- 1二次元好きの匿名さん22/12/08(木) 20:29:57
このSSは『ゼファーにサウナ教えたらハマりそう』から着想を得て作られている気がします。
ゼファーにサウナ教えたらハマりそう|あにまん掲示板延々と外気浴でととのいそうbbs.animanch.com筆者はサウナエアプなのでかなり描写は浅いです。
イメージを損ねる表現にはならないように頑張って書いてはいます、多分。
色々とアレな作品なので、生暖かい目で見守っていただけると幸いです。
- 2二次元好きの匿名さん22/12/08(木) 20:30:13
寒風が吹き、だるまさんやおすもうさんが風となる時分。
今日のトレセン学園は学園内の工事のため、午前中の授業だけで終了となりました。
グラウンドやジムは使えますが、私はレース直後、今は風凪の時です。
トレーナーさんを誘って風待ちでも、と思いましたが急用で今日は学園にいらっしゃいません。
少しだけ、黒南風。
それならば一人で風待ちをとも考えましたが、せっかくの時つ風です。
「久しぶりに……あちらに伺いましょうか」 - 3二次元好きの匿名さん22/12/08(木) 20:30:32
トレセン学園から徒歩で15分程。
複合商業施設の3階に、私が求めるおぼせはあります。
「いらっしゃいませ、本日はフルタイムですか? 3時間ですか?」
「3時間でお願いします」
レストランやマッサージ施設などを併設した入浴施設、いわゆるスーパー銭湯です。
大きなお風呂そのものはトレセン学園にもあります。
しかし風の吹くの時間を気にせずに、つむじのように入れるのはここだけでしょう。
何より、ここにはアレがありますから。
タオルとレンタル着を受け取り、私はロッカールームへと向かいます。
「ふぅ……やはりこの時間が私にとっての好風ですね」
週末や夕方はまるで饗の風の賑わいですが、平日のお昼時は人が少なめです。
まずは身体をしなとで清め、それから湯船にゆっくりとつかります。
地下1000mから湧き出る源泉かけ流しの温泉、学園では味わえない良さがあります。
「そろそろ海風へと……いえ、もう5分だけ」
風待ちのよう慌てず時を待ちましょう。
時計の針が目的の時間を差した時、私は湯船から上がり、身体を拭きます。
――――さて、ここから金風。 - 4二次元好きの匿名さん22/12/08(木) 20:30:53
扉を開けると、全身に熱風が飛び込んできます。
そう、このスーパー銭湯にはサウナが併設されています。
私はサウナが好きです。正確にはサウナ、水風呂の後の外気浴で浴びる風が好きです。
レースの疾風やトレーナーさんとの恵風には劣りますが、ここでしか浴びれない風が確かにあります。
「まずは8分、いえ、今日は10分でいきましょう」
今日の私はいつもより涼風を感じています。
心地良い熱、今のこの場では風を浴びることはできませんが、先に待つ瑞風を思い浮かべて待ちます。
汗が全身から吹き出し、少しだけ思考が緩慢になった頃、私はサウナから出ます。
「……っ! やはり、このべっとうは慣れませんね」
掛水は苦手ですが大事なマナーです。
そして水風呂に浸かります、全身からインナーマッスルまでならいを直接浴びているよう。
その後全身を拭い、待ちに待った外気浴です。
「ああ……さらさら、とても、ひより、です」
凩にも関わらず、全身で浴びるのはまるで緑風。
私にとってのサウナの春一番はここにありました。
外気浴を終えた後、もう一度同じルーティンを繰り返します。
そして3回目。
私は一日のルーティンは3回までにすると決めています。
サウナ室の扉を開けると、今までとは打って変わって初東風のような賑わい。
普段であれば避けますが、今回はこれで良いのです。
外から声が聞こえます。私はこのために風読みをしていたのですから。
「ただいまよりー、ロウリュの時間となりますー!」 - 5二次元好きの匿名さん22/12/08(木) 20:31:19
そう、ここのサウナのサービスの一つ、それがロウリュです。
この時間に人が集まっていたのも、これを目的としてたから。
「本日はーラベンダーのアロマ水になりまーす! でははじめまーす!」
ウマ娘の熱波師が桶からアロマ水を汲みだし、それをサウナストーンへかけていきます。
ジュウ、という音と共に熱風と薫風が吹き荒れます。
上昇していく室温、ですがこれはまだ吹き始めの御祭風に過ぎません。
「はい! ではこれから扇いでいきますー! 希望の方は手をあげてくださーい!」
満場一致、いわんばかりに全員が手を上げます。
一人、また一人と熱風が送られていきます
そして私の番。
「ねー! ぱー! ねー! ぱー! ねー! ぱー!」
「……っ!!」
熱風、いえこれはもはや炎風、火炎旋風の如く。
目を開けられなくなりそうな熱き風を、私はじっと受け止め続けます。
そして次の人に移ったのを感じた時、一息つきました。
凄まじき想像以上の凶風――――さすがにこれ以上は厳しいかもしれません。
「はい! では二週目いきまーす! 希望の方は手をあげてくださーい!」
私は手をあげました。 - 6二次元好きの匿名さん22/12/08(木) 20:31:40
「これでロウリュタイムはおしまいでーす! サウナ室清掃のため退出お願いしまーす!」
ぞろぞろと出ていく人々。
私も水風呂と、行きたいところですが多すぎて入れないため、多めの掛け水で我慢します。
節東風に吹かれたようにそわそわする自分の気持ちを抑えながら、身体をしっかり拭います。
そして私は、最後の外気浴に向かいました。
疾く疾くと進む足と心、私は外のサウナベンチへと腰掛けました。
吹き抜ける風、全身から聞こえて来る鼓動、どこか遠くに感じる周囲の喧騒。
「――――ああ」
どんな心地か。
どんな心地か、ですって?
言葉などには、とても、とても!
やがて、身体に感じる風が止まる。
身体が軽い、どこへでも行けそう……そう、自由、自由だ。
そう、風が止まったのではない、私は今、風そのものに―――――。 - 7二次元好きの匿名さん22/12/08(木) 20:32:00
――――なれたら、トゥインクルシリーズなどには挑戦してませんね。
十分にととのった私は、ロッカールームへと戻り、レンタル着に着替えます。
サウナの後は牛乳をいただくのが私の恒風です。
本当はフルーツ牛乳の方が好みですが、メーカーが生産中止してしまいました、あなじです。
ロッカールームに備えてある自動販売機に向かうと見慣れない張り紙がありました。
「……オロポ、始めました」
時候の風に疎い私でも聞いたことがあります。
とある清涼飲料水を組み合わせた、サウナー必携の飲料であると。
私も飲んだことはありませんが、まさかここで見るとは思いませんでした。
「ですが、なかなかのお値段。懐には木枯らしは吹いていませんが……」
牛乳が2、3本買える値段となると、少し臆病風が吹いてしまいます。
作ろうと思えば比較的安価で自分で用意することも出来るでしょう。
しかし、サウナ後にこれを頂くという状況を用意するのは、たま風に挑むが如く。
「これもまた時つ風、ということでしょうね」 - 8二次元好きの匿名さん22/12/08(木) 20:32:19
「オロポお待たせしましたー!」
「では豊穣の風に感謝を、いただきます」
施設内のレストラン。
目の前に、ジョッキに入れられた金風のような色をした飲み物が置かれました。
それを私は麦の秋風を呷るように飲みます。
刹那、刺激の強い液体が、私の喉を、身体を駆け巡り、身体中に祥風が吹き抜けます。
「ふぅ。これは思った以上に……ですが、やはり量が気になりますね」
そこまで飲んだつもりはなかったのですが、すでに中身は風前の灯火。
物事をコストパフォーマンスで見るのはようず、とはいえ気にはなります。
二回目を頂くことはないでしょう、これもまた風情。
さて、お腹は空風。夜ご飯は先なので、軽く食事も頂いていきましょう。
「今日は主風ではないものを選んでみましょう……ふふっ、東風や南風やと迷ってしまいますね」
普段であれば欧風カレーやぼうふうのおひたしなどを選ぶのですが、今日は時つ風。
メニューを一枚一枚眺めていると、コトリと一枚のメニューが落ちます。
特別メニューでしょうか、それを見て、その中の一品が私の目を引きました。
「麻婆、ラーメン?」 - 9二次元好きの匿名さん22/12/08(木) 20:32:43
麻婆豆腐とラーメン。
この二つの料理は好風とする人が多く、中華料理の看板を掲げている店ならば必ずあるでしょう。
ですが、これが麻婆ラーメンとなるとどうでしょうか?
途端、揃える店は凪ぐこととなり、人によっては見たことがないという人もいるでしょう。
いざ探してみれば花嵐の道行――――そのようなメニューです。
「このお店はカレーやラーメンはあるとはいえ、メインは和食……何故この異風を?」
悪風の兆し。
しかし私の目はその文字から離れることができません。
風は気まま、この風の赴くままに、今は進むべきなのかもしれません。
「ふふっ、今日は良く時つ風が吹く日ですね」 - 10二次元好きの匿名さん22/12/08(木) 20:33:05
「お待たせしましたー、麻婆ラーメンでーす!」
「これは……」
一見すると常風な麻婆ラーメン、ですがそこには季節外れの風が流れていました。
「玉子とじ?」
中華料理において玉子は珍しいものではありません。
ですが、麻婆豆腐における玉子は夏に吹く凩のようなもの。
それは麻婆ラーメンにおいても同義なのです。
「……困りました、まるで風が読めません」
麻婆ラーメンに玉子とじを組み合わせた結果、それはどのような風となるのでしょうか。
私はあからしまにも挑むような思いで、一口目を口にしました。
――――口の中に走る熱風。
ですが直後、微風が流れ、熱風を心地よい温風へと和らげてくれました。
なるほど、風が読めました。
刺激の強い四川風の麻婆豆腐とまろやかな甘さを持つ玉子で夏に秋風を吹かせています。
また、玉子とじによってとろみを効いたスープとちぢれ麺の相性はまさに凱風です。
「ですが、あまりにも美味しい……これには何かまた別の風が……まさか」
私はレンゲでスープを掬い、口に含みました。
そこからは、麻婆ラーメンの味がしたのです。 - 11二次元好きの匿名さん22/12/08(木) 20:33:28
麻婆ラーメンのスープから麻婆ラーメンの味がするのは当然、と考えるのは初夏の風。
中華料理店の麻婆ラーメンの多くは、麻婆豆腐と醤油ラーメンを組み合わせたものでしかありません。
それはどちらも取り扱っているから、メニューを増やしておこう、という風見によるものです。
そのため殆どの麻婆ラーメンのスープからは醤油ラーメンの味がするのが、常風。
ですが、この風は。
「最初から――――麻婆ラーメンとして作られたということですか」
まさかこのようなレストランで、晴嵐に出会うとは思いませんでした。
望外の風によって私の箸は止まることを知らず、旋風のように麺を食べつくしてしましました。
スープは本来残すべきなのですが。
「このような清風、こちらも干さねば不作法というものでしょう」
ああ、お腹と心が饗の風で満たされていくようです。
私はこの凄風の衝撃を抑えきれず、思わず店員さんを呼んでしまいました。
「はい! お待たせしましたー!」
「……お水をいただけませんか、ピッチャーで」
でも辛いものは辛いのです。 - 12二次元好きの匿名さん22/12/08(木) 20:33:58
「ふぅ、変わらずに心地良い風です……」
食事の後、私は会計を終えて、銭湯を出ました。
まだ門限までは余裕があります、冬の風を感じながら、遠回りで帰ることにしましょう。
ふと、施設の出口に見覚えのある風を見つけます。
「あれは先ほどのレストランの……冬季限定?」
麻婆ラーメンしか見えていませんでしたが、あれは季節の風だったようです。
あれほどの陣風、それには惜しいと思いますが、仕方ありません。
桜は花嵐の桜になるからこそ美しい、そういうものなのでしょう。
「……虎落笛の収まる前に、もう一度伺いましょう」
次は大盛で、ご飯もつけて。 - 13二次元好きの匿名さん22/12/08(木) 20:34:19
お わ り
なんなんですかねこれ - 14二次元好きの匿名さん22/12/08(木) 20:34:45
いいSSメリねぇ
- 15二次元好きの匿名さん22/12/08(木) 20:45:22
軽風な筆致とちょっと特別な平日、という等身大の饗の風と調和されていて、実に穏風なSSでした。
普段食べるものにまで「風」「ふう」が入ってるのも、ささやかながら実に恵風ですね。
わたゼファーさんの作品を書く時に帆風にしたい作品でした。ありがとうございます - 16122/12/08(木) 22:09:24
このようなSSに立派な感想をありがとうございます
ホントなんかすいません…… - 17二次元好きの匿名さん22/12/08(木) 22:49:10
美味しそう……店に行ったら絶対麻婆ラーメン食べよ
- 18二次元好きの匿名さん22/12/09(金) 07:03:00
後半ラーメンの話しかしてなくて草
- 19二次元好きの匿名さん22/12/09(金) 08:20:35
ちゃんと全身拭ってから外気浴してるの、完全にわかってる奴の描写なんだよなぁ...
失礼だが筆者は本当にサウナエアプなのか? - 20二次元好きの匿名さん22/12/09(金) 08:57:18
サウナやって食事を楽しむとかハンチョウみたい
1日休日録ゼファー - 21122/12/09(金) 11:24:51