- 1二次元好きの匿名さん22/12/21(水) 21:45:37
「トレーナーさん、まだかな」
外は北風が吹いており、空気が冷たく、吐く息が白く染まり、今にも雪が降るのではと思わせるほどの寒い日が続く。私はひざ掛けを足にかけ、トレーナー室で読書をしながら、トレーナーさんを待つこと、数分。
トレーナーさんからはLANEで遅れて来ると連絡があったのはあったけど……遅いなぁ……。 そんなことを思いながら、ページをめくる手を止めて、窓の外を見る。
日が暮れはじめ、街灯や競技場の灯りがつく頃合いだ。そろそろ、カーテンを締めようと思って、立ち上がろうとした時、扉をノックする音がした。コンコンッと私の返事を聞く前に、扉が開かれる。
「待たせて、ごめんね。ロブロイ」
開かれた扉から、申し訳無さそうな顔しながら謝罪の言葉とともに姿を現したのは、私の待ち人であるトレーナーさんの姿だった。
「お疲れ様です。トレーナーさん。いえ、いえ、大丈夫ですよ。読書しながら待ってましたので……」
私は手を横に振りながら、気遣うようにそう告げる。
その言葉を聞いたトレーナーさんはホッとした表情を浮かべ、カーテンを締めにいって、その後に私の対面に座って、
「ロブロイに見せたいものがあるんだ」
そう言って、トレーナーの鞄から可愛らしい青色のアロマキャンドルが取り出して、机の上に置きました。
「……アロマキャンドルですか?」
私の疑問にトレーナーさんは
「火を点けてみたら、分かるよ。ロブロイ点けてご覧」
と言って、鞄からマッチ箱を取り出して、私に火を点けるように促す。
マッチ箱で火を点けるなんて、滅多にないことで、私はえいっ、えいっと、何度か失敗しながらも、何とか火を点けることができた。
アロマキャンドルに火を灯した瞬間、 - 2二次元好きの匿名さん22/12/21(水) 21:48:08
心地よいラベンダーの香りと共に、パチパチ、パチパチとまるで暖炉の中で木が燃える音のような優しい音色が聞こえてくる。
火を点けた瞬間だけしか鳴らないと思った後は、10、20……1分と経っても、炎がゆらゆらと揺れながら、パチパチという小さな音を奏で続けている。
「……ト、トレーナーさん、これって!」
前に私が語った、暖炉の脇で薪の音色に耳を傾けながら、読書に憧れるという話を覚えていてくれて、その代わりとなるアロマキャンドルをわざわざ用意してくれたみたいだ。
「うん、この前、ロブロイが語ってくれた話を思い出してね。暖炉は流石に用意はできないけど、色々と調べて、その代わりとなる音がなるアロマキャンドルを見つけてね。気に入って貰えたかな」
そう言って、トレーナーさんは微笑みながら、私を見つめてくる。
「…は、はい。凄く嬉しいです!」
私はトレーナーさんがサプライズを用意してくれた優しさが胸に染み渡ってくるような感覚に陥りながら、 トレーナーさんの問いに対して、笑顔で答える。
「ロブロイに気に入ってもらえて、良かった。あとで、本を読むときにも火を点けてみて、匂いと音をバックに読書をしてみてね。そろそろ、消そうか」
トレーナーさんはそう言って、アロマキャンドルの火を消そうとするので、
「…ま、待って下さい!」
私は急いで、火を消そうとするトレーナーさんを制止して、 - 3二次元好きの匿名さん22/12/21(水) 21:51:06
「も、…もう少し、このままにしておいてもいいですか?トレーナーさん。せっかくなので、トレーナーさんと一緒に楽しみたいです」
私は少し恥ずかしかったけど、トレーナーさんに素直な気持ちを伝えた。
すると、トレーナーさんは優しく微笑みながら、
「うん、いいよ。それじゃあ、一緒に楽しもうか」
そう言ってくれた後、部屋の電気を消して、2人でしばらくの間、目を閉じて、ラベンダーの匂いと炎の音を堪能したり、キャンドルに照らされたトレーナーさんの顔を見ながら、談笑をして、楽しみました。
パチパチと鳴り続けるキャンドルの灯火はとても幻想的で、私の胸の中まで温めてくれる。
かつての英雄たちも、夜な夜な、ロウソクの火を明かりとして、友人達と楽しく語り合ったのでしょうか…… - 4二次元好きの匿名さん22/12/21(水) 21:54:18
- 5二次元好きの匿名さん22/12/21(水) 21:56:33
- 6二次元好きの匿名さん22/12/21(水) 23:12:32
いいね
- 7二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 00:35:58
トレーナーさんの優しさも、それに喜ぶロブロイの姿も、冬の夜に染み入るような優しい雰囲気で。
素敵な作品をありがとうございます。
ごちそうさまでした。 - 8二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 01:20:32
穏やかな雰囲気が楽しめる良いSS
- 9二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 01:34:10
暖炉は無理だからって火鉢持ってくるトレーナーというギャグSS思いついてしまった
意外と煤が出るのでこまめに掃除をするようになったってオチもつけて - 10二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 06:58:23
- 11二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 10:08:35
ロブロイと一緒に落ち着く読書タイムを過ごしたい。
その後感想会とかやって盛り上がって熱弁し続けるロブロイを眺めてたい。
自分の語り過ぎに気付いたロブロイの頭をよしよしと撫でたい。
そんで「ロブロイの本の感想を聞いているの、楽しくて好きだよ。ロブロイはすごくしっかり読み込んでて、僕が読んでて気づかなかったことも教えてくれるからね」とか言いたい。 - 12二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 17:45:42
トレーナーさんから、パチパチと音がなるアロマキャンドルを貰ってから、数日後。
その間に、ライスさんと一緒にアロマキャンドルの音と香りを楽しんだり、読書をする時にbgmで使いながら、読書をしたりしました。
ライスさんは、私と同じでキャンドルに火を点けて、音がなることに驚嘆しながらも、ラベンダーの香りとパチパチとなる音に魅入られていて、まるで…絵本の世界みたいだと喜んでいました。
読書の時に使った時は、スイープさんが偶然、通りかかり、その音に興味を示して、その…魔法みたいな光景に興奮しながら、パチパチという音を鳴らしているアロマキャンドルに興味津々だったのはちょっと面白かったです。
このアロマキャンドルはなんだか、…英雄の物語にでる魔法の道具みたいな感じです。
これをくれたトレーナーさんは、まるで英雄に…力を貸す妖精や魔法使いのようですよね。
トレーナーさんとアロマキャンドルを再度、楽しむ時にキャンドルの火の煌めきを共に見ながら、それらのことをトレーナーさんに話したら、君を英雄へと導けるように頑張るから、一緒にロブロイの英雄譚を紡いでいこうと返してくれました。
トレーナーさんとなら、一緒に私の夢を叶えてくれる。そう確信させてくれる優しい言葉で、キャンドルの火は…私の顔を赤く染め上げ、熱を帯びさすには十分すぎるものでした。 - 13二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 17:47:20
地の文だけですが、後日談ものを書いてみました。
- 14二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 01:27:43
ゆるキャンの様に読書キャンプするロブロイか