【銀英伝】女軍人が民主主義を守り抜く【ダイス・安価】

  • 1122/12/04(日) 12:50:32

    これは、自由惑星同盟に生を享けた女軍人が、民主主義を守る戦い身を投じてゆく物語である…。


    彼女の名前は >>2>>3

    年齢は dice1d10=4 (4) +20

    階級は少尉。


    彼女が歴史の舞台に姿を現すのは、宇宙歴792年…第五次イゼルローン攻防戦においてである。

  • 2二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 12:51:05

    ガルカシア

  • 3二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 12:51:07

    コロノモロサ

  • 4122/12/04(日) 12:54:18

    ガルカシア・コロノモロサ 年齢24歳 同盟軍少尉


    配属先は dice1d3=2 (2) 艦隊の駆逐艦

    1.シトレ

    2.グリーンヒル

    3.ビュコック


    彼女の主任務は>>5である。

  • 5二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 13:17:36

    砲術長

  • 6122/12/04(日) 13:35:53

    五万隻を超える大艦隊を率い、イゼルローンの攻略を目指して進撃を開始するシトレ以下同盟軍。


    ガルカシアはグリーンヒル提督の第四艦隊に所属する駆逐艦>>7の砲術長として任に当たっていた。

    同盟軍はイゼルローン要塞前面に布陣を完了する。


    ガルカシアの性格 dice1d100=16 (16)

    1〜35 根暗、引っ込み思案

    36〜70 冷静、真面目

    71〜100 豪胆、好戦的


    ガルカシアの能力

    砲術の技能 dice1d100=94 (94)

    戦術眼 dice1d100=17 (17)

  • 7二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 13:37:55

    スクラップシップ

  • 8122/12/04(日) 13:54:50

    〜駆逐艦"スクラップ・シップ" ブリッジ〜

    航海長「定刻、ワープ完了しました。出現座標、誤差0.01%未満」

    艦長「各部署の状況報告!」

    ガルカシア「(ビクッ)しゅ、主砲動力系統および、レール・キャノン給弾システム、並びに各種砲撃管制装置、い、異常なしであります!」

    ガルカシア(あ〜あ、ロクな遺書も書けないままイゼルローンに来ちゃったなぁ…)

    戦術指揮能力および対人コミュニケーションにおいて「改善の余地有り」と断じられたガルカシアは、士官学校開設以来TOP10に数えられるとされる砲術の腕のみを買われ、現在イゼルローン攻略の途上にある。
    何かにつけて自らを悲観的に評する人生を歩んできた彼女だが、今回それに終止符が打たれるように思えてならない。

    ガルカシア(いっそ校長も落第させてくれればよかったのに…とほほ〜)

    かつて校長と呼んでいた総司令官・シトレの雄大な姿形を想像し一人ごちる。
    "スクラップ・シップ"は敢えて縁起の悪い艦名をつけ、逆に悪運を吹き飛ばそうとの意図で命名されたらしいが、「名は体を現す」の例となるかに思われる。

  • 9二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 13:56:51

    君……スナイパーのほうが良くない?

  • 10122/12/04(日) 14:07:23

    "スクラップ・シップ"は第二陣にあり、眼前で繰り広げられる砲火の応酬に加わるのに、あと三十分ほどはありそうである。
    一見激烈に見える一連の戦いも、雷神様がご自慢の槌を振るう前の座興に過ぎないのだ。

    シトレにはそうさせぬための腹案があるらしいが…

    ビーッ!ビーッ!ビーッ!ビーッ!
    ガルカシア「ひゃいっ」

    艦長「何か!?」

    船務長「索敵システムに感アリ!帝国軍の小部隊が我が方に急速接近!」

    敵の巡航艦が十数隻の駆逐艦を引き連れている光景がモニターに表示される。小規模な機動部隊だが、それが"スクラップ・シップ"の属する部隊の旗艦めがけ、猛烈な勢いで接近しているとのことであった。

    艦長「いかんな…!止められそうか」

    戦術長「敵の動きが速すぎます。現在迎撃可能な位置にいるのは…当艦のみです!」

    「嫌な予感」という名前の鬼が、ガルカシアの背中をひと舐めした…。

  • 11122/12/04(日) 14:15:28

    ☆昇進チャンス!

    敵機動部隊を迎撃し、味方の旗艦を守れ!


    >>12>>13>>14の方にはdice1d100を振っていただきます。その合計が大きいほど戦功を上げることができ、"昇進ポイント"を獲得できます。


    合計数1〜50

    敵の迎撃に失敗!旗艦は大破し部隊は後退…。

    (昇進ポイント:0)


    合計数51〜80

    旗艦は被弾するも、どうにか敵を追い散らす。

    (昇進ポイント:10)


    合計数81〜120

    敵の機先を制し、旗艦には傷一つつけることなく撃退。(昇進ポイント:20)


    合計数121〜150

    敵の巡航艦を撃沈!敵部隊の壊滅に成功!

    (昇進ポイント:30)


    砲術の技能がずば抜けているガルカシアは、合計数に+30のボーナスが付きます。

  • 12二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 14:20:52

    dice1d100=78 (78)

  • 13二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 14:55:30

    dice1d100=99 (99)

  • 14二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 15:04:28

    いっけー!dice1d100=91 (91)

  • 15二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 15:05:38

    これは…もろもろ込みで298か、ヤバいな

  • 16二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 15:31:00

    合計数イカレてて草
    敵部隊殲滅してない?

  • 17二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 15:31:00

    300って…全滅させてない?

  • 18二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 15:35:58

    いきなりなろう系みたいな展開で笑う
    このぐらい誰でも出来るでしょ?とか言いそう

  • 19二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 15:37:26

    >>18

    ピンポイントに燃料庫を狙い撃ちして一番誘爆しそうな艦隊を打ち抜いて

    最小限の弾数で敵部隊を殲滅してそう

  • 20122/12/04(日) 15:44:40

    艦長「増速!敵の先頭集団を叩き、旗艦を救援する!」

    艦全体が出力の増大を示す唸りを上げ、慣性制御の効いた艦内の人間にも分かるほど、その足を速める。

    ガルカシア(こんな時一番責任重大なのが私なんだもんなぁ〜…うう)

    駆逐艦一隻で十数倍の敵を覆滅しうる筈もない。
    要するに敵の鼻面を叩いて足を止め、僚艦が助けに来るまでの時を稼ぐのだ。

    言うのは簡単だが、勢いのついた敵に攻撃するタイミングを誤れば、守るべき旗艦は撃沈され、その次は"スクラップ・シップ"が餌食となろう。その前に旗艦の爆発に巻き込まれることもあるが…。

    要するに艦の運命が、ガルカシアの砲術にかかっている。

  • 21二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 15:53:57

    この冒頭から大金星が生まれたのか

  • 22122/12/04(日) 16:41:59

    索敵システムからの情報を統合した結果、敵機動部隊は旗艦の2時〜3時方向より迫っている。"スクラップ・シップ"は旗艦の5時方向に位置しており、このまま直進すると敵の左側面を突ける。

    厄介なのは敵の陣形で、巡航艦の左右を駆逐艦数隻ずつが固めていた。"スクラップ・シップ"の火力では左側の「防壁」を崩すのが精一杯で、残りの敵は構わず前進を続けるだろう。

    ガルカシア「りゅ、榴散弾用意っ!」

    砲術長らしく命ずる間にも、ガルカシアは敵味方の速度および進路、恒星風、重力源、位相の歪みといった数値をシステムに放り込み、各砲塔への送信を済ませている。
    驚異的な速度だが、「数字は怒鳴ったり睨んだらしないから」というのがガルカシアの主張する所である。

    "スクラップ・シップ"の砲門が開いた。

    ガルカシア「撃てーっ!」

  • 23二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 16:49:50

    すげ…

  • 24122/12/04(日) 17:00:12

    撃ち放ったのは青く輝く中性子ビームではなく、白銀の磁力砲弾である。"スクラップ・シップ"を始めとする駆逐艦は、磁力砲弾やミサイルといった実体弾を多数搭載している(その分防御力は劣るが)。

    榴散弾は1時の方向に直進すると敵左側の駆逐艦…の眼前で炸裂し、爆風の華を咲かせた。敵艦に命中させず、爆風によって駆逐艦の足を止める…そのための弾道計算を、敵味方が動く条件で実現させてみせたのだ。

    今、直進する"スクラップ・シップ"の目の前には、眼前の大魚を逃すべからずと猛進する帝国巡航艦の無防備な左側面がある。巡航艦が乱入者に気付き、爆風で足止めされた駆逐艦が迂回せんとしたその時、"スクラップ・シップ"の主砲は敵巡航艦を射程に収めていた。

    中性子ビームが、磁力砲弾が巡航艦の一点に吸い込まれてゆくよう殺到し、中和磁場の耐圧限界を突破する。

    一回り大きい巡航艦が真っ二つに引き裂かれていく様を、天底方向に退避した"スクラップ・シップ'は頭上に見ていた…。

  • 25122/12/04(日) 17:12:10

    戦術長「敵巡航艦撃沈!」

    艦長「よし…!」

    通信士「味方旗艦より入電。『救援に感謝ス』とのことです」

    自分達を嚮導していた巡航艦を失い、戦意と秩序を失う敵機動部隊。僚艦も次々と到着して同盟軍は優勢を確保し、"スクラップ・シップ"は一息ついた。

    ガルカシア「やったぁ…」

    この「やった」は戦功を誇っているのではなく、失敗して針の筵になる事態を避けたことへの安堵である。


    その後知っての通り、同盟軍は並行追撃戦法によってトゥール・ハンマーを無効化し善戦するも、結局は敗退するのだが…

    ガルカシア「ひぇぇぇぇ!近い!近いですよ!敵も味方も航路情報消えちゃったんですかぁぁぁ!?」

    かつての恩師の意図も分からないガルカシアは、喚きながら任務を果たすだけであった…。

  • 26122/12/04(日) 17:16:39

    ☆論功行賞


    少尉→中尉への昇進には昇進ポイントが50必要です。

    余ったポイントは蓄積され、それ以降に持ち越されます。


    今回の昇進ポイント

    dice3d10=9 4 4 (17) ポイント +30ポイント

  • 27二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 17:18:29

    もうちょいやんけ!

  • 28122/12/04(日) 17:37:08

    第五次イゼルローン攻防戦の戦功で、人事評価が少し上がったガルカシア。

    二年後の宇宙歴794年、同盟のヴァンフリート星域において会戦が勃発。"スクラップ・シップ"は dice1d3=2 (2) 艦隊に所属し参戦していたが…

    1.司令部直属

    2.ビュコック

    3.ボロディン


    艦長「くそ、どうなっとる!敵はどこにいて、味方はどこをほっつき歩いとるんだ!」


    航海長「それより我々がどこにいるか、を確かめるのが先と思われますが」


    ガルカシア(敵も味方もみんな迷子ってこと…?)


    ヴァンフリート星域における会戦では、両軍ともに統一した艦隊運用を行うことままならず、敵味方の位置も把握できない醜態を晒していた。


    発射スイッチに手をかける時も来ないまま、士官学校での航法演習で危うく遭難しかけたことを思い出すガルカシア。


    ガルカシア(まさか二年続けて遭難未遂者が出るとは思わんかったぞ!とかどやされたっけ…)


    ガルカシアの前年に遭難しかけた士官学校生、その名をヤン・ウェンリーといった。

  • 29122/12/04(日) 17:59:22

    敵味方の位置を探し求め、それでいて迂闊に合流もできない状況下で彷徨う、ビュコック率いる第五艦隊。"スクラップ・シップ"も戦闘に与ることはなく、暫くは漫然と航行を続けていた。


    ブリッジに集合するよう艦長から告げられたのは、ガルカシアが自室で趣味の>>30をしている最中である。


    艦長「我々の目標地点が定まった。ヴァンフリート第四惑星の…」


    ヴァンフリート第四惑星の第二衛星、ヴァンフリート4=2には同盟軍の補給基地が存在する。そこが帝国軍本隊より派遣された艦隊に攻撃を受け、救援を求める通信が第五艦隊に齎されたのだ。


    戦術長「罠かもしれませんが…」


    艦長「ビュコック閣下もそれはお考えだろうが、永遠に放浪し続ける物資やエネルギーは我々にはない。第一、そんな策を弄する敵であれば、もっとマシな戦いをしてくるだろうさ」


    ガルカシア(よ、良かった。これで生き残れば帰れそう、かな…?)


    膠着状態からの脱却を望むビュコックの指示の下、第五艦隊はヴァンフリート4=2へ進路を取った。

  • 30二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 18:05:13

    一人焼き肉

  • 31122/12/04(日) 18:20:55

    ガルカシア(ハイネセンに帰ったら休暇取って〜…奮発してカッファー産A5ランク牛でも買っちゃおうかな?)

    ガルカシアが自席に在り、生還後の展望を思い描いている間に、第五艦隊はヴァンフリート4=2周辺宙域に到着した。

    艦長「ひどく狭いな…」

    航海長「ヴァンフリート自体不安定な恒星ですからね。磁場や太陽風の影響で航行不能宙域も…」

    船務長「前方に艦影!データ照合…帝国軍です!」

    壁を思わせる光点の群れ…第五艦隊よりも多かろう…が現れた。ミュッケンベルガー元帥率いる帝国軍も、第五艦隊への対応による膠着状態の打開を目指しているようだった。

    第五艦隊旗艦"リオ・グランデ"からの指示を"スクラップ・シップ"は受領した。第十二艦隊来援のため、所定の宙域を確保せよ…

    航海長「座標設定完了!」

    艦長「よし、前進!」

  • 32122/12/04(日) 20:21:46

    "リオ・グランデ"から指定された宙域へと急ぐ"スクラップ・シップ"。伝え聞いたよりも遥かに狭隘で複雑な宙域を進む中で、艦艇の中和磁場どうしが擦れる振動を幾度も感じる。

    ガルカシア(こんな時は装甲の厚い戦艦が羨ましいよ〜…)

    味方の戦艦や母艦(空母)に衝突するような死に方はごめん被りたい。何より、誰かのトラウマや罪悪感を構成する一要素となるのはぞっとしない…。

    通信士「艦長!先行していた味方より通信です」

    味方戦闘集団からの通信は、端的に言うと助けを求めてのものだった。第十二艦隊が展開するための宙域を確保するために進出したが、敵砲艦部隊の集中砲火を受け、陣形の維持もままならぬという。

    艦長「敵もこちらの狙いには気づいているようだな…」

    戦術長「艦長。味方の突撃部隊より指示を請う旨の通信が入っておりますが」

    駆逐艦とスパルタニアンを主体とする突撃部隊であったが、敵の砲撃によって旗艦が戦闘続行不能となってしまったという。戦区において再先任の艦長、ひいては"スクラップ・シップ"に指揮官の代理たるを求めているのだった。

  • 3322/12/04(日) 21:51:08

    艦長「…承った。各艦とのデ―タリンク開始!」


    ”スクラップ・シップ”を新たな旗艦と定め、にわか突撃部隊は秩序を回復する。

    ガルカシアは事実上、十数隻の味方の砲撃を主導する指揮官になったと言えるかもしれない。


    ガルカシア「み、皆それぞれ上手くやってくれる…よね?」


    百隻単位を超える艦隊の場合、デ―タリンクによって旗艦が麾下にある全艦の砲術を集中制御することもある。

    一時的にしろ、たかだか十数隻の上に立つだけで尻込みするガルカシアには、恐らくは永遠に無理な話である。

    …あるいは強制的に慣れさせられるかもしれないが。


    艦長「全艦、突撃!」


    ☆昇進チャンス!

    敵砲艦部隊を撃滅せよ!


    >>34、>>35、>>36の方はdice1d60を振ってください。


    合計数1~50:突撃部隊壊滅!危うい所を増援に救われる。(昇進ポイント:0)


    合計数51~100:突撃部隊は半減という被害を受けるも、任務成功。(昇進ポイント:10)


    合計数101~150:被害を最小限に食い止めつつ、任務成功。(昇進ポイント:20)


    合計数151~200:任務成功に加え、増援によって敵に大打撃!(昇進ポイント:30)


    ガルカシアの砲術技能によるボーナス:+20

  • 34二次元好きの匿名さん22/12/04(日) 22:38:01

    dice1d60=1 (1)

  • 35黒幕ちゃん22/12/05(月) 01:40:49

    dice1d60=19 (19)

  • 36二次元好きの匿名さん22/12/05(月) 10:01:21

    dice1d100=43 (43)

  • 37122/12/05(月) 17:20:52

    "スクラップ・シップ"が臨時の旗艦を務める突撃部隊の10時方向に敵の砲艦部隊が位置し、宙域の確保を目指す味方に間断ない砲撃を叩きつけている。
    機動力のない砲艦に対しては一気に肉薄して無力化するのが定席ではあるが、今回のように狭隘な戦場では、陣形を保ちながらの回避行動も困難である。

    "スクラップ・シップ"の指揮一下、突撃部隊はあたかも敵の砲撃を避けるように、2時方向へと進む。航行可能宙域ぎりぎりを辿る如き航跡だ。

    航海長「コップの縁を進んでいるような気がするぜ…」

    ガルカシアは皮肉を言う余裕もなく、ブリッジの窓から飛び込んでくる光景を見ながら首をすくめている。
    彼女には気付きようもなかったが、この時突撃部隊は砲艦部隊に最短距離で接近するのではなく、その左翼側に位置する敵の側面を突くように動いていた。周辺宙域の狭さを利し、砲艦部隊の方角へ押し込むと言うのが、その意図である。

    船務長「敵艦隊確認!」

    果たして、帝国軍の新手は味方突撃部隊と敵砲艦部隊の間に割り込む位置に現れた。援護のためか、功績を求めてのことか、はたまた狭い戦場で彷徨ううちに流れ着いたのか…。

  • 38122/12/05(月) 17:49:06

    敵の編成は戦艦一隻を中心に、巡航艦数隻がそれに続いている。防御力では隔絶しているが、彼我の距離が小さい場合、火力を発揮しやすいのは小回りのきく駆逐艦の方だ。敵が距離を取ろうとするなら、砲艦部隊の方向に押し込むとの作戦は成功しやすくなる。

    艦長「全艦、距離を詰めよ!母艦はスパルタニアンを出せ!」

    突撃部隊が速度を増し、スパルタニアンを展開しながら敵の新手に向かってゆく。この間にも、友軍は砲艦部隊の目を引きつけるために前進と後退を繰り返している。やがてレール・キャノンの射程距離に入った瞬間…

    戦術長「!!敵巡航艦接近!ワルキューレの発艦も確認しました」

    敵の即応能力には見るべき所があるようで、こちらの足を止めるべく先手を打ってきた。先行していた二隻の味方が砲撃の前に四散し、爆風を突っ切って敵のワルキューレが向かってくる。

    艦長「対空戦闘!」

    ガルカシア「は、はーいっ!…ワルキューレは小さくて狙いづらいのに〜…」

    ぼやくガルカシアだが、実の所ガルカシアは対空戦闘の方に長じている。ワルキューレ、スパルタニアンは小型のため宙域の地理的条件に進路を左右されやすく、砲塔や機関部など、狙われやすい箇所も分かるため、射撃ポイントの予測は難しくないのだ。…ガルカシアにとっては。

  • 39122/12/05(月) 19:31:53

    "スクラップ・シップ"両舷の対空迎撃兵装が稼働し、中性子ビームがワルキューレ目掛けて奔る。
    主砲と比べるとまるで短針だが、敵一機につき一発のビームが突き刺さり、周囲に火球を量産する。
    命中不可能と判断した敵機にはその至近を狙い、味方の射角に追い込むことも忘れない。

    それでも先手を取られた不利は大きく、敵戦艦からの砲撃で爆沈する僚艦、ワルキューレに纏わりつかれて各所に損傷を負う僚艦が視界に飛び込む。
    敵の妨害で索敵システムがダウンした味方から、砲撃支援の要請がガルカシアに寄せられた。

    ガルカシア「そっちで何とかしてよ〜私らだって暇じゃないんだからぁ!」

    忙しなくコンソールを叩き、算出した射撃ポイントを罵声と共に送信する。どうにかワルキューレの攻撃を退けたはいいが、今度は敵戦艦および巡航艦の砲撃が激しさを増してきた。

    応射する中で、ガルカシアは眼前に浮遊する"それ"の存在に気づく。

  • 40122/12/05(月) 20:22:07

    ガルカシア(あれ、味方の…)

    先だって撃沈された味方駆逐艦の残骸が、エネルギー流に乗って漂っている。
    そしてガルカシアの領分だからこそ分かったことだが、それは弾薬庫の区画であった。どうやら引火する前に艦体が四散したらしい。

    ガルカシアは徐に砲術システムを操作し、残骸に命中させるための弾道計算を行う。この時、彼女には確たる戦術的構想などなく、単に「敵の近くで爆発すればあっちも困るかもなぁ」ぐらいの考えしか持ち合わせていない。また、他者と違うことをして耳目を集めようとの意図があるどころか、

    ガルカシア(余計なことするなって怒られるかもしんないから、味方の砲撃と間違えるように撃たなきゃ…)

    などと余計なことを脳裏で呟いていた。
    果たして"スクラップ・シップ"の主砲は「さりげなく」狙点を合わせ、中性子ビームが弾薬庫ごと残骸を貫いた。急激に生じた爆風を避け、やや陣形を乱す敵艦隊。

    だが、味方の反応はガルカシアの想像を遥かに超えていた。

  • 41122/12/05(月) 20:37:47

    ガルカシア「わわっ」

    間抜けな声と共にガルカシアが自席で仰け反ったのは、ブリッジの窓を隔てた目の前を、高速で横切る影があったからだ。それは防空を強いられ、鬱憤が溜まっていたスパルタニアンだった。

    艦長「今だ!全艦、最大戦速!」

    ガルカシア「はい!?」

    "スクラップ・シップ"を魁とする反転攻勢命令…ガルカシアは気づかなかったが、先ほどの残骸への砲撃が趨勢を一変させる契機となっていたのだ。

    より正確に言うなら、彼女一人の手によるものではない。何となしに残骸を狙っていた時、対空戦闘時からの砲術データリンクを行っていた僚艦が、「あのポイントに集中砲火を加える」ことが"スクラップ・シップ"からの指示だと誤認し、結果として敵陣に亀裂を生じさせていたのである。

    中性子ビームと磁力砲弾が殺到する宙点から逃れようとする敵巡航艦を押し除けるように、突撃部隊は前進を続けた。

  • 42122/12/05(月) 23:28:11

    行く手に天頂へと伸びる巨大な火柱が上がる。
    砲撃で生じた亀裂から敵陣深くに斬り込んだスパルタニアンが遥かに大きな質量の戦艦に肉薄し、ミサイルの発射孔に雷撃を叩き込んだのだ、
    目に見えて動揺する巡航艦に雷雨の如き砲撃を叩き込む突撃部隊。この段階に至るとガルカシアの砲術の才を発揮する余地はなく、

    ガルカシア(今度からはちゃんとデータリンクの接続確認しとこ…)

    己の不注意を猛省しながら、命ぜられるままに斉射を指示し続けていた。周囲の味方は、開戦時の半数ほどに減っている…。

    そして2時間後、発射機構をフル稼働させていた帝国軍砲艦部隊の動きが、突如として統一性を欠き始めた。(砲艦部隊から見て)9時方向の味方が、同盟軍に押されて雪崩れ込んできたためだ。
    その機を逃すことなく、前面に展開していた同盟軍は一挙に反攻に転じ、小さからぬ被害を出した帝国軍は戦域から後退していった。

    ボロディン率いる第十二艦隊が増援として来着すると、"スクラップ・シップ"は後方に下がり、当会戦での役目を終えた。
    戦略的にさしたる意味のないこの戦いは、ガルカシアの人事評価をやや上昇させるだけの結果に終わった。

  • 43122/12/05(月) 23:30:12

    ☆論功行賞


    現在の昇進ポイント:47

    少尉→中尉まで残り3ポイント


    今回の昇進ポイント

    dice3d10=7 4 5 (16) +10ポイント

  • 44122/12/05(月) 23:32:48

    おめでとう!
    宇宙歴794年、ガルカシア・コロノモロサは中尉に昇進いたしました!

    現在の昇進ポイント:13
    中尉→大尉まで残り57ポイント

  • 45122/12/06(火) 08:18:06

    ヴァンフリート星域での会戦から数ヶ月後、同盟軍は六度目となるイゼルローン要塞攻略を目指して進発し、例の如く大敗を喫していた。


    "スクラップ・シップ"は攻略に参加していない第五艦隊に所属していたこと、艦自体がオーバーホールを要していたことから、前線には出ず整備と訓練の日々を過ごしていた。


    そして年の明けた宇宙歴795年。

    訓練に参加したり、人事異動で一喜一憂してそれなりに多忙であったガルカシア少尉あらため中尉は、休暇の取得を考えていた。 >>46


    1.「もっと疲れが溜まってから取った方がいいかな」→第三次ティアマト会戦へ


    2.「いつ取れなくなるか分からないしすぐに取っちゃおう」→第四次ティアマト会戦へ

  • 46二次元好きの匿名さん22/12/06(火) 09:39:53

    2
    彼女のプライベートを見てみたい

  • 47122/12/06(火) 11:23:00

    休暇の取得に成功したガルカシアは、一先ず首都の郊外にある官舎へと戻った。期間は二週間である。


    ガルカシア「ただいま〜」


    とは言ったが、ガルカシアは一人暮らしであり、帰宅の挨拶をする相手はいない。彼女はマーロヴィア星域の有人惑星出身で、士官学校入学を機にハイネセンでの下宿生活を始めた。


    マーロヴィア星域は同名の橿域内でも屈指のド田舎であり、そこでは両親と dice1d7=1 (1) 人の兄弟が暮らしている。帰省するとなると、一泊二日の滞在としても10日は要するため、今回は最初からプランに入れていない。


    ガルカシア「一週目は何をしようかな…」 dice1d3=1 (1)


    1.付近の惑星に小旅行

    2.友人が泊まりに来る

    3.>>48

  • 48122/12/06(火) 12:06:50

    ガルカシア「…お」

    端末を操作していたガルカシアが目に留めたのは、ハイネセン近隣の惑星であるテルヌーゼンで開催されるイベントであった。各惑星で産出される高級肉や、帝国の肉料理を楽しむことができるのだという。

    ガルカシア「3日後なら間に合うよね、よしっ」

    ガルカシアにとってほぼ唯一の趣味と言えるのが一人焼肉である。そこから派生し、あらゆる肉料理を食べ歩くことは彼女の人生を彩るうえで肝心な要素であった。

    〜ハイネセン宇宙港〜

    テルヌーゼン行きの便が出るまで30分ほど。イベントの案内を見直していると、ロビー内のモニターが中継を行っていた。

    キャスター『…以上、第六次イゼルローン攻防戦において奮戦したウィレム・ホーランド提督への直撃取材でした!かのブルース・アッシュビーの再来と謳われる勇将であるホーランド提督の…』

    宇宙船への乗り込み案内の放送が流れ、ガルカシアはモニターに興味も示さず、搭乗口へと歩き去った。

    キャスター『あ!ヤン・ウェンリー大佐です!ヤン大佐、エル・ファシルの英雄として名高い大佐におかれましては、先日の戦いをどのように…』

  • 49122/12/06(火) 12:57:20

    〜テルヌーゼン〜

    テルヌーゼンに到着したガルカシアは、滞在予定のホテルに向けて歩いていた。

    「悪逆の帝国を倒せーーーっ!」

    突然の大声に肩を振るわせながら、その発生源を探していると、覆面に陸戦要員を思わせる装束の男達が列を成して闊歩していた。

    「オーディンへ長躯し皇帝の首をあげろ!」
    「勝利まで市民一体となり身命を惜しむな!」

    市民A「おい、あれって過激な主戦派グループの憂国騎士団だろ?ハイネセン以外でも活動してんのか」

    カフェテラスに座っていた市民が回答をもたらした。
    ガルカシアも、たまに軍関係施設の付近で憂国騎士団を目撃する。

    市民B「最近始めたんだ。テルヌーゼンは伝統的に反戦派の市民や政治グループが多いからな。釘を刺すつもりなんだろうぜ」

    市民A「ご大層なこと言っといて要するに嫌がらせかよ」

    市民B「おかげで反戦の機運はこの惑星じゃむしろ高まってる。間抜けな連中だよ…」

    ガルカシア(別の惑星にまで団体が来るお金を出してくれる人がいるんだ〜…)

    会話を聞いてガルカシアが抱いた感想は極めて俗なものであったが、それが憂国騎士団のバックを推察する有力な材料であることに彼女は気づいていない。

  • 50122/12/06(火) 15:13:57

    イベント当日。
    ガルカシアは口を動かすのに忙しかった。
    発声するためではなく、肉を咀嚼するためである。

    ガルカシア(シロン産のチキンハーブソテー美味〜〜〜♡)

    既に彼女の胃に収まった肉が載せられていた空き皿がテーブルに積み重ねられ、塔を形作っている。
    好奇の目を向けられることもあるが、肉を堪能することに夢中な彼女は気づかない。

    選び抜かれた肉料理の中でも一番ガルカシアの琴線に触れたのは、帝国の伝統的な肉料理であるシュバイネハクセだった。

    ガルカシア(かみごたえ抜群の美味さ満点のお肉…!帝都オーディンて所に行けば好きなだけ食べられるかなあ?)

    戦意旺盛な士官であれば「オーディンを制圧していくらでも帝国兵に作らせてやる」などと考える所だが、ガルカシアはそのような覇気とは皆無である。

    「あの〜…」

  • 51122/12/06(火) 21:00:37

    母親とそう年齢の変わらない女性が話しかけてきた。
    人が気持ちよさそうに食事をしている時、不躾に話しかけてくるのは、大抵碌な要件ではないか、あるいは碌な人間ではないか、である。
    警戒心を隠すことなく応じた。

    ガルカシア「…はい?」

    女性「いい食べっぷりですね」

    ガルカシア「まぁ、好きなんで」

    女性「ところで明後日この近くで教団のセミナーやるんですけど」

    店員「出来たて焼き上がりました〜〜〜!」

    先程覗いた時はまだ調理中だった店からの声だった。
    作戦行動時よりも機敏に立ち上がるガルカシア。

    ガルカシア「すいません、あっち買いに行くんで」

    女性「待ってください、人類の故郷を取り戻す戦いに…」

    ガルカシア「すみません、迷惑なんで」

    女性が手にしていたパンフレットに描かれる青い惑星に対し、肉を目前にしたガルカシアは微塵も興味を示さなかったのであった。

  • 52二次元好きの匿名さん22/12/07(水) 01:43:26

    続き楽しみにしてます、保守

  • 53122/12/07(水) 08:04:59

    (ありがとうございます!)


    思うが儘に舌を満足させる休暇の一週目を終えたガルカシアはハイネセンに帰ると、二週目は家で静養することを決めた。

    一人焼肉を楽しんだり、遊びに来た友人を歓待しながらのんびりと過ごす。


    女友達「そんでさ、先週から軍の管制要員だか何だかで先輩がごっそり引き抜かれてね?こっちばっかに仕事回ってきてたまったもんじゃないのよ」


    女友達「あ、そうだ!ガルって軍人なんでしょ、英雄ヤンのサインとかもらえない?」


    ガルカシア「無理だよ部署も階級も全然違うんだから…」


    …ガルカシアが休暇を終えて暫く後、同盟軍はティアマト星域における三度目の会戦において、ホーランド提督率いる第十一艦隊が司令官ごと壊滅の憂き目に遭う敗北を喫する。


    同盟軍は帝国の勢力伸長を防ぐ意図から、同年のうちにティアマト星域にて四度目の戦いを挑むこととなった。"スクラップ・シップ"もまた、 dice1d3=1 (1) 率いる艦隊の一員として参戦する。


    1.パエッタ

    2.ウランフ

    3.ボロディン

  • 54122/12/07(水) 12:25:58

    宇宙歴795年9月。
    パエッタ中将率いる同盟軍第二艦隊は、イゼルローン要塞近傍の惑星・レグニツァ上空にある。
    レグニツァは典型的な木星型惑星であり、ヘリウムと水素で構成される大気中をイオン乱流や電磁波が乱舞し、宇宙艦艇をも弄ぶ。

    第二艦隊がこの難所に進出したのには、幾つかの理由がある。敵がこの惑星に潜伏、あるいは衛星軌道を迂回して後背に回り込むことがあれば、要塞攻略にあたる味方に小さからぬ損害が生じる。そうした場合の敵の行動を予期するための地理的データを収集すること。逆に、同盟軍が要塞前面において敵と交戦する際、予備兵力を配するのに耐えうるかを検証すること…。

    ガルカシア(戦闘がどうなるか知ったこっちゃないけど、こんな嵐の惑星で何時間も過ごせないっての!)

    不吉な振動を感じながらガルカシアは心中で嘆く。
    目の前のディスプレイはヒステリックな悲鳴をあげ、あるいは沈黙しきって、索敵システムが役立たずになりつつあることを語っていた。

  • 55122/12/07(水) 12:40:40

    現在"スクラップ・シップ"は第二艦隊右翼にあり、比較的安全な空域を進んでいる。
    このたび"スクラップ・シップ"は改装を施され、新型の主砲が搭載されている。今回同じ艦隊に属する戦艦"ユリシーズ"や、近々試験航海が行われる新鋭戦艦"トリグラフ"と同じ機構を持ち、駆逐艦の規格に合わせカスタマイズされたものだ。

    休暇が終わり出征するまでの間、ガルカシアはこの新しい兵器の扱いをひたすら頭に叩き込んでいた。実戦でその性能を試すのは今回が初なのだが、戦場が戦場だけにとんでもないぶっつけ本番となりそうである。

    船務長「前方に金属反応。艦艇です」

    前方に迫る影をガルカシアも肉眼で視認していた。それが同時だったのは、レーダーがその機能を著しく喪失していることの証だ。

    ガルカシア(味方が出過ぎたかな?)

    自分よりドジな奴も尽きないものだ。呑気に構えるガルカシアは、眼前の光景に強張った艦長の顔に気づかない。

    風が固体アンモニアの雲を払った。
    帝国軍の艦艇が、艦首をこちらに向けて並べている。

  • 56122/12/07(水) 13:13:02

    戦術長「敵艦隊至近!至近です!」

    艦長「第一種戦闘配置!味方に発光信号!」

    間抜けにも口を開けて固まっていたガルカシアも、喧騒に正気を取り戻す。
    索敵システムがダウンしていることを確認し、砲の制御を手動に切り替えた。
    どちらともなく敵味方は砲門を開き、中性子の光条を吐き出す。

    双方に損害らしい損害は無かった。乱流によって照準に大きなずれが生じ、有効打どころか命中率も五割を切っている。"スクラップ・シップ"は新型主砲の精度もあって命中に成功したが、敵艦の中和磁場を破ることはできなかった。電磁波の影響か、有効射程も通常の六割ほどに短くなっている。

    艦長「敵の熱源反応と通信波を解析。それから重力バランスを測定して敵の位置を…」

    船務長「敵艦、紡錘陣形でこちらに接近!」

    天頂方向から見れば鏃の如き陣形を取った敵艦数百隻が、同盟軍右翼中央…"スクラップ・シップ"の現在位置目掛けて突撃してきた。
    眼前に迫る敵戦艦の砲口…。

    ガルカシア(やばっ!?)

  • 57122/12/07(水) 17:38:48

    咄嗟にコントロール・パネルの発射キーを押下する。
    中性子ビームは"スクラップ・シップ"を狙っていた砲口に直撃して、ガルカシアは乗艦もろとも塵になる危機を脱した。極限環境とはいえ、艦は一定の加速度で突撃のために決まったコースを取るから、狙うのは難しくなかった。

    帝国軍数百隻は同盟軍右翼を突破し、背後で回頭する。そこは比較的艦隊を動かすのが容易な空域であり、帝国軍は素早く陣形を再編して砲撃を開始する。乱流にも負けない"疾風"の如き迅速さであった。

    戦術長「なんて奴だ。この乱流の中敵中突破を図るとは…!」

    背後に展開した後は打って変わって、距離を保ちつつ慎重に、かつ執拗な砲撃を仕掛けてくる。突然の会敵から帝国軍が態勢を整えるための時間を稼ぐことが狙いであって、その一事だけを見ても、突破を敢行した敵の非凡さが窺える。

  • 58122/12/07(水) 19:19:43

    帝国軍のやったことは、艦長が命じたことと異なるものではない。レグニツァの環境下でも観測しうる熱源、通信波、重力バランス等を解析することで、おおまかな敵味方の位置や航行可能な空域を算出したのだ。それ自体は両軍において以前よりマニュアル化されている処置である。

    だが、反応速度は尋常なものではなかった。
    索敵不可能な惑星での遭遇戦という前提条件に変わりないはずなのに、いち早く態勢を整えたばかりか、剰え先制攻撃によって全体の主導権を握らんとするとは!

    艦長(とんでもない奴が出てきた。これまでの敵とまるで格が違う!)

    士気を慮って言葉にしなかった艦長だが、それは"スクラップ・シップ"の皆、ガルカシアですら認識していた事実であった。現時点の彼らには知覚できないことだが、別の戦域でも同盟軍は敵に機先を制されている。

  • 59122/12/07(水) 23:34:54

    緒戦から押される同盟軍第二艦隊。

    どのように打開する? >>60


    1.旗艦パトロクロスを中心に前面の敵を押し返す

    2.後背に回り込んだ敵を撃破して陣を立て直す

    3.(他にアイデアありましたら)

  • 60二次元好きの匿名さん22/12/08(木) 08:22:54
  • 61122/12/08(木) 19:18:44

    右翼分艦隊の旗艦が発光信号を発した。
    旗艦との合流を命ずるそれは途切れがちだったが、
    それだけに切迫していることが嫌でも伝わってくる。

    艦長「10時方向に転進!本隊と合同で敵に当たるぞ!」

    乱流に煽られながら必死に艦首をもたげ、右翼艦隊は旗艦パトロクロスを目指す。それでも背後に進出した帝国軍の存在を警戒し、慎重に防備を固めながら微速前進するしかなかった。

    想定していたより同盟軍本隊は後退していた。環境に脅かされたか、あるいは敵の圧迫を受けたか。その両方であろう。幸いにして、先程右翼を突破してきた敵に側背を突かれる位置ではない。
    砲火を交えていたのは、帝国軍の本隊であった。

    艦長「!あれは…」

    銀翼を広げた白鳥が、そこにはいた。
    帝国艦隊の中心にあり、それらを嚮導するように航行しているその艦は、帝国軍の旗艦に違いなかった。

    ガルカシア「…綺麗…」

    兵器オタクの気が全くないガルカシアも、その美しさに見惚れた。極彩色の極限環境にあって、凛とした輝きは微塵も損なわれることがない。

    艦長「帝国の新型…実戦投入されていたか!」

  • 62122/12/08(木) 23:09:13

    散文的な懸念を艦長が口にしていると、千隻ほどの戦艦が雲海を突き破るようにして現れた。
    分艦隊や戦闘集団の旗艦として運用される高火力、重装甲の戦艦を一挙に投入し、突破口を図る狙いである。強風によろめきながら陣列を整える戦艦を見、集結地点への誘導に腐心するパエッタの苦労が偲ばれた。

    出力最大での主砲斉射を反復させることにより、どうにか帝国軍の猛攻を凌ぎきったかに見える。戦艦の指揮から一時的に切り離された巡航艦や駆逐艦はパトロクロスの直率となり、遊撃部隊として運用されることとなるのだ。"スクラップ・シップ"もまた、それに加わった。

    ☆昇進チャンス!
    敵艦隊の攻勢を跳ね返せ!

  • 63122/12/08(木) 23:13:55

    >>63>>64>>65の方にはdice1d60を振っていただきます。


    合計数〜50:環境に翻弄され敵撃破数0(昇進ポイント:0)


    合計数51〜100:敵巡航艦、駆逐艦を数隻撃沈(昇進ポイント:10)


    合計数101〜155:パトロクロスに迫る敵戦艦を撃沈(昇進ポイント:20)


    合計数156〜:敵分艦隊に壊滅的な打撃を与える(昇進ポイント:30)


    ガルカシアの砲術技能によるボーナス:+30

  • 64122/12/08(木) 23:14:21

    (訂正、>>65>>66>>67の方お願いします)

  • 65二次元好きの匿名さん22/12/08(木) 23:30:23

    dice1d60=33 (33)

  • 66二次元好きの匿名さん22/12/09(金) 10:36:03

    dice1d60=51 (51)

  • 67二次元好きの匿名さん22/12/09(金) 11:11:10

    dice1d60=26 (26)

  • 68122/12/09(金) 13:26:35

    合計数:140

    旗艦パトロクロスが発する指揮の下、直率となった快速艦艇は前進と後退を繰り返す。戦艦で形成された防塁から身を乗り出し、一撃を与えて引っこむといった具合で、帝国軍の浸透を阻むのに一定以上の効果があった。

    この陣形は、パトロクロス以下の戦艦が有する情報処理能力を最大限活用しうるもので、航行、攻撃精度の向上に僅かながら貢献した。パエッタ中将が発案し、次席幕僚を中心に現実化された戦法は、現在のところ十分な成果を挙げている。

    それでも同盟軍が逆撃に転じることができなかったのは、帝国軍右翼の的確な援護射撃に因った。危険度の大きい攻撃を即座に見抜き、火力をぶつけて同盟軍を足止めしては、すぐさま配置を戻して付けいる隙を微塵も見せることはない。静と動の違いはあれ、先程右翼にて交戦した敵に匹敵する脅威を"スクラップ・シップ"艦長は感じた。

    執拗な妨害に業を煮やしたのであろう、"スクラップ・シップ"を追い抜きながら、僚艦数百隻が帝国軍右翼に向かっていった。

  • 69122/12/10(土) 00:02:14

    だが、敵からの反作用は峻烈を極めた。
    後背に身を潜めていた予備隊が、時は来たと言わんばかりに勇躍し、突出してきた同盟艦に襲いかかったのだ。同盟艦が"パトロクロス"から離れ、なおかつ帝国本隊が砲火に巻き込まれない絶好の位置で火線を敷く。薙ぎ倒され、火球に変じていく同盟艦。

    戦術長「いかんな…旗艦の11時方向がガラ空きだ」

    味方が突出したことにより、"パトロクロス"左方の陣容に穴が生じている。僚艦と共にそれを埋めようと"スクラップ・シップ"が動いた時、急報は齎された。

    船務長「て、敵戦艦!天頂方向より我が方の旗艦に高速接近!」
    "パトロクロス"や周囲の戦艦とのデータリンクなしでは、レグニツァにおいて補足不可能だったかもしれなかった。

    帝国戦艦の猛々しい艦首が"パトロクロス"を目指し、速度を上げていた。天頂方向に位置していたその艦は、舵のコントロールに苦心して味方との合流を図っていたところ、同盟艦隊旗艦の首を狙えることに気付き、単身武勲を求めて動いたのだ。

    "スクラップ・シップ"は敵戦艦の正面にあり、その猛進を真っ向から目の当たりすることとなった。

  • 70122/12/10(土) 09:50:50

    "スクラップ・シップ"はパトロクロスの10時、敵戦艦から見て1時の方向に在る。足を止めようと正面から突撃したところで、戦艦の火力の前には、駆逐艦など一撃で火球と化すだろう。
    どうしたものかと思案を始めた時、左舷側から横殴りの圧力を感じた。

    航海長「風が変わった!」

    イオン乱流が、同盟側から帝国側に流れるようにその風向を変えた。すなわち同盟軍は風上の利を得たわけであるが、"スクラップ・シップ"周辺という極めてミクロな範囲で見ると、必ずしも同盟軍を益するわけではない。

    艦長「この風向きであれば、敵艦の右舷一点を集中砲火する他ないが…」

    構造上側面に可動できない主砲で狙うとなると時計回りに回頭するしかないが、強風の中では艦体がバランスを崩したり、最悪敵艦に衝突する危険がある。そうなれば四散するのは"スクラップ・シップ"だけであろう。

    艦長「…よし、反航戦用意!前進しつつ側面砲撃だ!」

    つまり敵艦の右方をすり抜けつつ、右舷の一点に集中砲火して敵の進路を乱す。"スクラップ・シップ"は天頂方向へ一気に抜けて、その影響から逃れるのだ。

    ガルカシア「主砲、れ…レールガンに切り替え!」

    ガルカシアは許可を得ると、手動照準用のHMD(ヘッドマウント・ディスプレイ)を装着した。

  • 71122/12/10(土) 12:03:48

    ガルカシア(…ふー…)

    窮地にありながら、ガルカシアは心中で落ち着いた溜息を吐く。現在のような非常事態でもなければ着用する機会はないが、これを着けている時は外界のしがらみから逃れられるような気がするのだ。

    風向、敵味方の現在位置、速度、弾道予測…大量の数字とデータを浴びながら、ガルカシアは引き金を引いた。磁力砲弾が見えざる尾を曳いて大気を切り裂く。
    カタログ・スペック上、新型主砲により弾速と加速度が向上しているのだが、それを生かすことができていないかと見える。"スクラップ・シップ"艦首から放たれた砲弾は敵戦艦右方の直線コースを取った…外れたのだ。そう判断した敵は前進を続ける。

    衝撃と爆発が、敵艦右舷を唐突に襲撃した。

    実体弾である磁力砲弾は、中性子ビームの比ではないほど大気の影響を受ける。"スクラップ・シップ"から狙い澄ましたタイミングで飛び出した砲弾は左からの風に押され、弧を描くように敵艦に着弾した。砲弾に意思も誘導システムも無いはずなのに、まるで蛇が獲物に食いついたかのような弾道を描いていた。

    前進する"スクラップ・シップ"の右方で、敵戦艦の側面…その一点が火を吹いていた。

  • 72122/12/10(土) 13:40:48

    "スクラップ・シップ"右舷の近距離砲が唸りを上げ、すれ違いざまに中性子ビームの雨を敵艦に叩きつける。不意をつかれたこともあろう、敵艦の防御システムは沈黙し、己より遥かに小さな駆逐艦を排除できない。

    ガルカシア(…いける!)

    血に飢えたピラニアのように、砲弾によって穿たれた傷口にビームが殺到する。この近距離で、そして多大な熱量を持つ射撃ポイントを外しようはない。
    "スクラップ・シップ"が遥か後方へと駆け抜けた刹那、敵艦の被弾箇所が巨大な炎を吐き出した。

    通常空間であれば、中破判定となるかどうか、といった程度の損傷である。だが、電磁波とイオン乱流が席巻する惑星上において、片側に偏った損害は致命傷であった。
    莫大な質量を持つはずの敵戦艦は均衡を崩すと、穴が空いた風船のごとく乱舞し、雲海の下に消えていった。

    艦長「よし…!」

    艦橋を控えめな歓声が包み、ガルカシアも安堵の息を吐く。結果として天頂方向へと突出してしまったが、幸い周囲に敵影はなく、旗艦と合流せんと進路を転じた…

    ズ ゥ ン !!

  • 73122/12/10(土) 14:08:14

    下方から突き上げるような衝撃が"スクラップ・シップ"を襲った。艦体が軋み、ディスプレイが明滅しながら叫喚する。

    艦長「なに!」

    ガルカシア「びゃああ!?」

    "パトロクロス"の周辺を確認する。光学的観測だけでも、同盟軍の陣列が四散しつつあるのが分かった。帝国軍からの集中砲火を浴び、爆発炎上する僚艦も多く見える。

    船務長「惑星表面に高熱反応…!?大気中のヘリウムに引火したのか?」

    航海長「先程の衝撃は、爆発で生じた強風か!」

    "パトロクロス"を筆頭に、同盟第二艦隊は上方へと撤退を始めた。否応なく、"スクラップ・シップ"もそれに従わざるを得ない。

    もし"スクラップ・シップ"が偶々天頂方向にいなかったら…その想像は、ガルカシアの背筋に寒風を吹き込むに足りるものであった。

  • 74122/12/10(土) 15:30:41

    …惑星レグニツァにおける偶発的な戦闘からおよそ一週間後。両軍は決戦場たるティアマト星域に全艦体を集結させ対峙した。後世に言う「第四次ティアマト会戦」である。

    ガルカシア「弾道補正システム…調整完了。お先失礼しま〜す…」

    第二艦隊は前哨戦での損耗が小さくなかったこともあって、後方の予備に回されていた。その中でも、レグニツァの環境に曝されたことで要整備状態にある艦は補給艦に接舷し羽を休めていた。"スクラップ・シップ"もその一つである。

    兵士A「レグニツァの戦闘記録、見たか?」

    兵士B「ああ。乱流と俺らの艦隊に挟み撃ちされながら、惑星表面に核融合ミサイルを撃ち込むなんてな」

    第二艦隊を下方から襲った爆風の正体は、帝国艦隊が惑星にミサイルを撃ち込むことで人為的に発生させたものであった。戦場の地勢そのものを武器とする柔軟な発想もだが、それに至る戦術的な洗練度も際立っていた。

    兵士B「初手でこっちの右翼を突破したのも、俺らを本隊と密集させる罠だったのかもな」

    兵士C「今の敵の動きも何かの罠か?」

    現在、戦況はやや特異な様相を呈している。
    横列に展開した敵の左翼が突出し、中央や右翼の援護も受けぬまま前進を続け、孤軍になろうとしているのだ。

  • 75122/12/10(土) 16:08:41

    補給艦のレスト・ルームに備え付けられたディスプレイに映る布陣図は、簡略なものでありながら、帝国軍左翼の無謀とも思える突出ぶりを如実に示していた。

    兵士A「いわゆる斜線陣だろうか?」

    ガルカシアも気にならないではなかったが、元々乏しい戦術眼と疲労の蓄積もあり、答えに辿り着けるとも思えなかった。タンク・ベッドに入ろうかと出入口に足を向けた時、動揺の声が響いた。

    兵士C「な、なんだこの機動は…!?」

    前進を続けていた帝国軍左翼が突然右に進路を転じ、敵味方の間を横断してみせたのである。当然、側面を同盟軍に曝したまま。悪魔に魅入られたとしか思えないような艦隊運動であった。

    ガルカシア(こっちはなんで撃たないのかな?)

    ガルカシアより複雑に物事の奥まで考える同盟軍諸提督にとって、この無謀極まる横断は何らかの罠、詐術の可能性を示唆するものとしか思えなかったのだ。唖然とする敵味方の眼前で、凱旋するかの如く前進する帝国軍左翼…。

    兵士B「!見ろ、あれはもしや左翼の旗艦か?」

    それは、一週間前にレグニツァで目撃した白銀の戦艦だった。輝く翼をはためかせ、流星の如く敵味方の中を疾駆する艦。
    帝国軍左翼はついに、同盟軍左翼の左側面という絶好の位置を確保していたのだった。

  • 76122/12/10(土) 16:19:35

    …最終的に痛み分けに終わった会戦後、鮮烈な活躍を戦場に刻んだ白い艦の指揮官の名前を同盟軍は知る。


    ラインハルト=フォン=ミューゼル。来年初頭にローエングラム伯爵家を継ぐこととなる、20歳に届かない若き将帥であった…。



    ☆論功行賞


    現在の昇進ポイント:13

    中尉→大尉まで残り57ポイント


    今回の昇進ポイント

    dice3d10=8 9 10 (27) +20ポイント

  • 77122/12/10(土) 16:34:16

    今回の昇進ポイント 47ポイント

    中尉→大尉まで残り10ポイント



    年が明けた宇宙歴796年1月。

    年始初出勤の舞台となったのは"スクラップ・シップ"ではなく、統合作戦本部ビルの会議室であった。

    下士官を対象とする、戦術能力向上を目的とした研修会に出席するためである。


    ガルカシア「メンドくさ〜…。これなら艦に乗ってる方がまだいいよ〜」


    戦略、戦術の座学に胸をときめかせたことのないガルカシアである。寒い中本部に出頭し、頭の痛くなる研修を受ける意義を見出せずにいた。

    愚痴をこぼしながら、定刻の30分前に席に着く。


    「すみません、隣よろしいですか?」


    声のした方向を見ると、ガルカシアより数歳若いであろう女性が立っていた。ネーム・プレートに書かれた名は… >>78>>79

  • 78二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 17:13:24

    このレスは削除されています

  • 79二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 17:14:50

    グリーンヒル

  • 80122/12/10(土) 17:42:59

    >>81さんファーストネームお願いします

    (あと今後ガルカシアと深く関わるキャラなのでフレデリカ以外でお願いします!我儘ですみません!)

  • 81二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 23:31:41

    アンナ

  • 82二次元好きの匿名さん22/12/10(土) 23:38:36

    主人公の年齢ってちょうどヤンとアッテンボローの間なんだな

  • 83122/12/10(土) 23:56:57

    (調べたら尉官って下士官ではなく士官でした…)

    アンナ・グリーンヒルの刻印がされたネーム・プレートがガルカシアの目に飛び込む。

    ガルカシア「…グリーンヒル…?」

    その姓は、同盟軍人に一人の男を必ず想起させるものであった。現在、同盟軍総参謀長の地位にあり、かつては第四艦隊司令官として、ガルカシアの遠い上官でもあったドワイト・グリーンヒル大将。士官学校を次席で卒業したという、才女の名に相応しい一人娘がいたはずだが…

    アンナ「よく間違えられるけど、違うんです。もっとも、完全な他人とも言い難いのですが…」

    アンナの説明により、ガルカシアは総参謀長の家系図について、その一部を知ることができた。
    ドワイトの祖父には、母の違う二人の息子がいた。最初の妻との間に生まれた長男がドワイトの父であり、妻を亡くした後、後妻との間に設けた息子が、アンナの祖父であった。

    アンナ「要するに我が家は、グリーンヒル閣下の分家筋ということになりますね」

    ガルカシア「なるほど〜…」

  • 84122/12/11(日) 00:08:20

    アンナはガルカシアの dice3d2=2 1 1 (4) 歳年少で、階級はdice1d3=2 (2) (1.准尉 2.少尉 3.中尉)であった。


    アンナ「幼少の頃より冠婚葬祭の折にはお会いしておりましたし、最近でも邸宅にお邪魔させていただくこともあります。常に紳士的な物腰を崩されることなく、毎度よくしてくださって…」


    ガルカシア「じゃあ、家ぐるみで付き合ってるんだ」


    アンナ「はい、例のご息女ともお話をしたりですとか、食事をご一緒させていただいたり」


    研修開始を告げるチャイムが鳴り、二人は口を噤む。

    研修の結果、ガルカシアの戦術眼は17に dice1d30=15 (15) ほど加算された。


    研修が無事終わった後、ガルカシアはアンナにカフェテリアに誘われた。

    後輩からの誘いを無碍に断るのも忍びない。特に急ぎの用事もないので、カフェテリアで席を同じくすることを選んだのであった。

  • 85122/12/11(日) 08:47:00

    ガルカシア「それでさ、その記事の通り肉を漬けてみるとね、ホント柔らかくなんの!」

    アンナ「わぁ、いいですね!私も今度やってみようかな」

    会話スキルに乏しいガルカシアにとって、アンナとのやり取りは意外なほど波長が合うものであった。考えてみれば、出世スピードはガルカシアより早いのだ。未来の将官として、コミュニケーション能力も磨いているのだろう。

    アンナ「…それで、あたしは今ルグランジュ提督の艦隊に配属されてるんですよ。コロノモロサ中尉は?」

    ガルカシア「ガルって呼んでいいよ、同僚や友達はみんなそう呼ぶし。私は、ほら、パエッタ中将の第二艦隊に」

    アンナ「…パエッタ中将ですか…」

    快活なアンナの顔が途端に曇った。

    ガルカシア「え…パエッタ中将に嫌なことでもされた?」

    アンナ「あ、いえ、違います。中将とは面識もありませんし…でもあの人、トリューニヒト閥でしょう?」

    ヨブ・トリューニヒトといえば、昨年末に国防委員長に就任した気鋭の政治家だ。颯爽とした外見と巧みな弁舌で、市民に大層人気を博している。

    ガルカシア「あー、何かそういうのもあるらしいね」

  • 86122/12/11(日) 09:04:32

    実戦畑においても、パストーレ、ムーアの両中将はトリューニヒト派として知られていた。職務を逸脱するほど露骨なものではないが…

    アンナ「これって要するに、国防委員長が私的なコネクションを軍部に根付かせているということですよね。軍制や作戦行動にも干渉しようとしているのではないですか?」

    ガルカシア「う〜ん…、で、でもそういう方針は議会で決まるものだしさ…」

    アンナ「今の最高評議会なら、コネや財力を持った一人の根回しで結論を操作されるようなことだってあり得ます。トリューニヒトは兵役期間に一度も前線に出なかったという噂も…」

    アンナの声色が危険な熱っぽさを帯びてくる。
    静止しようにも適切な言葉や態度が分からない。

    ガルカシア「あ、あの、こ、コーヒーお代わりする?」

    アンナ「同盟軍は!!」

    ガルカシア「わわわっ…」

  • 87122/12/11(日) 09:40:19

    勢いよく立ち上がったアンナに、店員と周囲の客…大半は軍人である…の視線が集中する。

    アンナ「同盟軍は、いえ、その礎となる同盟の国家体制そのものに、抜本的な改革のメスを入れる時が来ているのではないでしょうか!」

    アンナ「それを為しうるのは利権を弄ぶ政治家、それらと癒着する特権階級ではなく、前線に立ち、傷つきながらも国家を守るべく血を流す将兵や民の痛みを知る我々に他なりません!」

    アンナ「150年の長きにわたり続いた帝国との抗争に終止符を打つ絶対条件として…」

    ガルカシア「わ、分かった!分かったから!お店の中だから少し声小さくしよ、ね」

    懇願するようにガルカシアはアンナを制止する。
    視線の集中砲火を浴びることに耐えかねたのだが、何よりガルカシアを慄然とさせたのは、視線の中に少なからぬ賛意が含まれているらしいことであった。

    アンナ「あ…ごめんなさい。つい熱くなってしまいました」

    アンナ「では、そろそろあたしもお暇させていただきます…これ、お代です。どうか御武運を、ガル中尉」

    ガルカシア「うん、またね」

    鋭さを感じさせるアンナの敬礼を受け、ガルカシアも答礼し、二人は別れた。

    勤務部署の違う二人が再会するのは、翌年のこと…それは少なくともガルカシアにとって、思いもよらぬ形で見えることとなるのだ。

  • 88122/12/11(日) 18:38:01

    そして翌月。宇宙歴796年2月、同盟と帝国は再び干戈を交えることとなる。それは戦略的に、大した意味を持たないはずの会戦であった。

    少なくとも始まる前は、そう思われていた。

    同盟軍第二艦隊に属する"スクラップ・シップ"に、出動命令が下った。イゼルローン回廊を抜け、同盟方向へと進出する帝国軍二万隻を迎撃する任にあたれ…。
    帝国軍の狙いは、数年来の戦いで無秩序に拡大した前線の小艦隊、哨戒部隊、前線拠点を撤収させ、戦線をイゼルローン要塞まで整理することにあった。同盟軍の追撃を牽制し、場合によっては攻撃を加える…目的そのものは明白である。

    だが此度の戦いには、前段階にあたる情報戦からして異様であった。あまりにも帝国軍の内実が分かりすぎたのだ。通常、撤収の時間稼ぎにあたる実働部隊を援護するため小戦力を繰り出して側背を牽制するか、あるいはその素振りを見せるものだが、そういった兆しは全くなかった。それが擬態ではないと確信しうる情報が、あまりにも多く同盟軍に齎されたのである。

    要するに帝国軍二万は、半ば孤軍となって同盟領へと進軍を続けていることになる。おまけに、総司令官の官姓名までもが明らかになっていた。その名は…


    ラインハルト・フォン・ローエングラム上級大将。

  • 89122/12/11(日) 19:29:38

    艦長「…つまり、あの白い艦の指揮官が帝国艦隊二万を総括しているということだ」

    首都星ハイネセンの宇宙桟橋、出撃を間近に控えた"スクラップ・シップ"のブリッジは、息を呑むような雰囲気に支配されていた。レグニツァにて、自然の猛威をも超えた機略に翻弄されたのは記憶に新しい。
    あの時の兵数は弱冠一万隻であり、分艦隊の指揮官に過ぎなかったが、今回は兵力にして二倍、おまけに戦場での進退は思うがままである。

    戦術長「今回の攻勢に、統合作戦本部長は反対なされたそうですね。守りに徹し敵の撤退を待つべきと」

    艦長「正直…私もシトレ元帥に賛同する。だが、元帥一人の声で出兵を覆すことはできないからな」

    今回同盟軍が動員したのは艦艇四万隻。敵の二倍にのぼる戦力を一戦場に集中できたのは、先だって得ることのできた敵の内情あればこそであった。
    第三勢力たるフェザーン、あるいは帝国自らによるリークではないかという噂もあるが、真偽の程は分からない。

  • 90122/12/11(日) 20:13:34

    四万隻の内訳は三個艦隊、すなわちパエッタ中将の第二艦隊(一万五千隻)、パストーレ中将の第四艦隊(一万二千隻)、ムーア中将の第六艦隊(一万三千隻)である。

    指揮官の名前を聞いてアンナの話が過ったのを、ガルカシアは振り払った。戦闘でさえ億劫なのに、懊悩の種を増やしたくはない。

    第二、第四、第六艦隊はそれぞれ敵の左方、正面、右方より接近。帝国軍を完全な包囲下に追い込み、ジワジワと抵抗力を削り取って殲滅する…それが同盟軍の作戦大綱である。

    これは宇宙歴640年、史上初めてとなる同盟と帝国の軍事衝突「ダゴン星域会戦」における、輝かしき先例に倣ったものだ。同盟軍はリン・パオ、ユースフ・トパロウル以下有能かつ勇猛な将校達の指揮により、帝国軍を包囲殲滅することに成功。以後、150年を超える両勢力の対立が始まったのである…。

    想定される主戦場はアスターテ星域。
    昔日の栄光を再現することを企図し、同盟軍は分進合撃の途についた。

  • 91122/12/11(日) 22:03:04

    それからおよそ二週間後…第二艦隊は予想される交戦宙域に達しようとしていた。
    第二艦隊の司令官たるパエッタは三人の中将の中でも再先任であり、戦力も一番多く割り振られている。戦闘の最終局面において中核をなすことは明確…第二艦隊の将兵は大半が勇躍していた。

    それに対し、やや悲観論に傾きつつある"スクラップ・シップ"は現在、先行偵察隊の一員として予定宙域に近づいている。敵が前進を続けている場合、1時間ほどで補足できる筈であった。

    この時ガルカシアは休息時間の最中、舷側の展望室で無聊をかこっていた。目の前に広がる宇宙は、静寂を湛えた永遠の夜。
    自室で一人焼肉をするのがいつもの習慣ながら、どうにも気が乗らない。そういう時は肉を堪能できないので、取りやめることにしている。妙に胸がざわざわするのだ。武者震いなどする性質ではないのに…。

    休憩時間はあと30分ほど残っていたが、手持ち無沙汰なままブリッジに戻る。…不吉な喧騒が、彼女を待ち受けていた。

    艦長「航海長。…航行データ、座標の照合に間違いはないのだな?」

    航海長「…決してあり得ません」

    艦長「ならば…敵はどこへ行った?」

    偵察隊を待ち受けていたのは、破られることのない静謐の宇宙だった。万単位の光点…宇宙艦隊の影を見出しようもない。

  • 92122/12/11(日) 23:13:52

    「帝国軍は予定の宙域にあらず。急進して第四艦隊と交戦するならん」


    エネルギー量の測定と空間航跡のトレースによって得られた結論は、衝撃となって第二艦隊将兵の肺腑を抉った。

    二倍の敵に包囲されつつある中で、防御も撤退もせず、積極的な攻勢に出るとは!それを完全に予見できたのは、第二艦隊においてただ一人しかいない。それはパエッタでも、ましてやガルカシアでもなかった。


    戦術長「…司令部からは、何と?」


    艦長「当初の進軍計画を遵守せよ、と。ただし」


    計画通り進軍を続け、敵と交戦状態にあるだろう第四艦隊を救援する。というのがパエッタの下した判断であったが、判断するにあたっての迷いを完全に捨て去ったわけではなかった。

    そこで、方針を確たるものとするための情報を得るべく、快速艦艇三百隻を先行して偵察に派遣することを決めたのである。


    "スクラップ・シップ"は… >>93


    1.偵察に参加

    2.本隊に残留

  • 93二次元好きの匿名さん22/12/11(日) 23:42:53
  • 94122/12/12(月) 08:11:21

    "スクラップ・シップ"は左翼に布陣し、残留することとなった。このまま進み、第四艦隊と交戦する敵の側背を突くのだ。
    それが希望的観測に過ぎないことを皆が心の内で知りながらも、それに縋るしか当面手がなかった。

    歩みを進めているはずなのに、無為に時間を空費しているような焦燥感が艦隊に蔓延している。砲塔のコンディション・チェックやバーチャル上での演習を行うガルカシアだが、到底気は晴れそうもない。
    …暫くして、帰投した偵察隊からの報告が入った。

    第四艦隊、壊滅。司令官パストーレ中将、消息不明。

    第四艦隊の残存兵力を纏めるエドウィン・フィッシャー准将の手により、帝国軍との戦闘記録が齎された。真正面からの激烈な攻勢を受け、戦闘開始わずか四時間で先頭集団は壊滅。ワルキューレによる近接攻撃までも敢行され、第四艦隊は思うがまま蹂躙されたのである。

    そして、さらに恐るべき報告は、帝国軍が第六艦隊の攻撃を企図し、時計回りに進路を変えたというものであった。仮に第六艦隊が予定通りの進軍を続けていたとすれば、四時方向から帝国軍の強襲を受けることになる…。

  • 95122/12/12(月) 17:58:43

    真綿で首を締め上げられるように迫る時間。
    心音を塗り潰すように迫る死神の足音を、第二艦隊の将兵は耳にしていた。

    戦術長「おい、もしかしてこっちにリークされた情報も、俺達を主戦場に誘き寄せる罠だったんじゃないのか」ヒソヒソ

    通信士「艦長、"パトロクロス"より通信…戦術情報ファイルです」

    航海長「それが狙いだったかはともかく、現実として俺達は敵のいい餌だ…」ヒソヒソ

    艦長「このタイミングでか?…よろしい、インストールせよ」

    眼前にあったはずの勝利と栄光は蜃気楼のごとく消え去り、厳然たる敗北と絶望が坂の下で待ち受けている。

    その時が来た。

    船務長「一時の方角に帝国艦隊!数、およそ二万!」

    第六艦隊の末路は、もはや論ずるまでもなく明白である。二個艦隊を血祭りに上げた帝国軍は、最後の獲物を前に無音の咆哮を上げた。

  • 96122/12/12(月) 19:03:24

    射程距離に達すると同時に、両軍が光の槍を投擲する。その密度は今や帝国軍の方が大きい。

    連戦を超えてきたにも関わらず、帝国軍はあたかもランチェスターの第二法則を嘲笑うかのように、その数を殆ど減じていない。
    中枢たる司令部を的確に狙い、実質的に半数以下の敵を相手に勝利を重ねてきたのであろう。進むことを知るだけの将にできる芸当ではなかった。

    左翼にあるため未だ戦闘状態にない"スクラップ・シップ"は、蹂躙される右翼前方の味方の惨状を見せつけられた。効果的な防御態勢を取れず、次々に火球と化す僚艦…間もなく、旗艦"パトロクロス"が直撃弾を受けたとの急報が入った。

    ブリッジに広がる沈黙…

    ガルカシア(こだわり捨ててでも、お肉食べときゃよかったかな…)

    …沈黙は突如として破られた。


    『私は、パエッタ総司令官の次席幕僚、ヤン・ウェンリー准将だ』

  • 97122/12/12(月) 21:19:06

    『旗艦"パトロクロス"は被弾し、パエッタ総司令官も重傷を負われた。総司令官の命令により、これより私が指揮を引き継ぐ』

    それは"パトロクロス"から、第二艦隊の全艦に向けられた通信であった。おそらく帝国軍もこれを傍受し、耳にしていることであろう。

    『心配するな。私の指示に従えば助かる。生還したい者は、落ち着いて私の指示に従ってほしい』

    『我が部隊は現在のところ負けているが、要は最後の瞬間に勝っていればいいのだ』

    それは全軍を叱咤する勇将でも怜悧なる知将でもなく、真理をさり気なく口にする、垢抜けない青年学者のような口調であった。

    続いて、先だって送信した戦術情報ファイルの、コードC4を実行するようにとの通信が入る。

    戦術長「!!これは…」

    現在の戦況において、最も有効、かつ実現性の高い作戦計画が図示されていた。おまけにその製作日時は、ちょうど帝国軍の急進が判明した時点であったのだ。

  • 98122/12/13(火) 07:09:42

    艦長「これあるを予期して策を講じていたとは…」

    まるで天啓を受けたような雰囲気が満ちる。
    第二艦隊の将兵達にとって、ヤン・ウェンリーは今や虚名の英雄などではなく、死地にあって皆を導く、頼むべき将帥であった。

    艦長「皆、遅滞なく行動に移れ!同盟の意地と執念を見せてやろう!」

    ガルカシア「…はいっ!」

    生気に満ちた目でディスプレイを睨む。
    失われた、あるいはこれまで持ちえなかった…闘志と呼ぶべきものが湧き上がった気がした。

  • 99122/12/13(火) 12:17:35

    ☆昇進チャンス!

    ヤンの策を成功させろ


    >>100>>101>>102の方にはdice1d60=を振っていただきます


    合計数〜100:敵艦を撃破して味方を救援(昇進ポイント:10)


    合計数101〜150:味方と協同して敵の戦闘集団を撃破(昇進ポイント:20)


    合計数151〜:帝国軍の背後に回り込み分艦隊旗艦を撃沈(昇進ポイント:30)


    ガルカシアの砲術技能によるボーナス:+30

  • 100二次元好きの匿名さん22/12/13(火) 12:49:31

    このレスは削除されています

  • 101二次元好きの匿名さん22/12/13(火) 12:50:35

    dice1d60=56 (56)

  • 102二次元好きの匿名さん22/12/13(火) 12:52:36

    dice1d60=33 (33)

  • 103二次元好きの匿名さん22/12/13(火) 18:32:44

    念のため

    dice1d60=35 (35)

  • 104122/12/13(火) 22:09:16

    合計数:154


    "スクラップ・シップ"の右前方より、猛烈な勢いのまま直進を続ける帝国兵は、見る間にその態勢を紡錘陣形に組み替えた。
    数で勝り、勢いで凌駕する兵を最大限に活かす、中央突破を敢行せんとしているのは明らかである。

    これを正面から受け止めては、第二艦隊は星間物質よりも細かく撃砕されることは疑いない。ヤンの作戦計画の骨子は、それを受け流して致命的な一撃を避けることにある。つまり、道を開けてやるのだ。

    ガルカシアは索敵、照準システムをフル稼働して、直進コースから左右に広がろうとする敵艦のみを狙ってゆく。これにより、敵を中央突破に注力させ、少しでも動きを把握しやすくなるよう仕向ける。
    同時に、先だって接敵した味方の救援も行った。損傷艦を狙撃しようとする敵、逃げる味方に追いすがる敵に中性子ビームをお見舞いする。それと悟り、敵を砲火に誘い込む形で動いてくれる僚艦も散見された。

    ガルカシア(ああ、撃ち手にもこんな瞬間があるんだ)

    味方を主導したり、あるいは与えられた機会に応える充実感を覚えたのは、これが初めてのことであった。

  • 105122/12/14(水) 06:39:00

    しかし帝国軍もまた、総司令官の訓令が行き届いていると見えて、区区たる反撃に惑わされることなく、砲火と共に猛進する。
    帝国軍はついに、宝剣が瀑布を両断するが如く、第二艦隊を真正面から分断してみせた…

    …まさにその時…!

    艦長「よし、今だ!」

    航海長「全速前進!!」

    分かたれた同盟艦隊が、爆発的な加速度で前進を始めた。帝国軍の左右を駆け抜ける激流、"スクラップ・シップ"もさながらその内の一滴として宇宙を切り裂く。互いに増速したまま、両軍が交差した果てに…

    航海長「四時方向に進路変更!掴まれっ…!」

    ガルカシア「…くぅぅっ…!」

    第二艦隊右翼は八時、左翼は四時方向に進路を変えつつ合流する。その正面には帝国軍…先程まで勝利を欲しいままにした敵の背があった。

    ヤン・ウェンリーの策は完成を見た。
    敵が中央突破に出るであろうことを予測し、その勝勢を逆用する形で第二艦隊は急進、帝国軍の背後を突いたのである。

  • 106122/12/14(水) 14:16:46

    ガルカシア(あっちの司令官も少しは驚いたかな?)

    顔も知らぬ白い艦の司令官も焦っているのだろうかと思い、意地の悪い感慨に耽るガルカシア。
    しかし、彼女はラインハルト・フォン・ローエングラムの真価を未だ知らない。

    船務長「帝国軍、全速前進!進路を解析した結果…時計回りに進路を変じています!」

    艦長「早くも対抗策を打ってきたか!」

    焦って敵前で回頭しては、反撃もできぬまま袋叩きになるのみである。帝国軍は速度を減じぬまま直進しつつ、時計回りに同盟軍の背後に回らんとしていた。してやられたまま終わるつもりは彼らにも無かったようだ。

    航海長「まずいな、振り切られるか?」

    しかしその時、一隻の戦艦がこちらに艦首を向けようとしていた。出力や通信状態から見るに、分艦隊の旗艦である可能性大との回答が導かれる。
    総旗艦の指示を聞き逃したわけもないだろうに、明らかに慌てた様子でこちらに回頭してくる。周囲の艦に碌な指示も出していないのか、衝突回避システムの誤作動で艦首が持ち上がり、無防備な艦底をこちらに晒している。

    ガルカシアがそれを見たのと、発砲を命じたのは全く同時であった。中性子ビームの槍が戦艦の下腹を貫く。

  • 107122/12/14(水) 22:35:54

    後に分かったことだが、その戦艦はラインハルト麾下である分艦隊司令官・エルラッハ中将の座乗艦であった。かねてより総司令官に反感を抱いていた彼は、幼稚な反抗心から敵前回頭の愚挙に出たのだ。

    直撃弾を食らったエルラッハ艦隊旗艦の艦底から、猛々しい炎が血のように噴き出す。好機と見た第二艦隊の先頭集団が、手負いの分艦隊旗艦にビームと電磁砲弾の豪雨を叩きつけた。

    その契機となった"スクラップ・シップ"といえば、まるで興味を失くしたように、周囲の艦艇に砲撃を続ける。それは無秩序に見えて、旗艦の被弾に動揺する敵艦、旗艦と同じく回頭を試みる艦を狙い、突破口を形成することを目的としていた。
    ガルカシアは乗艦がキャッチした情報を味方に発信し、そして味方が得たデータを受け取ることで狙うべき敵を共有する。その結果たる高精度の砲撃は、彼女なくしては実現せず、同時に彼女のみでは成立し得なかった。

    戦術長「開いた…!突破口、完成しました!」

    各処に穿たれた罅が繋がるように大きな通路が目の前に現れた。エルラッハの旗艦が轟沈する様を横目に、第二艦隊は帝国軍の追撃を続ける。

  • 108122/12/14(水) 22:57:56

    旗艦を失ったエルラッハ艦隊が半ば潰走の体で逃げたために、同盟軍はそれに乗じる形で帝国軍の背後に着くことに成功する。
    しかし同じ頃、帝国軍の先頭もまた同盟軍の最後尾に食らいついていた。

    艦長「とにかく敵の背後を目掛けて進み続けろ!そうすれば後続の負担を減らすことになる」

    目下ガルカシアの任務、すなわち砲撃の目的は、味方の進軍スペースを確保するため敵を前方に押し込むこと、敵からの応射を妨害することであった。
    彼女はその二つを全うしたが、これは寧ろ敵にさせてもらったようなものである。エルラッハ艦隊に続いて眼前に現れた艦隊は、無益な抵抗をせずに受け流すことを選択していた。損害らしい損害はまるで生じていない。

    ガルカシア(こうなると手の出しようもないんだよね。まるで水の流れに上手く乗ってるみたい…)

    その艦隊を率いるメルカッツ大将は、帝国でも名うての戦上手として知られた老功の提督であった。

  • 109122/12/14(水) 23:06:15

    現在、同盟軍は帝国軍の背後に食らいつき、帝国軍は同盟軍の最後尾を捉えている。両軍とも時計回りに艦隊を繞回させながら、である。
    それを天頂から俯瞰した様子が、各艦のスクリーンに投影されていた。

    艦長「これは…なんだ、この陣形は」

    戦術長「大蛇が互いの尾に食らいついているかのようだ…」

    両軍が縦列のまま互いの背後を狙った結果、巨大なリングを宇宙空間で作り出していた。
    この陣形のまま砲火を交えることは、無秩序な消耗戦への突入を意味する。
    その果てに数で勝る帝国軍が最後に残るかもしれないが、弾薬もエネルギーも尽きたまま敵中に孤立することは避けられない。

    鏡合わせのように艦隊を動かしていた両軍は、その終幕においても同じ行動に移った。これ以上の無益な戦闘を切り上げ、示し合わせたようにそれぞれの帰途につく。

    帝国軍は味方の撤収という戦略目的の達成と、二個艦隊撃滅という戦術的功績を上げた。対する同盟軍は多大な犠牲を出しつつも、どうにか一矢報い、敵の領内侵攻を食い止めたのである。

  • 110122/12/14(水) 23:27:14

    "スクラップ・シップ"のブリッジ。遠ざかる光の群れを、固唾を飲んで見守るクルー一同。

    艦長「…」

    ガルカシア「…」

    船務長「…帝国軍、再後衛部隊がワープ開始。敵…撤退しました!」

    帝国軍撤退す。その報が確かなものとなり、ようやく安堵の空気が満ちる。

    艦長「皆、ご苦労だったな。敗残兵の収容について我々にも仕事が回ってくるだろうが、それまでは休んでくれ」

    その言葉に甘え、ガルカシアは自室に向けて歩き出した。

    兵士A「生きてる…俺、生きてるよ!なぁ、本当に俺生きてるよな?」

    兵士B「ああ、生きてるんだよ!ヤン・ウェンリーが俺達を救ってくれたんだ!」

    生還を喜ぶ声が艦内のあちこちから聞こえる。恐らく他の艦でもそうなのだろう。
    策を破られ、惨敗を喫した同盟軍だが、微かな救いを胸に帰ることができそうであった。

  • 111122/12/15(木) 07:12:52

    自室に入り、生還を祝しての焼肉と洒落込もうと思ったが、思い直した。

    上等な肉を楽しむのは、首都星に帰ってからだ。

    敗残兵の救出に備え、今は休むとしよう。


    ガルカシア(…私にもあったんだ、責任感てやつ)


    …後世において、常勝の天才と不敗の魔術師が初めて並び立ったとされる「アスターテ会戦」。

    名は伝わらないながらも、歴史を動かすのにほんの僅か加担したガルカシアの意識も、少しばかり変わったかもしれなかった。


    ☆論功行賞


    中尉→大尉まで残り10ポイント


    今回の昇進ポイント

    dice3d10=4 5 1 (10) +30ポイント

  • 112二次元好きの匿名さん22/12/15(木) 08:24:29

    歴史を動かすってもしかしてエルラッハの戦死に門閥貴族がケチつけてラインハルトの元帥昇進がお預けになった?

  • 113122/12/15(木) 08:49:25

    >>112

    「ヤンの偉業をほんのちょっとお手伝い」したくらいの意味です。紛らわしくて申し訳ない!

  • 114122/12/15(木) 12:08:01

    おめでとう!
    宇宙歴796年、ガルカシア・コロノモロサは大尉に昇進いたしました!

    現在の昇進ポイント:30
    大尉→少佐まで残り60ポイント


    二ヶ月後。
    大尉に昇進したガルカシアは、しばらく前線から離れ待命状態にある。
    帝国軍の撤収に伴い、戦闘の機会そのものが殆ど無くなったためでもあるが、それ以上に同盟軍の艦隊編成に時間を要したことが大きい。

    アスターテ以前、同盟には十二個の制式艦隊があったが、そのうち第四および第六艦隊が壊滅し、司令官も戦死。第二艦隊もそれに次ぐ甚大な被害を蒙ったため、それら三艦隊は解体が決定された。

    それと併せ、第四、第六艦隊の残存兵と、訓練を終えた新兵で構成された第十三艦隊が創設される。

    総司令官は少将に昇進したヤン・ウェンリー。
    兵力は制式艦隊のほぼ半数、七千隻にも満たぬ数であった。

  • 115122/12/15(木) 12:49:28

    その第十三艦隊は現在、兵員の練度向上を目的とした演習の最中である…と発表されている。
    一方のガルカシアは休日を利用して、スーパーマーケットに買出しに来ていた。

    ガルカシア「また値上げ〜?最近ハイネセンはお肉高いなぁ」

    ガルカシア、ひいては"スクラップ・シップ"の去就も未だ定まってはいない。いずれかの艦隊に組み込まれることは疑いないが、首都防衛を主任務とする第一艦隊なとに編成されると、任務内容も大きく変わる…

    ザワザワ…!ガヤガヤ…!
    店内に突如としてざわめきが満ち始める。
    ある者は端末を睨み、またある者は外に飛び出す。

    ガルカシア(安売りセール…とかじゃないよね、これ)

    老人「お…おい!えらいこった、えらいこったぞ!」

    老婦人「なんですか、あなた。店内で走らないでくださいな」

    老人「そんなこと言っとる場合か!落ちたんだよ…」


    老人「イゼルローン要塞が落ちた!!」

  • 116122/12/15(木) 21:45:45

    気づいた時には既に、ガルカシアの手はポケットの端末に伸びていた。
    軍関係者専用の通知アプリを起動する。
    そのトップ画面…最重要情報として記載されていた文を要約すると、以下の通りである。

    『宇宙歴796年、五月十四日。第十三艦隊、イゼルローン要塞を陥落せしむ。情報精度:A。欺瞞の可能性ゼロ』

    『当方の被害:死者0、重軽傷者0、喪失艦艇0、スパルタニアン被撃墜0…』

    ガルカシア「…イゼルローンが…」

    かつて第五次攻防戦に従軍していたガルカシアは、その事実の重大さをあらためて思い知る。
    シトレ大将(当時)が知略を尽くし、あと一歩まで追い詰めてなお敗退を強いられたイゼルローン。
    それをヤン・ウェンリーは半個艦隊、おまけに味方の犠牲を全く出さず成し遂げたというのだ。

    一旦買い物を中断し、外の様子を窺ってみる。
    人々は街頭スクリーンの前に列をなし、そこに映る少壮の提督…イゼルローン奪取の立役者、ヤン・ウェンリーの肖像に見入っていた。

  • 117122/12/15(木) 22:09:01

    『同盟に魔術師ヤンあり!』
    『奇跡は再び!ミラクル・ヤンが歴史を変える!』
    『屈辱よさらば、来たれ栄光よ』

    センセーショナルな見出しがニュースを彩り、市民の興奮を否応にも掻き立てた。歓喜と狂熱に湧き立つ市民は声を張り上げ、涙を流し、酒の栓を開けて感情を爆発させた。

    市民A「やった、やったぞ!イゼルローン要塞は同盟のものになったんだ!」

    市民B「魔術師ヤン!ミラクル・ヤン!」

    ガルカシア(…ヤン・ウェンリー提督かぁ)

    高揚した市民の熱風のような気勢に曝され、かえってガルカシアは静かに沈思する。

    ガルカシアはヤンの一つ歳下である。いずれも16歳で士官学校に入学しており、後輩と先輩であったが面識は無かった。ヤンが戦史研究科、後に戦略研究科で学んでいたのに対し、ガルカシアは砲術の専門コースに進んでいたことが大きな要因である。

    同じ士官学校の門を潜り、そして卒業しても、歩んできた道は全く違う様相を呈している。数百人の先輩や後輩、同級生にしてもそうであろう。

    人それぞれの人生。陳腐な言葉がガルカシアの脳裏に浮かんだ。

  • 118122/12/15(木) 22:26:17

    翌朝。
    イゼルローン奪取の狂喜は未だに静まる気配を見せない。TVはごく一部を除いてヤン、ヤン、ヤン…。
    一つのチャンネルから、芯の強そうな女性の声が聞こえる。

    『…つまり、ヤン提督によるイゼルローン攻略を単なる軍事的成功と見るのではなく、同盟の国家体制を変革する契機とすること。それが肝要だと考えます』

    『具体的にはどのようなものでしょうか?』

    『帝国から見たイゼルローン陥落は、軍事的優勢の喪失のみならず、政情の不安定化に繋がりかねない変事です。それに乗じて同盟に有利な停戦交渉を進め、国力回復の時を得るのです。仮に"平和的交際"と呼びましょう…』

    それは、ガルカシアがイベントで行ったことのある惑星テルヌーゼンの選挙区から当選した、ジェシカ・エドワーズ代議員の主張であった。
    彼女はアスターテ会戦にて婚約者のジャン・ロベール・ラップを喪ったことを契機に政界を目指し、反戦派の強い支持を受けて当選した。

    また、ジェシカおよび故ラップは、ヤンの士官学校時代からの友人であり、その親交は今なお続いているという。

    ガルカシア「ヤン提督もこういう風に考えてるのかな?」

  • 119二次元好きの匿名さん22/12/15(木) 22:32:33

    自分の退役と養子(ユリアン)の兵役期間までの時間稼ぎが出来たと思ってるよ(なお…)

  • 120122/12/15(木) 22:33:50

    続いて、ジェシカを紹介するVTRが流れ始める。
    それは街頭演説の様子を収録したもので、「あなたは今どこにいますか?」というジェシカの代名詞である言葉が…

    ガルカシア「ん?…んん?」

    見知った顔が映ったような気がして、思わずテレビ画面を静止モードにする。
    画面に近づいて視線を針のように射込むと、そこには1月に統合作戦本部ビルで会話した女性がいた。

    ガルカシア「アンナさんだ!エドワーズ議員の支持者だったんだ…」

    アンナ・グリーンヒルの姿が聴衆の中にあった。
    熱心な顔つきでジェシカの言葉を反芻しているようだ。

    ガルカシア「私より若いのに色々考えてるんだなぁ…」

  • 121二次元好きの匿名さん22/12/15(木) 22:34:40

    これはいいスレを見つけた
    そしてこっからが本番だな…

  • 122122/12/15(木) 22:39:16

    カフェテリアで話した時は、アンナの熱弁に圧倒され、微かに慄いてしまってはいたが、彼女は彼女なりに同盟のあり方について考えているのだ。

    逆に自分は、そうしたものに無頓着だった…否、面倒ごとに巻き込まれたくないと、無頓着であり続けようとしていたとも言える。少し恥ずかしくなった。

    これからは少しくらい民主主義の軍人らしくなってみよう。肉に向ける情熱を、一割からでいいから国に向けてみよう。

    ガルカシア「なんたってイゼルローンが落ちたんだもん。これから少しは落ち着いて時間もできるだろうしね」

    だが…大きく動き始めた宇宙の歴史は、時間的猶予など瞬く間に吹き飛ばしてしまうのだ。


    「帝国領侵攻作戦」が始まるまで、僅か三ヶ月。

  • 123122/12/16(金) 10:21:37

    帝国領侵攻作戦───。

    制式の八個艦隊、二十万隻。
    動員兵数、三千万。
    自由惑星同盟軍の総力、その六割にのぼる大戦力。

    長躯オーディンを目指し、帝国領になだれ込む空前の軍事作戦の陣容がそれであった。

    "スクラップ・シップ"のブリッジも、流石に未知の緊張に包まれている。

    航海長「しかし、このタイミングでこれほどの大計画とは。イゼルローン攻略で政府も気が大きくなりましたかな?」

    ガルカシアも同様の疑問を抱いている。イゼルローンの陥落は小康状態を生み出すものと予想、内心期待していたのだが…

    艦長「…評議会選挙が近いからな」

    艦長が不機嫌そうに応じたのは、緊張とは別種の精神状態からであるらしかった。
    どうやら、ガルカシア達が知らない事情に多少通じているようだ。

  • 124122/12/16(金) 15:00:36

    "スクラップ・シップ"含む第二艦隊の残存艦艇は、第十三艦隊に組み入れられることとなった。
    これにより第十三艦隊は名実共に一個艦隊となり、"スクラップ・シップ"は魔術師の麾下に入ることとなった。

    ガルカシアは僅かに安堵する。前線勤務に戻るとなれば、ヤン・ウェンリー、あるいはかつて配属されていたビュコック中将の第五艦隊を心中で希望していたためである。
    そして、"スクラップ・シップ"を始めとする同盟艦隊は、首都星ハイネセンと前線を繋ぐ役割を担う、イゼルローン要塞に向かうこととなった。

    〜イゼルローン要塞〜

    直径60kmを誇る人工天球が、宇宙の星々を映す鏡となって、イゼルローン回廊の中央に鎮座している。

    戦術長「おい、身構えるなよ。もう"トゥール・ハンマー"はこっちに飛んで来ないぜ」

    航海長「分かっちゃいるが、刷り込みというもんがある」

    かつて同盟軍は微かな勝利の希望を胸に要塞を目指し、散々に打ちのめされて帰ったものであった。
    それが今や味方の重要拠点として、近づくどころか無傷で出入りできるのだ。確かに俄には信じ難い。

    要塞の周囲に集う、二十万の光点もまた圧倒的である。これらが列をなし、帝国の本拠たる惑星オーディンを目指すのだ。
    イゼルローンの軍港の収容可能数は二万隻余りなので、各艦隊は前線に赴く順に入港し、整備を受ける。
    最初は先鋒を担うウランフ中将の第十艦隊、その次が第十三艦隊であった。

  • 125122/12/16(金) 23:47:18

    〜要塞内部〜

    ガルカシア「ここが…イゼルローンの中、なんだ〜…」

    実用性一辺倒の同盟軍施設に対し、帝国らしい優雅な調度が散見される要塞内部。
    ガルカシアは生きて、捕虜になることもなく、その内部に侵入を果たしたのだ。イゼルローンは同盟の手中にあり…その事実をようやく肌で感じ取る。

    整備が終わるまでの自由時間は決して長くない。出立に遅れない範囲にある、良い肉料理を出す店を探したが、それだけ条件を絞っても尚、迷うほどに店舗数は多い。イゼルローンは単なる軍事施設に留まらず、遊興、福利厚生、食料の自給システムを兼ね備えた大都市でもあるのだ。

    これと決めた店に入り、席に着いて注文してから、ガルカシアは端末を取り出して操作する。
    肉を堪能する前に色々とやるべきことがあった。

    ガルカシア「浮遊砲台…制御マニュアル…あった」

    イゼルローン要塞は外壁の上に、光学および実体兵器への対策として、流体金属装甲を纏っている。
    浮遊砲台はその"海"に浮遊している砲熕兵器である。

    最大の特色は、流体金属を泳ぎ回ることで臨機応変な配置を可能としていることであり、各処で対空防御を行うことも、一箇所に集結させて敵艦隊に打撃を与えることも可能だ。沈めておくことで、敵による破壊を防ぐこともできる。

  • 126122/12/17(土) 00:07:59

    その制御機構、発射マニュアルについてガルカシアは学んでいた。誰に命ぜられたわけでもないが、大砲だけが取り柄の軍人としては、やはり意識せざるを得ない兵器である。

    ガルカシア(いずれ私が撃つことになるかもしれないもんね)

    そしてもう一つ、こちらは"スクラップ・シップ"艦長に命じられた任務があった。
    端末の画面を切り替えると、多数の兵士や下士官…同じ艦に乗る乗員の顔と、各種データが映し出される。

    砲撃一筋で戦い続けた結果、ガルカシアはいつの間にやら佐官候補となったわけである。佐官となれば艦長に任じられることが多い。そして艦長の大事な職責の一つは、乗員のコンディションを把握し、それらを考慮したうえで配置につかせることだ。

    ガルカシアは今、そのノウハウを初歩的段階から学んでいる。より平易な言い方をすれば、手伝いをすることによって、艦長職の手解きを受けているのだ。

    現在ガルカシアの端末には、艦籍登録を受けた乗員達の身体、精神がどのような状態にあるか、体温や心拍数といったデータによって出力されている。
    これらを一つの資料としてまとめて、定期的に報告することが、ガルカシアの新しい仕事の一つだった。

  • 127122/12/17(土) 10:22:49

    …レストランの肉料理は想像以上に上等なものだった。驚くべきことに人口肉を使っているらしい。
    イゼルローンの人造蛋白製造システムは帝国基準でも最新のものであるようだった。

    店を出て士官の詰所に戻ろうかとリニヤ・カーの発着場に行くと…

    ガルカシア「…あっ」

    上のフロアの通路を歩いている将官の列を見かけた。
    進軍計画について最終打ち合わせを行なっていた艦隊司令官達である。
    筋骨逞しい精悍な顔つきのウランフ中将、ガルカシアの年齢に倍する軍歴を皺の形で刻み込んでいるビュコック中将、そして…

    ガルカシア(あの人がミラクル・ヤンだ!)

    やや東洋系の顔立ちに収まりの悪い黒髪、のほほんとした顔つきは超然としているようにも、はたまた何も考えていないようにも見える。魔術師ヤン・ウェンリーの姿は、市井に混じればまるで目立ちそうにないものであった。

    だがヤンを始め、艦隊司令官の表情はおしなべて明るいものではない。失望や憤懣が下のフロアにも伝わってくるようだ。
    不機嫌な様子の艦長を思い出していると、今度は総参謀長グリーンヒル大将が歩いてくる。

    こちらはもはや沈んでいるなどという次元の話ではなかった。腕が落ちそうな程にがっくりと肩を落とし、副官もつけずにとぼとぼと歩き去っていく。

    ガルカシア(同盟始まって以来の大作戦じゃないの、これ…?)

    心中に蟠る不安は、リニヤ・カーに乗り込んでも消えることはなかった。

  • 128122/12/17(土) 19:23:26

    数日後、ついに同盟軍二十万隻は帝国への進軍の途につく。
    長征一万光年…同盟建国の父、アーレ・ハイネセンが五十年の歳月と自らの命を捧げて踏破した道を、それからおよそ三百年後、初めて帝国側へと進むことになるのだ。

    〜"スクラップ・シップ" ブリッジ〜

    航海長「第十三艦隊、所定の宙域で待機。第十艦隊からの連絡を待ちます」

    同盟軍は回廊の帝国側出口に到達する。
    これより先は帝国の橿域、踏み入るのには細心の注意を要する…第一陣の第十艦隊は先行して、敵の迎撃の有無を確かめるのだ。

    艦長「…」

    腕を組んでスクリーンをじっと見つめるブリッジ要員達。通信士のディスプレイが暗号通信を受け取った。

    通信士「第十艦隊より入電。…『周辺宙域に敵影なし。我ら、生きて帝国の土を踏まん』…」

    おお、という小さなどよめきがあった。
    同盟軍人として、帝国領に侵入を果たしたという事実は、それほど大きなものであった。

    だが、ガルカシアはあまり興奮する気にはなれなかった。それは職務に熱意を持っていないためではなく、腕を組んだまま険しい顔を崩さない艦長を見咎めたためであった。

    ガルカシア「…あの」

  • 129122/12/17(土) 21:03:01

    ガルカシア「艦長…、な、なにかご懸念がおあり…でしょうか?」

    驚愕の視線が一斉に突き刺さる居心地の悪さを感じ、ガルカシアはほんの少し後悔した。
    仮にも五年近く同じ艦の飯を食べてきたのだ、黙々と自らの任務に従事し、他者とあまり関わりを持ちたがらないタイプだと皆が思っていたし、ガルカシア自身もそれは知っている。

    艦長「…うむ…」

    やや躊躇った後、艦長は重々しく口を開いた。
    珍しく自己の心中を伝えてきた部下に対し、自分も思う所を述べておくべきと思ったものか。

    艦長「帝国軍の迎撃が無かったことが、どうにも不自然に思えてならんのでな。もしこちらを撃退することが目的ならば、回廊の出口で待ち構え、我らが現れた所を集中して叩けばいい」

    艦長「敵がイゼルローンを失ったことで、慎重になっているというなら、それに越したことはないが…」

    ガルカシア「…なるほど…」

    艦長の言葉はそこで途絶えたが、最後の希望的観測を、艦長は決して信じていないだろうことは、ガルカシアにも分かった…。

    いち駆逐艦の懸念で司令部の方針が変わるわけもなく、帝国領に進出した各艦隊は、辺境の有人星系に進路を取った。
    そこに住まう、数世紀にわたる専制主義に虐げられた民衆を"解放"し、支持を得ることが目的とされた。

    同盟軍の上陸部隊が、惑星に次々と降着する。彼らを待っていたのは、糧を失い途方に暮れていた帝国臣民であった。

  • 130122/12/17(土) 22:44:03

    艦長「…つまり帝国軍は、我らの侵攻前に食糧を残らず徴発したということか?」

    主計長「ええ。他の艦隊が進出した星系も含め、根こそぎです。これに伴い、司令部は我が軍の備蓄より食糧の供与を決定しました」

    艦長「まぁ、そうだろうな。飢えた民衆を放置しては、我らが帝国領内で動く大義そのものが失われる…敵軍に動きは?」

    船務長「全くありません。その兆しすら、何も…」

    今回の作戦に際しては、宣撫士官と呼ばれる要員が総司令部より派遣されている。現地住民との折衝を行い、同盟の掲げる民主主義によって彼らを「教化」する部隊だ。

    ガルカシアは今、彼ら宣撫士官と共に占領、ないし解放した惑星の地表にある。目の前には、列をなす住民達の姿があった。

    ガルカシア「こう言っては失礼ですけど、少しばかり古めかしい服装ですね…」

    宣撫士官「古い生活様式も反動的な専制主義の副作用です。我らはその戒めを解くために来たんですから」

    この時彼は、一つの事実を見落としている。
    住民達列をなしているのは、偏に食料を求めてのことだと…。

  • 131122/12/18(日) 08:48:39

    宣撫士官「さぁ、食料はこちらですよ!押さないでね」

    住民A「おお、食い物だ!ずっと腹が鳴りっぱなしだったよ」

    住民B「おーい、これ婆さんに持ってってやってくれ」

    宣撫士官「我々は解放軍として、民主主義の精神を伝えるために一万光年を越え、ここまで来たのです。三百年前…」

    住民C「あんたら取り合わないのちゃんとここにあるんだから!」

    宣撫士官「民主主義の根底にあるものは、人間生まれながらにして義務より先に権利を有するという…」

    住民D「軍人さん、いいかね?」

    宣撫士官「うん?何だね」

    住民D「うちの爺さん歯がないから、柔らかいもんが欲しいんだが…」

    宣撫士官「あ、ああ…用意しよう」

    自国の軍隊に取り上げられた食料を敵国に与えられた民衆は食欲を満たすのに夢中で、宣撫士官の熱弁など鳥の歌声と同種のものとしか思っていなかった。

    ガルカシア(興味ない分野なら、美味しい物放っといて話は聞けないもんだけど…)

    教化政策の手応えはまるで感じられなかった。

  • 132122/12/18(日) 18:30:32

    〜宣撫士官 詰所〜

    宣撫士官A「…今の所、現地住民は我々におおむね好意的であるようだが…」

    宣撫士官B「飢えかけていた所に食料を分けたからな。我々の言葉を有り難がってるわけじゃないさ」

    ガルカシア「…」

    圧政に苦しむ民を救済し、民主主義の伝道者としてその名を残す…小さからぬ英雄願望は甘さの産物であっても、さほど責められる謂れはあるまい。
    現実の壁に直面した気分の宣撫士官達の興奮は、早くも冷めつつあった。

    宣撫士官C「そもそも他の政治思想に触れる機会そのものが無いのだ。基礎的な教育体制からして見直さねばならんぞ」

    宣撫士官D「どのように講義を受けさせるというんだ。彼らには糧を得るための営みがあるし、糧を得られればそんなものに興味を示すこともあるまいよ」

    宣撫士官E「我々が出す食料しか、食わぬというわけでもなかろうしな…」

    この状況で帝国軍が民に食料を施すとして、同盟軍と対峙したとする。果たして住民達は「報恩」のために自国の軍隊と戦ってくれるのか?
    脳味噌が砂糖水に浸かっている者は流石にいなかった。

    ガルカシア「その帝国軍は、私達を放っておいて何をしているんでしょうね…」

    ガルカシアが宣撫士官の手伝いなどに駆り出されているのも、偏に砲門を向けるべき敵が現れないためである。同盟軍が次々と辺境を解放するのを看過し、じっと息を潜めているかのように思われるのだ…。

  • 133122/12/18(日) 20:22:18

    遠征開始より一ヶ月…
    同盟軍は二百を超える星系を占領し、五千万を超える住民を"解放"した。打倒すべき敵も見出しえぬまま。
    微かに燻っていた不安は、今や全軍を覆い尽くしていた。

    ガルカシア「もうこれだけしか残ってないんです!?」

    "スクラップ・シップ"船倉の前で、ガルカシアは愕然とした声を上げた。当初の予定ではまだ余裕があるはずの物資が、文字通り底が見えるほどに減少していた。
    そしてガルカシアを唖然とさせたのは、何も"スクラップ・シップ"に関してだけのことではない。

    主計長「解放した住民…というか捕虜はこちらの兵員の二倍。要するに食料の消費が三倍になったわけで、足りなくならないわけがないよ」

    第十三艦隊、そして遠征軍全体の食料が欠乏をきたし始めていた。五千万人が半年食べるとしたら、穀物だけでも一千万トンに及ぶのだ。これほど膨大な食料はイゼルローン要塞のキャパシティですら賄うことは敵わず、本国から送られてくるのを待つしかない。

    ガルカシア「…じゃあ…届くまでの間は…!?」

    主計長「無論のこと、我々の分を切り崩していく他ない。いずれ一日二食になり、一日一食になり、やがて二日に一食、三日に一食となろうさ…」

    遠い目をした主計長の隣で、ガルカシアは憮然として端末を見る。乗組員達のコンディション表示は、主に精神状態の面で、水準を下回るとの表示が出た。
    これに空腹の慢性化が加われば、どうなることか…考えたくないことだが、考えないわけにもいかなかった。

  • 134122/12/18(日) 21:13:15

    それからさらに一ヶ月。
    同盟軍にとって、指の先から刻まれていくような日々が始まった。

    物心両面の活力を失った同盟軍の前進は完全に停止。
    戦う相手も見出しえない将兵三千万と、与えられる食料を待つばかりの民衆五千万。
    生産に寄与しない、一方的な消費のメカニズム…一人当たりの食事量は、日を追うごとに切り詰められていった。

    当初の高邁な理想を諦めて久しい宣撫士官は、とにかく事務的な作業の繰り返しと食料の供与を続ける日々を送る。供与量の減少に対する直接、間接的な不満に反応できないほど、精神が磨耗し始めていた。

    いたたまれなくなり、ブリッジに戻って砲撃シミュレーションをするガルカシアだが、平時の六割ほども冴えを見せられない。おまけに、館内照明が不規則に明滅するわ、空調システムが一時停止するわ、砲の給弾システムの不具合が見つかるわで、"スクラップ・シップ"が戦う前から満身創痍になりつつあることを思い知らされた。

    端末に表示された乗組員達の名前の横に、「至急、休養の要ありと認む」の文字が並ぶ…。

    一週間前から、ガルカシアは自らの肉コレクションを乗組員達に振る舞っていたが、ついにそれも底をついた。焼石どころか、恒星に水をかけるような行いでしかなかったが、そうせずにはいられなかった…。

  • 135122/12/18(日) 23:12:54

    艦長「喜べ、撤退だぞ!」

    よく考えれば、これはおかしな発言であったろう。
    一万光年を越えて敵地を切り取りながら、さしたる成果も得られず撤退するのだ。普通ならば嬉しかろう筈もないが…

    航海長「…本当ですか!」

    艦長「ああ、艦隊司令部直々の命令だ。撤退準備を速やかに進めよと」

    船務長「それはよろしいのですが…総司令部の意向は?」

    艦長「我々の軍事行動の大前提は、味方の無用な損害を可能な限り減少させることだ。それに関する判断を現場で行わなければ、遅きに失するだろう。違うか?」

    異論は出なかった。軍令に固執した挙句犬死にしたのでは、それは忠実というより滑稽に類する行いである。ようやくその時が来たかと皆が思った。

    船務長「分かりました!撤退準備を進めましょう。…コロノモロサ大尉は?」

    艦長「彼女は宣撫士官と同行している。共に艦に戻らせよう」

  • 136122/12/19(月) 08:13:46

    実の所、宣撫士官とガルカシアは撤退命令が出される少し前から、艦に帰投する支度を始めていた。一度艦隊に戻り、今後のことについて司令部と諮ろうとしていたのだ。
    撤退命令自体は渡りに船であったが…

    ガルカシア「揚陸艇の三割が動かない!?」

    宣撫士官A「食事の量が減ってから整備兵の消耗も著しくて…装甲車は置いていくしかありません。その他無駄な物も…」

    やるせなく、うず高く積まれた紙の束を見る。
    帝国住民に配布する予定だった、民主主義啓蒙用のチラシであったが、結局顧みられることはなく、詰所の一角を温め続けている。
    血相を変えた兵士が飛び込んできた。

    兵士「ほ、報告!緊急事態です。住民が…」

    宣撫士官A「どうした?」

    兵士「現地住民が半ば暴徒と化し、こちらに迫っております!急いで離脱しませんと…」

    食料の供与が停止する以上、現地住民が同盟軍を歓迎してやる理由などなかった。資材を遺棄し、慌てふためいて揚陸艇に飛び乗る様は、敗軍のそれに他ならない。

    揚陸艇のモニターから、ガルカシアは外の様子を見た。鋤や鍬を携えた一個大隊ほどの集団が、険しい顔で何事か叫んでいるのが見えた。「侵略者」に罵声をぶつけていることは疑いなかった。

    意気揚々と敵地に乗り込んだ挙句、ひたすら物資を食い潰して、敵と戦うことも許されず、飢えと不安に苛まれる日々を送り、最後には侵略者の汚名と共に帰ることになるのだ。

    愚行の片棒を担がされたことを、ガルカシアは恥じ入る気持ちになった。

  • 137122/12/19(月) 12:53:40

    〜"スクラップ・シップ〜 ブリッジ〜

    ガルカシアがブリッジに戻ると、緊迫した喧騒が彼女を待ち構えていた。

    艦長「…それで、第七艦隊からの報告は?」

    通信士「はっ、我が軍の占領宙域を迂回するように高速で移動する、高熱源体を多数感知。艦隊だと仮定した場合の規模は…最低でも二万隻!」

    戦術長「それが我が同盟方向へ向けて進んでいるだと…」

    第七艦隊が齎した情報は、何か…まず間違いなく艦隊であろう…が、遠征する同盟軍の背後に迫っている可能性を示していた。
    ちょうど本国からの輸送艦隊が通信可能圏内に入る頃合いである…


    ビーッ!ビーッ!ビーッ!ビーッ!
    耳をつんざくような警報がブリッジに響き渡る。それはガルカシアが半年以上聞いていない…敵襲警報であった。

    通信士「第十艦隊より通信!我、惑星リューゲン衛生軌道上にて、敵と遭遇せり…」

    船務長「それだけではありません!第五、第八、第十二…我が艦隊前方にも艦影!帝国軍です!!」


    帝国軍の反撃が、ついに始まった。

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