- 1二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:31:04
ぼっち「あ、あっ、えっと……ワイくん、みんなと一緒に居るとき楽しそうだったし。本当はスターリーの皆と一緒にいた方が楽しいんですよね?」
ワイ「い、いやそんなこと…」
ぼっち「虹夏さんや喜多さん、リョウさん、店長さんも言ってました。ワイくんがスターリーを辞めるって言った時、凄く悲しそうな顔をしていたって」
ワイ「イヤ、ソレハソノ…」モニョモニョ
ぼっち「……………あ、あっ、あの!
……どうしてワイくんは、スターリーを辞めようとするんですか!いつも私の仕事のフォローもしてくれて、掃除も接客も私より上手なのに…」
ワイ「……でも俺、ぼっちちゃんのギター演奏みたいに皆に誇れる特技とかないし。虹夏さんや喜多さんのように明るくもコミュ力もない、山田さんみたいにカッコ良くもない。だから別に俺が居なくても、誰も困らないと思うけど…?」
ぼっち「………で、でもワイくん!虹夏さんと店長さんが、ワイくんが来てからスターリーがいつも以上に綺麗になったって言ってました!喜多さんもギターのアドバイスをしてくれたお陰で前より少し上手くなったって呟いていましたし、リョウさんも……よくお金貸してくれて助かっているとも話してました!」
ワイ「ハハ……助かっているって」
ぼっち「それに私だって、学校で毎朝私と挨拶してくれるし、お昼だっていつも一緒に食べてくれて……えっと、その、嬉しかったです!」
ワイ「……」
ぼっち「だから、ソノ………明日も、スターリーに、キテクダサイ……」
ワイ「はい……」 - 2二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:31:59
素敵な話が山田のせいで台無しだよ
- 3二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:32:48
山田ァ!
- 4二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:34:10
- 5二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:35:25
普通にワイくんがメンタルちょっと弱いだけのイケメンで草
- 6二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:35:38
ベーシストはさぁ
- 7二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:37:11
いかなるコピペスレでも毎回金を借りている山田
- 8二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:38:58
- 9二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:39:58
アニメも漫画も見てないけど人間的にダメなやつがいることだけ覚えてしまった
- 10二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:41:14
実はワイくんを説得してる子が一番ダメなやつだという事実を知って帰ってくださいね
- 11二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:45:38
- 12二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:47:06
- 13二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:48:07
その後、この会話で全ての体力使い果たしてスナァ…となるぼっち。
- 14二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:48:31
- 15二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:49:10
- 16二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:49:38
ぼっちちゃん×ワイ君?!
配合したら、マイナス×マイナスでとんでもない陽キャ生まれてきそう - 17二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:49:48
どもりも全然ないからぼっちちゃんじゃないな…
- 18二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:51:56
ぼっちちゃんが嘘つくのは面倒ごとを避けたい時と見栄はる時だから…
- 19二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:52:03
Guitar Heroならこのくらいのコミュ力はあるぞ
- 20二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:52:44
なんだこの平和な世界…
- 21二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:52:59
ところで彼はスターリーのバイトなのか
結束バンドのメンバーなのか - 22二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:53:26
山田に関しては金で買った平和である
- 23二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:53:33
相手がモニョモニョしてたらなんかまずいこと言ったかとビビるぞ
- 24二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:53:56
つまり存在しないじゃないか
- 25二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:56:11
結構長い付き合いらしいし少しは会話できると思われるが
- 26二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:57:30
- 27二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 10:59:31
仕事はソコソコ出来るタイプのコミュ障かもしれないだろ!
- 28二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 11:00:21
- 29二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 11:01:46
仕事だと仕事上の事だけ話せばいいから割とうまくいくんだよな
- 30二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 11:02:22
- 31二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 11:04:24
- 32二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 11:07:40
ワイ君相手ならここまで喋れるようになったというだけの話なんだ
- 33二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 11:10:16
これそういうスレか…?
- 34二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 11:13:04
なんか言ってることおかしい……おかしくない?
- 35二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 11:13:52
喜多ちゃんを引き止める時と同じでボッチちゃんはいざという時にしゃべれる女だぞ
- 36二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 11:14:18
都合のいい男が大抵バケモノになっていってるんですけど何でなんですかね
- 37二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 11:16:24
廣井がこれから断酒を成功させるぐらいの確率である
- 38二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 11:21:59
スターリー降りないでくださいってことはただのバイトの人…?ただのバイトに優れたギターの腕とかいらんやろ
- 39二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 11:25:13
- 40二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 11:26:50
ワイ「はい……スターリー辞めます」
- 41二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 12:04:59
酔っぱらいの常連がいるバンドハウスに品位なんてありませぇぇぇぇぇん!!!
- 42後日談22/12/01(木) 12:23:07
ワイ「えっと……先日あんなこと言いましたが、今日もスターリーで働くことになりました………よろしくお願い、いたします…」
喜多「うん!今日もよろしくね!ワイくん音階良くてギターの練習するとき助かってたから、辞めるって言ったときどうしようかと思ってたんだ〜」
虹夏「良かったーワイくんが居てくれる事を選んでくれて。お姉ちゃんも、ワイくんのお陰でスターリーが綺麗でいられるって話してたよ?」
リョウ「ワイ、また後でお金貸して」
店長「ワイ。お前此処で働く時に、立派なシンガーになりたいって言ってたよな?その前に辞めようとするなよ?」
ワイ「ウェッ……ハ、ハイ………頑張りましゅ…」
ぼっち「あ、あっ、ワイ、くん………えっと、その……この間は、いいいイキった事言って、しゅみまーーーー」
ワイ「……ぼっちちゃん。俺を引き留めてくれて、ありがとう」
ぼっち「エッ、アッ……どう、イタシマシテ…」 - 43二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 12:25:12
- 44二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 12:28:56
おい…スタジオで女侍らせてる最低男になってしまうぞ…
- 45二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 17:21:08
(陰キャコミュ障に女の子を侍らせる技量は)ないです。
- 46二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 17:24:52
ひとりちゃんみたいな子にこんなこと言われたら好きになるわ
- 47二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 17:31:17
- 48二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 18:51:55
- 49二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 19:06:56
前提のシチュエーションがこれならぼっちちゃんはこういうこと言うか言わないで言うと言う
山田は絶対に金を借りる - 50二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 19:10:20
- 51おまけ22/12/01(木) 23:24:13
喜多「ねぇ二人とも、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
ぼっち「え、あ、あっ…はい」
ワイ「………え、えっ、ウェッ⁉ 俺にも言ってるデスか!?」
喜多「うん、ワイくんにも言ってる。
それでさ、二人って結構一緒にいるけど、いつから一緒に居るの?…あ、もしかして後藤さんとワイくんて、幼馴染か何かなの?」
ぼっち「え、あ、イヤ、その……」
ワイ「……えっと、その。俺とぼっちちゃんは、中学二年の時、たまたま隣の席同士で……えーと、たまに話し合ったりしていて。高校もたまたま同じで、同じクラスの隣の席同士の、関係ディス…ハイ」
喜多「あ、友達じゃないんだ」
ワイ「……え、あ、あっ。友達で、大丈夫デス!…多分」←高校入学の日によく話をした女の子と再開して、友達になろうと言ったが、なんか曖昧な返事だったのでちょっと不安だった。
喜多「なんで最後ちょっと濁したの!?」
ぼっち「…」←よく関わってくれた男子と晴れて友達になり嬉しかった事を思い出していたが、ちょっと返事を濁したので、友達だと思ってたのは自分の気のせいだったのでは?と不安で肉体が溶け始めてる。 - 52二次元好きの匿名さん22/12/01(木) 23:28:29
コミュ障同士は惹かれ合うという法則か…(違う)
- 53二次元好きの匿名さん22/12/02(金) 08:01:31
- 54おまけ 222/12/02(金) 18:19:23
ワイ「上から順に掃除して~♪下に積もった埃をモップで絡めとりながら~♪〆に雑巾で水拭きしましょうね~~♪」
虹夏「…ワイくんってさ、掃除凄く上手だよね。なんかやってたの?」
ワイ「ヘァッ!?……アッ、オレッスカ?……あー。俺、家で歌を歌う前に掃除したり、高校入学を機に一人暮らししてからも掃除する時間が増えたりしたんで、自然とそういう知識が増えたり、しました……ハイ」
虹夏「へー。ワイくん、以外と潔癖なんだね」
ワイ「……後、中学の時。クラスメイトのみんなに、『代わりにやっといて』って何度か頼まれたりして、そのお陰で上達出来たと思いマス…」
虹夏「ワイくんそれ、クラスメイトに掃除押し付けられてない!?」
ワイ「?…………ッ!?」ガビーン!
虹夏「しかも押し付けられてる自覚なし!?」 - 55二次元好きの匿名さん22/12/02(金) 20:44:06ワイ「ねぇぼっちちゃん、俺と関わるのやめなよ」ぼっち「……え?」|あにまん掲示板ワイ「俺と一緒に居るとき楽しくなさそうじゃん。ホントは結束バンドのみんなと一緒にいた方が楽しいんでしょ?」ぼっち「あ、いや、そ、そんな事は…」ワイ「店長さんも言ってたよ?最近は皆と顔を合わせて会話が出…bbs.animanch.com
ワイといえな、これ見て思ったんだけどどうせハーメルンのぼっち幼馴染男で「俺なんかいなくていいだろう」みたいなのが多いけど結束バンドって関係性結構ドライな所あるから「いなくていいだろう」にはならない気がするんだよな。(それはそれで惨めに感じるのかもしれないけど)
- 56おまけ 322/12/03(土) 07:04:43
山田「ワイ、お金貸して」
ワイ「・・・」
山田「うわっ、すごく嫌な顔」
ワイ「イヤ……山田さん、これ何度目ですか……前に貸したやつも、まだ帰って来てないんスが……」
山田「だめかー…じゃあぼっちちゃんから借りることにするよ」
ワイ「………………いくらですか。それと未開封のポカリあげますから、雑草食べるのやめてください」
山田「ん、ありがと」 - 57二次元好きの匿名さん22/12/03(土) 07:06:14
山田ァ!!!
- 58二次元好きの匿名さん22/12/03(土) 15:26:36
ワイ「……あ、こんにちは店長さん」
店長「おう。虹夏達は今ちょっと此処を出てて、店には誰も居ないから思う存分歌の練習が出来るな」
ワイ「教えてくれて、ありがとうございます。
………ハァ。早く人前でも、歌える様になりたい……」
店長「……ん、戻ったな」
喜多「はい、只今戻りましたー!……あれ?この歌声…」
〜〜♪
虹夏「ワイくんの、声……」
山田「………掃除の時以外で、ワイの歌聴くの、始めてだな」
ぼっち(……しかも、掃除の時より上手)
店長「……アイツ、人前だと上手く歌えないって話しててな……此処で働く時に、人が居ない時はステージを貸してほしいって頼まれているんだ」 - 59二次元好きの匿名さん22/12/03(土) 15:26:52
喜多「……後藤さん、彼の歌のこと、知ってた…?」
ぼっち「あ、あっ、いえ………お、音楽と、うう歌うことが、好きだって事は、中学で、言ってたんですけど……」
店長「……じゃあぼっちちゃん。アイツが、此処でシンガーを目指す理由も知らないって事だな」
虹夏「理由?お姉ちゃん、それって……」
店長「悪いが、コレだけは絶対に言わないでくれって、ワイに口止めされてんだ……ふっ」
ぼっち「……?」
ーーあの日。ぼっちちゃんの……後藤ひとりさんのギターを聴いたあの時から。彼女の隣に立てる様な人になりたいって思って……その為にも、立派なシンガーになりたいんです……!
店長(……まさか、アイツのシンガーになりたい原因が、ぼっちちゃんにあった。なんてな)
- 60二次元好きの匿名さん22/12/03(土) 21:51:35
山田「ねぇワイ、暇だからちょっと歌ってみてよ」
ワイ「エッ……イヤ、何で急に……山田さんを満足させられる様なもんじゃないですよ……?」
山田「いいからいいから、聴かせてくれたらお金返してあげるから」
ワイ「……じゃあ、少しだけ………〜〜♪!」
山田「………(声がちょっとうわずってるな。人の目を意識してるから……?)うん、ありがとう。はいコレ」
ワイ「あ、ありがとうございます。
………あの山田さん、100円玉一枚だけしか貰ってないんスが……ちょっと?山田さん??」 - 61二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 08:18:50
- 62二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 08:25:55
あれだ
ぼっちちゃんがバイトする間になんとかある程度コミュニケーションとれるようになった存在だからいなくなられると困るんだ
だからなんか妙に必死なんだ
個人的には目立つことがないいい人でも構わないが - 63二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 08:26:40
- 64ワイ(12)22/12/04(日) 17:15:50
俺はごく普通……で、良いのかな……只の中学生、岩井ヨウ!同級生からのあだ名はワイ!
幼少期身体が弱かった俺は小学生時代のほとんどを病院で暮らしていたが、中一になるまでにはすっかり人並に健康的となった俺は、これまで家族に迷惑を掛けて来た分まで勉学に勤しむ事に!
しかし小学校で習う筈の義務教育を多くの入院生活で疎かにして来た俺は、他の人達よりも勉強が遅れてしまっていた!その結果…
『岩井くん……勉強頑張ってんのは良いんだけど……前居たお兄さんと比べると……まぁ、うん、頑張れ』
『ワイってさ~、存在感ないよね~~。ぶっちゃけさ、別にいなくても誰も困らない?的な~』
『私がちゃんと産んであげていれば、上の子みたいになった筈なのに……どうして、どうしてあんな子になっちゃったの…ッ!』
実の兄より劣った実力!存在感のない役立たずの烙印!親の期待の裏切り!のトリプルコンボ!
こんなクソみたいな経歴でも、誰かの役に立てることを願いながら学校へ通う日々!
たった一人の友達もいない、見た目は今日から中学二年生、頭脳は中の中…の下、その名はワイ!
ワイ「……ハハッ……何やってんだろう、俺」ボソッ
――以上。ワイがぼっちこと、後藤ひとりと出会う前の心境である。 - 65二次元好きの匿名さん22/12/05(月) 05:17:43
おいおいね
- 66ワイ(15)in借家22/12/05(月) 11:58:21
ワイ(前略。お父さん、兄さん、元気ですか?俺は高校入学を期に始めた一人暮らしにも、だいぶ馴れてきた所です。
そしてお母さん、今月の仕送り感謝いたします。
……いたし、ますが……)
『ヨウへ♪
仕送りと一緒に今話題の映画のチケットを二枚程送っておきました。(^-^)/
期限が切れないうちにお友だちを誘って見てきてね~(*^▽^*)
一人暮らしする貴方を応援するお母さんより☆
ps.出来ればで良いけど、どんな友達と見たかロインで教えて♥️』
ワイ「……お母さん。陰キャコミュ障に、『友達を映画に誘う』というミッションは難易度高いよ……」 - 67ワイ(15)22/12/05(月) 15:22:08
ワイ「…あ、おはよう。ぼっ……ひとりさん」
ぼっち「あ…お、おはよう、ワイくん……」
こんにちは皆さん、ワイです。わたくしは今学校に居ます。
それはそうと、お母さんから貰った映画チケットの片割れは彼女に手渡すことに決めました。
……いやだって、虹夏さんや喜多さんの陽キャコンビは誘う前提に話し掛ける事すら勇気いるし、山田さんはなんか一人で映画見たりする方が好きそうだし、店長さんは…大人だし。
ただぼっちちゃんにチケット渡すのにも、それはそれで問題がある。
それは……どうやって彼女にチケットを渡せばいいのか、という問題である。
ロインでいるかどうか聞く?いや、そこそこ大事な話を電子上文面で言うのはなんかアレな希ガスる。あと既読スルーされたら死ぬ。
喜多さんに渡して彼女に手渡してほしいと頼む?彼女のお手を煩わせてしまう上、もしクラスメイトに見つかったら俺がストレスで砂と化す。てかそんなこと出来たらとっくに渡しとるわ!
黙って手紙に添えたチケットを彼女のバックに入れる?はい論外。絵面も犯罪者みたいデース。
やはり手渡し…!手渡しが一番確実……!だがそれが一番難易度が高いという圧倒的罠……‼‼
というか彼女とまとも(当社比)に会話できるようになったのも、高校に入って友人(仮?)になってからだ。
中学の時の会話といえば、毎朝の1あいさつと、一度彼女が音楽関連アイテムを持ってきた時に俺が興奮して陰キャオタクマシンガントークしてしまって彼女をオーバーヒートさせてしまった時くらいで、後は碌に会話出来なかったという経歴を持つ。
そんな俺がイケメン陽キャ行動ランキングトップ10(推測)に入るだろう『さりげなく友人に映画へ誘う』という行動は、余りにも難易度が高すぎた。
ワイ「………ひとりさん。お昼一緒に食べる?」
ぼっち「あ、はい」
…はい。朝の挨拶以降ろくに会話出来ず、お昼休みになってしまいました。
このクソボケ―――!
- 68二次元好きの匿名さん22/12/05(月) 15:29:03
ワイ君がちゃんと仕事ができるコミュ障だったら今まで追い出されてきただろうか
もっといやらしい目線を向けて各所からクレームもらわないと - 69ワイ(15)22/12/05(月) 22:26:08
ワイ「……今日は此処にしようか。程よく人気ないし」
ぼっち「う、うん…今日も、ありがとう…ワイくん」
ワイ「……俺も、ぼっちちゃんと一緒にお昼食べるの楽しいから……えっと、その、気にしないで」
ぼっち「…………うん」
高校に入ってから続けているお昼を食べる為の場所探しを終え、良い感じに暗くて人気がない、一番上の階の階段に腰掛けながら、それぞれお昼を食べ始める俺達……
…………うん、思考放棄してないで、どうやってぼっちちゃんにチケットを渡すか考えるか。
とはいえ、昼飯食べてるときは基本的に話しないからなぁ俺達……いや、何回かあった気がするな……
えーと、確か……………
『…今日は、良い天気だね』
『………え?あ、はい』
『…今日の天気は、雨だね』
『…あ、はい』
『…今日の午後、晴れのち曇り、らしいです』
『…そう、なんですね』
『…明日は、晴れるといいね』
『…そう、ですね』
……天気の話しかしてねぇじゃねぇか!?俺は天気の子ですかコノヤロー!!……今のジョーク、25点位だな。人前では絶対に言わないようにしよう。
- 70ワイ(15)22/12/05(月) 22:26:27
「…」
「…」
……ヤバい。何がヤバいって、このままだとチケットの話どころか、普通の……そもそも、普通ってなんだっけ?まぁいいか、いやよくない……会話すら出来ずに終わってしまう事だ。
いつもなら良いけど、今回ばかりはマジでヤバい。
もし此処で言えなきゃ、確実に『…まぁ、明日でもいいや』ってなって、そこからズルズルと後回しにして、チケットの期限が切れてました~なんてオチになる事は見えている…!
ぼっち「……あ、あの…そろそろ、行きましょうか?」
ワイ「…………え、あ、ソウデスネ」
ギャァァァァァ!?もう既にお昼休みが終わる時間になっているゥゥゥ!!俺まだ覚悟も勇気も何を話せば良いのかも出来てないのにィィィィ!!??
- 71ワイ(15)22/12/05(月) 22:47:49
ワイ「……じゃあ、行こうか……」ピラッ
ぼっち「……?あの、ワイくん、何か落とした…」
ワイ「え、あぁ、ありが……」
……オイィィィィィィィィ!!それぼっちちゃんに渡すはずだった映画のチケットじゃねぇかァ!?アイエエエ!? チケット!? チケットナンデオトシタ!?
ぼっち「……あの、ワイくん……これって、映画のチケット?」
ワイ「ピョエッ!? あ、あぁ、うん。そうだよ…」
ぼっち「そうなんだ……はい、これ」
ワイ「……あ、そ、それ!ぼっちちゃんにあげる!!」
ぼっち「ウェッ!?…で、でもコレ……」
ワイ「だ、大丈夫!もう一枚あるから!
……そうだ!折角だから、ぼっちちゃんも一緒に映画見に行こう!!今週の日曜日辺りとかに!!!」
ぼっち「え、えぇっ?! …あ、はい」
………………計画通り!
- 72ワイ(15)22/12/06(火) 09:06:57
やぁみんな!ワイだよォ!!俺が今何をしているのかというと……
PA「……えっと。つまり、ワイくんはぼっちちゃんとのデートの時、どんな事をすれば喜ぶのかを考えて欲しいって事…だよね?」
ワイ「違うんですぅぅぅぅぅぅ!!ぼっちちゃんとのデートではなくて、男女同士のお出かけなんですぅぅぅぅぅぅ!!」
店長「………ぼっちちゃんをデー…お出掛けに誘えたんだから、プランくらい立てられるだろ……」
ワイ「違うんですぅぅぅぅぅぅ!!あのときはその場のノリとテンションと勢いで押しきっただけで、俺の実力じゃないんですぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!これ以上(女の子とお出掛け)は俺の思考範囲外なんですぅぅぅ!お二人ともお助けください何でもしますからぁぁぁぁぁ!!」
これ以上ないくらいに、土下座しながら情けなく店長さんとPAさんに、ぼっちちゃんとのお出掛けプランを考えて欲しいと懇願していた。是非もないね☆ - 73二次元好きの匿名さん22/12/06(火) 16:53:32
- 74ぼっち22/12/06(火) 17:45:57
やぁみんな☆後藤ひとりだよっ😄みんなからは『ぼっちちゃん』って呼ばれてるんだ~(*^▽^*)
……あっ、待ってください、帰らないで下さい。ちょっと…いや凄く調子に乗ってました、イキってすみません……
……それはともかく(方向転換)。私には高校に入ってから初めて出来た…それも異性の友達である"ワイくん"がいます。彼との出会いは遡ること、私が中学2年になったばかりの頃……
『………あ、えっと、その……ご、後藤、さん………?
お、お、おおはよう、ゴザイマス…』
『……………えっ?…あ、あ、あっ!お、おおおおおおはようごじゃいましゅ!?』
……うん、思い返してみるとホントに酷いファーストコンタクトだったな……彼の挨拶に気付かないばかりか、慌てすぎて噛んじゃったし…あ、ヤバい、思い出したら死にたくなった来た。
……だけど、それ以降も彼は、私と挨拶をしてくれた。
『…ご、後藤さん。お、おはよ、う…?』
『あ、あっ…お、おはよう、ございま、す……』
彼が私と同じ…俗に言う『陰キャ』で『コミュ障』であったこともあり。そのうち私も、彼と毎日朝に挨拶を交わす間柄になっていました。
…まぁ、彼は私と違って他のクラスの人達とも沢山関わっていたり、何だか疲れた表情をしていて話し掛けづらかったのもあって、『朝会った時に挨拶をする程度の関係』から先には発展出来ませんでしたけどね!
……ヘタレな自分が憎い…… - 75二次元好きの匿名さん22/12/06(火) 23:27:43
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- 76ぼっち22/12/06(火) 23:33:32
彼との関係に大きな変化があったのは、音楽に興味持ち始めた私が、学校で自分の机の上にCD広げたりして、話しかけてもらえるのを待っていた時だった。
『……ん?ーーホアァァァァァァァッッッ!!ごっ、後藤さん!これって、あのバンドのCD!?え、スゴいスゴい、まさか学校で同じやつ聴いているクラスメイトが居たなんて~~ンンンンンッッッ!!あ、もしかして後藤さん、今世間で話題のデスメタル系バントの曲も聴いていたりーー』
『アッアッアッ、ミ°ッ』(パァン!)
『ウワーーーーーーッ!?後藤さーーーーん!!??』
…………はっ、軽く黒歴史思い出したせいで、ちょっと死んでた。
だけど、この出来事のはお陰でワイくんと共通の話題で…ごく稀にだけど、ほんの少しだけ語り合ったりすることが多くなった。
『……後藤さん。これ、最近ハマってるCD……お貸し、致します』
『……あ、あっ…あ、ありがとう、ございます』
幼い頃からひとり寂しく遊んだりすることが多かった私にとって、彼との関係は心地良かった。
結局友達にはなれなかったけれど、彼との奇妙な関係は中学を卒業するまで続いた。
『……じゃあ、ね、後藤さん……別の高校に行っても、元気で……』
『……い、岩井くんも、げげげ元気で……!』
だから中学を卒業して、別々の高校に行く事になったときは、凄く悲しかった。
『………あ、えっと、その……は、はじめまして、岩井で、す……後藤さん?』
『……………あ、あ、あっ、初めまして…後藤、ひとり、で……い、岩井、くん?』
だからこそ、彼と同じ高校で、しかも中学と同じ隣の席で早めの再会を果たした時は、凄く驚いた。
- 77ぼっち22/12/07(水) 09:17:23
ワイ『せせせせ折角だから、お、おおおお俺と…と、と、友達に、なって、下さい!』
ぼっち『えっ、あ、あっ、オ゛ァッ……ふ、ふじゅじゅじゅかモンニョでジュガ、よ、よろ、よろ…し、シク、オネガイ、イタシマシュ……』
ワイ(……え?コレって…OKってことで、いいん、だよね…?)
それから……まぁ、なんやかんやあって無事にお友達になったなった私とワイくんは、朝に挨拶を交わしたり、お昼一緒にご飯を食べる様になったり。ひょんな事から私が結束バンドに入ってからは、彼もスターリーでバイトすることになったりした。
……そんな彼から、映画のチケットを貰ってしまいました。
ぼっち「……と、いう訳でして……これ…ど、どうすれば、よろしいでしょか……?」
虹夏、喜多、山田「………えっ?」
- 78ぼっち22/12/07(水) 18:28:42
虹夏(…映画のチケットをあげて、デートに誘ったって事は……やっぱりワイくんって、ぼっちちゃんの事好きなんじゃ…?)
山田(……ワイ、多分そこまで考えてない)
喜多(でも中学二年の時からの付き合いって言ってたし、後藤さんと一緒に居るうちにそういう感情が芽生え始めた~っていうのはあると思いますよ!)
…?三人とも、角に集まってなに話してるんだろう……
虹夏(でもどうするの?ぼっちちゃんが映画館でちゃんと映画見れる光景、あまり浮かばないんだけど…)
山田(映画館にチャラ男やギャル、ラブラブカップルとかがいたら、多分ストレスと光にやられて溶ける…)
喜多(だけど此処でワイくんを逃したら、後藤さんたぶん一生彼氏とか出来ませんよ!? そうなったら、彼女の家族があまりに可哀想です!)
虹夏(……此処は私達で、ぼっちちゃんとワイくんのデートをサポートしないと…!)
- 79ぼっち22/12/07(水) 18:29:27
ぼっち「……あ、あの…大丈夫ですか?」
虹夏「大丈夫大丈夫!それで、ワイくんから貰った映画のチケットをどうすれば良いのかだっけ?」
ぼっち「あ、はい……映画館行くの、少し怖いですけど……折角ワイくんが誘ってくれたから、行きたいな~とは……」
虹夏「じゃあ行くってことで良いね?よーし!じゃあ今週の日曜日までにデートの準備しようか!」
ぼっち「…え、えっ、えっ?」
喜多「服装は……土曜日に後藤さん家に行くから、私達も後藤さんに似合うような服を見積もってみるね!」
ぼっち「ち、ちょっ、あの……」
山田「あと、デートの予行練習としてお洒落なカフェによるから、お金用意しといてね」
虹夏「おい山田」
……まだ、行くって決めてないのに……
………でも、ちょっと楽しみ、かも。
- 80ワイ(12)22/12/08(木) 00:44:29
――かつて、病院のベッドで窓の外を眺めながら、俺は願った。
兄さんの様に、100点の答案用紙を持って親に喜んでもらいたいと。
兄さんの様に、色んなスポーツで大活躍して仲間たちの役に立ちたいと。
兄さんの様に、沢山の友達に囲まれながら楽しく笑っていたいと。
だから、もう病院に通わないでいいとお医者さんに言われた時は、とても喜んだ。
これでやっと、みんなに迷惑を掛けて来た分だけ、みんなの役に立てるんだって。
――そんな幻想は、俺が思っていた以上に、早く打ち砕かれた。
平均点以下の答案用紙を持って、親に何度も慰められた。
色んなスポーツで仲間たちの足を引っ張り、仲間達からは気遣いと一緒に軽蔑の目で見られた。
空っぽで上っ面だけの関係の間で、只のクラスメイトに囲まれながら愛想笑いを浮かべていた。
こんな筈じゃなかったのに、もっと役に立ちたいのに、親に喜んでもらいたかったのに。
兄さんみたいになれない。誰の役にも立てない。親に迷惑ばかりかける。
そのくせ、そんな現状に言い訳ばかりしていた。
そのくせ、そんな現状を打破する努力は長続きしなかった。
そんな自分が、大嫌いだった。
そんな自分に、心底呆れ、絶望し、何度も死にたいと思った。
――だからこそ。あの日彼女に出会えた事は、これ以上ない位の幸運だった。
――だからこそ。ある日誰もいない公園でただひとりギターを弾く彼女の姿を偶然見かけた時。その時の真剣な顔とギターの音色と腕前に、どうしようもない位に、心惹かれ、聞き惚れてしまっていたんだ。
それと同時に、思ってしまったんだ。
いつか彼女の隣に立ちたいと、身の為に合わない幻夢を願った。 - 81ワイ(15)22/12/08(木) 11:27:07
ワイ「あ。お、おはよう、ぼっちちゃん…」
ぼっち「お、おっ、おはよう、ワイくん…」
オッス、おらワイ。今日はぼっちちゃんと映画を見にお出掛けするんだ。ワクワクすっぞ。
……ていうか待って、今日のぼっちちゃん、何時もより可愛すぎやしませんか?
何故いつものピンクジャージじゃなくて……えっと、薄いピンクの羽織る奴の下に白いシャツに黒いクソデカスカート?ネットとかで聞く童貞を殺す服?みたいな格好になっていらっしゃるのでしょうか?
俺、いつものジャージだと思って、ほぼいつも通りの格好だよ?学校行かない日に着ていく普段着のままだよ?そこまで気合い入った格好じゃないよ?ぼっちちゃんがシャレオツすぎて俺完全に浮きまくってるよ?
ぼっち「……えっと、その。変じゃ、ないですか?」
ワイ「…あ、イヤイヤ!そんな事ないよ!? ただいつもと違いすぎてびっくりしたというか、いつにも増して可愛いというか、おっぱいが大きオラァッッッ!!!」バキィ!
ぼっち「!!!!????(自分を殴った!?)ビクッ!
だだだ、大丈夫ですか!?」
ワイ「うんダイジョウブ、顔に蝿が止まっただけだから。それとびっくりしたの後に聞こえてきた奴は空耳だから全部忘れて」
ぼっち「……あ、はい」
ワイ「……取り敢えず、どっかによろうか。
(店長さん達のアドバイスだと、映画の前にどっかのカフェで一服してこい。とのことだから……確か、近くにスタバがあった筈……まだお昼前だし、空いてるよな?)」
ぼっち「は、はい……今日は、よろしく、お願いします。
(……ワイくんとデート、男の子とデート……うへへ、まるでリア充みたい……ありがとう虹夏さん喜多さんリョウさん!これで遂に、私もリア充の仲間入り…!)」 - 82ワイ(15)22/12/08(木) 15:55:46
ぼっちちゃんと映画前の一服をするため、スタバへ入店いたしました。その結果…
「こんにちはご来店ありがとうございます!ご注文はお決まりでしょうか?」
ワイ「オ、オ゛アァ……」
ぼっち「わァ……ぁ……」
店の和気藹々とした雰囲気と店員さんの陽キャオーラの強さに二人仲良く全身を焼かれ、己の迂闊さと慢心を呪った。
あれれ~?可笑しいな~??前に偵察に来たときはもっと空いていたし、店員さんももっと年上だった筈だよ~?少なくとも、年の近い女性じゃなかったよ~~?
ワイ(ぼ、ぼっちちゃん……注文決まった…?)
ぼっち(ごめんなさいごめんなさいごめんなさい調子に乗っていました私なんて永遠の陰キャですプランクトンですプランクトン後藤ですイキってすみませんンンンン……)
……不味い、ぼっちちゃんが溶け始めてる。店を出ようにも他の人が来てるから出にくい……こうなったらもう注文するしかねぇ…!
ワイ「……え、えっと、この『本日のオススメ』という奴……2つ、下さい」
「かしこまりました~!イチゴチョコチップキャラメルミルクプラペチーノお2つですね!サイズはどういたしましょうか?」
すみません、日本語でお願いします。
- 83ワイ(15)22/12/08(木) 16:00:32
ワイ「ぷ、プラ……?あ、えっと……え、Sのスモールでお願いいたします……」
「Sのショートですね!店内でご利用でしょうか?」
ショート!? あれってショートっていうの!?スモールじゃなくて!!??
ワイ「……は、はい。店内で、お願いします……」
「わかりました~…彼女 さんとご一緒ですか?」
ワイ・ぼっち「めめめめめめめ滅相もございませんッッ!!私達はただの友達で、彼女(彼氏)などというお恐れた関係では一切ございません!!」
あ、ぼっちちゃんがいつの間にか復活していた。
「そ、そうですか……はい!それでは商品の方をカウンターでお受け取り下さい!」
ワイ・ぼっち「は、はい……」
やることが…やることが多い……!
――その後俺達は無事に注文を受け取ったが、陽キャ達に囲まれて味が殆ど分かず、疲れだけが溜まっていた。
- 84ワイ(15)22/12/08(木) 22:44:22
やんちゃかプラペチーノ?とやらを飲み終え、陽キャ達の巣窟から脱出した俺達は、映画館へ向けて歩みを進めていた。
ワイ「……ごめんぼっちちゃん。俺、スタバ完全に侮ってた……まさか、あんな光の大魔境だなんて……もっと、事前調べしていたら……」
ぼっち「……い、いえ、私も完全に舐めてました……リア充になったと思って、リョウさんとお洒落なお店に何度か行ったので、大丈夫だと思ってました……なにも出来なくてすみません……」
…カフェで一服しに行った筈なのに、一服する前より疲れた気がする……ぼっちちゃんとお出掛けしに来たのに、幸先からこんなんじゃ不安しかないよ……めっちゃ気まずいし……
ぼっち「……あ。ワイくん、映画館に着きました…」
ワイ「…あ、まじか」
ぼっちちゃんに言われて、映画館の前に到着した事に気付いた俺。
……しかし先程のスタバ事件で足がすくんでいた俺達は、カップルらしき男女や陽キャ達が出入りする映画館の前で立ち往生していた。
ぼっち「……あ、あの…ワイくんが、お、お母さんから貰ったチケットって、なんて映画のチケット、でしたっけ…?」
ワイ「え、えっと……チケットのタイトルには、『ラック・ザ・レッド』って書いてあるな……そこのポスターを見るに、多分アクション系の映画だと思うけど……まぁ、面白いよ、きっと……うん」
ぼっち「…で、ですね!」
そんな感じで一抹の不安を抱きながらも、チケットを無駄にしないためにも、何処か楽観的に映画館へと足を運んだ。
「「………」」
――数時間後、映画館から出てきた二人の顔は、心なしか入っていった時より、疲れた表情となっていた。
- 85ワイ(15)22/12/09(金) 08:24:44
ワイ「……まさか、アクション映画であると同時に、恋愛ホラー映画でもあったとは……」
ぼっち「……映画の最後に、インターネット1の教祖になってたヒロインがネットの悪魔を召喚して、それを主人公と彼女の生き別れた父親と一緒に銃撃戦を繰り広げてましたね……」
最終的には幼少気にヒロインからもらった思い出の赤いハンカチが、悪魔を倒す最後の切り札になるだなんて…予想もしてなかったな……ポスターに写ってた赤いハンカチが、あそこで大活躍するなんてな……
まぁ、映画は良かったよ、かなり。ウン。
問題なのは…回りにいたお客さんの大半がラブラブカップルと陽キャグループで占められていて、映画が終わるまで彼らのオーラでスリップダメージを………この話はやめよう。それより、俺のせいで瀕死間際になったぼっちちゃんの体力を回復させないと……
ワイ「………そこのベンチで休もうか」
ぼっち「……あ、はい」
ワイ「……飲み物買ってくるけど、何か欲しいものある?」
ぼっち「あ、えっと……お、お茶で…」
疲れた様子のぼっちちゃんをベンチに座らせると、そのまま自販機に飲み物を買いに行った。
- 86ぼっち22/12/09(金) 18:41:16
どうも皆さん、後藤ひとりです。
私は今、ワイくんとデートをしているのですが…
ワイ「……飲み物買ってくるけど、何か欲しいものある?」
ぼっち「あ、えっと……お、お茶で…」
そう言って飲み物を買いに行ったワイくんを見届けながら、スタバと映画館での醜態を思い出し、静かに涙を垂らしていた。
うぅ……折角ワイくんが映画デート誘ってくれたのに、ずっと彼に頼りっぱなし……もっと会話とか楽しい事とかしなきゃダメなのに……!ワイくん、絶対呆れてるよ……何やってんだお前って思ってる……!
『ぼっち、お前デート降りろ』
『えっ…』
『お前デートの時ずっと黙ってるじゃないか、本当は楽しくないんだろう?』
『いや、そんな事……』
『スタバと映画館の店員さんから苦情が来てたぞ、お前が彼女達をいやらしい目で見つめてたってな』
『イヤ、ソンナコト…』モニョモニョ
『大体お前は何ができるんだ?何のために生まれてきたんだ?』
『……で、でもワイくんだってあの二人をいy』パァン
『陰キャぼっちが口答えすんな』
『アッ……ウ、ア……』
『……ハァ。もういいよ、つまんないなら帰れよ。帰りは送ってってやるから、その代わりもう二度と学校で話しかけんな。いいな?』
『うっ……ウゥ……おぇっ』
- 87ぼっち22/12/09(金) 21:11:10
ぼっち「──ヴオ゛あ゛あ゛っ゛ーーッッ!!」
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!初めて出来た友達にゴミを見る目で見捨てられたら、絶対に死ぬ!私の心が壊れる!!もう生きていけない!!!
ワイ「何してるのぼっちちゃん?」
ぼっち「ヒィッ!? ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!もっと楽しそうにするから!もっと嬉しそうにするから!だから私を捨てないで!!」
ワイ「え、えっ、えっ!? ちょっ、ま、待ってぼっちちゃん!?話が見えないんだけど?! 何か悪いことしたなら謝るから一回落ち着いて!?人の目がッ!人の目があるからッ!!」
ワイ「………落ち着いた?はいコレお茶」
ぼっち「うぅ……あ、ありがと、ゴサマス……グスッ」
…しにたい。またワイくんに迷惑かけた……
ワイ「んっ、んっ……ふひぃ……次、どこ行こうか。
今のところ、近くの公園でぶらぶらしようかなーなんて考えてたケド…」
私がお茶を飲みながらベンチの上で体育座りして項垂れていると、ポカリで一息ついたワイくんがそう問いかける。
……うん。こんなに気遣ってくれるワイくんが、『デート降りろ』だなんて、言うわけないよね。
ぼっち「……ワイくんって、本当に優しいね」
ワイ「……えっ?」
ぼっち「…あっ、いや、その……だ、だって。こ、こんなに迷惑ばかり、かけてるのに……いいいつも、私に優しくしてくれるし、一緒に居てくれるし……」
- 88ぼっち22/12/09(金) 22:28:08
ワイ「…………俺、ぼっちちゃんが思っている程、優しくないよ」
ぼっち「……えっ」
ワイ「俺がぼっちちゃんとよく一緒にいるのも、ぼっちちゃん以外に友達が居ないからで。俺自身はひとりじゃ何も出来ない、役立たずでもっと利己的な男なんだ。
もしぼっちちゃんと出会わなかったら、俺はずっとひとりで腐って、腐って、腐り果てていた。
もしぼっちちゃんがいなかったら、虹夏さんや喜多さん、山田さんに店長さん達とも知り合えなかった。
――ぼっちちゃんは自分が思っている以上に、誰かにとっての、俺にとっての救いになっているんだよ」
ぼっち「……っ」
ワイ「……だからさ、ぼっちちゃん。こんな俺に優しくしてくれて、俺と友達になってくれて、ありがとう」
……なんか、お礼、言われちゃった……ふへへ。
ワイ「…よし。ぼっちちゃん、疲れとか残ってない?大丈夫?」
ぼっち「ふへ、ふへへ……えっ?あ、あっ、だ、大丈夫でしゅ!」
ワイ「……そっか、良かった。
じゃあ歩こうか、適当に。
陰キャ同士、自由で、思い付くまま、ありのままの姿で」
ぼっち「ふぇ…っ?」
い、陰キャらしくって、なに……?
- 89ぼっち22/12/10(土) 00:47:54
──それからの事は、気ままに歩いて、気になった事に挑戦していく。陰キャらしく、陽キャの真似をしながらも、人に縛られる事なく自由に歩いた。
「……あ、たい焼き屋さん……」
「あ、ホントだ……あんことクリーム、どっちがいい?」
「…え?あ、えっと…あ、あんこで……」
「了解。……あ、あの、すみません……あんこ、2つ」
「ほぁ~…コレ、あのロックバンドの数量限定CDじゃん……こんな所にあるなんて、とんでもねぇ掘り出し物発見……」
「あ。わ、ワイくん……私このCD、家におなじのあるけど、持ってる……?」
「ん?……あ、持ってないなソレ……今度借りる事って、出来る?」
「あ、えっと…だ、大丈夫です」
「俺、プリクラって初めて……ぼっちちゃんは?」
「わ、私も初めてですけど、なんとか……!目指せ陽キャ……!目指せリア充……!」
「……………目って、こんなに盛るものだっけ…?」
「……………た、たたた多分…!」
「あ、あの……け、結局陰キャらしくって……ど、どういう事、ですが…?」
「……俺には、虹夏さんみたいな万人受けなお出掛けとか上手く出来ないし、山田さんのようなお洒落なお出掛けもよく分からない、ましてや喜多さんのような陽キャ全開なお出掛けは出来っこない。
なら、俺なりの方法で、陰キャらしい自由で自分勝手で気ままなお出掛けで、ぼっちちゃんを満足させたいって、思ったんだ、けど……楽しめてる?」
「…………はい。楽しいと、思います」
- 90二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 01:04:57
なんか側から見ればハーメルンに転がってそうな主人公してんなあワイ君
- 91ぼっち22/12/10(土) 12:29:33
ぼっち「……えっと、その。ききき今日は、映画誘ってくれて、あああありがとうございます!」
ワイ「あ、いや、その……コチラこそ、今日は来てくださり、ありがとう、ございます……」
時刻は夕方。私はデートに誘ってくれた事と、帰りに駅まで送ってってくれたワイくんにお礼を言っていた。ワイくんの方も、お礼を言いながら頭を下げている。
ぼっち「………あ、あの…き、今日は、本当に、楽し、かったです…!だから、その……」
ワイ「……喜んでくれたなら、その…俺もぼっちちゃんとお出掛け出来て、本当に良かった……デス、はい」
……ん?お、お出掛け…?デートじゃ、なくて…?
………そういえば歩いている最中も、『陰キャらしい自由で自分勝手で気ままなお出掛け』とか言ってだけど……
ぼっち「……あ、あの………これって、デートじゃ、ないんです、か…?」
ワイ「……えっ?あ、いや……俺達、別に付き合っている訳じゃないし、ただの友達なんだから、デートではないと、思うんだケド……?」
…………じゃあ、ワイくんにとってこれは飽くまでお出掛けであって。デートだと思ってたのは、私の勘違い…?
ワイ「?……あの、ぼっちちゃん?急に黙って、どうしたの…?」
ぼっち「……え、あ、あっ、そのっ……ですよねーー!これはただのお出掛けですよねーーーーっ!
……えっと、その…………また明日ァ!!」
ワイ「え、あっ……また、明日…?」
──う゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ーーー!!!!
そうじゃん当たり前じゃん!私達ただの友達なのに、ずっとデートのつもりでしたーーーッ!勝手にデートだって勘違いしてましたーーーッッ!!ひょっとしたらひょっとするかもって、実はちょっと期待していましたーーーー!!!
- 92ワイ(15)22/12/10(土) 17:32:03
ぼっちちゃんが駅の中へ走り去っていったのを見届けた俺氏。そして残された俺自身はというと…
ワイ(あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛~~~~!!もしかして俺、また何かやっちゃいましたかぁ~~~!?アレたぶん何かにショックを受けている感じじゃん~~~!何でショックを受けたのかピンとこないけど…アレ?もしかしてぼっちちゃん、今回のお出掛け、デートだと思ってた?
……うぎゃァァァァァァァァァ!!??俺デリカシー無さすぎだろォォォォォォ!!ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!これ絶対嫌われてるゥゥゥ!!女の子唆す女の敵だって思われてるゥゥゥゥ!!)
ぼっち『ワイくん、今までお世話になりました。ありがとうございますスターリー降りて下さい』
虹夏『ワイくん、ぼっちちゃんを泣かせたね?…この世に産まれたことを後悔させてあげる』
喜多『………』(^U^)凸
山田『ワイ、今まで貴方から借りたお金返しておくね。ついでにスターリー降りろ』
店長『ぼっちちゃんが世話になったな。ありがとうワイ、この世から降りろ』
- 93ワイ(15)22/12/10(土) 22:19:19
ワイ「──ホ゛ン゛ギャ゛あ゛あ゛っ゛ーーッッ!!」
無理無理無理無理!初めて出来た友達にゴミを見る目で見捨てられたら、絶対に死ぬ!俺の心が壊れる!!ていうかその前に結束バンドの皆さんに殺される!!!
店長「………何やってんだお前」
ワイ「ふおぉっ!? おおおおお待ち下さい!これから一生スターリーで馬車馬のように働きます!どんな時でも働きます!何時間何日何年だって働きます!ですので命だけはっ!命だけはお助けくださいぃぃぃ!!」
店長「おいやめろ、こんなところで土下座しながら命乞いするな。私が悪いことしたみたいだろ。だから額をコンクリートに擦り付けるな!」
……あれ?何コレデジャブ?
店長「………落ち着いたか?まぁ食えよ、今日は奢りだ」
ワイ「はい……ご迷惑お掛けして、すみませんでした……ゴチになりましゅ……」
伊地知星歌店長への土下座事件から数分後、何故か彼女からラーメンをおごって貰うことになった。
店長「……それで?ぼっちちゃんとのデートはどうだったんだ?」
チャーシュー麺を啜りながらそう問い掛けられた俺は、レンゲに乗っけられていた麺と細ネギを咀嚼しながら、店長の質問に答える。
ワイ「………一応、お出掛けのつもりだったんですけど……まぁ、ぼっちちゃんは一応、『楽しかった』と言ってくれてました…」
- 94二次元好きの匿名さん22/12/11(日) 00:20:28
このレスは削除されています
- 95今さらながら台詞修正点orz22/12/11(日) 00:29:13
- 96ワイ(15)22/12/11(日) 00:47:37
店長「ふぅん……まぁ、楽しかったなら良かったじゃないか」
ワイ「イヤ、でもですよ?俺の事を気遣って、そう言ってくれたっていう可能もあるわけですよ?
だってスタバとか映画館とかぼっちちゃんの負担とかあまり考慮出来てなかったし、途中から陰キャらしいお出掛けにシフトチェンジしましたけどあのお出掛けプランって実は彼女の地雷に突っ込んでないですか!? てか、彼女は陽キャ…というよりはリア充に成りたがってた筈なのに、俺と同じ陰キャ扱いされて内心滅茶苦茶怒っている可能性だって──」
店長「やめろやめろ、これ以上のネガティブ発言はやめろ。飯が不味くなる」
ワイ「……あっ、すみません………うぅ、何でいつもこんなん何だろう……ぼっちちゃんが、俺のこと褒めてくれた時もそう……俺のこういう所、ホント嫌になる…」
店長「……はぁ。筋金入りだな、お前のネガティブ思考は」
ワイ「……だからこそ、初めて会った時は"俺と同じ"だと思っていたぼっちちゃんの、あのギター演奏に惹かれたのかなって、今では思います……
本当は、俺なんかとは全然違う、努力と才能に溢れた子なのに……」
- 97二次元好きの匿名さん22/12/11(日) 02:09:28
このレスは削除されています
- 98ワイ(15)22/12/11(日) 12:35:21
そもそも、あの日彼女に……後藤ひとりに話しかけたのは、陽キャ達の席で囲まれてたあの時自分が話し掛けられる席の子が彼女だけであったから。それと同時になんとなく、どこか自分と同じだとシンパシーを感じたから。
挨拶を交わしたり、同じ音楽の趣味を共有したりと、黒と灰色で彩られた俺のキャンパスは、彼女と出会ったことでピンク色のインクで上書きされた。
要するに、彼女と関わり合えるあの日々は、中学生活が始まって以降初めて"楽しい"といえる日々だった、ということだ。
そんなある日、俺は彼女の『もうひとつの姿』を知った。
──彼女が俺と同じ?そんなの大きな間違いだ。
──自分と似た境遇の子を見て安堵していたのか?何様のつもりだお前は。
──心のどこかで自分は、彼女よりも上だと優位性に浸っていたのか?自惚れるのもいい加減にしろ。
彼女はどっかの誰かに迷惑をかけるだけの存在とは違う、そのギターで誰かを幸せに出来る、それだけの腕前と将来性を持っていた。あれだけの腕前を得るには、相当の才能が、あるいは相当の努力が必要だろう。
それに比べて俺は?皆に誇れる才能はあるのか?一度でも努力を欠かさず続けることは出来たのか?
否、そんなわけない。自分にはろくな才能もないし、"自分が何やっても意味がない"と言い訳して努力すらしていなかった。ずっと、同じ場所に立ち止まっていたんだ。
嗚呼、なんて烏滸がましいのだろう。
彼女は、俺の隣なんかには立って無かった。
彼女は、俺がいた場所からずっと先を歩いていたんだ。
- 99ワイ(15)22/12/11(日) 16:00:33
店長「……それで、ぼっちちゃんに追い付くためにお前は、立派なシンガーになりたいって思うようになった。って訳か」
ワイ「えぇ、まぁ……俺に出来る事の中で、一番得意っていえる事が、歌を歌うことぐらいだったので……」
店長「…だが以外だな。お前の場合、すぐにでもぼっちちゃんと距離を取ろうとしても、可笑しくないと思ったんだが」
ワイ「……そりぁ、こんな俺が彼女と一緒に居る資格なんかないし、別に俺がいなくても新しい友達だって…たとえ直ぐじゃなくても、そのうち沢山出来るとは思っていました。
──それでも、俺にとっては初めて、家族以外で親しくなれた人だから……!
──もし此処でまた諦めて逃げたら、俺はもう二度と、彼女の隣に立てなくなる……!
それで……どうせ後悔するなら、少しでも彼女の隣に行こうと足掻いてみてから後悔をしたいと。願いが叶うならそれでよし、駄目なら駄目で少しでも悔いのない結果にしたいと、そう思いました」
これまで、彼女の努力と才能を前に何度も逃げようとした。だが結局諦めきれずに戻ってきて、その度に彼女の隣に立ちたいと足掻いてきた。
……俺が言うのもなんだけど、これは流石に自分でも未練がましいと思う。
「……店長さん。俺ってやっぱり、往生際悪いですかね?」
そう言ってラーメンを食べ終えた俺がそう店長に聞くと、彼女はどんぶりを傾けてスープを飲み、空になったどんぶりをテーブルの上に置いた。
店長「……いや、ロックだよお前も。まだまだ荒削りだけどな」
- 100ぼっち22/12/11(日) 19:45:39
ぼっち「う"う"ぅぅぅぅ~~……!」
わたくし後藤ひとりは現在、自宅の自室の押し入れの中で悶えていました。
……だって、こんなにめんどくさい社会不適合者で、ろくに人と会話できないダメ女にいつも優しく関わってくれる男の子から「一緒に映画を見に行こう」なんて誘われたら、クソチョロ陰キャは絶対に「あれ?もしかしてこの人、私の事好きなのでは?」と勘違いしてしまうだろう。
『ただの友達なんだから、デートではないと、思うんだケド……?』
……分かってる。彼にとって、後藤ひとりは中学の時に知り合った唯一の異性の友達ってだけで、私を映画に誘ったのも特に深い意味は無いって事は。
それはきっと、今でも変わらない。
それを私が勝手に勘違いして、勝手に期待して……う゛あ゛ぁぁぁ~~っ!!
『俺がぼっちちゃんとよく一緒にいるのも、ぼっちちゃん以外に友達が居ないからで。俺自身はひとりじゃ何も出来ない、役立たずでもっと利己的な男なんだ』
……そういえば、ワイくんは自分の事を『何も出来ない、役立たずで利己的な男』だって言っていたっけ……
……でもそれを言い出したら、私だってギター以外何も出来ないし、いつも結束バンドの皆に迷惑かけてる。ギターを始めたのだって、みんなにちやほやされたいっていう不純な動機からだ。
- 101ぼっち22/12/12(月) 00:14:00
──山田さんみたいにカッコ良くもない。
…そんなことない、ワイくんはちゃんとカッコいい。
──虹夏さんや喜多さんのように明るくもコミュ力もない。
…それでも貴方は、私に元気をくれた。私と友達になってくれた。
──ぼっちちゃんのギター演奏みたいに皆に誇れる特技とかない。
…あの時聴いた貴方の歌は、とても上手だった。十分誇っていい特技だと、私は思った。
――俺、ぼっちちゃんが思っている程、優しくないよ。
…私だって、ワイくんが思っている程、優しくなんかない。承認欲求に塗れた、モンスターみたいな女なんだ。
だからワイくん……私が言っても説得力はないけれど、そんなに自分を卑下しないで。
――ぼっちちゃんは自分が思っている以上に、誰かにとっての、俺にとっての救いになっているんだよ。
…ワイくんも、貴方が思っている以上に、私にとっての救いになっているんだから。
ぼっち「………よし」
そして、あの時言いそびれた励ましと、今まで自分と関わってくれた事のお礼を彼へ伝える為、私は紙と鉛筆、そしてギターを手に取った。
- 102ワイ22/12/12(月) 08:58:05
――歌は良い。どんなに辛いことがあっても、歌っている間だけはその事を忘れられる。
例え彼女との間に大きな差があって、自分の力不足を呪いたくなったとしても、歌っている間はその事を忘れられる。
ラーメンをおごって貰った店長にお礼を言って別れ、防音性の高い借家に戻った俺は、あの日からずっと続けている歌のレッスン(独学)を始めた。
といっても、やることは自分が歌った曲と元の曲を聞き比べたり、大して上手くもないキーボードで曲の音階を確認したり、喉を休める日にはネットとかで曲を聴いたりする程度だけど。
――幼い頃、病院生活の時に出会った歌が上手なお婆ちゃんから歌のレッスンをして貰ってからは、家族が居なくて寂しくなったら歌うことで気を紛らわすようになった。
病院に行く必要がなくなって、あのお婆ちゃんに会わなくなった後も、趣味の一環としてよく歌っていた。
そして彼女のギターを聴いてからは、本格的に歌の練習を行うようになった。
――だが遅すぎた努力では、彼女の実力には未だに届かない。
ワイ「……それでも俺には、これしか彼女に追い付く方法が思い付かないからなぁ……」
――それでも、俺は足掻き続ける、今度こそ願いを叶えるために。
- 103ワイ22/12/12(月) 16:49:59
――月曜日。歌唱力上達の為のジョギング数分の後、卵かけご飯と牛乳、バナナを食べ終えたのでそのまま学校へと向かった。その間俺は……
ワイ(逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ……昨日店長さんも言ってたじゃないか、『本人が楽しかったって言ってたんだから、不安に思う必要はないだろ』って!
そう!!だからぼっちちゃんが昨日のお出掛け内容とか、デート≠お出掛け発言とか、滅茶苦茶イキったカッコつけ発言とかに!彼女が怒ったりする事はしないし、『昨日は正直キモかったです』とか『陰キャらしいお出掛けってなんですか?調子に乗らないでください』とか言う筈がございません!もしそんなこと言われたら砂になって死ぬけど、彼女はきっとそんなこと言わないと思うから大丈夫!!……あっ、やばい。お腹が痛くなってきた…)
昨日のお出掛けで、ぼっちちゃんが不平不満を言ってこないかという不安で胃が痛くなっていた。
ワイ(イヤ、俺だって信じたいよ?でもやっぱり不安なんだよ!女の子とお出掛けするのあれが初めてだったし、俺が気付いてないだけで失言とかしまくって、不快にさせた可能性だってあるわけでしょ?一体どこに全く不安を覚えない要素があると思う?不安ありますよ!そりゃもうありまくりですよ!?)
そんなこんなでお腹を痛くしながら、学校でクラスの自分の席についた俺氏。ぼっちちゃんという友達という名の審判がいつ来るのかハラハラしていた。
ワイ(でも、もし万が一彼女が内心怒っていたらどうする?土下座するか?後日菓子折りを持っていくか?謝罪会見を開くか!?……いや、流石に謝罪会見をする必要は……)
ぼっち「わ、わわわワイくん!お、おは、おはよう!」
ワイ「なびぇぇぇ!?」
ぼっち「ピェッ!? ご、ごごご、ごめんなさい!うう上から目線で挨拶してごめんなさい!うま、生まれてきてごめんなさい!!」
ワイ「あ、あっ、いや、違うんです!此方こそ驚かせて申し訳ございません!折角挨拶してくれたのにごめんなさい!いつも同じ空気を吸ってすみませんでした!!」
- 104ろっく・ざ・コソコソ噂話22/12/12(月) 23:55:43
ワイ→ぼっち:初めて出来た友達。彼女のギター演奏に脳みそをウェルダンされた。
ワイ→虹夏:ぼっちに頼まれてスターリーへ赴いた際に出会った先輩。陽キャっぽいけど、まだ話しやすい人。
ワイ→喜多:同学年の圧倒的陽キャ。自前の音感でチューニングを手伝ったり、音階についてのアドバイスを行ったりする仲になった。
ワイ→山田:カッコいいベーシストの人。それはそうと早くお金返してください。
ワイ→店長:家族以外で一番頼れる大人の女性。色々お世話になっているので、その分スターリーを綺麗にしている。 - 105ワイ22/12/13(火) 08:21:08
ワイとぼっちの謝罪大会が幕を開けてから数分後、謝罪大会は先生が教室に入ってきた事を確認されたのちに幕を降ろした。
ワイ(……さて、ぼっちちゃんから昨日の件について聞くかどうか……いや、でも楽しかったどうかを何編も聞くのはアレだよな?もし聞くとしたら、お出掛けの思い出について話をして、それとなく聞くべきなのか…?)
そんな事を考えているうちにホームルームが終わり、ようやく彼女と話が出来ると横を向く。そこには下を俯いてはいるが、ちゃんとぼっちちゃんの姿がある。
ワイ(よし……とりま『昨日は楽しかったね♪何が一番楽しかった?』と聞くことにしよう!俺が思い付く限り、コレが一番のハズ!よーし、聞くぞ~今すぐ聞くぞ~一二の三で……)
ぼっち「あ、あっ、あの!」
ワイ「ホゲッ。…は、はい、なんでしょうか?」
ぼっち「あ、えっと、その……き、今日のお昼、『一番お気に入りの場所』に行きましょう!………だから、その、待ってて、クダサイ…」
ワイ「あっ、はい」
……えっ、なにする感じなんそこで?
- 106二次元好きの匿名さん22/12/13(火) 18:59:49
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- 107ワイ22/12/13(火) 21:20:27
昼休み。俺達は一番お気に入りの場所である、階段下の陰キャスペースへと足を運んだ。
そして一旦お昼を食べる事になったが……なんでぼっちちゃんは急に此処へ来るように言ったのだろうか?
……まさか、昨日の事で話があるとか…!?その場合、一体どんな話をするんだ!?彼女がどんな話をするのか分からんから地味に怖い!!偉い人でもエロい人でも良いから教えて!!
ぼっち「……あ、あ、あっ、あの!ワイくん!!」
ワイ「ヒャイ!? な、なんでしょうか!?」
ぼっち「…こ、これ!」
そう言って彼女が渡してきたのは、お昼の時間まで休みの合間にらめっこして書き込んでいた一冊のノートだった。
ワイ「ぼ、ぼっちちゃん…これって…新しい歌詞?」
彼女が見せてきた所を見てみると、そこにはまだ聞いた事も見たこともない歌詞が書かれていた。
だかノートを受け取ってよく見てみると、今まで彼女が作ってきたネガティブなワードが多く書かれていた歌詞と違い、心なしかポジティブなワードが所々点在しているような気がした。
ぼっち「は、はい……わ、私、ワイくんに会うまで、家族以外でちゃんと会話出来る人が居なくて…友達が、いなくて…さ、寂しかったから……あ、貴方と会えて、本当に、嬉しかったから!」
ワイ「……っ」
ぼっち「だ、だけどワイくん…普通に言っても、ひ、卑下しちゃうから……歌詞にした方が、分かってくれると思って……!……まだ、一番しか出来てないケド…」
……そっか。この歌詞、ぼっちちゃんが俺のために作ってくれたんだ。
- 108ワイ22/12/13(火) 23:16:27
ぼっち「だから、その……もし完成したら、えっと…ワイくんに、歌って欲しいな~……なんて…」
ワイ「………本当に良いの?ぼっちちゃんが考えてくれた奴を、俺なんかが歌っても…」
ぼっち「え、あ、う、うん……ワイくんの為に、作ったから……も、もしワイくんが、みんなの前で歌う事があったら、いつかこの歌を歌って欲しいって、思いながら、作ったから……」
ワイ「…………そっ、か………それじゃあ」
ぼっち「で、でも!……じ、じじじ条件が、ありましゅ!」
ワイ「……えっ?…じ、条件って?」
ぼっち「あ、えっ、と…その……わ、ワイくんには、わた、私の前だけでも、良いから……自分に、優しくなって欲しいです!……それが、この歌詞を歌う、条件と、なっています……」
ワイ「……」
ぼっち「あ、あっ、あっ、その……す、すみません!な、生意気なこと言って…!い、今言った事、全部忘れて……!」
ワイ「わかった」
ぼっち「……へっ?」
ワイ「…俺、頑張って、弱音を吐かない男になる。
……今は受け取れないけど、俺が俺の事を好きになれる日が来たら……自分の事をちゃんと許せるくらいに、余裕のあるシンガーになったら……ぼっちちゃんが作ってくれたその歌詞を、歌って良いですか?」
ぼっち「…は、はいっ!」
ワイ「……うん、ありがとうぼっちちゃん。
――本当に、ありがとう」
- 109日の当たらない私の陽だまり22/12/14(水) 10:23:11
山田「ぼっち、曲出来たからちょっと聞いてみて」
ぼっち「あ、あっ、ありがとうございますリョウさん!」
虹夏「何してるの二人とも?」
喜多「あっ、もしかして新しい曲出来たんですか!」
ぼっち「えっ、あ、あっ、その……こ、今回の歌は、えっと、結束バンドの為じゃなくて、私個人の為に作って貰ったって言うか……す、すみません………」
山田「…これ、新しい曲の歌詞とタイトル」
虹夏「えっ?………あ~、成る程ね~」
喜多「確かにこれは……結束バンドの歌ってより、彼の歌って感じですね」
ワイ「遅れましたー!……あれ?皆さん何してるんですか?」
ぼっち「あ、わ、ワイくん!この間の歌、完成したから、その、一緒に聴いて下さい!」
ワイ「えっ、あれ出来たの?わー、凄いな。……そ、そういえば、曲のタイトルとかまでは聞いてなかったけど……どんなタイトルなの?」
ぼっち「は、はい!た、タイトルは――」
- 110二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 15:17:18
- 111二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 15:31:35
た、沢山あります……ワイくんに、出来ること……!
ワイくんは、私より勉強が出来ます!
ワイくんは、上手に掃除が出来ます!
ワイくんは、いつも誰かに優しく出来ます!
そして…ずっと私の、初めての友達でいることが出来る!