- 1二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 19:48:20
※ただイチャイチャしてるだけ。起承転結も序破急も無い。
「シャカール、水族館に行きたい。」
鏡の中で、毛布からモゾモゾと這い出てくるなりそう強請るトレーナーを見やると、落ちていたブランケットを足で器用に引き寄せて、肩に掛けて、その中で寝巻きを脱ぎ落とし、用意しておいた制服を身にまといながら、
「嫌だよ、このクソ寒ィのに。」
とエアシャカールは言った。
「行きたい。」
しかし、トレーナーは駄々を捏ねた。夢現の狭間にいる人というものは、得てして幼い頃に還るものである。それは彼とて例外ではなかったらしい。布団に包まれた体がもくもくと抗議のように蠢く。
「嫌だっつってんだろ。」
エアシャカールは、そんなトレーナーを見て目を細めた後、トレーナーの方を振り返る。長いまつ毛、まろい頬の柔らかさ、唇の色つや、その一つ一つを微細に至るまで照らすように、10月の冷えた陽光が差し込んでいた。
「何でオレがお前と行かなきゃなんねェんだよ」 - 2二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 19:50:02
「デート。デートしたい。」
「デッ……」
耳と尻尾が面白い程ビクンと跳ね、頬が朱に染る。
「どうしてそこで照れるんだ。」
「テメェが変なこと言うからだろ。」
「変じゃない。俺はただ、シャカールと一緒に出かけたいだけだ。シャカールはどうしてそんなに恥じらうんだ。いつももっと恥ずかしいことするのに。」
「それとこれとは話が別だ。」
「別じゃない。シャカール、俺達は沢山触れ合ってきたのに、デートというものを一度もしたことが無いんだぞ。」
「うるせェ黙れ。」
「シャカール、水族館。」
すると、トレーナーは布団ごとベッドから降りてきて、そのままシャカールに覆いかぶさった。熱の籠っていない、子供じみたじゃれつきだった。モコモコの羽毛の中で、二人が猫のようにもつれ合う。 - 3二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 19:51:33
「おい、止めろバカ。重いんだよ。」
「水族館。行こう。」
「聞けよ話。」
「行こう、シャカール。」
「ああもう、分かったよ、行けばいーんだろ。」
「やった。」
「だから、その、あんまり引っ付くなって言ってんだろ。まず布団取れ。」
「嫌だ。」
「何でだよ。」
「寒い。」
シャカールはため息を吐いて、引き剥がすのを諦めた。ただ抱き合っているだけなのに、制服が“お前達はいけないことをしているんだぞ”と咎めているような気がして、思わず耳をぺたりと伏せる。
トレーナーは呑気に柔らかく笑んで、それから、薄い唇を引き結び、よく研いだ鋏の刃みたいな目をほんの少しだけ見開いた。彼の目は、鋭くはあるが存外大きく、年相応に僅かな幼さを残している。 - 4二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 19:53:10
トレーナーは、時折こうして真面目くさった顔をするが、大抵の場合、わがままを言うとか、甘えてくるとか、そんな風な他愛も無い時だった。
シャカールは、それが嫌いではない。
しかし、一体この男と自分との関係が、どこまで進んでいるのか、時々分からなくなる。
随分と深い所まで踏み込んだ筈なのに、何処かで糸がもつれ合っているような、ごく僅かな引っ掛かりが常に在った。
トレーナーはまるでシャカールの体温や感触を確かめるみたいに、何度も身体に触れて、服越しに肌を撫で、輪郭を辿るように首筋から胸元へと指先を走らせている。
彼の肩口に額を押し当てて、ふぅ、と熱い息を吐いた。
触れる時、トレーナーは愛猫を愛でるような心持ちでシャカールに触れるのだろうが、シャカールの実りつつもまだ熟れきっていない身体は、いつだってその先を求めてしまう。 - 5二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 19:54:30
腹の底に走る甘い痺れを誤魔化すように、トレーナーの肩をそっと押し退けた。
「トレーナー。」
「ん。」
「オレ、今日、学校。普通にあるから。」
「……うん。」
「アンタは今日休みなんだろ。一日寝過ごすなんて勿体ねェことすんなよ。」
「うん。」
トレーナーの目は、未だ微睡みに沈んだまま、じぃっとシャカールを見据えていた。夜の海を流し込んだような、暗い、とろとろとした甘やかな眼光に、ひりついていた腹の底がいよいよ疼き出す。
そうしてシャカールはトレーナーの手を絡め取り、そのまま自身のスカートの中に忍ばせた。
「シャカール。」
指が戸惑いに蠢き、太腿をくすぐる。わざとらしく嬌声を上げてやると、しゅん、と大人しくなった。 - 6二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 19:56:07
「アンタのせいだからな。責任、取ってくれよ」
「え、あ、う。でも、時間、」
「分かってるって。最後まではやんねェよ。ちょっとでいいからさ。な。」
強請るように頬を擦り寄せる。どうにも困ってしまったらしいトレーナーはぐぅ、と呻きながら、細い身体を抱き寄せた。
「…………少しだけだぞ。」
「ん。じゃあ、ここ。」
繋いだ手を、更に奥へと誘う。
「触って、舐めて、擦って。」
「へっ、」
「ってのは冗談だよ。今欲しいのはこっちだ。」
目を閉じて、べ、と舌を出す。すっかり女の色に染まった、紅い舌。うぅ、と幼子によく似た鳴き声を漏らすトレーナーの、苦悩と羞恥に満ち満ちた相貌を、薄く開けた瞼の隙間からこっそりと盗み見たシャカールは、笑った。
「ほら、早く。」 - 7二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 19:57:25
「う、うん。」
トレーナーは、恐る恐る、シャカールの小さな口の中に、自分の舌を差し入れた。
ぴちゃ、ちゅる、と水音がする。鼓膜を突き破り、脳髄を揺さぶられているような気がした。
「ふっ、ん、ぁ、」
「はぁ、ぁ、シャカール、」
「ん……、なぁ、もっと、」
「うん……。」
トレーナーの背に回された腕は、まるでしがみつくみたいに彼のシャツを強く握り締めている。
頭を優しく抱え込まれ、彼女は、とろん、と蕩けた表情で、夢中でトレーナーの唇を食んだ。
「あっ、は、」
「シャカール……かわいい。」
「ふぁ、とれーな、」 - 8二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 19:58:51
トレーナーの掌が、シャカールの太腿をなぞる。
薄いニーハイソックスに包まれた脚は、手触りが良いらしい。ふわふわと柔らかいのにぴんと張りがあって、そして滑らかな肌を擽られ、身をよじる。
「んっ、くすぐったい。」
「ごめん。」
「ん……ふふ、オマエ、ほんとすぐ謝るよな。」
「うん。」
トレーナーは、すり、とシャカールの額に自身の額を寄せて、甘えるようにぐりぐりと押し付けた。
「だって、俺が悪いことしたら、ちゃんと謝らないと、」
「うん。」
「それで、ちゃんと反省して、それから、シャカールのこといっぱい、いっぱい、可愛がる。」
「何だそりゃ。」
シャカールはもう堪らなくて、きゃっきゃと笑った。この男は何て可愛いのだろうと頬に唇を押し付ける。 - 9二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:00:21
「はー、おもしろ。オマエのそういうとこ、結構好きだぜ。」
「ん。嬉しい。」
シャカールは、トレーナーの首筋を撫でて、耳をふわりと食んで、そうするとトレーナーは、ふにゃり、と笑ってみせた。
「はは、可愛い。トレーナー。」
「ん、」
「それなら、いっぱい可愛がってくれよ。」
トレーナーの膝に跨り、首筋を晒すシャカールの姿は、目に痛いほど蠱惑的だった。
白磁の肌はサッと刷毛で撫ぜたように薄桃色に上気し、熱を帯びた吐息が絶えずトレーナーの頬を掠める。
誘われるがままに彼女の首筋に吸い付いた。
「ん、あ、」
「……痛かった?」 - 10二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:01:43
「いや、……」
「そっか。」
「ん。」
シャカールは、トレーナーの頭を引き寄せて、今度は自ら口付けた。
「ん、」
「ん、んぅ、」
トレーナーは、おずおずと、しかししっかりとシャカールの腰を抱いて、口付けに応えた。
舌先で歯列をなぞられ、不意に肩がぴくりと跳ねる。
刹那、頭のてっぺんから爪先まで、びりりと電流が走り、ぴん、と身体が強張って、確かな絶頂の感覚に、とうとうシャカールはトレーナーの胸板を叩いた。
「しつこい。」
「あ、ごめ、」
「別にいいけどさ。」
顎を引くようにして俯き、耳をぺたりと伏せる。 - 11二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:03:07
「あんまりいじめるなよ。」
「ごめん。」
トレーナーは、シャカールを抱き寄せて、肩口に顔を埋めた。
くすぐったいと笑いながら彼の髪を撫でてやると、背に回された腕に力が篭もる。
シャカールは、トレーナーの髪が好きだった。
自分のものとは違う、少し硬い髪の毛。起きたばかりの今は無邪気に、出鱈目にぴょこぴょこと跳ねている。
「シャカール。」
「ん?」
「時間。」
「……まだ。あと少し。」
くしゃりと髪をかき混ぜ、うなじ、背、腰と降ろしていく。
トレーナーの身体は、決して華奢というわけではないが、思い切り引き絞ったワイヤーによく似ていて、矢張り細い。背の筋を爪の先でつつ、となぞると、腕の中の身体が震えた。 - 12二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:04:37
「んっ。」
「オマエも結構敏感だよな。」
「シャカールが、触るから。」
「ふぅん。」
「シャカールのせいで変になったんだ。」
「お互いサマだろ?オレだって、ほら。」
そう囁きながらトレーナーの手を取って、自身の腹に押し当てた。
一瞬、指先が動揺の色に蠢くが、はっと息を呑む音がしたかと思うと、手のひらを這わせる。
薄い腹筋の上に、うっすらと乗っている脂肪を押すように撫でるその手は温かい。
シャカールは、くつくつと喉で笑った。骨と筋だけの、病的なまでに絞られていた筈の肉体は、未だ健康とは言い難いものの、年頃の少女のそれに成りつつ在るのだ。
「何だか、」
「ん?」 - 13二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:05:46
「少し柔らかくなった気がする。」
「だろ?」
「うん。」
「オマエが、いっぱい食わせるからな。」
「うん。」
「オマエが、毎日いっぱい触るから。」
シャカールは、トレーナーの胸に顔を擦り付ける。
「俺のせいか。」
「違ェよ。アンタのおかげ。」
「おかげ。」
「うん。」
「会った頃は本当に細かった。シャカールが健康的になってくれると、俺は安心する。」
「そうかよ。」
「うん。」 - 14二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:07:16
「ふぅん。」
シャカールは、トレーナーの心臓に自身のそれを重ねるようにして、鼓動を感じていた。彼に全てを預け切って、神経を、細胞を、蕩かしてしなだれかかっている。
トレーナーに、なるだけ形を崩さないように髪を撫でられ、それから、耳の付け根を優しく掻かれ、益々深い悦楽に沈んでいく感覚に、うっとりと目を細めた。
暫くそうして抱き合っていると、五臓六腑を這い回っていた劣情が、不思議と凪いでいく。
「トレーナー。」
「ん。」
「オレ、そろそろ行くわ。」
「ん。行ってらっしゃい。チケット、買ってくるから。行こうな、水族館。」
「分かってるよ。」
行ってきます、の代わりに、唇を啄んだ。 - 15二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:07:49
以上です。なんでこんなに長くなったのか自分でも分かりません。許して。
- 16二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:08:23
官能小説じゃねーか!!!!!
- 17二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:08:49
おつおつ、すごくよかった
なんと淫靡なSSなんだ…もっと読みたいくらい - 18二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:10:37
おちんちんふっくらした
- 19二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:15:43
素晴らしいSSだった 淫靡ではあるんだけど、いやらしい感じじゃなくてハチミツみたいな甘さというか、綺麗な官能小説って感じ
- 20二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:40:23
お互いにお互いのこと可愛いと思ってるのが本当に好き
- 21二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:49:50
許すどころか拝み倒す
- 22二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:53:28
このレスは削除されています
- 23二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:55:35
面白かった、甘ラブイチャイチャはたくさん流行るべき
- 24二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:56:44
俺は好きだからな!!!!!!!!!!
- 25二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 20:57:45
は?オレはスレ主の書くSSが大好きだあああああ!!!!!!!!
- 26二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 21:00:34
全編甘くて好きなんだけど
>「だって、俺が悪いことしたら、ちゃんと謝らないと、」
「うん。」
「それで、ちゃんと反省して、それから、シャカールのこといっぱい、いっぱい、可愛がる。」
「何だそりゃ。」
が好きすぎてヤバい(ヤバい)
- 27二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 21:05:45
くっそ休憩中に見るもんじゃねかった…
甘い気分が感染ってしまう… - 28二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 21:12:00
- 29二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 21:17:08
ナチュラルに同棲してる!!!!!
いや、外泊か……?外泊かさすがに……
いや外泊は外泊で大分進んでるんだけど - 30二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 21:17:49
最後までしたことあるんですか!?
- 31二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 22:13:05
“最後まで”というのが本当に最後までなのか、二人の中での最後なのかで妄想が捗る
- 32二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 22:48:20
こういう文章書ける人って本当に尊敬する。
- 33二次元好きの匿名さん21/10/30(土) 22:51:06
めちゃくちゃ甘くて官能的なのに、二人の会話がほのぼのとしているのがすごく良い
独特の距離感だよなぁ 好き - 34二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 00:08:29
すごいかわいいんだけど何がこんなにかわいいと感じさせるのかわからない
でもかわいい - 35二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 08:55:45
長ぇ!でも最高だ!