【SS】よいこのどうわ・ファル子のだいぼうけん

  • 1二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:06:01

    あるはれた日のことです。みんなのウマドル、スマートファルコンがるんるんとみちをあるいていました。

    「今日のライブも楽しみだなあ」

    ファル子のあたまのなかはライブのことでいっぱいでした。

    そうしてトレセンがくえんのもんのまえまでやってくると、そこにはアグネスタキオンとアグネスデジタルがいました。ふたりはなにやらこまっているようです。

    「うーむ、どうしたものだろうねぇ」

    「やっぱり、第三者の意見を聞くしかないんじゃ……」

    ウマドルたるもの、かなしいかおのウマむすめをほうってはおけません。ファル子はふたりにどうしたの、ときいてみることにしました。

    「……た、たまには裏門から出かけるのもいいかも……」

    うらもんはとおまわりです。ファル子はどうしたの、ときいてみることにしました。

    「今日はほら、ライブの時間が……」

    ライブがちょっとおくれても、ふたりのえがおのほうがずっとたいせつです。ファル子はどうしたの、ときいてみることにしました。

    「……」

    どうしたの、ときいてみることにしました。

    「……二人とも、どうしたの」

  • 2二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:06:57

    「おやおやこれはいい所に来てくれた! 実はだねぇ、我々二人の間でどうしても意見が合わないことがあるのさ」

    「それでですね、客観的かつ公平にどっちがいいか判断してくれる人がいないか、と話していたものでして」

    ふたりにはなにかかんがえのちがいがあって、それでこまっていたようです。ファル子はもうすこしきいてみることにしました。

    「意見の違いって?」

    「いいですかファル子さん、キングヘイローさんと担当トレーナーの関係性を考えると、彼女の掲げる『一流』の意を真に汲み取って支えてくれるトレーナーの存在は一歩間違えれば深い依存に陥りかねないくらいの間柄だと思うわけですよ。よってデジたんは『トレ×キン』こそ王道だと主張します」

    「しかしだねデジタル君。『おばか』『へっぽこ』と軽口をたたき、時には良家のお嬢様として一流の振る舞いをトレーナーに教える彼女というのは、むしろ新人の気負いがぬぐえないトレーナーをリードしているようにも見えるじゃないか。私はここに『キン×トレ』の可能性を感じるのだよ」

    これはたいへんです。カップリングろんそうというのは、こたえがでないのにたがいにゆずらないものです。『うまうま』だけでなく『とれうま』でも、いろんな『はばつ』がそれぞれあって、しゅうきょうじみたあらそいをあちこちでくりひろげているのです。

    このままいいあらそいがつづけば、ダートはやけ、しばはあれ、トレセンがくえんはめちゃくちゃになってしまうでしょう。

    「……本当になる?」

    がくえんのいちだいじにファル子は、それならレースでけっちゃくをつけよう、とていあんしました。

    「いやいやいや、おかしいでしょ」

  • 3二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:07:31

    ブタのヒヅメかな?

  • 4二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:07:36

    しょせんこのよは『じゃくにくきょうしょく』、つよいいけんが生き、よわいいけんがしぬのです。

    「えぇ……」

    ファル子は、レースでけっちゃくをつけよう、とていあんしました。

    「……あのね? 絶対納得してはもらえないだろうけど、例えばレースで決める、っていいうのは……」

    「なるほど、その手がありましたね! さすがはファル子さん!」

    「我々もウマ娘だ、互いの意見の正しさは自分の走りで証明しようじゃないか!」

    ふたりはファル子のていあんに、すぐになっとくしました。

    「なんで?」

    そうときまれば『そくだんそっけつ』、さっそくファル子はレースをひらいてもらうよう、せいとかいにおねがいにいくことにしました。

    「ねえなんで?」

  • 5二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:08:13

    トレセンがくえんのコースはがくえんのものです。かってにつかうことはできないので、せいとかいに『いいよ』といってもらわなければなりません。

    「なんか正論っぽいけど……それファル子が行く必要ある? この二人が行けばいいんじゃ」

    ウマドルたるもの、こまっているウマむすめをむしするなんて『ごんごどうだん』です。ファル子はせいとかいにおねがいにいくことにしました。

    「……」

    せいとかいにおねがいにいくことにしました。

    「……じゃあファル子、生徒会にコースの使用許可をもらってくるね……」

    「それは助かる! ぜひ行って説得してきてくれたまえ」

    「あたしからもお願いします! この論争の決着には、トレセン学園の未来がかかってるんですから!」

    「ほんとにそうかなぁ」

  • 6二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:08:51

    そうしてファル子がせいとかいへとずんずんすすんでいくと、むこうからミホノブルボンがあるいてきました。

    「こんにちは、ファルコンさん。ずいぶんと重い足取りですが、どうかしましたか?」

    「うーん……」

    ひとりよりふたり、『さんにんもんじゅ』です。ファル子はこれまでのことを、ミホノブルボンにはなしてみました。

    「えーと、今から生徒会に行って、コースの使用許可をもらうんだけどね? 『トレ×キン』と『キン×トレ』のどっちがいいか決めるレースだ、とかで……」

    「……そんな、ありえません」

    ミホノブルボンはしばらくうつむいて、かんがえこんでいるようでした。

    「だよね、ありえないよね」

  • 7二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:09:37

    「現状のデータから考えて。キングヘイローさんの同室であるハルウララさんが、最も近い距離にあることは明らかです。寝坊したハルウララさんを起こしたり、髪をとかしてあげたり、逆にハルウララさんの無邪気さに元気をもらったりするキングヘイローさん……『キン×ウラ』が考慮に入っていないのは、全く理解できません」

    「えぇ……」

    たしかにそうです。まえにもいったとおり、よのなかには『うまうま』こそしこう、とかんがえるひとたちがいます。そんなひとたちをむししてレースをひらくなんて、ファル子のかんがえがたりませんでした。

    「え、これファル子が悪いの?」

    「決めました。そのレース、私も出走します。レースで勝って、私は『キン×ウラ』が唯一の正解だと証明してみせます」

    「あ、うん……頑張って……?」

  • 8二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:10:24

    ミホノブルボンとわかれたファル子は、のこりのみちをどんどんあるいていきます。するとこんどは、サイレンススズカとであいました。

    「ファルコン先輩。どうしたんですか、世界が終わったみたいな顔をして」

    『さんにんもん――』

    「わかったってば!……『トレ×キン』と『キン×トレ』と『キン×ウラ』のどれが正しいか、レースで決めるってことになったの」

    「うそでしょ……」

    サイレンススズカはこまったようにつぶやきました。

    「いやこの話の流れって……」

  • 9二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:11:07

    「先輩、私前から思ってたんです。他のカップリングに比べて黄金世代はグループでまとめられることが多いけれど、もっと個々の関係性に焦点を当てるべきだって。例えばキングヘイローさんを普段はからかいつつも、肝心なところでは逆に押されて受けに回るセイウンスカイさんの『セイ×キン』とか」

    「ほら来た」

    『うまうま』にもたくさんの『はばつ』があります。みちをあるけばほかの『うまうま』にであうのは『とうぜんしごく』のけっかです。

    「ね? こういうのでしょ?」

    「私もそのレース、出走します。誰も見たことのない景色を目指して、必ず先頭に立ちます」

    「すごく決まってるみたいな感じだけど、これってカップリングの話なんだよね」

  • 10二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:11:42

    サイレンススズカともわかれたファル子は、とうとうせいとかいしつにたどりつきました。

    こんこん、ととびらをノックして、へやのなかに入ると、せいとかいのさんにんがそろってこちらをみています。

    「……スマートファルコンか。今日は何の用かな?」

    シンボリルドルフがいげんたっぷりにいいました。

    「えーと、その……」

    エアグルーヴとナリタブライアンも、とつぜんやってきたファル子のはなしがきになるようです。

    「どうした。話したいことがあるから来たんだろう」

    「どんな話でも、聞くだけは聞いてやる。生徒会は多忙だ、期待に沿えるかはわからんが」

    ファル子はさんにんに、がくえんのききをいそいでつたえました。

    「え、この空気で言うの? アレを?」

  • 11二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:12:27

    ファル子はがくえんのききをいそいでつたえました。

    「あ、これ言わないと進まないやつだ」

    がくえんのききを――

    「あのですね! デジタルちゃんとタキオンちゃんと、それからブルボンちゃんとスズカちゃんが、『トレ×キン』と『キン×トレ』と『キン×ウラ』と『セイ×キン』のどれが一番かをレースで決めるので、コースを使わせてください!……言ったよ!」

    「……は?」

    シンボリルドルフとせいとかいふたりは、めをファル子のまあるいかおとおなじくらいにまんまるにしました。

    「今の形容、必要だった?」

  • 12二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:13:18

    「何ということだ……いずれ来るとは思っていたが、想定よりはるかに早かった。油断大敵、といったところか」

    「しかし、レースの機会が早々に決まったことは不幸中の幸いでした。禍根は最小限となるはずです」

    「今日の授業後の練習は即刻中止の通達を出そう。出走規模がわからん、最悪の事態に備えて全コースを開放する」

    せいとかいのさんにんはこれからどうするか、『けんけんがくがく』とはなしあいをはじめました。

    「え、そこまで?」

    そうなのです。カップリングろんそうは、いちどひがつけばただではすまないばくだんのようなものです。さんにんもいったいどうしたらいいか、とてもこまっていました。

    そこに『えいしさっそう』とあらわれたファル子のていあんは、ちょうどさんにんのなやみをまるごとかいけつできるものでした。

    「スマートファルコン。君はよくやってくれた。後は我々に任せて、来たるレースに集中してもらいたい」

    「……はい?」

  • 13二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:14:06

    ファル子がアグネスタキオンとアグネスデジタルのところにかえって、せいとかいのいったことをつたえると、ふたりはとてもよろこびました。

    「素晴らしい! 『キン×トレ』『トレ×キン』だけでなく、他のカップリングも含めたあらゆる論争に終止符を打つ戦いとは、実に面白いじゃないか!」

    「はい、最の高を決めるにまさしくふさわしい舞台です! ファル子さん、お互い頑張りましょう!」

    「……はい?」

    ファル子もさっそくレースのじゅんびをはじめました。

    「まってまって、何でファル子が」

    じゅんびをはじめました。

    「ねえちょっと」

    はじめました。

    「……はい」

  • 14二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:14:56

    そうしていよいよ、トレセンがくえんのみんながちゅうもくするレースがはじまりました。

    レースにでるのはなんと100にん。それぞれがべつのカップリングをおしているせんしゅたちです。

    「『スぺ×キン』こそ最高のカップリングです!」「いえ、『キン×カワ』が絶対王者ですわー!」「へっぽこトレーナーから離れたキングがベテラントレーナーの元でGIを勝って脳破壊される概念」「私が一体なにをしたっていうのよー!」

    「……多くない?」

    ひとのこのみは『じゅうにんといろ』ですが、レースのしゅつじょうしゃはじぶんのカップリングがせいぎとしんじてひとりもゆずらないのでした。

    100にんがゲートにぎゅうぎゅうとおさまります。もうみうごきがとれません。

    「ちょっ……狭い狭い、無理無理無理!」

    がこん、とゲートがひらくと、いきおいにおされてみんながとびだしました。

    「あ、なんか前に出れた」

  • 15二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:15:52

    スタートはなんとかできましたが、くじびきできめられたコースはダートでした。

    100にんのうち80にんはダートに『てきせい』がなく、さいしょの100メートルですっかりつかれきってしまいました。

    「『キン×デジ』に光を……」「『グラ×キン』の夢があと少しで……」

    けれどファル子はダートの『てきせい』がとてもたかいので、すいすいとはしれます。

    「別にファル子はいい勝負しなくていいんだけど……」

    おまけにコースは1400メートルです。

    20にんのうち10にんはさいごまでスピードをあげきれず、ついていけなくなりました。

    「『エル×キン』の意地、みせたかった……」「『ドト×キン』にはまだ可能性があるのにぃ……」

    いっぽうでファル子はたんきょりもにがてではありません。まわりをおいてどんどんにげていきます。

    「え、ファイル子が先頭? なんで?」

  • 16二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:16:42

    はやい、はやい! みんなのウマドル、ファル子がいっちゃくでゴールです!

    「え? どうするの、これ?」

    シンボリルドルフがファル子に、ゆうしょうトロフィーをわたしていいました。

    「おめでとう。流石はスマートファルコン、砂の女王の面目躍如といったところだな」

    「はい、ありがとうございます……?」

    「それで、君はどうする? キングヘイローに真にふさわしいカップリングは誰だと?」

    ファル子はしばらくかんがえてからいいました。

    「……別にどうでもいいんじゃないですか?」

  • 17二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:17:26

    しん、とあたりがしずまりかえったあと、『かんてんきち』のこえがどっとわきあがりました。

    そうです! みんなちがってみんないい、おたがいのいけんを『いいよ』とみとめられるせかいがほんとうなのです。

    「えぇ……」

    「いやすまなかったデジタル君、確かに一流のトレーナーとキングヘイローの関係は『トレ×キン』と呼んで差し支えないだろう」

    「いえいえこちらこそ、彼女の成熟した部分に目を向ければ『キン×トレ』も成り立つことがよくわかりました、タキオンさん!」

    アグネスタキオンとアグネスデジタルのこまりごともすっかりかいけつです。

    そのばにいるみんなが、あちこちであいてのカップリングをほめあいはじめました。

    「ねえ……いきなり『キングの出番だ』って呼ばれたと思ったらなんの罰ゲームなの、これ?」

    「もうファル子にもわかんない」

  • 18二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:17:51

    こうしてトレセンがくえんのいちだいじは、みんなのウマドル、ファル子のだいかつやくで『えんまんかいけつ』。

    それぞれのきもちが、ファル子のまんまるなかおのように、まあるくおさまったのでした。

    「いやだから、その形容いる?」

    おしまい。

  • 19二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:20:11

    このレスは削除されています

  • 20二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:20:54
  • 21二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:25:10

    >>15

    はいここ誤字ー!

    >「え、ファイル子が先頭? なんで?」

    「え、ファル子が先頭? なんで?」

    脳内補正をお願いします。

  • 22二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:29:44

    ふぁるこは かわいいなぁ(思考放棄)

  • 23二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:35:10

    >「へっぽこトレーナーから離れたキングがベテラントレーナーの元でGIを勝って脳破壊される概念」

    それは単なる史実だからちゃんと続きの一流トレーナーになる所までやれ

  • 24二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 00:39:53

    あたまおかしなるで

  • 25二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 01:46:28

    カップリングは1番とか決めずに一つ一つがオンリーワンが良いよね☆

  • 26二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 01:53:06

    勝手に戦争の火種にされるキング可哀想

  • 27二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 08:21:13

    子供向け絵本みたいな大味のストーリーラインのくせして
    扱う話題は妙に解像度を上げてきて
    オチだけ子供向けにありそうな感じに戻してくるとか
    一体読者に何を見せたいんだ…脳がおかしくなる

  • 28二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 08:21:38

    おうえんありがとー☆

  • 29二次元好きの匿名さん21/11/01(月) 12:25:50

    ここにも丸顔ファルコに心を奪われた被害者が一人……

オススメ

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