と事故らねェようにアンタらが指示を出してくれるってわけだ」
    「ピピー!!」

     その言葉通り、小鳥は囀りで他の鳥達とやり取りをしながら自分が担当する船を案内していく。これによって混雑が予想されていた船の入港がスムーズに行われた。それは小鳥達の働きのみでなく海流の影響さえもしっかり考慮して敷かれた水路の存在も大きいだろう。

    「クケー!!」

     小鳥達によって多くの船が入港していく中、大きな怪鳥が霧を引き裂くように上空を飛翔して全体の様子を俯瞰する。この怪鳥が小鳥達を統轄する役割を担っており個々の船を担う彼等では把握出来ない広い視点から指示を下す。

    「ライブ、楽しみだなー!!」

  • 132FILM N.G.22/12/20(火) 01:17:44

     完璧な海図に裏打ちされたサルガッソによる水路、そして彼女が歌う歌が好きな鳥達による協力によりライブに来てくれたファン達は無事にエレジアへと上陸していく。




     ファン達が上陸してからは案内を小鳥から引き継ぎ別の者達が担っていく。案内は―――

    「動物だ~!」

     個性豊かな動物達だった。
     真っ先に視界に映る物静かでクールなキリンが首を長くして船をお出迎え、下船すれば座ってるだけで愛嬌満天な猫が場を和ませ、陽気でひょうきんな猿が行き先を指し示し、のんびりとしたダックスフントが隣で付き添い、パンダが器用な手先でチケットを切り、厳ついライオンが客席に繋がるゲートを押し開く―――
     エレジアで暮らす動物の中でも特に彼女と仲が良かった動物達の案内により、遂にファン達はライブステージを観ることの出来る場所へと辿り着く。

     チケットに記載された自分の席位置を確認したファン達はライブまでまだ時間が有ることを確認する。ここでライブが始まるのを待って居るのも良いが道中で“歌姫ウタのグッズ”が売られている屋台を目にしていた彼等はその空いた時間を利用して店に赴く。うちわにペンライト、Tシャツに缶バッジにアクセサリーまで……ライブ定番のアイテムをこれまた動物の店員から購入した彼等は期待感を高めつつライブが始まるのを玩具を前にした子供のような顔で待つ。

    (わかってる)

     そうした熱狂・期待を一身に受け。

    (わかってるよ皆)

     この舞台の主役である彼女は。

    (皆が願う“新時代”を)

     満を持して壇上へと上がり。

    「さあ……始めよう!」

     運命のライブの幕が―――開く。

  • 133FILM N.G.22/12/20(火) 01:19:47

    少ないですが今日はここまで。ゆっくりな投稿なのに待ってくれてる皆本当にありがとうございます!



    さあ、ライブの始まりです

  • 134二次元好きの匿名さん22/12/20(火) 06:19:41

    いよいよか…‼︎

  • 135二次元好きの匿名さん22/12/20(火) 06:44:16

    集結する戦力を考えると本当に新時代が到来しそうだ

  • 136二次元好きの匿名さん22/12/20(火) 14:29:03

    保守

  • 137二次元好きの匿名さん22/12/20(火) 16:54:46

    ほしゅ

  • 138二次元好きの匿名さん22/12/20(火) 22:31:11

    保守!

  • 139二次元好きの匿名さん22/12/21(水) 06:14:52

    保守

  • 140二次元好きの匿名さん22/12/21(水) 09:03:20

    ほし

  • 141二次元好きの匿名さん22/12/21(水) 17:39:36

    ほっしゅ

  • 142二次元好きの匿名さん22/12/21(水) 22:52:16

    保守!

  • 143二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 04:34:49

    一気見してきた民です
    part5の 70 71 72に感動しました
    読んでいる最中に "Tot Musica" を副音声感覚で聞いていたら歌詞がピッタリが入ってきて驚きました
    計算されつくした美しさ 素晴らしかったです
    長々と失礼しました

  • 144二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 13:45:30

    保守

  • 145二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 22:52:01

    何が起きるんだろう

  • 146二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 07:11:08

  • 147二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 12:40:38

  • 148二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 20:03:49

  • 149二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 04:46:33

    保守

  • 150二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 11:55:06

  • 151二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 21:42:25

    保守

  • 152二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 02:19:26

    メリクリ。ほひゅ

  • 153二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 09:19:03

    ほしゅ

  • 154二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 14:38:08

    ㍆㌋㌉㌏㌉㌸㌾㌋㌞㌹㌅

  • 155二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 17:10:07

    h

  • 156二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 22:25:03

    いつまででも待ちます 保守

  • 157二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 07:59:31

    ライブ待ちの保守

  • 158二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 16:45:10

    しゅ・・シュガー

  • 159二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 01:53:33

    凄く続きが楽しみ

  • 160二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 09:17:29

    待つよ

  • 161二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 19:01:54

    まも

  • 162FILM N.G.22/12/27(火) 21:29:26

    う、嘘やろ? 最後に更新したのが一週間前やって?
    いや本当にごめんなさい。予定立て込んでたし年末年始も忙しいの確定してるからどれだけ更新出来るのかマジで未定なんです……

    今日まで保守してくれた皆さんありがとうございます! 何とか少し書けたのでその分だけでも投稿したいと思います!

  • 163FILM N.G.22/12/27(火) 21:30:30

     男は笑う。

    「ゼハハハハハ!!!」

     何が面白いのか―――全てだ。

    「ウタウタの実の能力者!! 規格外も良い所……これを手に入れねェなんて嘘だろう?」

     この世界に存在する全てが男の野心を満たす物でしかない。彼に賛同して船に乗った仲間達も愉快そうに笑みを浮かべる。

    「仲間にするも良し!! 歌姫がこっちの手を取れば仲良くしようじゃねェか!!」

     海賊船“サーベルオブジーベック号”に乗るのは世界にその名を轟かす者達。彼等を率いるは“四皇”の肩書きと“黒ひげ”の異名を持つ最悪の世代の一人。

    「……だが、もしも向こうにその気が無いってんなら―――」

     最悪の中に在ってなお悪名高き“黒ひげ海賊団・提督”。

    「奪おうじゃねェか“命”ごと!!! なあオイ!!! 海賊らしくよォ!!!」

     “黒ひげ”マーシャル・D・ティーチ。懸賞金39億9600万ベリー。

  • 164FILM N.G.22/12/27(火) 21:31:28

    「ウィッハッハッハ~!!! ヤり甲斐のある奴が居りゃァもっと楽しいんだがな船長!!!」
    「歌姫がどちらを選ぼうとそれもまた“巡り合わせ”……」
    「ハァ……ハァ……ああ……運が良いのか悪いのか、会えばわかるさ……ゲホ!」
    「海軍も来てるらしいってのに本当に行き当たりばったりな野郎だ」

     そしてティーチと共にエレジアへと同行した“10人の巨漢船長”の面々。一部の者達は別件でこの場に居ないとはいえ四皇最高幹部である彼等が数人でも揃えばその脅威は国すら容易く落とす。
     ティーチはそんな共に居れば退屈などとは無縁な頼もしい仲間達に号令を掛ける。

    「ゼハハハハ!!! 行くぞ野郎共ォ!!! おれ達がこの“時代”の中心だァー!!!」

     黒ひげ達は眼前に映るエレジアへ向かい船を進ませる。その地に足を踏み入れる為に。




     メインステージにスポットライトが向けられる。霧の中に映し出される影はこの場に集まった全ての者が待ち望んだ存在。

  • 165FILM N.G.22/12/27(火) 21:33:20

     彼女は深呼吸をして心を落ち着かせた後、曲の始まりとタイミングを合わせて歌い出す。


    【Ado】新時代 (ウタ from ONE PIECE FILM RED)

    「―――新時代は この未来だ―――」


     観客の熱気、そして水平線から上る太陽の熱が霧を晴らし―――“歌姫”の歌声が響き渡る。


    「―――変えてしまえば 変えてしまえば―――」


     歌姫ウタ。彼女が頭上高く掲げた指先に大勢の視線が集中し、一気にその姿が眩い光で照らされる。鳴り響くミュージックと共にジャケットに身を包んだウタはリズムに乗って観客の一人一人を指差すように踊り出す。

     霧が消え去ったことで観客達はその目にカラフルなステージを映し……そして“幻想”を見る。


    「―――ジャマモノ やなもの なんて消して―――」


     ライブ会場の海面から飛沫を立てて舞い上がるのは水で作られた歌の歌詞。


    「―――キミが起こす マジック―――」


     その水の歌詞が泡のように弾ければステージを照らす色取り取りのビームを受けて乱反射させる。


    「―――目を閉じれば未来が開いて―――」


     曲が盛り上がっていくにつれてウタの踊りも大きく動き出していく。そしてジャケットのフードを払うように外して彼女は観客達に自分の笑顔をよく見せる。

     そう。私は貴方達に会えて嬉しいんだ、そう伝えるように。心からの笑顔で。

  • 166FILM N.G.22/12/27(火) 21:33:39

    「―――Do you wanna play? リアルゲーム―――」

     観客が何処から見ていようと自分の姿が見えるようステージの壁をモニター代わりに幻想を投影する。それと同時にウタの足下から光の粒子が静かに立ち上っていき、彼女の集中力は更に深く深く、強くなる。
     全てはこのライブに来てくれた皆を喜ばす為、ウタは自らの能力を発揮させる。

    「―――夢の中に居させて I wanna be free―――」

     光の粒子がポップなマークになって紙吹雪のように舞い上がる。それは客席の全てに届くように飛んでいくと彼等の傍でキラキラと瞬く。
     観客を照らす光を視界に捉えて踊るウタはジャケットに手を掛けて勢いよく脱ぎ捨てる。

    「―――新時代はこの未来だ―――」

     歌唱がサビに突入すると同時に光は一気に翼を広げる。観客達の傍で広がるその光球に映し出されるのはステージで踊るウタの姿。それはもっと近くでウタを見たいという彼等の気持ちを汲んだウタのパフォーマンス。

    「―――果てしない音楽がもっと届くように―――」

     ここは“ウタワールド”では無い、だけど自分には“力”が在る。ウタはそうして己の能力を最大限に活用しながらライブを盛り上げる。

    「―――夢は見ないわ キミが話した―――」

     信じているから。

    (ルフィ……皆。わたし、何が起きようとこのライブ、絶対に成功させるから。だから……)

     ウタはこのエレジアにどんな者達が向かって来ようとライブを続ける決意を胸に抱き、歌う。この場に集まったファンの期待に応える為に。そして―――

    「……だから、勝ってよ……ルフィ」

     ウタはこの瞬間、この海で戦ってくれている友達に向けて小さく言葉を紡ぐのだった。

  • 167FILM N.G.22/12/27(火) 21:45:58

     軍艦30隻と大勢の海兵、そして大将が2人にセラフィムが1体。海軍が差し向けた強大なる戦力、もし一海賊がこれに見付かったならば敗北と死を覚悟しなければならず、そもそも勝ち目など存在しない。

     だが彼等は違う。

    「…………」

     圧倒的な戦力を前に立ち塞がるのは一隻の船。そのマストに掲げられた帆に描かれるのは麦わらを被ったドクロマーク。
     麦わらの一味、その船長である麦わらのルフィは船首の上に堂々と立つ。目の前に展開される海軍の戦力など怖くは無いと態度で示すように。

    「野郎共。準備は良いか?」

     実際怖くなんて無い。ルフィは寧ろ楽しそうに笑って仲間達に問う。それに対して彼等は各々の武器を構えて自らの意志を見せる。何とも頼もしい……一部の戦闘力に自信の無い面子は若干嫌そうな顔をしているが戦いが始まればどうせ腹を括るのでルフィは気にせず号令を掛ける。

    「行くぞ野郎共!!! ライブの邪魔する奴は全員ぶっ飛ばすぞォー!!」
    「「「おおォーー!!!」」」

     船長の声に雄叫びで応えた仲間達、それを真正面から耳にした海軍は臨戦態勢に入り迎え打つ構えを見せた。

    「……随分な気合いの入りようで」
    「そうだね~……だがわっしらも負ける訳にはいかない」

    大将である2人は進路を邪魔する麦わらの一味に対して最大級の警戒を向け戦意を高める。

    「さて行きやしょうかセラフィム」
    「…………」
    「……? ……セラフィム?」

    イッショウは怪訝そうにセラフィムへ意識を向ける。応えが無かったからだ。ベガパンクによって作られた彼女達は命令に忠実な兵器、故に今しがたの無反応はどう考えてもおかしい。
    セラフィムの反応が無かった理由だが……それは直ぐにわかった。

  • 168FILM N.G.22/12/27(火) 22:08:42

    「……~~♪」

    セラフィムは鼻歌を歌っていた。遠く離れたエレジアに目を向けながら。

    「…………」

    イッショウは驚き目を見開くが……直ぐに気を取り直すと先程よりも大きな声を出す。

    「セラフィム、戦闘開始!」
    「……! ……わかった」

    上の空になっていたセラフィムは少しだけ慌てたような仕草で麦わらの一味が乗る船に向き直る。

    (……これはもしや……いや、しかし)

    イッショウは部下からの報告に有ったベガパンクからの伝言を思い出す。




    『―――基礎スペックの検証の為にセラフィム達の自我は抑制されている』

     ベガパンク・悪(リリス)に変わってベガパンク・正(シャカ)が海兵に伝える。

    『その感情抑制もアマゾン・リリーでの実戦投入後の調整によって取り払うことに決めていた』
    『そ、それは何故でしょう?』

     自我が薄い、もしくは無い方が兵器として運用し易いのではないか? それがこの海兵の考えであったがベガパンク・正は首を横に振る。

  • 169FILM N.G.22/12/27(火) 22:24:08

    『感情、意志無きクローンなどどれだけ種族特性によって底上げしようと提供者(ドナー)の劣化でしか無くなる……その理由の大部分が何かわかるか?』
    『い、いえ。わかりません』

     ベガパンク・正は己の頭を指差しながら教える。

    『意志力……つまり感情無きクローン兵は“覇気”を使えない』
    『……!』
    『私が目指す究極の“人類”に欠点など在ってはならない。故に調整を終えたセラフィムは感情を……“自我”を発露させ覇気を獲得させる予定だ』

     最強の肉体。血統因子に記録された体験。悪魔の実の能力の再現。そして覇気。

    『この4つを兼ね備えることによってセラフィムは本物を超えた究極の人類へと至る』
    『…………』

     話しを聞いた海兵は絶句する。この自分の傍に居る少女の見目をした兵器が想像した以上の存在であると漠然とだが察したからだ。
    そして同時に疑問が浮かぶ。

    『あ、あの……それならどうしてこのセラフィムは調整前なのでしょうか? 話しを聞く限りでは調整後の方が強力の筈……』

     そう。ベガパンク・悪から貸し出されたこのセラフィムは調整前。つまり感情を抑制され覇気も使えない不完全な状態の筈なのだ。
     ベガパンク・正はそんな海兵の疑問に答えてやる。

    『ウタウタの能力を警戒しての判断だ。私はあの“夢に囚われる力”が対象の自我の有無に強く左右されると考えた。意志が無い、つまり機械同然の状態ならばウタウタの能力の影響を受けない可能性が在る』
    『そ、それは……!』
    『ただの仮説だ。普通に通用して眠らされる可能性の方が高い』
    『えー!?』

     結局どっちなのかわからず海兵は戸惑う。そんな彼の様子も意に介さずベガパンク・正は背を向ける。

  • 170FILM N.G.22/12/27(火) 22:47:00

    『これも一つの実験だ。有用なデータが取れることを願っている。なに例え感情が抑制されたままであろうとセラフィムは強力だ、君達の力になってくれるだろう』




     ―――これがベガパンクからの伝言だった。
     イッショウは海兵から聞いたそれを思い出しながらセラフィムを見る。

    (感情は抑制されているはず……しかし先程の様子を伺う限り……いやそれ以前から)

     眉を顰めて難しい顔をするイッショウ。だが彼は直ぐにそんな思考を隅に追いやり目の前の戦いに集中する。生半可な気持ちで戦える程ルフィ達は柔な存在ではないのだから。

    「……とにかく。目の前のことを片付けるしかありやせんね」

     ルフィ達と大将達の覇気がぶつかり鬩(せめ)ぎ合う。大気が震えて悲鳴を上げる。
     その激闘の気配に驚いたのだろう、両者の間の海中から巨大な影が浮上する。

    「ギュオオオオーー!!!」

     海王類。軍艦よりも遙かに大きなそれが眼前に姿を現わした。

    「おやこれは面倒な……沈めときやすか?」

     イッショウが重力で沈める、その前に行動を起こしたのがセラフィムだった。彼女は投げキッスをするように唇に触れると―――ハートが作られた。セラフィムはそのハートを手に取り弓矢を構えるようにすると海王類に向ける。

    「……“虜の矢(スレイブアロー)”」

     ハートの矢で貫かれた海王類が……一瞬にして石へと姿を変えた。海面に浮かぶ石化した海王類の巨体、それはまるで陸地のようであった。

  • 171FILM N.G.22/12/27(火) 22:47:52

    今日の更新はここまで。次の更新は未定です。気長に待ってもらえると幸いです
    読んでくれてありがとうございました

  • 172二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 00:10:51

    来たか…作者…!

  • 173二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 00:56:14

    おおイシイシの実だけじゃなかったのかハイスペックな

  • 174二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 07:50:35

    やはり作者は神

  • 175二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 18:36:54

    保持

  • 176二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 02:23:56

    黒ひげは赤髪とクロスギルドが抑える感じかな?

  • 177二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 12:38:31

  • 178二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 22:11:31

    更新おつです

  • 179二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 22:38:51

    保守だああ

  • 180二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 02:01:11

    保守

  • 181二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 12:23:05

  • 182二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 21:33:07

  • 183二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 21:33:18

    保守

  • 184二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 08:46:00

    保守

  • 185二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 16:48:10

  • 186二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 00:59:31

  • 187二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 10:35:12

  • 188二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 18:35:24

  • 189二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 02:33:21

    続きも楽しみ
    気長に待ってます

  • 190二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 05:22:32

    ほし

  • 191二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 13:12:59

    作者さん、次スレお願いします

  • 192二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 23:15:56

  • 193二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 10:26:03

    ほしゅ

  • 194二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 20:34:45

    ほっす

  • 195二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 20:40:57

    ほしゅ

  • 196二次元好きの匿名さん23/01/04(水) 06:03:18

    保守。

  • 197FILM N.G.23/01/04(水) 10:26:32

    まったく更新が出来ていない中でも保守してくれてありがとうございます。今日の晩には時間が取れる予定なのでそこで本編を更新したいと思います

    一応次のスレだけは今から立てておきます

  • 198FILM N.G.23/01/04(水) 10:31:54
  • 199二次元好きの匿名さん23/01/04(水) 13:01:12

  • 200二次元好きの匿名さん23/01/04(水) 16:53:56

    ume

オススメ

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