- 1卵とじ22/12/14(水) 20:55:16
- 2卵とじ22/12/14(水) 20:56:01
1日目。
パチリ。
意識が浮上し、夢から覚める。
カーテンからは朝日が差し込み、おおよその時間帯が把握できた。
…もうちょっと寝たい。
「…」
もう一度目を閉じてみたが、どうにも眠れそうにないので
渋々ベッドから身を起こす。
せっかく楽しい夢だったのに… - 3二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 20:56:11
きたか
たまごとじ! - 4卵とじ22/12/14(水) 20:56:24
「ん~…」
寝起きのストレッチをしていると我ながら間の抜けた声が出る。
今日は結構暖かい…
新世界ではしょっちゅう気候が変わるから、油断はできないけど。
隣でまだ眠りこけているルフィを起こす。
「おはようルフィ」
「ぐがー…」
「おはよう!」
「ぐー…」
「…」
ゆさゆさ。ゆさゆさ。 - 5卵とじ22/12/14(水) 20:56:45
「んー…わかった、わかった…」
ようやくルフィが起きる。
私は二度寝しそこねたのに、ルフィだけ寝させてたまるか!
「ほらダーリン!朝ごはん食べに行くよ!」
「おう。…ウタ」
「何?」
「今日も綺麗だな!」
「えへへ」
私達が結婚してから3週間が経過していた。 - 6卵とじ22/12/14(水) 20:57:06
「今日の勝負は雑巾がけ!甲板をたくさん掃除できた方の勝ちだよ!」
「よーし!」
「はい、ルフィ。雑巾だよ」
「おう!…ん?おいウタ、なんでお前はモップを持ってんだ?」
「よーい、3,2,1!」タッタッタッ
「あ!待てよウタ!ずりぃぞ!」
「出た!負け惜しみぃ~!」 - 7卵とじ22/12/14(水) 20:57:23
冒険が暇な時は、昔みたいに二人で勝負をしている。
結婚してすぐは、「夫婦らしく」しようと色々試してみたけど、
イマイチしっくりこなかったので、今は私達らしく気楽に付き合っている。
一つ変わったことと言えば…
「ルフィ~キスして~?」
「いいぞ!」
「ん…」
私達のやり取りに、恋人としてのアレコレが加わったことかな。 - 8卵とじ22/12/14(水) 20:57:43
結婚した日の夜、ルフィと体を重ねて…
私の中に、なんて言うか、ルフィへの恋心のようなものが芽生えた。
ルフィも私に対して同じように思ってくれたらしくって…すっごく嬉しかった。
じゃあ遠慮はいらない、ってことで私達は昼夜いちゃついている。
(「いちゃついている」っていうのはナミからの評価だ。悪い気はしない)
ふとした瞬間、「あ、ルフィ好き」って思ったらそのまま伝えるし、
「ルフィに好きって言ってほしいな」って思ったらアピールしてる。
キスやハグをねだったり、流し目を送ったり。
鈍いように見えて、意外とルフィは気付いてくれるんだよね。
「ありがと」
「ウタが好きだからやってるだけだ!」
「んも~ルフィったら~♡」 - 9卵とじ22/12/14(水) 20:57:59
「今日もお熱いねェ」
「見てるこっちが恥ずかしいぐらいだ」
「まったく…」
「ウタちゃんが笑顔になって何よりだよ」
「船に乗ってすぐはかなり落ち込んでいたものね」
「相当ショックだったようじゃからのう…」
「明るくなってくれておれ、嬉しいぞ!」 - 10卵とじ22/12/14(水) 20:58:15
フィと一緒にいるととても幸せだし、一味のみんなも親切にしてくれる。
サニー号での生活は楽しい…けども、最近、ちょっとした悩みが。
ルフィに、改めて伝えたいことがある。ぜひとも。
いや、いつ言ってもいいんだけど…できることならロマンチックに…
まあ明日考えることにしよう。
「おやすみ、ルフィ」
「おやすみ、ウタ」 - 11卵とじ22/12/14(水) 21:00:44
ということで、ルフィとウタの七日間を書いていくSS
- 12二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 21:01:39
最高です
- 13二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 21:17:55
2日目。
「みんなー!元気―?ウタだよー!」
電伝虫越しに、ファンたちに挨拶する。
あんな事件があった後でも、私の歌を求めてくれる人は多い。
「今日もみんなに歌を届けちゃうよ!それでは聴いてください!…“私は最強”!」
ルフィ達には心配された配信活動だけど、これだけは譲れなかった。
「絶対に無茶はしないし、配信内容は能力なしの歌だけにする」って説明して、
何とか一味のみんなには納得してもらえた。
それでもやっぱり、不安に思う気持ちはあるだろう―私に対して。
やった事がやった事だしね、うん。 - 14二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 21:18:20
「―さあ 怖くはない…」
目を閉じ、世界中のファンへと想いを馳せる。
エレジアでの耐え難い孤独から救ってもらったこと。
この広い海で私の歌を見つけてくれたこと。
私を必要としてくれたこと。
大切な思い出。一生の恩。
それは変わらないから、やっぱり、ファンのみんなの思いには応えたい。
もし、また私が無茶をしようとしても…止めてくれる男の子が傍にいるから。
私も、自分の力を恐れ過ぎずに生きていく道を選びたい。
それに…こうしていれば、赤髪海賊団のみんなやゴードンも私の歌が聴けるでしょ?
なんて小賢しい考えもあるのだ。 - 15二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 21:18:38
「ふう」
「お、ウタ。終わったかー?」ガチャッ
「うん、今終わったとこ。おいでー」
腕を引っ張り、自分の膝にルフィの頭を載せる。
こうすると、ずっしりした重さが感じられて良いのだ。
そのまま手遊びでルフィの髪の毛を撫でる。意外とサラサラしてる…髪質かな?
「なあウタ…」
「何?」
「いや!何でもねェ!」
「…」 - 16二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 21:18:58
んー…噓が下手だね、ルフィ君。私にはピンと来た。
さしずめ、私をファンに取られてるように感じて妬いちゃったね?
可愛いんだからもう。
結婚してからというもの、こういった幼馴染を度々見られる…
コイツの知らない一面を覗けるような気がして嬉しいものだ。
ま、年上として安心させてあげるとしよう。
「ルーフィー♪」
膝枕したままルフィの顎を持ち上げ、視線を合わせる。
「大丈夫だよ?私はルフィのお嫁さんで、ルフィのことがだーい好きなんだから」
「…」
照れたのか、ルフィがぷいっと視線を逸らす。
そうはさせまいと、回り込んでまた視線を合わせる。 - 17二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 21:19:21
「ファンに歌を届けてるくらいで嫉妬されちゃうと悲しいなー
私はこんなにルフィのこと愛してるのに伝わってないんだもんなー」
私は朝も昼も夜もルフィを想ってるのになー」
「…」
「好きだよルフィ。子どもっぽいところも好き。戦ってるときのカッコいい顔も好き」
「子どもっぽくねェ」
「明るい性格も好きだし、義理堅いとこも好きだし、夜激しくしてくれるのも…」
「おいウタ、やめてくれ…」
ルフィの顔が真っ赤になっているのが面白かったので、
そのまま1時間ほど愛の言葉を囁き続けた。
最後の方は「好き」って連呼するだけになってたけど。 - 18二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 21:19:45
「ん?なあウタ、それつけっぱなしじゃねェか?」
「え?ああ、ホントだ、ありがと」
配信用の電伝虫をつけっぱなしにしていたので切る。
いやー慣れたつもりだったけど、時々こういう失敗しちゃうなぁ。
…聞かれちゃったかな?ま、心配してもしょうがない。
大事にはならないと思う!たぶんね!
「「“麦わら”と“歌姫”、結婚!? 新世界に激震走る!」」
私とルフィの結婚が世界経済新聞の一面を飾ったのはその日の夕刊だった。 - 19二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 21:20:56
やっちまいましたなぁ! ……いーんじゃねぇか?
- 20二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 21:21:59
2日目からトリップ取れちゃってますよ
- 21卵とじ22/12/14(水) 21:54:19
- 22卵とじ22/12/14(水) 21:55:12
3日目。
少し肌寒い朝。私は、己の惨状に震えていた。
「あああぁ…」
処理せずに寝落ちしたせいで体のあちこちがベタベタ。
髪は目も当てられない程にまでボサボサ。
お気に入りのTシャツはシワシワ。
「もう!」
それもこれも、隣に寝ているコイツのせいだ…!
お風呂上りなのに、そのままシたいとか言うから…!
…頭に来た。今日は起こしてあげない!
服を着替え、眠るルフィにキスをして朝食を食べに行く。 - 23卵とじ22/12/14(水) 21:55:30
「なあウタ…」
「知らない!」
「おいウタ…」
「ふん!」
ひたすらルフィに対して冷たい態度をとる。
私のタコさんTシャツをシワシワにした罪は重い。
今日はあーんもしてあげないし、ハグも1回しかしてあげないんだから!
ぎゅー… - 24卵とじ22/12/14(水) 21:55:47
別に、ルフィのことが嫌いになったわけじゃない。
というか、距離をとっていると結構寂しいのだが…
こういうときにしっかり怒っておかないと、ルフィは学習しないからね!
徹底的に冷たくする!
そう私は堅く決意したのだった。 - 25卵とじ22/12/14(水) 21:56:06
「ほらルフィ!サンジが焼いてくれたパンケーキだよ!
アンタは半分しか食べられないけどね!」
「おう!ありがとな!」
「ルフィ!アンタのために新しい歌を書いたよ!
まだ聴かせてあげないけどね!」
「おう!楽しみにしてるぞ!」
「ルフィ…今日のサンドイッチ、どう…?」
「うめェなぁ!サンジに教えてもらったのか?」
「えへへ」
「ルフィ!今日はお風呂に入りなよ!」
「えー」
「えーじゃない!汚れてるじゃん!さっさと入るの!」 - 26卵とじ22/12/14(水) 21:56:25
ナミに聞いたところ、そろそろ次の島が見えて来る頃らしい。
海流と風の流れで分かるんだって。すごいなぁ…
夕方の見張り台で今日一日のことを思い返す。
…よくよく考えると、ルフィに悪気はなかったわけだし、
私が一方的に怒るのは筋違いな気がしてきた。
ひどいことしちゃったな…
少し落ち込みながら、梯子を降りる。
ルフィに謝りに行こう。 - 27卵とじ22/12/14(水) 21:56:43
船長室(私達の部屋)で二人、向かい合う。
「あのさ、ごめんねルフィ…今日一日意地悪しちゃって…」
「そうか?別に気にしてねェけど…」
ルフィは優しい。つまらないことでへそを曲げていた私を許してくれる。
私も…そんなルフィが好き。
そうやって伝えようとも思ったけど、今日の私は何だか口下手だ。
こんな調子じゃ、例の話もいつできることやら… - 28卵とじ22/12/14(水) 21:57:03
「でさ、何様だって感じなんだけど、ね…その、お詫びというか」
言わなきゃいけないのに、恥ずかしくてうまく喋れない。
顔が熱くなっているのを感じる。
「ん?」
上目遣いでルフィを見つめる。
「私の全部あげるから…今夜は、その、め、めちゃくちゃにして?」
「…」
「きゃっ」 - 29卵とじ22/12/14(水) 21:57:23
今日はここまで
- 30二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 22:04:34
徹底的に冷たくする姿か…?これが……
- 31二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 22:29:28
徹底的に(当人比)
- 32二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 22:32:22
元々ルフィには甘々だからね、仕方ないね
- 33二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 23:04:47
このレスは削除されています
- 34二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 23:12:04
- 35二次元好きの匿名さん22/12/14(水) 23:30:50
>>徹底的に冷たくする!
温度の比較対象が山火事や火山じゃないですかねコレ
- 36二次元好きの匿名さん22/12/15(木) 07:02:20
続き楽しみだぁ
- 37二次元好きの匿名さん22/12/15(木) 13:46:41
- 38二次元好きの匿名さん22/12/15(木) 13:58:44
- 39卵とじ22/12/15(木) 21:12:57
4日目。
昨晩のルフィはすごかった。
私も、求められる感覚が嬉しくって、ヒートアップしちゃったよ。
幸せだなあ、としみじみと感じる。
エレジアにいた頃は、毎晩眠るとき一人だったし、
ルフィと同じ毛布に包まれているときの多幸感は代えがたいものがある。
私は寂しがり屋だから、心の奥底で何かしらの繋がりを欲しているのかもしれない。
などと考えつつ、脱ぎ捨てられている服を回収し身に着けていく。
ありゃ。結局、またTシャツが1枚犠牲になってしまった。
でも…それだけルフィに愛してもらったって考えると…
んんっ、ちょっとヤバいかも。
「悪くないね…」 - 40卵とじ22/12/15(木) 21:13:18
横でいびきをかいている夫を見やる。
あどけなさの残る安らかな寝顔。
無防備に投げ出された肢体。
筋肉のついた胸板。
めらっ。
「…」
まずは部屋の外を確認しよう。
ドアから頭だけ外に出し、誰かいないか探す。 - 41卵とじ22/12/15(木) 21:13:39
「ウタ!おはよう!」
「チョッパー、おはよう!」
丁度いいところに。
「悪いんだけどさ、ルフィが起きそうにないからさ、
朝ごはん遅れるって伝えてくれない?」
「ウタも遅れるのかー?」
「うん、私はルフィが起きるまで待つよ」
わかったぞーと手(蹄?)を振るチョッパーに手を振り返し、
再びドアを閉める。これでよし、と。 - 42卵とじ22/12/15(木) 21:14:04
ベッドで寝返りをうっているルフィの元へ近づく。
「ルフィ!」
「ん…おはようウ…」
「―Listen up, baby♪」
ルフィが目覚めると同時に、耳元で軽く歌う。
かくん。ルフィの体から力が抜け、目が再度閉じる。
… - 43卵とじ22/12/15(木) 21:14:26
「おはよう!ルフィ!」
「おはようじゃねェよ!?
なんで寝起きに眠らされなきゃいけねェんだ!」
ウタワールドの中でルフィと挨拶を交わす。
朝から騒がしいなあ。
「まあまあ、落ち着きなよルフィ
これにはふか~い訳があるの!」
「そうなのか」
「さっき寝てるルフィを見てたらね?
もっと愛してほしいなーっていうか!
もっと愛してあげたいなーっていうか!
なんか火がついちゃったんだよね」
「深くはねェな」 - 44卵とじ22/12/15(木) 21:14:58
「でもさ、普段は朝にはシないじゃん?みんなにもバレちゃうしさ。
そこで!朝からこっそりルフィといちゃつくために、
ウタワールドに引きずり込んだんだよ!」
「お前の能力の使い方それでいいのか…?」
「うん」
「即答だな!?」 - 45卵とじ22/12/15(木) 21:15:15
「で?ルフィの答えは?私とシたいの?それとも無理やり襲われたいの?」
「ロクな選択肢がねェ」
「えーノリが悪いよールフィー
可愛いお嫁さんが身体の疼きを持て余してるんだけど」
「お前は確かに可愛いよ」
「えっ…!ちょっと、ルフィやめてよ…」
「照れるポイントがわかんねェ!」 - 46卵とじ22/12/15(木) 21:15:39
まあ、返事は聞かなくても分かってるんだけどね。
ルフィに抱きつき、意図的に自分の体を押し付ける。
そのまま顔を上げて目を合わせる。
どう?
「ねぇルフィ…ダメ?」
「…ずりぃぞ」
出た!負け惜しみぃ~! - 47卵とじ22/12/15(木) 21:16:03
体を離し、能力で作り出したベッドの上に座る。
「おいで?」
ルフィが私の両腕を掴み、覆い被さってくる。
瞳に私だけしか映っていないのを見て取り、浮かべた笑みが深まる。
この状態でも、主導権を握っているのは私だ。
「私は、髪の毛1本まで、ぜーんぶアンタのものだから…好きにしちゃえっ♡」
勝負開始。
…
ひと通りタガを外して盛り上がった後、能力を解除する。
午前中はほとんどウタワールドにいたので、そのまま疲れて寝てしまった。 - 48卵とじ22/12/15(木) 21:16:24
夕刻。のそのそとベッドから這い出て甲板に出る。
どうやら、私が寝ている間に船は島に着いたようだ。
何かしらの準備しているブルックとゾロとお喋りをする。
今日はもう暗くなるので、明日みんなで上陸するとのことだ。
今晩の見張りはルフィの担当。
私もついていこうとしたが、寒いからやめとけと言われた。
優しい…好き…
あまり眠くはないのだけど(半日寝てたし)、部屋で独り寝することにした。
一人、かぁ…
明かりを消し、目を閉じる。 - 49卵とじ22/12/15(木) 21:37:29
5日目。
燃えている街が目に入る。
人々の悲鳴が響き渡り、奇妙な音楽が耳鳴りのように離れない。
地面には、炎の揺らめきで分厚い影が映し出されていた。
私は必死に走っている…
助けて。逃がして。置いていかないで。
意識が錯綜する中、海岸にたどり着くが誰もいない。
どうして!どうして?どうして。どうして…
ふと、自分の手を見つめると。
どろりとした液体で真っ赤に染まっていた。 - 50卵とじ22/12/15(木) 21:37:47
「はっ!はっ、はっ、はぁ…!」
夢から覚め、飛び起きる。
ひどい悪夢だった。最近は見ないと思っていたのに…
空気は随分冷たいというのに、私は汗でびっしょりだった。
咄嗟にルフィの姿を探す…が、いない。
自分の胸を抑え、気持ちが落ち着くまで待つ。
目を閉じればあの情景が蘇る気がして、閉じることはできなかった。
「大丈夫、大丈夫…」
まだ外は暗い。明るくなるまでじっとしていよう。 - 51卵とじ22/12/15(木) 21:38:03
「ルフィ、おはよう!見張りおつかれ!」
「おう、おはよう!まあ、途中から寝てたけどな!」
「見張りなんだから寝ちゃダメでしょ!?」
「しっしっし!」
「何笑ってんの!」 - 52卵とじ22/12/15(木) 21:38:22
「おーい!ルフィ、ウタ!そろそろ出発するぞー!」
「悪りぃ!先に行っててくれ!」
え。
なんで?私とルフィも準備はできてるんだけど…
驚いている間に、他のみんなが船を出ていく。
「どうしたのルフィ?私達も…」
「ウタ。お前、無理してんだろ」 - 53卵とじ22/12/15(木) 21:38:45
図星。どうして分かったんだろう。
今日見た夢が脳裏から消えなくって、ずっと気分が悪いままだった。
心配させたくないし、うまく隠してたつもりだったんだけど…
「んー、ウタのことなら大体分かるぞ?」
「…」
「なんか悩みがあるんなら、言ってくれ」
「…」
「おれは頼りになんねェかもしれないけどよ…
できれば、お前に無理してほしくねェんだ」
「ルフィ」 - 54卵とじ22/12/15(木) 21:39:10
「ごめんね、隠すような真似しちゃって…今日、ちょっと怖い夢見ちゃっただけ」
「でさ、夢のこと考えてたら不安になっちゃってね?」
「私って、やっぱりおかしいんじゃないかな…って」
「他の人と喋ってるとき、何だかズレて感じるときがあるし」
「この前の事件のことだって…何が悪かったか、あまり理解できてない」
「今、こんなに幸せなのにさ」
「あのままこっちから消えちゃっても良かった、って思う私もいるんだよ」
「変でしょ?」
「ねぇルフィ」
「私のことを“分かってる”なんて本当に言える?」 - 55卵とじ22/12/15(木) 21:39:33
「ああ」
「…え」
あまりにもあっさりした返事。
あっけにとられていると、ルフィが近づいてきて私の体を優しく抱きしめてくれる。
いつの間にか震えていたことに気がつく。
胸元と腕から、じんわりとルフィの温度が伝わる。
「お前は歌が巧くて、すげぇ優しい奴でよ…
そんで強ェから…おれやシャンクスが見てねェと、
すぐに無理して誰かを助けにいっちまうんだ」
「ッ…そんな、いいものじゃない!」
声を荒げてルフィの言葉を否定する。体が一際大きく震えた。
比例するように、私を抱きしめている腕に力が入る。 - 56卵とじ22/12/15(木) 21:39:53
「確かにウタは少し変わってるかもしんねーけどよ、
おれは冒険してる中で、
お前よりも変な奴なんていくらでも見てきたぞ?」
「そういう、ことじゃ…」
「それによ。変わってるなんてどうでもいいぐらい、
おれ、ウタが好きなんだよ。今のウタが。
お前に、傍にいてほしい」
「あ…」
「だから、そんな風に泣かないでくれ」
「…」
体の震えが収まり、私からもルフィを抱きしめ返す。
しばらく、何も言えなかった。 - 57卵とじ22/12/15(木) 21:40:17
「…ごめん、ルフィ」
「お前が謝るようなことじゃねェよ」
背中に回されていた腕が解かれ、体全体が持ち上げられる。
そのままルフィに抱きかかえられて部屋まで運ばれる。
女の子らしく扱ってくれて、いつもなら喜ぶところだけど、
この瞬間は安心が勝った。
今日は…今日も、一緒にいてほしい。
ルフィは、そうしてくれた。 - 58卵とじ22/12/15(木) 21:48:30
6日目。
夫の腕の中で目を覚ます。
「朝だ…」
昨日…結局、そのままルフィと二人で過ごした。
一味のみんなは、夕方には帰ってきた。
そのまま野営しようかとも思っていたが、
いつまで待っても私達が来ないので、船に帰ってきたそうだ。
後で追いつくつもりだったのに、面目ない。
私は…ルフィのおかげで、今、すごく安心している。
言葉でも、行動でも、いっぱい「一緒にいたい」って示してくれた。
嬉しくって、何度も泣いてしまった。恥ずかしい。
本当、頼りになる男になっちゃって。
惚れ直しちゃったよ… - 59卵とじ22/12/15(木) 21:49:00
「ルフィ、ルフィ、ルフィ…」
寝ているルフィの頬を撫で、寝顔を堪能しながら名前を呼ぶ。
愛しい。その一念で私の心が染められていく。
「好きだよ、旦那様…」
ふざけてそんなこと呟きつつ、ほっぺたをグニグニ弄る。
今更ながら、結婚したっていう事実が二人の繋がりを強くしているみたいで
気分を高揚させる。 - 60卵とじ22/12/15(木) 21:49:24
私も、ルフィの傍にいたいって思ってる。
どうにかしてこの気持ちをそのまま伝えたい…
でもどうやって…?
普通に伝えてもいいけど、できるだけルフィの心に残るようにしたい。
「うーん…ふわあぁ…」
そんなことを考えていたらまた眠くなってきた。
とりあえずルフィの首元に顔を埋め、二度寝するのだった。 - 61卵とじ22/12/15(木) 21:49:44
今日は、ルフィと私も他のみんなと一緒に島を巡ることになった。
聞いた話だと、危険な猛獣や敵対的な住民はいないってことだったけど…
これは…
「しっかし、何もない島だなー」
「住民がいなくなってから長い時間が経っているようね」
ロビンの言う通り、この島には人っ子一人見当たらなかった。
崩れかけた家々、荒れた畑、人気のない灯台、苔むした風車小屋…
そんな廃村の様子を観察する。
何があったかは知らないけれど、もう誰も住んでいないらしい。 - 62卵とじ22/12/15(木) 21:50:05
日が沈むまで歩いたが特に大きな発見はなく、
適当な場所を見つけて野営することになった。
焚き火を囲み、今後の航路についてみんなで話し合う。
(ルフィは面白そうという理由だけで航路を決めるのでナミは苦労しているようだ)
数日後には次の島へ向かうことになりそうだ。
話し合いも終わり、それぞれ適当な場所で寝転がる。 - 63卵とじ22/12/15(木) 21:50:26
ルフィの隣に毛布を持って来て寝転ぶと、無言でルフィが毛布の中に入ってくる。
肌がくっつくと温かい。この島はかなり寒いので体に沁みる。
もう少し暖をとろうと、ルフィの脚に自分の脚を絡める。
これでよし。
「ねえルフィ、聞かせてよ。冒険の話」
「んーいいぞ?おれ、前はどこまで話した?」
「巨人のおじさん達がいた島まで!」
「んじゃまー次は…なんとか王国で、チョッパーと、
すげー年寄りのバーさんと会ったときの話だな」
「何それ。気になる」 - 64卵とじ22/12/15(木) 21:50:45
こうやってルフィの言葉に耳を傾けていると、
離れていた12年間の隙間が埋まっていくようでとても嬉しい。
言葉にできない幸福感が私を満たしていく。
ルフィの冒険譚はちょこちょこ…内容が雑だけれどハラハラドキドキの連続で、
聞いているうちにすっかり夢中になってしまった。
…いや、危ない橋を渡りすぎじゃない!?
シャンクス達はもっと慎重だったはずだけれど…
二人してすっかり盛り上がって、夜通しルフィの話を聞いた。
こんな日も良いものだ。 - 65卵とじ22/12/15(木) 21:54:53
7日目。
パチリ。
意識が浮上し、夢から覚める。
木々の隙間から朝日が差し込み、おおよその時間帯が把握できた。
…もうちょっと寝たい。
「…いや」
もう一度目を閉じようかとも思ったが、やめた。
体にかかった毛布をどけ、地面から身を起こす。
楽しい夢だったけれど、そろそろ起きなくっちゃ。 - 66卵とじ22/12/15(木) 21:55:12
「おはよー」
「お、起きたかウタ!」
焚き火の後片付けをしているルフィに挨拶する。
相変わらず、この島は寒い。
しっかりと暖かい服を着込み、ルフィを手伝う。
ルフィが働いているというのに、私だけ何もしないわけにはいかない。
「ルフィ、この後ヒマ?」
「なんか用事があんのか?」
「うーん、用事っていうか…ちょっと、二人で歩きたいかな」
「いいぞ」 - 67卵とじ22/12/15(木) 21:55:29
二人がかりなので作業も早く終わった。
共同作業というだけで、私にとっては楽しい。
「オーケー!みんなにも伝えてきたよー!」
「よし、行くか!」
「うん。…ルフィ」
「なんだ?」
「今日もカッコいいよ!」
「そうかー?ししし!」
私達が結婚してから1か月が経過していた。 - 68卵とじ22/12/15(木) 21:55:55
「行ったか、アイツら」
「おれ達、ついていかなくて良かったのか?」
「ふふふ、大丈夫よ、チョッパー」
「二人になりたいって感じだったからな」
「たまにはゆっくり話したいんじゃろう」
「いーっつも喋ってるけどね!」
「まあまあナミさん。船じゃできない話ってのもあるさ」
「若いお二人の邪魔はできませんね」
「オウ!スーパー野暮ってモンだ!」 - 69卵とじ22/12/15(木) 21:56:15
ルフィと腕を組み、あちこち歩き回る。
廃村を抜け、森の中、原っぱを気の向くまま巡り、
ルフィとの昔話に花を咲かせる。
「で、そのときシャンクスがよ!コインがどこにあるのか
当てられたら船に乗せてやる、って!」
「あーそんなことやってたね、アンタ」
「で、コインは口の中に隠してたんだ!」
「シャンクスは大人げないからね…そこがいいんだけど」
フーシャ村にいた頃の思い出は、私もルフィもシャンクス中心のことが多い。
色々考えた結果、ルフィの船に乗せてもらっておいてなんだけども、
私の家族…赤髪海賊団のみんなにも会いたいものだ。
今、幸せだよって教えてあげたい。 - 70卵とじ22/12/15(木) 21:57:07
太陽が傾き、緑色の原っぱが金色の絨毯のように姿を変える。
そろそろ、時間だ。
いつものようにルフィに勝負を持ち掛ける。
「今日の勝負はかけっこ!あの建物に先に着いた方が勝ち!」
「よーし!」
「ルフィ。今日はズルなしの真っ向勝負だよ!」
「おう!いいぞ」
「ルフィ。手加減もダメ。いいね?」
「…おう!」
「「よーい、3,2,1!」」
同時に、走り出す。 - 71卵とじ22/12/15(木) 21:57:29
「おれの勝ちだ!」
「はあ、はあ、はあ…負けた~!悔しいっ!」
本気で走ったけど、ルフィには到底敵わなかった。
思っていたよりもずっと速い…
当たり前と言えば当たり前だけど。
子どものときの勝負とは違うのだ。私達も、もう大人だから。
「はあ、はあ…アンタも、随分強くなったね」
「当たり前だ!ずっと鍛えてるからな!」
知ってる。“強くなりなよ”って言ったの、覚えてたんでしょ? - 72卵とじ22/12/15(木) 21:57:49
「…そうだね。よいしょ」ギィィ…
建物の扉を開けて、手招きする。
「ルフィ!こっち、こっち!」
「?入るのか?」
「早く早く!」
ここに、ルフィと二人で来たい理由、いや、来なければならなかった理由。
この数日間、練りに練った私の計画を実行するためだ。
前のに比べるとスケールは小さいけれど。 - 73卵とじ22/12/15(木) 21:58:11
軋む階段を昇りながら話しかける。
「ねえルフィ。私、アンタと結婚できて嬉しいんだ」
「事件のときは…正直、“うっかりこっちに残っちゃった”って考えてたけどさ」
「思ってたより、悪くないよ。こっちも」
「少なくとも…アンタといる限りね」
階段を昇りきり、広い空間に出る。
さあクライマックスだ。 - 74卵とじ22/12/15(木) 21:58:39
風車小屋の窓を押し開けると、橙色の光が部屋一面に広がる。
勢い良く風が吹き込み、私の髪が揺れた。
ゆっくりと振り返り、ルフィに微笑む。
「私の舞台へ、ようこそ」
あ、ビックリしてる。あの時のこと、思い出したんでしょ。
フーシャ村にいた頃の私達の…淡い記憶。
アンタなら、きっと覚えてるって信じてた。
「…歌うよ」 - 75卵とじ22/12/15(木) 21:58:54
「―この風は、どこから来たのと…」
目を閉じ、ルフィただ一人へと想いを寄せる。
エレジアの悪夢から助け出してくれたこと。
“お前の歌が好き”って言ってくれたこと。
私と一緒にいてくれること。
大事な幼馴染。そして、初恋の人。
プロポーズ、やり直したいと思ってたんだ。
前に伝えたときは、かなり…あっさり伝えちゃったからさ。
私の、思いの丈を今。歌に乗せて伝えたい。 - 76卵とじ22/12/15(木) 21:59:28
…
歌い終わり、改めて目を合わせる。
「私は…新時代を望む女、ウタ。歌でみんなを幸せにするの」
私は誰なのか。なんのために生まれてきたのか。
その答えは、あの日、最後に歌ったときに見つけられた気がするから。
聞かせてほしい。
「アンタは?」
誰なのか、教えてよ。
「…ウタ」
「おれは麦わらのルフィ!海賊王になる男だ!」 - 77卵とじ22/12/15(木) 22:00:00
- 78二次元好きの匿名さん22/12/15(木) 22:00:48
効くよい…
- 79二次元好きの匿名さん22/12/15(木) 22:01:16
癒される
- 80卵とじ22/12/15(木) 22:07:04
- 81二次元好きの匿名さん22/12/15(木) 22:11:02
やはりあなただったか
今回もとても良かったです 癒されました - 82二次元好きの匿名さん22/12/15(木) 22:11:47
- 83二次元好きの匿名さん22/12/15(木) 22:13:59
- 84二次元好きの匿名さん22/12/15(木) 22:17:14
なんで7日なのかと思ったらそういうことか!
- 85二次元好きの匿名さん22/12/15(木) 23:16:30
浄化された
- 86二次元好きの匿名さん22/12/15(木) 23:21:27
- 87二次元好きの匿名さん22/12/16(金) 10:22:35
SS良い、モチモチウタちゃんズのイラストもかわいい 最高か?
- 88二次元好きの匿名さん22/12/16(金) 21:40:49
素晴らしい作品をありがとう
幸せそうな二人の描写が本当に尊い…
モチウタにもいつも癒されてます