- 1二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 22:33:52
- 2二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 22:34:33
期待
- 3二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 22:34:48
「お疲れ様でした…トレーナーさん」
「ああ、また明日な、カフェ」
いつも通りの毎日…トレーニングを終え、トレーナーさんとトレーナー室で他愛もない会話をして、そして校門で別れる。
夜が明け、朝練をして、授業の前に、トレーナーさんとコーヒーを飲む…
そんな普通の毎日が…私は好きでした。
私はトレーナーさんに恋をしています。
私のありのままを受け入れ、肯定してくれた初めての人…ずっと私を信じてくれた人……好きにならないはずがありません。
本当はもっと距離を縮めたいのですが…私が学生である手前、あまり攻め過ぎたらトレーナーさんに色々と迷惑がかかるかもしれません。
大丈夫です…時間ならたっぷりとあります。
今はまだ、このありふれた日々を大事に…大事に…過ごしていましょう…
───いつからか私は忘れていました
目に見えないものが見える私は、“特別”だということを
そして私は決して“万能”ではないということを…… - 4二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 22:35:46
ちゃんと見ているぞ
- 5二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 22:36:23
「トレーナー…さん…!?」
いつものように挨拶をしにトレーナー室に行った私は、愕然と立ち尽くしていました。
「おう、おはようカフェ…ってどうした?」
いつもの調子のトレーナーさんを前に、私は青ざめます。
当然です…トレーナーさんの周りには、私の好む黒より黒い…靄のような何かが、いわゆる“死相”が纏わり付いていたのですから。
…一度だけ、小さい頃に見たことがあります。
外を歩いていたら、近所の女性が同じような靄が取り巻いているのを見ました。私は気に留めませんでしたが、数日後…その女性が交通事故で亡くなりました。
それと同じ靄が今…トレーナーさんに…
分かる…トレーナーさんは…『死神』に取り憑かれている…
(どうして…トレーナーさんが…)
あまりの衝撃に思考が纏まらない私に、トレーナーさんが近寄ってきます。
「大丈夫かカフェ?汗だっくだくだぞ」
「あっ…いやっ……あの、トレーナーさん…昨日何か…変なこと…ありませんでしたか…?」
「いや、特に……ってえ!?また何か憑いてる!?」
明らかに取り憑かれているトレーナーさん……けど、私は…
「……いえ。私が来たら…離れていきました……“よくないもの”でしたが…今はもう問題ありません…」
「そ、そうか…」
(いくらトレーナーさんでも…死神に取り憑かれているなんて…言えない……)
「…すみません、今朝は用事があるので…これで……また午後に…」
「お、おう…具合悪かったら無理するなよ?」 - 6二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 22:39:12
精一杯取り繕って、トレーナー室を後にする。
「ッ…はぁっ…!はぁ…はぁ……」
緊張が解け、胸に手を当てる。心臓の鼓動が速い。冷や汗と震えが止まらない。
(なんておぞましい怨念…いったいいつから…トレーナーさんの様子は何も…)
違う。一番恐ろしいことは──
「トレーナーさんが……死ぬ?」
近く起こる、可能性の高い、最悪の未来。
今まではトレーナーさんに“よくないもの”が憑いていても、わりかしすぐに対処できました。
でも…今回は違う。アレらとは全く別物…
まるで…運命で決まっているような…
「トレーナー…さん…」
大好きなトレーナーさんが…死んでしまう…
泣きそうな声で呟く私…すると…
ドンッ
『お友達』が私の背中を叩いてきました。
「あ…………うん、そうだね」
ずっと守ってきた…私を大切にしてくれる、大切なトレーナーさんを。だから…
「今回も…いつも通りに…」
他の誰にも出来ない、私だけの役割。
あの時誓った、トレーナーさんは私が守る…と
(トレーナーさんを…死の恐怖に落としたくない…できる限り…知られないように…)
G1レースがすぐ側に控えていますが、そっちに気を向けている場合ではありません
「絶対に…トレーナーさんを救う…」
覚悟を決めて、私は歩き出しました。 - 7二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 22:40:03
その夜、トレーニングを終え、私はトレーナーさんより先にトレーナー室を去り、『死神』を探していました。
朝は見あたりませんでしたが、学園の敷地にはいるはずです。
「……いた」
案外簡単に見つかりました。校門から校舎へ続く道にあるベンチ、そこに『死神』と思われるモノが静かに座っていました。
絵に描いたような見た目です。大きな鎌を持ち、大きな黒いローブを纏っている。フードから覗く顔は、明らかに骸骨です。 - 8二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 22:41:28
「…こんばんは」
「……」
私は話しかけますが、『死神』は反応しません
。
「私はあなたのことが見えます…質問に答えて下さい」
「……」
『死神』は首をこちらに向けます。私が見えていることを認識したようです。
私は睨み付け、低い声で、脅しをかけるように問います。
「私のトレーナーさんに…取り憑いていますね?」
「……」
『死神』は何も答えません。
「…何が目的ですか?トレーナーさんを殺すことですか…?それとも…身体を乗っ取ることですか?答えて…下さい……」
「……」
「答えて!!!」
夜風が吹き抜け、空気がざわめく。周りの落ち葉が、私の声に驚いたように離れていく。それでも『死神』は、沈黙のままだった。
「っ…!」
ああ、激しい怒りが込み上げてくる。なぜトレーナーさんを狙う?なんの意味がある?私のトレーナーさんを…何処に連れていく…?許さない…早く…離れて…離れて離れて離れて離れて離れて離れて離れて離れて離れて離れて離れて離れて離れてはなれてはなれてはなれてハナレ… - 9二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 22:42:47
「カフェ?」
「……!トレーナーさん!?」
振り返ると、仕事を終えたトレーナーさんがいました。
「先に帰るからどうしたのかと思ってたけど…そんな怖い顔して何があった?」
「……その…少し口論になって…」
「『お友達』とか?」
「いえ…『お友達』とは仲良しなので…そこらの幽霊とです…」
「ふーん…なんだか珍しいな」
「……あの、もうあらかた終わったので…一緒に帰りませんか?」
トレーナーさんには隠し通さなければいけない以上、あまり変に動けません…。
今日はここまでですね…。
「うん、帰ろうか」
トレーナーさんと一緒に帰る道。いつもは幸せな時間ですが、今の私には、そんな感情は生まれません。
この夜の静けさが、私の心に重くのしかかってきます。
私のすぐ隣を歩く人が、近い内、死んでしまうのです。
「それでさ、タキオンのトレーナーがさ~~~」
トレーナーさんはいつも通り…。
周りを見ても、楽しそうに喋りながら帰るウマ娘たち、疲れきった様子な職員の人…。
誰もが普通の日々を送るなか、私だけが…この恐怖に苛まれています……私…だけが…… - 10二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 22:43:55
「えっと…カフェ…?」
「え…?」
「手が…その…」
「あ……」
気付いたら、私はトレーナーさんの手を握っていました。
「す、すみません…つい…」
謝る私。けれど、なぜか離そうとは思いませんでした。
「あの…トレーナーさん……このままでも…いいですか…?」
少し驚くトレーナーさん。顔も微かに赤らんでいます。
「……いいよ、カフェがそうしたいなら」
そう言ってトレーナーさんは、私の手を握り返してくれました。
温かくて、大きな手…。トレーナーさんの優しさに、私の手が包み込まれます。
でも…この温もりも…いずれ失われる…。
あまり恥ずかしさは感じませんでした。それよりも…寂しさが込み上げてきました。
『死神』と対峙して…無意識の内に勘づいたのかもしれません。
トレーナーさんは、私の前からいなくなる…。
私は…トレーナーさんを救けられない───と。 - 11二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 22:46:08
その1は以上です。
あまり長くなりすぎないように分割ました。
以降も書け次第あげていきます - 12二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 22:47:57
おつおつ、あっという間に読めてしまった
すごく面白い
でも切ないや… - 13二次元好きの匿名さん21/11/03(水) 22:48:23
ぞわぞわと恐怖がやってくる気配がして面白かった!次回もお待ちしております!
- 14二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 02:08:37
カフェはトレーナーが寝ている間に死神の居場所調べてアジャラカモクレンテケレッツのパーと唱えて手を2回叩かねばいけないね…
- 15二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 09:58:30
保守
- 16二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 10:00:55
良き、でもカフェが曇るんだよなぁ…ハッピーエンドかなぁ…
- 17二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 17:54:21
- 18二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 20:53:47
えっあここに書くんじゃなくて新しくスレ建てるのね