抱きたい生徒NO.1に脅されている。

  • 1二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 13:45:24

     決闘委員会、ラウンジにて。

     着座で目のまえに置かれた雑誌を真顔で見つめる、決闘委員会の面々。普段軽口をたたくセセリアでさえ口を噤む状況において、あらゆる憤怒を無表情に押し込んだ男__ラウダ・ニールが、指先を組んでゆっくりとくちびるを開いた。

    「由々しき事態だ」

     控えめに言って地獄である。

     机の上に置かれているのは一冊の雑誌。表紙には『飛べる!踊れる!!エアリアル!!!!』の文字と共に、例のモビルスーツが決めポーズをしている。

     最初に断っておくと、今回ここが重苦しい空気に満ちているのは、この水星出身の少女のせいではない。どちらかというと、彼女の胸元あたり、ひと際目立つように書かれている文字にあった。

    『独占アンケート! 抱かれたい生徒&抱きたい生徒ランキング』


    ※こちらのスレを見て思いついたので。書き溜めとかないので軽率にエタるかも

    週刊アスティカシア|あにまん掲示板抱かれたいパイロットランキングNo.1 dice1d14=@14 (14)@bbs.animanch.com
  • 2二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 13:47:33

    「ロウジ」
     セセリアの横で膝を抱えていたロウジの小柄な体が、わかりやすくびくり、と跳ねた。
    「きみはこの結果をどう考えている?」
    「…………」
    「質問を変えるよ。生徒の模範となるべき決闘委員会が、こんな目で見られていることに対して、どう思う?」
    「……………………」
     硬直したままのロウジを気の毒に思いながら、エランはページをひとつ、捲る。
    『抱かれたい生徒NO.3 ロウジ・チャンテ』『制服ブカブカなの可愛い』『隠れてる片目が出る瞬間惚れた』『俺が夢ハロだ』『ショタ特有の魅力に満ちています』『GANDキメてあげたい』
     何がどうしてそうなった。
     頭を抱えたあとに、彼等の妄想力の逞しさに、一周回って乾いた笑いがこみ上げてくる。笑い声を押し殺したエランを、ラウダがギロリと睨んだ。

  • 3二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 13:51:56

    「エラン、きみも他人事じゃないよ」
     残念ながらそうなのである。
    『抱かれたい生徒NO.1 エラン・ケレス』『氷の君もいいけどいまもいい』『甘え上手な氷の君』『クールだった時とのギャップ萌えでやられました』『大好きです抱いてください』『エランさんハッピーバースデー』
     そんな文言とともに見開きいっぱい、エランの写真がのせられている。いつのものなのか見当もつかない。というか完全に盗撮である。治安はどうしたんだ治安は。
    「エラン先輩はぶっちぎりの一位ですねェ」
     ようやく水を得た魚のようにそんな煽りをするセセリアに、「僕が選んでくれと言ったわけではない。他薦だよ」と返せば、ラウダは眉をひそめる。
    「暢気なことを。セセリアも例外ではない」
    「アタシは四位でしょ? 抱きたい方の」
    「それは例外じゃないと言ってるんだ。健全な学園運営に支障が出る順位だよ。あってはならない。……にしてもなんでフェルシーは二部門で入っているのに、兄さんは……」
     いやそれはまあ退学しているんだし、とは誰も言わなかった。ラウダがグエルをランクインさせるために裏工作をしたという証拠はあがっている。それで入っていないのだから、確実にこれも機嫌が悪い要因のひとつである。藪蛇は防がねばならない。

  • 4二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 13:55:50

    「僕たちが仕組んだわけじゃないんだけどな」
    「シャディク先輩は抱きたい生徒No.3でしたっけ~?」
    「そうだよ、ゆるさない。今すぐ兄さんにその座を明け渡せ」
    「ラウダ、本性漏れてる」
     しばらく、沈黙が落ちる。
     シャディクが考える素振りをみせたあとに、「とにかく」と明るい声を響かせた。
    「僕たちは決闘委員会だ。この学園の模範となる存在でなければならない」
    「だけど、実際問題どうするの? 編集部に苦情申し立てがせいぜいだろう」
    「当然、もう苦情はいれたよ。だけどきみたちも十分気をつけてほしいんだ。これ以上あれこれ取り上げられないように」
    「他にランクインしている者は?」
    「そちらにも一括で話をする。注意喚起も兼ねてね」
    「特に抱きたい生徒ともなれば、身の危険があるかもしれない」
    「抱きたい生徒」
     エランは数枚飛ばしでページを捲り、もう一人の王者の項目に目を通す。
    『抱きたい生徒NO.1 スレッタ・マーキュリー』

  • 5二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 14:01:22

    『横髪モフりたい』『あの純粋そうなタヌキ顔が私を狂わせる』『水星観光案内してほしい』『思いっきり頭撫でたい』『スレッタは私の花嫁よ。異論は認めないわ』
     女性に著しく偏った意見である。そしておそらく「抱く」の意味を勘違いしている輩が一定数いる。確実にいる。
     エラン・ケレス__強化人士五号は、任務内容を反芻し、また笑い声をこぼした。確かに彼女は押せば落ちそうな女である。世間一般の認識は正しい。そんなことを思っていると、ラウダが大きくため息をついて、「エラン」と咎めるような声をあげた。

  • 6二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 14:05:33

    いつの間にか花嫁に花嫁にされてる…

  • 7二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 14:06:01

     雨が降ってきた。
     そういえば今日はスプリンクラーで水を散布する予定だ、と聞いていた気がする。傘を持っていないエランは、ずぶ濡れになるか、しばらくこのラウンジで時間を潰すかを選択せねばならなくなった。
     今頃シャディクがランクインした生徒たちを集めて、注意喚起をしているはずである。普段はセセリアが座っているらしい椅子に腰かけ、貰ってきた雑誌をまたもめくってみた。何度見てもその妄想力には関心してしまう。というか今までのエラン・ケレスは一体何を積み重ねてきたんだ。何をすればこんなに性的な目を向けられるんだ。
    (……うん)
     このままではアンケート結果を一語一句違わず覚えてしまいそうである。まだ任務に慣れていないから疲れがたまっているのだろうか。まだ決闘委員会の方の仕事と、ついでにペイル社からの指令待ちは残っているけれど、いったん寮の部屋に戻った方がいいかもしれない。
    (ベリメリアさんに言えばなんとかなるでしょ)
     たぶん。
     雷まで降ってきた。
     この悪天候で、わざわざ集められた生徒たちには同情する。しかも内容は「お前は全方位から抱きたい・抱かれたいと思われているから、気を付けるように」である。まだエランはそのあたりを割り切っているけれど、そうでない人間も多いだろう。特にこの、スペーシアンサマの学びやとやらにおいては。そんなことを考えながら、外につながる扉に手をかけた、瞬間。
    「わっ」
     ガチャリと扉が開き、のけぞった。

  • 8二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 14:17:17

    めちゃすき。続きまってる

  • 9二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 14:22:23

    「え、エランさん!?」
    「……あれ、スレッタじゃないか。どうしたの?」
     そこに現れたのは『抱きたい生徒』No.1兼ハニトラを仕掛ける相手として名前があげられていた少女、スレッタ・マーキュリーであった。エランを認識すると、すうと大きく目を見開く。
     『純粋そうなタヌキ顔』__なるほど言い得て妙である。理想と現実のあまりの一致度合いに、エランは思わず小さく笑みをこぼしてしまう。
    「エランさん……?」
     それを妙に思ったのか、スレッタは伺うような調子で見上げてきた。
    「なんでもないよ」
    「なんでもないのに、突然笑うんですか」
    「たいしたことじゃない」
    「エランさん、は……どうしてこんなところに?」
    「んん?」
     今度は焦りから、笑みを深める。まさか馬鹿正直に「きみを落とす算段を講じていました」なんて言えるわけがない。ちょっとね、とだけ笑ってごまかした。
    「スレッタは? シャディクとはもう話したの?」
    「シャディクさんは、欠席をしたフェルシーさんのところに、直接話に行くって……ら、ラウダさんに連れてかれて……」
    「そうなの?」
     フェルシー・ロロ、死んだのでは?
     少なくともあの顔のラウダに絡まれたら、エランは死ぬ。恐怖で。そのくらい彼は間に迫っていた。絶対来た方がよかったのに、悪天候で来られなかったのだろうか。内心冥福を祈りながら、エランはスレッタに向き直る。

  • 10二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 14:35:48

     内心フェルシーの冥福を祈りながら、エランはスレッタに向き直る。
    「他の人たちは?」
    「み、みんな、先に、帰りました……私は、その、別の用事があって、遅れちゃって……」
    「そっか。お疲れ様」
    「……じゃ、じゃぁ、これで!」
    「あ、まって!」
     走り去ろうとするスレッタを、ノリと勢いで引き留める。せっかくおあつらえ向きのネタがあるのだ。予定にはないが、これでひっかけてみるのもいいかもしれない。
    「ねえ、スレッタ。一緒にご飯食べよう」
    「えっ」
    「ペイル社からお小遣いはもらっているんだ。奢るよ」
     エランを見つめるスレッタのひとみには、困惑と怪訝が絶妙に入り混じった、なんともいえない色が浮かんでいた。
    「ど、どどど、どうして……」
    「おなかすいちゃった。それに、ひとりよりふたりのほうがいいよね」
     ちらりと時刻を確認する。
     二十時九分。いい時間だ。早すぎず、遅すぎない。そうっとスレッタの手を取って、こてりと首を傾げながら、「何が食べたい?」と囁く。
    「きみのことが知りたいんだ」
     二十時十分。
     スレッタは顔を真っ赤にして、小さく頷いた。

  • 11二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 14:44:19

     __昔の夢を見た。
     まだエランが『エラン』になる前の話だ。
     薄汚い路地裏で、薄汚い恰好で、金のためだけに体を明け渡す。……それは『エラン』も同じか。結局のところ、今はアレのご機嫌次第で生かされているだけで、本質的にはエランも使い捨ての駒なのである。
     最悪の目覚めだ。
     エランは飛び起きる。ぱちりと目を開けると、まだ周囲は暗い。闇に慣れてきた目が空間を把握し始めたところで、違和感を察知する。
     寮の天井ではない。窓の位置と間取りが違う。鳴り始めた心臓を落ち着かせるべく、ゆっくりと身体を起こしてみる。
    「……ッ!?」
     身体にかかっていたのは薄い毛布一枚。そして身に着けているのは最低限の下着だけ。幸い空調がきいているので死ぬほどではないが、このまま寝ていたらきっと風邪をひいていただろう。どうりであんな夢を見るわけだ。
     ゆっくりと周囲を観察してみる。無機質なカーテン。ケトルや冷蔵庫などの最低限の家具。エランにとっても馴染み深い、安いホテルの一室といった様子である。とにかくなんとか服を着ないと、と身を起こしたところで、
    「ん……」
     全身が、強張った。

  • 12二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 14:57:08

     いやまだわからない。何かこう夢かもしれない。そっと視線を横に移してみる。
     毛布一枚の自分に対して、横の「なにか」はきっちりと掛け布団にくるまって寝息を立てている。そうっと手を伸ばして、布団のはしをほんのすこし、ほんのすこしだけ持ち上げてみた。
    「__」
     人間である。
     なんということだ。見覚えがある。薄赤い肌。ぽやりとした顔立ち。普段はくくられている赤髪は、くしゃりと枕に広がっている。どうやらこっちは服を着ているらしいが、明らかに乱れている。そっと布団を戻す。また捲る。戻す。捲る。戻す。
     何度見ても間違いない。この人間はスレッタ・マーキュリーだ。現実逃避にそろそろとベッドから這い出して、一体なにがどうしたらそうなるのかというほど無残に脱ぎ捨てられた布たちから、なんとか見覚えがあるものを掴む。
    (……さて、任務成功……で、いいのかな)
     一体昨晩何が起きたのか。
     一般論だともう明白だ。
     いや万が一の場合はある。エランには昨夜の記憶がほとんどない。だから断定はできない。例を挙げるなら本当に言葉通り寝てしまったとか。スレッタの髪を撫でくり回したとか。何も起きていないとか。
     しかしながら、そうではないことはエラン自身がよくわかっている。しばらく感じていなかった、しかし馴染み深い、全身の倦怠感。腹部の違和感。股関節には微かな痺れ。気を抜くと足が崩れそうになる。「なにもなかった」わけがない。少なくとも、「なにか」があったことは確かである。

  • 13二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 15:25:38

    クソ面白い、文体がすき、続きを待ち望む

  • 14二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 15:30:32

    (そうだ、学校!)
     見上げた室内時計は十時十一分を指していた。
     ちらりと端末を見る。ペイル社からのメッセージは来ていない。ということはとりあえず学園への潜入を続けねばならぬということ。そしてこの時間は、確実に遅刻である。
     そこで今度は、スレッタに目を落とす。起こさなければ彼女も遅刻するだろう。だけどどうしても顔を合わせたいとは思えなかった。先程の夢と今現在の状況が重なるせいか、どうしても息が苦しくなる。宿泊代金がいくらなのか、そもそも自分は支払ったのか、何もわからないけれど、スレッタの端末に自身のそれをかざして、手持ちのうちいくらかを送っておく。それから極力音をたてないようにして、隙間から外に滑り出た。
     振り返って見た外観は、どうやら学内ホテルであるようだ。様々な理由から寮に入っていない生徒、その中でも金を持っているもの、が使うそこは、いや限定的過ぎて利用者いないでしょ、なんのためにあるの、と考えたことすらある場所である。
    「__まさか、こんなことになるなんて」
     エランは指先で髪を整えて、学園に向けて歩き出す。
     昨晩の名残か、地面はじっとりと湿っていた。

  • 15二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 15:44:08

     明らかに体の動きが鈍い。
     これがなんとか授業を終えた、エランの率直な感想である。脚に力が入らない。腹部が妙。それ以上に、何かがエランのからだを止めるのだ。問題が単純でないことだけは確かである。とにかく全体的に、色々鈍い。
    「エラン、風邪? 無理をしない方がいいよ」
    「今朝は休んでいたし、いっそ一日寝てた方がよかったんじゃないか」
     昨日あんなに暴れていたラウダも、どうやら落ち着いたらしい。シャディクに気づかわしげに背中をさすられて、エランはとてつもない気まずさに襲われた。何故なら原因はわかりきっているのである。ついでにいうと、それらの憂慮の種は、放置して捨て置いてきたのである。
     __あのあと、彼女はどうしたのだろうか。
     ひとりで目覚めて、授業を受けに行ったのだろうか。
     起こせばよかったか。
     それを考えるだけで罪悪感が二百割増える。とにかく謝った方が賢明か、と端末を起動するも、個人としての連絡先がわからないことに気づき、愕然とした。学内アドレスでなら送ることができるけど、あれは教師の検閲がかかるからあまり利用しないように、と言い含められている。
    「……大丈夫だよ」
    「なんか最近変だよ、エラン。何かあったら相談に乗るよ」
    「一番様子がおかしいのはラウダだと思うけど」
     仮に知っていたとして、連絡が取れただろうか。
     何せ昨夜の記憶は、ほとんどないのである。
     まずはこの、何一つ判然としない記憶を、わかる範囲で掘り起こすべきである。この先どうするべきか。話はそれからだ。

  • 16二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 15:57:21

    読み応えがあって面白い、続きを全裸待機

  • 17二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 16:02:55

     まずレストランに入った。パンとサラダとオレンジジュース、という朝食か? とツッコミをいれたくなるメニューを頼んだスレッタを横目に、自分は財布がペイル社であるのをいいことに、店で一番高いステーキを注文したのである。いい調子だ。食べたものはたぶん、これであっている。
    「スレッタは『抱きたい生徒No.1』なんだっけ?」
    「わけ、わかんないです……知らないひとにだきつかれても、こわいだけです」
    「……ふふ、そっか」
    「ミオリネさんや、地球寮のみなさんや……エランさんになら、いいです、けど」
     そう。確かそんな話をしていた。
    「でも、みんなあれこれ想像するんだね。写真だって、いつ撮られたものか」
    「ラウダさんにも言われました、だれがいつ見てるかわかんない、って……事態を悪化させるから、疑われるような行動はやめるように、って……」
    「……ラウダは多分グエルが入ってないことが気に食わないだけだと思うけど」
     そう、そうだ。そんなことも話した。だとしたら、最初から最後までごく普通に会話をしていただけ。何がどうして紆余曲折したのか、この段階では全く分からない。
    「グエルさんは、最近行方不明ですから……無効票になった、らしい、です」
    「ふうん。まあそれも当然か。ラウダも徒労だったね」
    「あっ、そこの可愛いお二人!ちょっといい~!?」
     __誰?
     突然記憶に知らない第三者が登場してきて、エランは瞬きをした。

  • 18二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 16:14:27

    「ど、っどどど、どうされたんで、ですか!?」
    「これ新商品のドリンクなんだけど、味見してかない? もちろんタダだよ!」
    「ふうん。きれいな色だね」
    「ベースはフルーツジュースだからね。ちょうどお二人さんの髪の色と同じだろう」
    「い、いただきます!」
     ……どうも雲行きが怪しい。
     鮮烈な紅にレモンがのった方をエランが、淡い緑色にライムが飾られている方をスレッタが受け取り、キンと乾杯をする。
    「甘くておいしい。見た目も可愛いし、きっと売れるよ」
     そんなアドバイスをした。スレッタはひとくち舐めるように飲んだところで、不安そうな顔をする。
    「エランさん」
    「なあに?」
    「これ、なんか……へんなかんじ、します。飲まない方がいいのでは?」
    「そんなことないけど。スレッタがいらないなら、もらうよ」
     そういって、「間接キスだ」なんて言って、スレッタの方も、飲んだ。
    「……あの、」
    「にゃあにぃ?」
    「顔、赤いし、呂律回ってない、ですけど……これ、もしかして……」
     アルコールが入ってるのでは?
     ……ここで記憶が途切れる。
     この後どう状況が屈折して、あの状況に辿りついたのか、その部分が全くの空白だ。この部分を埋めるにはスレッタの協力がいるが、何かもう嫌な予感しかしない。エランは頭を抱えた。ラウダが「本当にどうしたの」と心配げな顔をした。

  • 19二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 16:28:31

    「エランせんぱ~い?」
     不意にラウンジに飛び込んできたのは、セセリア・ドートだった。突然の出来事に、少しだけ面食らう。
    「どうしたんだ?」
    「いえ、エラン先輩に会いたいって。ちょうどそこで会ったんで」
    「アイタイ?」
     まさか。
     嫌な予感がする。
     そんなエランをよそに、セセリアはなんてことないように、ハイ、と適当な相槌をうってみせた。
    「スレッタ・マーキュリーが」
     大正解である。
    「ここで話します? 今空き教室で待ってもらってるんですけど、そっちいってもらうほうがいいですか?」
    「あ、ええと……じゃ、じゃあ、僕、行ってくるよ」
     二人きりというのも気が引けるが、他の生徒も見守る中で再開するのはもっと嫌だった。「じゃあ向こうでおねがいしますねェ、『抱かれたい男No.1』先輩?」なんて今一番聞きたくない煽りを背に受けながら、示してもらった方に進んで、深呼吸を数回。なんとか、ドアを開けた。

  • 20二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 16:28:53

    親の顔より見たエロ同人の導入部

  • 21二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 16:30:37

    スレッタやったね!ミオリネも許してくれる浮気、大成功だよ!

  • 22二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 16:35:53

     スレッタは意外なほど普段通りの表情をしていた。エランの姿を見ると、ぱちりと大きなひとみを瞬かせて、わざわざ来てくださったんですね、と一礼をする。
    「ど、どうしたの?」
     今朝あんなことがあって、どうしたもこうしたもない。それは承知の上だったが、これ以外に何も言葉が出てこなかった。スレッタはそれには答えず、エランの方に近寄ってくる。何事かと思うと、すっと目の前に端末を突き付けてきた。
    「エランさんも、だしてください」
    「えっ?」
    「おかね。先払いで割り勘だった、です。返します」
     見れば確かに、画面に表示されているのは、エランが今朝がたスレッタに渡した記憶がある金額である。エランが「いいよ」と目を逸らすと、スレッタは少しだけ睫毛を伏せた。
    「どういうつもりなんですか」
    「え、ど、どういう」
    「あなたは私を置き去りにして逃げるんですか」
    「あっ、そ、れは……!」
    「私ともう顔をあわせてもくれないんですか」
     くちびるを震わせながらそう続けるスレッタは、涙をこらえているようにも見えた。

  • 23二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 16:41:32

    修羅場いいゾ~

  • 24二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 16:43:20

    「そ、そんなことないよ」
    「なら一体どういうつもりなんですか」
    「それは、」
    「朝起きたらいないし、書き置きみたいなのもないし。わけわかんないです」
    「僕は、そんな、」
     スレッタはあきらめたように首を振って、静かな言葉に確かに激情を滲ませ、「もういい」と呟く。
    「……もう、いいです!」
     くしゃくしゃの赤髪に象られた顔は、やけに寂しげに見えて、心が痛んだ。気が動転して、混乱していた。それでも置き去りにされるのは、辛い。それはエランだって、わかっているはずなのに。
    「スレッタ!」
     謝罪をしなければ。任務だとか依頼だとか仕事だとか、そんなことは今、エランの頭の中になかった。ただ、エランの中の『かつての自分』が、締め付けるような痛みを訴えかけてくる。
     口を開いたエランを、スレッタが「もし」と遮った。
    「もしこのことを……シャディクさんや、ラウダさんや、セセリアさん、ロウジさん……先生、ペイル社のひとに、申告したら……どうなるんでしょうね?」
    「……えっ?」

  • 25二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 16:49:05

    クソ重くてめんどくせぇたぬきでしか得られない栄養がある

  • 26二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 16:51:49

    それと同様に、押されてる5号からしか得られない栄養もある…たぶん

  • 27二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 16:53:30

    というかこのたぬき、しれっとミオリネを除外してやがる

  • 28二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 16:57:05

    エランの身近な人じゃないからね仕方ないね

  • 29二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 17:01:51

    スレッタがこのことを皆にチクってしまったらどうなるんでしょう?

    勿論、オリジナルの風評がとんでもないことになります

  • 30二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 17:02:55

    改めて考えるとオリジナルのことを考えずに好き勝手しすぎな影武者である

  • 31二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 17:05:56

    「おさけのんで、『抱かれたい生徒No.1』の決闘委員会さんと、『抱きたい生徒No.1』のホルダーが、肉体関係を持ちました、って……報告したら、どう思います?」
     どうなるか。
     決まってる。
     シャディクは頭を抱えセセリアは盛大に煽りラウダがキレながらヒートアックスを振り回す。ついでに向こうに弱みを握られている以上、ペイル社にとって「エラン」そのものに利用価値がない。七号までと一緒に仲良く焼却処分である。
    「目撃者は、いないです。でも当事者の私が、申告すれば?」
     スレッタの表情に変化はない。
     だから余計に、意図が読めない。
    「何が目当てだ?」
     こんなやり取りをエラン個人の判断で行うなんて、想像だにしなかった。金か、名誉か、地位か、肉体か、ペイル社の機密情報か。要求内容によってはなんとかなるかもしれないし、ペイル社を裏切ることが確定するかもしれない。恐る恐る問うてみれば、スレッタは何事か考えるように瞳を閉じる。ようやくくちびるが開いたのは、たっぷり三十秒は経ったあとだった。

  • 32二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 17:13:08

    「私、今日はピザの気分なんです」
     その解答に、エランは一瞬目を見開いた。あまりに拍子抜けで、聞き間違えたかとすら思い、用意していたあらゆる言葉が水泡と帰す。
    「一緒に食べに行ってくれますよね?」
     大きなひとみからは、何の感情も読み取れない。
     ただ、無感情というよりは、あらゆる感情を、あらゆるおもいを呑み込んだ結果、表面張力が決壊する寸前のような、そんな、飽和状態じみた様子であった。
    「……そ、そうだね。行こうか、スレッタ」
     スレッタが小さく頷いたのを見て、エランはようやく胸をなでおろす。
     いまいち理解がついてこない。だけど、今ここでスレッタが昨晩のことを言いふらしたら、エランの命が危ない。幸いにも、ピザなら以前、たまたまついてくれた太客がおいしい店を教えてくれたことがある。とにかく、素直にうなずく以外には、エランに選択肢は残されていなかった。

  • 33二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 17:13:57

    🍕

  • 34二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 17:15:59

    スレッタ「ピザって丸くて0に似ていますよね。だからカロリーはゼロになるんです」

  • 35二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 17:18:48

    スレッタ「人のお金で食べるご飯が一番美味しいですね」

  • 36二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 17:20:12

    ピザみたいで綺麗だねとか、ピザに蝋燭ぶっさしてきそうこの娘

  • 37二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 17:24:25

     席に届いたマルゲリータとコンソメスープを挟み、エランはスレッタと向かい合う。
     対面席でもぐもぐとピザを食べるスレッタは、やはり少しも変わった様子はない。なんなら頬にソースがついていることを指摘したいくらいだが、それはやめておくことにした。
    「……遅刻、しなかった?」
     今なら大丈夫かもしれない。そう思って投げかけると、スレッタはピザからくちを離して、何とも言えない怪訝な顔を見せた。
    「……おかげさまです」
     まったく大丈夫ではなかったらしい。
    「ミオリネさんに怒られてしまいました。ホルダーが遅刻してどうすんの、って」
    「……ご、ごめんね」
    「もういいっていってるじゃないですか」
     そういって再びピザを食べるスレッタの顔は、何とも言えず不機嫌そうな色がある。もういい、わけがない。
    「あの場で起こすのは、き、気まずいよ」
    「どうしてです?」
     スレッタは全く理解できない、と言わんばかりの顔をした。そこは理解していただきたい。どちらかというとスレッタの方が理解してほしい。
    「起こしても、顔、見られないよ」
    「そうなんですか? だから私のこと置き去りにしたんですか?」
    「そ、それは……」
     今だにスレッタと目を合わせることに躊躇を覚えて、エランはそうっと自分の手のひらを見つめる。きれいな手だ。
     『エラン』の手だ。
    「あの」
     突然目の前にぐいとピザが差し出されて、たじろぐ。スレッタは首を傾げて、エランを見つめた。
    「食欲、ないですか? 体調悪いんですか?」
     その声色には、確かに気遣いが滲んでいて、エランはだんだん混乱してきた。

  • 38二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 17:33:32

     いやそれはそうだ。何も入りそうにない。何せ昨日の今日である。考え得る体調不良の原因は「スレッタ・マーキュリー」だが、それをくちにするほどデリカシーがないわけではない。「平気だよ、ありがとう」とスレッタの手のひらのピザを口に含む。スレッタはそうですか、といって、今度はスープの方を食べ始めた。
     何者なんだ、この水星女。一体何を考えているんだ。……何が、あったんだ。
    (だめだ、本人を前にしても何も思い出せない)
     ようやく食事を始めたものの、全く手につかない。記憶を必死に探るが、やはり空白は埋まらない。
    「お会計は割り勘でいいですか?」
    「い、いや、僕が払うよ!」
     その後もあれこれ理由をつけて払おうとするスレッタをなんとか説得し、食事代はエランが持つことにした。「御馳走様です」と口では言いながら不機嫌そうなスレッタは、本当に何を考えているかわからない。ご飯代をおごってもらいたかったわけではない? それなら本当に、何がしたいんだ。内心、戦々恐々としている。腹が満たされたのでいざ本題、と金銭を要求される可能性もあるのだ。多少ならペイル社から用立てることもできるだろうが、あまりに多額だとさすがに難しい。スレッタは店の出口までくると、
    「では、これで」
    「……えっ?」
     あまりにあっさり幕を引いたので、あれこれ算段していたエランは、ぽかんとくちびるを半開きにさせた。

  • 39二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 17:44:27

    「明日は朝早いので」
    「あ、ああ、そっか」
    「三年生も確かそうでしたよね? ゆっくり休んでくださいね」
     それだけ言い残すと、スレッタはすたすた歩き始めた。寮まで送った方がいいかと背をおいかけた矢先、彼女の足がぴたり、と止まる。
    「あの」
     ふとこちらを振り返った目になつかしさを感じて、エランもその場に立ち止まる。
    「また一晩中、私といっしょにいるつもりですか?」
     __ぱちり、と。
     鮮烈に、脳裏に何かが閃いた。
     昨夜、同じ言葉を聞いたはず。そう、まさにこれくらいの時間。それそろお開きだという場面に。

    「エランさん、大丈夫ですか? お水飲んで……早く寮に帰って、ゆっくり休んでください」
    「もうおしまいなの?」
    「当たり前です!」
     スレッタは心配げな顔をしているが、エラン本人はいたって元気なつもりだ。『エラン』になる前に、何度も無理矢理アルコールを飲まされたことがある。故にこの程度なんてことない。
    「全然大丈夫だよ」
    「大丈夫じゃないです!」
    「でも、せっかく一緒にごはんなのに。ここで帰ったら、つまらないよ」
     スレッタは渋い顔のまま、こどものように駄々をこねるエランをじっと見つめる。
    「じゃあ、どうするんですか?」
    「っふふ、どうしようね?」
     吐き出されたため息。澄んだ青い虹彩。
    「一晩中、私といっしょにいるつもりですか?」
     スレッタは確か、そういった。そう、それだ。そしてエランは? エランは、それに対して、何と返した? アルコールで仄かに赤く上気した頬で、微かに潤んだひとみで、ふみゃりと微笑んで、
    「いいね、それ」

  • 40二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 17:52:20

     空白部分が少しだけでも埋まる爽快感。そしてその五百倍はある「お前なに言ってるんだ」という猛烈な後悔。文字通り頭を抱えて「うわ、うわぁ……」と言うエランをちらりと見て、スレッタは再び歩き出す。
    「あ、ま、待ってよスレッタ!」
    「次はお寿司がいいです」
    「次があるの!?」
    「嫌ならいますぐ告げ口します」
    「そ、それは、考え直してほしい……な……」
    「それでは、また」
     悠然と歩む後ろ姿を見上げながら、エランは呆然と立ち尽くす。
     最早完全に恐喝である。
     いや仮にそうだとしても、今のエランに抗うすべはない。訴えたら死ぬ。死ななくてもこちらが有責になる可能性は十分ある。
     となれば、寿司。寿司だ。寿司屋にいくしかない。こちらも偶然にも、おいしい店を知っている。人生、なんでも経験しておくものである。
     エランはゆっくりと己の頬を撫でて、それからゆっくりと端末を取り出した。
    「連絡先、聞いておけばよかった」
     今更ながら、そんなことを考えた。

  • 41二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 17:53:51

    ふ、ふ〜ん、最高じゃん……

  • 42二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 17:55:02

    スレッタに振り回されるこの感じ…いい…

  • 43二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 17:55:10

    何だこれ…めちゃくちゃ面白いぞ!?
    これがプロ奢ラレヤーか(違う)

  • 44二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 17:55:50

    今までにない5号スレだ……

  • 45二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 17:57:09

    🍣「5号スレいいよね…」

  • 46二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 17:58:32

    うーん原作通りで草

  • 47二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 18:07:34

    こういう流れだとなんだかんだ最後は純愛エンドで終わる
    俺は詳しいんだ

  • 48二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 18:18:17

    5スレはNTRがこすられすぎて5週くらい回って純愛に脱線した感じ

  • 49二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 18:27:58

     奇妙な交流はその後も続いた。
     寿司屋の次は、蕎麦を。それからパスタ、ハンバーガー、シーフード。あまりに寒かったので、屋台で焼き鳥と肉まんを購入し、ベンチでだらだらと食べた日もある。
    「それでは、また」
     そして食事を終えたら、決まってその場で解散するのである。
    「『また』、かあ」
    「次は温かいコロニーにいきましょう。寒いのはこりごりです」
    「またどこかに飛ぶの?」
    「じゃあ今から決闘委員会に」
    「いやそれは……やめてほしいなあ……」
     決まって脅迫じみたやり取りがあることを除いては、健全な交流である。そもそもの発端と、エランに与えられた任務のことを考えると、やや健全すぎるほどでもある。
     しかしながら、エランの記憶の欠片はなかなかそろわなかった。
     どこかに行くたびに、少しずつ埋まってきてはいる。到着した店が満員で、外で話しながらしばらく待った。別の店にしようと言ったスレッタに、どうしてもここがいいとわがままを言った。ようやく入った店内で何を離したか。ホテルに向かうまでの道程、スレッタがやけに寡黙だった。
     ここから先はどうしても思い出せない。それでも今のところ不具合はないのだから、無理に思い出さなくてもよいかもしれない。
    「エラン。話があるんだけど」
     __ミオリネ・レンブランからそう切り出されたのは、暢気な考えが頭に浮かんだ頃だった。

  • 50二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 18:37:00

    「最近スレッタと頻繁にあっているみたいね」
     そうだ。ほぼ毎日一緒に夕食を食べている。それだけしていれば、それはまあ、いずれ間違いなくミオリネの耳にも入るだろうと覚悟していた。だが実際に追いつめられると、なかなかうまく切り返せない。
    「そ、そう、だね」
     一体どこまで勘付かれている? 伺うように言うと、ミオリネは感情の読めない無表情で返した。
    「いいのよ。あんたとスレッタの仲がいいのは私も知ってるし。多少の浮気くらいは許すわ」
     それはたぶん以前の「エラン・ケレス」の話だ。
     そんなこと、言えるわけがない。
     だらだらと嫌な汗が浮く。鳴り始める心臓を、必死に抑え込んで、なんとかからだを奮い立たせる。
    「ただ、ひとつ。噂に火をつけるような真似だけはしてね」
    「……噂?」
    「スレッタはあんたと結婚するんじゃないかって」
     一応スレッタは私のはなよ__じゃなくて花婿だから、そういうのだけは困るのよ。
     思いっきり噎せた。
     なんとか「そんなことない」とだけ言うと、ミオリネはふうん、と相槌をうって、やけに底深い笑みを浮かべた。
     わかってるけど?
     そう言わんばかりの笑みであった。

  • 51二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 18:42:30

    ミオミオ……

  • 52二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 18:44:52

    マジで先が読めなさすぎて面白いなこれ…
    そして食い意地の張るたぬきは図々し可愛い

  • 53二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 18:55:33

    「ミオリネさんに?」
    「誰かに見られているのかな……」
    「今更ですよ」
     スレッタはコーヒーを飲んで、しょぼくれた顔をしながら角砂糖とミルクを足した。エランの前に置かれたアイスミルクティーは手つかずのまま、氷がとろとろと融解していく。
    「今日はアヒージョの気分だったんですけど」
    「人の多いバルなんかに行ったら、いよいよ終わりだよ」
     夕食なのにわざわざ閑古鳥の鳴いている喫茶店を選んだのは、そういう理由である。スレッタはあまいコーヒーを神妙な面持ちで一口飲んで、エランを見つめた。
    「それで」
     改めて向き直る。微かにくすぶる湯気が、こちらにまで肺の奥までしみるような、何とも形容しがたい香りを寄越す。
    「あなたは、どうしたいのですか」
     頬杖をつく。
     どうしたいか。
     ストローでカップの中身をかき回す。がらがらと音がする。ひとしきり考えて「どうしたいもなにも」と眉根を下げた。
    「スレッタが言い出したことだ」
     この奇妙な交流自体、任務遂行に役立ちそうだから続けているだけで、実際にはスレッタの要望を聞いているうちに、何とはなしに定例化したものだ。
    「一緒に行かないと密告する、って脅したのはスレッタじゃないか」
     スレッタはカップの取手を凝視して、じっと動かない。
    「全部あの雑誌のせいだよね。シャディクが苦情をいれてラウダが殴り込みしたから、翌月には編集長が変わっていたけれど」
     反論は、なかった。
    「スレッタに言われるままついてきていたらいつの間にか半年もたってて」
    「じゃあ終わりにします」
    「……えっ?」

  • 54二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 19:02:40

     唐突な発言は、人間を絶句させる。
     例にもれず、エランもしばらく言葉を失った。
     おわりにする。
     今日で。
     どうして?
    「……へ?」
    「誰にもあの日のことは言いません。安心してください」
     言うや否やスレッタは立ち上がり、こちらには一瞥もくれずに歩き去ってしまった。スタンビームを全身に喰らったような硬直を無理矢理引き剥がし、エランもそのあとを追う。まって。まって。まって。パイロットとして普段から訓練しているスレッタだ、足は速い。小走りで近づき、なんとか手を伸ばす。まって。まって。
     ……置き去りにして、逃げるんですか?
     捕まえたスレッタの指先は、予想以上に小さく震えていた。
    「どうしたの、スレッタ。僕はなにか、気に障ることをしたかな」
     スレッタは、振り払わなかった。ゆっくりと振り返った澄んだ虹彩に、エランの顔が映し出される。
    「どうして引き留めるんですか?」
    「え、」
    「私が脅したから、仕方なく付き合ってるんでしょう。どうして私を引き留めるんです?」
     確かにその通りだった。
     もとをただせば置き去りにした負い目、言われるまま、だったはずだ。それなのに今、離れていこうとするスレッタを、どうしてかエランは引き留めている。
     自分でも何故こんなことをしているのかわからず、エランは咄嗟に「それは、」と言った。言ったはいいが、何も言葉が出てこなくて、きゅうと閉口した。

  • 55二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 19:04:44

    正直に言おう、めちゃくちゃ興奮している

  • 56二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 19:05:22

    で、結局あの日の夜は何が起こったのよ?
    大河内った?

  • 57二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 19:10:24

    「それは……い、一緒にいると、楽しいし。今だって無理矢理付き合わされてるわけじゃないし、居心地悪かったら一緒に入られないし……」
     考えてみればそうだ。いくら脅されたとはいえ、一緒に過ごしていて苦痛な人物と長く共にいるのは難しい。エランはそういうたぐいのことには慣れているけれど、それでもこんなに拘束されたことなんてないはずだ。
    「い、いっしょにいられないと、いやだ」
     伝えるべきことがうまく伝わらない。伝えたいことがぼろぼろこぼれていく。完全に制御を失って、涙すら流れそうになって、エランのくちびるが震える。
    「あ、謝る。謝るから、ごめん、ごめんなさい、ごめんなさい……だから、突然おしまいだなんて、言わないで」
     今なお力をいれたままの腕が、悲しくて仕方ない。
     いまここで手を離したら、きっとスレッタは逃げてしまう。
     エランを置き去りにして。
     どうしたらいい。何と言えばいい? どうすれば、スレッタと一緒にいられる?
    「き、きみと、一晩中、いっしょにいたい」

  • 58二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 19:12:51

    この裏でオリジナルのエランが過半数の女子の戦意に火を点けた扱いをされていると思うと笑えてくる

  • 59二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 19:12:57

    (大 勝 利)

  • 60二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 19:13:52

     半ば苦し紛れに絞り出した一言は、スレッタに相当の衝撃を与えたらしい。ぽかんとくちびるを半開きにさせて、「え」と呟く。そう来るとは思っていなかった! と言わんばかりの表情だ。
     押せば落ちる。
     いくしかないのである。
    「さすがに、一緒に過ごしたくない相手とそんなことはしないよ。あの時もたぶん……一緒にいたかった、から」
     ……覚えてないけど。
     付け加えた言葉に、呆然としていたスレッタが反応を示した。
    「覚えていない?」
    「………………あっ」
     すっかり忘れていた。
     あの日のことをまだらにしか覚えていないことは、スレッタには伝えていなかった。
    「……覚えていないんですね」
    「その、ま、全く覚えていないわけじゃなくて、多少は思い出して」
    「もういいです」
     スレッタが首を横に振る。
     失望させてしまったかと不安になったところで、腕を引っ張られて我に返った。
    「来てください」

  • 61二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 19:28:35

    何となくこの世界のスレッタちゃんイメージ

  • 62二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 19:34:19

    >>61

    描いたなコイツ!どうもあなたの描くスレッタに命を救われた者です

  • 63二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 19:34:37

     スレッタの手を掴んでいたはずの腕は、いつの間にか逆にスレッタに掴まれていた。ぐいぐいと引っ張られて、エランは小さな悲鳴をあげる。
    「き、きてって、どこに!?」
     返事はない。ただ、「覚えているなら」とやたら__そう、やたらとはっきりと芯のある声で、独り言のように呟く。
    「覚えているなら、良いと思ったんです。あなたもきっと、あなたの意志で関係を続けてくれていると思って」
    「えっと、それは、」
    「いえ、その可能性もないわけではないと思っていましたが……まさか本当に覚えていないとは。でも大丈夫、気にしないでください」
     水星の風より冷たく熱い声に、身がすくむ。
    「簡単な話でした」
     掴まれた腕に、ぎりりと力がこもる。
    「思い出すまで、同じことをすればいいんですよ」
     ねえ、××さん?
     しばらく聞いていなかった『名前』に、彼の瞳が見開かれた。

  • 64二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 19:35:10

    >>61

    スレ主です。

    嬉しすぎて泣いて保存しました。ありがとう!

    あともう少しお付き合いくださいね。

  • 65二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 19:35:30

    急にサスペンスになった?

  • 66二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 19:36:10

    怖いスレだった……?

  • 67二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 19:47:55

    ちょっと底が読めなくて怖いスレッタちゃん好き…

  • 68二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 19:48:27

    もしかしてもしかするのか...そういうこと?

  • 69二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 19:56:51

    よった勢いで自分のこと話したのか

  • 70二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 20:02:05

    まさかのポンコツ5号だった…?

  • 71二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 20:04:59

    「……して。どうして、『僕』の、名前を」
    「思い出せないんでしょう? 大丈夫ですよ。思い出すまで、あの日と同じことをすればいい」
     切に思う。
     今こそ編集部に異議申し立てを行うべきである。
     「抱きたい生徒」が聞いて呆れる。なにが「純粋そうなタヌキ顔」だ。今のスレッタ・マーキュリーの横顔は、さながら獲物を見つけた捕食者のように、爛々と目を輝かせていた。
    「僕は……あの夜、何があったの?」
    「大丈夫ですよ。私に任せてください」
     いつの間にか例の学内ホテルに辿りついていた。
     スレッタはやけになれた手つきで受付を済ませ、部屋に上がる。そうして彼をベッドに押し倒すと、青いひとみをきらめかせ、表情に熱をのせて、舌なめずりをして微笑んだ。
    「私を抱いてください。その後私は、あなたを抱きます」
    「……なんて?」
     スレッタが手にしたもの__名状しがたいかたちをしたGANDを見て、彼は引きつった笑顔を見せた。

  • 72二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 20:05:42

    おい、流れ変わったぞ

  • 73二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 20:06:03

    あれ?純愛では?

  • 74二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 20:06:40

    抱いてが抱きしめての可能性は……

  • 75二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 20:08:02

    🤔

  • 76二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 20:09:57

    ギャグだろうがNTRだろうが純愛だろうが脳破壊からは逃れられぬ5号スレの運命

  • 77二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 20:10:53

    ミオリネが意味深なことしていたのは「あの娘が‘抱かれる’側にいるものだと思わないことね」ってメッセージだった?

  • 78二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 20:11:45

    うーんこれは性豪たぬき!

  • 79二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 20:13:23

     自身に覆いかぶさるスレッタ・マーキュリーは、今まで出会ったどの客よりも__強いて形容詞を当てはめるなら強かった。そして翌日の体調が思わしくなかった理由を嫌でも理解せざるを得なかった。
    「気分はどうですか?」
     スレッタは容赦なく動きながら、気づかわしげな表情を見せる。朧げな視界でもそれがわかって、××は何事かを言おうとくちびるを開けた。何も出なくて、ただ、ひい、と悲鳴じみた声があがった。
    「前も、こうでした。……覚えていないでしょうけど」
     心臓が酷く強張る。
     涙がぼろぼろあふれてくる。
     感情が臨界点に達した××を、スレッタはゆっくりと撫でた。
    「全部、上書きしたかった」
     __思えばスレッタと一緒に行った店は、大半がかつて××が客と一緒にいった店だった。それらは全部、「スレッタと一緒に行った店」になった。あ、ああ、と喉の奥から、笑い声にも似たなにかが溢れる。
    「同情のつもりなら、いらないよ」
    「そんなじゃ、ないです」
     思いのほかきっぱりと返されて、面食らう。スレッタは『エラン』の皮膚をゆっくりとなぞり、「内臓まではかわっていないから」と呟く。
    「私はこれを、私のものにしたかった」
     そういった彼女はまるで、ちいさなこどものようだ。どこか寂しげで、駄々をこねるようで。
    「……ね、え」
     かすめた庇護欲に突き動かされ、××はスレッタの手を取った。
    「キス、してほしい」
    「、へ?」

  • 80二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 20:13:40

    まあ普通にヤッただけにしてはちょっと消耗激しいなと思ったよ

  • 81二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 20:14:49

    ところてんの助プレイとかどこで覚えてきたんだ

  • 82二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 20:18:46

    今さらだけど5号の元男娼設定って言い出した奴天才だよな…

  • 83二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 20:24:14

     理解できないといった様子のスレッタの頬に、一筋の汗が伝う。
    「ええと、状況はわかっています?」
    「はいってるね」
    「いえ、そういうことではなく」
    「しないのかなあ、とおもって」
     訝しむようなスレッタの顔を、両の手で包む。引き寄せ鼻先を擦り合わせると、スレッタは顔をそむけた。それをもう一度引き寄せれば、彼女の睫毛が震える。
    「……『エラン』さんの顔にされるのは、いやだ、と。あなたが言っていたので」
     その奥で確かに、何かがめらめらと燃えている。
    「したくて、気が狂いそうです」
     言葉を紡ぐたびに、呼吸が、くちびるの先をくすぐる。
     しばし呆然としたあと、おそらく彼女の知る『エラン』では絶対にしないような表情で笑った。
    「××さん!?」
    「随分余裕がないと思ってさ」
    「わ、私はぁ……!」
     炎は相変わらず燃え盛っている。
     それを見抜くのには慣れている。欲望と理性がせめぎあっている。湧きだす欲を押し殺している。こういう解きどうすれば落ちるのか、それは嫌と言うほどよく知っている。
     思いっきりからだを引き寄せて、くちびるを重ねる。スレッタがことを理解するより先に開放して、微かに涙の浮いたひとみで、微笑んだ。
    「僕は、君が好きだよ」
     __だけどこの言葉は、そんな職業病というよりは、単純に、本心からあふれてきたもの、であった。

  • 84二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 20:29:26

    どっちにはいってるんですかね…感情おかしなるで

  • 85二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 20:31:08

    「すき。私も、××さんが、すき、です、××さん……!」
     触れた皮膚の境界線が、なくなる。
     手を加えられていない内臓も、すっかり元の面影を消した表面も、今ある存在のぜんぶがぜんぶ、スレッタのものだった。
     それがどうしようもなく幸せで、脳の中が溶けていく。幸せ。そう幸せだ。幸せでたまらない。腕を回した背中はやはり小さかったけれど、あたたかくて、柔らかかった。
    「あと何回したら、」
     掠れた声で、囁く。
    「思い出してくれますか」
     ……なにを?
     問いかけたいのに、くちから出てくるのは音ですらない、荒い呼吸で。
    「__は、」

  • 86二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 20:40:39

    「ふ、ふざけないで、ください! 酔ってるんです、よね!?」
    「酔ってないよ、だいじょうぶ」
    「酔っぱらいのその言葉は信頼しちゃダメってエアリアルが言ってました! それに、自分が何言ってるか、わかってないでしょう!?」
    「わかってるよお。『抱きたい生徒No.1』だなんて、いやでしょ? 名誉挽回のチャンスだよ」
     待ってほしい。当時の自分は何を言っている? いかに突き放されるようなことを言われたからといって、そのアクセルの踏み方はおかしい。
    「ど、どういうこと、ですか……」
    「お堅いんだねえ。全然アリだよ、そういうの。僕はずっと、そうやって生きてきたんだ」
    「……どういうことですか?」
     本当に待ってほしい。まさか全部話した? かつての過去を? 洗いざらい? 当時の客と一緒に何を食べたかまで、全部を全部?
    「あ、なたは……『エラン』さん、じゃないんですか?」
    「だったら、何。僕を殺す? いいよ、してみてよ」
    「……私は……」
     スレッタは迷うような素振りをした。それから、意を決したように言う。
     なら、あなたを買わせてください。
     絶対に私から離れない、傍にいて、一緒にいてください。
     私のものになってください。
     どういうことだ。溢れてきた記憶がなにひとつわからない。記憶の中の自分はしばらく面食らったように黙り込み、「優しくしてくれる?」と尋ねた。いやもっと別に言うべきことが、
    「もちろん」
     安堵がふたりのくちもとを緩ませる。ただそれだけのことが、途轍もない幸福を呼び起こす。
    「私は__あなたのこと、好きになりたい、です。××さん」

  • 87二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 20:43:07

    やっぱり純愛じゃないか!!!!!

  • 88二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 20:49:03

     ちかちかする視界に映ったのは、そんな光景だった。
     その後何が起こったのか。最早思い出すまでもないし、そもそも爪先から脳天まで茹だった現状、そんな余裕はありもしない。
     というかそろそろ若干記憶の真偽を疑いはじめる領域にはいる。自分はもう少し狡猾だったのではないか。本当に起こったのか? もしかして、熱に浮かされた脳が見せた、ただの幻なのではないか? ……いやむしろそうであってほしい。もちろんその場合、どうして彼女はこんな色々知っているのかを問い詰めなければならないから、それはそれで問題である。
     声が出せるようになったら、スレッタに尋ねなければ。
     『僕』のことを、好きになったかと。
     ホワイトアウトしていく意識の中でそんなことを考える。答えてくれるかは、わからないけれど。
     穢れた世界の中で、何もかもが曖昧になる中で、ただ、スレッタの体温だけが確かだった。

  • 89二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 21:02:54

    あれただの酒じゃなくて自白剤的なドラッグだったんじゃねぇかな…

  • 90二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 21:03:24

     ひとりでさみしかった。
     絶対に自分が必要とされる保障がほしかった。
     __だから、彼が『エラン』ではないと知ったとき、衝撃と共に、彼なら何の罪悪感もなく縛ることができる、だなんて思ってしまった自分に、嫌悪を覚えた。
     一緒に食事をする。言ってみればそれだけの行為で、彼がすこしずつ自分のものになっていくたびに、怖くなる。今自分がしているのは、洗脳なのではないか。許されないことなのではないか、と。
     にもかかわらず。なんだかんだいいながらついてきて、屈託のない笑顔で「かつてしたまずい食事」をとる彼に、いつの間にか、どうしようもなく愛しい感情が芽生えてしまっていた。
     だからといって、どうしようという気はない。手に入れようとあがくどころか、想いを伝える気さえなかった。ただ一緒にいられればいい。もともとそのつもりだったのだから。ただ一緒にご飯を食べて、一緒に過ごして。一緒に、楽しいと思えるような__彼の、悍ましい過去を忘れられるような時間を、共有できさえすればいい。
     そう思ってた。
     だから。
    「き、きみと、一晩中、いっしょにいたい」
     あなたがその過去を肯定するのなら。
     __せきにんとって、しあわせにしてあげますね? ××さん。

    __End

  • 91二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 21:05:11

    最高の5スレをありがとう

  • 92二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 21:05:27

    乙でした!
    面白かった!

  • 93二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 21:05:28

    これも一つの幸せの道か

  • 94二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 21:06:56

    また今日も5号スレ神SSが増えちまったな…
    クッソ面白かった

  • 95二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 21:14:22

    見返すとこれ知って以降スレッタは五号のこと「エラン」って呼んでないのか

  • 96二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 21:14:25

    ミイラ取り5号と捕食者スレッタとか予想できんわ最高だった乙

  • 97二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 22:34:48

    どろり濃厚過ぎて喉にへばりつくようなスレだった…いやぁ5スレって本当にいいものですね…

  • 98二次元好きの匿名さん22/12/22(木) 23:08:02

    この伏線がすごいSSだぁ……5スレ、良……

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