デジたんって身体が小さいから

1二次元好きの匿名さん22/12/16(金) 00:43:28

混雑に巻き込まれたら大変だろうなと思ったのでイメージを書き起こしました。

「はぐれないように」と手を握りしめられてから、どれだけ経ったでしょう。

人混みに圧倒されるあたしの小さな身体にとって、トレーナーさんの手の温度だけが唯一の道標でした。

元を辿れば、クリスマス限定のウマ娘ちゃんグッズを購入したい一心で街に足を踏み入れたあたしが原因ではありましたが、これだけの混雑に身を置くことになるのは、想像以上でした。

付いてきてくれたトレーナーさんと行列に並び、お目当ての品を手に入れたは良いものの、進む道も戻る道も混雑を極めていて、あたし一人での突破はほぼ不可能な程でした。

そんなあたしにトレーナーさんは落ち着いた優しい声をかけて、抱えていたグッズを右肩に載せて、コートから伸びた左手であたしの指を捉えました。

絡ませた指は少し冷たくて、でもそれ以上に、安心感を覚えたのを思い出します。

長く続いた密集地帯をようやく抜け出して、真白い息を吐きだす頃には、トレーナーさんの掌の温度はすっかりあたしと同じになっていました。

顔を上げると、薄く笑みを浮かべたトレーナーさんと目が合いました。

その後すぐに、コートの袖の内側の感触に気が付いたのでしょう。同じになった体温が慌ただしく離れていくのを覚えました。

その後は特に、語ることはありません。

煌びやかな聖夜の街をトレーナーさんと並んで歩いて、門限になる前に学園に戻ってきて、解散しただけです。

一つだけ、付け加えるとすれば。帰路につくあたしは、左手に持った皺のない紙袋の中身に想いを馳せて、右手はコートの内側にすっぽりと隠れたままで。

お返しとばかりに、体温を分け合っているのでした。