【SS 解釈違い注意】グラスが仮病する話

  • 11◆yFWSUG6rM8t922/12/13(火) 02:51:57

    【注意】

    仮病...ですか|あにまん掲示板確かに体調を偽るのは良くないことですが...ふらっと倒れそうになった時にトレーナーさんに抱き止められるのが癖になってしまいまして...みたいなグラスちゃんを見たいのですがどこに置いてますか?bbs.animanch.com

    これは上記のスレ『仮病...ですか』の概念を(勝手に)参考にさせていただいたSSです。


    この話はタイトルの通り、グラスワンダーがちょっと仮病をします。

    そんな、ちょっとズルい彼女もありうる、という解釈にご理解いただける方は、このままお読みいただければと思います。

  • 2二次元好きの匿名さん22/12/13(火) 02:53:21

    このレスは削除されています

  • 31◆yFWSUG6rM8t922/12/13(火) 02:56:15

     きっかけは、スタミナをつけるためのタイヤ引きを終えた直後に、少しふらついた時でした。
    「っ、グラス!」

     貧血で眩んだ拍子に後ろに倒れそうになった私を、すぐそばにいたトレーナーさんが受け止めてくださったのです。

    「大丈夫?怪我はない?」
     トレーナーさんの心配そうな質問に答えながら、しかし頭では、他のことを考えていました。
     肩に触れる手、背で感じる胸板。普段見ない、見上げるようなアングルでの、真剣な表情。
    ……おそらく数分もない出来事でしたが、心に残すには十分すぎました。

     その日はすぐ練習を切り上げて、保健室で様子を見て。軽い疲労と貧血という診断と、寮でゆっくり休むようにとの指示をいただきました。

     ですが……先程の情景を、触感を思い出して、何より、閃いてしまった『アイデア』のせいで、寝付けませんでした。

     もう一度。貧血のフリをすれば。そうすれば、今日みたいに。
     トレーナーさんの善意につけこんで、騙すことになる。気は引けましたが、得られるリターンの大きさに、目がくらんだのです。

     数週に一度なら、わからないはず。だから。
    毎回の『これで最後』という決意は、『バレてないから』という甘言に負けていきました。

     決行するのは休みの前日。最後の追い込みを終えて、疲れがピークだと思われるとき。
     そして、もし「これ」をしなくても、練習を終えるというタイミングで。
     トレーナーさんの近くにいる時に、少しだけ、足の力が『抜ける』。それを、受け止めてもらう。それだけ。
     それは数週に一度の、密やかで、後ろ暗い楽しみでした。

  • 41◆yFWSUG6rM8t922/12/13(火) 02:59:01

    しかし、この密かな楽しみは、あっさりと終わりを告げました。
    それも、受け止めてくれたトレーナーさんによって。

    「もう、やめないか。『軽い貧血』は」

    「ご存知、だったのですか?」

    「怪しいと思ったのは、3回目くらいからかな」
    そんな、前から。

     曰く、脚の崩し方が、本当に無意識なものと、その演技とでは、少し違うそうです。……教えると改善してしまうだろうからと、どう違うかは教えてくださいませんでした。

     その後のミーティングのトレーナーさんの声は、本当に珍しく、怒気をはらんだものでした。

    「グラス。今までのことについて……少し、怒るね。2つ、言わせてもらう」

    「まず。もしこっちが間に合わなかったり、上手く受け止められなくて、怪我でもしたら、どうしてたんだ」

    「そしてもうひとつ、トレーナーにとって、君の健康を把握するのも仕事のひとつ。君が仮病したことは、君本人がその邪魔をした、ということだ……心配、したんだよ」

    「…ごめんなさい」
    顔は、あげられませんでした。視界が涙で滲んでいます。……トレーナーさんの怒りも、指摘も尤もで、反論の余地はありません。

  • 51◆yFWSUG6rM8t922/12/13(火) 03:00:19

    「ただ…そうだな、練習そのものに影響はなかったし、体調も大丈夫そうだ。……何より、反省もしてくれてるみたいだから、これ以上はやめておこう」
    …そんな。甘すぎます。何度も仮病をした悪いウマ娘には、あまりにも。

    思わず顔をあげると、いつもの穏やかな表情がそこにあって。反論は、言葉にできませんでした。

    「ただ、ひとつだけ教えて。それで終わりにしよう」
    私がこくりとうなずくと。
    トレーナーさんは…

    「なんで……こんなことをしたのかなって」
    …この日最大の罰を、私に下しました。

    「いや、サボるためじゃないだろうし。生徒たちの間で流行ってる遊びやドラマのシーン、とかでもなさそうだしさ」
    …そんな。ひどすぎます。

    「それだけがわからなくてさ。もう怒らないから、正直に教えてくれないか」
    よりにもよって、動機を。口にしろと。

    私にとっててきめんの罰に、思わず気を失いそうになりました。

    ……仮病とかではなく、本当に。

    〜了〜

  • 61◆yFWSUG6rM8t922/12/13(火) 03:07:48

    以上です。お読みいただきありがとうございます。

    グラスはそんなことしねぇ〜、とも思ってたのですが、スレを見てズルいグラスもありかも、と鞍替えした次第です。素敵な概念をありがとうございました。

  • 7二次元好きの匿名さん22/12/13(火) 03:43:24

    投稿お疲れ様です。
    需要なんて少ないし、ウマ娘も年の割には成熟した子も多いけど、やっぱりあの歳ならそれぐらい、悪い意味で子供っぽいこともやりそうだからね…

  • 8二次元好きの匿名さん22/12/13(火) 04:44:31

    確かにグラスワンダーに「仮病」を使わせるのは悩ましそう。俺も考えてみようかな。

    ともあれ、このオチは実に素晴らしい。
    逃げ道がなくなって追い込まれたグラスワンダーの不退転に期待したいところですね。

  • 9二次元好きの匿名さん22/12/13(火) 05:28:02

    投稿お疲れ様です
    そういう展開になる……のではなく、きついお返しをされる終わり方はちょっと想定外でしたが面白かったです

  • 10二次元好きの匿名さん22/12/13(火) 06:55:38

    面白かったです

  • 111◆yFWSUG6rM8t922/12/13(火) 12:14:35

    感想ありがとうございます。

    ところで、トレーナーにバレず、退廃的な遊びにハマッちゃうグラスルート(全年齢版)もあるらしいのですが、どなたかご存知ではないでしょうか

  • 12二次元好きの匿名さん22/12/13(火) 12:25:34

    そこになければないですね

  • 13二次元好きの匿名さん22/12/13(火) 12:49:45

    これはこれで"アリ"だ

    すごく……すごい良かったです!

    >>11

    おそらくエスカレーションして貧血風だけでなく、他の仮病にも手出しそうな気がしますね

  • 141◆yFWSUG6rM8t922/12/13(火) 17:35:25

    >>11がちょっと置いてないそうなので、書きました。

    以下、上記>3から分岐するルートです。

    …そこで終わればifとして。

    もしくは、>4に繋げて補遺とすることもできます。


    3→15で終わっても

    3→15→4→5でも、ってことですね。

    もちろん、昨日のままの3→4→5でも。

    お好みでどうぞ。

  • 151◆yFWSUG6rM8t922/12/13(火) 17:36:22

     気付けば、二度、三度。…何度も。
     なるべくレースに影響が出ないように繰り返すうち、私には「本番は万全に仕上げる分、その直後に少し調子を崩す」という傾向があるらしい、ということになりました。

     トレーナーさんは、私の調子をどうすれば保てるか、悩まれることが増えました。その姿を見ると、罪悪感が胸の内でうずまきます。
     でも同時に、一心に私のことを考えてくれている、その事実に喜びを覚える私もいました。…このどろりとしたものが、独占欲というものでしょうか。

     色々な『症状』がありました。
    あるときは、僅かな違和感のような、体温計に出ないほどの熱っぽさ。
    ──熱を計ろうと額に触れた手は温かくて。本当に火照ってしまいました。

    あるときは、寝不足による偏頭痛。
    ──休憩の時にお借りした膝枕は、今でも夢に見るほどの心地でした。お腹側に顔を向けようとすると、流石に止められましたが。

    あるときは、下腹の鈍い痛み。
    ──『温めると楽になるので』と……手を。
    …これは流石に最初の一回だけで、次の日からはトレーナー室にカイロを常備するようになりました。

     …それでもやはり、最初のようなトレーニング終わり際のふらつきが、一番多い『症状』でした。

     今度こそ、怪我をするかも。脱力の刹那に胸をよぎる不安を払うように、いつも受け止めてくれる手と体に安心して。
     意識が遠のくふりをして身を委ねれば、抱きかかえられるような体勢で、あの人を感じて。
     何度も自分の名前を呼ぶ声が、鼓膜を揺らします。
     目を覚ますように薄く目を開ければ、自分をまっすぐ見つめる目がそこにあって。安堵の笑顔を噛み殺しながら、思うのです。

     …あぁ。本当に。
    よくない楽しみを、覚えてしまいました。

  • 16二次元好きの匿名さん22/12/13(火) 17:48:56

    >>15

    あー、すごく、すごい好きです!

  • 17二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 01:38:39

    いじらしくて良いぞ…

  • 18二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 01:54:20

    ふむ、ではトレーナーに甘えてもいいんだよ?って言われて
    では体調不良なら堂々と休めますね
    って強かに甘えるグラスの甘々SSもお願いします

  • 191◆yFWSUG6rM8t922/12/14(水) 10:17:22

    感想ありがとうございます。

    わるいトップロードさんがいますね。


    >>18

    お取り寄せにはもうちょっと情報がほしいですね……他に思い出せる情報はないでしょうか。台詞のひとつでもあればわかるかもしれません。

  • 201◆yFWSUG6rM8t922/12/14(水) 18:02:33

     甘えたい時は、理由なんてなくても甘えていい。そう伝えたが……結論から言うと、グラスの仮病は続いていた。といっても、明らかに『それ』だとわかる形で。
     変わったのは、具体的な『症状』がなくなって、『療法』だけを教えてくれるようになったことと、少し増えたその頻度。
     休憩の時にしばしば「体調がよくないので…」と切り出すようになった。

    「…頭を、その……」
    ──そんなことでよければいつでも。ほら。

    「…その、おひざを、貸していただけますか」
    ──15分経ったら起こすね。おいで。

    「…また、あの時みたいに、おなかに」
    ──ごめん。それはだめ。
    今度は服の上からでいいから?それなら…いや、やっぱりだめ。

     こうして、「体調がよくない」という、これまでの彼女のそれと比べれば曖昧な『症状』を訴えることが、いつしか二人にとって秘密のサインになっていた。

  • 211◆yFWSUG6rM8t922/12/14(水) 18:03:48

    >>20

     年末のG1に挑み、最高の勝負を見せてくれた、その翌日。トレーニングは休みにしたのだが。


    「今日はですね、体調がとってもよくないんです」

     グラスはトレーナー室の戸を締めると、そう訴えた。『とっても』とは、初めての表現だ。


    「ですから…すぐにでも、ふらりと倒れてしまうかもしれませんね?」

     悪戯っぽい言い方に、彼女の意図を察する。

    後ろに立ち、背に腕を添える。万にひとつもないように。


    ──いいよ。

     合図とともに、彼女はそのままゆっくりと、こちらに身体を預けた。

    …思えばこの『症状』は、仮病を指摘して以来久々だ。


    「…どうか、よくなるまで、このままで」

     華奢な肩を少し抱き寄せ返事にする。

     肩に置いた手をさらりと撫でたのは、艷やかな栗毛の髪。

     預けられた背中からは、自分のそれより少し高い体温が伝わってくる。

     尻尾が二度、三度と揺れると…やがて器用に、こちらの脚に巻き付いた。

     穏やかに目を閉じた安堵の表情を見下ろしながら、思う。


    ──これは、本当に。

    よくない楽しみを、教えてしまったかもしれない。

  • 221◆yFWSUG6rM8t922/12/14(水) 18:10:13

    今回は以上です。読んでいただきありがとうございます。堂々と、強かに甘えるグラスです。


    >>18さん、ちょっと思われてるのとは違うかもしれませんが、ご査収くださいませ。

  • 23二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 18:12:36

    私は18ではないが、グラスなら仮病もこういうやり方しそうってイメージしてた。
    普段甘えをあまり見せられないグラスだからこそ、不器用な甘え方になるって感じがすごくいい。

  • 24二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 18:43:51

    尊みで心の中のデジタルが爆発してる
    3ルートも見れるとか最高じゃないですかぁ…

  • 25二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 18:46:52

    >>22

    18です

    これは心ばかりのお礼で…

    つ にんじんハンバーグ定食の食券

  • 26二次元好きの匿名さん22/12/15(木) 01:10:10

    トレーナーにハグしてもらってるけど
    (ヒトの耳だったら位置的にトレーナーさんの鼓動を聴けるのにな)
    と身長差にちょっと残念がってるグラス

  • 27二次元好きの匿名さん22/12/15(木) 02:35:56

    すき…
    鼓動聞こうとして耳を絞る演技忘れてたりするとなお良い

  • 281◆yFWSUG6rM8t922/12/15(木) 07:41:55

     この人の鼓動を聞きながら、こうしていられたら、どんなにか安らげるでしょう。
     トレーナーさんに抱きかかえられた時によぎった想いは、思ったより難題でした。

     私達ウマ娘の耳は、頭の上の方についています。走りながらでも耳だけ自由に動かすことだってできます。
    ……しかし、高さの調整だけは、どうにもしがたく。

     私とトレーナーさんの身長差だと、こちらが背中からもたれるようにしたとき、耳は向こうの顔あたり。
     心臓の音を聞くために耳を胸に当てる、となるとどうしても無理な姿勢になってしまいます。
    立つ姿勢はもちろん、座ったり膝枕だったりの姿勢でも難しそうで。
    …私もヒトの耳だったら、簡単なのに。ベッドの中での思考実験のさなか、そんな無意味な仮定を考えてしまいました。

  • 291◆yFWSUG6rM8t922/12/15(木) 07:50:37

     明くる日。
     休憩の際に『すごく体調がよくない』からと、トレーナーさんに抱きかかえられながら。
    どうにか、いま心音を聞けないか、頭の中で『思考』錯誤をしていたときでした。

     不意に、耳に刺激が走りました。優しく触れられた、そう脳が理解する前に。
    「ひぅ」と「ひん」の間のような、絶対に人前で出さないような声がとびだすと、腰が砕けました。咄嗟に縋るようにして、どうにか尻もちは防ぎましたが。

    「と、とれな、とれーなーさんっ」
     思わず耳を抑えながら抗議の目線を向けると、トレーナーさんも予想外の反応に、少し混乱されていました。

    ──ごめん!いつもより動いていたから、勘違いだったね。本当にごめん……!

     平謝りするトレーナーさんが言うには。
    私の耳は、最初の方は体調不良らしく絞られていましたが、最近はリラックスしたようにゆったりと倒れていたことが多かったそうです。
     ところが今回はそのどちらでもなく、耳がぴこぴこと動いていて。その意図を考えた末、触ってほしいという言外のアピールだと思われたようでした。
     その後、早とちりしたと落ち込むトレーナーさんをなだめて再開し。
     そのとき、耳の動きの理由を……心音を聞く方法を考えていたことを伝えました。ただ「他人の心音はリラックス効果が高まるらしいので」という、苦しい建前をつけたうえで。

     トレーナーさんはそれを聞くと、少し考えてから、困ったように笑って言いました。
    ──たぶん、そんなにリラックスはできないと思うな。
     そう思った理由を尋ねると、私の手をとって、トレーナーさんの左胸にあてたのです。

    とく、とく、とく、とく。
    突然の行動にすこし戸惑いながら、手に感じた心音は、私の想像より少し速くて。
    「なるほど、トレーナーさんの鼓動は、私のよりも速いのですね」
    そう指摘すると、トレーナーさんは首を横に振ります。

    ──今までも、今も。君とこうしてるときは、速くなってしまうんだ。

    それを聞いて、私の胸も、高鳴るのを感じました。

  • 30二次元好きの匿名さん22/12/15(木) 07:57:58

    このレスは削除されています

  • 311◆yFWSUG6rM8t922/12/15(木) 07:59:39

    (誤字したので削除の上再投稿失礼します)
     今回は以上です。お読みいただきありがとうございます。心音を聞きたいグラスです。ご査収くださいませ。

     あんまり仮病してないですし、うちで取り扱ってるのも不思議ではありますが……あったので卸してきました。

     読了報告、感想、イラストもありがとうございます。励みます。

  • 32二次元好きの匿名さん22/12/15(木) 08:22:51

    かわいい
    たすかる

  • 33二次元好きの匿名さん22/12/15(木) 19:27:13

    朝のうちに新作あがってる!
    今回もいいやん……

  • 34二次元好きの匿名さん22/12/16(金) 01:43:45

    最初は仮病つってたけど今では恋の病に倒れちゃうグラス
    トレーナーが薬にも毒にもなるのがまた悩ましい

  • 35◆yFWSUG6rM8t922/12/16(金) 01:46:29

    「今日は、舌に違和感があるんです」
    …グラスが訴えたのは、初めての『症状』だった。舌。どうすればいいか返答に迷っていると。

    「簡単でいいので、診ていただけませんか?」
     みる?口の中を見るとは……よくわからないが、望むなら。
    「えぇと、目では見えにくいと思うので…その、触診、と言いますか」
    ──いや。それは、なんというか、アウトじゃないかな。
     触診、という響きに思わず首を横に振る。

    「なぜですか。たとえば保健室の先生であったり、歯科医の先生であったり、最悪、信頼できる友人同士で頼んだって、構わないですよね。舌に触るの」
    …少し強引だが、頭ごなしに否定もできない理屈。
    「どうして、そんなに警戒を?別にやましいことでもないと思うのですが」
     やましいのはあなたの煩悩では。暗にそう言われている気がする。

    ──いやいや。衛生面からしてもダメだ。ゴム手袋のようなものも手元にないよ。
    「前後に消毒をしていただければ、少なくとも私は気になりませんよ?」
     気付けば、会話の主導権は彼女が握っていた。
    「トレーナーさん、いつも爪をきれいにされてるのも知ってますし、消毒液もほら、こちらに」
    そう言うと、カバンから小さな消毒液の容器を取り出す。普段お弁当を食べる前に使っているものか。

     微笑んだまま、一手一手、詰みへと寄せてくる。
    「あ、私もさっき歯磨きしましたから、それも大丈夫ですからね」
    念入りに、こちらの逃げ道をつぶし。
    「確かにこの行為をトレーナーさんから迫ったなら、あまり良くない行いでしょうね」
    こちらの懸念を見抜いたうえで。
    「ですが、ほかならぬ担当ウマ娘から、不調を訴えられて、お願いされている。……トレーナーさんは、何も悪くないんですよ」
    『言い訳』の余地も与えてきた。

  • 36◆yFWSUG6rM8t922/12/16(金) 01:47:20

    もしかすると、今回に限っては『仮病』ではないのかもしれない。

    そう思えるほどに。

    あまりにも、強引で、したたかで。

    悪い舌だった。

  • 37◆yFWSUG6rM8t922/12/16(金) 01:51:41

    今夜はここまで。続きを上げるか迷ってます。対象年齢的に。上げるとしたら明日の夜になりそうです。たぶん。

  • 38二次元好きの匿名さん22/12/16(金) 10:38:14

    >>36

    トレーナーが頬に手を伸ばしてきたので目をつぶってちょっとつま先立ちになるけど

    あまりからかうなってほっぺびろーんの刑に処されるグラス

  • 391◆drG48VpJSsKA22/12/16(金) 18:23:12

    >>36

    彼女が差し出した消毒液は断り、部屋を出て、水道で手を洗いに行く。爪の先から肘まで、念入りに洗う。


    できるだけ、リスクのないようにというのもあるが……時間をかければ、彼女が冷静になって撤回するかも、という淡い期待もあってのことだった。


    「しっかり、清潔にしていただいたんですね、安心です」

     トレーナー室へ戻ると、椅子が向かい合うように配置され、グラスはその片方に座っていた。

     どうやら、撤回するつもりもないらしい。こちらも覚悟を決めて、席に座る。


    ──目を閉じて。

     言われた彼女は、素直に目を閉じる。

    彼女がこれ以上何か言う前に、先手を打つ必要がある。

     頬に手をのばす。手が触れたとき、ぴくりと耳が動いた。


     そのまま、頬を、つまむ。

    もう片方の手でも頬をつまんで、ゆっくりと左右に引く。なかなか伸びる。

     おお、と小さく感嘆の声が出てしまった。


    「!?……トレっ……んぅ」

     事態に気づいたグラスの抗議の声を無視して、マッサージを始める。頬の。


    「ほへ、ほへーはーはん?」

    ──舌の痛みや違和感は、顔や顎の筋肉が原因の場合もあるからね。

     強引だが、頭ごなしには反論できない理屈を出し、体裁を整え。

    ──普段ならこんなことしないんだけど、他ならぬ担当からの頼みなら、仕方ないよね。

     ついでに、用意してくれた『言い訳』を盾に、思うまま、頬をむにむにと弄ぶ。

    「こにょうごひは、ひちようなんれふか」


     頬全体をだいたいほぐし終えると、次はこめかみの方まで揉む範囲を広げる。次は目もと。額。表情筋全体を、念入りにほぐしていった。

  • 401◆drG48VpJSsKA22/12/16(金) 18:24:26

    >>39


    ──はい、おしまい。

     マッサージが一通り終わったのは、こちらの手と、彼女の顔の体温がとけあった頃だった。

     最後に。力が抜けきったグラスの耳に、口を寄せて囁く。

    ──からかうのも、ほどほどにね。

    びくり、と返事の代わりに肩が震えた。


     席を立ち、椅子を元の位置に戻そうとしたとき。弱い力で袖を引かれた。

    「あの」

     振り返ると、グラスの呆けた目と視線が合った。まだ余韻に浸っているような、ぼんやりした表情から、にへ、と力なく微笑むと。

    「せっかくなら、おみみも、おねがいします」


    ……毒気が抜けた彼女の舌は『仮病』の建前すら忘れ。

    素直に、思うまま。とんでもないものを要求してきたのだった。


  • 411◆yFWSUG6rM8t922/12/16(金) 18:30:38

    以上です。読んでいただきありがとうございます。ほっぺをむにむにされるグラスです。ご査収ください。


    当初の想定していた展開の公開は、葛藤の末思いとどまりました。ちょっと己の欲に寄りすぎているので。軌道修正のアイデアをいただいた>>38さん、ありがとうございます。


    あと、今回はたまたまありましたが、うちは退廃的なのとか背徳感が癖でして。あんまりあまあまなリクエストの者は仕入れられないかもしれません。ご了承下さい。

  • 42二次元好きの匿名さん22/12/16(金) 19:52:20

    膝枕して貰ってたら2人とも寝ちゃって
    先に起きたグラスがこっそりトレーナーの腹に頭をくっつけて二度寝するんだけど
    そのうちトレーナーの空腹の音が盛大に鳴り響いてムードもへったくれもない起こされ方をするグラス

  • 43二次元好きの匿名さん22/12/17(土) 01:52:43

    また話が来ててありがたい

  • 44二次元好きの匿名さん22/12/17(土) 13:45:03

    保守

  • 45二次元好きの匿名さん22/12/18(日) 00:37:13

    グラスワンダーさん良いよね…

  • 46二次元好きの匿名さん22/12/18(日) 12:16:10

    保守

  • 471◆yFWSUG6rM8t922/12/18(日) 20:57:44

     その日は、1月らしからぬ暖かさのせいでどこかぼんやりとして『調子が悪かった』ので、数分ほどのつもりで膝をお借りしていました。

     年末の激闘こそ最高の結果を出せましたが、次の春へ向けての準備を進めていかねば……そう思っていた矢先。まだ年始の気の緩みが残っていたのかもしれません。気付けばすっかりと寝入ってしまって。

     はたと目を覚ました時、謝りながら飛び起きようとしたのを、すんでのところでこらえました。……トレーナーさんも、共に眠りに落ちていたので。それも器用に、座ったまま。私と同じように、気の緩みがあったのやも。
     試しにつつ、と鼻筋をなぞってみても、むにゃむにゃと言うだけで起きそうになく。どうやらしっかりと夢の世界に旅立たれているようでした。

     穏やかに寝息を立てるお顔を見上げながら、時計をちらと見れば、数分、からは程遠い時間が経っていて。
     彼を起こして、自分も起きて、今からでも練習を再開しなければ。そう強いる理性を押しのけ、誘惑の声がささやきます。
    ──普段なら止められてしまう、あれ。今ならできてしまうかもしれませんね。

    「………えい」

     私はあっさりと、禁断への誘惑に屈しました。体ごと頭を半回転すれば、彼のお腹と私の顔が触れてしまいそうで。
     いつもと反対の側頭部にあたるふとももは、いつもの場所より太く、弾力に筋肉を感じて、少しどきりとしましたが、それよりも。
     私が姿勢を変える時、わずかにスラックスの奥、ズボンから聞こえた、ちゃり、という微かな音に気づいた時、心臓が跳ね、頬が紅くなるのを感じます。
     トレーナーさんがこの姿勢を禁じた意味を、身をもって理解しました。湯だった頭で考えてみると、すごく、だめな気がします。

    …でも。ここはいつもの膝枕より温かくて。それに、トレーナーさんに頭を抱きこまれているようで、きっとこのまま寝るのはもっと心地よさそう、もう一度だけ、目を閉じても……

     次は眠気の誘惑に屈さんとする私を咎めるように、唸り声のような音が、部屋中に響きました。
    ……ちょうど私の正面にある、トレーナーさんのお腹から。


    その日はすぐにトレーナーさんを起こすと、練習を再開しました。とっておきの和菓子を、はんぶんこした後で。

  • 481◆yFWSUG6rM8t922/12/18(日) 21:00:36

    おまたせしました。膝枕の時にお腹側に顔を向けるも、腹の音に起こされるグランワンダーです。ご査収ください。

    倉庫の奥から引っ張り出すのに時間がかかりました。その間の保守、ありがとうございます。

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