【クロスオーバー注意】まさかこの俺が

  • 1二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 21:02:29

    dice1d2=1 (1) に閉じ込められるなんて

    まあ俺なら余裕で脱出してみせるがな

    1.謎の美術館

    2.魔女が住むという噂の森

  • 2二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 21:04:54

    薔薇は何色?ピンク?

  • 3二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 21:08:12

    __グエル・ジェタークはボブと名を変えて、とある美術館で清掃のバイトをしていた。
    最初は怒られることもあったけれど、それでも少しづつ慣れてきて、職場の人にも可愛がられている。その日もなんだかんだ、変貌を遂げてしまった昨日と、全く同じ今日が繰り返される、はずだった。
    「あっ、すみません」
    「いや」
    思えば何かがおかしいと思ったのは、「吊るされた男」の絵を見ていた青年とぶつかってしまったときだ。その時はなんてことないと通り過ぎたが、どちらかというと注意深い方であるグエルが、こんなこと。
    だけどそれも仕方ない。どれもこれも、この奇妙な展示のせいだ。
    奇妙な、大きな絵画を見上げる。
    「__ゲルテナ展」

  • 4二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 21:09:30

    2よりはマシだな

  • 5二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 21:10:15

    ギャリーポジが楽しみ。

  • 6二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 21:13:54

    ぱち
    ぱち、ぱち__
    突然、電気が点滅する。グエルははっとして、注意深くあたりを観察した。酸素や重力装置は生きているらしく、体調に変化はない。ただ、そう。ひとつ違和感をあげるならば。
    ……ひとが、いない?
    先程までいたはずの男も、女も、家族連れも、いない。先程の停電で驚いて逃げた?それにしては足音は聞こえなかった。
    とりあえず、館内を歩いてみる。そのうち完全に電気が落ちた。出入口も窓も開かない。
    ……だれも、いない。
    不意に、どんどんと音がした。ハッとしてそちらを見ると、窓に叩いたようなあとがある。ここは宇宙空間であるはずなのに。
    ぐるりと一周したけれど、やはり人っ子一人いない。あの大きな絵画の場所まで戻ってくると、ふいに、真っ青なインクが垂れてきていることに気づいた。落書きか?掃除用具片手に、近づいてみると。
    『おいでよグエル』

  • 7二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 21:18:00

    『したのかいにおいでよグエル ひみつのばしょおしえてあげる』
    まるで話しかけるような口調に、グエルは咄嗟に警戒心を露わにする。いや、そもそもの話__なぜこの文字を書いた人間は、ボブがグエルであることをしっているんだ?他のスタッフのしわざではないのか?
    とにかく、情報が少なすぎる。癪ではあるが、指示通り進むしかない。
    階段をおり、一階に辿り着く。そうして注意深くさぐってみると__今まで柵で封じられていたはずの床絵、その柵が撤去されていた。そうしてまるで足跡のように、青いものが垂れている。
    「……入れ、ということか?」
    答えはない。
    だが、行くしかない。
    意を決して、グエルは慎重にそこへと足を踏み入れた。

  • 8二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 21:26:23

    意外なほど抵抗なく、グエルは絵の中に降り立った。

    そこは紺碧の壁と床で覆われた、まるで海の中のような通路である。どうしたものかと立ち止まって、ふっと壁をみつめると、

    『おいで おいで』

    まるでいざなうように、そんな文字が突然現れる。

    グエルはぎょっとして、一歩後ずさった。どうしよう。どうしたものか? 本当に進んでもいいのか? ……いや、ここ以外に道はない。とにかく覚悟を決めるしかない。

    通路を進む。しばらくすると、ちいさな机が置いてあるのが見えた。その、机の上に。まるで美術品のように、ぽつりと置かれていたのは。

    dice1d4=2 (2)

    1:ピンク色の薔薇

    2:赤い薔薇

    3:青い薔薇

    4:黄色い薔薇

  • 9二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 21:30:26

    まるでダリルバルデのような、真っ赤な薔薇の花だった。
    グエルは何の気もなしに、その薔薇の花を手に取ってみる。不思議だ。持っているとなんだか、力が湧いてくる。思うままに花瓶の入った机をどけて、奥にあった扉の中に入ってみる。幸いにも、鍵はかかっていなかった。中にはおおきな絵画と、ちいさな鍵が落ちている。不気味な絵だ。女の顔がかいてあるのだが、その表情がなんともいえず気味が悪い。グエルは極力それを見ないようにして鍵を手に取り、ふっと顔をあげた。
    この絵、こんな顔だったか?
    なんだか表情が変わっている気がする。いや気のせいだ。考えないようにしよう。ふるふると頭を振って変な考えを振り払う。真っ赤な薔薇を握りしめて、グエルはその部屋を後にした。

  • 10二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 21:34:56

    『その薔薇朽ちるとき、あなたも朽ち果てる』

    かえせ、かえせ。
    苛むような赤文字が全面に塗りたくられた光景に、グエルはひいっと思わず悲鳴をあげた。この薔薇を返せということか?しかしこれを手放したら、うまく言えないが確実に死ぬ気がする。
    「わ、悪いが……これは、俺が手に入れたものだ」
    声が裏返る。
    誰にでもなくそう宣言して、グエルは慎重に歩き出した。

    『薔薇とあなたは一心同体 命の重さ知るがいい』

    とにかく進まなければ。この鍵が使える場所は?
    グエルは真っ直ぐに突き進む。赤い薔薇を右の手に、見えない何かを置き去りにして。

  • 11二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 21:36:21

    続きが気になる…

  • 12二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 21:47:52

    部屋の壁が緑になる。

    目がちかちかする。

    虫の絵がたくさんある。以前「虫の言葉で謝罪しろ」なんて言ったこともあるが、この絵の虫は鳴けそうにない。

    蝶が羽化するまでの章立てのようにして並べられている絵は、何とも言えず不気味だ。こういったものが芸術なのかもしれない。いやそれにしても御免被りたい。そんなことを思いながら進むと、大穴にぶちあたった。

    このままでは通れそうにない。いったん戻ってみる。そうすると、先程は気に留めなかったが、張り紙があることに気づいた。

    『はしにちゅうい』

    一体どういうことだ?

    真っ直ぐ前を見てみる。扉が見える。向こうに行けば先に進めるかもしれない。

    dice1d2=1 (1)

    1:はしにちゅういしてすすむ

    2:はしにちゅういしないですすむ

  • 13二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 21:52:06

    「よし、気を付けて進もう」

    グエルは慎重に、おおよそ通路の真ん中あたりを一歩踏み出した。すると。

    「……ひっ!?」

    まるで乞うように、廊下の両側からおぞましい黒色の手が伸ばされる。

    気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い。なんとか息を吸って、吐いて、呼吸を整える。こんなことで取り乱していてはいけない。俺は絶対に生還するんだ。

    なんとか最奥まで辿りつく。そうして扉に手をかけると__鍵が、かかっている。このままでは先に進めない。どうしたものか。

    ふと横を見ると、そこには蟻の絵が飾ってあった。

    dice1d2=1 (1)

    1:まさかこの絵の上を……

    2:よし!さっきの大穴ジャンプで飛び越してみるか!!

  • 14二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 21:54:54

    2脳筋でワロタ

  • 15二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 21:59:27

    びっくりホラーは苦手なタイプのボブ

  • 16二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 22:01:01

    「……絵を足場にするなんて、したくないが。やるしかない、か」
    グエルは意を決してその絵を手に取る。額縁はかなり丈夫だ。グエルひとり程度ならなんとか支えられるだろう。
    来た道を引き返し、例の穴があった場所に戻った。そのうえに蟻の絵を、まるで橋にするように渡しかけて、その上を歩く。
    ぐしゃり
    粘着質な音がして、絵の中の蟻がつぶれた。
    ひゅ、と喉の奥で何か変な音がした。気のせいだ。……そういうことにしておこう。早足で先に進み、扉を開けた。
    中には蝶が蜘蛛に食べられている絵と共に、頭のない像と鍵が落ちていた。きっとこの鍵があれば向こうの扉を開けることができるだろう。なんだかややこしい。そう思って、何の気もなしにそれを拾い上げる。と、
    「あれ」
    像の位置が、微かに変わった気がする。何だ、と思って一瞬硬直した。その、次の瞬間。
    両手を挙げて、像が襲い掛かってくる!
    「わああああ!?」
    逃げる。走って逃げる。掴まったら絶対ひどい目にあう!
    その一身で走り、最早何の逡巡もなく蟻を踏み抜く。それがいけなかったのか。グエルが渡り切った瞬間、絵が破ける。像がその穴に落ちて、真っ逆さまに落ちていく。しばらくの間ののち、がしゃあん、と何かが割れるような音がした。
    「……な、んだった、んだ……?」
    音が響いてしばらくも、グエルはその穴を見つめていた。

  • 17二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 22:06:05

    次に来たのは、どちらかと言えば目にやさしい、黄色い部屋であった。

    壁に目がある。ついでにさかなの形のくぼみがある。今度はこれを探せばいいということか。半ば現実逃避じみた考えから、冷静にそう判断する。

    先に左手の方に行ってみると、そこにあったのは無数のカーテンがかかった絵画だった。そのうちのひとつに、子どもの絵と、黄色い文字が書かれている。


    『かくれんぼ する?』


    その文字をグエルが認識した瞬間に、子どもが消える。かくれんぼ。ということは、つまり。

    「子どもを探せ、ということか……?」

    この、大量の絵の中から。

    dice1d2=1 (1)

    1:すべてのビックリ要素にひっかかりながらなんとか見つける

    2:元ホルダーの勘はすごい。一発であてちゃうぞ

  • 18二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 22:13:42

    カーテンのしたにはボタンがある。
    これを押せば開く、ということはいくらなんでも明白だ。
    (……よし)
    心の準備はできた。なんでもかかってこい!そう意気揚々とボタンを押した瞬間、
    ざ、と。
    音がして、激痛が走った。
    「あ゛ッ……!?」
    痛い。熱い。切り裂かれるような、命を削られるような痛み。見ればまるで刃傷のような絵がかかれていて、その拍子に薔薇の花弁が一枚、散ったようであった。
    一体何が。
    どうして。
    未だ痛む肢体を引きづって、次のボタンも押す。次も。次も。
    赤い手形。停電。「不吉な絵」__
    ようやく子どもの絵に辿りつく頃には、グエルは割と、満身創痍の状態になっていた。
    『みつかった けいひんあげる』
    「何が景品だあ!!」
    怒っても仕方がない。
    ひとしきり頭を掻いたあと、ふいに床に目を落とす。
    木でできたさかなのあたまが、ころりと転がっていた。

  • 19二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 22:22:12

    そのまま真っ直ぐに右手側に進む。
    そこはどうやら、倉庫のような部屋だった。床には何やら罅が入っているし、たくさん石像が置かれている。先程追いかけてきたあの首のない像のことを思い出し、グエルは顔を顰めた。
    段ボールの中にさかなの尻尾でもないか、とあさってみる。汚れたパレットしか入っていない。ふうっと息を吐いて、この部屋は外れか、と思った瞬間。
    音もなく、像のひとつが動き始めた。
    グエルは咄嗟に後ずさる。像が近づいてくる。逃げなければいけない。なのにまるで釘付けになったように、脚が動かない。逃げなければ。逃げたい。動け。動かない!
    そして。
    がしゃん!
    大きな音をたてて、罅にひっかかった石像が倒れ、壊れる。
    割れた破片が飛び散って、グエルの頬にぴっと赤い線を描いた。
    石像の頭からなにかがのぞいている。よくみればそれは、木でできたさかなの尾だった。何とはなしにひろいあげてみると、先に持っていたあたまとくっつき、ひとつになる。
    木のさかなになる。
    「……これ、鍵なのか?」
    どうなっているんだ。
    切実な叫びは、誰にもとどかなかった。

  • 20二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 22:26:55

    魔女の家の方行ってたらバドエン確定だから美術館で良かった
    お父さんじゃなくてラウダに間違われるグエルはちょっと見たいけど

  • 21二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 22:32:27

    次の部屋はまだ、黄色い部屋だ。真っ直ぐ廊下を進むと、忘れたころにあの気持ち悪い黒い手が伸びてきて面食らう。……大丈夫だ。もう慣れた。慣れたはずである。

    先に進むと、たくさんの人形が吊るされている場所にさしかかる。なんだか、気味が悪い。その先の扉を開けると、木の彫像がたくさん置いてある部屋にさしかかった。大ぶりの枝に、艶めく林檎が成っている。おいしそうに見えるが、ニスでつやつやしているだけで、たべられない。……あまいにおいがするのは気のせいだ。

    引き返してみる。さっきは気付かなかったが、横に逸れる道があった。

    『猛唇注意』

    進んでみると、壁に巨大なくちびるがある。それはぱっくりと開いて、ねばついた低い声を吐き出した。

    「はらへった くいものよこせ」

    「喋ったぁ!?」

    新しいパターンである。

    だが「くいもの」と繰り返すだけで何ら実のある会話はできそうにない。ここは……

    dice1d2=2 (2)

    1:木のりんごをあげる

    2:あげない

  • 22二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 22:35:50

    「おまえいじわる きらい」
    「みぎゃっ」
    出来心で断ってみたら、おもいっきり噛み付かれた。
    本気で喰らう気の噛みである。腕が引きちぎれそうだ。
    「わ、悪かったって。ほら、あげるから、な?」
    グエルはそうっと林檎をさしだしてみる。くちびるはゆっくりとそれをのみこむ。
    ごり
    ごり
    ごり……
    「これうまい。おまえきにいった こことおす」
    おおよそうまくはなさそうな音を立てながらそれを喰らった後、くちびるは大きく開いた。
    グエルひとりなら通れそうなくらいに。
    「……大丈夫なのか?」
    しかし他に道がないのも事実である。
    意を決して、先に進んだ。

  • 23二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 22:44:17

    先にあったのは、ギロチンの絵だった。
    絵の中の刃は徐々にあがっていく。
    明らかにおかしい。
    慎重に、慎重に進む。そして。
    刃が消える。
    「__えっ」
    ずざ、と。
    大きな音を立てて、グエルの体格の三倍はあろうかという巨大な刃が降ってきた。
    グエルは咄嗟に避ける。なんとかなったが、明らかに殺しにきていることだけは確かだ。
    「な、んだよ……」
    息が荒い。
    涙が出そうだ。
    だが、泣いてどうなる?どうにもならないに決まっている。だから進み続けるしかない。脳裏に、「すすめばふたつ、です」という声がこびりついていた。

    __次に辿りついたのは、赤い部屋だった。こちらもまた、目がちかちかする。
    「あ」と「うん」とかかれた巨大な赤と青の石像を横目に、先に進めそうな場所がないか探してみる。あいにく鍵がかかっているようだが、それらしきものはない。どうしようか、と思いながら絵画のひとつを見やる。
    『赤い服の女』
    「……?」
    何か、額縁が揺れているような。
    気のせいか、と思って息をつき、踵を返したところで。
    硝子の割れるような音がして、絵が襲い掛かってきた。

  • 24二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 22:58:42

    このレスは削除されています

  • 25二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 23:00:04

    >>24 切実な誤字である。気にしないでいただきたい)


    「うわっ!?」

    ふざけないでほしい。切実に思う。なんとか逃げなければ。幸いにも動きは単調だ。身体能力には自身がある。

    だがこのままじゃ袋小路だ。そうおもったところでふと、彼女の近くに鍵が落ちていることに気づいた。

    グエルは腰を低くして、壁に手をつき、からだを弾くようにして加速する。うまく鍵を拾い上げ、先程鍵がかかっていた扉に突進した。そうして。

    間一髪のところで、部屋の中に滑り込む。

    ほ、と息をついた。だが、扉をどんどんと叩く音が聞こえた瞬間、冷や汗がこめかみを伝う。

    はやく先に進まなければ。……とにかく、生きて帰りたい。


    扉を開けてまず見えたのは、たっぷりの水をたたえた花瓶であった。

    そういえばここに来るまでで、ずいぶんこの薔薇もしおれてしまった気がする。グエルは赤い薔薇を手に取り、そうっと花瓶に差し込んだ。薔薇が元気になる。ついでにこちらの身体の調子まで元気になった気がする。……そしてついでに、花瓶の水は全く減っていない気がする。不思議なことに。

    とりあえず先に進もう。なんだか脱出するどころか、どんどん深みにはまっている気がするが、気のせいである。そう思い、右手側に歩いてみる。

    __そこに、見知った顔が倒れていて、目を疑った。

    dice1d2=1 (1)

    1:……ラウダ?

    2:……シャディク?

  • 26二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 23:05:33

    兄弟で巻き込まれてしまったか…

  • 27二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 23:11:19

    「ラ……ウダ?ラウダ!?」

    思わず駆け寄って、肩を揺さぶる。力が入っていない。ぐったりしている。

    手のひらに、鍵が握られている。

    グエルはそれを慎重に手に取ると、同時に脈をはかった。

    ……かなり弱い。だが、生きている。

    まだ、間に合う。

    助けられる!

    からだを仰向けにして、気道を確保しておく。とりあえずこの鍵を使える場所を探さないと。

    振り返って真っ直ぐ走る。道中見つけたのは、空になった花瓶と、いつか見た気がする張り紙だ。

    鍵のかかった部屋はすぐに見つかった。半ば体当たりするようにして扉を開けると__青い服の女の絵が、真っ青な薔薇の花弁を、ひとつ、ふたつ、みいっつ、と引きちぎっていた。

    __グエルは決して頭が悪いわけではない。この薔薇と自身のからだが連動していることは、なんとなくわかっている。何が起こったのかは、嫌でも察しがついた。

    女の絵はグエルを見て、ニイと口角をあげる。そして貪欲に、赤い薔薇をも狙って、這うようにしておそいかかってきた。

    dice1d2=2 (2)

    1:絵を引き付けよう。それからあの薔薇を回収するんだ。

    2:……ラウダを返せェ!!(ブチギレ突撃)

  • 28二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 23:18:55

    「お前がラウダをあんなにしたんだな?」
    その声は、奇妙なまでに冷たく響いた。
    女の絵はそんなことに構いはしない。まっすぐに向かって、襲い掛かってくる。
    「俺の弟に」
    グエルはその腕をかいくぐる。はずみで赤い薔薇が落ちる。ばらり、と花弁が落ちて広がる。激痛が全身を貫く。そんなこと、気にしていられない。
    「手ェ出してんじゃねええええッ!!」
    身を伏せ、女の絵の腕を握る。そのまま巴投げの要領で絵を投げ飛ばす。まさか反撃されるとは思っていなかったのであろう絵は、しばらく硬直する。そのすきを逃さず、グエルは思いっきり絵を踏み潰した。
    絵が、沈黙する。
    ゼエゼエと荒い息を吐きながら、二輪の薔薇を回収する。それから重い身体を引きづるようにして、あの無限に水が湧く花瓶の元に向かった。水を吸わせてやると、からだが一気に楽になる。
    よかった。
    ……二人してくたばるところだったが。
    まあなんとかなったからいいのである。結果良ければすべてよしだ。グエルはふうと息を吐いて、薔薇の花を手に取った。

  • 29二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 23:27:25

    「う、ん……」

    ラウダはゆっくりと身を起こす。

    息が、できる。突然苦しくなくなった?あの激痛は?自分は死ぬのではなかったか?

    はっとする。人の気配だ。半ば無意識に後ずさる。もう何も持っていない。これ以上となるとそれこそ、四肢をどうこうとか首をあれこれだとかの話になる。まだ五体満足でいたいラウダとしては、それはちょっと、だいぶ困る。

    だが予想に反して、目の前にいたのはあの絵ではなかった。きちんと肉体をもっている。少しだけ汚れた服を着ている。

    「……あ、気づいたか。よかった」

    ほら、これ。お前のだろう。

    聞き覚えのある声だ。

    そうっと、あの青い薔薇を渡される。それを見て、「ありがとうございます」と感謝を述べて、顔をあげて__息をのんだ。

    「あ、あなたは……」

    dice1d2=2 (2)

    1:兄さん!?

    2:美術館にいた兄さん似の清掃員さん!?

  • 30二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 23:28:41

    このラウダは鈍いタイプか

  • 31二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 23:29:10

    認識阻害がかかってる…?

  • 32二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 23:39:08

    「え」

    「うわあやっぱりそうだよね、ああよかった、人がいたんだ!あっ、ラウダ・ニールです。よろしく」

    「あ……ああ、そうだな、えっと……俺はボブという」

    「ボブか。見れば見るほど兄さんにそっくりだ。あっ、兄さんっていうのは、二か月前に行方不明になった兄で、いま兄さんを探してあちこち探し回ってるんだけど、その途中で……そうだよね、次あったらキッチリ問いたださないと……」

    ラウダはそう言って、まじまじとグエルの顔も見つめる。

    そっくりなのは当然だ。だって本人だもん。

    言ったら確実に詰められる。なんとかこの勘違いをいかしていかないと。

    「それでボブは、どうしてここに?」

    「俺は……美術館にいたら、突然停電になって。おまけにこの薔薇、花びらを引きちぎられると痛いし」

    「そうか。じゃあどうしてこうなったのかはわからないんだ。こっちもだいたい同じ」

    ラウダはため息をついて、続ける。

    「……一緒に、ここから出る方法を探そう。こんな気味の悪い場所にいられないよ。それに、まだ兄さん見つかってないし」

    目の前にいますよ。

    言えるわけがない。

    引き攣った笑顔を浮かべて、グエルは「ああ」と呟いた。


    ※ここから先暫定的に使うラウダくんの一人称(11話まで続いて、なおかつ明かされたら変更するかも)

    dice1d3=2 (2)

    1,2:僕

    3:俺

  • 33二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 23:51:59

    「とにかく先に進もうか、ボブ」
    「ああ、そうだな。……ふふん、俺に任せておけ」
    「頼りになるね!」
    出鼻はくじかれたが、心意気としては兄である。ラウダを先導するように意気揚々と歩き出して、
    ぺっ
    「わああっ!?」
    目の前、絵から吐き出された唾に、思いっきり仰け反った。
    ラウダはなんともいえない顔でグエルを見つめる。
    グエルはなんともいえない顔でラウダを見上げる。
    「……い、今のは少し驚いただけだ」
    「そっか」
    いたたまれない気持ちになりながら、再び歩き出した。

    しばらく廊下を歩くと、頭のない像が扉ををふさいでいる。
    幸いにも鍵はかかっていないようだが、このままでは通れない。なんとかどかそうにも、かなり重量がある。一人では動かせそうにない。その様子を見ていたらしいラウダが、「手伝うよ」と歩いてきた。
    「僕、こっちもつよ。そっちから押してくれる?」
    「あ……ああ」
    何とはなく、思う。
    もちろんラウダのことは信頼している。だが心のどこかで、まだ小さい弟のままだと思っていたのかもしれない。こうして一人の人間として接した彼は、自分と同じ大人であった。
    「それじゃ、行こうか」
    「ああ」
    大きくなったなあ、ラウダ。
    同い年であることは棚に上げて、ぼんやりとそんなことを考えた。

  • 34二次元好きの匿名さん22/12/23(金) 23:59:45

    あの名作とこの兄弟の組合せは嬉しすぎる
    スレ主様応援してます

  • 35二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 00:01:58

    天然兄弟生き残れ

  • 36二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 00:10:19

    『悲しき花嫁の左手』『悲しき花嫁の右手』

    「何かを求めているみたい」

    ラウダは端的に形容して、続ける。「神さまに認められた左の薬指には、指輪がはめられているんだけど」と首を傾げ、黒い指先を撫でた。

    そこには何も、はめられていない。

    「探してあげよう。可哀想だ」

    「ああ、そうだな」

    グエルは頷き、まっすぐ進んだ。

    しばらくもしないうちに、「ラビリンス」と書かれた扉を発見する。迷宮?そう思いながらさして深く考えず、中に入る。

    「……わあ」

    そこには大量の首のない像が、何かを求めるようにうろついていた。

    おそらくそれは指輪などではなく、二人の命なのだろう。道が細いから、挟まれたら終わりだ。だがラウダに恐れた様子はなく、むしろ「大丈夫」と励ますように言った。

    「壁に手をついていけば、かならずゴールに辿りつける。いこう」

    「もちろん。はぐれないように気をつけろよ」

    グエルが先導して、像に見つからないように息をひそめながら、迷路の中を歩く。時々「ついてきているか」「いるよ、ボブ」という確認も忘れない。

    しばらく彷徨っていると、ボタンを見つける。おしてみると、何かが作動した音がする。

    「じゃあ、戻ろうか。ラウダ……ラウダ?」

    dice1d2=2 (2)

    1:兄さんのこと考えてたらぼーっとしちゃっただけだよ

    2:……これ、挟み撃ちにされてる

  • 37二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 00:20:11

    「なッ……」
    よくみると確かに、見える道すべてからあの像が迫ってきていた。
    グエルは一歩、踏み出す。「ボブ?」と少しだけ震える声が聞こえる。
    「ラウダ。俺が囮になる。お前は逃げろ」
    足がすくむ。
    だけどそうするしか、生き残る方法はない。
    __いや、わかっている。囮になれば、十中八九グエルは生還できないだろう。だが、仮に、グエルが死んだとしても。ラウダは、先に進むことができる。
    背後のラウダは黙りこくる。それでもいい、構わない。意を決して、ラウダを置いて走りだそうとしたところで、
    凄まじい勢いの飛び蹴りが、右手側の像に炸裂した。
    「なッ……!?」
    像を蹴飛ばしたのはラウダ・ニールだ。幸いにも__不幸にも__像は壊れていない。だがどうやら、倒れはしたようだ。体勢を立て直すのに時間がかかるだろう。ラウダは息を整えて、グエルの腕を引っ掴む。そして出口に向かって、一直線に走りだす。
    「ラウダ、ラウダぁ!?」
    答えはない。
    走る。
    走る。
    走る。
    ようやく迷路の外に逃げ出したころには、二人は息も絶え絶えであった。「ラウダ、どうして……」と言うと、彼はあの蹴りを繰り出した人間と同じとは思えないほど、弱々しく泣きそうな声で呟く。
    「失いたくないから。もう逃げないって、決めたんだ」
    それが何を意味するかを理解したグエルは、「ごめん」と言って俯いた。

  • 38二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 00:38:21

    どうやら先程の音は、隠し部屋が開いた音らしい。
    たくさんの芸術品が置かれている。ラウダはそのうちのひとつ__原色で塗りたくられた骸骨__を指さして、よくできているな、と頷いた後、ふと思いついたとばかりにくちをひらいた。
    「本物じゃないよね?」
    「……や、やめろよ」
    グエルは極力それを目に入れないように、先に進む。そうして複雑に絡まりあった木のオブジェクトを、じっと見つめた。
    『感情』
    よくこんなもの思いつく。
    おもいながら、じっとそれを見つめる。複雑に絡まりあった枝は、知らないはずなのに身に覚えがある。そう、これは、あの感情は。
    「……ん?」
    不意に何か、きらりと輝くものを見つける。
    手に取ってみると、それは指輪であった。細かい模様が描かれていて、ちいさいながらダイヤモンドが嵌められている。
    「結婚指輪だ」
    「けっこん」
    グエルは繰り返し、俯く。視界に赤い花弁が見える。その赤が__何か、に重なって、グエルの頭がちくりと痛んだ。
    「あの花嫁に渡してあげよう」
    「……ああ、そうだな」
    その正体が何なのかは、考えないでおくことにした。

  • 39二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 00:54:02

    『悲しき花嫁の左手』、その薬指に指輪をはめてやると、花嫁の絵が笑顔になる。同時に、たくさんの花でつくられたブーケが投げ渡された。

    グエルはそれをノーバウンドで受け止めて、見つめる。これを、どうすればいいのだろう。

    ラウダは何も言わない。

    「とりあえず、先に行こうか」

    「そうだね」

    相槌だけ打ったラウダを背に、グエルは歩き出す。

    ブーケトスを受け取ることが、何を意味するのか知らないままに。


    『えへ えへへへ はな おはな いいなあ……』

    明らかに頭がおかしそうな絵を見て(いやこの美術館に「頭がおかしくなさそうなもの」なんてまずないのだが)、グエルとラウダはそろって顔をしかめる。絵はせわしなく瞳孔を動かしながら(いや絵に瞳孔はないのだが)、何かを求めるように舌を伸ばす。

    『そのおはな くれたら とおしてあげる えへへ…… おはな ちょうだい?』

    明らかにまずいやつだ。

    それでもここ以外にもういける場所はないことは確認済みである。グエルは意を決して、

    dice1d2=1 (1)

    1:ブーケを渡した。

    2:赤い薔薇を渡した。

  • 40二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 01:08:39

    >>4

    マシっつうかあのゼーム前提がプレイヤーはとっくにアレだから詰んでますだし

  • 41二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 01:12:17

    >>40

    本当にあの子は可哀相だな。

  • 42二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 01:12:57

    >>39

    ゲームオーバーにならないよかった

  • 43二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 01:13:41

    『えへへ ありがとう いいにおいだなあ……』

    絵はしばらく、受け取ったブーケを愛でていた。もしかして本当はさしておかしくないのでは、と思った矢先、

    『それじゃ いただきます』

    青い絵の具を真っ赤に変化させ、全ての花を咀嚼し呑み込んだ。

    顔を引きつらせる。もし自分たちの薔薇の花を渡していたらどうなっていたのか、想像するだけで恐ろしい。ラウダが何とも言えない顔で、グエルの服をぎゅっと握っていた。絵は『おいしかったあ』と至極冷静に感想を述べた。余計に怖い。

    『ありがとう 約束だからね ここを通すよ』

    今まで額縁だったそれが、扉に変わる。ここを通れ、ということか?

    グエルが先に入ろうとしたところ、ラウダが制止する。「罠かもしれない」とだけ言って、自分が扉を開けた。だったら猶更、グエルが先に入るべきなのに。言うのは、やめた。


    次の部屋はまた、絵やら像やらが大量に徘徊している迷路であった。

    「……絶対に囮になろうだなんて考えないでね」

    「……はい」

    苦い顔をしたラウダにそう言い含められ、グエルは小さくうなずいた。

    なんとか美術品たちの目をかいくぐって、鍵のかかっていない扉に辿りつく。そこには__なんてことない。大きな鏡がひとつ、ぽつんとあるだけだった。

    何とはなしに、近づいてみる。曇り一つない。手入れされている?それとも。

    「そういえばボブ、こうしてみると背格好まで兄さんにそっくりなんだね」

    「そ、そうだなあ!」

    突然そんなことを言われて、面食らう。面白い偶然もあるもんだなあ、と、すこしだけ裏返った声で誤魔化した。

    ここには何もないみたいだ。

    なら別の部屋に、と思ってふと振り返ると、

    先程までなかったはずのマネキンの首が、ラウダの肩にあった。

    「……えっ」

    な、んだ、これ。

    辛うじて悲鳴はあげなかったものの、それに準ずるものがあがる。ラウダは恐怖とも憤怒ともつかない表情をして、脚を振り上げる。

    「この……!」

    dice1d2=2 (2)

    1:ラウダを止める

    2:咄嗟に目を閉じる

  • 44二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 01:18:17

    >>41

    まああっちはあっちで愛されてるのは結局自分じゃないことと自分の愛は有害でしかないことに居つか気づくんだろうけどな

  • 45二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 01:21:12

    このレスは削除されています

  • 46二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 01:27:20

    がしゃん、と音がする。
    蹴り飛ばされた首は、壁にぶつかって四散した。
    「……ァ、ハァっ……!」
    ラウダは肩で息をする。それから、グエルが見たこともないほど怖い顔で壊れたマネキンの首を睨んだ。
    しばらくの後、すうと深呼吸をして、乱れた前髪を直す。「ごめんね、怖がらせたよね」とだけ言って、いつも通りの顔をした。その豹変っぷりに少しだけ恐怖を感じながら、しかし、この弟は自分が思う以上に参っているのだ、と思い直す。
    ラウダは絶対生きて返すんだ。
    と、そこまで考えたところで、何かが落ちていることに気づいた。グエルはそれを拾い上げ、手に取る。灰色の鍵だ。
    「これで先に進めるね」
    微笑みかけてくるラウダの声は、奇妙なまでに穏やかだ。そうだな、と返して、グエルはまた、歩き出した。
    割れた破片に背を向けて。

    鍵が使える部屋は、存外すぐにみつかった。
    中に入ってまず目に入ったのは、背の高い本棚である。とりあえず窓をふさいでおくことにした。外の輩に入ってこられたらたまらない。
    ソファもある。『指定席』と名付けられたそれは、しかし誰の指定席なのかはわからない。
    『疲れたのならゆっくりおやすみ?もう苦しむこともなくなるから』
    それから、大きな絵がある。
    「……」
    「これ、は……」
    見覚えのある少女が描かれている。
    ボブはこの彼女を知らないはずだ。だから、反応を示すことはできない。くちびるを噛む。
    「……不快だ。早く出よう」
    ラウダが顔を顰めて、踵を返す。そうして、
    __扉があかないことに気づいたのは、その時だった。

  • 47二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 01:33:41

    もう不安だし不穏しかないわ

  • 48二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 01:39:19

    久しぶりに原作思い出してこれからの出来事に威嚇してる。ハッピーエンドに辿り着けますように。

  • 49二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 01:40:52

    どんどん、何かを叩く音がする。もしかしなくても、ドアの前にあの絵がいることは明白だろう。
    「……気を付けて。何かいる!」
    そんなことを叫ぶと同時に、横の壁を突き破って、絵の女が入ってきた。
    未だに扉は開かない。こうなったら、やるしかない。グエルは閉じたままの扉と格闘しているラウダの腕を掴み、女の横をすり抜けるようにして開いた穴から抜け出す。外には大量のマネキンの首が落ちていた。あまりに悍ましい光景で、一瞬たじろぐ。しかし足を止めたグエルを、今度はラウダが引っ張った。
    「絶対__ぜったい、僕は!」
    道も扉も、おおよそはマネキンの首がふさいでいる。
    ラウダは襲い掛かってくる美術品の間をすり抜けて、グエルを引っ張って走る。その足取りは確かにしっかりしているのに、どこか崖に向かって突っ走っているような危うさがあって、グエルはきゅっとくちびるを閉じた。
    僕は、の先に続く言葉は、聞けなかった。

    ようやく半開きになってる扉を見つけて飛び込んだ頃には、二人とも息絶え絶えになっていた。
    もう、走れない。
    ラウダはグエルのことを引っ張り続けているが、他でもないグエルの足が、うごかない。
    「ここまでくれば、だ、いじょうぶ、かな……」
    声が、どこか遠くに聞こえる。
    「……っは、はは、にげきって、やった……!」
    きんと、金属音のような、耳鳴りが聞こえる。
    「それじゃあ先に、……ボブ?」
    ラウダが立ち止まる。それにともなって、グエルも立ち止まる。
    「ちょ……!大丈夫!?」
    全身から力が抜ける。
    「ボブ……ボブ……!!」
    ああ、だめだ。俺は、兄さん、なのに。
    らうだのために、がんばらないと、なのに。
    指先が冷たくなる感覚のまま、薔薇の花を手落した。
    そして、意識が、暗転する__

  • 50二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 01:45:39

    (そろそろ寝るので、その前にもう一本の薔薇の持ち主枠をきめておくよ)

    (明日いそがしいので普通にエタる可能性はあるよ ごめんね)

    三本目は

    dice1d2=1 (1)

    1:黄色の薔薇

    2:緑色の薔薇

  • 51二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 01:56:29

    楽しみに待ってます〜!

  • 52二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 02:45:08

    めちゃくちゃ楽しく読ませてもらってる
    リアル忙しいなら無理はしないでくれよ

  • 53二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 07:16:04

    ゲームと同じ設定だとすると、かくれんぼで全部開けて、マネキン壊したからギャリー枠ラウダ君の死亡フラグアウトじゃね?

  • 54二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 07:43:00

    逃げる。逃げる。逃げる。

    振り向く。来ている。逃げる。殺される。扉を開ける。

    逃げる。逃げる。逃げる。

    何が来ている?それを確かめるのはあまりに恐ろしい。捕まったら死ぬ。いやだ。まだ俺にはやり残したことがある。

    逃げる。逃げる。扉を開ける。

    __

    その先は行き止まりであった。そしてまるで道を塞ぐようにして、マネキンが、頭のない像が、赤い服の女の絵が、迫ってくる。

    引き返さなきゃ。そう思って後ろ手にノブを回す。鍵がかかっている。開かない。開かない。開かない。

    もう、逃げられない。


    はっとして目を覚ます。

    「あ、おはよう、ボブ」

    ……夢、だったようだ。

    どうやら本を読んでいたらしいラウダが、こちらに近寄ってくる。そこでふと、彼が上着を来ていないことに気づいた。ならどこに、と思うと、自分の体に、ブランケットのようにかけられている。

    「ああ、すまない……」

    「うん」

    ラウダは服を着ようとして__そこでふと、肩にかけるだけにした。インナーの色こそ違うけれど、それはまるで。

    「どう、似合う?」

    「とても」

    ラウダはえへへ、とはにかみながら、きちんと気直した。それから思い出したように、そういえば、と尋ねる。

    「気分はどう?」

    dice1d3=3 (3)

    1:大丈夫だ

    2:あまり

    3:怖い夢を見た

  • 55二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 07:48:34

    ボブ状態だから弱音をラウダに言えたじゃないか!ちゃんと死なないでハピエンを祈るわ

  • 56二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 08:01:39

    「……怖い、夢を見た」
    ぽつりと出てきたのはそんな本音だった。
    そこではっとする。こんなことを聞かせてどうするんだ。「ああ、いや、」なんでもない。付け加えようとしたところで、ラウダはぽんとグエルの背を叩いた。
    「こんな場所にいるんだ、しょうがないよ。無理しないで。また倒れたら大変だ」
    自分より小さいと思っていた手が存外大きく感じて、グエルはほっと息をつく。喉の奥から何かが溢れてきそうだ。
    ……力を入れていないと、涙が出そうだった。
    その様子をしばらく見ていたらしいラウダが、ゆっくりと口角をあげる。それから上着のポケットを探った。それから中に入っていたらしいものを、そっとグエルの手に握らせる。
    キャンディーだ。
    「いちご味だけど、甘いの苦手じゃない?」
    「あ、ああ……」
    むしろ好物である。ラウダはほっとしたように笑って、手を離した。
    「よかった。あげるよ。これから先もう少し歩くことになるかもしれないけど……また疲れたら、すぐ言ってね」
    「わかった。頼んだぞ、ラウダ」
    「いざとなったらボブぐらい担げるから!」
    「いやそれは大丈夫だぞ!?」
    一瞬そこで会話が止まる。そうして、弾けるように笑った。
    ちょっと休んだら、また出発しよう。
    グエルはそう言って、キャンディーをポケットに大切にしまった。

  • 57二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 12:12:39

    兄弟生還祈願

  • 58二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 12:16:28

    追加枠は黄色い薔薇らしいけど、あの……ibの黄色い薔薇ってさ……

  • 59二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 12:36:37

    好感度イベのことごとく外しまくってるけど兄と顔が似てるの一点ですでに好感度5億くらいあったりしませんか?しませんか……

  • 60二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 12:49:33

    >>59

    囮になろうとしているから兄はこういうことしそう好感度イベ一つは上がってそうじゃない?トラウマも刺激されてそうだけど。

  • 61二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 14:09:52

    続いてやってきたのは紫色の部屋だった。
    パーテーションで区切られて、ちいさな迷路のようになっている区域に、ボタンの絵がいくつかおいてある。あれを押せば先に進めるのだろうか?思いながら、二人して足を踏み入れる、と。
    「……なにっ!」
    低い音がして、出入口が塞がれた。
    同時に頭のない像が二体ほど、両手を上げて襲いかかってくる。袋小路だ。このままここにいたら、遅かれ早かれ殺される。
    グエルはふっと小さく息をつき、「ラウダ」と名を呼んだ。
    「俺は向こうから攻める。お前はこっちから行け」
    「また囮になる気?」
    「違う、あのボタンの絵だ。あれを押せば何かしら事態が好転するかもしれない。手分けしていくぞ!」
    「……ああ!」
    身を低くかがめて、同時に駆け出した。
    ラウダが赤いボタンを押す。赤いドレスの像が動き出す。ハズレだ。息を入れ、観察する。ドレスの色と動く像の色は連動している?ならば、とグエルは緑色のボタンを押す。青いドレスの像が動き出す。なんでだよ。
    なんとか真ん中の青いボタンを押すと、出口が開き、像たちが止まった。
    「よ、よかった……」
    「怪我は無い?大丈夫?」
    ラウダが心配げな顔をする。ああ、とだけ返して、なんとか体を引き摺って歩き出した。と、そこで、ふと本棚があることに気づく。
    『日誌』
    『人の思いがこもったものには魂がやどる。それならば作品にも同じことが出来るのではないか。そして今日も、魂を分けるつもりで作品を作る』
    「……これだけ?出口の場所くらい書いてよね」
    ラウダが辟易したような顔で言った。グエルは無言で頷いた。

  • 62二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 14:28:02

    『ミルクパズル』
    「ボブ、ミルクパズルは知ってる?」
    「えっ」
    知っている。知っているが、日雇いの清掃員であるボブがそれを知っているのは、少し不自然かもしれない。少し考えたあと、ふるふると首を横に振った。ラウダは腕を組んで、絵を見上げる。
    「その名の通り真っ白なパズルだよ。絵がついてないから難しいんだ。頭がいい人はすぐ完成できるらしいけど」
    そこで一瞬言葉を止める。
    「面白くなさそうだよね。好きな絵がついてないと、やりがいがないよ」
    「ラウダはどんな絵が好きなんだ?」
    なんとなく、尋ねてみる。ラウダは首を傾げて、しばらく考える素振りを見せた。それから真顔で、おもむろにくちを開く。
    「兄さん」
    耳を疑った。
    ラウダはぱっと笑って、両手でくちを抑えて笑う。
    「……冗談だよ!ディランザってわかるかな、モビルスーツなんだけど……あの機体が絵になってたらきっとかっこいいと思う」
    ほんとに冗談なのか。
    顔は本気だったぞ。
    言うのはやめておくことにする。薮をつついて蛇を出すどころか蛇に食われたくはないのである。「ディランザ、かっこいいよな」と言って、誤魔化すように何度も何度も頷いてみせた。

  • 63二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 14:35:32

    …これバレているのでは?

  • 64二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 14:43:40

    >>63

    せっかくなのでラウダくんは

    dice1d4=4 (4)

    1:気づいてる。事情があると察し気付かないふりをしているだけ

    2:薄々勘づいてはいるがまだ確信はしていない

    3:気づいていないがグエルとよく似た顔のボブに兄を重ねている

    4:全く気づいてない。ボブはからかいがいがあるなあ!

  • 65二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 14:47:32

    >>64

    おバカ!

  • 66二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 15:32:38

    弟がポンコツかわいい

  • 67二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 15:48:40

    >>64

    世界には三人同じ顔の人もいるしなーというノリか。ほとんど初対面相手になるとは囮になろうで少し感づいたのかと。兄としらないであのきついジョーク言宇野は少し引くな

  • 68二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 19:21:00

    クソボケヤンブラ弟だったみたいです


    続く部屋は個室だった。大きな絵画と本棚がある。グエルはなんとなくそのうちひとつを手に取って、なんとなく、読んでみる。

    『【自主規制】は【自主規制】を【自主規制】させ……』

    dice1d3=3 (3)

    1:……この本は見なかったことにしておこう。

    2:(ヤベエ何一つ意味がわかんねえ)

    3:おいラウダ、なんだこれ?

  • 69二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 19:40:25

    どうしよう。

    何一つ単語の意味がわからない。

    グエルは少しだけ眉をひそめた。自分はもう少し賢いつもりだったが。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥である。もしかしたらラウダならわかるかもしれない。そう思って「なあ」と声を上げる。

    ラウダは「なに?」と首を傾げながらのぞきこんできた。それからグエルの手元を見て、顔をしかめる。

    「この本の意味、わからないんだが。ラウダにはわかるか?」

    「ボブ……」

    dice1d3=3 (3)

    1:知らない方がいいこともあるよ

    2:(下卑た単語だ。この年でこういうものに触れてこなかったってことは、もしかして育ちがいいのか?)

    3:どうしよう。僕にも分からない

  • 70二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 19:46:24

    お坊ちゃんどもがよぉ~

  • 71二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 19:49:39

    二人してキョトンで可愛いやつらよ

  • 72二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 20:06:01

    ラウダは一瞬ぽかんとくちびるを半開きにさせた。しかし直後に前髪を直し、目を光らせる。
    「なんだこれは……なにかの暗号?」
    「それにしては文法がしっかりしすぎている。ところどころ意味はわかるが……単純に単語がわからないんだ」
    「単語を別の単語に置き換えるのか?いや、それにしたって規則性がない。いったいこれはなんなんだ?」
    「わからない……わからない。わかるところを繋ぎ合わせてみると……肉を……結合し、穿つ?まさか……これは……」
    「戦術……いや『尋問』関連のものか。何故それがこんな場所に?まさかこれで僕たちを怖がらせようというのか」
    違うそうじゃない。
    そんな天の声が響く中、ふたりはどこまでも明後日の方向に本の内容を解釈する。最終的に実態とは斜め上どころか何か越えてはいけないラインをぶっちぎって結論づけたところで、
    ぱち
    ぱちぱち……
    突然、明かりが落ちる。はっとして顔を上げると、真っ暗な世界の中、まるでこの場所に、ひとりきりになったかのような錯覚を覚える。
    「停電?いったいどうして……」
    「ボブ、いる?そこにいるよね?」
    「ああ、もちろん!しかし、どうしようか……」
    「ううん……あっ、そうだ」
    そこでラウダが、何かを取りだした。一瞬の後、それはぼう、と赤熱する。彼が取りだしたのは__
    1:斧持ってきてたの忘れてた
    2:ライター持ってたの忘れてた

  • 73二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 20:06:28

    >>72

    ダイス忘れ

    dice1d2=2 (2)

  • 74二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 20:12:49

    斧だったらどうなってたんだ…?

  • 75二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 20:23:50

    >>74

    斧と書いてマスターキーと読むやつだな

  • 76二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 20:32:43

    「ライター持ってたの忘れてた」
    「ライター?どうしてそんなものをもっているんだ?あぶないぞ」
    「んん?ああ……まあね」
    ラウダは理由の方をぼかして、レバーを下ろす。しゅ、かち、と数度音がした後、ちいさな炎が上がった。
    そうして、
    『いやだ』『やめて』『たすけて』『こわい』『しにたくない』
    部屋に広がる無数の落書きに、息を飲んだ。
    え、とラウダからちいさな声が漏れた途端、電気が復旧する。照明が戻っても、悲鳴は消えない。しばらく考える素振りを見せた後、ラウダは蓋を閉じた。かち、とちいさな音がして、熱が消える。
    「何者かが火を恐れている……のか?」
    「ほんと、こういうのやめてほしい……心臓に悪いよ」
    『お客様に申し上げます。当館は火気厳禁となっております。マッチ、ライターなどの持ち込みはご遠慮いただきますようお願いしています。万が一館内でそれらの使用をスタッフが発見した場合

  • 77二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 20:43:30

    兄がいなくなった後、寂しさからタバコを覚えたやつ…

  • 78二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 20:55:16

    火って見てると瞑想効果があるから精神安定に効くらしいよ
    タバコとか炙るドラッグとかじゃなくてろうそくとか焚火とかそっちじゃない?
    高校生が火遊び(物理)覚えていいのかは知らん

  • 79二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 20:56:11

    「とにかく、先に進もう」

    「そうだね、ボブ」

    グエルが先導して、進む。先程来た道を引き返す形にはなるが、どうやらひとつ、隠し通路が開いたらしい。

    こっちに行くか、といって、ちらりと振り返る。ラウダは無言で頷いた。それから意気揚々と歩き出したところで、

    「わっ」

    誰かとぶつかって、派手に転びかけた。

    「ボブ、大丈夫!?あなた、も……」

    ラウダに支えられて、グエルは無事だ。しかし相手はそうではないようだ。少しだけよろめいて、壁に手を着いたらしい。

    彼が体勢を崩してなお、見上げる形になる。どちらかといえば背が高いグエルが、そうせねばならぬほどの長身だ。そしてそれは、覚えがある。そこにいたのは。

    長い金色の髪。

    澄んだ碧色の瞳。

    焼けた肌は、健康的というよりは妖艶な印象をもたせる、彼は。

    「……シャディク・ゼネリ?」

    「きみは……」

    dice1d2=2 (2)

    1:グエル?

    2:グエルのそっくりさん?

  • 80二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 20:59:21

    ポポポンコツども~

  • 81二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 21:03:53

    >>77

    そもそも宇宙コロニー空間でタバコが許されるとはとても思えないんだよね…なんかタバコ自体はあっても火を使わない煙が出ない仕様になってそう。

  • 82二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 21:13:37

    メアリー枠はそっちかあ…
    ママ枠楽しみ

  • 83二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 21:17:40

    「きみは……グエルのそっくりさん!?」

    「えっああそうだな!!」

    グエルは力強く頷いた。もしかしたら自分は変装の才能があるのかもしれない。「さっきも、言われた。ラウダの兄さんにそっくりだって……」と続けて、シャディクの顔を見上げる。嘘をついた負い目からか、うまく目が合わせられない。

    「シャディク、どうしてこんなところに……いや、いい。言わなくてもわかる。そっちも気づいたら巻き込まれていたくちだろう」

    ラウダは髪を弄りながらそう言って、ぱちりと瞬きをする。

    「あれ、どうしてボブはシャディクのことを知っているの?」

    「あ、それは、えっと……」

    上手い言い訳が思いつかず、グエルは再び目をそらす。シャディクはそれをしばらく見下ろしたあと、困ったように肩を竦めた。

    「グラスレーの威光はすごいね。養子の顔まで広がってるんだ」

    「あ、ああ、まあ、そういうことだ」

    「ふうん」

    ラウダはとりあえず納得したようだ。腹の奥から例えようもない罪悪感が湧いてくる。

    「それで、シャディク。今僕たちはこの空間から抜け出す方法を探している。シャディクもそうだよね?」

    「ああ。俺も誰か人がいないか探していた。外に出たくてね」

    「じゃあ一緒に行こう。味方は多い方が心強い。ボブもそれでいい?」

    「もちろん」

    そこでふと、シャディクがボブの方を見た。

    「ねえ」

    この美術館が怖い?

    dice1d2

    1:……怖い

    2:平気だ

  • 84二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 21:18:09

    >>83

    今日はダイスミスをする日だなあ!

    dice1d2=1 (1)

  • 85二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 21:22:08

    こんなにかわいいボブがグエルのはずないだろHAHAHA

  • 86二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 21:34:53

    「……正直に言うと、少しだけ怖い」
    嘘だ。本当はかなり怖い。目を伏せたグエルを見て、シャディクは笑みを深める。
    「でも」
    しかしぱっと顔を上げて、目を輝かせたグエルに、少しだけ面食らったようだった。
    「二人がいるから、怖くない」
    これもまた、本音である。
    ラウダは「うん」と感動したように目を輝かせた。シャディクはすっと口角だけあげて、「そっか」と呟く。
    「ふふ、じゃあ行こうか。ラウダ、ボブ」
    そう言って、シャディクが仲間に加わった。
    (……あれ。なんでシャディクは、自己紹介もしていないのに俺が「ボブ」だってわかったんだ?)
    ラウダが言っていたからだろうか。
    どこか引っ掛かりを覚えながら、グエルはまた、歩き出した。

    「そういえば、僕とボブは薔薇の花を持っていたけれど。シャディクも持っているの?」
    「ああ」
    「きちんと持っておいて。なくすと危ないし、取られると……」
    「ボブのは赤いんだね。俺のは黄色いんだよ。黄色は好きだけど、白も好きなんだ。それから桃色も」
    「……シャディク。僕の話きいてた?」
    ラウダは半目でシャディクを睨みながら、壁に体重を預ける。
    そこに、張り紙がしてあった。
    『争いの矛先』
    『__一体どちらが正しいのか』

  • 87二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 21:59:13

    『嫉妬深き花』という絵画を横目に、グエルは次の部屋への扉を開く。

    そこにあったのは__

    「……これは?」

    大量のたぬきの置物だった。

    それだけではない。部屋に飾られている大きな絵まで、たぬきを模している。しかもただのたぬきではない。見覚えのある造形をしている。具体例をあげると、極力表現をぼかすならば、水星の。

    「なんだこれは……忌々しい」

    横でラウダが吐き出すように言った。シャディクは首を傾げ、「そう?結構可愛いと思うけどな」なんて言って、そのうちのひとつを手に取る。

    あいくるしい姿形をしてこちらを見つめるぬいぐるみに、グエルはちいさな舌打ちをした。

    「グエルはどう思う?」

    「え」

    「この子、かわいいと思う?」

    す、と目の前にたぬきが差し出された。

    つぶらなひとみでこちらをみてくるその置物に、

    dice1d3=3 (3)

    1:まあ、可愛いんじゃないか

    2:撫でたいなんて思ってないんだからな!

    3:そんなの、わ、わかんねえよ……

  • 88二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 22:08:18

    うわああああああ! あの部屋だああああ!(トラウマ)
    ギャリー視点だとマジで怖いけど、このラウダからはどう見えてるのか楽しみ
    シャディクからはどうでもいいや!

  • 89二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 22:11:30

    シャディクと原作のメアリーの設定をどう重ねるのか気になるな

  • 90二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 22:14:50

    >>88

    ラウダなら普通にかわいいたぬきが並んでても忌々しいって言いそうだな

  • 91二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 22:15:56

    >>4

    2じゃなくて本当に良かった

  • 92二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 22:22:02

    >>87

    シャディクの台詞がグエルになってるけどスレ主のミス?伏線?


    >>90

    確かに言いそう

    でも原作基準ならシャディク(メアリー)と同じものが見えてるはずだから、ミオミオかもしれん

  • 93二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 22:22:19

    赤い目のウサちゃんに見えるアレかぁ…

  • 94二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 22:44:13

    >>92

    ミスです その できるだけ誤字はしないようにしてるんですけど 素で み 見なかったことにしてください…


    「わ、わかんねえよ……」

    誤魔化すように言うと、シャディクは「ふうん」と笑った。ラウダはふっと表情を緩める。

    「そうだね、ボブ。さっさとこんなところ調べて出ようよ!」

    グエルの手を取って、ラウダが意気揚々と部屋をみてまわりはじめた。直後、

    がしゃあん!

    大きな音がして、たぬきの置物のうちのひとつが粉々に割れた。

    はっとして、そちらを見る。ラウダの肩が跳ねる。グエルの息が止まる。シャディクは読めない笑みのまま、「わあ」と無感情な声をあげた。

    そのまま彼は、そうっとしゃがみこむ。そうしてたぬきの破片の中から、ひとつ、何かを拾い上げた。

    「中に鍵が入っていたみたい。これで先に進めるね」

    笑みからは、なんの感情も読めなかった。

  • 95二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 23:08:25

    「さあ、進めばふたつ、だよ」
    「い゛ッ、」
    「ちょっと待ってよ、シャディク、ボブ!」
    シャディクがグエルの腕を、なかば無理矢理引きづるようにして引っ張る。そのあとを追いかけようとしたラウダが、不意に、たちどまる。
    ……なにか、音がする。
    絵の方からだ。足を止めて、そちらを見る。物音は近づいてくる。段々。だんだん。だんだ、
    「あぶない!」
    グエルは咄嗟に、絵の花にのみこまれそうになったラウダを突き飛ばした。
    シャディクは何も言わず、ただグエルの腕を掴んだまま、そちらを見やる。ラウダは体勢を崩して、倒れ込む。そうして。
    シャディクとグエル。
    ラウダ。
    二者の間を隔てるようにして、巨大な茨があらわれた。
    「い、た゛……」
    ラウダはしばらく呆然としたあと、「シャディク、ボブ、大丈夫!?」と駆け寄ってくる。
    「だめだ、この茨、石でできている。燃やすことも折ることもできないよ」
    眉を下げるラウダを、グエルはくちびるを噛んでみつめる。それから茨をつかんで、叫ぶように言った。
    「大丈夫だ。必ずこれを壊す道具を見つけてくる。助ける、絶対!」
    「ボブ」
    ラウダの瞳が輝いた。シャディクはその様子を黙って見守ったあと、にっこりと微笑む。
    「そういうわけだから」
    掴まれたままの腕が、引っ張られる。
    「行こっか、ボブ」
    鍵は開いた。

  • 96二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 23:17:24

    不穏だ

  • 97二次元好きの匿名さん22/12/24(土) 23:48:45

    ラウダ兄と似ていて命の恩人なだけでも好感度高そうなのにこのまま上げていくと博物館出たらグエルじゃなくてもそばにいさせる方法考えるレベルじゃないか

  • 98二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 07:34:58

    もとネタ知らんけど雰囲気あって面白い

  • 99二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 07:43:10

    >>98

    Ibっていうフリーゲームだよ。クセはあるけど名作。

  • 100二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 09:02:16

    続く部屋は、どうやら物置のようだった。無数のダンボールに、書き損じのキャンパス、頭のない像がいくつか。
    「これぶつけたら壊せそうだよね」
    「……シャディク」
    「じょうだんだよお」
    ドレスを着た像に触れながら倫理観がアウトな提案をするシャディクを呆れた目で見る。彼は飄々と両手を上げて、ほほえんだ。なんでこんな余裕なんだ。こいつはまだ襲われていないのか?
    脳裏に蘇るのは、青い薔薇で花占いをする女の絵だ。
    やっぱりラウダをこんなところでひとりにするのは不安である。早急になんとかしなければ。
    そう思ってダンボールの中を漁る。その奥に、何かが見えた。取り出してみると、
    「……これは、パレットナイフ?」
    「わあ。これであの茨、壊せるかも」
    「いや流石に無理だろ!」
    「真に受けないでよ、じょうだんだって」
    どこまで冗談なのか、わかりやしない。
    シャディクはグエルの手からナイフを取る。「一応持っていっておくよ」と言いながら。
    「じゃあ、次の部屋に行こうか」
    「……ああ」

  • 101二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 09:12:36

    「でもその前に一旦ラウダの、」

    ぱち

    ぱち……

    突然、電気が落ちる。すぐに復旧したようだが、ふと来た道を見てみると。

    「なあシャディク、さっきあの像、あんなところにあったか?」

    「んん?」

    シャディクは首を捻る。その視線の先では__首のない像が、まるで塞ぐようにして、扉の前に立ちはだかっていた。シャディクは笑みを消し、手を口元に持っていく。

    「……帰れなくなってしまったね」

    どうする?

    「どうしたもこうしたも……」

    dice1d2=2 (2)

    1:先に進むしかないだろう

    2:こいつはっ倒してラウダのとこ戻ろうぜ!

  • 102二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 09:26:49

    やっぱり兄弟すね

  • 103二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 09:50:56

    「俺とシャディクならなんとかなるよな」
    「えっ??」
    「いくぞシャディク!」
    「えっっ!?!?」
    勢いで突っ込んで行こうとするグエルを、シャディクは半ば反射で羽交い締めにして止める。軽く足が浮いてつま先立ちになる。
    「おい離せ!!」
    「ちょちょちょまってまってまってそうはならないでしょ!」
    「俺とラウダで動かせたんだからラウダより体格あるシャディクとなら余裕だろ」
    「いやいや!」
    ずるずると像から引き剥がして、適度に距離を取ったところで解放する。シャディクは頭を抱えながら、グエルの腕を掴んだ。
    「それは最終手段だろう。まだ行ける場所があるんだから、先にそっちを見るべきだ」
    「ラウダが心配だ」
    「きみとラウダは赤の他人だろう。そこまでする義理はないし、何より彼はきみが思うより強いよ」
    そこで、グエルの足が止まる。
    確かに『ボブ』にラウダを助ける理由はない。これ以上するのは不自然だ。ボブの正体がグエルであると、バレる訳にはいかない。
    「……わかった」
    今は、進もう。
    ふたつを得るために。

  • 104二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 11:53:17

    確か美術品壊しまくると不味かったはず
    ラウダ大丈夫か?

  • 105二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 16:04:59

    長い階段を登る。

    道中赤いものが潰れているのを発見したが、絵の具玉だということにした。……そうに決まっている。

    赤。

    ふと、顔を上げる。

    鼻のないピエロの絵があった。

    『グエル きみにたのしんでほしいから』

    「グエル?」

    シャディクは首を傾げる。グエルの肩が跳ねる。

    「ボブはボブだろう。グエルじゃない」

    「そっそうだな!俺はボブだ!!」

    「うん。グエルがこんなところにいるはずがないからね」

    何とか誤魔化せたようだ。……やはり自分は別人になりすます才能があるのかもしれない。

    シャディクについて歩く。とにかく先に、先に進もう。

    『ぼくたちだけの たのしいせかいへ』


    「遅い、何かあったのかな……」

    ラウダは眉をひそめ、青い薔薇を握り直す。

    「ボブ、シャディク、聞こえてたら返事して」

    ……

    返答はない。早くもあの二人だけで行かせたことに後悔を覚えつつある。

    とにかく、ただ待っているだけというのも嫌だ。あまり入りたくはないが、先程の部屋をもう一度調べてみよう。ラウダはそう思って、扉を開ける。

    そこにあったのは、相変わらず__

    dice1d3=3 (3)

    1:たぬきの置物だ

    2:気味の悪い青肌の人形だ

    3:兄さんのプラモ(ずたずたにされている)だ

  • 106二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 16:13:40

    うわあ…よりにもよってダイス神それ引くかあ…

  • 107二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 16:25:00

    それであの反応ならラウダ抑えてたほうだな

  • 108二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 19:29:56

    「……」

    グエル・ジェタークの美少女(?)プラモデルである。

    ただしエアリアルのサーベルが刺さっていたり、瞳のハイライトを消した上で倒れていたり、四肢がばらばらになった上でおもむろにヒートアックスがよこにおいてあったりとなかなかに最悪な様相を呈している。そのうちいくつかはご丁寧にホルダー仕様の制服だ。仕事が細すぎる。なんだその労力のかけ方は。

    しかも一番イライラするのは、兄が銃口をつきつけられている絵がでかでかと飾ってあることだ。筆致が無駄に精緻だしするかしないかでいったらしそうな表情なのが嫌すぎる。

    ラウダはため息をついて、本棚にもたれかかる。すると、

    「うわっ!?」

    ずるり、と本棚がずれた。さっきは気づかなかったが、後ろに空間があったらしい。

    「……行ってみる、か」

    『出口なんてない 理由なんてない』

  • 109二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 19:41:37

    プラモ欲しいなあ

  • 110二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 20:47:52

    「これは」

    「通れそうにないね」

    2人はそう言って、顔を見合わせる。

    目の前には、巨大な淵があった。

    さすがにこの距離を飛ぶのは無茶だ。かと言って通るために利用できそうなものもない。腕を組んで、考え込む。そこでふと、向こう岸の壁沿い、5本の紐が垂れ下がっていることに気づいた。

    「……あの紐」

    「ボブ?」

    「右から二番目だけ、色が違う。あれを引けば、何か変わるんだろうが……」


    「紐?」

    ラウダの目の前に、五本の紐が垂れ下がっている。見た目に違いはない。ただ、向こうの扉に鍵がかかっている以上、引いてみるしかなさそうだ。

    __と。

    ふと、音が聞こえる。話し声だ。まさか壁越しに、ボブとシャディクの会話が聞こえているのか?くぐもってはいるが、何とか聞き取れそうだ。

    dice1d3=1 (1)

    1:こちらからも話しかけられるかも。とりあえず聞き耳を立ててみよう

    2:……シャディクは少し怪しい。ボブが心配だ、盗み聞きみたいになって悪いけど……

    3:今はそんなことに構っている場合じゃない!

    3が出た場合dice1d3=2 (2)

    1:右からひとつずつ引いていこう

    2:左からひとつずつ引いていこう

    3:勘で……これだ!!(右から二番目)

  • 111二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 21:06:19

    向こうの声が聞こえるということは、こちらからも話しかけられるかもしれない。そう思ってラウダは、「シャディク?ボブ?」と名前を呼んでみる。

    ……返事はない。

    ふっと息をついて、壁にもたれかかる。あんなのを見てしまった直後で、気が滅入っているのかもしれない。

    薔薇の花を持ったまま、片腕をあげて顔を隠す。もう嫌だ。帰りたい。兄さんに会いたい。……そう思ったけれど、涙は出なかった。

    『右__二番目__違う__かわ__』

    「にいさん?」

    グエルの声が聞こえた気がして、はっと立ち上がる。

    右から二番目。そう、右から二番目だ。まるで神様に導かれるように、それに手を添え、引く。

    これで何か変わるのだろうか?

    __そこまでして、ようやくここにグエルがいるわけがないことにきづく。あれはボブの声だ。そのはずだ。

    「……」

    dice1d3=2 (2)

    1:まさか、ボブの正体は……

    2:……そんなわけないか

    3:ボブとシャディク、大丈夫かな。それはそれとして兄さんはどこにいるんだろう……


    「うおっ!?」

    突然かかっていた絵画が動き出したかと思うと、まるで橋のように岸と岸を繋ぐ。

    「通れるようになったね」

    「こ、この上を通っていくのか!?」

    脳裏に過ぎるのはいつぞやの蟻の絵画である。こいつも潰れたりしないか。そう思っていると、絵はしばらくグエルを見つめたあと、まるで頷くように目を閉じた。

    「いいって」

    シャディクは躊躇いなく絵を踏んで進む。グエルも一瞬逡巡したあと、渡る。

    対岸まで辿り着いて、ほっと胸をなでおろした。そこで次は、青いオブジェクトが道を塞いでいることに気づく。

    「このままじゃ通れないな」

    「そこの穴から落としてみる?」

    「そこまでする必要はないと思うが……」

    グエルは考えたあと、結局シャディクの言う通りにすることにした。

    真っ青なオブジェクトが、穴へと吸い込まれていった。

  • 112二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 21:25:06

    うおー更新来てる
    それ落としていい奴なのか………?

  • 113二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 22:36:19

    「わっ!?」

    しばらく物思いに耽っていたラウダは、突然の落下物に目を白黒させた。どうやらそれは、青いオブジェクトのようである。ついでにいうと、この部屋にはちょうどそれがはまりそうな穴がある。

    「うーん……いれてみればいいのかな?」

    思いながら、ラウダはそれを動かしてみる。ぴたり、ときれいに収まる。次の瞬間、かちゃり、と鍵が開く音がした。

    「……一体どういう原理だ」

    思いながらも、そういうものだと受け入れて進むしかない。

    前髪を直してから、ラウダは一歩踏み出した。


    グエルは細い通路を歩く。とりあえず先に進むべきだ。薄暗いけれど、床のタイルの模様がやけに凝っていることはわかる。ゆらめく照明が、幻想的な雰囲気を添えていた。

    「ねえ、ボブ」

    不意に、シャディクが話しかけてくる。

    「きみにとって、ラウダは何?」

    dice1d2=1 (1)

    1:……

    2:知らない人だ

    「そっか。そうだ、ボブは俺たちと同い年だよね。どうして美術館の清掃バイトを?上手くやってる?」

    dice1d2=1 (1)

    1:ああ、楽しくやっている

    2:色々あったんだ

    「ふうん。だったら尚更早く、一緒にここから出ないとね。俺も早く脱出したいよ……あっ、ねえ、もし俺とラウダ、どちらかとしか一緒に出られないとしたら、どっちと出る?」

    dice1d3=2 (2)

    1:シャディクと出る

    2:ラウダと出る

    3:ンだよその質問。俺は進んでふたつを得るぞ

    「……うん。色々聞いてごめんね。じゃ、先に行こうか」

    シャディクはゆったりと、穏やかに微笑んだ。

  • 114二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 22:58:48

    選ばれたのはラウダでした

  • 115二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 23:02:26

    >>114

    グエルからすれば弟選ぶのは当然かな

  • 116二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 06:19:16

    保守

  • 117二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 07:37:52

    ラウダは通路を進む。
    道程、定期的にグエルのプラモデルが落ちている。
    どれもこれもぐちゃぐちゃにされたものばかりだ。そのくせ塗装も仕上げも完璧である。ドン引きするやら悲しいやら気持ち悪いやら怖いやら恐ろしいやら我を忘れそうなほど怒りが湧いてくるやらで、さっきから自分を抑えるのに必死だ。
    『ラウダ ひとりでさみしいんだ 俺も連れてって』
    『どうしてそばにいてくれないんだ』
    『なんで無視する?俺のことが嫌いなのか?』
    『なあ、一緒にあそぼう。ここには楽しいものたくさんあるんだ』
    『俺の友達もたくさんいる、紹介してやるよ。だから』
    『永遠に ここにいろ』
    「……兄さんはそんなこと言わないッ!」
    ラウダは叫んで、足を振り上げる。蹴り飛ばそうとした、ところで__いくら偽物でも、兄の姿をしたものを壊すなんて、できなくて。顔をゆがめて、屈む。極力それ目に入れないようにして、扉の前からどかした。

    「そうか。きみは……ラウダを選ぶんだ」
    シャディクは睫毛を伏せる。その様子をみて、流石にまずいことを言ったか、とグエルはくちびるを開く。しかしそれより先に、シャディクが次の扉に手をかけた。
    「ここは資料室だね」
    「み……みたいだな」
    二人は部屋の中に入り、中を見て回る。作品集や解説集などが大半を占める中で、ひとつだけ異彩を発しているのは一冊の絵本だ。
    『ある少年の末路』
    あるところに、一人の少年がおりました。少年は困窮していて、喉が渇き、お腹がすいていて、体力も限界で、倒れて__気づくと、不思議な美術館に拾われていました。
    最後のページには、穏やかに微笑む男の子の絵が描かれている。
    「なんだあ?この話……」
    「ボブは感動話は嫌い?」
    「感動話かよ、これ。意味不明な話だろ」
    「そうかな」
    シャディクは本を手に取る。そうして絵の中の男の子を、しばらくじっと見つめていた。

  • 118二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 08:35:21

    保守

  • 119二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 13:37:52

    保守

  • 120二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 14:38:03

    『なァらウダ、なニをしてイるんだ?俺も仲間にいレてよ』

    「……」

    無視だ無視。

    ラウダは今、絵の具玉を集めている。柔らかいけれどきれいなものだ。これも鍵のひとつ、なのだと信じたい。とりあえずそのうちのいくつかと、赤い傘は見つけた。本棚で塞がれた先にもうひとつあるのはわかっているけれど、ラウダの力では動かせそうになかった。『マスターキー』で壊して進むことも考えたけれど、もう少し考えてからにしてやることにする。

    不意に、釣り針の絵を見つけた。釣り針。ここに捕まっていけば、ボブとシャディクのところにつながっていたりして。……なんて。少し疲れているらしい。そう思いながらなんとなく、針に傘をひっかけてみる。

    「……わっ!?」

    傘ごと釣り針が消える。一体なんだったんだ。この美術館には分からないことが多すぎる。

    ……先程の資料室。

    もう少し情報が集められればいいのだが。


    「これは……傘?」

    「さっき傘をなくした女の子の絵があったよね。渡してみようよ」

    「絵にものを渡せるわけないだろ」

    思いながら、グエルは拾った赤い傘を少女の絵に渡してみる。

    傘が少女の絵に吸い込まれる。

    部屋の中に雨が降り始める。

    「……?……???」

    「理解を拒んだ顔やめてよ」

    因果関係が何一つ分からない。スペースボブと化したグエルを見て、シャディクは肩を竦めた。

    「……そういえばこのマネキンの首、重さが違うんだね」

    「ああ」

    そういえばこれには見覚えがある。ラウダが蹴り壊していたあれと同じだ。

    dice1d3=2 (2)

    1:とりあえず全部壊そうぜ!

    2:一番重いのを落としてみよう。床に穴が空くかもしれない

    3:ラウダの仇だ。やるぞシャディク!!

  • 121二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 15:13:11

    「一番重いのを落としてみよう。床に穴が空くかもしれない」
    「……?危ないよ。やめた方がいいと思うけどな。よしんば空いたとしてどうするの」
    「この下を調べられるだろう。そうしたらまた行動範囲が増える」
    「あっ」
    グエルはシャディクの静止を聞かず、床にマネキンを落とす。大きな音がして、割れる。床に罅が入る。……ついでになにか、明らかにまずそうなガスが吹き出してくる。
    「ちょ……これ吸ったらまずいやつだよ、逃げるよボブ!」
    シャディクはグエルを引きずって部屋から出る。
    なんとか飛び出て扉を閉めたあと、シャディクは振り向いて、少しだけ怖い笑顔を見せた。そうして「突然こんなことをするのはだめだよ」と低い声で呟いた。

    「これで四つ目……」
    今まで探索できなかったガス室に、何故か雨が降ってきたことによって、なんとか絵の具玉も集まってきた。この調子ならすぐに全部集まりそうだ。一人だと少し心細いから、早く合流したい。
    「……」
    本棚があった部屋に戻ってみる。
    何故か本棚が動いていたので、五つ目も手に入った。だがそれは気にもとめず、なにかここのことが分かりそうな本を探す。そうして、
    「……ゲルテナ作品集?」
    いい情報がのっていないか。例えばあの美術品の弱点が何かとか。どうやらアルファベット順に並べられているらしく、ぱらり、とめくった、
    Sのページにあったのは、

    『Shaddiq Zenelli』

    ゲルテナが手掛けた、生涯最後の作品。

  • 122二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 15:25:44

    どうか兄弟が生還できますように…

  • 123二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 15:27:57

    ゲルテナいい趣味してるな

  • 124二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 15:29:20

    「……!?」

    そこにいたのは、確かにラウダもよく知るシャディクその姿だ。肖像画のモデルになった?そう思ったけれど、この絵が描かれたのは昔の話なのに、絵の中の彼は今と全く同じどころか、少し大人びているようにも見える。年代が合わない。

    『まるでそこに存在するように佇むこの少年には、実在するモデルがいる。グラスレーの孤児院にて、飢餓で亡くなってしまった少年の写真から着想を得て、その少年がもし大人になったらこのような姿をしていただろうという様子を描いたのことだ。この絵を描いたあと、ゲルテナは行方不明になる。これはその後発見されたが、それから長らく行方不明になっており、今もどこにあるかはわかっていない』

    「亡くなって……一体、どういうことだ!?」

    拒んではいても、何が起きているかはなんとなく、理解していた。

    現状どういうわけか、ラウダは絵の中に入ってしまっている。ならばその『逆』もできるのではないか?もちろんそうであるのだとしたら、なぜシャディクが絵の中に戻ってきたのかという疑問も生じる。しかし__いや、そんな、ことは__

    「……なら、今、ボブと一緒にいるのは……?」

    早く伝えないと。

    ラウダは駆け出す。とにかく早く合流しなければ。……伝えなければ、ボブが危ない!

    途中で、そこそこきれいなグエルのプラモデルを見つける。五体満足ではあるが(これを以て『きれい』とするのもよく考えるとおかしい)、腹部が奇妙に膨らんでいる。

    『いいモのみつケた 俺の宝物』

    「……」

    dice1d2=1 (1)

    1:調べたくないけどやるしかないよね……

    2:上手いことこう、工夫できないかな……

  • 125二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 15:51:45

    「……やるしかないか」
    ラウダは低く呟いて、グエルのプラモデルに触れる。そこそこ丈夫だから大丈夫。そう自分に言い聞かせて、腹を割くように、上半身と下半身を切り離す。
    いくらこれがただの偽物だとわかっていても、精神的にきついものがある。これは兄の中にある異物を取り除くための手術なのだ。罪悪感は消えない。そうして。
    「これ、絵の具玉?」
    赤い絵の具玉が中にあるのを見て、ぱちくりとまばたきをする。
    直後。
    「わあっ!?」
    ラウダの手からプラモデルが飛び出て、先程まで鍵が閉まっていたはずの扉の中に入っていく。
    文字が、変わる。
    『らウだ 俺とあソぼう』
    「開いてる」
    来い、ということか。
    ……忌々しい。
    兄さんはそんなこと言わないし、そんなことしないし、そもそもこんな場所にいるわけない。それに今は、早くシャディクが危ないことをボブに伝えないと。そう思って、ラウダは勇んでその部屋の中に足を踏み入れた。

  • 126二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 17:40:49

    めちゃおもしろい…!

  • 127二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 20:56:29

    保守

  • 128二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 21:10:09

    「うわ……」

    中は相変わらず、大量のずたぼろプラモデル(グエル・ジェターク)で満たされていた。今回は更に__“何故”かは理解したくないのだが__赤い絵の具玉による塗装が増えており、最悪係数が一足飛びで上がっている。

    奥に、白い絵の具玉が見える。

    こんなところには長居したくない。早くあれをとって出よう。これで七つ揃ったから、何かが変わる、かもしれない。立ち上がり、大きく息を吐いて、踵を返す。そうして扉に手をかけ、

    ……開かない。

    「えっ、」

    開かない。何度ノブを捻ってもあかない。鍵がかかっている。体当たりする。開かない。開かない。開かない!

    扉に、べとりと文字が浮き上がってくる。

    『宝探ししよう、ラウダ!だれがかぎをもっているかな』

    ごおん

    ごおおん……

    鐘の音が鳴る。部屋の奥に飾られていた額縁に、なにか、手のようなものが浮き出る。

    このままだとまずい。鍵、鍵を、探さなくては、

    「……兄さんの腹を、割いて?」

    dice1d2=2 (2)

    1:やるしかない!

    2:……無理だ、僕には……

  • 129二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 21:12:14

    みんなのトラウマ青い人形の部屋…

  • 130二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 21:14:28

    精神崩壊ルート…

  • 131二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 21:21:15

    人形じゃなくて兄さんプラモのせいで悲壮感がすごい…

  • 132二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 21:25:43

    「……」

    「シャディク?」

    「…………」

    「大丈夫か?」

    「ああ 大丈夫。だイジょうぶ。……ダイ じょうブ?」

    そこまで言ったところで、シャディクは突然弾けるように笑いだした。

    「ふふ、ふふふふふ。あはははは!」

    ボブ 大丈夫 シャディク 大丈夫 俺は 僕 あはははは

    明らかに様子がおかしい。シャディク、ともう一度声をかけたところで、彼はグエルを置いて、ふらふらと歩き出した。

    どうしようか。シャディクを一人にするのは心配だが、あの状態のシャディクに一人で話しかけに行くのも少し怖い。ちょうど鍵も手に入れたし、ラウダとの合流を優先すべきだろうか?

    dice1d2=1 (1)

    1:追いかける

    2:先に進む

  • 133二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 21:57:48

    「シャディ、」
    「じゃまだなあ じゃまだなあ じゃまだなあ……」
    シャディクは壊れたように、パレットナイフをマネキンの頭をパレットナイフで刺し続ける。それからふわりと髪を揺らして、飾られている絵画を見上げた。
    「いいなあ、ほしのベッド!きっとゆりかごみたいで、ゆらゆらして、たのしいよ」
    グエルは屈んで、目を合わせる。
    瞳は異様なまでに澄んでいて、その輝きは恐ろしい程に曇っていない。
    ……きっと、疲れているのだろう。グエルはそう結論づけて、シャディクの肩を持った。そのまま立ち上がり、きっと前を向く。歩き出す。シャディクは不思議そうな顔をしていた。
    「ボブ?」
    「先に進むぞ。ラウダと合流しよう」
    「らウだ」
    ふふふふふ。
    あはははははは!
    「そうだね。行こう」
    すっと穏やかな表情を取り戻したシャディクと共に、グエルは階段を降りた。

  • 134二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 22:17:07

    ワ……!

  • 135二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 22:19:55

    「……で……の?ふふ」

    階段をおりたところで、どこからか声が聞こえてくる。

    「あはは……うん、ときどきだよ?うそじゃないってば……らうだが__にうそつくわけないよ……」

    シャディクも気づいたらしく、首を傾げる。

    「たまにだって。でもきっと……__はみとめてくれるよね」

    グエルは半開きになった扉を見つけた。どうやら声はここから聞こえてきているらしい。

    「ほんとに?ありがとう。だいすき。やっぱり、らうだたちは……ふふふふ……」

    「誰かと喋っているのか?」

    尋ねれば、シャディクは「さあ」と肩を竦める。入ってみれば、わかるんじゃない?それもそうだ。まずいものなら助けなきゃいけないし、仲間が増えるなら心強い。そう思って、扉を開ける。

    そこには相変わらず、可愛らしいたぬきの置物と__

    __楽しげに話す、ラウダの姿があった。

    「ラウダ……?」

    「ふふ。でもやっぱり、いっしょにいると、たのしい。なんでもはなしていいの?たよっていいの?らうだ、いちゃだめなこなのに?あはははは」

    グエルははっとして駆け寄り、ラウダの様子を伺った。拙い口調で、たぬきのぬいぐるみを抱いて、まるで赤子のように笑う。その様子はさながら、幼い子供のようだ。

    シャディクは少し顔を顰めて、訝しむように彼を見つめる。

    「これ本当にラウダなの?おかしいけど……」

    「そうなの?ねえ、おしえて。だいじょうぶ、だれにもいわないよ。……そっか。うん、おうえんする。らうだおうえんするよ!だから、どうか……うん……もう、いやなこと、ぜんぶ、わすれて……」

    ラウダはひとりで喋り続けている。

    「……」

    「それにこんなところにいるのもおかしいし、……ボブ?」

    dice1d3=1 (1)

    1:ラウダ……

    2:じっと見つめる

    3:(全力のビンタ)

  • 136二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 22:23:21

    ウワー!!

  • 137二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 22:24:48

    2番よりはましな選択選んだか

  • 138二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 22:26:27

    元ネタのフリーゲームの記憶がおぼろげなのだが、らうだいちゃだめなこの破壊力やばい

  • 139二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 22:33:58

    EP1無理そう…
    でも俺は諦めてないぞ! 期待してるぞスレ主!

  • 140二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 22:37:56

    どんなENDになってもしゃーないのがダイススレのよい緊張感
    報われて欲しい気持ちはあるけど

  • 141二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 22:54:24

    フリーゲームが元ネタだからゲームオーバーしたらリトライ設定、エンディングはちがうエンディングも見せてもらえないだろうか(無茶振り)

  • 142二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 00:00:43

    保守保守

  • 143二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 02:36:06

    「ラウダ……」
    グエルはかがんで、ラウダに視線を合わせる。
    「うん、うん、兄さんは……兄さん?」
    ラウダは虚ろな目で、グエルを見つめる。
    「にいさん、おとなのにいさんだ。わあ、うれしい、うれしい……」
    膝を着いて、ラウダを見ていたグエルに、ラウダはゆるゆると息を吐いて、頬擦りをする。
    そこで不意に、「服がごわごわしている?」と気づいた。ゆっくりと顔を上げ、ぱちぱちと数度まばたきをする。
    「ボブ?……ボブだ!あ、ご、ごめんね、その……にいさんとお話してて……ボブのこと兄さんって……」
    「いいんだ」
    グエルは、つぶやく。
    もう、潮時だろう。
    何よりあんな姿を見せられて、いつまでもこんなことを続けていられるほど、グエルは強くない。ラウダの肩を掴んで、目を合わせる。
    「俺は、グエル・ジェターク」
    「ボブ?」
    「騙していて、悪かった。ラウダ、俺はお前の兄さんだ」
    「……兄さん?」
    まばたきをする。それから確かめるように、何度かグエルの頬の形を指先でなぞった。
    「どうして、そんな……」
    「色々事情はある。だが信じてくれ、誓ってラウダが嫌いになって家を出たわけじゃない」
    「…………」
    ラウダは立ち上がる。そして、
    思いっきり、グエルの頬を叩いた。
    パチン、といい音が響く。頬が赤く腫れる。グエルは咄嗟に殴られた頬に触れようとしたが、それより先にラウダに抱きしめられた。
    「なんでっ……なんで突然いなくなったんだ!心配したんだよ、一言ぐらい何かいってよ、僕はそんなに信用できないの!?」
    「ラウダ、」
    「会いたかった、助けたかった、『ボブ』に兄さんのかげをみて、兄さんと笑う夢を見るくらいには、僕は、ぼくは、」
    「……すまなかった」
    「うわああああん……!」
    ぼろぼろと泣くラウダの背を、優しく叩く。
    シャディクはその様子を、黙って見つめていた。

  • 144二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 06:58:52

    「……取り乱しちゃって、ごめん。先に進もうか」
    ラウダは少し赤面して、誤魔化すように前髪をいじる。それから先導するように駆け出したところで、ふっと何かを思いついたように、首を傾げる。
    「何か、記憶が混乱してて……大事なこと、忘れてるような」
    「別に思い出さなくてもいいと思うよ。こうしてまた会えたんだし」
    シャディクがそう言って、穏やかな微笑みを見せる。それでもまだ、「なんだったっけ……」と悩む素振りを見せるから、グエルはその背を叩いた。
    「無理して思い出さなくても大丈夫だ。俺は負けん」
    「兄さん……」
    ラウダは半目で睨む。しかししばらくののち、大きくため息をついて、「先に進む階段、見つけたんでしょう」と話を変えた。
    「案内してよ」
    「もちろん」
    シャディクの笑みは、まるで絵にかいたようだ。

  • 145二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 07:24:47

    シャディクが絵だって情報を消されたか

  • 146二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 08:58:15

    階段をのぼりきったところで、不意にシャディクが何かを落とす。それにいち早く気づいたラウダが、あれ、と声を上げた。
    「シャディク……」
    ラウダが、それを拾う。どうやらそれは、シャディクがもっていたもの__黄色い薔薇であるらしい。その直後、はっとしたように目を見開いた。
    「…………これッ、」
    「触るな!」
    シャディクはグエルを押しのけ、ラウダに肉薄する。それからパレットナイフを振り上げて、首根っこを掴んだ。いくら殺傷力がない武器でも、当たれば危ない。
    「はっ、な、なにもって、」
    「俺の薔薇に触るなッ!!」
    「危ないってば!」
    ラウダは半ば引き剥がすようにして、シャディクを突き飛ばす。シャディクが倒れる。グエルははっとしてシャディクに駆け寄った。ラウダも一瞬ののち、荒く息をしながら彼に近寄る。
    「シャディク?シャディク!」
    「…………」
    グエルがシャディクの肩を揺らす横で、ラウダの指先が彼の額に触れた。
    冷たい。
    おぞましいほどに。
    「__兄さん、僕思い出したんだ。シャディクは、人間じゃない。あの追いかけてきた絵の女と同じ」
    「はっ……?どういうことだ、シャディクは、」
    「僕も信じ難いけど、今だって危険だった。急いでここから離れるよ」
    ラウダはグエルの手を取る。走り出す。
    「……もう絶対、逃げないで。逃がさない」
    振り返る。
    シャディクが倒れている。
    ピクリとも動かない。微かにも、動いていない。
    その横にある黄色い薔薇は__とても精緻にできた、造花だった。

  • 147二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 09:20:31

    佳境に入ってきた…!

  • 148二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 09:32:03

    逃げないでからの逃さないは熱い展開

  • 149二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 13:46:36

    保守

  • 150二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 15:03:45

    頭のない像を動かして道を切り開く。
    階段を駆けおりる。
    「……なんか、突然雰囲気変わったな?」
    「用心するに越したことはないよ。気をつけて、兄さん」
    そこはまるで、宇宙の中のような、縦横無尽に描かれたような__スケッチブックの中のような、世界だった。
    自分たち以外の世界全てが雑多な落書きになってしまったようで、一瞬足を踏み入れるのに躊躇う。しかしここまできたら、もう先に進むしかない。
    落ちてくる星、凍っていて開けられないドア、生ぬるい池、蝶の舞う公園、咲かない蕾__
    どれもこれもが子どもの描いた絵のようで、無邪気なのにどこかおぞましく、不気味だ。今までとは別のベクトルで、ずっといたら頭がおかしくなりそうである。
    一周ぐるりと見て周り、最後に見つけた真ん中にある小さなピンク色の建物。注意書きのようなものが書いてある。
    『もものかぎはかならず おもちゃばこにしまうこと』
    「おもちゃばこ?」
    ラウダはゆっくりと反芻する。それから伺うようにグエルの方を見た。グエルは頷いて、「とにかく探そう」と言う。
    「鍵を見つけて先に進むことしか、今はできないから」
    「そうだね。ぼーっとしていたらシャディクが起きてくるかもしれない」
    「……それも、そうだな」
    二人はスケッチブックの中を進む。
    どこからかクレヨンのにおいがした。

  • 151二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 17:24:59

    いつの間にか鍵の開いていた家の中に、こども用のちいさなバケツがある。
    これがあれば、水を汲んで、あの蕾にやることができるかもしれない。
    ……いや、そうしたところで何が、という話ではあるが。とにかく何かしないといけない、と思わずにはいられないくらいには、精神的に追い詰められていた。
    「よし、これで……」
    「兄さん隠れて!!」
    突然ラウダが叫ぶ。ほとんど突き飛ばされるようにして、なんとか壁の裏に潜り込む。直後、がちゃり、と音がした。
    シャディクだ。
    パレットナイフを持っている。
    「ボブ……ラウダ……どこにいるんだ……?」
    机の上の林檎を、部屋の片隅のハンガーラックを、ぐるぐると見て回る。
    __しばらくの後。どうやら諦めたらしく、ゆっくりとシャディクは踵を返した。
    「はあ、よかった……追ってくるのが早すぎるよ」
    「ああ」
    「もしかしてさっき開いてなかったこの家が開いていたのも、罠だったのかな」
    「……ああ」
    ラウダの考えは、現状を考えれば妥当ですらある。
    でもグエルは、少しだけ目を伏せて、考えた。
    本当にこれが罠ならば。
    __何故シャディクはあんなに寂しそうな表情をしていたんだろう?

  • 152二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 18:40:33

    シャディクが直接的な攻撃に出るのって意外性あって怖いなー

  • 153二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 20:46:00

    シャディクに鉢合わせないよう注意しながら、なんとか池で水を汲む。それから南下して、咲かない蕾の元へ。
    その途中でふと、気づいた。
    「あれ」
    「来た道が、なくなっている?」
    あの降りてきた階段が、ない。もう引き返せないということか。……引き返す必要もないが。
    とにもかくにも、と水をやる。クレヨンで描かれた水は、クレヨンで描かれたチューリップに効果覿面なのではないか、という予想だ。かくしてそれは、正しかったらしい。ほとんど間をおかず、柔らかに花開く。そうして、
    「……これは?」
    つぼみの中に、クレヨンで描かれた何かがあった。
    『びじゅつかんのかぎ』

    びじゅつかんは、存外早く見つかった。
    中にはまるで子供の落書きのような絵で、薔薇の花を持ったグエルとラウダ、それからシャディクが描かれている。絵の中の彼らは楽しそうに笑って、どうやら遊んでいるようだ。
    「……この通りになればよかったんだが」
    「兄さん?」
    「なんでもない」
    考えても仕方ないことだ。
    部屋の真ん中に、小さな箱がある。何か付記されているが、文字がぐちゃぐちゃで、うまく読み取ることができない。
    「とりあえず開けてみるか」
    「もう少し慎重になった方が……」
    「えい」
    「あっ」
    ラウダの制止も聞かず、グエルは箱を開ける。と同時に、
    無数のマークが箱から飛び出して、スケッチブック中に散っていった。
    「……なっ、」
    「なんだったんだ、今の……?」
    考えても答えは出ない。
    とにかくあのマークを探してみよう、と立ち上がる。ラウダはグエルの横に並んで、置いていかないでね、と小さく呟いた。

  • 154二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 21:12:23

    もしかしてシャディクの描いた夢だったのか……?

  • 155二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 21:43:17

    また一周、ぐるりと見て回る。

    スケッチブックの至る所に、先程飛び散ったマークが現れていた。果たしてこれが何を意味するのか、よくわからない。

    いつの間にか、太陽が出ていた。

    太陽……といっても、子供が描いたようなクレヨンの太陽だ。それでもほんのりあたたかい。

    近くにはあの凍りついていた扉がある。しばらく待っていれば氷も溶けそうだが、こんな逃げ場も隠れる場所もない通路であまり悠長なことをしているのも怖い。

    「どうする、兄さん?」

    dice1d3=1 (1)

    1:少し話して待っていよう、ラウダ

    2:鏡があったはずだ。それを探して取ってこようぜ

    3:……結局、シャディクは何が目的なんだ?

  • 156二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 22:05:59

    「……少し話して待っていよう、ラウダ」
    「兄さん?」
    「疲れが溜まっているだろう。一旦休んだ方がいい」
    グエルは日向に座り込む。ラウダもしばらく悩んだあとに、迷うようにへたりこんだ。
    日差しが暖かい。なんだか少しほっとする。
    「これは太陽の偽物なのに」
    「偽物でも、太陽だよ。少なくとも僕にとってはそうだった」
    ラウダはそう言って、空を仰ぐ。目を刺すような光があるわけではなく、ただただ無害でやわらかい。プラスチックのかたまり。あれは確かに太陽ではないけれど、ラウダにとっては太陽に見えた。
    「俺たち、ずっと階段下がってるよな。ほんとに出口に近づいているのか?」
    「きっと出口は下にあるんだよ。そうに決まってる」
    「……そうだよな。不安にさせるようなこと言って、すまなかった。忘れてくれ」
    「うん、……ねえ兄さん、兄さんっていちご好きだったよね」
    「えっ?そうだが」
    「この前ね、コーヒーといちごが乗ったケーキがおいしい喫茶店を見つけたんだ。ここからでたら、一緒に行こうよ」
    「いや、俺は対外的にはあくまでボブで……」
    「いいでしょ?ね?約束!」
    ラウダは半ば無理やりグエルの小指をとって、自身の小指と絡めた。
    強引ではあるが、毒気を抜かれる。グエルは微笑んで、「ああ」と頷いた。ゆびきりげんまん。幼い子どもの口約束のようにそう言って、笑い合う。
    いつの間にか、扉を閉ざしていた氷はすっかり溶けていた。

  • 157二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 22:11:47

    守りたいこのラウダ

  • 158二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 23:04:05

    扉の中には先程見て回ったマークと対応したボタンがあった。順番通り押していくと、プラスチックの鍵が現れる。ちゃちなおもちゃのようなそれは、しかしこの世界にやけによく似合っていた。
    「兄さん、これ……」
    「ああ」
    桃の鍵で開く建物をのぞけば、残る鍵のかかった扉はただ一つ。

    『こじいん』

    かくして扉はひらいた。
    中はやけに閑散としている。何も無い部屋に、ぽつんとひとつ、やたらとおおきなおもちゃ箱があるきりである。
    「ここに……?」
    ラウダが中を覗き込む。グエルも続いて覗き込む。
    真っ暗だ。底が見えないなんていう話じゃない。ずっと見ていると吸い込まれそうなぐらいである。
    グエルは片腕だけを突っ込んで、中をさぐってみる。鍵どころか、なにかものがある気配すらない。訝しむように顔を顰め、ほとんど無意識にくちびるを開く。
    「本当に鍵なんてあるのか?」

    「なら、行ってみたら?」

    「……えっ、」
    咄嗟に振り返る。同時に、衝撃。おもちゃばこのなかに突き落とされる。滑落。おちる。おちる。おちる。おちる。おちる。
    てをのばした、先で。
    シャディク・ゼネリが絵画めいた微笑みをうかべていた。
    __どこか、寂しそうに見えた。

  • 159二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 23:25:06

    全身が痛い。

    グエルは重い体を引きずって、なんとか起き上がる。「ラウダ」と声を出したところで、返事が、ない。はっとして目を見開く。

    ラウダがいない。

    赤い薔薇もない。

    おもちゃばこの中は奇妙な笑顔をうかべる落書きで溢れている。グエルは素早く視線を動かして、ラウダの姿を探した。そうして、血痕、らしきものを見つけて、ひゅっと息が止まる。

    慌てて駆け寄ってみると、それは薔薇の花びらであるようだった。

    とりあえず、ほっとする。それからさしてほっとしていられる状況でもないことに気づき、はっと頭を動かす。

    花弁を辿っていくと、すぐに赤い薔薇の花は見つかった。

    ただ、落ちた衝撃なのか、花びらはほとんど散ってしまっている。道理でこんなに痛むわけだ。これ以上やられると命に関わる。大切に握り直して、今度はラウダの姿を探す。

    「ラウダ?ラウダぁ?」

    呼びながら見て回ると、どこからか、うめき声が聞こえてくる。グエルは迷わず走って駆け寄る。

    「……頭打った、痛い……シャディクのやつ……兄さん?」

    「ああ」

    「よかった。あんな高さから落ちて……体は平気?」

    dice1d3=3 (3)

    1:大丈夫だ

    2:全身痛い

    3:ラウダが無事ならどうでもいい

  • 160二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 23:28:05

    いいぞグエル……

  • 161二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 23:46:34

    「ラウダが無事なら俺の事なんてどうでもいい!」
    __というのは掛け値なしの本心だが、まさかこんなぽんとくちから飛び出てくるとは思わなかった。
    あ、と気づいた時にはもう遅い。ラウダの顔がみるみるうちに不機嫌さをあらわにしはじめる。先に進もう、と立ち上がろうとしたところで、思いっきり腕を掴まれた。ギリ、と骨が軋む音がした気がする。
    「……僕言ったよね?囮になろうだなんて絶対考えないでって。もう失いたくないって!なのにどうしてそんな、自分のことなんて考えてないみたいな言い方するのかなァ!?」
    「ごめんごめんごめんって腕痛い!兄さん死ぬ!死んじゃう!ただでさえ死にかけてるのにほんとに死んじゃう!!」
    「絶対」
    ラウダは祈るように、グエルの腕に両の手を重ねる。今度は、壊れ物に触れるように優しく。
    「絶対、自分が犠牲になろうだなんて考えないで」
    「……わかった」
    グエルは頷いて、ラウダの手を握り返した。

    しばらく探して、床の落書きに擬態していた桃の鍵を発見する。
    これで先に進める。……本当は信じたかったが、こうして突き落とされた以上、シャディクはあちら側の存在と見て間違いなさそうだ。それにしては時折、気になるところもあったけれど。
    「次、進む時……内側から鍵がかけられないか、試してみようよ。ちょっとは時間を稼げるか、」
    も。
    ラウダが言い終わる前に、なにか周囲が、嫌な空気で満たされる。
    言いようもなく重苦しい。ぞっとする。この、感覚は。
    「……ねえ、兄さん」
    「逃げるぞラウダ!」
    グエルがラウダの手を引いて駆け出すと同時に、周囲に転がっていた落書きや芸術品が、一斉に動きだした。

  • 162二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 01:36:49

    頑張れー!

  • 163二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 06:36:12

    保守

  • 164二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 08:59:00

    芸術品たちの腕をかいくぐり、なんとかうまく逃げ切れた。
    階段を上り、通路を歩む。これで本当に出られるのだろうか?なんだか妙に、導かれているかのような、奇妙な錯覚に陥る。
    薔薇の花の落書きが見える。
    この先にシャディクがいるのだろうか?そう思いながら、おもちゃばこから出て、スケッチブックの部屋の中に戻る。
    「……なんだか、雰囲気変わってない?」
    「それは……」
    今まで無邪気さや子供らしさが感じられた部屋が、どこか禍々しい、悍ましい空気をまとっている。
    向こうに、階段が見える。
    いばらによって、見事にふさがれている。
    棘だらけで、通れそうにない。来るな、ということか。ということは裏を返せば、この先に出口につながる扉がある可能性がある。
    「なあラウダ、確かお前ライターもってたよな」
    「え?うん、持ってるけど」
    「このいばら、燃やせないか?」
    「あっ……うん、やってみるよ」
    ラウダはポケットからライターを取り出して、火をつける。そうっと熱源を近づけると、それだけでぼうっと燃え広がった。
    「やった、できたよ、にいさん」
    「ああ、うまくいったな」
    ラウダの頭を撫でてから、グエルは注意深く階段の先を観察する。
    明らかに、何か、おかしい。
    スケッチブックではない、何かがある。
    だが__進むしかないのだ。逃げずに進めばきっと、何かを得ることができるのだから。
    「すすめば、ふたつ」
    グエルは自分に言い聞かせるように言って、階段へと足を踏み入れた。

  • 165二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 09:56:15

    そこは小さな部屋であった。
    からっぽになった皿と、ちいさな人形がいくつかある。
    グエルは注意深くあたりを見渡した。特に怪しいものは見えない。むしろ子ども部屋のような、この世界においては異質さすら感じる雰囲気がある。
    「ここは……何だ?」
    「ねえ、兄さん、あの、向こうにかかっている絵、見覚えがある。見に行ってみよう」
    よく見ると、一番奥の壁に何かがかかっている。それに気づいて動き出したラウダに続いて、グエルもまた、歩き出した、
    つぎの、瞬間。
    「ボブ、ラウダ、ようやく見つけた。無事だったんだ」
    背後から、声がかけられる。
    咄嗟に振り返る。シャディクが、ほっと安堵したような顔でこちらを見ている。その表情にはあらゆる険がのっていない。ただただふたりのことを心配しているような顔だ。
    「どうやってこの部屋に入ったんだ?」
    ふと、笑みが消える。ぱちり、と瞬きをする。
    「出てってよ……ここに、近づかないで……早く出てってよ、出てって、早く、はやく、ハやク、」
    「シャディク、あなたは、」
    ラウダが何事かを言おうとした瞬間、シャディクはパレットナイフを振り上げる。
    「出ていけええええッ!!」
    そうして地を蹴って、駆け出してくる!
    「……ッ、兄さん逃げて!」
    「はッ、」
    グエルも走り出す。壁にかかっている絵に向かって。
    「逃げるな、逃がさん、って!言ったのは、お前だろうが!!」
    どうすればいいのかは、直感的にわかっていた。ラウダの手からライターを奪い取り、掲げる。
    そうして。
    絵を、燃やした。

  • 166二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 10:20:22

    「やめ、……あ、や、ぁ、」

    シャディクが後ずさる。パレットナイフが、するりと彼の指先から落ちて、地面を転がった。

    「あ、あ、あ、あああああ、あ、」

    悲鳴のような、声のあと。

    シャディクがぼろりと、真っ黒い炭になって、こわれて、風化するように崩れ落ちていく。

    ……本当に、これでよかったのだろうか?

    グエルはライターをラウダに返す。ラウダはそれを受けとって両手で持つと、はあ、と大きなため息をついた。あらゆる感情というよりはどちらかというと、生理的に出た、というような感じだった。

    「……兄さん、大丈夫だった?思った以上に激しく燃えたし、硝子浴びたでしょ?」

    「ラウダこそ」

    そう言って、ラウダの様子を確認する。よく見ると、指先が少し切れていた。

    「痛くないか?」

    「え?……あっ、気づかなかった。さっきので切ってしまったみたい」

    これくらいすぐ治るよ、とラウダは気丈に笑う。グエルはその様子を見て、少しだけ眉をひそめた。

    dice1d2=1 (1)

    1:これ、ハンカチ。安物で悪いが

    2:(心配だが、ラウダがそう言うなら大丈夫なんだろう)

  • 167二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 10:26:23

    これはハピエンの予感

  • 168二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 10:38:38

    「え……血が付いたらなかなか落ちないよ。いいの?」

    「ああ、もちろん。使ってくれ」

    「ありがとう……じゃあ、洗って返すね」

    ラウダはゆっくりと指先を拭う。そこまで言ってから、立ち上がる。

    じゃあ、行こうか、兄さん。


    階段を下りる。とても暗い。足元に気を付けないと、転んでしまいそうだ。

    そうして、ようやく廊下に差し掛かる。

    「……あれ、なんかここ、見たことあるような……?」

    外はまっくらで、なにも見えない。それでもこの内部構造が、最初に来た美術館と同一であることはわかった。ならば、と思って、二階にあがってみる。

    『絵空事の世界』

    一度入るともう戻れない。それまでの時間もすべて失う。それでもあなたは飛び込むの?

    絵が、点滅しはじめる。額縁がなくなる。

    「これ、もしかして……」

    ラウダが絵の中に飛び込む。するり、と身体が絵に吸い込まれる。やった、と歓喜の声をあげて、ラウダが振り返った。

    「兄さん、兄さんもはやく、」

    「グエルさん?」

    その時だ。

    声が、聞こえた。

    「兄さんどうしたの、早く来てよ」

    「ああ、グエルさん、やっと見つけた」

    そこにいたのは、

    「何してるの?ほら、引っ張ってあげる」

    「向こうでミオリネさんや、エランさん……シャディクさんも待っていますよ。来てください」

    スレッタ・マーキュリーだ。

    dice1d3=1 (1)

    1:ラウダの手をつかむ

    2:スレッタについていこう

    3:……お前は、スレッタ・マーキュリーじゃない!

  • 169二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 10:43:39

    うおおおお!

  • 170二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 10:56:15

    「グエルさん、私はこっちですよ。グエルさん。グエルさん!」
    グエルは静かにくちびるを噛んで、ぐっと前を向く。
    ……ここに、スレッタがいるわけない。あれは幻だ。そう思っても、どうしても。
    「グエルさん、こっちに!」
    「兄さん!」
    ラウダの腕を掴む。
    こちらの手を握る彼の手が、やけに熱く感じる。
    そうしてグエルは、絵の中に、
    飛び込んだ。

    はっと目を覚ます。
    今まで何をしていたのだろう?全く、思い出せない。
    ……どうやらぼーっとしていたようだ。早く仕事に戻らないと。掃除用具片手に階段を降り、角を曲がる。
    赤い薔薇の彫像の前に、一人の青年が立っていた。彼は物音に気付いたのか、ふとこちらを振り返る。
    見覚えのある顔だ。というか身内だ。ラウダ・ニールだ。
    「え」
    「え……あなたは、兄さん似の清掃員さん……!?」
    「あ……ああ、そうだな、えっと……俺はボブという」
    「ボブか。見れば見るほど兄さんにそっくりだ……あっ、突然すいません。びっくりしちゃって」
    彼はどうやら勘違いしてくれたようだ。それから再び薔薇の花を見て、首を傾げる。
    「これを見ていると、なんだかすごく切ない気持ちになる。なんでだろう?」
    って、急にこんなこと言われても、困るよね。ごめんね、兄さん。
    「あれ、なんで僕、今、あなたのこと、兄さんって……」
    そこでラウダは、ふとポケットに手を入れる。
    「……僕、ハンカチなんて、持っていたっけ……しかも、血がついて、」
    見覚えのあるそれに、グエルは思わず「あっ」と声を上げた。
    ちかり、と。
    記憶が溢れる。

  • 171二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 11:09:20

    「……怪我……したんだ。手に。それで、ハンカチを……」
    ラウダが目を見開く。そこから、ぽたり、と涙が溢れる。
    「洗って返すって、約束したんだ……兄さんに……」
    血の付いたハンカチを握りしめて、つづける。
    「僕たちずっと、一緒に、おかしな美術館を、歩き回って……」
    思い出した。
    今でも信じられないけれど、確かにあった出来事なのだ。
    「……あは、あはは、僕たち、帰ってきたんだよ、兄さん!」
    「わああっ!?」
    呆然と立ち尽くしたままのグエルに、ラウダが抱き着いた。はずみで掃除用具が吹っ飛ぶ。ついでに髪留めが外れて、長い髪がふわりと広がる。幸いにも周りに人はいない。とりあえずよかったと思う。
    ひとしきり歓喜の声をあげたあと、ラウダはふうと息をついて、冷静で理性的な顔を取り戻す。それから前髪をいじって、しばらく考え、状況を把握したらしい。
    「本当は連れて帰りたいけれど、事情があるんでしょう。それに、ここでの仕事もあるみたいだし……僕もそろそろ帰らないと」
    「ああ」
    「このハンカチ、きちんときれいにして返すよ。いちごのケーキとコーヒーがおいしい喫茶店、一緒に行こう」
    「……ああ」
    グエルの声が、少しだけ震える。ラウダは笑う。だから。

    「またね、兄さん!」


    ED1『再開の約束』

  • 172二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 11:11:55

    裏作業の様子
    ED1 再開の約束
    ラウダ死亡率+4-2=2
    ラウダ好感度8
    シャディク好感度1
    ハンカチ回収済

    ・ここまでお付き合いいただきありがとうございました!レス等、励みになりました。
    ・謎解きパートなど書けないと判断した部分はかなり省略しました。ごめんて
    ・選択肢やフラグ管理は基本は原作と同じ。ただし一部キャラに合わせた改変あり(ex.兄さんプラモは蹴れない……)
    ・ただし、原作から著しく外れた脳筋プレイをすると「何こいつやば……取り込んじゃいけないタイプの人種じゃん……(ドン引き)」となりラウダの死亡率が-1されます
    ・↑はED6や7はちょっと精神的にキツすぎて描写できないと踏んだスレ主の独断敢行。ゆるして
    ・最初のグエルの薔薇の色がママ枠の指定。青い薔薇ならラウダ、黄色い薔薇ならシャディク、ピンクの薔薇ならヴィム。
    ・シャディクの境遇が上手く書けなかったので補足
    シャディク(孤児)死亡→ゲルテナがシャディク(孤児)の絵を描く→シャディク(絵)がゲルテナと入れ替わりに外に出る→本編→ミオミオへの失恋で壊れたシャディクが人間関係の再構築を目論む→あれちょうどよくそこにジェターク兄弟が
    いつまでも一緒エンドならボブがマジでボブになりシャディク(孤児)の元実兄という設定になる予定でした。レス数持ちそうなら別エンド差分も書きたいな。
    ・以下俺に脱出してほしい世界をあげるスレ。
    何も出なければ本命魔女の家/大穴幻想乙女のおかしな隠れ家/ネタ枠ミドリカ・コメディ・ビザールショーorカズマと久我山の奇妙な廃校探索……あたりでまた建てるかも。謎解きアクションが中心でストーリー要素が少ないもの(ex.青鬼)は難しいです、ごめんね!

  • 173二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 11:22:14

    全く別物にしないと難しそうだけどクロエのレクイエムパロがみたいです。ジェターク兄弟とクラシック音楽は似合う。

  • 174二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 11:58:16

    すげーおもしろかったありがとうスレ主!!
    魔女の家楽しみにしてるっす!

  • 175二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 11:59:28

    ジェターク兄弟が幸せそうに終わってよかった。

  • 176二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 12:15:54

    乙でした
    何時までも一緒EDのボブがマジでボブになる、って単語が申し訳ないが笑える

  • 177二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 13:04:44

    >>172

    語彙がなくてすまんが面白かった

  • 178二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 13:04:47

    ジェターク兄弟がハッピーエンドで良かったです!
    楽しませていただきましたありがとう!!!

  • 179二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 13:18:04

    絵も文も描けるとか天才か?楽しく見させてもらったよありがとう!

  • 180二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 17:44:21

    >>173 クロエのレクイエム、いいですね。いい感じの改変思いついたら候補にいれます!


    ※以下取り急ぎエンド差分。見たくない人はスルーしてね~!

    はっと、目を覚ます。

    どうやらぼーっとしてしまっていたらしい。全く、これだから自分はだめなのだ。この仕事だっていつ首を切られるかわからないのに。思いながら、階段を降りて下に向かう。

    そこでふと、見知った顔を発見して、顔を輝かせた。

    「……あ!」

    「久しぶり、兄さん」

    シャディク・ゼネリ。

    姓こそ違うけれど、ボブの実の弟だ。

    彼はMSの操縦の腕を買われて、グラスレー本社のCEOの養子になったのである。体格も性格も能力も、大抵の部分でボブよりよくできているのに、それを鼻にもかけない、自慢の弟だ。

    「遊びに来たのか?」

    「ああ、久々に兄さんの顔が見たくて。仕事頑張ってる?」

    「もちろんだ。お前こそ……今はシャディク様ってとこか」

    「ふふ、そんな堅苦しい呼び方やめてよ」

    シャディクは笑いながら、ボブに一歩踏み出す。

    「あのさ、喫茶店行こうよ。コーヒーといちごのケーキがおいしいところを見つけたんだ。奢るよ」

    「ほんとに!?」

    「うん」

    シャディクはそっと、その手を取る。そこでふと、ボブが何かを握っていることに気づいたらしい。

    「あれ、これ……いちごのキャンディー?いつの間に」

    「ねえ兄さん、それ、ちょうだい」

    「えっ、いいけど」

    シャディクはピンク色の飴を口に含んだ。おいしい、といって笑う。そうして、ボブの手を握り直す。

    「帰ったら何しよう。何をして遊ぼう?ねえ、ねえボブ、兄さん、」


    これから、ずーっとずっと、いっしょにいようね。



    ED2「いつまでも一緒」

  • 181二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 17:49:52

    >>180

    同い年の兄が欲しかった業の深いシャディク

    いい……

  • 182二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 17:50:56

    >>180

    俺ED2はライター捨てられるやつの方が好きなんだ、ギャリーの「盗られた」じゃなく「排除された」を表現してて

    そっちも余裕があればお願いしたい

  • 183二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 18:08:33

    (>>182 最後に書くつもりだったけど今書くことにします!ライター差分)


    (省略)

    シャディクはそっと、その手を取る。そこでふと、ボブが何かを握っていることに気づいたらしい。

    「それ……ライター?」

    「え、あ、ほんとだ、どうしてこんな……いつの間に……?」

    ジェターク社だろうか。ライオンの模様が刻印されているライターは、全く身に覚えがない。そもそもとても高価そうで、ボブの給金では買えそうにない、遠い世界のものだ。

    「危ないよ、そんなもの持ってたら。捨てておいてあげる」

    「ああ、ありがとう……?」

    シャディクは微笑みながら、ボブの手からそれを取り上げる。そうして、強く手を握り直した。

    「帰ったら何しよう。何をして遊ぼう?ねえ、ねえボブ、兄さん、」


    これから、ずーっとずっと、いっしょにいようね。



    ED2「いつまでも一緒」

  • 184二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 18:15:12

    >>183

    有難う!あと予定狂わせちゃってごめんね。


    今気づいたけどラウダと一緒にグエルだった頃の記憶も消されたようでなんとも言えないホラーだなあ…

  • 185二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 20:01:02

    >>180 >>183

    乙、ED2もありがとうございます!

    このEDのシャディク、影はクレヨンで塗りつぶしたような形になってそうだね…

  • 186二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 20:09:50

    ※以下エンド差分。他は描こうとして無理でしたゴメン!(開き直り)

    グエルはへたりこんで、ラウダと視線をあわせる。シャディクはその様子を見て、少しだけ顔をしかめた。
    「ねえボブ、先に出口を探そうよ。ラウダはきっとあとから追いかけてくるよ」
    ラウダの肩を抱いて、グエルは「うん」と呟いた。
    「ボブ?」
    「うん。ぐえるもらうだのそばにいるぞ」
    「え。ね、ねえ、立ってよ。きっともうすぐ出口があるよ」
    「ほんとに?あは、らうだ、にいさんのことすき」
    「なんで?俺、先に行っちゃうよ、それでもいいの!?」
    「ぐえるもらうだのこと、せかいでいちばんすき!」
    「……もう、ボブなんて知らない!」
    シャディクはそう叫んで、部屋から出ていった。だが暫くの後、引き返してくる。
    「ねえ。俺たち、友達だよね」
    二人を両の腕で抱きしめて、確認するようにそう尋ねた。

    「皆、集まったかな」
    おぞましい芸術品たちによって満たされた部屋の中に、人型をしたものが倒れている。最早薔薇の花もすべて散ってしまって、ぴくりとも動かなくなってしまった、ふたり。ひときわ鮮やかな青年が、踊るように身を翻した。
    「紹介するよ、この二人は、グエルとラウダ!仲良くしてあげてね。あ、ライターは没収ね」
    ラウダのポケットからライターを奪い、巨大な絵画に投げる。絵画から這い出た化け物が、ライターを食べる。両腕を上げて、シャディクは仰々しい仕草をしてみせた。どこからか拍手喝采が聞こえる。それから玩具で遊ぶように、動かなくなった二人を抱いた。
    「グエル、ラウダ……一緒にいっぱいあそぼうね」
    皮膚は冷たい。共有できる体温はとっくになくなってしまった。それでもそんなことは構いやしない。シャディクは心底嬉しくてしょうがない、と言わんばかりの笑みを浮かべた。

    「永遠に!」

     
    ED6「ようこそゲルテナの世界へ」

  • 187二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 22:40:31

    >>184

    グエルをただのボブにさせておくの歪んだものを感じて好き

  • 188二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 22:43:29

    >>186

    全てを手にいれたシャディク!ありがとうございます!!

  • 189二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 00:57:41

    忘れられた肖像


    片隅の記憶


    ひとりぼっちのボブ


    ある絵画の末路

  • 190二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 01:10:33

    >>189

    スレ主だけどこれ狂おしいほど好き ありがとう……(成仏)

  • 191二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 01:13:51

    >>190

    こちらこそ楽しいスレを有難う!

  • 192二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 01:15:22

    そして ハハ やっちゃったよ!!(唯一のネタ枠グエ虐ボブシコビザールショー選択肢を燦然と引きながら)

    知ってるいい感じのホラー系フリゲのネタが尽きるまでやるつもりなのでまたどこかで会えたらいいね。下のリンクは『耐性』がある人だけ踏んでね!!

    【クロスオーバー注意】なに?今度は|あにまん掲示板dice1d4=@4 (4)@ だって?はんッ、このグエル・ジェ……ボブが負けてたまるかよ1:魔女の家2:幻想少年のおかしな隠れ家3:(後で別でダイスを振ります)のレクイエム4:グエルノ・コメディー・…bbs.animanch.com
  • 193二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 09:27:49

    >>184

    一番は兄弟にしたかっただろうけど、御曹司グエルの記憶はラウダの記憶が多いから記憶をうまく調整できなかったのもあるかもしれない

オススメ

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