何となくキタちゃんは｜あにまん掲示板

　お助け大将と呼ばれ慕われている親友のキタちゃんは、誰にでも近い距離感で親しく接してくれる快活なウマ娘。
しかし、最近のキタちゃんの担当トレーナーさんへの振る舞いがどこかよそよそしいように感じていた。

「キタちゃん、大阪杯1着おめでとう！」
「えへへ、有馬記念は2人で走ろうって約束したんだもん。ここで負けてられないよ！」

　そんな違和感が確信に変わったのは、私のクラシック戦線を控えた大阪杯でのことだった。

「お疲れ様、キタサン」
「トレーナーさん！　あたし……やりましたよ！」
「ああ、これからの春三冠レースも負けられないな！　そのためにもまずは体を拭こうか。春とはいえまだ肌寒いから……」
「っ……！　あ、ありがとうございます！　汗拭いたら戻りますから、トレーナーさんは先に戻っててください！」

　この時のキタちゃんは、担当トレーナーさんから差し出されたタオルを素早く受け取ると、慌てた様子で控え室に戻るよう促していた。2週間前の金鯱賞までは嬉しそうに拭いてもらっていたのが、ここ数日のトレーニングでは妙に距離を取るようになっていた。
これだけ聞けばトレーナーさんに嫌悪感を抱くようになった、と取れる。けど、原因は恐らく……。

「ねぇキタちゃん……スキンケアってちゃんとしてる？」
「……えっ？　あ、あはは……バレちゃってたかぁ。さすがはダイヤちゃんだよ」

　デビュー3年目にして無敗、今回の大阪杯で重賞38連勝となるキタちゃんの疲労は、態度には出さないものの体には如実に表れていた。トレーナーさんを近づけたくなかったのは、連戦で荒れた肌を至近距離で見られることを避けるためだろう。
それならば、親友として私のすべきことは一つ。

「レースも大事だけど、肌も大事にしなきゃだよ。春の天皇賞、綺麗な姿で勝ってほしいもん」

　特別な感情を向けるのはレースかトレーナーさんか……そのどちらだったとしても、親友の進む路を支えよう。今まで私がそうしてもらったように。

「ふふ、ダイヤちゃんは頼りになるなぁ。でも……」
「でも？」
「天皇賞・春の前に阪神ウマ娘ステークスに出走するんだ」
「キタちゃん……」