CP注意 SS ”新時代”の仕上げ

  • 1愛ある罰22/12/16(金) 19:37:31

    一年前の今日。

    二代目海賊王がこの世を去った日に、わたしの一番の友達が笑顔で死んだ。



    夢の果てで描いた、"新時代"《この世界》を残して____

  • 2愛ある罰22/12/16(金) 19:39:01

    波風揺れる船の甲板上で、今日もわたしは彼の残した”この世界”を生きている。

    彼が……ルフィが創り上げ、以降は自ら手を加えることなく、すぐに離れてしまった世界を。

    生前の二代目海賊王が創り出した"新時代"では全ての種族が"人間"として平等に扱われるようになった。

    だから"天竜人"という枠組みは存在しないし、市民は天竜人に怯えることなく天上金の心配も必要無くなった。

  • 3愛ある罰22/12/16(金) 19:39:55

    ____ルフィが生前に創った新時代は"ここまで"だった。

    幸いにも、彼がこの世を去った後も今を生きる人間達は新しい秩序を守り続けた。

    だけどそれだけでは救われない人達もいる。
    それは、解放されたはいいが、自分の力では家に帰ることができない"元奴隷"や"海賊に無理やり連れて行かれた人達"だった。


    ……前置きが長くなったね。

    これはわたしが"その人たち"を家に返して、ルフィの"新時代"を完成させるまでのお話だよ。

  • 4愛ある罰22/12/16(金) 19:41:44

    約一年前。
    エレジアでの一件以降、わたしはルフィの"夢の果て"を近くで見るために一緒の船に乗っていたんだ。

    クルーのみんなとの旅の日々は楽しくて、気づけばルフィは海賊王になって時代をひっくり返してしまった。

    ルフィが海賊王になった後も、しばらくは仲間たちの夢を叶えるために航海を続けたけど、叶え終えれば"切られたパンケーキ"のように、わたし達は別れた。
    最後の航海として、なんとかサニー号でそれぞれの帰りたい場所を巡って、次から次へと一味は船から降りたんだ。

    ……私が帰りたい場所?それはもちろん…

    「久々のフーシャ村だね。なんだか懐かしい気分になれるね…」
    「じゃあ前みたいにマキノの酒場まで競争するか?」

    ルフィのとなりだよ。

  • 5愛ある罰22/12/16(金) 19:42:53

    フーシャ村に戻ると、わたし達は"政府に変わる新組織"を立ち上げたコビー君を交えて、新時代の基盤を創るための話し合いを始めた。

    何日も何日も話し合うと、ルフィのめちゃくちゃな夢の果ても、新しい政府と力を合わせることで実現可能になると分かった。

    こうして誰もが平等に扱われる世界という"ルフィの新時代"の基盤が完成したんだ。

    ____だけどそこで、彼の時間は止まってしまった。

  • 6愛ある罰22/12/16(金) 19:43:48

    ____寿命。
    誰もが迎えるその時を、今まで無茶してきたルフィは、いち早く迎えることとなった。

    ルフィが自分の寿命を悟ってからの数日間は、起きてから眠るまで、わたしはルフィから一切離れずに寄り添い続けていた。

    せめてルフィとひとつでも楽しい思い出を作れるように____

  • 7愛ある罰22/12/16(金) 19:45:21

    彼の最期の日。
    わたしは丘の上で、すっかり弱々しくなってしまったルフィに膝枕をしていた。

    「……なァウタ。最期におれのわがまま聞いてくれるか?」

    (…さいご……)

    「…うん!いいよ 言って!」

    「…おれの夢の果て。ウタも分かってるだろうけど、まだ完成してねェんだよ。…おまえの歌で完成させてくれねーか?」


    「うん 分かった!!わたしがあんたの"新時代"を完成させる!!だから____安心して。」

  • 8二次元好きの匿名さん22/12/16(金) 19:47:55

    ワクワク

  • 9愛ある罰22/12/16(金) 19:48:22

    「ししし…たのんだ……ぞ。」

    口角を上げたまま、ルフィの肉体はその役目を終えた。

    夕焼け空の下。
    草が風にゆらされて、中には風とともに飛んでゆく草の葉もあった。

    ……私の涙も悲しさも、飛んでゆけば気持ちがどれだけ楽になったことか……


    「___任せて。わたしがあんたの新時代を完成させてあげるから。」

  • 10二次元好きの匿名さん22/12/16(金) 19:49:52

    おお…もう読んでてつらいんだが…

  • 11二次元好きの匿名さん22/12/16(金) 22:19:33

    このレスは削除されています

  • 12二次元好きの匿名さん22/12/16(金) 22:19:43

    このレスは削除されています

  • 13二次元好きの匿名さん22/12/16(金) 22:20:48

    なんで急にチャージマンがいるんだよ!!!!?

  • 14二次元好きの匿名さん22/12/16(金) 22:21:43

    >>13

    ただの荒らしだから通報&お問い合わせした方がいいぞ

  • 15二次元好きの匿名さん22/12/16(金) 22:23:36

    >>14

    トリップついてないの見過ごしてたわありがとう

  • 16二次元好きの匿名さん22/12/17(土) 08:34:58

    新作早いなー

  • 17二次元好きの匿名さん22/12/17(土) 16:30:32

    保守

  • 18愛ある罰22/12/17(土) 21:19:37

    ……でも、歌うだけで世界を幸せにできるのかな…

    ルフィ達と一緒に世界を回ることで分かったことがある。
    海賊なんて関係なしに、国の土壌による食料問題や"奴隷"として監禁されていた人達が存在していることを。

    その人たちもまとめて救うには一体どうしたら……

    そんなことを考えて、わたしは動かなくなった肉体を担いで、わたしたちの家へと帰った。

  • 19愛ある罰22/12/17(土) 21:22:58

    家に戻ると、今も尚 口角を上げているルフィの亡骸をベッドに優しく置いた。
    それからは村の民家を周り、村の人達全員を招いて、最後のお別れをしてもらった。

    ____わたしはそこに参加しなかった。ルフィの前に再び現れるのは、わたしがあいつの新時代を完成させてからと決めたのだから。

    家が村の住民で溢れる中、わたしはひとりで外の壁に寄りかかり、未だにどうすれば世界中の人間を幸せに出来るかを考えていた。

  • 20愛ある罰22/12/17(土) 21:24:20

    それを常に考えすぎていたからか、それからの数日間の記憶はほとんど無かった。

    …そんなわたしが考え込むのをやめたのは、”小さな英雄”。コビー君と、彼の部下との電伝虫の会話を聞いた時だった。

    彼は”ナミが作った世界海図”のおかげで”元奴隷”や”海賊に島から連れ出された”人達を元の家に、安全に返すことができるようになったと喜んでいた。

    ____そうだ!!これだよ!!

    突然のわたしの叫びに、小さな英雄は驚いて姿勢を崩した。新組織の創立者だというのに、こういう所は海兵時代と変わっていなかった。

  • 21愛ある罰22/12/17(土) 21:25:30

    ”元奴隷”や”海賊に無理やり連れていかれた人々”を返す船に乗船すれば、船の上やたどり着いた島々で歌うことで、世界中の人々を幸せにすることが出来るかもしれない!!

    そう考えたわたしは、ルフィの新時代を完成させるためにも、その船に乗船させて欲しいと懇願した。

    小さな英雄君は返答に少し時間を要したが、それでも乗船を許可してくれた。

    その船に合流するための小型船の出港は、明日の朝。

    夕方の時点で準備を済ませた わたしは、明日のために夜更かしすることなく、今日も”前まではルフィと共に眠っていた狭いベッド”に大の字で眠りについた。

  • 22愛ある罰22/12/17(土) 21:27:42

    ____タ。…ん…れよ!!

    ふわふわした意識の中で、誰かの声が聞こえる。

    その言葉は途切れ途切れで理解できなかったが、返しの言葉は即座に浮かんできた。

    ____うん。がんばるよ!!

  • 23二次元好きの匿名さん22/12/18(日) 08:51:13

    保守

  • 24二次元好きの匿名さん22/12/18(日) 14:10:32

    age

  • 25二次元好きの匿名さん22/12/18(日) 20:20:24

    保守

  • 26愛ある罰22/12/19(月) 06:42:11

    本日再開します。

  • 27二次元好きの匿名さん22/12/19(月) 15:50:23

    期待

  • 28愛ある罰22/12/19(月) 17:52:14

    翌朝。

    ____”おはよう”。

    それを聞いて欲しい人も、その言葉を返してくれる人もいないのに、わたしはベッドの上に置かれた枕に向かって口を開いた。

    ____さて!朝ごはんを作るか!!

    ____________

    うん!!今日も”作りすぎた”けど、二人分も食べれば元気がみなぎるね!!

    さっそく、港にいるコビー君の元に向かおうかな!!

  • 29愛ある罰22/12/19(月) 18:06:35

    ____あっ。

    扉のノブに手をかけた時、壁にかけられていた麦わら帽子が目に入った。

    それは、ルフィがシャンクスから預かって、二人が再開した時に”正式に”あいつのものになった帽子。

    そういえばルフィはこの村に帰ってから、1度も海に出ていないから”自分で変えた今の世界”を直接見た事がなかったんだっけ。

    ……なら、わたしと一緒に。
    あんたが変えた世界を見渡そうね。


    少しホコリがかかった麦わら帽子に手を伸ばして、わたしはそれを頭に深く被せた。

  • 30愛ある罰22/12/19(月) 20:26:49

    必要なものを全て持ち出して、わたしは外から扉を閉めようとした。
    扉を閉めるために振り返れば、二人で過ごした部屋が見える。

    …少しの期間だったが二人で楽しく暮らした部屋を見ると、思い出がいくらでも湧き出てきた。

    ……わたしは”いってきます”の言葉をかけて、思い出がいくらでも溢れるこの家を、扉を閉めることで塞いだ。

  • 31愛ある罰22/12/19(月) 20:28:40

    港にはわたしたちの見送りのために、既に村中の人間が集まっていた。

    村中の人間たちに、かけられた言葉を返しながら、コビー君が既に乗っていた小さな漁船に乗り込んだ。

    わたしが乗り込むと、漁船は海へと漕ぎ出した。

    ____それじゃあ みんな!!行ってくるね!!

    応援してくれる村の人たちに大きく手を振って、わたしの新しい旅が始まった。

    ____”新時代”を わたしは完成させる!!!!

    大切な人との誓いを胸に抱いて。

  • 32二次元好きの匿名さん22/12/19(月) 20:32:30

    ルフィの麦わら帽子を被って旅に出るのいいな

  • 33二次元好きの匿名さん22/12/20(火) 03:19:32

    ほし

  • 34二次元好きの匿名さん22/12/20(火) 07:12:17

    保守

  • 35愛ある罰22/12/20(火) 11:41:26

    ____海へ出てから数時間。
    乗り込んだ漁船は、今まで監禁されていた人たちを乗せた船が停泊している、近くの島へとたどり着いた。

    共に乗船していた”小さな英雄君”は、新世界にある新政府の本部に戻るというのでここでお別れになった。

    「……では、本部に戻らなければならないので、ぼくはこれにて失礼します。何かわからないことがあれば、既に乗船している護衛の方たちに聞いてください。」

    「…うん。少しの間だったけど、一緒にいて楽しかったよ!今の世界をより平和にするためにお互い頑張ろうね!!」

    「ぼくも、あなたたちと一緒にいられたあの時間は、一生の宝物です!……それとウタさん。」

    「その麦わら帽子。良く似合いますよ!!」

    「……ありがとう!!!!」

    小さな英雄は、今の彼の役職には似合わない、小さな漁船で新世界へと帰還した。

  • 36愛ある罰22/12/20(火) 11:42:27

    早速わたしは、監禁されていた人たちが乗っている政府の船の前に足を運んだ。

    …おおきい。軍艦二隻を並べても、まだそれよりも、一回り大きい…

    それでも、今まで監禁されていた全ての人間が乗っている訳では無いという。
    わたしが乗る予定の船は”4番”で、この船は全部で10隻あるようだ。

    だからわたしは乗組員の人に頼み込んで、他の船に乗っている乗組員の人たちと繋がる電伝虫を使って、わたしの歌声をすべての船内に届くようにしてもらった。

  • 37愛ある罰22/12/20(火) 11:43:58

    かつて囚われていた人々を介抱している、乗組員の人たちも元気があまり無かったが、”それ以外の人たち”はもっと元気がなかった。

    ……それも当然か。今まであの人たちが受けた仕打ちを考えると、”ようやく帰れる”って頭でわかっていても素直に喜ぶことができないんだろうね。
    ……心に深い傷を負っているのだから。

    だからこそわたしはここに乗り込んだんだ!!
    ”あのライブの日”に、わたしの歌声を聞けなかっただろうこの人たちに、今度こそわたしの歌を届けて、心を満たしてみせる!!!!

  • 38愛ある罰22/12/20(火) 11:45:02

    乗組員の人から各船へと繋がる連絡用電伝虫を受け取り、わたしは歌い始めた。

    【⠀🎶〜〜____ 】

    歌声に能力を乗せて、囚われていた人たちを楽しませるために、歌の世界に招き入れてみた。

    すると、人々は次第にほんの少しだけだが笑顔になり、小さな子たちは近くに舞い続ける蝶や花に興味津々だ。

    このまま歌の世界で心を癒せれば、”ルフィの新時代”で、元の島にいる家族や友人とともに、楽しく生きれるようになるだろう。

  • 39愛ある罰22/12/20(火) 11:45:59

    わたしは何日も何日も続けて歌い続けた。
    人々の心が回復して、お話をできるようになったら、電伝虫でその人とお喋りをするようにもなったんだ。

    …嬉しかったなァ。

    ”あなたの歌に救われました”
    ”心が痛くなくなったのは久しぶりだった!!”
    ”おねーちゃんありがとー!”

    いろんな人たちが幸せを取り戻してくれた。



    ”ずっとこんな世界で暮らしたいな〜”

    「……ごめんね。ずっとは無理かな。
    …でも!!新しい”外の世界”は前とは違って平和な世界だから!!
    そこで家族や友達と暮らした方が絶対楽しいよ!!」

    ”……わかった。おねーちゃんがそう言うなら…”

  • 40愛ある罰22/12/20(火) 11:47:09

    この船での航海を始めてから何日経ったか忘れたけど、ようやく一つ目の島にたどり着いた。

    この島が故郷の人たちは乗組員とわたしに”元気に”お礼をして、”幸せそうに”街の方へと向かっていった。

    ……どうやら、補給には時間がかかるようだ。
    ____それなら!!

    わたしも街の中心街へと走り出した。
    そこでやることなど決まっている!!

    「どうもーー!!通りすがりのウタだよ!!いまからゲリラライブを始めるから、みんな聞いていってね!!!!」

  • 41愛ある罰22/12/20(火) 11:48:28

    街の中心にある噴水の前で、始めたライブは大成功!!
    多くの人たちが集まってわたしの歌を聞いてくれた!!

    ……”能力を使ったのか”って?
    使う必要なんてないよ。船の中とは違って、ここは平和な”ルフィの新時代”なんだから。

    平和な新時代に”わたしの歌の世界”は必要ないんだよ!!

  • 42愛ある罰22/12/20(火) 11:49:18

    そろそろ食料補給が終わったかな?

    「みんなー!!今日は聞いてくれてありがとう!! わたしの歌声をまた聞きたくなったらいつでも”この番号”に連絡してね!!」

    麦わら帽子にしまっていた”わたしの電伝虫の番号が書かれたメモ”を渡して、港へと走って戻った。

    ……ルフィ、見てた?
    これがあんたの創った、今の世界の姿だよ!!

  • 43愛ある罰22/12/20(火) 16:07:20

    ____あれから数週間後。
    人で密集していた船内は、次々と人たちが無事に”笑顔”で故郷の島に帰ったことで、少しづつ広くなっていた。

    いつからか、他の船内でもわたしの歌を聞いている時以外も、人々が笑顔になっていることを乗組員から聞いたわたしは、歌に能力を乗せることをやめていた。
    もう船内でも、わたしの能力は必要ないと判断したからだ。

    実際、わたしが能力を使わなくなっても、誰も何も言わなかった。

    それに、電伝虫から聞こえる”いつも歌ってくれてありがとう!!”という喜びの感情で放たれた言葉は昨日も今日も、流れていた。

  • 44愛ある罰22/12/20(火) 16:50:56

    ____さらに数ヶ月後。

    たどりついた島々で毎回歌ったからか、わたしの歌を望む人たちは以前よりも多くなった。
    いままでわたしの歌を聞いたことがなかった人たちもいたんだけど、みんなが喜んで歌を聞いてくれたのは嬉しかったな〜。

    それに、他の船は全ての人間を返し終わって、わたしたちの船内は残り一人だけとなったんだ!!

    …そして今。その子の元いた島に、たどり着いた。

  • 45愛ある罰22/12/20(火) 16:51:27

    ”今までありがとう!! おねーちゃんの歌は忘れないよ!!”

    「うん!! 何かあったら、わたしの電伝虫に連絡してね!!」

    こうして、わたしたちは最後の乗船者を返し終えた。
    ……これでもう、家に帰ることができない人は、この世界には居ないだろうね。

    「…じゃあ、また”いつもの”やってくるねー!!」

    補給を始めた乗組員たちに言い残して、いつも通り住民たちに歌を歌うために、わたしは街の中心街へと走り出した。

  • 46愛ある罰22/12/20(火) 16:53:47

    【⠀🎶〜〜🎶____。】

    「みんな!!今日はありがとう!!これがわたしの電伝虫の番号だから!!定期的に電伝虫でライブをするから、またわたしの歌を聞きたくなったら、ここにかけてね!!」

    やりたいことを終えて、街から港へと向かおうとした時、珍しく声をかけられ引き止められた。

    ”……ウタ…ちゃん?”

  • 47愛ある罰22/12/20(火) 16:56:07

    わたしの名を呼び、引き止めたのは、年老いた女の人だった。

    「? そうだけど?」

    ”……あなた、親は居る?”

    「うん!!血は繋がってないけど、大好きなお父さんがいるよ!!」

    ”……そう。…ねぇ、もしかしたらあなたの両親はこの島の____”

    ドォーーーーン!!!!

    ……!?

    突如港から爆発音が鳴り響いた。

    「ごめん おばさん。わたし港に戻らないと!!!!」

  • 48愛ある罰22/12/20(火) 17:44:34

    港へとたどり着いたわたしは、自分の目を疑った。

    ……まだ居たのか。
    ”略奪と殺しを楽しむ”海賊が!!

    海賊は、政府の船だけではなく、他の船も襲うことで、物資を盗んでいた。

    『……ん!?おまえ、あの歌姫ウタか? こいつはいい!!こんな所で、いい”宝”が手に入るとはな!!』

    ”ウタさん逃げて!!こいつは”レベル6”の元囚人です!!”

    近くで倒れている乗組員の人は、自分の腹を裂かれたにも関わらずに大声を出して、わたしに逃げるように叫んだ。

  • 49愛ある罰22/12/20(火) 17:46:16

    ……目の前の光景を受け入れたくなかった。


    港は”人の悪意”によって燃え上がり、

    島の人の大切な物資は海賊が奪い去り、

    わたしの横では善人が死にかけている。


    ここは、もう”ルフィの新時代”なのに……


    あいつが創ったこの世界で、こんなことは、許せない。


    「……」


    ____許せない!!!!


    「……」ギロッ!!!!

  • 50愛ある罰22/12/20(火) 17:46:46

    ……よく分からないけど、いつの間にか海賊たちは泡を吹いて倒れていた。
    それでも怒りで思考が止まっていたわたしは、海賊を睨み続けていた。

    「……はっ!!そうだ 早く救助呼ばなきゃ!!!!」

    ____と、振り返って街へと向かおうとしたが、既に救助隊は港に来ていた。

    ”…ウタちゃん!!無事だったんだね!!よかった〜”

    来ていたのは救助隊だけではなく、先程のおばさんも慌てて、わたしの元に駆け寄った。

  • 51愛ある罰22/12/20(火) 17:47:29

    「わたしは平気だよ。それよりごめんね。港、少し燃やされちゃった……」

    ”そんなのいいんだよ!! またあなたが海賊に攫われるんじゃないかと、わたしは心配で!!”

    「……?どういうこと?」

    ”あのね、あなたの実の両親は、この島の____”

    ……約二十年前、この島は海賊に襲われたようだ。

    その時に居なくなったのにも関わらず、亡骸が見つからなかった”紅白髪の赤ん坊”が一人いたという。

    その赤ん坊が……わたしのことのようだ。

  • 52愛ある罰22/12/20(火) 17:49:17

    ”あなた、帰る場所はあるの?無いならこの島に____”

    「……ごめん。」

    「帰る場所ならもうあるんだ!!期間は短かったけど、わたしにとって大切な人と暮らした家。」

    「そこが”わたしの帰る場所”なんだ!!」

    ”……そうなんだね。あなたが幸せならよかった!!きっとあなたの両親も喜んでいるわ。”

    わたしの元気な姿を見たからか、おばさんは心を満たされ、幸せそうに街へと戻って行った。

  • 53愛ある罰22/12/20(火) 19:30:31

    一難去ってまた一難。

    ”オギャアアァァ”

    政府の船の乗組員が、海賊船から押収した宝箱から、今度は赤ん坊の泣き声が聞こえてきた!!

    「よしよし もう泣かないで……」

    宝箱の中で泣きじゃくる黒髪の男の赤子を、わたしは咄嗟に抱き上げて、あやすように揺すった。

    オギャアアァァ!!!!

    ……泣き止んでくれない。

  • 54愛ある罰22/12/20(火) 19:31:29

    えーっと、子守唄を歌えばいいのかな?

    【⠀おやすみ〜赤ちゃん〜🎶 し〜ずか〜にね〜♪】

    キャハハ!!!!

    ……ようやく泣き止んでくれた。
    可愛い笑顔だなァ……

    後ろでは、既に乗組員が海賊が前に襲ったであろう島と連絡をとっていた。

    ”……ウタさん。その子の親は____”

    ……どうやら、この子の親は海賊に襲われて、もうこの世にはいないようだ…………

  • 55愛ある罰22/12/20(火) 19:32:07

    「ごめんなさい。あなたの両親を守れなくて。……約束するよ。あなたの両親の代わりに、わたしがあなたを守るからね。」

    決めた。
    この子を連れて、世界中を旅しよう。

    全ての島を旅をすることで、ひとつ残らず全ての島の問題を解消して、世界を平和にしよう。
    そして、平和になった世界をこの子に見せてあげるんだ。



    ……この子を見ていると、脳裏にある情景が浮かんでくる。
    はるか昔、宝箱に入った自分を驚いた顔で覗き込む、シャンクスの顔が。

  • 56愛ある罰22/12/20(火) 19:52:03

    移動しやすい別の船をコビー君から借りて、わたしは再び世界中を旅した。

    島にたどり着くと、今まで通り歌うだけではなく、住民が抱える、その島の問題を解決した。

    植林に伐採。耕しに収穫。
    色々な体験を、様々な島で住民とともに行った。

    エレジアでは、牛の飼育しかやったことがなかったから、それらができるかどうか不安だったが、どれも失敗することなく住民の手伝いをすることが出来た!!

  • 57愛ある罰22/12/20(火) 19:52:27

    ……航海を初めて数年。

    わたしたちは、帰るべき場所である、フーシャ村へと帰還した。

    ……そう!!ここに帰ってきたってことは完成したんだ!!

    ”ルフィとわたしの新時代”が!!!!

    ルフィが元となる基盤を創って、わたしが仕上げたんだから、わたしの名前を入れてもいいよね。

    帰ってから、久しぶりに会う村の人たちにあいさつを交わしてから、わたしは子どもを連れて、二人で過ごしたルフィの家ではなく、丘の上にあるルフィのお墓へと向かった。

  • 58二次元好きの匿名さん22/12/20(火) 19:54:06

    このレスは削除されています

  • 59愛ある罰22/12/20(火) 19:55:57

    「……ただいまルフィ。 まずは、この帽子返すね。」


    「その帽子をかぶって世界中を旅したんだよ。……見ていてくれたかな?」


    ”ここがパパのお墓?”


    「パッ…パパぁ!? 違う違う!!ママの大切な友達のお墓だよ!!」


    「さっ。もう夕方だから、家に帰ろうね。美味しいお肉食べさせてあげるから!!」


    ”わーーい!!”


    黒髪の少年の手を引いて、わたしたちはルフィの家へと向かった。

  • 60愛ある罰22/12/20(火) 19:57:35

    ____深夜。
    わたしはこの子を眠らせると、ルフィの墓の前に佇んでいた。

    …………ねぇルフィ。

    新時代はどちらか一人が先に創るものじゃなくて、一緒に協力して創るものだったんだね。

    ……ねぇルフィ。

    今の世界は、あんたが描いた通りの世界になったのかな?

  • 61愛ある罰22/12/20(火) 20:00:35

    ……ねぇルフィ。



    この世界は、”ルフィとわたしの新時代”なのに、どうして……


    ……どうして、ルフィが居ないの…………




    ……ねぇルフィ。


    やっぱり寂しいよォ…………


    彼女はどんなに寂しくても、それを表に出さず、明日も明後日も世界中に、笑顔で歌を発信していました。


    ________________


    結局、”ルフィの新時代”は完成しませんでした。

    なぜなら、一番笑っていて欲しい人が、明日も明後日も、心の底から笑えていないからです。


    bitterEND。

  • 62二次元好きの匿名さん22/12/20(火) 20:09:39

    涙出るわ・・・。
    ピースがひとつ足りない新時代ってやつか。

  • 63二次元好きの匿名さん22/12/20(火) 20:18:12

    ウタちゃん生存√だとルフィ短命なの辛いよな…
    トラ男なんとかして…

  • 64愛ある罰22/12/20(火) 20:26:09
  • 65二次元好きの匿名さん22/12/20(火) 23:27:26

    >>64

    辛い…

  • 66二次元好きの匿名さん22/12/20(火) 23:29:39

    幸せエンドもお願いします、、、

  • 67二次元好きの匿名さん22/12/21(水) 09:40:08

    >>66

    ルフィが亡くなってるという前提条件がある以上、どうやっても心の底から幸せになれるルートが見えない...

  • 68愛ある罰22/12/21(水) 12:29:49

    >>66

    ……………………ごめんなさい。思いつきません。

  • 69二次元好きの匿名さん22/12/21(水) 12:36:50

    本人は友達って言ってるけどどう見てもウタから矢印が出てるし幸せルートは無いんだ…でもウタの息子がいるから不幸でもないまさしくBitterな感じが良いのだ

  • 70二次元好きの匿名さん22/12/21(水) 12:44:50

    パイレーツ・オブ・カリビアンのウィルとエリザベスを思い出したけど向こうは10年に1度は会えるか…

  • 71二次元好きの匿名さん22/12/21(水) 23:12:32

    幸せエンドを作らせるまで保守するのだ

  • 72二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 03:47:39
  • 73二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 14:56:26

    幸せエンドを描かせたいわけじゃないが、良いスレなので上げさせて頂く

  • 74愛ある罰22/12/22(木) 18:08:37

    人によってはハッピーエンドです。

    風のゆくえSS本編ルートです


    ウタが旅を終えてから何ヶ月か後

    今日もウタは今を生きる人々をより幸せにするために、全世界に向けて配信をしていました


    「みんな!!今日も見てくれてありがとうね!!それじゃ またあした!!!!」


    ピッ…


    「…はぁ……最近笑顔が長続きしなくなってる…このままだとみんなに”幸せ”じゃなくて”不安”を与えてしまうかも」


    何としてもみんなの前で笑顔を繕いたいウタは一度だけワライダケに頼ろうとしましたが、録画したものを見返すと笑顔が不自然すぎたため配信では使うことはありませんでした


    「はぁ…もう遅いし夕飯の準備をしよう」

    コトコトコトコト……


    ”ママ!!ただいま!!”

    「おかえり。今日はどこまで冒険してきたの?」


    彼女が拾った赤子

    その成長した姿の少年は、今日もフーシャ村の自然を冒険してきたようです


    ”森の中!!”

    「もう…そういう危ないところはもう少し大きくなってからっていつも言ってるでしょ」

    ”…うん”

    「…はい この話はもうおしまい!!夕飯がもう少しでできるから部屋で待っててね」

    「……それと またあんたを見たいって人が多いから一緒に配信しよう」

    ”やめとく。配信より冒険がしたい!!”…
    telegra.ph
  • 75二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 02:09:23

    >>74

    うーんやっぱりほろ苦い

    でもそこが好き!

    素晴らしいssをありがとう

  • 76二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 12:31:47

    >>74

    語り継がれる…

  • 77二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 12:33:38

    うーん新時代は手に入ったけど幸せは絶対得れないの辛い

  • 78二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 00:15:24

    >>77

    幸せは沢山手に入れてるぞ

    一番欲しかった幸せが手に入らないだけで

オススメ

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