【CP・閲覧注意】幼少期からウタの匂いを嗅ぐのが好きなルフィ PART2

  • 1二次元好きの匿名さん22/12/21(水) 21:33:26
  • 2二次元好きの匿名さん22/12/21(水) 21:34:53

    建て乙

  • 3二次元好きの匿名さん22/12/21(水) 21:38:40

    2人匂いフェチになりそう・・・

  • 4122/12/21(水) 21:39:36

    ここはウタ限定匂いフェチな幼ルフィと「ルフィならまあいいよ」な幼ウタが嗅ぎつ嗅がれつしたり石鹸作ったりする文わスレ主がつらつらと投げていくスレです

    前スレでエレジアは滅びました

  • 5122/12/21(水) 21:41:02

    「…………あれ?」


    起きぬけの一声目がこんなふうになるほど驚いた。毎日逃げられなかったあのこわい夢が襲って来なかったんだから。

    不思議と寝覚めもいい。心なしかほんの少しだけ喉の調子も良くなった気がする。


    「あー、あー……?」

    昨日までとは何かが違う。

    でも心当たりは1つだけ。


    机の上に散らばったそれを見る。

    昨日使った分はまだお風呂場に置いてある。


    「……もしかして…………?」

  • 6122/12/21(水) 21:45:30

    「……おはようゴードンさん」

    「! ……ああ、おはよう」


    お腹が空いたので食堂へ向かうとゴードンさんがいた。

    わたしの方から挨拶したら、ゴードンさんは一瞬驚いたような顔をしてた。

    ……昨日まで挨拶もちゃんとしてなかったっけ。

    そんな子がいきなり自分から挨拶してきたらそりゃ驚くよね。


    「食事ならもう用意できているよ、食べるかい?」

    「うん」

    「分かった。ちょっと待っていなさい、すぐに持ってくるからね」

    「……ねえゴードンさん」

    「?」


    「わたし、海が見たい」

  • 7122/12/21(水) 21:50:00

    「……!」


    自分でも驚いた。昨日の夜ぼんやり考えていただけの言葉がこんなにスルッと出てくるとは思わなかった。

    ゴードンさんは驚いてばかり。今日はどうしたんだ、とでも言いたそうな顔だったけど……


    「いや、外に出るのはまだ……ううむ、まあ海までなら大丈夫か……

    分かった、食事が終わったら行こう。だがまだ危険だから私も一緒に行くが、それは構わないか?」

    「うん、大丈夫。ありがとうゴードンさん」


    ……挨拶すらしてなかったんだから、多分お礼なんてもっと言ってないよね。

    ゴードンさんは食事中ずっと驚きっぱなしだった。

  • 8122/12/21(水) 21:53:54

    ─────────

    あの日以来、久しぶりに近くで見た海。

    その日は風も波も穏やかで、どこか寂しさを覚えるぐらい静かだった。

    その穏やかな風に乗って、潮風の匂いが漂ってくる。

    ……船の上でもフーシャ村でも、わたしの好きだった匂いだ。


    街の中はお城よりももっと瓦礫だらけで、あの嫌な臭いもお城より酷かった。

    ゴードンさんが外に出したがらなかった理由も何となく分かった。

    時々ゴードンさんがわたしに何かを見せないように立ち位置を変えてたけど、何だったんだろう?

  • 9122/12/21(水) 21:57:37

    「………………」


    あの日最後に見た海は、エレジアが燃える炎に照らされて真っ赤だった。

    いつもなら見えるはずのない、小さくなっていくレッドフォース号の船尾。

    海を見たせいか、またわたしの頭の中にその光景が鮮明に浮かんできた。


    それでも、昨日までよりかはいくらか落ち着いていられた。

    すごく泣きたくなったけど、その場で泣き出してしまうのは何とか我慢できた。


    「…………」


    ゴードンさんも何も言わない。

    わたしの気が済むまでここにいさせてくれるのかな。

  • 10122/12/21(水) 22:01:30

    「……ゴードンさん」

    「?」


    シャンクスは────


    そこまで声が出かかったけど、堪えた。

    一つ、ずっと気になってることがあったけど、まだ確信が持てない。

    それを聞く勇気が出なかった。

    もし違ったら、ゴードンさんに辛いことを思い出させるだけになるし……

    それにもし、わたしの望む答えじゃなかったら……


    そう思うと、どうしても思うように声が出なくなってしまう。


    「…………なんでもない」

    「……そうか」

  • 11122/12/21(水) 22:05:39

    「私は少し離れるが、もう少しここにいるかい?」

    「うん」

    「分かった。気をつけるんだよ」


    そう言ってゴードンさんはどこかへ行ってしまった。

    いつもみたいに昼間に外でやってる何かをしに行ったのかな。


    ……やっぱり、1人は寂しい。

    いつかルフィに言われた「お前の方が寂しがりやだ!」ってのも、間違いじゃないのかもしれない。

    認めたくないけど。


    結局ゴードンさんがまた戻ってくるまで、わたしはずーっと海を眺めていた。

    この海のはるか向こうに、シャンクス達もルフィもいると思うと……不思議と寂しさは紛れてくれた。

  • 12122/12/21(水) 22:10:34

    ───────

    「今日はどれ使おうかな……」


    もう使わないと決めたはずのせっけんだけど、もう1日だけ使ってみようと思えた。

    たまたまかもしれないけど、毎晩泣かされてたあの悪夢を見なかったは大きい。

    どん底をさらに下に突き抜けた今のわたしの心には、ほんの少しのいい香りでももしかすると効果があるのかもしれない。


    「これにしよっと」


    昨日は「げんきになるやつ」って書いてあったけど、今日のには何も書いてない。

    でも、包み紙越しでもわかるいい香りが気に入ったからだ。

    何だったっけこれ……少なくともお腹が空くやつじゃないと思うんだけど……

  • 13122/12/21(水) 22:16:54

    ────────

    「うわあ……」


    そんなわけはないんだけど、お風呂場全体がいい香りに包まれたみたいな気分になった。

    昨日のレモンとはまた違う、お花のいい香り。

    何ていうお花の香りなんだろう。この前もらったバラの香りとも違うし……


    初めての香りだったからかは分からないけど、昨日より寂しさはいくらかマシになった。

    それでも寂しくはなるけど、泣いたって何も変わらない。疲れるだけだって思考に不思議と切り替えることができた。

    これもこのお花の香りの効果かな……?


    「ゴードンさんなら何のお花か知ってるかな……」


    なんてことを考える余裕もできた。

  • 14122/12/21(水) 22:22:25

    お風呂上がり。何故かさっきの包み紙が目についたのでもう一度見てみる。

    そしたら裏側に文字が書いてあった。もしかしてルフィってば裏表逆で包んでたの?

    なになに……


    「ゆうきがでるやつ」


    ……だって。

    そんなのもらってたっけ?説明された中にはなかったような……



    ……でも、今のわたしには一番必要だったやつかもしれない。

  • 15122/12/21(水) 22:25:09

    このままじゃいけないことは何となく分かってる。

    海の時は勇気が出なかったけど……

    いつまでも何も分からないままでもいたくない。


    机の上に散らばったせっけん。

    その横に置いてある『それ』を見る。


    わたしの疑問のタネ。


    そしてわたしが、シャンクク達を信じることを諦めきれない理由。


    『それ』を握りしめて、わたしは部屋を出た。

    ルフィ。ちょっとだけ、あんたの勇気を貸してよ。

  • 16122/12/21(水) 22:26:52

    今日はここまで
    こんな感じでやっていきます

  • 17二次元好きの匿名さん22/12/21(水) 22:57:00

    ありがてぇ……
    気分がどん底の時ってちょっとした温もりとか香りで心が回復するよねほんと

  • 18二次元好きの匿名さん22/12/21(水) 22:58:32

    このレスは削除されています

  • 19122/12/21(水) 22:59:51

    ウワーッッ
    シャンククになってるーッッ

  • 20二次元好きの匿名さん22/12/21(水) 23:08:29

    シャンクス、ククククの能力者だった!?

  • 21二次元好きの匿名さん22/12/21(水) 23:09:34

    でぇじょうぶだ
    クライマックスのめっちゃ重要なシーンでシャンクになっちまったおれみてェなのもいる……

  • 22二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 01:16:45

    いまのところ本編より色々好転しそうな感じがするけど、ここからどう紆余曲折があってあのシーンに至るのか……恐ろしくもあり、楽しみでもあり……
    とにかく、無理のないペースで、がんばってください!

  • 23二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 06:48:09

    保守

  • 24二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 14:44:11

    あげるよ

  • 25二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 21:17:24

    保守

  • 26122/12/22(木) 21:38:16

    明日からまた雪降るらしいねえ
    あー怖い怖い

  • 27122/12/22(木) 21:38:52

    「……ゴードンさん」

    「? ……ああ、ウタか。まだ起きていたのかい」


    ゴードンさんは部屋で本を読んでいた。

    変わった果物が表紙に描いてあったけど何の本だったんだろう。


    「こんな時間に何か用かい。明日も海に行きたいというならまた……」

    「………………」

    「……? どうしたんだ?何かあったのかい?」


    「……ゴードンさん……

    …………聞きたいことが、あるの」

  • 28122/12/22(木) 21:43:39

    「聞きたいこと?」

    「うん」

    「……私に答えられることなら答えよう。何を聞きたいんだ?」


    「…………シャンクス」

    「!」


    ゴードンさんの顔が一瞬こわばった。

    やっぱり聞かれたくないのかな……


    ……でも…………


    「……シャンクスは…………



    ……どうしてシャンクスは、わたしを置いて行ったの?」

  • 29122/12/22(木) 21:48:04

    「……」


    何故そんなことを聞く?の顔なのか、

    今更何を言っているんだ?の顔なのか。


    しばらく黙っていたゴードンさんから返ってきたのは、あの日聞いた内容と同じものだった。


    「……前にも話したように、君も彼らに騙されていたんだ。

    君の素晴らしい歌声を利用して、このエレジアに近づき、それでこの国を……」

    「でも……」

    「……信じられないのも、信じたくないのも分かる。だが……」


    「でも!!!」

  • 30122/12/22(木) 21:53:28

    そんなのもう聞きたくない。

    ゴードンさんの声を遮って、わたしは疑問をぶつける。


    「それなら!!ゴードンさんがこんなによくしてくれる理由がない!!

    国をめちゃくちゃにした海賊の子供なんて顔も見たくないはずだよ!!それなのに毎日ご飯も作ってくれて、服も用意してくれて……!」

    「そ、それは……」

    「それに!!それに……」


    ヒートアップした自分を一度落ち着ける。

    今聞きたいことは他にあるんだから。


    「ウタ…………」

    「……大きな声出してごめんなさい。でも……」


    そこまで言って、わたしは部屋から持ってきていた『それ』を見つめた。

  • 31122/12/22(木) 21:58:32

    「それは?」

    「……香水。シャンクスが買ってくれたの」

    「シャンクスが……」

    「……エレジアに来る前にいた村に、その……友だちがいたの。

    おバカで生意気だったけど、初めてできたわたしの友だちなんだ」

    「………………」

    「この香水、その友だちが好きそうだから帰ったら自慢してやれって言いながら買ってくれたんだよ……すっごく楽しそうに笑いながら……!


    ……本当にわたしをこの島で捨てるつもりだったなら、わざわざこんなの買ってくれる必要ないもん……

    そんなこと言う必要もないもん!!わざわざ寂しがらせるようなこと、シャンクスは絶対言わないもん!!!」


    わたしがシャンクスを信じるのを諦めきれなかった理由。

    その香水をぎゅっと握りしめると、ぽろぽろと涙が溢れる。

  • 32122/12/22(木) 22:03:11

    「ウタ……」

    「ゴードンさん……本当のことを教えてよ……!」


    もうゴードンさんの顔を見る余裕はなかった。

    私は泣きながらありったけをゴードンさんにぶつけた。


    「もし本当にシャンクス達がこの国をめちゃくちゃにしたって言うんなら、わたしも海に放り込まれたって構わない!!

    それでも!!でも!!わたしはシャンクスを信じたいの!!!

    お父さんなんだよ!!?わたしの大好きな、わたしの……!!


    ……やだぁ……いやだよぉ……!!


    ……なにもわからないまま……シャンクス達のこと、きらいになりたくないよぉ……!!」

  • 33122/12/22(木) 22:08:22

    「………………」

    「おねがい……ゴードンさん……

    おねがいじまず……!!」


    もうわたしには、泣きながら頼むことしかできなかった。

    それでも、ゴードンさんは何も言ってくれない。

    何かを悩んでるのか、呻くような声しか聞こえない。

    その呻き声も、わたしの泣き声でかき消される。

    ゴードンさんの部屋の中には、わたしのすすり泣く声だけが響いていた。


    やがて聞こえたのは、ゴードンさんの一言。



    「…………やはり、初めから無理があったのかもしれないな……」

  • 34122/12/22(木) 22:13:45

    「…………え……?」


    はあ、とため息をついた後、ゴードンさんは読んでいた本を閉じて立ち上がった。

    そのままわたしの方に歩み寄ってきて、わたしの頭にゴードンさんの手がポンと置かれる。


    「……すまないシャンクス。君の頼みをこんなにも早く反故にしてしまうことを許してくれ。私は中途半端な人間だ……

    ウタ、君もすまなかった。君の言う通り、私は君に嘘をついていた」

    「じゃ、じゃあシャンクスは……!!」



    「ああ。君を捨てた訳じゃない」

  • 35122/12/22(木) 22:18:02

    「…………!!」


    パッと顔が明るくなったのが自分でもわかったけど、すぐにまた別の疑問が湧いてきた。

    「……でもそれなら、どうしてそんなウソをついたの?何か理由が……」


    「……………」


    ゴードンさんはさっきより渋い顔を見せた。

    シャンクスのことよりも、こっちのことの方が言いづらいのかもしれない。


    「ゴードンさん?」

    「……全て話すべきか……だが、この真実はあまりにも……

    …………いや、どちらにせよこれも話しておかなくてはいけないか……」


    自問自答を繰り返していたゴードンさんが改めてわたしに向き直る。

    その顔は何となく怖かった。

  • 36122/12/22(木) 22:21:32

    「いいかいウタ。あの日このエレジアに何が起こったのか、本当のことを今から話す。

    だが、何を聞いたとしても……これだけは絶対に、絶対に忘れないでくれ」

    「……?」



    「……君は、何も悪くない。」

  • 37122/12/22(木) 22:24:09

    本日はここまで

    因みに昨日の石鹸はジャスミンの香りイメージです

  • 38二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 22:33:17

    おつです
    例の映像で惨劇を見ながら危険だと叫ばれるよりは、ウタは悪くないとゴードンさんが前置きしたうえで話を聞くならまだショックは小さいか……?
    とはいえ9歳で知る内容としちゃ重いしな……

  • 39二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 22:38:55

    乙です!
    ウタちゃんが勇気を出して一歩を踏み出したことで大きく変わりましたねぇ
    原作でも誰か(ウタ・シャンクス・ゴードン)がその一歩を踏み出せていれば……という感じですから、納得しかないです
    続きも楽しみにお待ちしてます!

  • 40二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 23:05:47

    乙です
    うーん好き

  • 41二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 23:30:08

    もしかしてゴードンさんウタウタの本読んでた?

  • 42二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 06:48:40

    ほっし

  • 43二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 14:09:32

    今度はゴードンさんが勇気を出す番だ

  • 44122/12/23(金) 21:21:39

    くそおおおっ!! ちくしょうめぇ!!!

  • 45122/12/23(金) 22:40:34

    更新は明日になります

  • 46二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 22:44:42

    案の定雪ですか
    雪かきがんばってください

  • 47二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 06:42:44

    真実をこのタイミングで知れることが吉と出るか……

  • 48二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 07:45:07

    >>47

    でぇじょうぶだぁ。

    ルフィの石けんで曇りは洗い流される。

  • 49122/12/24(土) 13:52:40

    今日は昼夜更新出来たらいいなあ

  • 50122/12/24(土) 13:53:25

    ぽつりぽつりとゴードンさんが真実を話してくれる。

    シャンクス達に置いて行かれたことで頭が全然回らなくなってたけど、考えてみればおかしな話だった。

    わたしの記憶が無いのは、あの楽譜を歌い始めた瞬間から。次に気がついた時には、お城のベッドに寝かされてた。

    わたしが寝てる間にシャンクス達が何かをしたにしても、そもそもわたしはベッドに入った記憶が無い。

    あの時、何があったのか。


    ゴードンさんは一つ一つ丁寧に言葉を選びながら、時々言葉を濁しながら、あの日何があったのかをわたしに話してくれた。

    わたしのちっぽけな頭でも、理解できてしまうように。


    つまり、わたしは理解してしまった。


    なぜエレジアがこんなことになってしまったのかも。

    なぜわたしの記憶が無いのかも。


    そして、あの日のシャンクス達が、何をしていたのかも。

  • 51122/12/24(土) 13:57:49

    「……つまり、そのトットムジカが……

    …………ウタ?」


    「……は…………はっ……は、ッ」



    「う、あ、あ………あああ……!!」



    「わあああああああああ!!ああああああああああああああああ!!!」

  • 52122/12/24(土) 14:03:06

    「やだ!!やだやだやだ!!やだぁああ!!!」


    エレジアが滅んだ本当の理由。

    わたしにはとても受け止め切れるものじゃなかった。

    途中何度もつまづきながら、逃げるように自室に駆け込んで布団にくるまる。


    「ちがう!!ちがう…違う!わたし、わた、し、じゃ……ちが……あ あああ」


    誰に言い訳してるんだろう。

    この島にはもう誰もいないのに。


    人がいなくなった理由。

    それは


    そ れは


    「        」

  • 53122/12/24(土) 14:08:58

    「ウタ!!!」


    わたしを追いかけてきたゴードンさんが部屋に駆け込んできた。

    いやだ。

    会いたくない。

    顔を見られたくない。

    今更どんな顔を して 会 えば


    いや

    や だ


    「ウタ!!聞いてくれ!!」


    こわい

    こわい よ

    いやだ こわい 


    こないで

  • 54122/12/24(土) 14:13:27

    「ウタ……!!」


    きこえない

    ききたくない

    わたし さけんでるから ききたくない


    こえがでなくなるまでさけんだ

    ごーどんさん もういない?


    「…………」


    まだいる どうして

    はや く で ていって



    「……すまない……」


    …………?

  • 55122/12/24(土) 14:18:06

    「……やはりショックが大き過ぎたか……

    当人が受けるショックも考えず……何をしているんだ私は……」


    ………………


    「あの日だってそうだ……良かれと思って国中にこの子の歌声が聞こえるようにした結果がこれだ……」


    ………………


    「…………この子が一体何をしたと言うんだ……ただ我々に素晴らしい歌を聞かせてくれただけ……

    ……ただ、大好きな歌を歌っていただけだと言うのに……!!」


    ……どうして ゴードンさんが泣いてるの?

    わるいのは わたしなのに

  • 56122/12/24(土) 14:22:44

    「歌声で国が滅ぶなどということがあるものか……!!

    この子から全てを奪ったのは、他でもない……」


    ベッドの横にある椅子に座ったまま ゴードンさんはずっと泣いている。

    気がつくとわたしは ベッドから降りていた。


    「ゴードン、さん」

    「!! ウタ……」


    「ゴードンさんのせいじゃ、ない、よ。

    わるいのは わた」


    「違う!!!」


    ゴードンさんの大きな身体が、私をぎゅっと抱きしめた。

    冷たい。でも、あたたかい。

  • 57122/12/24(土) 14:26:11

    「違う……それは絶対に違うぞウタ……!!

    さっきも言ったろう……君は何も悪くない、何も悪くないんだ……!!」


    「……でも わたし うたったから」


    「ああ、君は歌った……大好きな歌を歌っただけだ……!

    それなのに、大人達の都合でこんな思いをさせてしまってすまない……!!


    君は悪くない……君の歌声には何も罪はないんだ……!!

    だからどうか、歌うことを……自分の歌声を、嫌いにならないでくれ……!!」


    「ゴー……ドン、さ…………


    …………う……うえ…え……!」



    その後のわたしは、だれが悪いとか、悪くないとか、もうよく分からなくなって、頭の中がぐちゃぐちゃになって……

    泣いて疲れて眠るまで、ゴードンさんの腕の中でただ泣くことしかできなかった。

  • 58122/12/24(土) 14:27:58

    とりあえずここまで

  • 59122/12/24(土) 20:10:54

    もう一丁行こうか

  • 60122/12/24(土) 20:12:07

    翌朝。窓から差し込む眩しい日差しでわたしの目は覚めた。

    あれ、なんでベッドで寝てるんだろう?


    「ぅん……?」

    「目を覚ましたかい」

    「?」


    昨日と同じ椅子にゴードンさんは座ってた。

    その傍らにある机の上には、まだ湯気が立っているマグカップが2つ。

    湯気と一緒に、甘くていい匂いがしてきた。


    「ゴードンさん……」

    「おはようウタ。冷めないうちに飲むといい」

    「…………」


    促されるままにカップに口をつけて啜る。

    まだちょっと熱かった。

  • 61122/12/24(土) 20:15:10

    「……ゴードンさん、昨日は……」

    「……すまなかった」

    「!」


    ゴードンさんがわたしに頭を下げた。

    どうして?謝らないといけないのは……


    「いつかは話す必要があると思っていたが、もっと順を追って話すべきだったな……

    一度に伝えたせいで君に大変なショックを与えてしまった。すまなかった」

    「……ううん、そんなことない」

    「……だが、君に感謝もしなければいけない」

    「かん、しゃ?」

    「君が昨日のように必死で問うてくれなければ……わたしはもしかすると、真実をいつまでも話せないでいたかもしれない。

    君が傷つくことを恐れて、いつまでも君に嘘をついていたかもしれない……自分の臆病さに嫌気がするよ」

  • 62122/12/24(土) 20:18:18

    「……でも、ゴードンさん、話してくれたよ」

    「ああ。君が勇気を出したなら、私もそれに応えなければいけないと思ったからだ。

    気持ちは落ち着いたかい?」

    「……よく分かんない」


    一晩寝たところで、頭の中はごちゃごちゃのまま。

    むしろ下手に落ち着いてしまったせいで、わたしがやってしまったことと改めて向き合う時間ができてしまった。


    「わたし……」


    「君は悪くない」

    「!」

  • 63122/12/24(土) 20:22:24

    「……不器用な人間ですまない。こんなことしか言えない私を許してくれ……」

    「…………ううん、大丈夫」


    本当は全然大丈夫じゃない。

    でも、ゴードンさんが何度も何度もわたしは悪くないって言ってくれるから、少しだけ心が軽くなってきた。


    「君が望むなら、これからも君の身の回りの世話は私がしよう。シャンクス達に頼まれたからな。

    だが……私はきっと、君の父親代わりにはなれない」

    「?」

    「君にはもう、素敵なお父さんが沢山いる。彼らの役目を奪うわけにはいかない」

    「お父さん…………」

  • 64122/12/24(土) 20:25:09

    そういえば、大事なことを聞いてなかった。

    一番聞きたかったこと。


    「……シャンクス達は、どうして……」

    「……彼らもきっと不器用な人間なんだろう。

    私が最初に赤髪海賊団がこの国を滅ぼしたと言ったのは、彼らに頼まれたからなんだ」

    「……?」

    「もし君が真実を知ってしまえば、君はきっととても傷つくだろうと彼らは考えた。

    故に、彼らは全てを背負うつもりだったんだ。君が傷つくことがないように……」


    そんな……

    じゃあ、わたしはシャンクス達に、罪を……

  • 65122/12/24(土) 20:27:53

    「………………

    ……じゃあ、わたしを置いて行ったのは……?」

    「…………ある意味彼らは、君の歌声に一番惚れていたのかもしれないな」

    「え?」

    「彼の言葉をそのまま借りるなら……

    『あいつの歌は最高なんだ。海軍に追われるおれ達が、その才能ごと囲っちまうわけにはいかない』」

    「………………」

    「彼らは君が世界一の歌い手になることを微塵も疑っていなかった。

    そしてその為には、私に預けることがあの時点での最善だと判断し、君を乗せずにこの国を離れてしまった……


    ……彼らの名誉のために言っておけば、間違っても君をこの国に捨てて行ったわけじゃない。それだけは……」

  • 66122/12/24(土) 20:30:40

    「……なに、それ…………」


    ぐちゃぐちゃにぐちゃぐちゃを重ねて、わたしの頭の中はもうミキサーで混ぜたみたいになっていた。


    この国を壊しちゃったのはあの変な楽譜で、

    でもそれはわたしが歌ったから目覚めちゃって、


    シャンクス達はそのわたしの罪を被って、

    そのままわたしを世界一にするために置いていって……


    だから シャンクス達は わたしを捨ててなくて

    わたしは シャンクス達に おいていかれたくなくて

    でもわたしは この国に おいていかれて ひとりで



    「あ……ああ………」



    そこでもう一度、わたしの意識は落ちてしまった。

  • 67122/12/24(土) 20:33:24

    「…………気を失ってしまったか。

    無理もない。まだ10歳にもなっていないのに、こんな……


    ……シャンクス、あの場では私もそうするのが最善だと思い引き受けてしまったが……

    本当にこれでよかったのだろうか……彼女自身の気持ちはどうなる……?」


    「………………」


    (……この島にずっと私と2人きりなんて、この子があまりに不憫だ。どうにかしなければ……

    いつも来ている商船にどうにか話をつけられないだろうか?違う島まで乗せて貰うぐらいは……

    ……この子がここに来る前にいた村なら、知り合いもいるはずだ。何かのキッカケになるかもしれない

    ううむ、村の名前は確か……)

  • 68122/12/24(土) 20:35:06

    本日はここまで

    おかしいな匂いフェチ要素が迷子になってきたぞ
    あと早くもこのスレで終わる自信もなくなってきたぞ

  • 69二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 20:38:45

    最高のスレです。
    続きを待っています。

  • 70二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 20:46:46

    >>68

    話の主軸が「幼少期匂いフェチになったルフィがライブでハグして匂いが無いウタに気づく」だから話の途中でウタとルフィが離れ離れになる都合上一時匂いフェチ要素無くなるのはしゃーなししゃーなし

    エレジア編でもルフィの石鹸(香り)が活躍もしたからぜんぜんおっけーおっけー


    二人の会話シーンやその後を書いてくれたの俺はめっちゃ嬉しいよ

    いくらスレ跨ごうが存分に書いてほしい

  • 71二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 20:50:16

    シャンクスってウタ降ろしてからどれぐらいフーシャ村にいたんかな

  • 72二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 01:11:01

    >>71

    ウタと出会ったのがルフィ6~7歳で、エースとサボとの出会い(赤髪海賊団がフーシャ村から去ったあと)がルフィ7歳だったから1年未満のはず

  • 73二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 08:03:52

    おはようの自保守

  • 74二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 14:25:31

    ルフィ早く嗅いでやってくれ!

  • 75122/12/25(日) 20:36:08

    ウタサンタ可愛かったわね
    白ひげ出なかったのは残念だが

  • 76122/12/25(日) 20:37:36

    「………………」パチ


    目を覚ましたらまたベッドの上だった。

    寝てたのか気を失ってたのかよく覚えてないけど、ちょっと頭が痛い。

    太陽はもう沈みかけていた。今日は一日ベッドの上で過ごしてしまったらしい。


    「…………」グウゥ

    「……お腹すいた」


    食欲はないけどお腹は空く。

    一日何も食べてないならそれも尚更。

    そろそろ晩御飯が用意されていることに賭けて、わたしは食堂に向かった。

  • 77122/12/25(日) 20:42:14

    ────────

    「…………?」


    食堂に近づくにつれて、いつもと違ういい匂いが漂ってきた。

    どん底だった食欲が少しだけ戻ってくるような、美味しそうな匂い。

    それから、ジュウジュウとお肉の焼ける音も聞こえる。

    匂いも音も、いつもの宴にはつきものだった。

    それを久しぶりに感じて、何だか少し懐かしく、そしてまたお腹がすいてきてしまった。


    ────────


    「……ゴードンさん?」

    「ええと、それから焼き加減は……

    ん?ああ、起きたかい。夕食ならもうすぐ出来上がるからね、少し待っていてくれ」

    「……はーい」

  • 78122/12/25(日) 20:47:41

    「お待たせ。今日は少し豪勢にしてみたぞ」

    「…………!」


    鼻から口からわたしの興味を引いていたものが、目からもわたしをワクワクさせてくれた。

    肉汁でキラキラと輝く一枚肉。少し焦げ目がついているのは焼き加減なのか、それともゴードンさんがちょっと焼きすぎたのかな。


    「……おいしそう」


    目の前に出てきたことで、一段と強くなった美味しそうな匂いがまた食欲を刺激する。

    くう、ともう一度お腹が鳴った。ちょっと恥ずかしい。


    「……これ、どうしたの?」

    「今日は商船が来る日だったからね。君が眠っている間に少し贅沢なものを買ってみたんだ」

    「……ふーん」

  • 79122/12/25(日) 20:51:40

    「専門のコックのように上手くはできないが……今日はちゃんとそれ用のレシピも見ながら作った。美味しいといいんだが……」

    「……いただきます」


    用意されたナイフで切って一口。

    ラッキールウのワイルドな味付けとかマキノさんの素ぼくな味とはまた違う、何というか……上品な味。

    きっとお肉自体も高級なものを使ってるんだと思う。凝った過程を踏まなくても、美味しい食材を使って、レシピ通りに作れば……


    「……おいしい!おいしいよゴードンさん!」

    「そうか!それはよかった……」


    久しぶりに食べた気がするお肉はとても美味しかった。

    美味しそうに食べるわたしを見て、ゴードンさんも少し笑ってくれたのが嬉しかった。

  • 80122/12/25(日) 20:56:41

    「ごちそうさまでした」


    結局全部食べ切っちゃった。

    さっきまで食欲がなかったのがウソみたい。


    「……ありがとう、ゴードンさん」

    「何がだい?」

    「あの……これ、わたしを元気づけようとして……」

    「ああ、そんなことか。


    ……私に出来ることは限られているからな。せめてこれくらいのことはさせてくれ」

    「………………うん」


    どうしてそんなに自分を下げた言い方をするんだろう。

    わたしがこの島で生活できてるのは、ゴードンさんのおかげなのに。

  • 81122/12/25(日) 21:01:19

    「……ウタ」

    「?」

    「昨日の今日でまだ頭の中の整理がついていないだろう。

    だが、1つ聞かせてくれないか」

    「……なに?」


    「……君は……

    ……ウタはまだ、シャンクスに……会いたいと思うか?」


    「…………シャンクスに……?」


    ゴードンさんから出てきたのは思ってもみなかった質問だった。

    整理がついていないというのはゴードンさんの言う通り。

    今はこうやって落ち着いてはいるけど、まだ頭の中は分からないことだらけ。


    …………でも、もしシャンクスにもう一度会えるなら……

  • 82122/12/25(日) 21:05:39

    「……ゴードンさん」

    「何だい?」

    「……答える前に、わたしからも質問していい?」

    「ああ、いいぞ」


    「…………シャンクス達はさ、最後に何て言ってたの?」

    「最後?」


    「わたしをゴードンさんに預けて、この島を出る前に……最後、何て言ってたかな?

    こんなことをする奴なんて、もう娘じゃない!とか……

    人殺し女とはこの島でおさらばだ!とか……言ってなかった……?」


    「………………



    『離れていても、お前は一生、おれの娘だ』」

  • 83122/12/25(日) 21:09:26

    「!!!」

    「……彼の最後の言葉をそのまま借りれば、こんなことを言っていたよ。

    彼らが君をこの島に置いて行ったのは事実。そこに思うことがあるのは当然だ。

    だが……


    彼らの中には確かに、君への大きな愛がある。それだけは……忘れないであげてくれ」


    「………………」


    罪を被せてしまったこととか、置いて行かれたこととか、整理のつかないことは山ほどあるけど……




    シャンクス達は、まだわたしを愛してくれている。

    今のわたしには、それだけで十分だった。

  • 84122/12/25(日) 21:15:30

    「…………じゃあ、会いたい。


    わたし、もう一回シャンクス達に会いたい。


    会って、思いっきり抱きついて、

    変な歌歌ってごめんなさいって謝って、

    勝手に置いてくなってビンタして、パンチして、それから、それから……


    ……それ、から…………


    ……とにかく、会いたい……

    ……会いたいよお……!!


    シャンクス達に、また……会いだいよ゛お……!!!」

  • 85122/12/25(日) 21:19:36

    また涙が溢れてきたわたしを、ゴードンさんが優しく撫でてくれた。


    「まあ、当然だな。聞くまでもなかったね。

    ……実は今日少し奮発したのは、ウタを元気づけるため以外にも理由があったんだ」

    「……?」

    「普段来ている商船に、どうにかして君が以前いた村まで乗せてもらえないかと頼んでみたんだ。

    確かフーシャ村……だったね?」

    「あ……」


    フーシャ村。

    シャンクス達の賑やかな笑い声や、勝負を挑んでくるルフィの生意気な声がいつでも聞こえてくる場所。

    風に乗ってくる潮風の匂いに、土と草原の匂いが混ざった、わたしの好きだった匂いがする場所。

  • 86122/12/25(日) 21:23:51

    「フーシャ村に……帰れるの?」

    「『ゴードンの旦那にはいつも贔屓にしてもらってるからな!』……だそうだ。

    今は事情があって行けないらしいが……再び行けるようになれば乗せて行ってくれると約束することができた。

    いつになるかは分からないが、そう遠くはならないはずだとも言っていた。いつでも出発できるように準備しておくといい」

    「…………!! 分かった!!」


    シャンクス達にまた会える。

    シャンクスが何て説明したかは分からないけど、きっとルフィもわたしの帰りを待ってる。はず。


    ルフィにもお礼言わなきゃ。せっけんありがとうって。

    それにこの香水、ルフィも気に入ってくれるかな?


    ……多分また抱きついてニオイ嗅いでくるし、キレイにしとかないとダメだよね。

    うーん、今日はどのせっけん使おうかな……

  • 87122/12/25(日) 21:27:19

    本日はここまで
    行動力のあるゴードンさんは頼もしいぞ

  • 88二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 21:39:11

    乙です!
    この流れだと、シャンクスたちとはすれ違うけれど、ルフィとは再会できそうですな
    次回も楽しみにしております!

  • 89122/12/25(日) 21:41:43

    あと素ぼくの「ぼく」って漢字使えないんスねここ

  • 90二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 07:01:26

    おはよう

  • 91二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 15:30:25

    保守

  • 92二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 15:35:47

    相談できないウタとシャンクス、積極的に動けないゴードン、唯一の悪役トットムジカの奇跡の噛み合い狂宴がフィルムレッドだから、そりゃ積極的なゴードンさんは頼もしか!

  • 93122/12/26(月) 20:55:16

    今日はちょっと短め

  • 94122/12/26(月) 20:55:44

    それからは、フーシャ村に帰れる日を今か今かと待つ日々になった。


    正直、気持ちの整理はまだついていない。

    エレジアが滅んでしまったことは変わらないし、その原因がわたしがあの歌を歌ってしまったから、というのも変わらない。

    その事実があるから、よくない方向にばかりものごとを考えてしまう。それもほとんど毎日。


    誓ってわざとやったわけじゃない。

    それでも、招いてしまった結果の重さに潰されそうになることも両手で足りないぐらいある。


    そんな何もいいことがない日々の中に芽生えた、たった一つの希望の芽。


    『フーシャ村に帰れる。シャンクス達にまた会える』


    それだけが、今のわたしの支えだった。

  • 95122/12/26(月) 20:59:42

    ゴードンさんはそんなわたしをよく気遣ってくれた。

    ご飯は日に日に美味しくなっていくし、喉にいいっていう紅茶も毎日出してくれた。

    そのおかげか、ボロボロだったわたしの喉も少しずつ良くなってきている。


    後から聞いた話だけど、フーシャ村の名前を出してからのわたしは、それまでよりも目に見えて元気になってたらしい。

    自覚はなかったけど、今までのわたしは目に光が灯ってなかったみたい。


    商船が来る度にフーシャ村について聞いてくれてるみたいだけど、なかなか首は縦に振られなかった。

    フーシャ村に行けない理由、一体何なんだろう。


    ……まさか、ルフィ達に何かあったとか……

    …………ないない。そんなわけないよ。シャンクス達もいるんだから。


    そして、とうとうその日が来た。

  • 96122/12/26(月) 21:03:51

    「ウタ!」

    「? どうしたのゴードンさん、そんなに慌てて」

    「やっとだ!やっと船に乗せてもらえる日が決まったぞ!」

    「えっ!?ホント!!」

    「ああ。ようやくフーシャ村まで行ける目処がついたそうだ。

    次に商船が来るのは3日後、その時に乗せてもらえる約束だ」

    「やった……やったぁ……!」

    「待たせてしまってすまない。もう少し早く行けると思ったんだが……」

    「ううん、ゴードンさんのせいじゃないよ!ありがとうゴードンさん!」

    「うむ。それまでにちゃんと出発できる準備をしておくんだよ」

    「分かった!!」

  • 97122/12/26(月) 21:06:28

    この日をどれだけ待ったんだろう。

    目の前がパッと明るくなった気がした。


    みんなにまた会える。

    会ってまた、声を聞ける。匂いを嗅げる。

    考えるだけで嬉しくなる。


    それまでにちゃんと喉を治しておかないと。

    それから、毎日お風呂にも入らなきゃ。

    ルフィにくさいって言われたくないし……

    ……もし言ってきたら引っ叩いてやるけど。


    ああ、あと3日。待ち切れないなあ……

  • 98122/12/26(月) 21:09:51

    ───────


    「商船だから荷物が多くて狭いだろうが、ちょいと我慢してくれよな。

    フーシャ村までは大体2日ぐらいだ。もし船酔いしたりしたら言ってくれよ」

    「はーい」

    「とんでもない。乗せてくれるだけでありがたい」


    久しぶりに感じる波の揺れ。

    海賊船とはまた違う乗り心地が少し新鮮だった。


    「でも一体どうしたんだいゴードンの旦那。フーシャ村といやあ、ゴア王国の端っこの辺鄙な村だろ?

    なんでまたそんな田舎に行きたいなんて言うんだい。友達でもいるのか?」

    「私ではなくこの子の家族と友達がいるんだ。訳あって逸れてしまったんだが……」

    「何だって、家族や友達と逸れた?そりゃあ大変だ!かわいそうに……

    ようし、早く家族に会えるようにいつもよりスピードアップして行ってやろう!」

    「あ、ありがとうございます!」

  • 99122/12/26(月) 21:14:11

    「ところでなんだが……」

    「何だい?」

    「今までフーシャ村に行けなかった理由を教えてくれないか?もし村に何かあったのなら、この子にも教えてあげておきたいんだが……」

    「んーいや、何かあったと言うよりかは何も無いように用心してたって感じだな」

    「?」


    「つい此間までフーシャ村はどえらい海賊が航海の拠点にしてたらしくてね。何でも国を滅ぼしたとか……

    そいつらがいる間はフーシャ村に行くのはやめておこうって話になってたわけさ。わざわざ危ないところに突っ込みたくもないからね」

    「なるほど……」




    …………あれ?

  • 100122/12/26(月) 21:19:49

    「…………?」


    ゴードンさんも気づいたらしい。

    そのどえらい海賊っていうのは、多分シャンクス達のこと。


    シャンクス達がいたから、フーシャ村には商船が近づけなかった。



    じゃあ、行けるようになったってことは……?



    「……つ、つまり、行けるようになったということは……」





    「ああ、ようやくその海賊どもが村を離れたんだ。別の拠点を探してな」

  • 101122/12/26(月) 21:22:46

    本日はここまで

    人生楽ありゃ苦もあるさ

  • 102二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 21:27:16

    悲しいすれ違い(物理)。

  • 103二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 22:07:29

    oh……ここでも誰も悪くない負の連鎖が……ルフィはいるよね!? ガープさん山に連れてくのちょっと待って!
    まあ、最悪のパターンでもマキノさんや村長はいるか……(震え声)

  • 104二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 07:06:46

  • 105二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 09:03:21

    保守

  • 106二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 19:24:37

    保守

  • 107122/12/27(火) 20:57:13

    早めに晴らすっつったのになかなか晴れねえじゃねえかどうなってんだおい

  • 108122/12/27(火) 20:58:14

    「………………」


    目の前がまっくらになった気がした。

    シャンクス達はもう、フーシャ村にいない……?


    「な…………」

    「……ん? 

    ……あ、あー……海賊の話はするべきじゃなかったか。

    すまないな嬢ちゃん、旦那も。エレジアも確か……」


    「……いや、大丈夫だ。私は構わない。

    …………ただ、この子は……」



    「…………だい、じょうぶ、です」

  • 109122/12/27(火) 21:03:32

    ここで泣いたら、せっかく乗せてくれてるこの人が気分を悪くしちゃう。

    それに、もし海賊の娘だってバレたら、船から叩き落とされるかもしれない。

    そしたらゴードンさんにも迷惑がかかっちゃう。

    泣いちゃダメだ、我慢しなきゃ……我慢……



    ……だけど、そんな子供の悪あがきは大人には通じなかったらしい。


    「……嬢ちゃんは何か訳アリみたいだな」

    「っ!」


    あっさり見抜かれたことでわたしの体は震えた。

    いやだ、わたし、わたし……

  • 110122/12/27(火) 21:08:21

    「ま、何を聞いたところで進路は変わらないんだ。これ以上は聞かないでおくよ」

    「……ありがとう、ございます」


    気を利かせてくれた船員さん。それ以上そのことについて話すことはなかった。

    あれ以上話を続けていたら多分わたしも我慢できなかったし、切り上げてくれて助かった。


    代わりに船員さんはいろんな土地の話を聞かせてくれたらしい。どこの食べ物が美味しかったとか、どこの国が楽しかったとか。

    どうも船の運行中は案外暇らしい。もちろん嵐が来たりしたらそんなことも言ってられなくなるらしいけど、東の海はまだ平和らしい。


    ……どれもこれも『らしい』なのは、後からゴードンさんに聞いたから。


    フーシャ村に着くまでの間、わたしはほとんど上の空だった。

  • 111122/12/27(火) 21:11:17

    「よ〜し、そろそろ着くぞ。もう夕方になっちまったが、約束通り予定より早めの到着だ」

    「ああ、ありがとう」

    「………………」


    まだ懐かしさを感じるには早い、それでも懐かしく感じてしまう海から見たフーシャ村。


    その船着場に、レッドフォース号の姿はやっぱりなかった。


    「……ありがとうございます」


    船員さんは「内緒だぞ」とお土産に果物の袋詰めをくれた。

    せっけんや香水用に薄められた匂いじゃない、生もの特有の強い甘い香りが、今だけは憂鬱だった。

  • 112122/12/27(火) 21:15:32

    船を降りて村へ歩いていく。

    その道中でもゴードンさんは謝りっぱなしだった。


    「……すまない。私がもっと早く商船に相談していれば……」

    「……ゴードンさんのせいじゃないよ。

    シャンクス達がいたから来られなかったんなら、遅くても早くても変わんないよ……」

    「ううむ、しかし……」


    ゴードンさんは悪くない。むしろわたしのために動いてくれた。

    悪くないからこそ、謝られると逆にぶつけようのない感情が重くのしかかってくる。

  • 113122/12/27(火) 21:19:21

    記憶の中のフーシャ村はいつでも賑やかだった。

    シャンクス達はほとんど毎晩宴してたし、ルフィだって毎日のように突っかかってきてた。


    でも今のフーシャ村は、なんだかとても寂しかった。

    夕暮れ時で人がいないからかもしれないけどすごく静かで、海鳥の鳴く声しか聞こえなかった。


    よく言えば穏やかなんだろうけど、シャンクス達がいないだけでこんなにも様変わりするんだ。

    この様子じゃ、きっと賑やかなのはルフィだけ……



    「…………ルフィ?」

  • 114122/12/27(火) 21:22:41

    そういえば、ルフィはどこにいるんだろう。

    やっぱり、ルフィもシャンクス達の船に乗って行っちゃったのかな……

    シャンクスは絶対ダメだって言ってたけど、あんなに乗りたがってたし、乗せてもらっててもおかしく…………




    「……あ」




    どうしてそっちに目が行ったのかは自分でも分からなかった。

    ここからだとすごく遠くに見える、あの日ルフィと新時代を誓い合った丘。



    ほんの小さくだけど、見覚えのある麦わら帽子が揺れているのが見えた。


    気づいた時には、わたしはその丘へ向かって駆け出していた。

  • 115122/12/27(火) 21:26:02

    本日はここまで
    んでも結局エレジアがどこにあるのかは一切が謎のままだねえ

  • 116二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 21:28:21

    晴らしてくれ太陽神!どうか!どうか!

  • 117二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 21:29:24

    >>115

    乙です!

    さあいよいよですな! とりあえず思いっきり抱き締めて抱き締め返され、匂いを嗅ぐのだ! 話はそれからだ!

  • 118二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 06:45:32

    保守

  • 119二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 07:13:07

  • 120二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 17:00:48

    あげるよ

  • 121122/12/28(水) 22:04:57

    おっほっほほホオーウホッホアアー!!!(仕事納め)

  • 122122/12/28(水) 22:05:17

    「………………」


    シャンクス達がいなくなったフーシャ村はとても静か。

    ウタが抱いた感想はルフィにとっても同じものだった。


    赤髪海賊団が村を離れた今、この村の賑やかさ一番手は自動的にルフィになる。

    だが、今のルフィにはその一番手の座すら危うい。


    わずか1年程度の間に、ルフィは2度の別れを経験した。

    それも片方は、今でも何が何やら分からぬまま。



    また会おうという約束を放り投げて、彼女は自分の前からいなくなってしまった。

  • 123122/12/28(水) 22:09:51

    彼女に『何か』があったことは、まだ幼きルフィでも容易に察することができた。できてしまった。

    それほどまでに、あの日の赤髪海賊団の様相は異様なものだった。

    一度はシャンクスに絶好まで突きつけた。何も分からないままお別れなんて冗談じゃない。明らかにウソをついている態度も気に食わなかった。

    だが、誰にだって話したくないことはある。尊敬する副船長の頼みもあり、自分の中で折り合いをつけ、無理やり飲み込んだ。

    これもまたルフィが一歩成長した証とも言えるが……


    …………それと寂しいという感情とはまた別問題。


    結局赤髪海賊団もルフィを置いて行ってしまった。

    海賊には自分でなる!と宣言し、シャンクスの宝物である麦わら帽子を託されての別れ。

    形としては、先のウタとの別れとはまるで正反対の双方納得できる形でのお別れだったが、どうしても寂しさは募る。

    彼らが行ってしまった先、そしていつか自らが目指すであろう水平線を眺めるのがいつしかルフィの日課になっていた。




    「ルフィ………!!」

  • 124122/12/28(水) 22:13:14

    「え? …………あ」



    静寂の中に突然割り込んできた声。


    声のする方を振り向いて、ルフィは自分の目と耳を疑った。



    見間違えるはずもない、特徴的な赤とピンクのおめでたい髪色。


    『聞き惚れる』という感覚を初めて味わった、素敵な歌を響かせるその声。



    あの日いなくなってしまったはずの彼女が、今自分の前に立っていた。



    「…………ウ、タ?」

  • 125122/12/28(水) 22:17:13

    「お前、なん」


    なんでここに?

    そんな至極当たり前の疑問を口にする前に、ルフィの両足は宙に浮いていた。


    「ル゛フィ゛ーーーッ!!!」

    「うわあ!?」


    躊躇いなく突っ込んできたウタに押し倒される形で、ルフィを下にして2人は草原に転がった。

    ルフィが痛みを感じなかったのは、自らがゴム人間になってしまったからか、柔らかい草原がクッションになったからか、それとも。


    「ど、どうしたんだよウタ!?一体何が……」


    「ルフィ…………


    ……あいたがっだ……さみじがっだよお…………!!」

  • 126122/12/28(水) 22:22:50

    「え……」


    最後に見た表情は、もっと朗らかに笑っていたはずだった。

    だが今の彼女は、そんな思い出の中の姿とは似ても似つかないあまりにも弱々しいものだった。

    心細そうに震える声に、同じくふるふると力なく震える身体。

    それでいて自らに縋り付くその腕は、何かに怯えているかのようにその力を段々と増していく。

    ルフィのシャツの胸元が少しずつ湿っていく。顔を見るまでもなく、泣いていることが分かった。


    「お、おい、ウタ……」


    久しぶりに顔を見た時までは、ルフィ自身も少し泣きそうになったことは出来ればルフィとしてはウタには知られたくないもの。

    だが、それはどちらかと言えば嬉しいという感情からくる涙。今ルフィの服を濡らしているウタの涙はどう考えてもそんな優しいものではない。

    そもそもあの気丈なウタがこんな風になっている時点でただ事ではないことは火を見るよりも明らかだった。

    だが、何かがあったことは分かっても、何があったかを察するにはあまりにも情報が少なすぎる。

    ルフィは最早どうすればいいか分からなくなっていた。

  • 127122/12/28(水) 22:27:26

    「……なあウタ、お前……」


    「……ごめん……ルフィ、重いよね……」

    「!」


    「…………でも、ごめん……

    …………はなれたく……はなしたく、ないの…………いやなの…………!!

    ごめんねルフィ……ごめん…………!」


    何度も鼻を啜りながら、涙声で離れたくないと訴えるウタ。

    口では謝っているが、ルフィにしがみつくその力は増すばかり。

    一体どんな経験をすればこんなふうになってしまうのだろうか。ガープの特訓でもここまではならないはず……


    そんなことを考えながら、ルフィはあることに気がついた。

  • 128122/12/28(水) 22:32:09

    「…………ん?」


    異様な状況のせいで今まで気がつかなかったが、胸元に顔を埋められているせいか、ウタの頭がちょうど顔の下あたりにくる。

    身体の震えに合わせて小刻みに揺れるウタの髪からは、ふわりと石鹸のいい香りが漂ってきていた。


    (これ…………)


    あの日渡した石鹸の中に、確かこの匂いがする物も入れていたはず。

    ちゃんと使ってくれてたのか。

    そのことに気がついたルフィは、おおよそ今の状況には相応しくない喜びのような感情を抱いていた。


    だが、何か役に立てばと思って渡した石鹸が、その役目を果たせていたかどうかは……

    ……今の状況を見て、自信を持てという方が無理な話だった。

  • 129122/12/28(水) 22:38:27

    ウタからふわふわと漂ってくる甘い香りの中には、ほんの少しだけ汗の匂いも混じっていた。

    余程慌てて走ってきたのか、よく聞くと嗚咽の中に荒い呼吸も混じっていて、どこか悪いのではないかと心配になるレベルで乱れ切っていた。


    そのことにも気がついたルフィは、一つ大きく息を吸う。


    「………………」


    特に何か事情が分かったわけでもないし、何かを慮ったわけでもない。


    ただ、何となくそうしたくなったから。


    「…………いいぞ。好きなだけ泣けよ」


    ウタの背中に手を回し、震える身体を、髪をそっと撫でる。

    それに反応するかのようにウタの身体がぴくりと震えたかと思えば、しがみつく手に籠る力がほんの少しだけ緩んだような気がした。

    そんな現状に少しだけ居心地の良さも感じながら、ルフィはウタの気が済むまで全てを受け入れることを決めた。

  • 130二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 22:39:58

    幼き太陽神…

  • 131122/12/28(水) 22:40:04

    本日はここまで

    子供エミュがムズい…ポロッ

  • 132二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 23:06:07

    ゴードンさん置いてけぼり

  • 133二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 23:39:15

    ゴードンさんハラハラしながら物陰から見守ってそう
    他の人に見つかったらゴードンさんが不審者扱いされてしまう

  • 134二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 08:26:20

    どうにか晴れそうですね

  • 135122/12/29(木) 17:02:49

    年内は今日が最後になるかもしれない

  • 136122/12/29(木) 17:03:49

    「……ふぅー…………ふー……」

    「…………」


    「…………ごめん……たぶん、もうだいじょうぶ……

    はやく、どくから……」


    「いーって」ギュッ

    「わっ」


    少し冷静になったのか、それとも逆に焦っているのか、まだ呼吸も整っていないのに無理やり身体を起こそうとするウタ。

    そんなウタを、ルフィは少し強めの力で抱き留めた。

  • 137122/12/29(木) 17:07:22

    「……ルフィ……?」

    「まだぐちゃぐちゃじゃねーかお前。全然泣き止んでねーぞ」

    「でも……」


    「それに、おれがこうしてたくなった。ウタが泣いてんのイヤだ、おれ」

    「……!」


    ぽんぽんと優しく背中を叩かれる感触に、ウタの涙はゆっくりと、ほんの少しずつだが引っ込んでいく。

    まるで赤子をあやすようなルフィの態度に、わたしの方がお姉さんなのに、と思わなくもなかったらしいが……


    「……うん」


    ウタは先程までよりも穏やかな気持ちで、もう一度ルフィに体重を預けた。

  • 138122/12/29(木) 17:11:32

    「ルフィの服……びしょびしょになっちゃったね……」

    「こんなん着替えりゃヘーキだよ。ウタの方こそケガしてねェか?いきなり突っ込んできたし」

    「うん……わたしも大丈夫。ごめんね、いきなり押し倒したりしちゃって」

    「そりゃびっくりしたけど、おれも平気だ!ウタにこかされたぐらいじゃケガなんてしねーぞ!」

    「もう、相変わらず生意気なんだから……


    ……でも……ありがと、ルフィ」

    「ニシシ、おう!」


    長い船旅の影響か、泣き疲れてしまったからか。

    それとも、この太陽のような少年に包まれて安心したからか。


    ウタの嗚咽が少しずつ小さくなり、やがて寝息に変わるまで、そう時間はかからなかった。

  • 139122/12/29(木) 17:14:50

    ─────────

    「……行ってしまった……」


    一方その頃のゴードン。

    突然走り出したウタに呆気に取られているうちに、あっという間に見失ってしまった。


    「探しに行った方がいいものか……しかし、土地勘に関しては間違いなくウタの方がある。

    いずれ戻ってくるだろう。今はここで待っている方がいいかもしれないか……

    いやしかし、もうすぐ暗くなる。やはりここは探しに行った方が……」


    「あのー……」

  • 140122/12/29(木) 17:19:22

    「?」


    ゴードンに声をかけたのは、頭に巻いたバンダナがよく似合う女性だった。


    「あ、すまない。ここに立っていては邪魔だったかな」

    「いえ、こちらこそごめんなさい。何かお困りだったようなので」

    「ああ、ありがとう。実は私と一緒にこの村に来た子が、到着するなりどこかへ走って行ってしまったんだ。

    追いかけようにも道が分からなくて、どうしようかと思っていてね……」

    「そうだったんですね。どっちの方へ走って行ったかは分かりますか?道案内ぐらいなら……」

    「彼方の方だ」


    ゴードンが一方を指差すも、女性は首を傾げる。

  • 141122/12/29(木) 17:23:32

    「……? あっちには確か丘ぐらいしかなかったはず……村の人でも用がなければ行くこともないのに……」


    「丘?」

    「はい、あの道はあそこに見える丘に繋がっているんです」


    女性が指差した先には、海がよく見えそうな見晴らしのいい丘が見えた。

    エレジアでもよくウタはよく海を見ていた。彼処もウタのお気に入りの場所だったのだろうか。


    「なるほど。そういえば、ウタも彼方の方を見ていた気がするな……」




    「………………ウタ?」

  • 142122/12/29(木) 17:27:50

    「ん?」

    「あ、あのすみません……今、ウタって……」

    「……? ああ、言ったが……


    ……もしや、貴女はあの子のことを知っているのか?」

    「あの子……って、え?え!?

    ちょ、ちょっと待ってください!ウタって、まさか……」


    「…………少し前までこの村にいた、赤髪海賊団の娘、ウタだ」


    「……そんな……まさか…………」

    「今はワケあって私と共にいるが……貴女はどうやら、あの子と何か交流があったようだな。

    よければどこかで事情を説明させてくれないか?少し長くなるかもしれないが……」

    「わ、分かりました……では彼方の酒場で……」

  • 143122/12/29(木) 17:29:35

    言うまでもないとは思いますがこの女性はマキノさんです

    今日は後でもうちょっと投げるよ

  • 144122/12/29(木) 20:06:04

    さァやろうか!

  • 145122/12/29(木) 20:07:15

    ─────────

    「ん……?」


    いつの間に寝ちゃってたんだろう。

    ゆっくりと上下に揺れる振動で目が覚めた。

    目の前には、振動に合わせて揺れる黒髪。


    ルフィだ。


    「……ルフィ?」

    「お、起きたか」


    「……わたし、寝ちゃってたかな」

    「うん。いきなり寝たからびっくりしたぞ」

    「そっか……」


    気づかない間にルフィにおんぶされていた。

    誰に見られているわけでもないけど、何となく少し気恥ずかしくなる。

  • 146122/12/29(木) 20:11:32

    「……もういいよ、自分で歩くよ」

    「だからいーって!大人しく乗ってろ!」

    「でも……」

    「何があったか知らねーけど、いきなり寝るなんてよっぽど疲れてたんだろ?

    もうちょっと寝てろお前!村まで下ろさねーからな!」


    ……言い出したら聞かないのは変わんないなあ。

    これはきっともう何言っても下ろしてくれないよね……


    「…………ありがと」


    それだけ返事して、わたしはほんの少しだけルフィを抱きしめる力を強めた。


    ……わたしも、もうちょっとだけこのままがよかった。

  • 147122/12/29(木) 20:15:27

    前にわたしが転んで怪我しちゃった時も、ルフィがおんぶしてくれたなあ。

    あの時は大変だったなー……ルフィはもっとよろよろしてたし、「重い」とか言ってくるから引っ叩いちゃったっけ。


    その時に比べると、今日の足取りはいくらかしっかりしてた。

    エレジアだとあんまりご飯食べてなかったし、わたしの体重が軽くなっちゃったのかな。


    ……それとも、少しはルフィが強くなったのかな。


    「なあウタ」

    「?」


    「お前、おれのせっけん使ってくれてたんだな」

  • 148122/12/29(木) 20:19:50

    「え……」


    どうしたの急に。


    「……いきなりなんで?」

    「ん、さっきウタが抱きついてきた時ニオイしたから。

    今だっていいニオイするぞ、ちょっと汗くせーけどな」

    「は……」


    えー…………

    あの状態でしっかりわたしのニオイ嗅いでたってこと……?

    しかもちょっと汗くさいって……


    「…………ルフィ」

    「ん?」



    「………………えっち」

  • 149122/12/29(木) 20:23:42

    「は!?」

    「えっち。へんたい。すけべ。ばか。ルフィのばーか」

    「な……何だよ!お前がくっついてきたんじゃ……」


    「…………ふふ。もちろん使ってたよ」


    「!」


    「……ありがとね、ルフィ。

    フーシャ村に帰って来られたのも、たぶんルフィのせっけんのおかげ」

    「せっけんの?なんでだ?」


    「ルフィがくれた『ゆうきがでるやつ』ってせっけんを使ってみて……まあ、そこから先は色々あって……

    ……で、今日また帰って来られたの。悔しいけど……ルフィに会えて、すっごく嬉しかった。悔しいけど」


    もう一つルフィを強く抱きしめた。

    何か妙に柔らかい気がするのは気のせいかな?

  • 150122/12/29(木) 20:28:50

    「……でも、シャンクス達はもう行っちまったぞ?」

    「うん……知ってる。それは寂しいけど……


    ……………………………



    …………やっぱり、寂しいなあ……」


    どうにか強がろうとしたけど、やっぱり無理だった。

    シャンクスのことを思い出すたびに、どうしても言葉に詰まってしまう。


    「……ルフィ、わたし……わたしね……」

    「………………」


    「…………ごめん、やっぱり言いたくない」

    「ん、そか」


    事情は分かってても、置いて行かれたって自分で説明してしまえば、きっとわたしはまた我慢できなくなる。

    思わせぶりなことを言っちゃったのに、深く突っ込まずにいてくれたルフィに感謝しなきゃ。

  • 151122/12/29(木) 20:32:59

    「……ルフィ」

    「どうした?」


    「……また、お風呂入らない?

    わたし汗かいちゃったし、ルフィも服汚れちゃったし……」


    「おう、いいぞ!新しいやつも作ったんだ!ウタにやるよ!」


    「……ありがとう、ルフィ。


    …………ほんとに、ありがとう」



    シャンクス達には会えなかったけど、ルフィのおかげで少し気が晴れた。

    そうしている間にも、ほんのり暖かいルフィの体温と背中の揺れが、わたしの心をほぐしてくれる。わたしの眠気を刺激してくる。

    村まではもうすぐ。次に目を覚ましたら、もうルフィ の背中からは下ろされてるんだろうな。


    名残惜しいなと思いながら、わたしはもう一度目を瞑った。

  • 152122/12/29(木) 20:36:35

    本日はここまで

    保守は自分でしに来ますが先程も申し上げたように多分年内は今日で最後です
    それでは皆様良いお年を


    しかし妙だな
    1発ネタで建てたつもりがどうしておれは35000字も書いてるんだ

  • 153二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 21:05:13

    お疲れさまでした! さすがに全部晴れるとまではいきませんでしたが、それでもある程度晴れたところまで書いてくださって感謝します! これで気持ちよく年が越せますw よいお年を!
    微力ながら、保守のお手伝いをしたいと思います。

    事情を誰にどこまで話すのかってところは難しい問題ですよねぇ。
    ゴードンさんはマキノさん・村長にどこまで話すのか……
    今後の展開を楽しみにしています!

  • 154二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 21:13:27

    めちゃくちゃ気になる展開!
    ルフィに会えただけでも有難いな

  • 155二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 01:45:55

    >>152

    ありがとう

  • 156二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 09:08:12

    おはよう

  • 157二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 14:35:08

    こんにちは

  • 158二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 22:05:58

    おやすみ

  • 159二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 04:29:21

    保守

  • 160二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 09:33:26

    あ〜ウタちゃんのひらがな罵倒がかわいい

  • 161二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 16:19:53

    シャンクス達はどのような反応になるのか楽しみだな。

  • 162二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 16:32:53

    >>1発ネタで建てたつもりがどうしておれは35000字も書いてるんだ


    世の中にはONE PIECEって漫画を描いた一発屋もいるので一発ネタを侮ってはいけない

  • 163二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 18:57:18

    待ってます

  • 164二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 00:47:16

    あけおめの寝る前保守

  • 165二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 09:13:38

    あけおめの保守

  • 166二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 15:44:37

    お待ちしてます

  • 167二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 21:15:42

    保守

  • 168二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 21:33:36

    逆恨み(逆恨みじゃない)する前に真実を知ったからシャンクスのことは憎んでないだろうけど、それはそれとして信頼できるかは別問題だしどうなることやら

  • 169123/01/01(日) 22:01:26

    明日には更新したいなあ

  • 170二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 22:02:21

    お待ちしております

  • 171二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 08:08:22

    あげとこ

  • 172二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 10:56:25

    待てます

  • 173二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 19:38:13

    ほしゅ

  • 174123/01/02(月) 20:53:06

    あけましておめでとうございます
    本年もよろしくお願い致します

  • 175123/01/02(月) 20:54:10

    ───────────


    「……これがエレジアに起きた全てだ。あの子ももう既に知っている」

    「………………そん……な……」

    「なんと……」


    ゴードンの話にマキノは絶句した。

    マキノに呼ばれ酒場にやってきた村長ウープ・スラップも言葉を失っている。


    「シャンクス達はあの子を思い、あの子が罪の意識に苛まれることがない様に全ての罪を被る事を選んだ。

    元はと言えば私の責任だ……私が不用意な真似をしなければこんなことには……」

    「いやあ……アンタのせいじゃないじゃろう。楽譜が一人でに動くなんて聞いたことがないわい。

    しかし、彼奴らの様子からして何かがあったとは思っとったが、まさかそんなことになっておったとは……」

  • 176123/01/02(月) 20:57:12

    「それでウタちゃん、真実を知った時は……?」

    「……一度は意識を失うほど錯乱してしまった。私が伝え方を誤ったせいだ。

    今でこそ表向きは元気に見えるが、内心はどうだか……」

    「………………」

    「結局シャンクスとの約束も反故にする形にはなってしまったが……

    彼女がある日、『本当のことを教えて』と頼み込んできたんだ。約束の手前、始めは私も誤魔化そうとしたが……

    ウタは恐らく、始めから何かがおかしいことに気がついていた。きっと幼いなりに必死で考えたんだろう。

    ああも必死に頼まれて、それでも隠し通すのは、私にはとても……」

  • 177123/01/02(月) 21:01:40

    「真実を知った以上は、エレジアにずっと閉じ込めておくのも彼女に取ってよくない。

    贔屓にしている商船に頼み込んで、今日やっとこの村まで乗せて来てもらうことが出来た」

    「それでこの村まで連れてきてあげたんですね……ありがとうございます」

    「なるほどのう……」


    ウープはグラスに入った酒を半分ほど飲み干した。

    一方のゴードンに差し出されたグラスは一滴も減った様子がない。


    「……不器用ではあるが、彼奴らには彼奴らなりの愛情というものがあったと言うことか。

    娘に罪を被せたくないという気持ちも当然。真実がそんな救いのないものであれば尚更……」


    「ですが……」

  • 178123/01/02(月) 21:06:01

    「?」

    「……残されたウタちゃんの気持ちを考てしまえば、船長さん達の選択の全てを肯定することは、私にはできません……

    短い間でしたけど、それでもあの子が船長さん達のことを大好きなのは伝わって来ました。それを考えると……」


    下を向いたままマキノが言葉を紡ぐ。

    その声は少し震えているようにも聞こえた。


    「……ごめんなさい、ちょっと……」

    「……………………」

    「…………今しがた聞いたような切羽詰まった状況でなければ、また違う選択をとっていたのかもしれんがな。

    どちらにせよ、今更ワシらがとやかく言えることでもないわい。今はあの子のケアをしてやることが先決じゃ」

    「…………そうですね」

  • 179123/01/02(月) 21:09:29

    「それでゴードン殿、あんたはこれからどうするんじゃ」

    「次の商船が来るまでは私もこの村に滞在することになるが……

    私はまたエレジアに戻る。まだ国民の弔いが済んでいないからな」

    「…………そうか」

    「……あの子が望むなら、ウタはこの村に預けようと思っている。

    この村なら貴方達のような知り合いもいる。シャンクス達は行ってしまったが、エレジアにいるよりはずっと……」


    ゴードンがそこまで言った時、入り口のスイングドアがゆっくりと開いた。


    「おーい、マキノー」


    開け放たれたドアから入って来たのは、ウタを背負ったルフィだった。

  • 180123/01/02(月) 21:12:38

    「…………!」


    マキノが慌てて2人に駆け寄る。

    ルフィは少し肩で息をしていたが、特に怪我などをしている様子はない。

    一方のウタはルフィの背中で気持ちよさそうに眠っている。その目尻には涙の跡が残っていたが、口元には小さく笑みが浮かんでいた。


    「ウタちゃん……」

    「ウタがいきなり寝ちまったからおぶってきてやった。なんでここにいるのかがまず分かんねーけど」


    「君は……」

    「……? おっさん誰だ?」

    「私はゴードン。ウタをこの村まで連れて来た者だ」

    「おっさんが……?」

  • 181123/01/02(月) 21:16:33

    「君は……もしかするとルフィ君かな?ウタからよく名前を聞いていたよ」

    「うん、おれはルフィ。ウタはおれの友達だ。

    なあおっさん、おっさんがウタを連れて来たってどういうことだ?シャンクス達はどうしたんだ?」

    「それは……」


    「ルフィ。先にウタちゃんを起こすか、起きないならベッドに移してあげましょう」

    「ん?あ、そだな。

    おーいウタ、マキノんとこ着いたぞ」

    「んう……あ」


    ルフィが試しに少し揺らしてみると、ウタは存外あっさりと目を覚ました。

    安心しきって眠っていたところを見られていたことに気がつき、ウタの顔はほんのりと紅く染まる。

  • 182123/01/02(月) 21:19:30

    「あ……ご、ごめんルフィ、もう降ろして」

    「おう」


    少し恥ずかしそうにしながら、ゆっくりとした動きでウタは地に足をつけた。

    おずおずと大人達に歩み寄ろうとしたところを、駆け寄ったマキノが力強く抱きしめる。


    「わっ」

    「……ウタちゃん…….よかった……!」

    「マキノさん……」

    「心配してたのよ、船長さん達何も説明してくれなかったから……」

    「……ごめんなさい……」

    「ウタちゃんが謝ることじゃないわ、とにかく無事でよかった……」

  • 183123/01/02(月) 21:22:52

    「ウタ……」

    「ごめんなさいゴードンさん、急に走って行っちゃったりして……」

    「大丈夫だ、きっとルフィ君を見つけたから走ってしまったんだろう?無理もない。

    寝てしまった君をここまでおぶって来てくれるような子だ。とても素敵な友達じゃないか」

    「んぇ、えへへ……」


    ゴードンにルフィを褒められ、なぜか照れ臭くなってしまったウタ。

    そんなウタをルフィは怪訝な顔で見つめていた。


    「なんでお前が笑ってんだ?」

    「い、いいでしょ別に」

  • 184123/01/02(月) 21:28:45

    「しかしルフィ、雨でも降っておったか?」

    「ん?いや降ってねーぞ?」

    「ならなぜそんなに濡れておるんじゃ、池にでも突っ込んだか?」

    「あー、これウタが泣いたやつだ」

    「!」


    潮風にさらされ乾き始めてはいるが、ルフィの白いシャツは水でも掛けられたかのように濡れていた。

    これが全てウタの涙だという。一体どれだけ泣いたのだろうか。

    そのウタは先ほどよりも俯き加減で、その表情を窺い知ることはできない。


    「マキノまた風呂貸してくれ!おれ家からせっけん取ってくるよ!」

    「お風呂?」

    「ウタと約束したんだ!おれの服濡れちまったしウタも汚れちまったからな!じゃーちょっと待ってろよウタ!」

  • 185123/01/02(月) 21:34:15

    「「「…………」」」


    酒場から駆け出して行ったルフィを大人達は半ば呆然と見送っていた。

    一方のウタはというと……


    「…………………」

    「……ウタちゃん?」


    「…………ルフィってば……」


    なんとなく、どこか嬉しそうな顔をしていた。

  • 186123/01/02(月) 21:37:31

    本日はここまで
    こんな感じで今年もよろしくね

  • 187二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 21:41:35

    >>186

    お疲れ様です

    ゴードンさんとマキノ、村長との会話、今までありそうでなかったので新鮮でした

  • 188二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 21:49:41

    >>186

    お疲れ様です!今年も応援しています!

    村長の頼れる指導者っぷりが見られて新鮮でした!

  • 189二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 04:53:36

    >>186

    今年も1の素敵なルウタssを見れるのが嬉しい

  • 190二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 06:54:44

    ここからどうなるのか楽しみ

  • 191二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 14:28:03

    期待

  • 192123/01/03(火) 20:15:18

    次スレを建てるよ

  • 193123/01/03(火) 20:20:53
  • 194二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 20:31:05

    埋め

  • 195二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 20:31:42

  • 196二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 20:32:09

    うめ

  • 197二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 21:43:33

    うめー

  • 198二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 21:45:24

  • 199二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 22:02:31

    良かったです

  • 200二次元好きの匿名さん23/01/04(水) 00:23:01

    この概念大好き!

    >>200なら約束されたハッピーエンドれす!

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