- 1二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:26:15注意!ダークインシヲツカイナサイ…|あにまん掲示板ツヨクナリタインダロウ?ツカイナサイ…bbs.animanch.com
を元ネタにした長文闇怪文書です!
設定は大体此方を参考にしてるのでん?と思ったら先に見る事を推奨します。
- 2二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:26:28
「クッソ…!」
未だに私はデビュー戦に勝てないでいた。
分かっている。トレーナーは私にとって最適なトレーニングプランを渡してくれる。チームの皆も私の為に色々手伝ってくれる。努力の量なら私は同期の誰にも負けない自信がある。
だが、それでもどうしようもない部分があった。
才能の差。
産まれた瞬間に宿る、ウマソウルの絶対的な差。
その差が私を阻んでいた。 - 3二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:26:46
次のデビュー戦に勝てなければ、私は家に引き戻される事になる。
あの牢屋みたいな家に縛られ、家の為に生きる人生を強いられる。
嫌だ…嫌だ…!でも…私じゃ…!
言葉にならない感情を壁に叩き付ける。 - 4二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:26:57
「どうしましたか?何か、嫌なことでも?」
私に話し掛けてきたのはたづなさん。
たづなさんなら話しても大丈夫だろう。私は悩みを打ち明けることにした。
私の八つ当たりのような部分でもうんうんと頷き、理解を示してくれた。
…そして目を伏せるたづなさん。 - 5二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:27:28
「…もし一つだけ願い事が叶うとしたら、貴女は何を望みますか?」
そんなの決まってる…
「次のデビュー戦、どうしても勝ちたい…!」
「…ふふっ♪なら、ついてきて下さいね?」 - 6二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:27:46
たづなさんが何も無い壁に手をかけたと思ったら、壁がグルリと周り階段を示した。
何も告げず降りていくたづなさん。私は慌てて、その後ろ姿を追って階段を降りていく。
「あのー…この先には何が?」
「付いたら分かりますよ。」
それ以外何も告げず、ただただ階段を降りていく。 - 7二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:28:06
降り続けた先、扉が開く。暗闇が支配する場所だった。
「さぁ…中へ」
半信半疑ながらも中へ進むも、真っ暗闇で何も見えない。
「大丈夫です、直ぐ分かりますよ…」 - 8二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:28:23
ボッ…ボッ…ボッボッボッボッ…
炎が勝手に宿り、部屋が明るくなっていく。
そして、ソレを照らしだす。 - 9二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:28:41
「何…あれ…」
炎が付いた先に合ったのは大きな神像だった。手も足も枷を嵌められ、全身を鎖で縛られた神像。
詳しくない人でも分かる。"アレ"はどうみてもまともなものじゃない。
私の身体が、いや、もっと奥、私の魂が"アレ"の近くに居てはいけない!と警鐘を鳴らす。 - 10二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:29:01
だけど、私は動けなかった。前はあの神像が、後ろにはたづなさんが私をみつめ、いや縛り付けていた。
まるで私の本心を明かせと命令するかのように。そしてここから逃がさないと言わんばかりに…
「たづなさん…アレは…一体…?」
「ふふふふふふっ♪」 - 11二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:29:16
「改めて聞きますね。貴女の、願いは、何ですか?」
あ…あ…
ダメだ、言っちゃ行けない。取り返しの付かないことになる!!! - 12二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:30:01
「勝ちたい…!」
「次のデビュー戦、いや、デビュー戦だけじゃない…」
「オープン戦も、G3も、G2も、G1も!」
「勝ちたい…!勝ちたい…!私は勝ちたい…!」
「その為の才能が!力が!私は欲しい!!!」
「…よく言えました♪」 - 13二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:30:43
「さぁ、受け取りなさい…!負の感情を…!ウマ娘に宿りし闇の力を…!」
ドクン…!
目の前の神像から紫の靄が広がっていく。広がる靄は部屋中を侵食し、私に迫ってくる。
「い、いや…」
思わず、逃げようとしても遅かった。紫の靄はもう目の前にあった。そして
「ひゃあああああーーーっ!!」
紫の靄は私の身体に吸い込まれていく。いや違う、私のウマソウルに宿っていく…!
ドクン ドクンと私の心臓が強く脈打つ。まるで私に宿った"力"を確かめるかのように。
それと同時に私の意識が遠くなっていく…
「あ……り… …とれぇ…ナ…」 - 14二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:30:58
「ようこそ、…"此方側"へ…!」
- 15二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:31:24
意識を失い、私が教室の前で発見されてから数日後。
私はデビュー戦で瞬く間に勝利を収めた。
今までどうして勝てなかったのか分からないぐらいに他のウマ娘達を軽く捻り圧勝した。
トレーナーもチームの皆も喜んでいた。
あぁ…これが中央で"勝つ"ってこと…!
とても、とても嬉しかった。何より身体中を漲るこの"力"があれば、もう負けるなんて事は考えられない!
─────今思えば、私は勝利という名の毒に身を焼かれていたんだろう。 - 16二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:32:09
オープン戦も勝利し、ドンドン上がっていく私。
そして遂に迎えた初の重賞、G3。
トレーナーも気合いを入れて私へのプランを考えてくれた。
そして
「トレーニングしたとおり差しの走り方なら勝てます。良いですね?」
「はぁ~い。差しですね。」
熱心に話すトレーナーの言葉を右から左へ流す。どうして言う事を聞く必要があるんだろう。
「ええ、貴女ならG3も勝てる。そう信じています。」
そしてトレーナーは部屋から去って行く。それを脇目に私はロッカーから女神像を取り出した。
闇色に染まった、他の人からすれば怪しげなソレに私は祈る。
だって、今の私には、確かな"力"があるんだから…♪
─────私の何かが、ダーク因子によって侵食されていく。
力に溺れた私は、それに気付かないで居た。 - 17二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:33:12
G3も圧勝し、迎えたG2戦。
特に三番のウマ娘はG1掲示板にも載っていたウマ娘。今期の中でもトップクラスだろう。
ここまでトントン拍子で来た私もトレーナーも、流石に緊張を隠せなかった。
「差しで走るんです。良いですね?
貴女は先行で走るとペースを上げ過ぎてかかる癖がありますから。」
最近はトレーナーの声がうっとおしく思えてきた。
私に囁きかける声に従う方が、気持ち良いし何より勝てる。
『ソウ。カノジョノイウコトニシタガウヒツヨウナンテナイヨ♪』 - 18二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:33:24
「うるさい…!」
「私がどんな走り方しようと、私の勝手でしょ…!」
「っ…」
私の苛立ちをぶつけられ、怯むトレーナー。
「…出てって。」
「…分かりました。」
「ですが、私は貴女なら勝てる。そう信じていますから…!」
扉を閉じ、去るトレーナー。 - 19二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:34:03
…酷い事を言ってしまった。後で謝らないと…。
『チガウヨ?ヤット、ウルサイコエガキエタデショ?』
そう…かな…。
『ソウダヨ。キニヤムグライナラ、カテバイイジャナイ?』
そうだ、私は勝たなきゃいけない。
『ソウソウ。2イ?3イ?ソンナノナグサメニモナラナイ。』
勝つこと以外に意味なんて無い。
「勝たなくちゃ…勝たなくちゃ…ナニヲギセイニシテモ…」
女神像に祈りながら、私はそう強く願った。 - 20二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:34:27
そして始まったG2レース。
コーナーが終わり、最後の直線。私の全身全霊を込めて走り続ける。
だからこそ、私は感じてしまった。
どうしても足りない差。
産まれながらに持っている才能。
どれだけ努力しても埋められない運命的な力。
ジリジリと三番が突出していく。
───そんな私に、声が囁く。 - 21二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:34:37
チカラガ、ホシイカ?
- 22二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:35:01
欲しい…!欲しい…!!欲しい!!!
この呪われた運命を、レースを勝てるなら何を捨てたって、魂を売り渡したって構わない!!!
私の答は、決まっていた。 - 23二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:35:18
私の魂を守っていた堰が完全に崩れていく。闇が、私に流れ込んでくる。ウマソウルがダーク因子によって染められていく。
二度と戻る事の無い、完全な変質。
三日月の如く歪む"私"の口元。 - 24二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:35:39
「ど…けぇえええええええ!」
身体中から闇色のオーラが吹き出し、大きく加速する。
と同時に身体中が悲鳴を上げる。一歩踏み出す度に骨が、肉が、トレーナーと共に作り上げた肉体が崩れていく。
だけど"私"はそれを全て切り捨てる。ソンナコト、ドウダッテイイ。 - 25二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:35:50
横の娘がオーラに気圧されヨレていく。遂に横に並び、驚愕の表情を見せる三番。
モットダ。呼吸さえも切り捨て走る事に費やしてく。脳が危険信号を鳴らすも踏み躙る。
遂に三番を差し切り、そのままゴール。 - 26二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:36:32
勝っ…た?
勝利を自覚したと同時に意識が戻っていく。
──同時に倒れ込む身体。
トレーナー…わたし…かて…
ドサリ
芝の感覚と共に私の意識は、いや、私のウマソウルは闇へ…ネビュラグレイに吸い込まれていった… - 27二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:36:46
このレスは削除されています
- 28二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:37:09
───レースから一年後、病院にて
「…」
私、樫本理子は今も眠り続ける彼女を見つめていた。
あのレースの後、倒れ込んだ彼女は病院に運ばれた。
歩く事すらズタボロになった脚、そして彼女の脳は酸欠によってダメージを受けていた。
その影響かは分からないが、彼女は目覚めなくなってしまった。
こうして見ると脚以外は一見綺麗に見えるのに、彼女はまるで魂を喪ったかのように眠り続ける。
「また、来ます。」 - 29二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:37:29
「あ、理子ト…いえ、理子理事長代理でしたね。」
部屋を出ると出会ったのは駿川たづな。
「貴女も、見舞いに?」
「ええ…」
最近、トレセン学園ではレース後倒れ込み、そのまま意識が目覚めない生徒が増えている。
トレーナーへの聴取など原因を探ってはいるものの、今も不明なままだ。 - 30二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:37:39
レース前喧嘩し、その後目覚めなくなった彼女を見て私は大きく悔やんだ。
そして、私は決心した。
トレーナーを休業した海外にて学び直し、トレセン学園の理事長の座まで上り詰めた。
もう、彼女のような悲劇を繰り返させない。自由など不要。徹底した管理こそがレースに必要だと。
ウマ娘達を守る事に必要だと。 - 31二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:38:11
その為には、もうこんな所に居てはいけない。こんな感情など、捨てなくてはいけない。
「…理事長業務交代の為失礼します。」
たづなを後に去って行く理子。
そんな後ろ姿を見つめるたづな。
「やはり、彼女の事を今も…」
「…っ」 - 32二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:38:22
いつか、彼女が眠った原因を判明し、彼女が再び目覚めた時
彼女は私を許してくれるだろうか…
完 - 33二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:39:06
乙。面白かったよ
- 34二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:39:11
おお…もう…
- 35二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:40:55
乙。
最初の方のアレは何なんだろうか
病院にいた たづなさんとは別の
何か悍ましいモノであってほしい
書いてくれてありがとう - 36二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 21:44:23
余談
元スレにて語っていたとおり樫本理事長代理のバックボーンがピッタリハマったので執筆!
因みに樫本代理が海外にて学んだ徹底管理プログラムは科学に基づいている為、オカルト寄りの因子継承とは殆ど関わりが無い為彼女だけでは究明は不可能な模様…
最初に彼女を誘ったたづなさんは元スレの話題を元に「ウマ娘達を破滅に導く、たづなさんの双子の姉」という感じです(元ネタの元ネタの大園ゆりこイメージ) - 37二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:22:29
面白かった!カフェにはダーク因子持ちの子はどう見えてんのかなぁ…
- 38二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:26:21
おおう、こんなスレが立っていたとは……いけないものを見た気がする……面白かった
- 39二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 23:57:09
読んで頂きありがとうございます!
- 40二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 07:18:25
age
- 41二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 07:21:42
あっさりとしながらも大事な部分がちゃんと描かれていて面白かったです
- 42二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 18:55:37
- 43二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 23:26:50
age