- 1二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 23:39:16
- 2二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 23:39:40
オペラオーは危機に瀕していた。
自身の恋人、ドトウとの関係について
今一度深く考える必要に迫られていた。
事の発端は先日の夜。
いつも通り夕飯を食べ終え、ふたりで他愛もない会話をして、
そろそろ眠ろうかと揃ってベッドに入った時
ふたりを纏う空気が、いつもとは少し違った。
「あの……オペラオーさん……」
恋人の、潤んだ瞳に
何かをねだるような、甘い声に
オペラオーは内心、酷く狼狽えた。
そしてその動揺を悟られないよう、努めて冷静に。
1人、即席のオペラを披露した。 - 3二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 23:40:00
それは会心の出来であった。
脳をフル回転させて紡いだストーリーは
即席にも関わらず随分と感動的な出来栄えになり
唯一の観客であったドトウは、ラストシーンでは涙を流して賞賛してくれた。
芝居を終えた時点で時刻は午前3時を過ぎており、
自身の才能に酔いしれながら、その後は特に会話もなく眠りについた。
そして何もなかったみたいに、いつも通りの朝を迎えた。
振り返ってわかった。
自身のあの行動は“逃げ”だった。 - 4二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 23:40:27
ふたりの関係は所謂恋人というものである。
当然、友人の頃とは変わる部分もある。
友人同士ではしないような事をする。
その為に友人という枠をこえて、ふたりは恋人になった。
わかっていた。
……わかっていた、つもりだった。
だが実際に、……おそらく昨夜は、恋人同士の戯れを行うべき日だった。そういう雰囲気だった。
そんな場面に直面した時に自身が取った行為は、「気づかないフリをして、有耶無耶にして逃げ出す」というものだった。
その事実に当人であるオペラオー自身も驚いていた。 - 5二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 23:40:50
これまで、深くは考えないようにしていた事だ。
オペラオーはドトウを好いている。
それは紛れもない事実である。そして同時に、オペラオーはドトウとの恋人らしい行為への欲求に欠けていた。
ただふたり一緒にいて、お互いの事を1番に想っていれば、それで満たされた。現状の関係に満足していた。
しかし、それ以上を求めた為、ドトウはオペラオーに告白をしたし、オペラオーもそれを受け入れはずなのだ。
恋人同士の行動をしないのであれば
それは恋人である意味がないといえるだろう。
嫌なのであれば、以前のまま、友人を続けていればよかった。今からでも遅くはない。関係を解消して、ドトウを解放してあげればいい。彼女ならばすぐに、別の素敵な人が見つかるだろう。 - 6二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 23:41:20
しかし、その選択が不可能なことである事も、よくわかっていた。
想像を巡らせてみる
自分以外の人間と仲睦まじくしているドトウを
自分よりも大事な人が出来たドトウを
自分以外の誰かを愛おしそうに見つめるドトウを
想像だけで、胸の部分に鉛みたいに重い、黒い感情が広がっていく。ドトウは愛情深い人だから、きっと一度できた恋人を、ずっとずっと大切にするだろう。
そうなると自分は、この不快なモノに
長く付き合わされることになる。
そんなのは願い下げだ。ありえない。
……けれど、あれも嫌、これも嫌というのは
いくら傍若無人な覇王といえど、許されることではないだろう。
恋人同士の行動はしたくない。けど、ドトウを失う事はもっと嫌だ。
……だとすると、選択肢は1つだ。
腹を、括ろう。 - 7二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 23:41:48
腹を括って、数日が経過した。
しかし、先日のような雰囲気は二度として来ることはなく。
これまで通り、ただただ平穏な日々が続く。
今度は自分から仕掛けようと覚悟を決めたのに、そもそもそういった空気にすらならないのであれば動きようがない。
オペラオーは焦っていた。
雰囲気を作ることは得意だ。すぐにでも恋人を
自分の世界に連れ出す事はできる。自信がある。
だけどそれは、今求めている物とは、少しズレる。
ドトウは、あれをいったいどうやって作り上げたんだろう?
時間が経ちすぎると、決心が揺らぎかねないし
なによりドトウ自身に「自分とはそういう事をするつもりがない」のだと判断されてしまいかねない。
そうなれば彼女は……他に目移りしてしまうかもしれない。
ドトウが自分の事を好きじゃなくなる、なんて事はありえないが
世界一魅力的な恋人が側に居ても
自身の欲求が満たされないのであれば
他で満たすように求める可能性はある。
身勝手だが、それも嫌だった。許せなかった。
彼女の恋人は自分なのだから。 - 8二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 23:42:59
「すみません、オペラオーさん……」
悶々とした日々の続く中、
ある夜、ドトウがおずおずと切り出した。
「……あのぉ……怒って、ますか?」
「…………………んん?」
全く覚えのない問い掛けに、オペラオーは混乱した。
「最近オペラオーさんの様子が変なので……多分、原因って、この前の……ですよね、私、私本当に申し訳なくて……っ謝りたくて……」
ドトウの目には涙が溜まっている。
「私、絶対絶対、もうオペラオーさんが嫌がる様なことしないって、約束しますので、だから、嫌いにならないでください」
「ちっ……違う!」
オペラオーにとって想定外のことだった。
自分がぐずぐずとしてる間に、それが態度にも透け、あろうことか恋人を不安にさせ、傷つけてしまっていた。
「すまない、ドトウ。不安にさせてしまったことを謝ろう。ただ、ちょっと考えごとをしてただけだ。」
「ほ……本当ですかぁ?怒って、ないんですか?」
「あぁ、怒る理由がないからね。」
「よかったぁ……」
ドトウはほっと胸をなでおろしたあと、
「……じゃあ、一体なにを悩んでいたんですかぁ?」
と、尋ねた。 - 9二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 23:44:07
「それは……」
思わず言い淀んだ。自分が、恋人と……する為のきっかけを探そうと、そわそわと落ち着きがなかったなんて、情けない事を彼女に言うのは、憚られた。
「私には……言えないことなんですね……」
ドトウが視線を落とし、震える声で呟いた。
──覚悟を、決めたはずだ。
自分の大切な人を傷つけて何が覇王なものか。
「……ドトウ!!」
オペラオーはドトウの名前を強く呼んだ。
突然の大声に、ドトウは驚き、オペラオーの顔を見る。
オペラオーはぐいと顔を近づけ、両手を彼女の頬に添えた
「……お、オペラオーさ……」
言葉発そうとする彼女の口に、自身の唇を押し当てた。
「………………!」
触れ合った時間はほんの一瞬。
パッと顔を離して恋人を見ると、普段から大きな目がより一層大きく見開かれ、こちらを見つめていた
「………………」
──やった!
ついに、やってやった!
脳内でファンファーレが鳴り響く。
頬や額や手の甲ではなく、唇同士の接吻。
友人同士ではやらないであろう、恋人同士の、戯れ。
数日間ずっと、機会をうかがっていた行為を、実行にうつせた。 - 10二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 23:44:39
ドトウは呆然とした様子で、自分の唇に手で触れた。
「……オペラオーさんと……キス……しちゃいました……」
噛み締めるようにドトウが言った。彼女の頬がみるみる赤く染まっていく。
……なんせボクらは恋人同士だからね!
言おうと口を開くが、言葉にならず、息が漏れた。
予想以上に柔らかい感触を、彼女の甘い匂いを、思い出す。頭が痺れて上手く回らない。
顔に血が上がり、カッと熱くなるのを感じた。
──まずい、だから嫌だったんだ。
こういう時の自分の感情を上手くコントロールできない。
恥ずかしさに、逃げ出したくなる。
お芝居だということにしてしまえば、今この場面に相応しい気取った台詞を幾らでも吐けるはずだ。そうしてしまいたい。
……だけど
「……ドトウと、したくて、悩んでいた。」
格好良さの欠片もない言葉だったが、今必要なのは、きっと、取り繕わない、直球な思いの言葉のはずだ。
自分の顔を見られたくなくて、思わず下を向いた。 - 11二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 23:45:31
「オペラオーさん……」
「オペラオーさんは……私のこと、好きですか?」
ドトウが尋ねた。
「……好きじゃない相手に……こんな事するとでも?」
「私のこと、好きですか?……言ってください」
ドトウはどうにも言わせたいらしい。
観念するほかないだろう。
「……好きだよ、ドトウのことが。……他の何よりもね」
バクバクと心臓が鳴り、うるさいくらいだった。
ふわりと、ドトウの腕がオペラオーを包み込んだ。
柔らかくて、甘い匂いが鼻腔をくすぐる。
「……嬉しいですっ、私もっ貴方の事が大好き……」
どうしようもない程の恥ずかしさと、愛おしさで胸が潰れそうだった。こたえる代わりに、自身も腕を回し、抱き締めた。
ふたりはそのまま、抱きあった姿勢のまましばらくの間じっとしていた。お互いの鼓動の音に心地よさを感じながら。
「……私、きっと、オペラオーさんが思ってるよりもずうっと、オペラオーさんの事が好きですよ。」
「うん……ボクだって……」
いつもよりずっと、口数の少ない恋人の髪を
ドトウは優しく撫でた。
普段の凛々しい姿も大好きだが、自分の前でしか見せない姿も、たまらなく愛おしいと感じた。 - 12二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 23:46:10
直接言えない言葉を、ドトウは胸の中で呟いた。
──よかった、本当によかった。
オペラオーさんは知らないんです。
私が貴方にどんな思いを抱いているか。
知ってますか?
恋人って、キスの先があるんです。ハグの続きがあるんです。
私は貴方のことを、……滅茶苦茶にしたい、と思ってる。
いろんな事をした時、どんな顔をするのかを見たい。
どんな声をあげるのかを聞きたい。
でも、
「私、オペラオーさんの事が大好きなので、精一杯大切にしますね」
きっと私はこれから先、ずっと貴方を離すことはないのだから。
焦る必要はない、とドトウは恋人の体を、より一層強く抱き締めた。今はまだ、この、友人から1歩だけ踏み出したような、独特な関係を楽しもうと、そう思った。 - 13二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 23:46:29
おわり
3人称視点に挑戦したのに結局1人称視点に逃げてて草
ドトオペはいいぞ。いいにおいだってする。 - 14二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 23:48:04
あま…うま…ありがとう…
- 15二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 23:49:40
>>14 ありがとう!!😘好き
- 16俺は今からアグネスデジタルにな21/10/31(日) 23:50:47
万雷の拍手を!!
貴方が純愛ドドオペのマエストロだったのですね…
ドドウ側がいじらしいの死ぬほど好きだぁ…
しゅき… - 17二次元好きの匿名さん21/10/31(日) 23:53:48
- 18二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:30:45
糖度計ぶっ壊れそうなぐらい甘いのたすかる
- 19二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:38:33
良い…最高…ありがとうございます
- 20二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:47:23
ゆっくり着実に進んでいく関係イイ……
段々キスに慣れていくところも見たいッ!! - 21二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 01:06:39
グアアアアッ(消滅)
いいものを見た…ありがとうありがとう - 22二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 01:14:24
ドトオペ解釈一致すぎて泣いてる
ありがてぇ……しゅき…… - 23二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 01:19:55
てぇてぇよ……
- 24二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 01:24:53
- 25二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 01:41:46
- 26二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 02:47:44
オペドト間のドロドロ感情しゅき…
- 27二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 09:45:12