- 1二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:12:56
- 2二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:17:29
(マジなのかどうかわからん…取り敢えず様子見やな…)
- 3二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:19:01
マルゼンさんの私服センスがマジで母親世代の
それだからな…主の琴線にマジで引っかかってそうで… - 4二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:20:31
じゃあ、やるか…
- 5二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:21:23
優しかった頃のって所から果てしない闇を感じる
- 6>>121/10/31(日) 22:21:42
- 7二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:22:46
誰も幸せにならない気配を感じる…
- 8二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:23:39
ネタガチ比率逆じゃねぇのかよ……
- 9二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:24:21
そこまで辛いなら一旦マルゼンさん育てない方がいいと思うぞ…
キャラ自体は別に嫌いじゃないんだろうし性能的にも育てたい機会は多いけど辛いんだったらやめた方がいい… - 10二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:25:40
認知症とかで豹変しちゃったか、それとも別の理由かな…
- 11二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:25:53
とりあえず>>1に何があったんや……?
- 12二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:27:18
(こまった、何も言えない…)
- 13二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:27:22
「今の家族のことなんか」ってのに闇を感じるが…
本当にそうなら自分で書いちまってトラウマをなすりつけて解消するんじゃ。
あなたの人生はあなたしか生きられないように、それはきっとあなたしか書けない物語なんじゃ。
- 14二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:28:33
父親の方だったからなんとも言えないけど人の変貌ってキツいよな
病気か人格が変わったかわかんないけどどっちにしろ思い出の人と同一人物とは思えなくなる - 15二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:28:47
なるほどつまり1の母が再婚して新しく子どもをこさえて、1を蔑ろにするようになったと見た
- 16二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:33:19
ゲームで急に地雷踏む時ってあるよな
鬱屈した現実から離れるために遊んでるのに困っちゃうぜhaha - 17>>121/10/31(日) 22:33:49
- 18二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:34:56
キツいってそういうことか…
- 19二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:35:51
想像の斜め上をいくキツさだった……
- 20二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:36:03
母親と同じセンスの女って言われるとなかなかくるものがある
- 21二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:39:16
こいつマジか…マジかー……
- 22二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:39:53
一生懸命生きてきたんやね
良くがんばったね - 23二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:41:14
家を出て一人暮らしするまで生きろ。
大往生するまで生きろ。 - 24二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:43:21
どうせ付き合う時は周りの目なんか気にしないし、特定の色にこだわるみたいなことでもなければ服のセンスが古いとかは気にならないなー
- 25二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:45:15
何だかんだで人間一人でも生きて行けるからあまり思い詰めないようにね
- 26二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:46:41
俺の祖父母が親父のほうしかいなかった理由聞かされた時みたいなもんか…
- 27二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:46:41
- 28二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 22:47:08
二次元キャラで過去のトラウマ刺激されたばかりだから心にきた
- 29二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 23:13:52
- 30>>121/10/31(日) 23:31:02
- 31二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 23:40:29
このレスは削除されています
- 32二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 23:44:44
- 33二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:05:38
このレスは削除されています
- 34二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:08:15
このレスは削除されています
- 35二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:16:35
いや…結局のところ創作の原動力は全て私情。私情結構ではないか!
- 36二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:54:39
というか聞かれたのを答えてるんだからおかしなことじゃ無いだろ…
- 37二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 02:14:47
このレスは削除されています
- 38二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 02:35:06
- 39二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 02:38:34
母親が死んだ系より辛いよなこれ
- 40二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 02:47:46
気持ちはお察しするけど、それをマルゼンさんでわざわざ書く必要あるかな?不快に思うファンだっているんだぜ
- 41二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 02:56:56
マルゼンスキーさんだったからこそ1の心に響いてしまったスレが建てられたんだ
だったらそれに応えるのもまた人だろ - 42二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 03:08:10
1の母親とマルゼンさんの私服が似ているから、思い出してキツイ→お大事に
マルトレにトラウマを植え付けてマルゼンとコミュさせるSSを皆に推奨する→え? - 43二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 03:13:37
まあマル姉を見てそれ思い出すのは辛いね
と言いたいところだがそれでSSを書いてくれと言えるくらいには図太く生きてんなこいつと思う
そしてそんな過去を聞かされた後に書けるかと聞かれたら俺には無理だ - 44二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 03:18:19
とりあえず俺は二通り書くことにした
材料を渡してくれたなら俺は書く - 45二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 03:21:08
つまり>>1は自分の人生がネタ元のssを見て曇りたいのかな
- 46二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 03:23:37
- 47二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 03:24:23
そういう設定を広めただけで、推奨はしてないと思うけど…?
- 48二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 03:29:10
正直1の概念がクソ重すぎて二次創作に生かしづらい点はあるよ
でもこの概念ってそこらのR-18とかキャラ崩壊なんかよりはよっぽどキャラ性を見てるしそれゆえに苦しんでいるんだぞ
抱えこんでダメになる前に1が書いてくれって言ったのならそれはありがたく使わせてもらえばいいんだよ
上で自分語りとか推奨とか言ってるけどっこで吐き出すくらいならいしそれを使うのは自由勝手だろうが - 49>>121/11/01(月) 03:44:15
すまんな皆
別に俺としてはこの概念を広めてどうこうしたい訳じゃないんだ
ただ俺は救われたかっただけというか、皆が俺の人生を題材にして何かしらの創作を書いてくれるなら、俺はその事実だけで生きられるんだ
俺は別にマルゼンスキーの印象を下げたいんじゃなかったんじゃなく、彼女ならこの気持ち悪くて歪んだ苦しみさえ慰めて光の方向に連れて行ってくれるんじゃないかと思っただけなんだ
だけど、もしそういうのが本気でイヤって人間が多数を占めるなら、俺はスレを消すし二度とこの話はしない
だからまぁ、好きに書いてくれや
俺の概念を使っても使わなくてもいい、このスレの事なんて忘れてもいいから、とにかく筆だけは止めないでくれ
それでもしこの中で俺の事をネタにしてくれる聖人がいてくれたなら、俺はそれだけで幸せなんじゃ - 50二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 03:45:43
- 51>>121/11/01(月) 03:47:05
そして何故かSSが完成し申した
普段死ぬほど筆が遅いのにこういう時だけ速いの勘弁してほしい…
でも今日はもう遅いので明日貼るわ
おやすみ〜 - 52二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 06:51:12
俺も何か書いてみるわ…。
- 53二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 07:03:52
- 54二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 09:44:55
このレスは削除されています
- 55二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 13:33:27
オレは人の辛い過去が昇華され贖われる瞬間を見るのが好きなんだ…だから頼む
- 56二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 15:52:55
- 57>>121/11/01(月) 15:57:24
- 58>>121/11/01(月) 16:44:58
あ、俺は7時か8時頃にここに投稿しようと思うのでよろしくな
あと色々私情挟まりまくりなのでマジで元ネタとか無いのが出るかもだけど許してほしい
具体的に言うとラスト辺りな、真面目に考察とかせず文章そのまま受け取ってくれ - 59二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 16:45:52
何だと!褒める!
- 60二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 17:52:37
- 61>>121/11/01(月) 17:59:25
- 62二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 18:28:48
右腕切り落としたいの奴といい急に病んでる奴多すぎ!
- 63>>121/11/01(月) 19:26:06
貼りますよ〜〜〜
- 64>>121/11/01(月) 19:27:28
「…遅いな…」
独り言を呟きながら、腕時計を見る。
時計の長針は予定時間の30分ほど後ろを指し示している。
だが、俺の担当──マルゼンスキーの紅い愛車は、依然として姿を見せなかった。
……ここまで遅れると少し不安になってくる。
別に時間に遅れるのを心配している訳じゃない。今日は丸一日オフにしているし、俺自身予定を入れている訳でもない。新しい蹄鉄を見て解散。それくらいの軽い用事だ。
だが、彼女がそこまで時間にルーズでないのも俺は知っている。どちらかといえば、そういう約束事は出来るだけ守るタイプだ。
問題は彼女の運転だ。彼女の運転は、その、何というか……少し激しい。ともすれば危険な運転と見られてもおかしくないだろう。
それで警察に検挙されるのはまだいい。もし事故を起こしでもしたら……。自分との約束に間に合わせる為に、より荒い運転をしていたら……。
ブルッ、と身が震えた。
冗談じゃない。まだメイクデビューさえしてないんだぞ。
頼むから無事でいてくれよ、と胸の前で手を合わせた時──。
けたたましい重低音を響かせながら、紅い影が公園の前に止まった。
……ランボルギーニ・カウンタック。彼女が『タッちゃん』と呼ぶ、美しい真紅のスーパーカーだ。 - 65>>121/11/01(月) 19:28:22
「お待たせ、トレーナー君! ごめんなさいね。道が混んじゃってて……」
「ああ、いいよ別に。無事で着いてくれれば──」
……その瞬間、俺の思考が停止した。
白を基調にした花柄のワンピース。
腰まで伸びた、緩くウェーブのかかった長髪。
まるで包み込むかの様に浮かべた女神の様な微笑み。
初めて見るマルゼンスキーの私服は──。
俺の母親にそっくりだった。
ふら、と足から力が抜ける。
その勢いのまま、俺は先程まで腰掛けていたベンチに身体を預けた。
息が吸えない。腹と胸をドス黒い物が満たしたみたいに、空気を入れる隙間がなくなっていく。
あの頃の思い出が蘇る。まだ俺の家庭が回っていた頃。俺がまだ、家族に幸せを感じられていた頃の記憶。 - 66>>121/11/01(月) 19:29:20
「トレーナー君!? どうしたの!?」
……マルゼンスキーが近付いてくる。
俺の母親と同じ格好をした女が。
俺が世界で二番目に憎む女の格好が。
違う。違う。違う。
あれはマルゼンスキーだ。あの人じゃない。
重ねるな。あの子はそんな子じゃない。
「大丈夫、大丈夫だから……」
「でもっ!」
「いい、いいんだ。ちょっとふらついただけだから」
俺は必死で吐き気をこらえる。
違う違うと頭の中で繰り返しながら。
大丈夫。大丈夫だ。
気にするな。もう終わったんだ。
俺はあの人から離れた。もうあの人は俺の側に居ない。
俺は自由なんだ。
ゆっくりと呼吸を整えていく。
冷たくなった指先に少しずつ熱が戻ってくる。
船酔いをしていたかの様な視界に色が戻り、だんだんと思考がはっきりしてきた。
……落ち着いた、のだろうか。 - 67>>121/11/01(月) 19:30:16
「大丈夫?」
気が付くと、マルゼンスキーが横に座っていた。
心配そうな表情を浮かべて俺の顔を伺っている。
「……大丈夫、ただの目眩だよ。心配掛けてごめんな」
「いいえ全然! ちょっとびっくりしちゃったけど、何ともなくて良かったわ。……でも、本当に大丈夫? 今日は休んでもいいのよ?」
……本当に優しい子だ。
けれど、ここで心配を掛ける訳にはいかない。彼女が後輩達に対してそうであるように、俺も彼女にとって信頼できる大人でなくてはいけないのだ。
そうでなければ、俺は──。
「いや、大丈夫だ。行こうマルゼンスキー」
「……そう、ね。行きましょうか!」
俺は彼女の前を歩く。
そうだ。俺は彼女を導かなくてはいけないんだ。何があっても弱みを見せちゃいけない。頼れる大人でなければ、さもなくば。
あの人の様になってしまう。 - 68>>121/11/01(月) 19:31:39
「トレーナー君!」
はっと後ろを振り返る。
そこには、さっきより心配そうな眼差しを向けるマルゼンスキーがいた。
「……あ、いや、その。ちょっと疲れちゃったなー、なんて! まだ時間もあるし、もう少しここで休んでもいいかしら?」
「……ああ、いいよ」
そうして、俺達はまたさっきのベンチに座った。
公園には俺達の他に誰もいない。静寂に包まれて、木の葉が風に揺れる音が響くばかりだった。
「……ねぇ、トレーナー君。言いにくいなら言わなくていいんだけど……。何か、あったの?」
マルゼンスキーがおずおずと聞いてくる。
……言いにくいなら、か。そこまで悩んでる風に見せなかったつもりだったんだけどな。
だが聡い彼女の事だ、きっと俺の様子に何かを感じ取ったのだろう。
「……ああ、あったよ。古い話だけどな」
俺は何となく、自分の身の上話をする気になっていた。
彼女は俺が抱える悩みに気付き、寄り添おうとしてくれている。なら、これ以上隠しても意味はない。
何より、これ以上迷惑を掛ける訳にもいくまい。正体の分からない不安を放置するより、この程度の話だと茶化してやった方が安心するだろう。
分かっている。結局はただ自分が吐き出したいだけだ。こんな話をした所で、誰も幸せにはならない。
でも……何となく、何となくだが、彼女は違う気がした。彼女が纏う独特の雰囲気がそうさせるのだろうか。とにかく彼女を信じたくなった。それだけだ。
俺は自分を正当化する理由を言い聞かせながら、記憶の深海に身を委ねていった。 - 69>>121/11/01(月) 19:33:18
俺の家はそれなりに幸せな方だったんだと思う。
少なくとも、俺が物心ついた時はすごく幸せだった。
俺が最初に覚えてる思い出は、四歳か五歳の頃の物だ。
父親と母親と俺の三人で遊園地に行った頃の思い出。
だが正直、俺は遊園地の記憶をあまり覚えてない。どこの遊園地で、どんなアトラクションがあって、何を食べたのか。そういう記憶さえないんだ。
覚えてるのは……母親が俺を寝かしつけてくれた事。
大きな木の下で、木漏れ日が綺麗でさ。風が静かに吹いて気持ちよかった……。
母は歌が好きで、頭を撫でながらよく歌ってくれた。子守唄じゃなかったのは覚えてるんだが……今じゃフレーズも思い出せない。
派手なアトラクションの記憶は何一つないのに、不思議と母親の姿だけは覚えてる。花柄のワンピースに腰まで伸ばしたロングヘアー。
……そう、今君が着ているのと全く同じ服装だ。
マザコンみたいで嫌なんだけどな。 - 70>>121/11/01(月) 19:34:37
両親の話をするべきかな。
二人はお堅い職業でね。職場の繋がりでお見合いをした、昔ながらの結婚だった。
父も母もそれなりの立場の人で、そこそこ裕福ではあったらしい。立派な一軒家に車二つ、子供を私立の中高、大学に行かせる程度には金があったらしい。
そして、その二人の間に産まれた一人息子が俺、という訳さ。
まぁ、幸せだった頃の思い出は少ないな。
小学生の頃までは特に何も無かったと思うんだが……イマイチ定かじゃない。
小学生の時もケンカしてた様な気もするし、そうじゃなかった気もする。母親から色々愚痴を聞かされた様な記憶もあるから、何かはあったんだろうな。 - 71>>121/11/01(月) 19:35:42
で、どうにも歪みを隠し切れなくなってきたのが中学からだ。
その頃の俺はある疑念を抱き始めていた。
「もしかして、俺の家っておかしいんじゃないか?」
だって、俺が起きてくると母親の顔に痣が増えてるんだぜ。聞いてもないのに「父さんにやられた」って言ってくるしな。
父親は父親でいつもイライラしてるし、母親とどこかよそよそしい雰囲気を出してるし。
だけど、俺はまだ確信に至れなかった。
声のデカいクラスメイトが『父親と殴りあった』なんて武勇伝を誇らしげに語ったり、友達が親と罵り合いをしたなんて言ってるから、「ああそうなのか、ウチだけじゃないんだ」と納得してたんだ。
バカみたいだよな。年頃の男子中学生の言う事を鵜呑みにして、自分を正当化するなんて。
でもまぁ、それでもまだ決定的な亀裂にはならなかった。家庭が崩壊するまでに、何とか高校は卒業できたんだ。 - 72>>121/11/01(月) 19:36:51
だけど、大学に入ってウチの家族は変わった。
父親が定年退職して、ずっと家に居る様になった。
父は真面目な人だった。趣味も作らず、ギャンブルもせず。家族の為に何十年もただ働いてきた。……だが、そんな人間が職を失ったらどうなると思う?
燃え尽き症候群って奴に罹ったんだ。日がな一日、ただボーッと家の中で過ごす毎日。趣味も無ければ楽しみもない。
その内、父親は酒を飲む様になった。昼も夜も、安くて度数の高いレモンサワーの缶をな。自分の部屋に籠っては酒を飲み、腹が減ったら人目を避けて冷蔵庫を漁る。そんな生活を送る様になった。
ある日の事だ。
俺が部屋から出ると、自分の部屋の前で倒れてる父親が見えた。
俺はすぐさま近寄った。何日も風呂に入ってない様な臭いに咽せながら父親を起こしたよ。
父親は……赤ら顔で訳の分からない事を言って、床をナメクジみたいに這ってた。明らかに酩酊状態で、俺はどうすればいいか分からなくて……。
とにかくベッドまで運んだよ。動かそうとしたらうぞうぞと暴れる、様変わりした父親の姿は、見ていて死ぬほどキツかった。
それでも、一日二日と経つにつれて父親の症状はよくなっていった。
部屋で大人しくしてる様になったし、暴れる事も無くなった。
それでこの話は終わったと思っていたんだ。 - 73>>121/11/01(月) 19:38:15
三日後の夜、俺は夜遅くまで起きていた。
目を閉じると不安で胸がいっぱいになって目覚めてしまうんだ。それが怖くて眠れなかった。
だが、俺は明日も学校だ。どんなにキツくても眠らなきゃいけない。だから、もう一回目を閉じようとしたその時──。
部屋の外から、足音がした。
足音は俺の部屋を通り過ぎて、別の所に向かったらしい。
俺達家族の他には誰もいないし、母親はもう寝てる時間だ。
俺は嫌な予感がして、その足音を追って母親の寝室に向かった。
そこには、寝ている母親を殴る父親の姿があった。
「アバズレ」だの「淫売」だのと母を罵りながら。
倒れてる時にブツブツ呟いていたのは、母親への恨みだったんだ。 - 74>>121/11/01(月) 19:39:08
父はおかしくなっていた。
酒を飲み過ぎて、「母が浮気をしている」という幻覚を現実だと錯覚し、譫言を並べながら暴れていた。
もはやその目に正気は無かった。そこにあったのは、俺が『家族』と呼んでいた物に対する疑心暗鬼と半ばヤケに近い諦めだった。
その後、母親は父親と離婚した。
母は家が怖いと言って眠れなくなったみたいだし、俺も流石に同じ家では暮らせないから、どうにか借りたマンションの一室で俺達は暮らし始めた。
そこで初めて気付いたんだ。
母の口から溢れる言葉が、全て愚痴である事に。
俺の好きな物や好きな事を簡単に嘲笑う人間だった事に。
俺がどんなに良かれと思って意見を言っても、何も話を聞いてくれない事に。
それでもなお、俺の母親として俺より上に立とうとする事に。 - 75>>121/11/01(月) 19:40:10
父は、ハッキリ言ってあまり良い人ではなかった。
酒に溺れて家族を殴る様な男が『父親』として良い人間じゃない事くらい、誰にだってわかる。
だが、だからといって母がまともな人間だったかと言えばそうじゃなかった。むしろ、俺は母と二人で暮らす生活の方が地獄だったよ。
母はいつも父や仕事の愚痴を言った。「無駄に車を買うなんてありえない」「本当は父さん以外に好きな人が居たのに」「精神病なんて甘えてる」……。
そんな言葉を毎日、顔を合わせる度に延々と聞かされた。一番辛かったのは食事してる時だったな。全ての言葉が頭をすり抜けて、何を食べても砂の味しかしなくなったよ。
それが嫌だと母に言った事もある。だが、二言目にはいつもこう言うんだ。「あなたの為に働いてるのに」「どうして家族に向かってそんな事が言えるの」とな。
俺はもう何も言えなくなった。けど、逃げ場も無かった。毎日普通に暮らすだけで顔を突き合わせるんだ。その度に他人の陰口を聞き、精神を擦り減らす。頭がおかしくなりそうだった。 - 76>>121/11/01(月) 19:41:07
俺は、家族の醜聞を平気で垂れ流す母が、家族じゃない別の何かにしか思えなくなった。
子供に平然と呪詛を垂れ流し、無理やり押し込めて、あまつさえ自分のご機嫌取りに使う。
違うだろ。親っていうのは子供を守る物じゃないのか? 自分の為に何十歳も年下の、ましてや自分の子に依存するなんてどうかしてる。
しっかりしてくれよ。俺だって辛いのにどうして自分の事ばかり優先して、辛い事を他人に押し付けるんだ。父さんも母さんも親の役割を放棄しないでくれ。大人なんだから。年上なんだから。どうしてそれが──。 - 77>>121/11/01(月) 19:42:55
……悪い、熱くなった。そうじゃないな。
誰にだって苦しい時はある。俺の母にとってその発散方法がたまたま誰かに話す事で、その捌け口が俺しか無かっただっただけだ。
ただ、それは家を出て母が追い詰められたからじゃない。母はずっとそういうコミュニケーションを俺や父に押し付けてきたんだ。
大人だった父はそれにウンザリし、子供だった俺はそれに気付かなかっただけだった。
母は変わった。昔、遊園地に行った時の母は優しかった。優しくて、静かで、暖かくて。それが何もかも変わってしまった……。
……いや、違う。最初から母は変わってなどいなかった。あの人は最初から『そういう人間』で、それを大人の見栄で隠していただけだったんだ。
俺はただ信じたかっただけだったんだ。自分の親がそんな酷い人間であるはずがないと。俺の家族は歪んでなんかいないと。
……なのに、その幻想も全て崩れ去った。 - 78>>121/11/01(月) 19:43:39
……で、大学を卒業した後、俺は家を出た。
もう俺の家に母の姿はない。どこを探しても母は居ないし、縛られる事も無くなった。
……だけど、時々母の幻影が俺の前に出てくるんだ。俺を縛り、自分の世界に引きずり込もうとする、憎いあの人の幻影が。 - 79>>121/11/01(月) 19:45:01
「──まぁ、何というか……。珍しくもない、ただ一つの家庭があまり良くない形で終わっただけの話だ。君が気に病む必要はないんだよ」
……マルゼンスキーは、何も言わなかった。
いつしか時間は昼過ぎになっていて、小さな子供達が目の前ではしゃいでいた。
「これで俺の話は終わり。……湿っぽい話をしてすまなかったな」
「……ごめんなさい。深い事を聞いてしまって」
「いや、君が謝る事はないよ。俺が君に聞かせたいと思ったから喋ったんだ。気分を悪くさせたのはむしろこっちの方だよ」
それより、と俺は話を切る。
「そろそろ時間だな。早く行かないと蹄鉄の合わせに間に合わなくなる。急ごう」
だが、マルゼンスキーは黙ったまま動こうとしなかった。
……年下の子に何をしてるんだ、俺は。
情けない自分を叱って、俺はマルゼンスキーの前に跪いた。 - 80>>121/11/01(月) 19:46:35
「マルゼンスキー。聞いてくれないか」
「……トレーナー君……」
「確かに俺は苦しい人生を生きてきたかもしれない。けど、俺には君がいる。俺の苦しみを君が知ってくれた。それだけで俺は救われた気分になるんだ」
「………」
「でも、だからこそ上を向いてほしい。俺の話を聞いて悲しんでくれるのはとても嬉しい。でも、俺は悩みを振り払って走る君が好きだ。何もかも地平の彼方に置き去りにして、楽しそうに走る君が好きなんだ。だからマルゼンスキー、俺に構わず前を向いてくれ」
……恥ずかしい事を言っていると自分でも思う。
だが、これが本心なのだから仕方ない。自分から切り出した話とはいえ、自分の話で湿っぽくなるのは嫌なのだ。
まして、それが自分の担当するウマ娘ならなおさら。自分の事で担当のパフォーマンスを落とさせるトレーナーなど、トレーナー失格だ。 - 81>>121/11/01(月) 19:47:53
「……わかったわ。なら今日はかっ飛ばしましょう! トレーナー君、この後空いてるわよね? 蹄鉄をチェックした後は海へレッツらゴーよ!」
「い、いいけど……嘘だろ? 本気で行くのか?」
「当たり前田のクラッカー! チョベリバな雰囲気なんて、タッちゃんのスピードでぶっ飛ばしちゃいましょ!」
……ちょっとやりすぎたかもしれない。
まぁ、こうでなくては、という思いも無くはないが。
自分のせいで気分を害してしまったのだ、これくらいは返してあげなければ。 - 82>>121/11/01(月) 19:49:21
「さ、そうと決まれば乗った乗った!」
「はいはい、今行くよ」
普通に考えて、ただの公園にカウンタックが止まっていたら目立つと思うのだが……目を逸らされているのか、逆に視線は感じなかった。
ブロロロッ、とエンジンの掛かる音がする。
「……ねぇ、トレーナー君」
「なに?」
「音楽付けてもいい? 私が大好きな曲なんだけど」
「ああ、いいよ。ありがとう」
「いいわよお礼なんて。私が聴きたいだけ!」
また気を遣わせてしまった。年下の子にここまでさせるなんて、トレーナーどころか教育者失格だな。
しかし、あのマルゼンスキーが聴く曲か。俺が生まれた年から10年離れてなければいいのだが。
マルゼンスキーが再生ボタンを押す。どこかから音が流れ出してきた。
……なんだろう、このイントロ。どこかで聞いた気が──。 - 83二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 19:51:18
おい、マジかよ
- 84二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 19:52:02
うわうわうわ……うわぁ(絶望)
- 85>>121/11/01(月) 19:52:06
「今はこんなに悲しくて 涙も枯れ果てて
もう二度と笑顔には なれそうもないけど……」
この曲、は。
「私ね、いつもこの曲に励まされて『明日も頑張ろう』って気持ちになるの。トレーナー君も……トレーナー君?」
- 86>>121/11/01(月) 19:54:22
何でだろう、凄く昔に聴いた事がある。
懐かしい様な、美しい様な。
「そんな時代も あったねと
いつか話せる日が来るわ」
曲調のせいじゃない。
すごく優しくて、暖かい思い出があるんだ。
「あんな時代も あったねと
きっと笑って話せるわ」
ああ……。
思い出してきた、そうだ、この曲は──。
「だから今日はくよくよしないで
今日の風に 吹かれましょう」
あの日、母さんが歌ってくれた曲……。
子守唄の代わりに歌ってくれた曲だ……。 - 87>>121/11/01(月) 19:54:59
「回る 回るよ 時代は回る
喜び悲しみ 繰り返し」
……頬を撫でる感触にはっと上を向く。
風が柔らかく、頭を撫でていく。
まるで、我が子を愛でる様に。
「今日は別れた 恋人たちも
生まれ変わって めぐり逢うよ」
──ああ、そうだったんだ。
俺はただ、あの人に──。 - 88>>121/11/01(月) 19:56:01
「……トレーナー君」
「……母さん………母さん……!」
……気が付くと、俺は丸まる様にして泣いていた。
惨めだとは思わなかった。
こんな姿を見られて恥ずかしいとか、教え子に対して情けないとか、そんな感情は微塵も起きなかった。
ただ、涙を流す度に心が洗われていく様な感覚が、俺の胸に暖かい物を湧き立たせた。
マルゼンスキーはどんな顔をして俺を見ているだろう。幻滅しただろうか。大の大人が突然泣き始めたんだ。引いて当然だろう。
でも、俺は涙を止めようとは思わなかった。何故か彼女にだけは、この醜くて情けない姿を見せても良いように思えた。
「……頑張ったわね、トレーナー君」
その言葉に、ゆっくりと横を向く。
涙で滲んだ視界の向こうで、かつての母が優しく微笑んでくれている気がした。 - 89>>121/11/01(月) 19:56:48
終わり
見てくれてありがとね - 90二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 19:57:25
良かった…救いはあったんだ…
- 91二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 19:58:13
お疲れ様です
彼に救いがあらん事を - 92>>121/11/01(月) 20:00:32
これさ、狙ったとかじゃないんだけど
『時代』のリリース:1974年
マルゼンスキーの産まれた年:1975年
なんだよね
これってつまり…マルゼンスキーは俺の母になってくれたかもしれない女性…ってコト!? - 93二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 20:01:05
こっちまでしんどくなる力作だった
お疲れさまでした… - 94二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 20:24:19
- 95>>121/11/01(月) 20:28:37
- 96二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 20:30:50
マルゼンスキーマジでいい女だ
- 97二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 20:30:52
介錯しもす!
- 98図書委員21/11/01(月) 21:03:01
- 99>>121/11/01(月) 21:10:57
- 100図書委員21/11/01(月) 22:03:49
- 101>>121/11/01(月) 22:10:58
- 102二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 22:20:32
母へのトラウマがガリゴリ刺激される音がする
イッチには幸せになって欲しいと心から思う - 103図書委員21/11/01(月) 23:38:25
>>1よ……別スレで書いた者じゃ。
>>1よ、よくぞ書いた! よくぞ己と向き合った……正直涙ぐんだ。
「今日は別れた恋人たちも 生まれ変わって巡り合うよ」って、すごい優しい歌詞だよね……。
- 104図書委員21/11/01(月) 23:44:10
というかマルゼンエミュ上手いな! 当たり前田のクラッカーとか、小学校の頃は普通に言ってたのに…思いつかなかったわ…。
- 105>>121/11/01(月) 23:57:30【死語まとめ】使われなくなった流行語・日常語リスト【若者に通じない!懐かしい?】 | つなワタリ@プロ無謀家 | 炎ジョイ!高熱量で創造的に生きる死語(しご)とは、昔には「よく使われた」「かなり流行っていた」けれど、現在はまったく使われなくなってしまった言葉のことです。昭和や平成を中心に時代を彩った死語、廃語(はいご)などと呼ばれる言葉たちとその意味を紹介します。27watari.com
エミュの為にわざわざ調べました(半ギレ)
ストーリーも飛ばし飛ばしで見つつ、解釈違いを起こさない様に死ぬ気でチューニングしたわね
大体素直になったキングみたいな感じなので楽ではあったけど三人四人で回すとなると多分キツくなると思う
『時代』は現実の母がよく口ずさんでたのを覚えてたんだよな
良い曲だし自分自身励まされる事も多かったから何とか捻り込みたかった
結果的にちょっとワケワカンナイ展開になってしまって申し訳ないな…って感じ
色々直す点はあると思うけど書きたい事はある程度書けたので嬉しいね、ってのが完走した感想ですかね
- 106二次元好きの匿名さん21/11/02(火) 07:39:44
保守
- 107図書委員21/11/02(火) 17:52:47
色々想い出が詰まっとるんやな…色々悩むこともあるだろうけど、ここでは吐き出せて良かったんやないかな…。
- 108>>121/11/02(火) 18:06:09
- 109二次元好きの匿名さん21/11/02(火) 20:43:47
これは名言ですよぉ 『人生丸ごとネタ帳』
- 110二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 02:27:37
保守
- 111二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 02:36:25
良いこと言うぜ…。
- 112図書委員21/11/03(水) 12:51:27
- 113>>121/11/03(水) 16:04:39
いやいや、こちらこそ俺の人生を作品として世に出してくれた事が嬉しくてたまらないよ
こんな人生でもきちんと良い方向に昇華できるんだってことが証明できたのが何よりの報酬
苦しくても頑張らずにSSを書いて見せてくれよな、いつでも応援してるからさ
「マルゼンスキーの私服がキツい」/「@ウマ娘用」のシリーズ [pixiv]母親にトラウマを持つトレーナーが、マルゼンスキーに救われる話です。 詳しくは https://bbs.animanch.com/board/134237/ ↑このスレを見た方が分かりやすいかも。 ※スレ主が自分の作品を保存する為にしている投稿です。転載などではないので安心してくだ...www.pixiv.net続きとか詳しい設定は一応こっちに置いといたので、もし良ければ見てくれ
なんかこんな所で宣伝しちゃったみたいで申し訳ない、嫌だったら消すので言ってくれな
みんな、本当にありがとうね
このスレを立てた時は「キツいなぁ…」って感じだったけど、皆のレスのお陰で自信ついたわ
俺もまた新しいSSを書いてここに貼ってみるよ
次は「ルドトレ♀バッドエンドクリスマスイベ概念」行くか〜〜!!
- 114図書委員21/11/03(水) 19:09:47
- 115図書委員21/11/03(水) 21:39:36
またね。バイビー!(byマルおば)