【SS・CP注意】ウタ「ルフィが私を避ける…」

  • 1122/12/17(土) 23:33:38
  • 2二次元好きの匿名さん22/12/17(土) 23:34:17

    続けて

  • 3122/12/17(土) 23:34:27

    「はぁ……」

    これで何度目のため息だろうか。
    数えればその分更に憂鬱になりそうなのでやっていないが、恐らく10回は確実に超えているだろう。
    憎たらしいくらいに澄んだ海を眺めながら、ウタはため息の原因となっている人物の顔を思い浮かべる。

    「ルフィ…」

    現在ウタが乗っている船の船長。
    新時代を誓い合った幼馴染にして、つい数週間前には恋人という新たな関係へと発展した青年。
    そのルフィがどういう訳かここ最近はウタを露骨に避けるようになったのだ。
    一緒に釣りをしようと誘えば、急に眠くなったとか言って船内に引っ込む。
    食事の時に隣へ座ろうとすると、泡を食ったように皿の上のものを平らげ、ウタを残して食堂を後にする。
    島の探索に同行を申し出てみても、ウタの言葉を最後まで聞かずに船を飛び出して行ってしまう。
    一度や二度くらいならせっかちな奴で済ませられるだろうが、それが三度四度と続けば流石に気付く。
    ルフィは意図してウタとは一緒にならないようにしていると。

    「私…なんかやっちゃったのかな…?」

    自分でも気付かない内にルフィを怒らせてしまい、それであのような不自然な行動に出ているのだろうか。
    もしそうならば謝りたいが、今のルフィはウタとの会話すら避けている。
    ウタの方から話しかけても腹が減っただのなんだのと言って会話を強引に遮るのだ。
    これでは謝罪も何も無い。

  • 4122/12/17(土) 23:35:20

    「謝らせてもくれないの…?」

    謝罪の言葉も、仲直りの切っ掛けすら許しはしない。
    それ程までにルフィが怒っているのだとすれば、最悪恋人としての関係も終わるとなりかねない。
    晴れて交際を始めた時にはこんな事になるなど思わなかった。
    喧嘩なんて昔からしょっちゅうだし、自分達ならすぐに仲直り出来ると信じて疑わなかったのがこの様だ。

    「……」

    どうして、こうなってしまったのだろう。
    現状を嘆いてもルフィとの仲が修復されたりはしない。
    それにまだチャンスはある。
    今夜はルフィが船の見張りをする、つまり一人きりだ。
    流石に船長としての仕事を投げ出してまでウタを避けはしないはず。
    だからその時にルフィときっちり話をし、自分が何かしてしまったのなら謝る。
    とはいえもしこれでも駄目ならお手上げだ。

    「嫌だなぁ…別れたくないなぁ……」

    どうなるかは今夜のルフィの答え次第。
    それでも、もしもの可能性を考えると胸が苦しくなり涙が溢れる。
    ぐじゅりと鼻を啜り、一人寂しく肩を震わせた。

  • 5122/12/17(土) 23:36:21

    そうして夜。
    静まり返った船内の廊下を抜けて外に出れば、すぐに目当ての人物が見つかった。
    向こうもウタに気付いたらしく、あからさまに驚いている。
    咄嗟の反応だろうか、後退ったルフィへ駆け寄り彼の手を強く掴んだ。

    「お、おいウタ…」
    「ねえルフィ、最近私のことずっと避けてるでしょ」

    まどろっこしいのは抜きにしてストレートにぶつける。
    目を泳がせるルフィの顔をじっと見つめ、ウタは言葉を続けた。

    「教えて欲しいの。どうして私を避けたのかをルフィの口から」
    「そ、それは……」
    「私が何かルフィにしたから?私が気付いてないだけで、ルフィのこと傷付けたから?もしそうならちゃんと謝る」
    「ウタ……」
    「それとも」

    一度言葉を区切る。
    これを口にするのは恐い。肯定されれば立ち直れないかもしれない。
    だけど確かめなければならないと、自分を奮い立たせた。

    「私のこと…嫌いになった…?」
    「違う!!!」

    震えた声を掻き消さんばかりの怒声で、否定の言葉が返って来た。
    驚いてルフィを見つめると、バツが悪そうに目を逸らす。
    とりあえず嫌われてないと分かったのは嬉しいが、疑問はまだ残っている。

  • 6122/12/17(土) 23:37:15

    「じゃあ…どうして?」
    「それは……」

    口籠るルフィを、逃げないでと言わんばかりに力強く見つめる。
    とうとう観念したらしいルフィが重い口を開いた。

    「あのよ…おれこの間お前のこと怒らせただろ…?」
    「この間……あっ」

    思い当たるものはある。
    ルフィがウタを避け始める数日前、あるトラブルがあった。
    甲板のウタへいつもの調子で近付いたルフィがうっかり勢い余ってウタの胸を触ってしまったのだ。
    何をされたか理解したウタは顔を真っ赤にし、反射的にルフィの頬を引っ叩いた。

    その翌日にも事件は起きた。
    夕食後、椅子に足を引っかけよろけたウタへ咄嗟に手を伸ばし支えたのだが、偶然にも彼女の尻へと手が当たってしまったのだ。
    無論、ウタとてルフィが故意に行ったのではないと理解はしている。
    だからといって冷静さを保てというのは無理な話だ。
    またもや顔を赤くし絶叫、前日とは反対の頬へ平手打ちをした。
    その場は嫉妬やら何やらで怒り狂うサンジを周りが窘め、ルフィもわざとでは無かったのだし次は気を付ければ良いと言う事で話は落ち着いた。

  • 7122/12/17(土) 23:38:38

    ウタにとっては恥ずかしかったものの、そう何時までも後を引き摺るものではない。
    だがルフィにとっては違う。

    「あん時は何でわざとじゃねェのに怒られんだって思ったりもしたんだけどよ、でもそんぐらいウタが嫌だったんだなって考えると…
     もしまた同じ事が起きてお前にそんな思いさせるくらいなら、近付かねェ方が良いって思って…」

    異性へのボディタッチへ抵抗を感じるような男ではないが、胸や尻などを安易に障るべきではないことくらいはルフィも理解している。
    だから恋人関係にあり故意に引き起こした事で無くとも、ウタの嫌がる事をやってしまったという事実はルフィからしたら深刻に受け止めねばという思いがあった。

    「ウタ。おれは…お前が嫌がる事とか傷つくことは絶対にやりたくねェ。
     だからよ、お前と恋人ってのになったけど…もしまた同じ事が起きちまうくらいなら、おれウタの恋人やめた方が」

    ルフィの言葉は最後まで続かなかった。
    その先を言わせない、絶対に言わせてなるものかとウタが自らの唇でルフィの声を押し留めたからだ。
    突然自分の唇へと伝わった柔らかい感触にルフィは目を見開き、ややあって離れたウタを呆然と見る。

    「ウタ…」
    「ルフィ、私の話を聞いてもらっても良い?」

    被せるように言われ、戸惑いがちに頷く。
    するとルフィの目の前で、ウタは深々と頭を下げた。

  • 8122/12/17(土) 23:39:33

    「…ごめんなさい。ルフィがそんなに悩んでるって全然知らなくて。あの時も…わざとじゃないって、ルフィは悪気があってそんな事する奴じゃないって分かってたのに…
     叩いたりして本当にごめんなさい……」
    「お、おい!謝んなよ…!悪いのは全部おれで…」
    「でも」

    顔を上げたウタを目にし、ルフィは何も言えなくなる。
    力強く自分を見つめていた瞳は潤んでおり、ポロポロと涙が零れ落ちていた。

    「別れるなんて言わないで…恋人やめるなんて……そんな事言わないで…!謝り足りないなら何百回でも謝るから!だから……」
    「っ!」

    頬を濡らして懇願するウタの姿に胸が締め付けられ、堪らず抱きしめる。
    胸元でしゃくりを上げるウタに、ルフィは自分の行いの浅はかさを後悔していた。
    ウタが傷つき悲しむ顔は一番見たくないものだ。
    なのに良かれと思った自分の行動のせいで、大切な恋人が涙を流している。
    苦い後悔の味を噛み締めながら、ウタをあやすように背を優しく撫でる。

    「もう謝んな。ウタは何にも悪くねェんだ。…ごめんな、馬鹿なことして……」
    「ルフィ……!私…ルフィと別れたくないよぉ……」
    「別れねェ。もし他の奴らが何言ってきても絶対離れるもんか。おれはウタと一緒にいてェ」
    「うん…!私も…私もルフィと一緒じゃなきゃやだよ…!」

    ウタが泣き止むまでずっと抱きしめ続ける。
    暫くして落ち着いて来たウタが顔を上げ、ルフィと視線を合わせる。
    まだ少し赤いものの、既に涙は止まっていた。
    だがルフィから離れる気は無いらしく、背中に回した手は依然として力強いまま。
    頬を赤く染め、期待と不安の混じった瞳が訴えかけて来る。
    恋人がこの状況で何を求めるのかが分からない程、ルフィは鈍くない。
    一度頷き、自分の唇をゆっくりとウタに近付けた。

  • 9122/12/17(土) 23:40:43

    「んっ……」


    今夜は二度目となる恋人とのキスに、ウタの思考はたちまち蕩け出す。

    夜風でも冷ませないくらい自分の体が熱くなっているのが分かる。

    名残惜しそうに唇を離すと、気恥ずかしそうにしているルフィと目が合った。

    ルフィのこんな顔を見れるのは恋人の特権だろう。

    嬉しそうに微笑み、ゆったりとした口調で告げた。


    「あのねルフィ…あの時は恥ずかしくて叩いちゃったけど、ルフィに触られるのが嫌ってことじゃないの。

     ただ私も誰かと恋人になるのとか、こうやって抱きしめ合ってキスするのも全部ルフィが初めてで…だから、この先はまだちょっぴり恐い気持ちがあるんだ」


    「でも、いつか必ず覚悟を決めて、ルフィともっと色んな事をしたいって思うの嘘じゃないから…だから…」


    「こんな面倒な私だけど、これからもよろしくお願いします。私の大好きなルフィ」



    終わり

  • 10122/12/17(土) 23:41:04

    以上。お付き合いありがとうございました。

  • 11二次元好きの匿名さん22/12/17(土) 23:42:29

    ありがとう…

  • 12二次元好きの匿名さん22/12/17(土) 23:42:32

    甘酸っぱくて良かったです

  • 13二次元好きの匿名さん22/12/17(土) 23:42:59

    最高だったぜ…

  • 14二次元好きの匿名さん22/12/17(土) 23:43:07

    今はただ…ひたすらに感謝を…ありがとう!

  • 15二次元好きの匿名さん22/12/17(土) 23:46:10

    ウタのことが大事過ぎて臆病になってしまったルフィも思い詰めて泣いてしまうウタも最高でした…幸せになるんだぞ

  • 16二次元好きの匿名さん22/12/17(土) 23:46:18

    名作がまた名作を生む…

  • 17二次元好きの匿名さん22/12/17(土) 23:47:20

    恋愛初心者の初々しいかんじがたまりませんね

  • 18二次元好きの匿名さん22/12/17(土) 23:58:50

    このレスは削除されています

  • 19二次元好きの匿名さん22/12/18(日) 00:01:54

    最&高
    我儘を言えば、恋人じゃなくてredぐらいの関係でも見てみたい
    恋人と幼馴染だと、また接し方とか仲直りの仕方とか変わりそうで気になる

  • 20二次元好きの匿名さん22/12/18(日) 00:04:55

    こんな少しだけすれ違いして仲直りして一生絆を固めていって欲しい

  • 21二次元好きの匿名さん22/12/18(日) 00:39:56

    🍢  🐉

    🍲

    🔥

    >>10

  • 22二次元好きの匿名さん22/12/18(日) 00:49:14

    甘酸っぱくて最高でやんした……

    恋人になったけどボディタッチはまだ恥ずかしい
    相手が嫌がることはしたくねェで無理して距離とっちゃう
    こういう気持ちのすり合わせをして未熟なふたりが恋人として成熟していくんすね……

  • 23二次元好きの匿名さん22/12/18(日) 01:56:59

    いいSSからいいSSが生まれ放題だ!
    ありがとよスレ主とその元となったスレ主!

  • 24二次元好きの匿名さん22/12/18(日) 03:17:21

オススメ

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