- 1二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 16:13:15
- 2二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 16:13:44
お試しに一つ。
精霊の光が虚ろぐ月のない宵闇に。地平線から西へ向けて吹いた風は緑色の香りがした。
揺れる彼女の髪と、心地の良い静寂。冒険の残滓。
岩に固定し、音を立て始めた鍋にチーズを入れて、長い棒で肉と絡めてセージやバジルなどの香草で臭みを消す。
火花が散り、水が煮えて肉が溶け、出汁の効いた香草の香りが立ち上がる。
しばらくそれを混ぜ込んだ後、彼女が取り出した大きめの皿に、慎重に出汁を吸って蕩けた肉を載せた。
彼女は弾力のあるはずのワームの肉を、焼き入れたダガーできれいに切り裂き、切断面と肉汁を得意げに眺めてから、刃を水を含めた布で拭き、鞘に戻す。
いただきます。
今日倒したワームと兎の姿に感謝しながら口に運び、弾力と溶けるような味わいを楽しんで。空と星を眺める。
手の届きそうにもない星と深い夜。故郷は遙か遠く、2人とも、帰る場所もゆく場所もない。
風のように風聞を当てに、私たちは明日も世界を巡るのだろう。 - 3二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 16:26:59
夜にしか現れない妖怪というものがいる。
彼らは日の光が苦手なのか、それとも「昼には出られない」という呪いがかかっているのか、夜にしか現れない。
田園地帯に住んでいた子供の時分、特に日暮れが早い季節になると、友達と遊んだ帰り道に日が暮れかけてしまうことがままあった。
そんな時、私は祖母から伝え聞いた夜にしか現れない妖怪のことを思い出し怖がったものだ。
どんな悪さをするのかは知らなかったが、現れること自体が不気味で嫌だったのだ。
しかし、ある時、昼と夜の境界線が曖昧であることに私は気付いた。
彼らは曖昧な昼と夜の境界線の向こう側で、世界が夜に沈むのを、いまだに去らない昼の残滓におびえながらじっと待っているのではないか?
想像したその姿は訪れる夜におびえる私の鏡写しのようで、姿の見えない彼らに少し親しみが持てたのであった。 - 4二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 16:27:59
- 5二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 16:30:19
- 6二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 16:35:01
- 7二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 16:35:57
どんな悪さをするか解らない不気味さから、少し考えて
夜におびえる私と、昼におびえる彼らへの対比につなげて占める。いいなあ。
落ち着いた語りだしと、祖母の話しにおける郷愁に、日本の古い田園風景を重ねました。
- 8二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 16:39:18
- 9二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 16:39:38
お腹空いてたんです…
- 10二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 16:41:43
- 11二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 16:43:30
ああ、あるある。何となく通りを歩いているとおいしそうな料理や香りに惹かれる感じ。
ただいま、と言う相手も含めてちょっとしたエッセイやホラーの導入みたい。
立ち上がる煙と懐かしいカレーの香りに足が引かれて、つい。とか入れるとちょっとフックになるかも?
- 12二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 16:54:01
雨の匂いがする。
ふと気がついて窓の外に視線を向ける。薄暗い雲を想像した私の思いとは反して、外には夕焼けの鮮やかな光が満ちていた。
ぽつりと水滴が窓に当たって濡れる。天気雨、と小さく呟いた。ぽつりぽつりと次々落ちる雨粒が、空を写してオレンジ色にきらきら輝く。
小さな奇跡みたいな光景を目にして、あなたのことを考える。美しいものはいつだって、あなたとともに見ていたい。 - 13二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 16:54:29
いつも通り、昼過ぎに起きてまとめサイトやら掲示板を見てクーラーの効いた部屋で暇潰しと現実逃避をしてるとふと窓の外が赤みを増してることに気がついた。
いつもなら外の現実などに興味も示さず雨戸を閉め、自室と外の結界を強めるだけだ。クーラーは効きっぱなしの為、暑苦しくもない。
なのに赤黒く変色していく外の世界から目が離せなかった。
あいにく飛蚊症と低い視力では到底美しい景色とも言えなかったし、そもそも自室の外は畑に面してるとは言えありきたりな住宅街の景色だ。
何故自分はこの景色から目を離せないのだろう?と自問し、自分は景色を見ているのでなく闇を見ているのだ、と気が付いた。
失われていく日の光と一緒に自分も消えてしまいたい、あるいは強まっていく夜の闇に飲まれてしまいたいのだと。
ふと散らかった部屋の隅にビニール紐で作った輪っかを見つけ、それがあの赤黒い世界の正体なのだと気がついた。 - 14二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 16:54:29
少女漫画チックにしたかった
風景描写苦手や - 15二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 16:57:54
- 16二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 17:05:04
青春だね。最後に甘酸っぱくなった
- 17二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 17:08:17
- 18二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 17:10:55
- 19二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 17:13:43
がちゃがちゃ、ばたん、がちゃん
しんとした室内に突如鳴り響いたその音に、ほとんど眠っていた身体をはっと起こした。
急いで音の方へ駆ければ、今朝見送った同居人たる彼女と目が合う。
随分遅かったじゃないか。
すっかり暗い窓の外を思い起こし、少し憤りながらながら歩み寄ると、彼女はすいと手を伸ばして私の身体を持ち上げた。
すっぽりと腕の中に収まった私の背を撫でて、彼女は私の名前を口にする。
「みーちゃん、ただいま」
くたびれた声でそう言った彼女の頬に舌を伸ばす。
ごろ、と喉を鳴らせば、くすぐったそうに笑った声が髭を揺らした。 - 20二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 17:14:30
- 21二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 17:15:05
では、私も稚拙な文章ですが1つ(上手く書けなかったと思う…)
夕焼け。昼と夜を分かつ境界にして使者である。
金色に輝く空の中、赤い長髪を靡かせて空の果てへと駆けていく。
夕焼けには力がある。生命を揺さぶる魔力とも言える力が。
その魔力が常に大気の底を這い蹲る生命を嘲るように照らしつけ、心を儚さにむせさせる。
遊び疲れた子供たちは夕焼けに母を探して、帰路に着く。
くたびれた背広には明日への気力を焼き付ける。
いたいけな少女たちには時の儚さから来るエロスを溢れさせる。
夕焼けは生きとし生けるもの、全てをたぶらかし、誘惑しながら西の空へと逃げていく。
そして、金色の時は過ぎ、微かな青の時間を作り出す。境の終わり、闇への入口。青に見送られ、黒に抱かれる。
あの日、あの時、過ごした日々の中にある。空に抱いた初恋はいつかどこかで会えるのか。 - 22二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 17:18:29
- 23二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 17:19:13
- 24二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 17:22:57
- 25二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 17:24:22
首吊りに肯定型と否定型があることを初めて知った
- 26二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 17:27:02
みゃあ、と障子の向こう側から声を掛けられた。木槌で柱を叩いたような、身の詰まった響く声である。夕飯の片付けを一旦止めて縁側へ出てやると、多少ごわついた毛並みが足を擦る。
「お前さん、今年も来たのか」
声を返すとまたみゃあと鳴く。斑の毛並みを夕暮れに染めて、猫は行儀よく丸まった。
夏至を過ぎた日の夕方にだけ、その猫は庭へ忍び込んでくる。この時節にだけ餌に困るのか知らないが、付き合いはいつの間にやら四年にもなっていた。挨拶代わりに喉でも掻いてやろうと指を出したら胡乱な瞳で避けられた。ア、手が濡れている。そういえば皿を洗っているところだった。
ひぐらしの声が降る庭に、猫が一匹人一人。秋風吹いて柳が揺れて、逢瀬が止む日までの話。指三本分間を開けて、今年も夏の終わりを共に見つめようと思う。 - 27二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 17:29:20
- 28二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 17:34:55
- 29二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 17:38:24
何起こったのか気になる語り口でいいね
- 30二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 17:40:06
- 31二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 17:40:11
- 32二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 17:42:35
「トレーナーさ~ん。ご飯出来たよ~」
セイウンスカイの呼ぶ声。俺は明日の練習内容をまとめたノートを閉じてリビングへと向かう。
「おお~どれも美味しそうだな!」
テーブルの前に並んだ数々の料理。セイウンスカイがこれほど料理が出来るとは知らなかった。
「お褒め頂き恐縮で~す。トレーナーさんのお口に合うといいんだけど」
俺は席に着くと一通り料理を皿に取り、口に運ぶ。
「うん!どれもすっごく美味しいぞ!スカイは料理上手だったんだな」
「へへ~そんな事ないですよ~これくらい。セイちゃんもたまにはやるでしょ?」
当たり前のように言う彼女の手に幾つもの絆創膏が巻かれている。ああ、また俺の知らない所で隠れて努力していたんだな。俺は内心感心しながら料理を口に運ぶ。この子を担当出来た俺は本当に幸せ者だ。 - 33二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 17:50:53
- 34二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 18:03:01
祖父曰く。告白をするには、赤い月の夜は止めておいた方が良いらしい。
ましろく煌々と照る月は狂気を呼ぶのだと。その月が陰る赤い月の夜は、女はシラフになってしまう、と。
告白なんざ、狂ってなきゃ了承なんて出来んもんさ、ましてや俺に似ず良い面構えじゃあないんだからなおの事だ……なんて。
久しぶりに赤い月だから、思い出したのさ。もう祖父の顔なんて覚えてないんだけどね、それだけ何だか覚えている。
……え? ああ……うん、ちょっと時間をくれないか。お酒を取ってくるよ。
君は聞くだけだからシラフで良いかもしれないが、僕はシラフじゃ言えないよ。 - 35二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 18:03:48
うう、お腹が苦しい。もう少しすれば夕食だというのにおやつの食べ過ぎでお腹がいっぱいだ。
これも賞味期限が近づいた菓子パンがいくつもあったのが悪い。いつもなら食欲を誘う焦げた醤油の匂いにも顔を顰めてしまう。
腹ごなしに少し外を歩いてこよう。エアコンの効いた家を出てまだむわりとした生温かい夏の空気の中へと身を入れる。
こんなに暑いのに元気なことだ。子供たちが大声で言葉を交わしながら私の脇を駆け抜ける。暑さを感じないわけではないだろうにと一際大きな声で話す少年の肌にベタリと張り付いたシャツを見た。
これから家に帰るのだろうか。ふと子供の頃、私が家に帰ればまだ明るいうちからランニングシャツ一枚で晩酌をしていた父の姿を思い出す。
何か買ってきて欲しいものはあるかい?スマートフォンを取り出して妻に短いメッセージを送る。
夕日でピンク色に染まった雲を見上ながらきっと帰ったらお酒が呑みたくなるのだろうと思った。
もう少しだけ足を伸ばそうか。また買いすぎてしまわなければいいけれど。もう息子は一人で暮らしているのに、私と妻の悪い癖だ。
夏の空はまだ明るい。昼の青が残る中では一番星も目立たない。 - 36二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 18:15:00
窓から南の夏風と北の秋風が混ざり合って部屋に吹く
それに合わせて風鈴の澄んだ音とカーテンのはためく音が同時に聞こえる
心なしか窓辺が赤くなっている、そろそろ夕暮れが見れる頃
遠慮せずにくぅと鳴いた腹の虫はおいしい夕食をご所望だ
腰を上げてかるし足、髪を束ねてすまし顔、中を見かねてけわし顔
まさか冷蔵庫の中の食材がカニカマしかないだなんて面白にもほどがある
そう思いながら靴を履き赤い空の元スーパーへ歩みだした - 37二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 18:15:09
ラスト二行のセリフが粋だね
- 38二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 18:21:52
地平線の果てに沈む、茜色の眼差しが心に刺さる。
蒼色に暮れていく夜、時は風と共に吹き去って、滞っていた熱を何処か遠くへと運んでゆく。
しかし、私の心にはあの茜色が深く刺さったまま。ずっと熱を帯びている。
「また明日ね」と言って、それから聞く事のなくなった彼女の声。
あの眼差し、風に揺らぐ長い髪、一緒に買ったドレスも私の中に置き去ったまま。
時と共に世界は進んでゆくけれど、人の心は想い出と共に停滞する。
私は進む。
心の中にだけ存在する、あの暖かな夕陽へむけて。 - 39二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 18:22:25
デカい変化の境目にいる観測者をイメージしてみた。
帷が落ちる、雲が駆ける。風が衣を剥ぎ取り、音が地上を満たした。日の入りと共に嵐がやってくる。
しかし、それを理由にして逃げるわけにはいかないのだ。光失せた地の上に人はおられない、嵐覆う天の下で人は生きられない。さりとて光あれども人は苦しみ、天が晴れても人は争う。
私は辛苦でなく恐怖に身を置くことで、更なる先へまだ見ぬ果てへ歩を進める者である。私の前に光無し、私の陰に希望有り。私の骨を拾う者無く、私の跡を辿る者有れ。
私は孤独でなく、賢智もなく、されど肉があり、歓喜もある。
私は私だ、ここにいる。 - 40二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 18:27:56
夕暮れの描写としては素敵、そこから物語の展開を見たい
途中、その境界に迷い込んだ人ならぬものに魅了されて進んでいくのかなと漠然ながら思えた描写はなかなか
私もというか感想を書く側も結構文章力や表現力いるから、言葉足らずで申し訳ないんだけど
良かったよ、そこからもうちょっとが欲しいと思わせてくれた
- 41二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 18:31:26
おひさまの香り。少しゴワゴワした感触。
お気に入りのタオルケットに包まれ、俺は目を覚ました。
寝惚け眼で時計を見れば、そこには午後を告げる証。
いいやいいや。寝てしまえ。
俺如きが今日の一日惰眠を貪ったところで世界が終わるわけじゃないし。
どすん、と寝返りを打ち、俺は夢で食いそびれたハヤシライスに想いを馳せる。 - 42二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 18:31:57
>>50を踏んだ方、次のお題を定めてください
- 43二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 18:38:13
初めてのデートはきっと成功だった。朝から待ち合わせて二人で映画を見て、お洒落なカフェでランチをして、ショッピングモールで買い物をして。そんなありふれた内容だったけれど、彼女も楽しんでいたはず。折角だからまだ一緒にいたい気持ちはあるけれど、それでも彼女の門限を考えればそろそろタイムリミットだ。駅の改札を前にして、繋いでいた手を離す。
「今日はありがとう、それじゃまた」
名残惜しい気持ちを抱えながらも、精一杯笑って見せる。改札へと歩き出す彼女を見送ってから踵を返したその時、背後から待って、と小さく呼び止められた。
「……次の電車でも大丈夫、だから」
だから、あと10分だけ。
きっと俺にしか聴こえないほどの声でそう言われて、弾かれるように振り返る。視界に飛び込んだ彼女の頬は赤い。それが夕陽のせいでもチークのせいでもないことなんて、俺にだってはっきりわかる。
そろりとつま先を動かして、恐る恐る距離を縮める。もう一度、彼女の方へと手を伸ばす。指先同士が触れ合った丁度その時、彼女越しのホームに電車が滑り込んだのが見えた。 - 44二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 18:39:55
書きたいものが書ける文章力が欲しい…
- 45二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 18:44:31
- 46二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 18:46:55
- 47二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 18:49:38
素敵なものばかりだけど、中々読み込んで感想を書くのも難しい
読んでくれた声が一番の応援になるんだけどね - 48二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 18:55:38
今くらいの時期か、セミから聞こえる鳴き声が変わる時期、夕方のお出かけはしやすくなるよね
全部に感想は書けないし気の利いた感想も書けないけどここまでのは全部読んだよ
感想書いたのは取りあえずまだついてなかったのだけだけどいいのいっぱいあった
- 49二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 19:15:52
赤く焼けた河川敷、川が粛々と流れ鈴虫がりんりんと鳴いている。寝そべった河川敷は見た目に反して素っ気ない、遠目で見れば懐深く見えたが今は寒風にでけつをひっぱたいてくる。居心地の悪さにゴロンと寝返りをうてば紅い空が広がっていた、ところどころ飛ぶトンボはメロスのように沈む日を追いかけ、川は万華鏡のように煌めいていた。またゴロンと転がり反対を見れば銀紗を振りまいた藍色の空が広がっている、目を凝らせば銀紗の中には黄色く輝くホタルがいた、ホタルは川でも輝き天の川を映し出す。改めて上を見れば濃紺の空が広まり藍色に呑まれていく、ゆっくり風が体を流れていく。
- 50二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 19:39:27
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- 51二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 19:39:27
このレスは削除されています
- 52二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 19:40:11
同時だったので私が消します、出してくれてありがとう
- 53二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 19:42:14
このレスは削除されています
- 54二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 19:42:20
お題被ってたから消したら50も消してて草
じゃあお言葉に甘えてテーマ:水
海でも飲み水でも魔法でも何でも - 55二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 19:43:21
ちょっとタイミング遅れたけど1のお題です。
スレを見かけて文章纏めてたら50超えてました
太陽煌めく青空でもなく、星の瞬く夜空でもない。この時間だけの特別な空。
夕と夜の入り混じる、紫色の空を仰ぎ見る。
神秘的なこの色は、いつも私を満たしてくれる。
私は皆を照らす太陽にも、暗がりで輝く星にもなれない。
けれど、この空のようになら、なれるのかもしれないと。
そうやってしばらく眺めていると、視界の端で何かが光った。
「ああ、今日はもう終わりなんだね」
どこか寂しさが滲むその言葉は、無意識に零れたものだった。
名残惜しさを抱きながらも、私は独り帰路につく。一番星に、背を向けながら。 - 56二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 19:44:37
- 57二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 20:40:22
- 58二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 20:53:03
瞼を閉じて想いを馳せる。
土埃の匂い、開いては閉まる下駄箱の音。
はたはたと傘より散らばる光の粒が、鈍く弾けてキラキラ光る。
ザラ板を駆け回る少年少女の歓声、嬌声、あるいは先生たちの声。
そして遠雷。稲光。
ここはどこかいつの日か、あるいは見知らぬ追憶か。
もう少しだけ、こうしていよう。
昼下がりの雨音が夢見の扉を開くまで。 - 59二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 20:57:28
生命は海から生まれたというのだから、生を閉じる時も海に還るのが道理というものだ。
ざぶざぶと波を掻き分けて沖を目指す。
海面はいつの間にか腰の辺りにあって、一歩を踏み出すことが段々と難しくなっていく。
それでも、私は脚を止めない。
生命の根源であるこの場所に、私という生命を回帰させてやる為に。
ざぶん。
一際大きな波が立ち、私の身体は呆気なく攫われる。
ぶくぶく沈んでゆく中で、無理矢理に瞼を持ち上げる。
最後に見えた光の粒は、きっと私自身の命の輝きそのものだったのだ。 - 60二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 21:04:11
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- 61二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 21:05:18
おお、これまた面白そうな題材ですね。では、私も。
今日もまた、我の首部の上を行く物がある。
形から見て旅客船だろうか?お勤めご苦労、いい日和。見えねども、腕を振る。お袋さんに教わったことが未だに根付いてる。
それにしても、日向ぼっこも悪くないが、どうにも最近飽きてきた。
次に行くのは鉄の鳥。人を預けて飛ぶ姿は今も昔も変わらない。私が飛んだあの空は、曇りが広がる灰色だった。
この海のごとく、澄んだ空にゆるりと飛んでいるその姿は微笑ましい。
桜の一輪として空に咲き、空に散って幾星霜。泰平の世の営みを、海の底から見つめている。 - 62二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 21:15:57
「水」
無味乾燥、という言葉がある。
僕は、その言葉の意味を否応なしに実感していた。
───何も上手くいかない。
別に、世の中で自分だけが不幸だなんて思っちゃいない。ましてや、自分が世の中に認められるような大層な人間だとも思っていない。それでも······それでも、何を成したところで、それに対してなにか反応を貰えるでもなく、自動的に次の仕事が降ってくるだけの生活というのは、味気の無いものだ。
昔はよく泣いていた。
最近は泣かなくなった。
代わりに、心が枯れていくのを感じる。辛いとか悲しいとか、そういう気持ちを抱く器が、水分を失ってひび割れていくのを感じる。
まるでとかげの鱗のように、ぽろぽろとその器は少しずつ零れていく。そのうち、器に垂らされる一滴の雫が落ちる衝撃ですら、器を壊しかねない。
絶えず、自壊へと歩みを進める僕の心という器は、一切の水分を失っていた。
乾きに耐えかねて嚥下したペットボトルの水は、身体を生きながらせようが、心を活き永らせることはなかった。 - 63二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 21:17:37
ぱしゃ。ぴしゃり。
ああ、さっぱりした。
今日は一日中外を歩き通しで、汗と砂にまみれた肌が不快でしょうがなかったのだ。
それにしてもこの乾いた岩場が続く地にこんな緑に囲まれた場所があるとはな。二本に分かれた川の支流に挟まれて水が豊富だからだろう。風呂まで入れるなんて思わぬラッキーだ。
その代わり、宿代は嵩んだのがちょっと痛いが。まあ、次に大きな町についたら仕事をすればいいさ。
入浴剤のハーブの香りが心を落ち着かせる。温かなお湯に体の疲れが溶け出していくようだ。久しぶりの風呂があまりに気持ちがよくてうとうとしてきた。瞼をあげるのも億劫だ。
それにしても宿の娘さんはかわいかった。キノコのスープを配膳しながら笑う少女の口から覗く八重歯が印象に残っている。
スープは食材の栄養を逃さずにとれるんだって。 - 64二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 21:35:56
注文の多い料理店みたいな、優しい中でほんのりと感じる野生と危機感
- 65二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 21:40:46
【水】
改めて考えると、不思議なものだ。
川というのは、往々にして流れる水そのものを指し示している。
けれど、その水は暫くすれば流れ去り、別の水が川を満たす。
それでも同じ場所を流れているというだけで、同じ川だと誰もが言うのだ。
一方で、川を流れていた水はといえば。
海へと流れるその瞬間、その名は川から海へと変わる。
同じ名前でも違うもの、同じものなのに違う名前。
変わらず水であるはずなのに、何かが変わってしまうのだろうか。
明日になれば、私は学生から社会人へと変わる。新入生へとその名を渡して。
学生という名は、何かが変わるだろうか。私もまた、何かが変わってしまうのだろうか。 - 66二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 21:45:57
ネット掲示板での水って何だろう、と私はウンディーネに聞いた。
電子空間の水なんて、私の領分ではないわ、と彼女は言い。でも、と言う。
「水槽の中で泳ぐ魚たちと同じじゃない?って思う事はあるわね」と答えた。
確かに思う。物語の上での水の精霊である彼女たちは、物語の上で水と言う形があれば泳げる。
電子空間を1つの巨大な水槽としたとき、彼女たちにとって、私たちは果たしてどう見えているのか。
「……何?その困ったような顔。おもしろいわ」 - 67二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 21:46:19
「水」面白そうなので書いてみました。
目を閉じると夏の終わりの生暖かい風と緩やかで静かな波音だけが聞こえる。
電車で20分、日常から離れたくなると度々足を運ぶ場所、海岸沿いの堤防に腰を掛けている。
目をゆっくりと開ける。
もう日も沈んだ。西の空にまだ明るさを残しているがもうしばらくすれば闇に包まれるだろう。
月日がたつにつれて、自分自身も周りの人も、街の景色も変わっていく。変わらずにいてくれるものなんて何一つない、そう思えてくる日常の中で、この場所だけは…海だけは変わらず私を迎えてくれる。
このまま、あの藍色の水面の一部になることが出来たらどんなに楽だろうか。 - 68二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 21:47:07
「なら、相合い傘でもして帰る?」
俺は気恥ずかしさから拒絶した。君は困ったように笑っていた。
雨でぐっしょりと冷たくなった服は今でも覚えている。
今日も雨が降っていた。
いつかの日と同じような土砂降り。
ざあざあという音に引き寄せられるように、気づけば外へ。
ああ、だけど。君がそこに居ないのは知っている。
あの日あの時、一緒に帰っていれば何かが変わっていたのだろうか。
悔やんでも一人。
ぐっしょりと冷たくなった服は、引きずるように重かった。 - 69二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 21:55:34
焦燥感から水を失っていく人の心の揺らぎが素敵ですね。
- 70二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 23:28:49
来るんじゃなかった。みんな部活に来てないってそんなことあるのかよ。
そこで踵を返せないのが俺がダメだと思うところだ。帰りたいという五文字に思考を染めながらでも帰ったらだめじゃないかと不安に思い、水着に着替えてシャワーを浴びれば後悔は一層増した。
苛立ちを振り切りるようにいつもより豪快に両足から水に飛び込めばどぼんと大きな音を立て光を受けた水の粒が跳ね上がった。
振り上げた手を遠くへ伸ばす。手を沈めて水を集めるように下ろせばぐんと水流が体を通り抜ける。絶えず交互に振り下ろされる両足は水飛沫と音を立てて浮いた体を進ませる。
夏の日差しは水の中ではマシだけど、プールの水は茹だりかけだった。朝の九時を過ぎたばかりだが太陽は容赦するつもりがないらしい。
水色の底を眺めながら頭にはなぜか冬のスキー場で聞いた歌がエンドレスで流れている。低くくぐもった水の泡が生まれる音はいつの間にか聞こえない。
夏休みの毎日、午前中から昼までをこのプールに奪われている。朝家を出るときと部活中の大半はそのことにうんざりしているのだが時折思考が消える今のような瞬間は心地良く、もっと水の中を感じたいと思う。
それでもクーラーの効いた部屋に置かれた氷の浮かぶ麦茶はもっと恋しいのだが。冷えた部屋で体を生き返らせて陸にいながら体が水面に揺られる感覚を味わいながら昼寝をするのはそれはそれは心地よいのだ。 - 71二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 00:56:51
「さよなら」
その言葉が言えない。泣き濡れる視界と、嗚咽混じりの声は彼女に最後の別れを告げることすら許してくれない。
彼女との出会い、そして別れも雨の日だった。じっとりとした皐雨の季節。僕はその日、初めて彼女に出会った。彼女はその日の空模様とは対照的な、カラッと晴れた夏の日のような人だった。彼女と過ごした日々は、僕の人生の夏休みだった。
彼女を入れた棺が出棺される。喪服に身を包み、傘を差した僕を容赦なく雨が叩き潰す。気がつけば葬儀は終わり、空はいつの間にかに晴れていた。
でも、その瞬間僕は気づいた。心が晴れる日が来ることは、もうないのだ、と。 - 72二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 06:25:29
5時間経過したので。
次のお題は「朝の始まり」
学校や出勤、異世界の朝みたいな感じでどうでしょうか - 73二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 07:09:21
昏いまぶたの裏には穏やかな眠りが張り付いたまま。
被った布地の柔らかさを両腕で抱きしめて、朝の訪れを否定する。
カーテンから漏れる陽光に背を向けて。鳥のさえずりから耳を塞ぎ、想うのだ。
訪れる時間も、約束も、契約も夢の中へ沈んでしまえ。
私は今が一番幸せなのだ、と。
暖かく穏やかな闇の中へ沈んでゆく。深く、もっと深く眠っていたい。
一夜の夢魔に心を浸しきる。
そうして世界に背を向けて丸まっていると、ぽふ、と頬に柔らかい感覚があたる。
「おはよう」
その一言で目を覚ます。相手がそこにいて、関係性が働き、時計の針は動き、人の歩く音、空気の振動、声が響く。
私の世界はすこしねぼけたまま、緩やかに駆動する。 - 74二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 10:21:56
フライ返しで卵を畳めばまたフライパンに卵液を流し込み、畳む。畳む。畳む。
出来上がった卵焼きを包丁で切ろうとするとトースターがチンと高い音でパンが焼けたと知らせる。
アチアチと指先だけで取り出したトーストにマーガリンを塗って歯を立てればカリッとした音とほんのりと焼け焦げた香りが口から頭の上へと抜けた。
包丁を入れた卵焼きとキウイフルーツを卵を溶くのに使った菜箸でつまみながら冷蔵庫を開ける。
暗かった空は溶きほぐした卵がフライパンの上で浮き上がる薄い膜に変わるのとほぼ同じくして紫と赤に変わっていたようだ。
口に残った卵焼きのカケラと怠け心を冷たい牛乳で流し込んだら昨日の夜に残り物を詰め込んだお弁当箱の隙間に卵焼きとキウイフルーツだけを押し込んで家を出る。
洗い物は帰ってからでいい。朝から色々やっていられないから。
いつも通りの時間に家を出ていつも通りの電車に乗るために。
今日もまだ星がかすかに残る空の下を歩き出した。 - 75二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 10:32:25
- 76二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 17:27:53
5時間経過してるので
次のテーマ「お菓子」
ケーキでもお煎餅でもはたまた空想上のお菓子でもなんでも - 77二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 19:33:45
お寿司を食べ終わるといよいよ誕生日らしくなってくる。
部屋のすみに置いてあった紙袋を引き寄せるいつもよりおしゃれをしたあなたに、いつのまに怖くなくなったのかマッチを取り出す成長期の彼。
今年はわたしもプレゼントがあるの。
えっ、嬉しいな。なんだろう。
いそいそと少し大きくなった、だけどまだまだ細い子供の手足を動かして台所に向かうきみ。
きみからするバニラエッセンスの匂いでプレゼントの正体は分かっている。 - 78二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 19:54:13
- 79二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 20:22:02
- 80二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 20:34:20
薄情さではないんだよ。まずさも辛さも、思い出の一つなんだっていってあげたくなる
- 81二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 20:45:09
甘いお菓子は、危険だ。
心から、身体からもそう思っている。
でも、友人にふるわられた菓子や、男友達にふる割られたもの、憧れの人が食べていて、私もおいしいと思った。
おばあちゃん、もういなくなった父や母。
甘いお菓子は、甘い思い出が詰まっているのだ。
だから捨てがたくて。
マカダミアナッツをひとつまみ。 - 82二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 20:46:38
昨日は読んでどういう話かよく分からないけどなんか不思議な感じの文章だなと思ってたけど今日読み直してみたら意味が分かってあーっ!ってなった
優しく穏やかに海の底で過ごしているのがほっとするようなせつないような
- 83二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 20:58:37
女の子はお菓子でできているのよ、なんて言ったのは従姉妹の姉さんだった。甘い物好きの彼女は、ダイエットすると言ったその口で甘い甘いクッキーをさくりと齧る。そして言うのだ、私の身体はこれでできているの、と。
さて、目の前には派手な赤色に可愛くない熊、私には読めない英語が散りばめられた四角い缶がひとつ。新婚旅行のお土産としてつい先ほど届けられたそれの蓋をそっと開ける。整然と並んだクッキーは、海外製なだけはあって見るからに甘そうだ。
例えばこれを全部食べてしまえば、私も姉さんみたいな女の子になれはしないだろうか。
現実味のない夢想をしながら、クッキーを一枚手に取る。さくさくと噛んだそれは、想像通り私にとっては甘すぎた。やっぱり、私の身体はお菓子ではできていないようだ。 - 84二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 21:08:53
なんと言うか。詩と言うか、少ない行でできるだけ伝える形になっててなんとも。
もっと不完全で気持ちだけが先に入っていて、でも伝えきれないからどう伝えればいいんだろう、的な、整ってない言葉こそが言葉の本分みたいな気持ちもあるけどね - 85二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 21:11:16
「この豆さやごと揚げるんですか?」
女冒険者の質問に犬の奥さんはそうよと首を縦に振る。
衣をつけて油の鍋の中へまとめてドボン。どうやら毛皮を持つ種族は油がはねるのが怖くないようだ。
王都で育ったヒューマンの彼女には雨のような音を立てて浮かんでくる豆がこれからお菓子になるなんて想像できない。
「ほら、あがったから食べて」
揚げたばかりのものを食べたら舌が火傷するので女冒険者はあがった豆を念入りに息で冷ましてから口に運ぶ。
「ほくほくしてる!」
女冒険者の声と顔に満足したのか犬の奥さんのしっぽがエプロンのリボンの下でパタパタと揺れた。
このあとあなたが採取してきてくれたはちみつとスパイスをたっぷりかけるのよと説明する奥さんに何度も小さくうなずきながら彼女は青臭くて固くて、スープに入っていると嫌だった豆がこんなに美味しくなるなんて嘘みたいだと感動していた。
採取してきたはちみつ壺には大人よりもふわふわした体毛に包まれた子犬の頭が突っ込まれていることを二人はまだ知らない。 - 86二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 21:19:43
豆さや、と言う郷愁を含んだ言葉、冒険者、犬の奥さんというファンタジー。まとめて油にどぼんして未知のお菓子と美味しさがあり。ちょっとビターな感じで閉める。すてきですね。
- 87二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 21:33:23
- 88二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 22:02:31
- 89二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 22:15:36
派手な赤色に可愛くない熊、私には読めない英語が散りばめられた四角い缶…どんなデザインなんだろう。
色々明け透けな語り口で、でもちょっと関係の変わった従姉妹のお姉さんへのかすかな気持ちと共に、
なんとなく同じものを食べてみて、でもやっぱり違うよね。と言う寂しさと気持ちの移り変わりを感じさせる
- 90二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 22:28:55
「何となく思うのだけど、評価したり感想を言う側も、文章と心を鍛えられるものなんだなって思います」
「お菓子を食べながらそんなことを言っても、説得力はないぞ」
「でも、お菓子と説得力の間に何の関係性があるのでしょう」
「柔らかさと甘さは説得ではなく、懐柔だ」
さてはて、どうでしょうか。
こうして語り合って気持ちを吐き出すだけでも、気持ちが柔らかくなっている筈です。
柔らかく薄くこねて、砂糖をまぶした卵を混ぜて、ほんのり焼いて、出来上がり。
「君の想定は甘すぎる。明日は補習としておこう」 - 91二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 22:34:23
5時間たったので次のテーマをどうぞ。
- 92二次元好きの匿名さん21/08/23(月) 22:59:07
(いや、まあ22:54~3:54って時間凄い微妙だな、と言った後で困惑する)
真夜中、丑三つ時、深い闇。辺りでどうでしょう。 - 93二次元好きの匿名さん21/08/24(火) 00:16:08
お題【真夜中】で
今日はぜんぜんねむくならない。
160ぴきとすこし数えたところでやくたたずのひつじさんとはおわかれした。
となりでえ本をよんでくれていたおばあちゃんはとっくにねている。
あんまりにねむくならないものだからなんだか楽しくなってきて、いつまでおきていられるかちょうせんしたくなった。
ふとんに入りたてのころにおばあちゃんがよんでくれた本をでんきスタンドの下で一人でよむ。
なんどよんでもおもしろくてにこにこしながらよみおえた。
きっともうまよなかなんだろう。
こんなによふかしをするのははじめてだ。てつやしちゃうかもね。
もうすぐお日さまがのぼってくる空をあみどごしにみあげて、でんしゃがとおるおとを一人できいた。
- 94二次元好きの匿名さん21/08/24(火) 01:38:32
「丑三つ時って藁人形に釘打つ奴だっけ」
「…それは丑の刻参り。丑三つ時は今くらいの幽霊とかに遭いやすい時間帯」
そうだっけか、と彼は言う。自分で話題を振ったくせに興味が無さそうで、私も話を続けなかった。
草木も眠る丑三つ時とは言うが、外は大雨で風の音が凄い。草木もおちおち眠れないだろう。
代わってほしい。私はしばらく眠れそうにないから。
「本当に出ていくのかよ」
「もうこの部屋に居たくない」
案外少なかった荷物を背負い、私は彼に鍵を返して家だった場所を後にした。
このまま消えてしまいたい。そう願っても叶わないので、私は大雨の中を早足で歩きだした。 - 95二次元好きの匿名さん21/08/24(火) 11:58:37
面白い本を見つけると、ついつい読みふけって徹夜して、寝なきゃ寝なきゃと
夢中になって、ふと見上げれば朝になってる。童話みたいに柔らかい感じがあるけど、
ひらがなの多さが少し不穏な感じもする。
しかし、子供の視点での文体って難しいな。
- 96二次元好きの匿名さん21/08/24(火) 14:23:54
五時間経ってるし次のお題かな
- 97二次元好きの匿名さん21/08/24(火) 20:23:45
お題出す人がいないね
じゃあ次は「指」 - 98二次元好きの匿名さん21/08/24(火) 20:55:48
「私ね、魔法使いなの」
学校からの帰り道、二人きりの住宅路。横断歩道で信号を待ってるその時に、彼女は突然そう切り出した。
コンビニに新発売のお菓子売ってたよ、ぐらいの気楽な響きのその声に、へえ、と相槌を打つ僕の声も相応に気楽なものだった。
信じているか信じていないか。そんなことを考えもしないただ間を繋ぐだけの気のない相槌。彼女はそれを気にするでもなく、指を弾いて空気を揺らす。途端に信号が青に変わったので、僕はまじまじと彼女の指先を眺めた。
「今のが魔法?」
ふふ、と彼女がおかしそうに笑う。
「今のは偶然」 - 99二次元好きの匿名さん21/08/24(火) 21:36:36
あたしにはお調子者の幼馴染みがいる。
猿顔のチビ。だけど俗に言う人を傷付けない笑いでの笑わせ方が巧いから結構人気がある。隠していたけれども、バレンタインに本気チョコをもらっていたのをあたしは知っている。
ある日、そいつが指でピストルの形を作り、あたしに発砲してきた。
ノッてやってもよかったけど、「バァン」という口で言った発砲音の「ァ」がムカつき、あたしは無言で指ピストルを打ち返した。
「ぐっ…俺のハート、お前に撃ち抜かれちまったぜ…」
更にムカついたので無言で連射するとその度に「好きだ」だの「愛している」だの「お前に殺されるなら本望」だの言葉を返してきた。
こいつ、しぶとい。 - 100二次元好きの匿名さん21/08/24(火) 22:21:58
指先で何気なく、誰かが庭先の花に触れた時、方向性たる私は生まれた。
ささやかに揺れる花弁は透明な茎と葉を揺らし、振動は空気に溶け、風に吹かれ空へ巻かれて山間へ。
地平線の彼方に臨む、霹靂の音、厚い雲と豪雨に矮小な私はたまらずに砕け、水と共に渓谷の底へ流れ、土に沈む。
そうして地底湖に辿りついては蒸発し、暗がりの中で滞留しながら更に空へと昇り、今は雲となってとどまっている。
そして、想うのだ。遥か昔に送り出してくれた指先を。
この遥かな山稜と豊かな森も、あのささやかな悪戯心と指先のような、無数の生き物の揺らぎから生まれている。
土に触れ、花に触れ、雨に触れ、風に触れ。同じ命に触れることができる。
ああ、羨ましい。
それで私もつい、嫌がられると思いつつ。生き物に指先を伸ばしてしまうのだ。 - 101二次元好きの匿名さん21/08/24(火) 22:37:30
とどまることなく動き続ける指の中で白くて柔らかそうなものが黒と赤を覆い隠していく。
白くて丸いものがいくつもつくられていく中で指先がぎゅっぎゅっと押すように力を加えて赤い果実を閉じ込めているようだとわかったが、それでも短い時間で白に包まれた綺麗な丸ができあがっていく光景は不思議なものだ。
ぱたぱたと足音が聞こえた。
ガラス一枚隔てた先で働いている不思議な手を見ている私を見つけてかけてきたようだ。
「ごめん。遅れちゃった。立ちっぱなしで疲れたよね」
謝る声にはみだれた息が混じっている。
ぜんぜん。面白いものを見てたから退屈しなかったし。
それじゃあ行こうか。でもその前に。
「すみません。苺大福ふたつください」 - 102二次元好きの匿名さん21/08/24(火) 23:03:47
提灯達がワッっと割れる音がする。
鍋の子達が逃げて行く。銘々に、散り散りに。
まどろみながら赤ちゃんに戻っていく彼が言うには、しんと静まった部屋にはもう何も残っていないらしい。
戸を開けると、灯りを消す音の聴こえるような時間になっていた。
すっかり丸まった赤ん坊を寝かしつける。
そのままここに一人にしておくのが忍びなくなったので、別の赤ん坊に渡すはずだったぬいぐるみを取り出して、元々持ってくるつもりだったこの部屋に置いて帰った。 - 103二次元好きの匿名さん21/08/24(火) 23:09:57
親指、人差し指、中指、薬指、小指。手を握って、開いて、また握る。大丈夫だ。五本ある。
親指、***指、中指、薬指、小指…大丈夫だ。確かに五本ある。
いや、五本あるけれども……これは、自分の、確かに、人差し、いや、****、五本、いや、
「お前さん、いったいどうしたんだい。慌てて手を握ったり開いたり」
「あ…その…僕の、人差し指が……これは…」
正しくそれを表すべき言葉が思いつかないまま、声の主を見上げる。紫色の体、黒い爪、複眼の目…
「いい加減、人間だった頃のことを考えるのはやめるんだね。あの宇宙線を浴びてもう五年――」
そう言って声の主は歯のない口で大きく笑う。その内部は緑色で。
そう、指は確かに五本あるけれども、その二本目の指は既に『人』差し指ではなく。
蜥蜴指?宇宙人指?それとも……この***指は何指なのか。自分は、いったいなんなのだろうか? - 104二次元好きの匿名さん21/08/25(水) 08:08:17
指すは天上。彼女の先祖に曰くぬばたまの闇に、瞬かない星が貼りついている。揺籃の碧き星より遥か遠い場所。虚空を進む船は無音。明けぬ夜にわずかな光を投げかけるのみ。外殻で真空と隔てられた内部はこんなにも明るくて暖かいのに。自らの小ささを嘆くことは無いが、ふとそら恐ろしくなることはある。流星や彗星(ほし)の裡でこの空間を渡った有機生命の先祖に敬意を抱く。思考はできずとも、自らを脅かすものへの「恐怖」は最も原初的なものであるはずだから。顕微鏡(ミクロ)サイズの身を縮めて、仮死のまま、永い永い年月を……。珪素化合物の滑らかな鱗に覆われた五指をそっと組み合わせる。伸ばしたままの指が交差し、合掌と手を組むのとのちょうど中間。虚数軸の果て、無限の演算力を持つ存在。有機ヒトの宗教中なら、自らの出典にある「道」と呼ばれるものに最も近く。情報基盤生命体が信じ、また目指すそれへと祈りを捧げた。
- 105二次元好きの匿名さん21/08/25(水) 08:09:56
お題いいですか?
【歌】 - 106二次元好きの匿名さん21/08/25(水) 14:39:33
短いフレーズを何度も繰り返す。どこか孤独な悲しさがある雄大なメロディもこうなってはちぢこまって間抜けな響きだ。
最初だけは旋律の伸びやかさに心を任せて気持ちよく歌っているが、思い出せない最後の方になると記憶のごちゃごちゃに突入したようないやな気持ちになって二拍おいて最初に戻る。
ふと脳裏に蘇った歌謡曲。
歌詞も忘れてしまったから鼻歌で。
古い匂いがする、だけど若々しい声が鮮やかに言の葉を読み上げるようなあの歌をよく聞いていたのは誰だったろうか。
好きだったのか。ただ昔の人に人気の歌だからラジオでよく流れていただけだったのか。今はもう教えてもらうことはできないけど。
祖父母の家の線香の匂いが幼い鼻の奥をついた。とても昔に嗅いだ匂いだ。今は同じ仏壇に同じ線香をあげても違う匂いがする。この鼻も歳をとったので。
今日は遠くの青い山影がはっきりと浮かんでいる。
記憶と一緒に短く切り離された鼻歌の歌い出しの前に一度、朝のひやりとした空気を肺に通らせ、自転車を漕いだ。 - 107二次元好きの匿名さん21/08/25(水) 19:02:39
お題切り替えようか?
お願いします>>108
- 108二次元好きの匿名さん21/08/25(水) 20:48:13
じゃあお題:意地悪、いたずら
- 109二次元好きの匿名さん21/08/25(水) 21:47:47
娘が横向きに寝そべっている旦那にのしかかる。
「こーら」
痛くはなかったらしく、テレビに夢中の旦那は形式上だけ叱った。
旦那の長い髪を引っ張り過ぎない事を覚えた娘に旦那の警戒心はかなり緩んでいる。しばらく前は娘が近付く度に臨戦態勢をとっていた旦那だが、今は好きに遊ばせている。
その後何回かずり落ちるのを楽しんだ娘が絵本に興味を移すと、旦那の意識は完全にテレビに向いた。
旦那がぐちゃぐちゃな三つ編みに気付くまでまだしばらくかかることだろう。 - 110二次元好きの匿名さん21/08/25(水) 22:35:42
「いたずらってなんだと思う?」
テーブル向かいに座る彼女は、楊枝に突き刺したたこ焼きをこちらに差し出しながらそんな問いかけをひとつ。
「唐突だな……って、そりゃお前が今やってることだよ、こっそりタバスコかけてたのが見えたぞ。食わんからな」
「ばれたか…幼なじみのよしみで、黙って食べて驚いてくれれば良いのに。意地悪ぅ」
カラカラと笑いながら、ひょいっと自分の口の中に放り込み、辛い辛いと慌てる姿。
ため息一つつきながら思う。物心ついたときから高校生まで一緒だった腐れ縁は、この高校生活のあとはいったい……
「んー…?何か心配ごとあるなら、いつだって私が相談にのるよー?」
「お前には絶対に相談しないという断固たる決意が俺の中にある」
なにさ、とほっぺたを膨らませる彼女のその天真爛漫な行動の一つ一つが、とても愛おしいことを実感しながら。
『意地悪』なほどに自分の気持ちに気づいてくれない彼女との時間は、今日もただ『いたずら』に過ぎていく―― - 111二次元好きの匿名さん21/08/25(水) 22:50:13
まだ数本残っていたハズのシャーペンの芯が、いつの間にか無くなっていた。
「またか」と声に出さずに呟いて、ガックリとうなだれる。
値段としては大したものじゃないが、無くなるとノートが取れないので地味に困るのだ。
犯人は分かっている。
隣の席をジロリと睨めば、こちらの視線に気付いたのかニヤリと笑って、シャー芯のケースをシャカシャカ振ってみせる。
ムカついたので消しゴムを飛ばしてやれば、教師にバレて俺だけ怒られた。
全く、世の中は理不尽だ。 - 112二次元好きの匿名さん21/08/25(水) 23:35:42
おかしい。いつまでたっても家が見えてこねぇや。提灯の中を覗いて蝋燭を確かめた。今の蝋燭の長さは半分。いつも蝋燭が三分(さんぶ)が一ほど溶ける前には家についていたのに。
夜道で迷うはずもない。幼い頃から歩き慣れた村の中。まして村の寄り合いをしていた地主の家からまっすぐ歩くだけで家につくし、その少し先は曲がり角なのだ。
「暑い、暑い……あちぃったらねえ」
ずっと歩き続けてるにしても、そろそろ夏が来るにしても暑い。あまりにも暑い。身体も汗でびっしょりだし左手の提灯を持つ手も右手の土産を持つ手もひどくぬるついてやがる。
とにかくはやく家に帰らなければ。こんな変な夜の下にカカアが心配して外に出てきちまったら事だ。更に足を早める。だけど、だけどああ、蝋燭がもう、なくなる。
ふつりと火が消えて真っ暗になれば今日は奇妙に茶色がかった満月の光だけが頼りだ。なんておかしな夜なんだ。心細さを誤魔化すように意地になって歩き続ければ。
月がだんだん、だんだん大きく。大きくなってこちらの方へ――。
「あれまあ。一助さんやい。田んぼの泥ん中足踏みして何やってんだべな。ああもう、ここだけ田んぼがぐちゃぐちゃでねェの」
一晩中探したのに家の前で何してんだべ。心底不思議そうなカカアの声が聞こえたと思ったらいつの間にか日が昇っている。
地主の家のばあさんがお土産に持たせてくれた稲荷寿司はいつのまにかなくなっていた。 - 113二次元好きの匿名さん21/08/25(水) 23:46:45
雨上がり。ホコリのない空。
波止場にいる私は空を見上げ、感傷に浸る。
今朝出会った白い奇跡を、目覚しいほどの衝撃を。もう一度思い起こす。
バスを降りると、そこは漁港だった。都会とは違って余裕のある街並みと潮風がツンと鼻を刺激し、淡い気持ちを膨らます。すれ違いざまに、女子高生の話し声が聞こえる。田舎でも、都会でも若者というものは輝いており、短くそして濃い青春のために命を注いでいるのだ。
ああ、カモメのジョナサンよ。あの女子高生たちのようにもう一度生き返る資格をおくれ…
すると、一際強い海風が吹き荒れる。機嫌の悪い神様が八つ当たりをしているようで、思わず吹き飛ばされそうになる。
あの子たちは大丈夫だろうか…?咄嗟に思考が働いて彼女達のいる方角を視界に捉えた。すると、八つ当たりはスカートに向けられ、豪快に捲りあげていた。
白か…
神様は悪戯好きだ。私はさっきまでの出来事を噛み締め、海に向かうこととした。少し浮き足立つ心を引き連れて。