トリックオアトリート！　トレーナーさん♪

1二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 23:02:42

「意外だね　フジは配る側だと思ってた」
「もちろんお昼は配ったよ　でも学生として　大人のトレーナーさんから貰ってもいいかなって」

そう言って両手を可愛らしく広げお菓子を要求するフジキセキ。そろそろ門限の時間になるのだが、そのためだけに部屋まで来たらしい。
だがフジに要求されるとは思わず、用意していなかった。

「それは困ったな〜不本意ながら"トリック"をしなくちゃいけないね？　いや〜困った困った！」

台詞と違い表情はいつにも増してご機嫌だ。どんなトリックをしようかと悪巧みするフジを見て、少しだけ対抗心が芽生える。

「──でもフジは仮装してないよね？」
「ふ〜ん……そうきたか」

ハロウィンなのに仮装せず、制服のままお菓子を要求するのはおかしいのではないか？　これは珍しく冴えた返しだと自分を褒めたい。

しかしながらフジはそんなに甘くない。心の中で勝利を確信したのも束の間、フジはこれでもかと体を密着させ、首に両腕を絡ませてきた。
そして耳元で囁かれた言葉、口元から覗かせた"牙"に、驚きの声をあげようとしたがもう遅い。

「お菓子の代わりに──いただくね？」

フジの牙が首筋へと当てられ、部屋には乱れる呼吸と血を吸う音だけが……──？

「ふふっ……なーんてね！」

触れたのは牙ではなく、柔らかな唇だけだった。
こうなると予想していたフジは、予め仮装用の牙を付け、イタズラできるよう万全の状態で来ていたのだ。

「ごちそうさまトレーナーさん　甘くてとっても──美味しかったよ？」

しばらく忘れることはないだろう。忘れようにも、鏡を見るたび首筋に残った赤い印が、この日の出来事を思い出させるのだから。