【クロス注意】ここだけ兄上が

  • 1二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 18:18:20

    何故かみかづき荘に住んでいる世界

  • 2二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 18:21:09

    >何故か


    本当に何でだよ

  • 3二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 18:23:38

    月の呼吸はやちよさんの祖母が経営する下宿から取ったのか

  • 4二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 18:33:53

    フェリシアに辛気くせえなって言われてそう

  • 5二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 18:38:35

    多分さなとは顔合わせる度に怯えられてる

  • 6二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 18:39:37

    戦力的にはプラスになるけど、みかづき荘の空気が重くなるんですが

  • 7二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 18:51:32

    クソ強いから初期やちよさんが自分の願いの犠牲にならない唯一の相手と見てたら面白い
    そんでももことか鶴乃からは「自分達の事は突き放すのにどうしてあの人だけ…」みたいに思われる

  • 8二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 19:07:01

    >>7

    かなえやメルが死んだのはやちよの願い関係無く、単に本人らの力が足りなかっただろうと考える兄上

    どういう訳か急に自分に依存し始めたやちよに困惑

  • 9二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 19:42:42

    みかづきだから兄上が住んでんのかな?
    笛吹いてて仲のいい双子のピーヒョロ姉妹とか兄上のド地雷に遭遇する可能性あるの草

  • 10二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 19:45:18

    剣持ち…特にななか相手だと若干テンション高めになる

  • 11二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 19:54:08

    人間の代わりに魔女を食って味が似てるから正体に気付くとかはありそう

  • 12二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 20:25:37

    兄上といろはの小話的なやつ

    「ありがとうございます」

    刀に付着した魔女の血を振るい落とし、鞘へ納めた黒死牟の背にそんな声が掛けられた。
    振り返った先で六つの眼が捉えたのは深々と頭を下げた少女。
    桜色の髪は月光に照らされ、日中の時とはまた違った鮮やかさがある。
    生憎と女の髪へ関心を持つような男では無いのだが。

    「黒死牟さんが来てくれなかったら、危ないところでした」
    「礼など必要ない……剣を振るわねば腕が錆び付く……だから斬っただけのこと……お前の為ではない……」
    「それでも、わたしが助けられたのは本当の事ですから。だから、ありがとうございます」

    面を上げた少女、環いろはが浮かべるのは暖かな笑み。
    それがどういう訳か、一人の男と重なる。
    脳裏に浮かべるあの男が笑みを零した瞬間など、幼少時を除けば見た事が無い。
    いや、表情ではなく本質とでも言うべきか。
    近付く全てを焼き尽くす熱は感じずとも、周りを包み込む暖かさは、まさに太陽の如き在り方。
    それが一度死して尚も黒死牟の奥底に燻り続ける、日輪への形容し難き感情を揺さぶるのだ。

    「帰りましょう、みかづき荘に」
    「…私に合わせずとも……先に帰れば良いだろう……」
    「もう、そんな事言って…やちよさんに怒られますよ?」
    「……」

    まるで気難しい態度を取る弟を窘めるよう。
    閉口した黒死牟に、いろはは少しばかり困ったような笑みを浮かべる。
    ややあって、言い分を受け入れたのかはたまた面倒に感じたのか、黙り込んだまま黒死牟は歩き出す。
    その方向が自分の下宿先だと分かり、いろはもまた笑みを浮かべたまま背を追いかけるのだった。

  • 13二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 20:33:55

    もっといろはや他のマギレコ勢とのやり取りを書いてもええんやで(ニッコリ)

  • 14二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 20:45:46

    >>12

    死亡後の兄上が鬼滅世界からマギレコ世界に来たって感じかな?

  • 15二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 20:54:03

    口寄せ神社で偽縁壱が出た時、縁壱がこんなに弱い訳ないだろってキレるのは確実

  • 16二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 21:10:06

    >>9

    黒羽じゃ歯が立たないから笛姉妹が出張って来たら無自覚に地雷踏んで滅茶苦茶殺気向けられるんだな

  • 17二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 21:26:52

    >>16

    いろは達と和解した後も兄上のことだけはトラウマになって近寄れなさそう

  • 18二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 21:44:11

    調整屋でなんかいい感じに兄上でも食える人肉以外のものを作ってもらおう

  • 19二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 22:31:31

    >>7で書いてみた小話


    今日は一段と機嫌が悪い。

    淀んだ瞳で天井を睨み付ける七海やちよを見て、幽鬼の如く佇む黒死牟はそう思った。

    帰って来るなり乱暴に玄関の扉を閉め、ただいまの一言もなくソファーへ座り込み早数分。

    親の仇のように天井を見上げるのにも飽きたのだろうか、ポツリとやちよが小さく言う。


    「さっきね…余所から来た魔法少女と会ったの」


    語られた内容は黒死牟にとって今更驚くようなものではない。

    神浜の外から来た魔法少女が魔女に襲われている場面に遭遇。

    助けた後はグリーフシードを手渡し、早急に出ていくよう警告。

    しかし相手は帰っても魔女が少なくて困るとごね、故に少しばかり手荒い方法を取った。

    それを偶然ももこに目撃されたのだという。


    「散々なくらいに怒鳴られたわ」

    「今に始まった事ではないだろう……」

    「そうね、こんな話されたって今更よね」


    興味も無さげに返した黒死牟へ、苦笑いを向ける。

    モデルの仕事で浮かべる営業用の顔ではなく、神浜の魔法少女達へ向ける鉄面皮とも違う。

    今のやちよが唯一素を曝け出せる相手、それが黒死牟だった。

    黒死牟本人からしたらどうでもいい事かもしれないが、周りはそう見てくれないらしい。

    ももこからは嫉妬の混じった複雑な視線をぶつけられた。

    鶴乃は表向き明るく振舞ってはいたが、内心は違うだろう。

    彼女達が黒死牟に向ける思いは共通している。


    どうしてあなただけが、だ。

  • 20二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 22:31:56

    「私を……拒絶しないのか……?」
    「あなたを追い出して余計な被害が出たらこっちも迷惑だもの。なら監視の為に手元に置いておいた方がマシだわ」

    この質問も、質問への返答も、今に始まった事ではない。
    予め台本でも渡されたのように、すらすらと台詞がやちよの口から出た。
    自分の心を守るために歪な鎧を着けて喋る姿は、どこか憐れみを感じさせるもの。
    それでも、次に出た言葉は寄りを脱ぎ捨て口にした。

    「黒死牟さんは…強いから……私のせいで…死んだりしないわよね……?」
    「……」

    畏怖の視線を一身に受けるベテラン魔法少女はそこにおらず、いるのは縋り付くような眼差しを六眼へと向ける少女。
    弱々しく微笑むやちよを、黒死牟は言葉無く見下ろしていた。

  • 21二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 22:57:08

    ユニオン結成宣言とかマギウス裁判の時は昼間の外だから、兄上はみかづき荘でお留守番してるんだな

  • 22二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 23:19:58

    アリナ先輩を見て何となく玉壺を思い出してそう

  • 23二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 23:30:19

    >>20

    これ多分みふゆも兄上に嫉妬してんじゃねえかな

    魔力衰退が起こった自分と違って、強いままでやちよの隣にいられるから


    兄上本人は自分に向けられる嫉妬もやちよさんの依存も面倒に思ってるだろうけど

  • 24二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 00:36:34

    >>4

    さながみかづき荘に馴染む前


    フェリシア「だー!辛気臭ぇなー!黒死牟がもう一人増えたみたいだぞー!」

    黒死牟「…………」

    さな「あっ、すみません、私なんかと一緒にされて……」

    黒死牟「私に頭を下げるくらいならば……自分の態度を変える方を優先すれば良かろう……」

    さな「ご、ごめんなさい…」

    いろは「そんな言い方は駄目ですよ黒死牟さん!」

  • 25二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 09:10:34

    魔法少女じゃない化け物みたいな男が魔女退治に参加してる世界線とかほむほむも困惑しそう

  • 26二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 12:18:24

    >>25

    おそるおそる話し掛けてみると結構面倒見がよくてどことなく抜けていて更に困惑するやつ

  • 27二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 20:18:10

    >>18を膨らまして妄想した話。ご都合展開注意


    時刻は19時を過ぎた頃。

    既に日は沈み、各家庭では夕食が食卓に並べられている時間帯。

    ここみかづき荘でもリビングに住人一同が顔を見せ、夕食の席に着いていた。

    今日の当番はいろはだ。

    栄養を考えた塩分控えめの料理がテーブルに並べられている。

    姉の手料理にういが目を輝かせ、空腹を訴えるフェリシアをやちよと鶴乃が窘め、いろはを手伝いさなが食器を用意する。

    あとは揃って食前の挨拶をし、各々料理に箸を付けるだけ。

    みかづき荘に住まう少女達にとっては日常の光景。

    しかし今日に限っては、普段と違うものがあった。


    「……」


    食卓を彩る料理を見下ろしながら、黒死牟は同じ疑問を頭で繰り返していた。

    何故自分がいろは達と同じ食事の席に着いているのか。

    全く持って理解ができない。


    誰かと食事を共にするのが嫌などという理由ではない。

    単純に意味がないからだ。

    鬼である黒死牟は基本的に人間の血肉以外は食わない。

    人間が当たり前のように食べる動物や魚の肉、野菜や穀物を出されても鬼の体はそれらを受け付けない。

    それはみかづき荘の住人にとっても周知の事実であり、故に食事の場に黒死牟がいないのを疑問に思う者は一人もいなかった。

    だというのにどういう訳か、今日は自分の分の食事が用意されている。

  • 28二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 20:19:13

    「何故……こんな物を出す……」

    故に、黒死牟の口から疑問が出るのは至極当然の事だろう。
    とはいえそう聞かれるのは分かっていたようで、いろはから答えが返された。

    「あの、今日のご飯は黒死牟さんでも食べられる…はずでして」
    「どういうことだ……?」
    「黒死牟さんもわたし達と同じ物を食べられるように、みたまさんが助けてくれたんです」

    神浜市の調整屋である魔法少女。
    みたまが今日の午後いろはに渡したのは、無味無臭の奇妙な液体。
    曰く、以前黒死牟に渡した『人間を食べなくとも代わりの栄養摂取が可能な固形物』を改良したもの。
    これを黒死牟が食べる分の料理に振りかければ鬼であっても接種が可能になるとのこと。
    見た目や味に変化は無いらしく、実際黒死牟の前に出された料理は他の皿に盛られたものと何ら違いは見られない。

    「あの娘がか……」

    神浜で、というよりはこの世界での生活に彼女の力を借りる事になった場面は少なくない。
    そういった物を用意したのが八雲みたまだと言うのなら、納得はいく。
    だが根本的な疑問がまだ残っている。

    「わざわざ私の分を作る必要がどこにある……あの娘から提供されたモノを食えば事足りる……」

    固形物の予備はまだ残っている。
    アレを適当に噛み砕き飲み込む、自分の食事などそれで十分。
    だからこのような手間をかける必要は無い。

  • 29二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 20:19:47

    そう伝えると、黒死牟の隣からおずおずと声を掛ける者がいた。

    「あ、あのね、わたしがお姉ちゃん達に相談したの。黒死牟さんとも一緒にご飯食べられないかなって…」

    最年少の住人であるういの言葉に、黙って六眼を向ける。
    大の男でも悲鳴を上げるだろう異形の容姿に怯む様子もなく、ういは黒死牟をじっと見つめ返す。
    思えばこの少女はいろはの手で助け出され、初めて自分を見た時も平然と接していた。
    幼子故におかしな部分で肝が据わっているのだろうか。
    ふとどうでもいい事を頭の片隅に浮かべた黒死牟へ、続けて話す。

    「わたし、皆で一緒にご飯を食べる時間が凄く好きで、だから黒死牟さんとも一緒に食べられたら嬉しいなって思ったの」

    告げられたのは何とも単純な理由だった。
    境遇のせいもあってか、みかづき荘だけでなく神浜の魔法少女達からは過保護気味に扱われているういからのお願いだ。
    黒死牟を食卓の場に引き摺り出すくらいはやってのけるだろう。

    「迷惑…だった…?」

    寂しそうな目で問われ、小さくため息をつく。
    この場にういの親友である二人の少女や、ウワサの少女がいなくて良かったと思う。
    あの三人が今のういの表情を見たら、非常に面倒な事になっていた。
    視線をういから外し、黒死牟は箸に手を伸ばす。
    これを使って食事をするなど何百年ぶりだろうか。
    手前の皿に乗っかった料理、いろはの十八番である豆腐ハンバーグを箸で崩し口に運んだ。

  • 30二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 20:20:23

    「……」

    人肉以外を口にした際の拒否反応は起きない。
    代わりに去来したのは何とも言えない感覚。
    継国の家で出された食事、顔も声も忘れた妻が作った食事。
    人である事を捨ててから強さを求めて喰らってきた鬼狩りどもの肉。
    それらとは違う何かがあるのは分かるも、具体的にどう違うのかは説明できず。

    「どう、ですか…?」

    ただ、緊張の面持ちで尋ねるいろはへ一言だけ告げた。

    「…美味い……」

    感想を聞いたいろはとういは満面の笑みを向ける。
    環姉妹がニコニコと黒死牟の食事を見守る中、他の住人達も次から次へと口を開いた。

    「黒死牟っていろはの薄い味が好きなんだなー」
    「いろはさん…ういちゃん…良かったです…」
    「じゃあ明日は私が作って来る!黒死牟さんに万々歳の料理を堪能させてあげるよ!」
    「鶴乃は今度にしなさい。明日は休みだし、久しぶりに私が作るわ」
    「えー!ししょーズルいー!」

    既に明日も黒死牟が食事に参加するのは、彼女達の中で決定しているらしい。
    やちよと鶴乃に至っては、どちらが作るかで火花を散らしている。
    まだいろはが神浜市へ来る前のみかづき荘の時から付き合いのある二人だ。
    あの頃からずっと食事の席を外していた黒死牟には思う所があったのだろう。

    賑やかな光景を尻目に、黒死牟は黙々と食事を続けた。

  • 31二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 20:20:57

    ――――

    「昨日はお楽しみだったわねぇ」

    翌日、調整屋を訪れた黒死牟を見るや否やそんな言葉がかけられた。

    「ばっ…調整屋!お前その言い方…!?」
    「なぁに?私はただ昨日はいろはちゃん達と晩御飯を食べられて良かったわ、って言いたかっただけよ?
     ももこったら…ナニを想像したのかしらぁ?」
    「なぁっ!?そ、それは…あーもう!お前絶対分かって揶揄ってるだろ!」

    これ見よがしにニヤニヤと笑うみたまへ、顔を赤くしたももこが食って掛かる。
    黒死牟でなくとも、神浜の魔法少女ならば見慣れた光景だ。
    一通りももこをからかって満足したのか、みたまが黒死牟へと顔を向けた。

    「いろはちゃんがお礼を言いに来たのよ。とぉっても喜んでたわ」
    「あー…、アタシがいた時から黒死牟さんと一緒に食べた事って無かったもんなぁ」

    納得した様子で頷くももことは反対に、黒死牟は渋い表情を作る。
    腑に落ちない、どうしても理解が出来ないのだ。

  • 32二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 20:21:19

    「何故……そうまでする……」
    「はい?」
    「あの家の娘達も……お前も……人喰いの化け物の為に……尽力する意味が理解できぬ……」

    黒死牟が知る魔法少女は一部を除いて善性の強い者達だ。
    だからこそ分からない。
    何故自分に、人を喰らい生きる化け物へと身を堕とした外道へこうも手を差し出すのか。
    嫌悪され、恐怖され、刃を向けられるのなら分かる。
    戦力として駒のように扱おうとするのもまだ分かる。
    だがいろは達は黒死牟に歩み寄り、仲間として受け入れようとしている。
    完全に理解の範疇外にあった。

    「鬼に寄り添うなど……正気と思えん……」
    「ちょーっと違うわねぇ」

    黒死牟の疑問にみたまは一つだけ訂正を入れる。

    「鬼でも関係なく助けるんじゃなくて、黒死牟さんだから皆手を伸ばすのよ」

    人差し指をピンと立てさも当然のように告げた。
    その言葉の意味もまた、今の黒死牟には理解できないものだった。

  • 33二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 20:36:26

    ういが兄上に懐いてる概念良いぞ

  • 34二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 21:11:15

    ホミさんの弾幕を月の呼吸の面攻撃で纏めて斬り落とす場面が浮かんだ

  • 35二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 23:08:04

    >>33

    逆に灯花とねむからはあんまり良く思われてないんだろうな

    自分達を差し置いて環姉妹に懐かれてるのとか、マギウス時代にノータイムで殺されかけたとかそんな理由で

  • 36二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 00:41:26

    第一部七章に兄上がいたらを妄想。幾つかのレスを拾って組み込んでます

    「貴方は行かなくて良かったのか?」

    ウワサ結界の中へと飛び込んだいろは達を見送り、和泉十七夜は傍らの侍へと尋ねる。
    この男の強さは嫌と言う程に知っている。
    西の纏め役である七海やちよの切り札、東の魔法少女を脅かす怪物。
    神浜東西の縄張り争いで、東側の魔法少女達のみならず西側からも恐れられた男だ。
    尤も本人にとっては降り掛かる火の粉を払ったに過ぎず、やちよに付き従っているつもりはないのだが。

    とにかくやちよと並ぶベテランの魔法少女である十七夜から見ても、黒死牟の強さはよく分かっているつもりだ。
    その黒死牟が鶴乃の救出に向かわず、ここに残った事への疑問を本人に直接聞いてみた。

    「あの場に……私は不要だ……」
    「ふむ?由比くんとはそれなりの付き合いがあるのにか?」
    「私が行ったところで……何の役にも立たん……あの娘に必要なのは……」

    必要なのは、剣を振るうしか出来ない己ではなく。
    あれだけ自分に依存していたやちよをも変えるような存在。
    未だ捨てきれない執着を向ける弟とは違う形で、周囲に輝きを齎す少女。

    脳裏に桜色の髪を靡かせる少女を思い浮かべ、ふと我に返り口を閉ざす。
    余計な事を言い過ぎたと、らしくない今の己に僅かな苛立ちが浮かんだ。
    ただ十七夜にはそれだけでも十分だったらしい。

  • 37二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 00:42:34

    「そういう事ならこれ以上は無粋か。こちらはこちらで仕事に取り掛かろう」

    対処すべき問題はウワサと融合した鶴乃のみではない。
    次から次へと現れる黒羽に使い魔。
    幹部クラスの実力を持つ白羽。
    そして彼女達が付き従うマギウスの二人、里見灯花とアリナ・グレイ。
    ももこ達も共に戦っているが、やはり苦戦は免れない様子だ。

    「ねーお侍さん。あなたは魔法少女と関係無いでしょー?邪魔だから帰ってくれないかにゃー?」

    煩わしさを露わにした灯花が黒死牟に言う。
    彼女からしたら黒死牟は鬱陶しいバグのような存在だ。
    マギウスに賛同する魔法少女ではなく、かと言ってやちよやいろはのように視野の狭い正義感で反抗する魔法少女でもない。
    正直に言ってやちよ達以上に邪魔。

    「……」

    対する黒死牟は無言。
    近付いて来た使い魔を斬り、戦場をぐるりと視界に収め、やがて十七夜へと口を開いた。

    「全員を退かせろ……」
    「…なんだって?」
    「巻き込まれては面倒だ……後ろで固まっている方が……こちらもやり易い……」

    淡々とした言葉に何かを察したのか、十七夜は言われた通りももこ達を退かせる。
    同時に黒死牟は一人で前に出た。
    何をするつもりかは明白、単独で敵全てを相手取る気だろう。

  • 38二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 00:45:22

    馬鹿げている。
    最初にそう思ったのは敵か、或いは味方か。
    己に集中する視線に込められた感情を意に介さず、黒死牟は刀を構え、

    その瞬間、戦場の空気が一変した。

    黒死牟の纏う闘気が、放たれる殺気が、この場全てを支配下に置く。
    使い魔は怯えたように後退り、羽の中にはこれだけで意識を奪われる者もいる始末。

    「……あーあ、ほんっとにめんどくさい」
    「…こんなにデンジャーな奴だって知ってたら、もっとちゃんと準備して来たんですケド」
    「わたくしに言わないでよー」

    マギウスである灯花とアリナでさえ、表情に険しさが増していた。
    それでも黒羽のように怯む様子がないのは、やはり有象無象とは一線を画す魔法少女が故だろう。

    (味方であるこちらまで総毛立つのを抑えられんな…)

    直接相対していなくとも、喉がヒリつくような重圧だ。
    マギウスの翼の魔法少女達には相当キツいだろうと十七夜は内心で思う。
    横目で見れば、血の気の引いた顔のレナとかえでをももこが倒れないように支えていた。
    戦いが終わった後、黒死牟を見る目が変わらなければ良いが。
    本人にとっては余計なお節介でしか無い事をふと思う。

  • 39二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 00:45:59

    (これは失敗でしたね……)

    巨大なチャクラムを強く握り直し、みふゆは小さく息を吐いた。
    鶴乃救出の為にやちよ達を結界の仲へ行かせたが、立場的には未だマギウスの翼に所属する身。
    となれば黒死牟とも戦わねばならないが、何とも荷が重い。
    背後では天音姉妹が青褪めた顔で、笛を取り落としそうな程に震えている。
    フクロウ幸運水のウワサを巡る戦いの際に彼女達は黒死牟の琴線に触れる何かをしてしまったらしく、消えないトラウマを刻み付けられた。
    この様子では戦うのは無理だろう。
    ならば後輩である彼女達の為にも、自分が情けないところを見せる訳にはいかない。

    この夜、少女達は知る事となる。
    何故黒死牟が長きに渡り、十二鬼月の頂点に君臨し続けたのかを。
    人間が鬼と戦うとはどういう事なのかを。
    身を以て、知る事になるのだ。

  • 40二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 00:55:11

    かわいそうなピーヒョロ姉妹…
    別に悪いことしてないけど存在が兄上の地雷みたいな連中だから…

  • 41二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 10:08:02

    偶然黒江さんが兄上と二人きりになってめちゃくちゃ居心地悪い思いしてる場面が浮かんだ。

  • 42二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 14:19:43

    >>41

    その後でいろはが兄上にフレンドリーに接してるの見て「やっぱり環さんは凄い」ってなるまでがセット

  • 43二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 15:31:44

    ウワサと関係ない神浜の都市伝説で夜な夜な出没する六つ目の侍みたいなのがある

  • 44二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 21:13:00

    >>10

    普段滅多に表情変えない兄上がななかと戦ってる時は高揚して口の端を吊り上げるんだ

    それ見て周りはぎょっとする

  • 45二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 23:27:04

    ミラーズの兄上が童磨みたいに喧しかったら面白いな
    仏頂面で無口の本物を見て安堵するいろは達に、意味が分からず首を傾げる兄上とか

  • 46二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 00:13:01

    アルまど様「何か魔法少女じゃないのに強くてちょっと怖い男の人がいるけどいろはちゃん達は幸せそうだからヨシ!」

  • 47二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 01:48:08

    チームみかづき荘の最高戦力
    但し太陽が出ている所では戦えない為、おガキ様や結菜さん辺りは確実にそこを突いて来る

  • 48二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 02:39:54

    レナやなぎたんが弟の話すると何とも言えない顔になってそう

  • 49二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 09:02:45

    兄上「私にも…双子の弟がいた…あいつは…私よりも遥かに剣技が優れて…非の打ち所がない人格者で…なんたらかんたら」

    「黒死牟さんって弟さんの事が大好きだったのですね!」

    兄上「なっ…!私は…あいつを…縁壱を…好きなんかでは…私はあいつが憎くて…」

  • 50二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 15:49:00

    「と、いうわけで。一度ちゃんと話し合って欲しいんです」

    何がというわけなのか。
    腕を組んでそう言った梓みふゆに、黒死牟は面倒だと言わんばかりの視線をぶつける。
    その様子を目ざとく見つけると、すかさず近くにいたみかづき荘の家主を味方に付けようとした。

    「まぁ!やっちゃん今の見ましたか!?ワタシが真剣に話してるのに!そういう所ですよ黒死牟さん!」
    「真剣に話したいならまずその手に持つのをやめなさい」

    呆れるやちよが見つめる先には、食べかけのクッキーがある。
    ついでに言うと口の周りにも菓子の食べかすが付いたままだ。
    数日前、いろはが里見家を訪問した際にお土産で貰った高級クッキーの味が大層気に入った様子。
    このままではみふゆ一人に食べられかねないと危機感を覚えたやちよは釘を刺し、クッキーの乗った皿を片付けた。

    「ああ!そんな殺生な…」
    「一人で食べ過ぎよ。それより、黒死牟さんに用があったんじゃないの?」

    本命そっちのけで来客用の菓子に夢中になっていた親友にそう言うと、あっという顔をされた。
    気恥ずかしそうにお茶を啜り、改めて本題に入る。

  • 51二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 15:49:53

    マギウスの翼が解散し、みふゆもみかづき荘にちょくちょく顔を出すようになった。
    嘗てはマギウスの翼に所属していた魔法少女達も、今ではいろは達と友好的な関係を築いている者が大半だ。
    だが中には未だ蟠りが解消されずにいる者もいる。

    「それで、あの笛姉妹がまだ恐がってるのね?」
    「はい。やっちゃんやいろはさん達とは普通に接してるんですけど、黒死牟さんの事は…」

    天音月夜と天音月咲。
    マギウスの翼の白羽だった双子の魔法少女。
    いろは達とは幾度も戦った因縁深い相手だが、最終的にはみふゆ共々マギウスを離脱し共闘した姉妹。
    現在でもみかづき荘の面々とは交流があるのだが、黒死牟とだけは会わないようにしている。
    以前、無自覚に黒死牟の地雷を踏み抜いてしまった事で心身にトラウマを植え付けられたのだ。
    既に敵対していないと理解していても、そう簡単に恐怖は消えない。

    「私があの姉妹に……今後も会わなければ……済む話だろう……」
    「そんなのダメだよっ」

    気怠く告げた言葉は、横からの力強い別の言葉に掻き消された。
    今の話を聞いていたのか、ういが力強く黒死牟を見上げている。

    「ちゃんとお話ししないと、喧嘩したままだなんてそんなの悲しいもん!」

    入院していた頃から灯花とねむの喧嘩をいつも仲裁してきたからか。
    仲直りを放棄しようとする黒死牟を見過ごせなかったらしい。

  • 52二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 15:50:45

    喧嘩だとか、そういう話ではない。
    ういの言葉を否定しかけるが、それより先に口を開く者達がいた。

    「ういさんもワタシの意見に賛成してくれるんですね!」
    「うん!わたしも、黒死牟さんには皆と仲良くして欲しいから」

    当の黒死牟を置いてけぼりにして盛り上がるみふゆとうい。
    あれよこれよと話は進み、みふゆが天音姉妹を連れみかづき荘に来るので、その時きっちり話をするという事に決まった。
    余計な真似はしなくていいと言いかけた黒死牟へ、やちよが諦めろと言わんばかりに肩に手を置く。
    その後ろでは申し訳なさそうな顔をしながらも、みふゆの提案に反対する気の無いいろはがいる。
    この場に自分の味方はいないらしい。
    最早不平不満を口にするのすら面倒になり、仏頂面で黙り込んだ。

    ――――

    「おかえりなさい、黒死牟さん」

    居間へ入ると出迎えの声があった。
    時刻は23時過ぎ。
    既に住人たちは寝静まっていると思ったが、そうではなかったらしい。

    「少し喉が渇いちゃって…」

    起きていた理由を口にするいろはへ、黒ずんだアクセサリーのような物を渡す。
    グリーフシード。魔女を斬って来た証。
    黒死牟には不要の代物だが魔法少女には別、その為こうしてみかづき荘の住人へと渡すようにしている。

  • 53二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 15:51:26

    「ありがとうございます、明日やちよさんに渡しておきますね」
    「ああ……」

    短く返し自身に宛がわれた部屋へと向かう。
    その途中、遠慮がちの声が背へ届いた。

    「あの、お昼の事怒ってますか…?」

    振り返ると、どこか申し訳なさそうな顔のいろはが目に映った。
    何のことだと聞かなくとも分かる。
    みふゆの提案した仲直りの件だろう。

    「頭に血を昇らせる程の……事でもあるまい……」

    面倒だとは思うし、必要性を感じてもいない。
    しかしみっともなく激情を露わにするようなものでもない。
    この家の住人に振り回されるのは、今に始まった事でも無いのだ。
    ならば、一々起こる方が馬鹿らしいというもの。

    そう伝えると、いろはは困ったような笑みを浮かべた。

    「…でも、やっぱりわたしもういと同じで、黒死牟さんと皆が仲良くしてくれたら嬉しいなって思います。
     わたし達も喧嘩した後は悲しくて、このままは嫌だなって仲直りしますし」

    喧嘩。
    その言葉に訝し気な目を向ける。

  • 54二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 15:52:34

    「お前と妹は……仲違いから程遠いように思うが……」

    黒死牟から見ても、環姉妹の仲の良さには疑う余地が無い。
    ういがみかづき荘に住むようになってから、いろはと姉妹喧嘩をした場面など一度もなかった。
    喧嘩など絵に描いたような仲良し姉妹からは最も縁のないものではないのか。

    「そんな事ありませんよ?ういの事は大好きだけど、一度も喧嘩しなかったわけじゃないです」

    いろはが話し始めたのはまだ魔法少女になる前の出来事。
    何時ものように里見メディカルセンターへうい達のお見舞いに行った日、偶然別の病室に入院している少女と知り合った。
    その日は家族が急遽お見舞いに来れなくなったらしく、寂しげな顔をしている少女を放って置けなかったいろはは彼女の話し相手になった。
    雑談に花を咲かせていた時、その場面を目撃したういが強引に二人の間に割って入ったのだ。
    困惑する少女を尻目にういはいろはの手を引き、自分達の病室へと連れて行った。
    当然いろははういの行動を良くは思わず窘めたのだが、ういにとっては逆効果。
    むしろ余計に不機嫌になった。

    「でもすぐに悪い事しちゃったって思ったみたいで、二人でその女の子に謝りに行ったんです」

    あの時のういは大好きな姉が見知らぬ相手と仲良くしており、それでヤキモチを焼いたのだろう。
    ちなみに事の顛末を同室の二人に話したところ、「ういの気持ちは分かるよ」、「それはお姉さまが悪いにゃー」
    とういの味方をされたのも覚えている。
    二人からしてもいろはが自分達以外の、それも同年代の少女と親しくするのは面白くないらしい。

    話し終えると、いろはは時計を見てあっと声を漏らす。
    黒死牟を引き留めたまま、つい話し込んでしまった。
    すみませんと頭を下げ、いろはも就寝の為に自室へと戻る事にする。

    「おやすみなさい、黒死牟さん」

    階段を上る背もやがて見えなくなり、居間には黒死牟一人が残された。

  • 55二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 15:53:34

    いろはとういも喧嘩はする。
    少々意外に思えた話も、ややあって当たり前かと納得した。
    意見の食い違いや些細ないざこざで喧嘩に発展する。
    そんなもの、どこの兄弟姉妹でも起こり得る事だ。
    だからおかしいのはむしろ、自分達の方だろうと弟の顔を頭に浮かべる。

    父に隠れて会いに行った幼少時。
    弟の持つ絶大な力を我が物にするべく研磨し続けた鬼殺隊での日々。
    そのどちらでも、弟との喧嘩になった事などただの一度としてない。
    当たり前だ。
    自らの抱える妬み恨み暗い憧れをぶつけるなど、自ら恥を晒すのに等しい真似などできるものか。
    罵詈雑言をぶつけようと、それら全ては逆恨みに過ぎない。
    人格者である弟なら怒りもせず、黙して兄からの八つ当たりを受け止めただろう。
    仮に口だけでは収まらず手が出る事態になったとしても、兄と弟との間には絶対的な力の差が開いている。
    余計に惨めとなるだけだ。

    それでも。
    もしも、もしもの話に過ぎないが。
    自分の胸の内を弟にぶち撒けていれば。
    薄気味悪く、目障りだと思っていた弟の胸の内をハッキリ知る機会があれば。

    『お労しや、兄上』

    神々の寵愛を一身に受け、天上より産み落とされた人形ではなく、涙を流す血の通った人間だともっと早くに知る事が出来ていたら。

    「或いは……――」

    ほんの少しでも何かが変わったのだろうかと、どうしようもなくつまらない事を思った。

  • 56二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 15:54:02

    後日。
    みふゆに連れられ天音姉妹がみかづき荘を訪れるも、いざ黒死牟と対面した際、

    「やっぱり怖いでございます!」
    「怖いものは怖いの!絶対無理!」
    「「ねー!」」

    と脱兎の如く逃げ出した為、仲直りはまた次回となったのは別の話。

  • 57二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 21:39:51

    兄上本人にその気は全く無いけど傍から見るとハーレム状態だから善逸が見たら血涙流しそう

  • 58二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 21:55:20

    ポイント10倍デーにどうしても人手が足りなくて、分厚いコートとかマスクとかサングラスでガッチガチに日除け対策させられ、やちよさんの買い物に付き合わされる兄上

  • 59二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 22:36:10

    >>26

    杏子とかはめっちゃ気安く話しかけてそう


    杏子「アンタも食うかい?(ポッキー差し出し」

    黒死牟「いらん……鬼は人間以外の物を食えぬ体だ……」

    杏子「何だそりゃ。お菓子の一つも食えないなんざ勿体ないねぇ」

  • 60二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 23:23:24

    魔法少女の真実を知っても別に驚きはしない
    むしろ何の代償も無く力を得られるわけがないだろうと納得するけど、代償も無く生まれつき痣が発現していた縁壱を思い出して勝手に曇る

  • 61二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 23:24:25

    >>59

    杏子「アンタの技の名前オシャレだねぇ…マミの奴も少しは見習ってほしいもんだ」

    兄上「ふむ…ちなみに…そのマミという少女は…どのような技の名前を付けるのだ?」

    杏子「へへっ…ティロ・フィナーレ!とかロッソ・ファンタズマ!とかだぜ!ひひひ」

    兄上「中々…はいからな…名前であるな…私も…セレーネ・カラミティ ルナティック・スラッシングといったような…名前を…付けてみようか…」

    杏子(ぷっ…!!)

    兄上「あまり…カッコよくないか…」ションボリ

  • 62二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 01:07:54

    兄上の日常in神浜

    その日、神浜は朝から大雨に見舞われていた。
    休日を心待ちにしていた人にとっては災難でも、黒死牟にとっては都合がいい。
    太陽が顔を出さないならばと人気のない道を駆け、剣を振るえる場へと赴く。
    鬼狩りが存在しない世界においても、刀へ手を掛ける場面は多々あった。
    内一つが魔女退治。
    人から恐怖された鬼が、同じく人を襲う異形を狩るなど笑い話にもならない。
    されどそれが今の黒死牟にとっては当たり前の事として存在する。

    (あれか……)

    人外ゆえの五感が他とは違う異様な気配を察知。
    躊躇なく結界内へと飛び込んだ。
    極彩色の目が痛くなるような空間。
    蚯蚓に群がる蟻の如く、使い魔が殺到。
    多対一、未熟な力しか持たぬ者ならば嬲り殺しは避けられない。

    そんな末路は有り得ないが。

    執念で鍛え上げた肉体、鬼舞辻無惨から齎された恩恵。
    それら二つが呼吸により更なる力を引き出す。

    ――月の呼吸 陸ノ型 常夜孤月・無間

    抜き放たれるは複数の眼が浮かび上がった妖刀。
    黒死牟の血肉より作り出された得物、虛哭神去を振るう。
    数十体もの使い魔に対し、こちらの武器は僅か一本。
    だが問題無い、一本・一振りで十分事足りる。
    1秒にも満たぬ間に使い魔は細切れにされ全滅、結界内は一瞬で静まり返った。

  • 63二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 01:10:55

    使い魔の殲滅に感じ入るものもなく、奥へと踏み込む。
    本命はまだ残っているのだ。
    今日は黒死牟一人、みかづき荘の魔法少女達は不在。
    ならば巻き添えを気にする事無く剣を振るえるというもの。

    道中顔を出した使い魔を容易く蹴散らし、最奥へと到達。
    そこに目当ての獲物はいた。
    豊満な女性の上半身を持ってはいるが、首から上は蟷螂を思わせる頭部。
    下半身に足は無く、代わりに無数の針金にも似た触手が蠢いていた。
    魔女の外見に興味はない。
    黒死牟が注目したのは魔女の足元、そこに異物があった。

    「……」

    四肢を引き千切られ、臓物を掻き出され、既に生物としての形をしていないソレ。
    鬼狩りだった頃にも鬼となってからも見慣れたモノ。
    人間の死体、それが二つ転がっている。

    「……」

    年の頃は十にも満たないだろう。性別はどちらも男。
    友人、ではなく恐らくは兄弟。よく見れば年齢に差があるようだった。
    苦痛と絶望の二つを貼り付けた顔で、今も触手に弄ばれている。

    「……」

    何か思う所があるのではない。
    自分が来るのが少し遅かった、そう分かったとて何だと言うのか。
    悲しみも、怒りも、後悔も、無力感も。
    そういった真っ当な人間らしい感情は無く、ああ死んだのかと思っただけ。

  • 64二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 01:11:50

    胴体から引き離された頭部に浮かんだ虚ろな目が、黒死牟の六眼と合う。
    だけど黒死牟は何も返さない。
    あそこにあるのは最早人に非ず、魂の抜け落ちた肉の袋。
    だから何も思わない、感じない。

    こちらに気付いた魔女が少年達だったモノを投げ捨て、無数の触手を振るう。
    軽やかに、同時に力強い跳躍で以て回避。
    頭上を取られたと魔女が気付いた時には既に遅い。

    ――月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮

    ズルリと視界がずれる。
    頭部を斬り落とされたと気付かぬまま、轟音を立てて魔女は崩れ去った。

    ――――

    「はーい、確かに受け取ったわぁ」

    渡されたグリーフシードを大事そうに仕舞い、普段通りのスマイルでみたまが言う。
    魔女を仕留め、その足で黒死牟が向かったのは調整屋。
    入手したグリーフシードは黒死牟に無用であっても、魔法少女達には必要不可欠。
    ドッペルにより魔女化が防がれている神浜市であろうと、重宝されるのは変わらない。

    「報酬分は……それで足りるか……」
    「十分よぉ。それじゃあはいコレ。調整屋さん印の特別サービス品♪」

    厚めの紙袋を受け取る。
    中にギッシリと詰まっているのは、黒死牟専用の栄養摂取の為の固形物。
    この世界における自身の食事への報酬として、グリーフシードをみたまに提供するのが日課となっていた。

  • 65二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 01:13:41

    目的を果たした黒死牟は短く礼を言い背を向ける。
    長居するつもりは無い。
    「もうちょっとゆっくりしても良いのに」という言葉を無視し、出口へ向かい。

    「そういう事もあるわ」

    ピタリと、足を止めた。
    何を指しての言葉なのか、分からない程愚鈍ではない。
    そういう事もある。反論はしない、その通りだろう。

    だからどうしたという話だ。
    未だ雨が降りしきる外へと出て、調整屋を後にする。
    今度は一度も立ち止まらず、振り返りもしなかった。

    別に何か特別な出来事ではない。
    いろは達に事の顛末をわざわざ教えるつもりもない。
    ただ、そういう事があったと頭の片隅に記憶しておく。
    それだけの、何でもない日だった。

  • 66二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 01:43:04

    ちょくちょくSS投下されるの良いな。楽しみが増える

  • 67二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 08:55:29

    保守は…しておこう…
    朝昼は…落ちやすい…

  • 68二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 15:00:47

    >>32の後の話


    「あっ、ちょっと待ってもらっても良いですか?」


    夕食を済ませ、席を立とうとした黒死牟をそんな声が止めた。

    食器を流し台へ運んだばかりのいろはだ。

    パタパタとリビングへ戻り、用件を告げる顔に浮かぶのはどこか楽し気な笑み。


    「実は黒死牟さんに渡したい物があるんです」


    そう言い背後へ視線をやる。

    釣られて黒死牟も同じ方を見ると、そこにはみかづき荘の家主の姿があった。

    いつもの凛とした佇まいは無く妙に余所余所しい。

    というよりは恥ずかし気に目をあっちこっちに泳がせている。

    普段とは違う様子を訝しく思っていると、痺れを切らしたらしい鶴乃とフェリシアに肩を叩かれた。


    「ほーら、やちよ」

    「今更照れてんなよー」

    「…分かってるから急かさないで」


    二人に恨めし気な目を向けた後、決心が付いたのか黒死牟の前に出た。

    ズイ、と両手を突き出された両手が持つのは何かの箱。

    何故急にこんな物を寄越すのか、黒死牟には意味が分からない。

  • 69二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 15:01:43

    「何だこれは……」
    「良いから開けてみて」

    つっけんどんな口調となるやちよに一先ず従い、受け取った箱の中身を確かめる事にする。
    まさか危険物は入れていないだろうなと失礼なことを考えつつ開封した。
    出て来たのは、この世界での生活にて見慣れた物。
    現代人が飲み物を摂取する際に使用する容器。
    マグカップである。

    「何故……私にこれを寄越す……」
    「その…みたまのおかげで黒死牟さんも普通の食事が出来るようになったでしょう?なら自分用の食器くらいあっても良いと思って…」
    「それに、黒死牟さんもみかづき荘の仲間ですから。マグカップがあった方が良いって、皆で相談したんです」

    引き継ぐように言ったのはさな。
    みかづき荘に来たばかりでいろは以外とは打ち解けられなかった頃、親睦を深める為にもとやちよの提案でマグカップを買いに行ったのだ。
    それもあってか黒死牟にもマグカップがあった方が良いと、強く賛成していた。

    「……」

    まだみふゆがいた頃より、チームみかづき荘の魔法少女が自分のマグカップを持っていた事は知っている。
    だが黒死牟だけは持っていなかった。
    当たり前と言えば当たり前の事だ。
    魔法少女では無いのだし、あの当時はまだ今のように人間と同じ食事など取れなかったのだから。
    マグカップがあっても飲料を摂取出来なければ、何の意味も無い。
    だから自分のマグカップが無い事に不満も疎外感も、興味も抱かなかった。

  • 70二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 15:03:16

    しかし今になって渡されるとは思わず、少々意外そうにやちよと己の手元を交互に見る。
    その様子が可笑しかったのか、鶴乃がカラカラと笑いながら言う。

    「渡すなら黒死牟さんと一番付き合いの長いやちよが適任だって、皆でそう言ったんだ。
     それに事情があったとはいえさ、黒死牟さんだけ仲間外れみたいにしてたのをやちよも気にしてたみたいだし」
    「ちょっと鶴乃!」

    これまた意外な事実に少なからず驚きがあった。
    確かにやちよとは神浜で最も付き合いが長いが、まさかそのような事を考えていたとは。

    「とにかく!受け取ってもらえる、かしら…?」

    周囲の暖かい目が耐えられなくなったのかヤケクソ気味に叫ぶも、言葉尻が萎む。
    黒死牟は暫し無言でマグカップを見つめたまま、微動だにせず。

    別に、こんな物を寄越されなくとも気になどしない。
    彼女達が自分を仲間と認めずとも、それは当然だろうとしか思わない。
    されど、この家の少女達が自身の理解の及ばぬ行動に出るのは今に始まった事でも無くて。
    何度不要だと言葉で伝え、態度で拒絶しても、変わらず己を仲間と扱う。
    血と、裏切りと、恥に濡れた惨めな鬼へ、自らが汚れるのも厭わず手を伸ばす。

    であれば、これもまた彼女達にとっては……

  • 71二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 15:03:55

    「……」

    いらんと、必要ないと突き返すのは簡単だが、それをやらねばならない絶対的な理由も見つけられず、
    ややあってゆっくりと顔を上げ口を開いた。

    「茶を一杯……これに頼めるか……」
    「っ!…ええ、淹れて来るわ」
    「やちよめっちゃニヤケてんな」
    「良かったねやちよさん!」

    早足で台所へ向かうやちよの背に、またもや複数の暖かい目が向けられた。
    本人は隠しているつもりだが、口元が緩んでいるのは全員にバレている。

    やがて湯気が昇るマグカップが運ばれ黒死牟の前に置かれた。
    人間だった頃に出された湯呑み、嗜んでいた酒の徳利、その両方と違う容器に口を付ける。
    喉の奥へと流れ込む熱さは人間の血とは別物。
    茶とはこのような苦みであったかと、懐かしさとも新鮮さとも取れる感覚が胸の内より湧き出す。

    「悪くはない……」
    「そこは美味しいと言って欲しいのだけれど」

    不満を含んだ言葉とは裏腹に、やちよは柔らかい笑みを浮かべていた。

  • 72二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 16:04:48

    このスレの兄上は鬼滅最終回の愈史郎みたいに知ってる魔法少女が皆死んだ後も生き続けてそう

  • 73二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 16:13:10

    >>72

    いろはかやちよさんに「死のうとしないで」って言われたのかな?

    律儀に約束守る理由は無いけど何となく破る気にもなれなくて、気が付いたら何百年も生きてたり

  • 74二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 16:25:47

    >>73

    でも毎年律儀に万年桜に行って∞いろは達に会ってそうな感はある<兄上

  • 75二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 20:11:20

    偶にフェリシア鶴乃と一緒にデカゴンボールのDVDを鑑賞してる兄上
    ストーリー自体は興味無いけど戦闘シーンだけクソ真面目に見る

  • 76二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 21:58:45

    知識が大正で止まってるけど地頭は普通に良いから現代機器も早い段階で使いこなせそうだし、何ならいろはよりスマホの操作が上手い

  • 77二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 22:01:38

    血液貰って用心棒でもしとるんか?年代違うのはいつものアレだろうが…

  • 78二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 22:24:18

    >>76

    いろは「えーっと、地図は…あっ違った…こっちじゃ…あ、あれ?」

    黒死牟「貸してみろ……」

    いろは「え?あ、はい(スマホ渡し」

    黒死牟「……(高速スワイプ&タッチ」

    いろは「(わたしより使いこなしてる…!?)」

  • 79二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 22:26:26

    >>77

    SS書いてる奴だけど、あんま深い設定とかは考えてないよ

    レス見て思い付いたシチュを書いてるだけなんで不快にさせたならすまない

  • 80二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 22:41:41

    好きなように書いてくれてええんやで
    こっちも楽しく読んでるから

  • 81二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 22:45:15

    ウムツッコミ入れたかった訳じゃないから自由に書いてくれてエエんや

  • 82二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 22:49:22

    ほんとどういうことだよ!
    その設定に行き着くまでの壁が多すぎる!
    人肉しか食えないし昼間は出歩けないし無惨様いないと死ぬ筈なのに平成まで生きてるし世界に鬼と魔女がいるとしたら一般的な日本人滅亡しそうだし!
    鬼と魔女が食い合って対消滅しねーかなー

  • 83二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 23:00:26

    >>82

    多分>>1も深くは考えてないだろうから気楽に兄上とマギレコ勢のやり取りをレスして良いと思うぞ

  • 84二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 23:07:26

    武器が鉄扇だから鶴乃を見て童磨を思い出すけど、性格まで同じじゃなくて良かったと内心安堵してそう

  • 85二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 23:19:59

    >>75

    戦闘シーンを何度も見まくって兄上が新しい血鬼術のアイデアとして取り入れそうだ…

  • 86二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 23:29:04

    >>85

    普段の魔法少女の戦闘とかに感化されて月の呼吸の型が5つくらい増えそう

  • 87二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 23:34:35

    >>85

    黒死牟「……(戦闘シーン巻き戻し中」

    フェリシア「なぁってば!何回そこ見りゃ気が済むんだよ!早く次の場面見せろー!」

    鶴乃「(今度デカゴンボールの漫画貸してあげよっかな…)」

  • 88二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 00:46:50

    散々セーラームーンとか言われてる通り兄上の血鬼術って魔法少女みたいだよね…

  • 89二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 08:24:08

    面白いので保守

  • 90二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 14:45:04

    ハロウィンイベントでかりんちゃんに
    「黒死牟さんは仮装いらないの!そのままで十分ホラーなの!」とか言われそう

  • 91二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 19:26:17

    >>90

    兄上「そうか…」ションボリ


    ずっと和風でやってきたので西洋の騎士みたいな仮装をしてみたかった兄上

  • 92二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 19:54:13

    >>21で思い付いたお留守番兄上



    みかづき荘の住人の仲の良さは今更説明するまでも無いが、常日頃から固まって行動している訳ではない。

    曇り空となったある土曜日。

    家主のやちよは撮影の仕事で朝早くから家を空け、いろはとさなは生活必需品の買い出しへ。

    フェリシアは前日に遊ぶ約束をしていたかこの所へ行き、ういもまた灯花達との約束があり午前中には出かけた。

    頻繁に顔を出しに来る鶴乃も万々歳の出前配達が忙しいらしく、朝に一度顔を見せたっきり今日は夕方まで来れないとのこと。

    となれば、みかづき荘に残っているのは一人。


    「……」


    留守を預かった男、黒死牟はリビングにて一言も発さずに書物へ目を通している。

    彼が剣以外で興味関心を向ける数少ないものの一つ、囲碁の本だ。

    みかづき荘の倉庫の奥深くで埃を被っていたが、捨てるくらいならばと引き取り暇があれば読むのが習慣となっていた。

    何でもやちよの祖母が存命だった頃、住人の一人が残して出て行き、結局一度も取りには戻らなかったらしい。


    一冊目を読み終え二冊目に移ろうとした時、呼び鈴が鳴らされた。

    訪問者を知らせる音に黒死牟はチラと顔を上げるも、すぐに視線を本へと戻す。

    自分以外に住人が居ればその者に対応を任せるが、今は全員が不在。

    異形の貌である己が出て行くわけにもいかず、ここは居留守を装おうとし、


    『おーい、やちよさーん?誰もいないのかー?』


    よく知る声が玄関扉の向こうから聞こえた。

    彼女ならば黒死牟を見ても驚きはせず、今更遠慮するような関係でもない。

    本に伸ばしかけた手を引っ込め立ち上がると、玄関に向け歩き出した。

  • 93二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 19:55:15

    ――――

    「これと…あとこれも。帰ったら渡しておいて」
    「承知した……」

    リビングのテーブルには複数の箱菓子が並べられていた。
    本日の来客、十咎ももこが持って来たのは旅行の土産品の数々。
    先週家族で旅行に行った際に買って来たのだという。
    同じチームのレナとかえで、何かと縁のあるみたまには既に渡しており、みかづき荘で最後。
    そうして訪れたは良いものの、今日に限って魔法少女は全員不在。
    ももこらしいバッドタイミングと言えるだろう。

    「もし黒死牟さんもいなかったら出直す羽目になってたよ」
    「私が家を空ける機会など……そうそうあるまい……」

    魔女退治、それも夜や余程天候が荒れている時以外は外出はしない。
    太陽が弱点である鬼の体質は一度死した後も変わっていなかった。

    目的を果たしたももこが何と無しに視線を動かし、ある一点で止まった。
    住人たちのマグカップが掛けられた所へ、見知らぬ物が新たに加わっている。
    三日月が描かれたソレは、やちよのマグカップとは違うデザイン。
    誰が使っているのか、該当するのは一人しかいない。

    「もしかして黒死牟さんの…?」
    「……」

    沈黙は肯定だ。
    少し前にやちよから贈られ、今も使っている。
    驚きは一瞬、すぐに満面の笑みとなった。

  • 94二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 19:56:28

    「そっか…いやーそっかそっか!遂に黒死牟さんも自分のマグカップをかぁ!」
    「歓喜する程の……ものでは無いだろう……」
    「何言ってんのさ、嬉しいに決まってんだろ?」

    そう言われてもやはり黒死牟には分からない。
    一から十まで説明する気はないらしく、良いものを見たと言いももこは腰を上げる。
    この後も予定がある為長居する気はないとのこと。

    「そんじゃお邪魔しました!やちよさん達にも宜しく言っといて!」

    上機嫌のままももこがみかづき荘を後にし、家の中は再び静寂に包まれた。

    何がそこまで喜ばしかったのか、結局分からず終いだ。
    とはいえ強く回答を求める程の事かと言うとそうでもなく、些事に過ぎないと切り捨てても問題はない。
    土産品はやちよかいろはにでも渡しておけば良いだろう。

    突然の訪問に読むのが止まっていた本を手に取り、ふとももこの表情を思い出す。
    無理をしているのでも、胸の内に何かを抱えているのでもない。
    純粋に、心の底からの笑顔。
    そういえば、安名メルという名の少女が死ぬ前までは自分の前でも自然とあんな顔をしていたか。

    「……」

    そんな事を考え、すぐに興味が失せたかのようにページを捲った。

  • 95二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 19:59:00

    ――――

    夕暮れ時、帰宅した住人たちに土産の事を伝えると大層喜ばれた。
    それ自体は別に良いが、少々気になった事が一つ。
    ういが心なしか急いだ様子で帰って来たのだ。
    姉であるいろはも気付いたらしく、ういに聞くとこう答えた。

    「あのね、えっと…昨日皆で一緒に動物さんが出るテレビを観たでしょ?」

    ういが言うのは昨日の夜に放送していたテレビ番組。
    一般視聴者から登校されたペットの動画を特集した内容だったのは、全員が覚えている。
    何でもその中にあったある犬の動画を思い出し、早足で帰って来たという。
    飼い主の留守中を設置したカメラで撮影したそこには、寂しそうに耳を垂らし寝そべる犬が映っていた。

    「黒死牟さんも一人でお留守番で、昨日のワンちゃんの動画を思い出して、そしたら何だか早く帰らなきゃって思ったの」
    「…………」

    つまりういは飼い主不在で寂しがっている犬と重ねたらしい。
    これには黒死牟も掛ける言葉が一文字も見つからず、沈黙する他ない。

    「こ、黒死牟が寂しんぼの犬って…ぷくくく…」
    「フェリシア、笑うのは失礼でしょ。ういちゃんは心配してたのよ」
    「肩が震えてますよやちよさん…笑ってるるのバレてます」
    「あ、あの私はワンちゃんも、可愛くて良いと思います…!」
    「フォローになってないような…というかさなは猫派じゃなかったっけ」

    各々反応する少女達を前にし、最早何を言うのか考えるのも馬鹿らしくなった黒死牟は、今日一日留守番していたにも関わらず疲れたようにため息を吐くのだった。

  • 96二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 21:17:30

    ういの遊び相手になって双六をやってる最中、幼少時の縁壱と遊んでやった時を思い出し勝手に曇る

  • 97二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 21:31:13

    >>86

    マギアを参考にして新しい型を生み出してそうだな

  • 98二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 21:49:00

    >>96

    先に上がったういから「負けたのがそんなに悔しかったのかな?」って勘違いされてると草

  • 99二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 23:37:17

    黒羽時代のしぐりんをシバき倒した事があるせいでめっちゃ苦手意識を持たれてる兄上
    尚兄上本人は適当に蹴散らした内の一人程度にしか見てなかったので覚えてない模様

  • 100二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 23:46:45

    >>99

    時雨「ヒッ…はぐむん怖いよ…」

    はぐむ「だ、大丈夫だよ時雨ちゃん…!私の後ろに隠れて…!」

    黒死牟「……?(誰だっけという顔」

  • 101二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 01:35:29

    魔女斬ってる時に成り行きでピンチの魔法少女を助けるけど、面倒なので名乗らず去ってそう
    その後ワルプルギス戦で集まったキャラから「あの時助けてくれた侍っぽい男の人!」って言われる兄上もあり

  • 102二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 09:16:40

    保守せねば…無作法というもの…

  • 103二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 14:51:36

    >>101

    思ってたより大勢の魔法少女と面識がある兄上に困惑するみかづき荘の面々

  • 104二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 16:30:29

    兄上とみかづき荘の大晦日

    12月31日。
    一年を締めくくる日だろうと、魔女は関係無しに現れる。
    希望を願った魔法少女の成れの果て。
    人々が無事に新年を迎えるのを認めず、己と同じ絶望へ引き摺り込もうとする。
    ならばそれを防ぐのは今を生きる魔法少女の役目だが、ここ神浜市では唯一の例外が存在した。

    『――――ッ!!!??!』
    「随分と……生き汚いな……」

    四肢を落とされ、頭部だけになっても喰らい付かんと迫る魔女へ冷たく吐き捨てる。
    鋸のような歯が黒死牟へ到達する寸前、綺麗に三分割された頭部が地面に転がった。
    消滅と同時に残されたグリーフシードを確保、長居する理由も無い為早々に帰路へ着く。
    冬の夜風に着物を揺らしながら、人目を避けて今の己が住まう場所へと帰って行った。

    到着し家の中へ入ると、いつも以上に寒々とした空気に感じられた。
    単に夜だからか、或いはここの家主の影響か。
    答えがどちらだろうとさして興味は抱かず、居間へと進む。

    「おかえりなさい」

    室内の静寂さに呑み込まれそうな程、酷くか細い声がした。
    灯りも付けず、窓から差し込む月明かりに照らされる少女。
    青い髪と白い肌を一層際立たせながら、やちよはゆっくり黒死牟へ振り返る。
    相も変わらず弱々しい姿だと、言葉には出さずそう思った。
    以前はもっと毅然とした態度を崩さずにいたのが、こうも変わるとは。

  • 105二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 16:31:38

    「起きていたのか……」
    「ええ、眠る気になれなくてね」

    マグカップに口を付け、冷え切った紅茶を飲み干すやちよ。
    居間をぐるりと見てみれば、ソファーに紙袋が乱雑に放り投げられていた。

    「ああそれ?スタッフの人から貰ったのよ。今年一年お疲れさまでしたって」

    聞きながらも黒死牟は興味無さげに紙袋から視線を外す。
    やちよからしてもそういう反応をされるのは分かっていたようで、特に怒りもせず苦笑いを浮かべた。
    そうだ、今日は一年間の締めくくりの日。
    なのに電気も点けない部屋でちびちび茶を口にするなど、十代の少女らしかぬ過ごし方。
    去年はもっとまともに新年を迎えようとしていたのに。
    余りの落差へ自嘲するやちよへ、淡々とした問いかけがあった。

    「己の孤独を……嘆いているのか……?」
    「…まさか。そんなわけないわ」

    そんなわけがない。いや、あってはいけない。
    ももこと鶴乃を拒絶したのはやちよ自身の決断だ。
    自分の我儘で二人を遠ざけ傷付けておきながら、寂しいなど思って良い筈が無い。
    そのような資格は自分に無いと、黒死牟の言葉を否定する。

  • 106二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 16:33:24

    「それに、今年は黒死牟さんが一緒だもの。寂しくなんてないわよ」
    「……」

    薄っすらと笑いながら言うその姿は酷く儚気で。
    歴戦の魔法少女とは思えない程に、今にも消えてしまいそうだった。
    縋りつくような瞳で見つめられても、黒死牟は何もしない。
    沈黙したまま、ただ六眼を向けるだけ。
    気の利いた言葉を掛けるだとか、そっと抱きしめてやるだとかはしない。する気も無い。
    そういった真似が出来る男ならば、そもそも無責任に妻子を捨てなかっただろう。

    もうじき新しい年が来る。
    来年もまたやちよはこのままで、自分も特に変わらずこの世界で魔女を斬り続けるのだろうか。
    或いは今度こそ死に、地獄へと落ちるのだろうか。
    先の事など知る由も無い。
    かの日輪や鬼の始祖ですら未来を見通す術を有していなかったのなら、自分にだって不可能だ。

    言葉の無い部屋の中、時計の針だけが乾いた音を立てていた。

  • 107二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 16:34:10

    ――――

    みかづき荘に到着すると、黒死牟は着物に付いた雪を払い落とす。
    大晦日だろうと魔女が関係なしに現れるのはどの年も同じ。
    鐘に手足を生やした異形を一刀両断で斬り伏せ、グリーフシードを拾うと早々に帰還。
    行きの際には無かった大雪の中を駆け、去年と変わらず自分が住まう家へと向かったのだった。

    「おかえりなさい、黒死牟さん」
    「ああ……」

    パタパタとスリッパを鳴らし、いろはが玄関まで来た。
    エプロンを着けたままなのを見るに、台所へ立っていたらしい。
    グリーフシードを渡し、並んで居間まで向かう。

    「ごめんなさい、黒死牟さん一人に魔女の事を任せちゃって…」
    「一人で十分だと……先に言ったのは私だ……謝罪は必要ない……」

    一人であっても別に問題はないのは事実である。
    それにいろは達とは違って、どうせ夜にしかまともに動けない身だ。
    ならばわざわざ他の少女達を引っ張り出す事も無いだろう。

    外から出も明かりが点いているのは見えており、やはり住人全員が起きている。
    みかづき荘では夜更かし厳禁だが、今日に限っては特別。
    既に23時半を過ぎているにも関わらず、居間は賑やかだった。

  • 108二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 16:35:49

    鶴乃、フェリシア、さなは三人揃ってテレビを視聴中。
    やちよは台所にいるのか、奥の方からおかえりなさいと声をかけられた。
    だが後の一人の姿は見当たらない。

    「ういは先に寝ちゃったんです。皆と一緒に起きてるって張り切ってたんですけど…」

    黒死牟が帰って来るのを待って、共に新年を迎えるつもりだったが睡魔には勝てなかったとのこと。
    可愛らしく寝息を立てる妹をベッドに運んであげたのは、ほんの数分前の事だといろはは話す。
    明日はどうして起こしてくれなかったのと拗ねるかもしれない。
    今からういの機嫌をどう治そうかいろはが考えだすも、やちよの声で中断を余儀なくされる。

    「甘酒が出来たから皆で飲みましょう。いろはと黒死牟さんも座って」
    「ありがとうございます。あ、でもういは…」
    「ういちゃんの分も残してあるわよ。明日になったら飲ませてあげる」

    それぞれのマグカップを盆に乗せたやちよが、皆の前に置いていく。
    最後に自分の分を取ると、各々口を付けた。
    酒粕の独特の匂いが鼻孔を擽る。
    風柱の稀血で酩酊した時程では無いが、どこか懐かしさを感じる。

  • 109二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 16:36:55

    「もう少ししたらお蕎麦を用意しますね」
    「オレ大盛りな!」
    「遅い時間なんだから少しにしておきなさい」
    「そうだよー。食べ過ぎてすぐ寝ると牛になっちゃうよ?」
    「なら問題ねぇな!オレ牛好きだし!」
    「えっと…そういう事では無いような…」

    賑やかな光景。
    この一年ですっかり見慣れてしまったそれを前に、黒死牟はふと去年の同じ日を思い出す。
    まさかこんな未来になるとは思いもせず、冷え切った居間で薄く微笑む家主の少女をただ見ていた。
    呆れながらフェリシアを窘める今のやちよを、過去の彼女に教えてもきっと信じないだろう。

    変わったと言えば、自分もそうなのだろうか。
    人間の寿命から解放された鬼にとっては、一年間など余りにも一瞬だ。
    新しい年を迎えたとて、人間と同じように喜ぶ気など皆無。
    勝ち続ける為に己を鍛え、こちらの頸を狙う鬼狩りどもを始末し、主の求める青い彼岸花の情報を探る。
    それだけが全てであり、他は不要と切り捨てていた。
    だというのに今はどうだ。
    二十にも満たない娘達とひとつ屋根の下で新しい年を迎えようとしている。
    そんな状況を、当然のように受け入れている己が俄かには信じ難い。

    「黒死牟さん」

    改めて自身の現状への理解に苦しむ黒死牟を引き戻したのは、どこまでも柔らかな声。

    「来年もよろしくお願いします」

    春爛漫の色を表したような笑みで告げるいろはに、返す言葉を見付けられず、結局はああと短く応じるのだった。

  • 110二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 19:17:50

    >>8

    めっちゃ弱って依存してくるやちよさん想像したらやたらエロいけど、

    兄上は下心とか一切無しで「は?何でこいつこんな縋り付いて来んの?こわ…」ぐらいにしか思って無さそう

  • 111二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 19:33:30

    競艇コラボの時一人だけボートに仁王立ちしてるせいでいろは達からぎょっとされる兄上

  • 112二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 20:03:02

    ココイチコラボの時は目玉焼きを六つ乗っけたカレーがおすすめとしてメニューに載ってそう

  • 113二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 20:12:34

    >>112

    いろは「やっぱり黒死牟さんオススメのカレーは美味しいですね!目玉焼きが生きてるみたい!」

    黒死牟「……???」

  • 114二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 01:08:26

    あけおめ保守

  • 115二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 01:54:56

    >>109の後。新年の小話


    時計の針は0時を過ぎ、めでたく新年を迎えたみかづき荘。

    が、どうやら早くも不吉な影は迫っているらしい。

    年越しそば啜っている一同が聞いたのは、階段をどたどたと降りる慌ただしい音。

    ロケットもかくやという勢いでういが居間に飛び込んで来た。


    「お姉ちゃぁん…!!」

    「う、うい?どうしたの?」


    いろはを目にするや否や抱きつき、ぐりぐりと頭を押し付ける。

    丸い頬は濡れており、涙がポロポロ流れていた。

    泣いている妹に驚くもそこはやはり姉、安心させるように抱きしめ返し頭を撫でてやる。


    「よしよし。大丈夫だよ。お姉ちゃんも皆もいるからね」

    「ぐすっ…うん……」

    「怖い夢でも見ちゃった?」


    いろはの問いかけにコクリと頷く。

    大切な妹の初夢が良くないものと知りいろはの顔も一瞬曇る。

    しかしういを不安にさせてはならないとすぐに優しい笑みへ戻した。


    「あのね、あのね…」


    たどたどしくも、ういはさっき見たばかりの悪夢を話し始める。

  • 116二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 01:56:25

    「起きたらみかづき荘じゃない、何だか寂しいところにいたの。そこで色んな怖い人達に会って…」
    「怖い人?」
    「うん…。何かね、壺からニュって出て来る人とか、ずっと泣いてる大きなコブのお爺さんとか…」
    「……」

    ピクリと、一瞬顔が引き攣る黒死牟。
    幸い他の皆はういの話を聞いていて、気付いた様子は無い。

    「その人たちから逃げたら、今度は綺麗な目のお兄さんに会って…でもその人もよく分かんない事をずっと言ってて…
     そしたらね、入れ墨…って言うのかな?体に模様のある別のお兄さんが綺麗な目のお兄さんを殴り飛ばしたの」
    「…………」

    黒死牟が真顔となる。
    普段からほとんど表情を変えないが、これはむしろ表情が抜け落ちたと言うべきだろう。

    「何が何だか分からなくなって、どうしようって思った時に女の人が、えっと…ギター…じゃなくて…三味線?をビーンって鳴らして、それで目が覚めたの」
    「そっか…何だか不思議な夢だね」
    「うん…すっごく怖かった…。起きたらお姉ちゃん達がいなくて、それで…」

    恐怖がぶり返したのか、目尻に涙を溜めるういを安心させるように強く抱きしめる。
    良かれと思って先にういをベッドまで運んだが、却って不安にさせてしまったらしい。

  • 117二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 01:58:05

    「大丈夫だようい。それは全部ただの夢。怖い人達はどこにもいないよ」
    「おう!それにもしそんな奴らが出たらオレがぶっ飛ばしてやる!」
    「神浜最強の魔法少女がいることも忘れないでね!」
    「頼もしいのは結構だけどもう少し音量を落としなさい」
    「う、ういちゃん…!私もういちゃんの事守って、怖い思いをさせないようにするから…!」

    姉を始めとした年上の少女達の言葉により、恐怖が薄らいでいく。
    その最中も黒死牟は黙り込んでいた。
    やけに聞き覚えのある特徴。それも複数。
    偶然と思いたい。正夢ではない事を願う。
    やがて涙の引いたういはいろはに抱きついたまま、頬を染めて口を開いた。

    「あのね、皆のおかげでもう泣かなくても大丈夫だけど、まだちょっぴり怖いから今日は……」

    もじもじするういの様子に、これは一緒に寝て欲しいのだろうといろはは確信する。
    伊達に10年以上ういのお姉ちゃんをやっていない。
    返答は当然イエスだ。
    可愛い妹の可愛いお願いを断るなど、天地が引っ繰り返っても有り得ない。

    しかし、お願いの内容はいろはの予想とは少し違っていた。

    「お姉ちゃんと黒死牟さんの三人で一緒に寝ても良い?」
    「えっ?」
    「…………なに?」

    衝撃発言に居間の空気が凍り付く。
    暫しの沈黙の後、大騒ぎになったのは言うまでもない。

    その後、主にやちよとさなの強い反対により黒死牟も環姉妹と同じベッドで眠るのは当然却下。
    ちょっぴり不満な顔のういを宥めながら二回へ上がるいろはを見て、新年早々無駄に疲れた気がしてならない黒死牟だった。

  • 118二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 11:45:25

    >>117

    朝の会話


    フェリシア「あー何かオレも変な夢見た…トサカみてーな頭の兄ちゃんが出て来てさ…」

    鶴乃「私は数珠持った男の人の夢だったよ。なんであの人泣いてたんだろ…?」

    さな「あの、私は髪が長くて可愛い顔の男の子の夢でした」

    やちよ「二葉さんは良い夢ね。私なんて癇癪を起して暴れる男の人の夢だったわ…」

    いろは「みんな不思議な夢を見たんですね。わたしも変わった耳飾りのお侍さんの夢を見て…そういえばあの人黒死牟に似ていたような?」

    黒死牟「…………………」

  • 119二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 12:20:03

    調整屋で何か仕事貰ってその報酬をお年玉としていろは達にあげる兄上

  • 120二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 14:15:25

    >>116

    夢じゃなく現実でしたとかだったら上弦ズ優しくて笑う


    玉壺さんはなんか「ヒョッヒョ〜ごきげんよう〜」とかやってたっぽいし

    儂は泣いてるだけだし

    童磨殿はなんか可愛い女の子に会えたので上機嫌でベラベラ喋ってるのを猗窩座殿が「この人が困ってるだろ」と言わんばかりに殴り飛ばして

    鳴女ちゃんは元の場所に戻してくれたという

  • 121二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 18:08:37

    >>118

    新年早々無惨様が夢に出たやちよさんお労しや…

  • 122二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 20:12:12

    マギレポ時空にも兄上がいたらまどか先輩の奇行に常に宇宙猫と化してそう

  • 123二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 20:35:33

    >>122

    いろはちゃんと同じ苦労人枠と思いきや、そっちも偶におかしい事言うから振り回されそう


    いろはちゃん「星5の黒死牟さんが引けない…どうして…!」

    まどか先輩「いつまでも待ってます、鬼滅コラボ」

    兄上「……?????」

  • 124二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 02:24:46

    やちよさんがさなをみかづき荘の座敷わらしって言った直後にフェリシアが悪気なく「じゃあ黒死牟も鬼だし妖怪コンビだな!」って言って何とも言えない静寂に包まれそう

  • 125二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 02:37:11

    兄上天然ボケだから
    確かに・・・
    とか言ってしまいそうな感じがある

  • 126二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 10:32:19

    保守の時間です兄上

  • 127二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 21:01:08

    黒死牟が神浜市で魔女を狩る際、いつも一人という訳ではない。
    その日は黒死牟以外にもう一人、チームみかづき荘の魔法少女が同行していた。
    特別大きな理由があったのではなく、偶然が積み重なり共に魔女退治へ赴いたのは二葉さな。
    電波塔でのうわさの件を経てみかづき荘の新たなメンバーとなった少女である。

    ざあざあと雨が降る中、問題無く魔女を仕留め終えた二名。
    結界が消滅し、後は帰るだけとなった時の事だ。
    どこからか小さな声が聞こえた。
    結界内に紛れ込んだ一般人ではない、さなには聞き覚えがある。
    声のする方へ近付くと、そこには雨粒に打たれ変色したダンボールの箱が一つ。
    中には体を丸める子猫の姿があった。

    「あっ…」

    寒さで震える子猫を思わず抱きしめ、箱の中に紙切れがあるのに気付く。
    拾ってみるとマジックペンでこう書かれていた。

    『我が家では飼えなくなりました。どうか拾ってあげてください』

    諸々の理由で飼えなくなった、だから捨てる。
    珍しい事でも無いし、飼い主だった者にも事情があるのだろうがさなは悲し気に顔を伏せる。
    腕の中でにゃあと鳴く小さな命、元々猫が好きなのもあってか放置は出来ない。
    振り返り、沈黙を保ったままの同行者へと遠慮がちに口を開く。

  • 128二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 21:01:42

    「あ、あの…この子……」

    連れて帰っても良いかと聞くだけなのに、言葉が上手く続かない。
    いろは以外の住人とも打ち解けつつあるさなだが、黒死牟の事だけはまだ苦手としている。
    威圧感のある年上の男性というのは、どうしても義父を思い出し萎縮してしまう。
    尤も義父と違って心無い言葉や態度を向けられた事は一度も無いし、話しかければ普通の対応をしてくれる。
    魔法少女以外で自分を視認できる唯一の男性、それが鬼という存在だからかはたまた別の理由があるのかは不明なれど、決別した二葉家の人間とは大違いの相手だ。
    そう分かってはいても黒死牟へはおどおどした態度となる。
    そんな自分が嫌になり顔が歪みかけた時、向こうから反応があった。

    「好きにしろ……」
    「は、はい…!」

    捨てろとは言われなかったのに安堵し、思わず子猫を撫でる。
    心地良いのか、子猫はさなと黒死牟を見てにゃあと小さな鳴き声を発した。

    帰宅後、やちよに話したところ案の定驚いた顔をされた。
    とはいえ問答無用で追い出す気は無いようで、明日引き取り手がいないかツテを当たってみるとのこと。

    「ちっちぇなー」
    「喉鳴らしてる…可愛いなぁ…」

    いろはとフェリシアもあっという間に気に入り、その日は子猫に構いっぱなしだった。

  • 129二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 21:02:18

    翌日、各々用事があって出かけた中、留守を任されたのは黒死牟とさなの二人。
    朝食を共にした鶴乃も今日は忙しいと、名残惜しそうに子猫を見ながら言っていた。
    どうやら彼女も子猫の可愛さにすっかり魅了されたようだ。

    そんな訳でみかづき荘に残った二人だが、お互いに干渉し合うといった事はしない。
    さなは自分から積極的に黒死牟へ話しかけるだけの度胸は無く、黒死牟もまた饒舌とは言い難い男だ。
    従って、それぞれ本を読んだり何なりで時間を潰す事になる。
    折角だから子猫と遊んで過ごそうと、リビングにいる小さな姿を呼ぼうとした。

    その筈だったのだが、予想外の光景があった。

    「……」

    リビングのテーブルの前で正座し、囲碁の本を読み耽る黒死牟。
    それはいい。
    注目すべきは膝の上、小さな毛玉が乗っかっている。
    夢でも見ているのか、魔女に幻覚でも見せられているのかと目を擦っても、さなの瞳に映るのは同じ光景。
    膝の上に子猫を乗せている黒死牟だった。

    「え?……えっ!?」

    思わず驚きの声が上がるのも仕方のないことだろう。
    文字通り鬼の強さを持つ寡黙な男と子猫、大変失礼ながら予想だにしない組み合わせなのだから。
    声に反応したらしく、六眼がさなを捉える。

  • 130二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 21:03:19

    「あっ、す、すみません…!えっと、その子…」
    「執拗にここを離れん……面倒故に放置している……」

    曰く、何が面白いのか自分の膝に乗って来た猫を始めはどかそうとした。
    しかし何度床に下ろしてもすぐにまた膝へ乗っかって来るので、その内面倒になり放って置く事に。
    余程気に入ったらしく今は膝の上で眠りこけている。
    何かしら邪魔をされる事も無いので、ならこちらから構うのも手間とこのままにしている。

    「そう、なんですね…」

    気持ち良さそうにしている子猫を見ると、釣られてさなも笑顔になる。

    「黒死牟さんの事が、好きになったんですね」
    「好かれる理由など……見当たらんが……」

    怪訝そうに黒死牟が尋ねる。
    子猫に危害を加えた訳ではなくとも、愛でた覚えもない。
    好かれるというならば最初に拾ったさなや、昨日から子猫と遊んでいた他の住人達の方だろう。
    一体何故自分を気に入ったのか、獣の思考はとんと理解ができない。
    むしろ異形の外見を警戒し、威圧してくる方がまだ分かる。

    「そんなこと無いと、思います…」

    自分自身を卑下するような言葉を、やんわりと否定する。

  • 131二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 21:04:02

    「最初に見付けた時から、その子が黒死牟さんを恐がってる様子はありませんでした…。きっと、悪い人じゃないって分かってたはずです…」
    「……」
    「それに、黒死牟さんはいろはさん達からも信頼されてて…とっても凄い人、ですから…。私なんかと違って…」

    ぽろっと口を突いて出る、己を卑下する言葉。
    今黒死牟が言ったのを否定したばかりだと言うのに、今度は自分が口にしてしまった。
    自己肯定感の極端な低さを理解しつつも、実際その通りだろうとさなは思う。

    「勘違いをしているようだが……」

    が、返って来たのは予期せぬ言葉。

    「この家に……お前を低く見る者はいない……」
    「えっ…?」

    別に励まそうだとかそんな意図があっての発言ではない。
    ただ自分が見て感じた事をそのまま伝えただけ。
    深い理由など有りはしない。

    実際、黒死牟の目から見た二葉さなという少女は別段非難されるような人間ではない。
    家事は率先して手伝うし、みかづき荘のルールにもきちんと従う。
    戦闘でも足を引っ張るような事は無く、立ち回りもそう悪いものでは無い。
    普段の生活でも魔女やウワサとの戦闘でも、やるべき事をやっている。
    自分でさえこう思うのだから、当然いろは達がさなを悪く見るのは有り得ない。

  • 132二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 21:04:35

    というこちらから見た印象を伝えると、露骨に慌て出した。

    「え、えっと…あの…ご、ごめんなさい私…びっくりしちゃって…でも、その、褒めて貰えたのが嬉しくて…」

    称賛したつもりはないが、さなにとっては今の内容が喜ぶに値するものだったらしい。
    褒められること自体に慣れておらず、頬を染めしどろもどろになっている。
    みかづき荘に来る前の彼女が家や学校でどのように扱われていたかを思えば、納得のいく反応だ。

    「あの、黒死牟さん。ありがとうございます…」

    控えめだがはっきりと、礼を口にする。
    向けられる表情は、不安や戸惑いとは無縁の柔らかな笑み。
    いろは達ならまだしも、自分へこのような顔を向けたのは初めてかと、そんな事を黒死牟は思った。

    その日の夜、やちよから子猫を引き取ってくれる者が見つかったと報告があった。
    ペットOKのマンションに住んでおり、人間性も信頼の置ける人物。
    それなら安心だと胸を撫でおろしつつ、寂し気に瞳を潤わせるさなをいろは達が励ます。
    そんな夜だった。

  • 133二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 21:06:06

    ――――

    「やだ…いやだ……」

    震えるいろはの声が黒死牟の意識を引き戻す。
    丁度一週間前の記憶を何故今思い出したのだろうか。
    その理由を呑気に考えているような場面ではない。

    みふゆからの招待で記憶ミュージアムを訪れたいろは達。
    そこでみふゆと、マギウスの里見灯花から知らされた魔法少女の真実が彼女達の心に大きな波紋を呼んだ。

    事態はより悪い方へと転がり出す。
    真実を知って尚もマギウスの翼への加入を蹴ったのはいろはのみ。
    後の三人はこちらを離れ、灯花の話す魔法少女解放に賛同した。

    「環さん……」

    険しい顔でやちよが小さく呟く。
    みふゆの来訪が原因で、また以前のように冷たい態度を取るようになったが、今の状況にはやはり思う所がある様子。
    それでもいろはと協力するという選択肢を取る気は無いのだろう。

    「……」

    無言のままにこの場に居る者達の顔を見やる。
    今にも泣き出しそうないろは、表面上は冷静を装っているやちよ。
    魔法少女解放に反対する者達を心底理解できないと言った顔の灯花、複雑な心境を露わにしたみふゆ。

  • 134二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 21:07:10

    そして、焦点の定まらない虚ろな瞳で立ち尽くす三人。
    鶴乃、フェリシア、さな。

    こちらを裏切った事に関して強く思う事はない。
    敵が数枚上手であり、彼女達の心に付け込まれる隙があった。
    それだけの話でしかない。

    「……」

    それでも、ほんの一瞬だけ奇妙な感覚を覚えた。
    小指の先にも満たない棘で突かれたような、痛みとも呼べぬなにか。
    子猫を膝に乗せた自分の言葉で喜んでいた時とは大違いの、今のさなを見て感じたもの。
    それの正体を考えようとし、されどすぐにどうでもいいかと思い直す。

    「黒死牟さん」

    奇妙な感覚への思考は、みふゆから掛けられた声で完全に打ち切られた。
    視線で問い掛けると、予想通りの言葉が返って来る。

    「今からでも、ワタシ達に協力していただけませんか?魔法少女全員の事を考えろとは言いません。
     ですが、やっちゃんやいろはさん達を助けられるチャンスなんです。どうか…マギウスの翼に力を貸して頂けないでしょうか?」

    言い終わると同時に、いろはとやちよから痛いくらいに視線をぶつけられた。
    みふゆ達に付く気なら許さないという怒りか、あなたまで行かないでという懇願か。
    どちらだろうといらない心配だが。

    「知ったことか……」

    その一言で以て切り捨てると、黒死牟は己が愛刀を抜き放った。

  • 135二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 00:00:10

    このレスは削除されています

  • 136二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 01:10:30

    プレイした当時はしんどかった六章にいろはの味方で兄上が存在すると考えると心強い

  • 137二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 11:00:04

    保守

  • 138二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 19:45:30

    兄上はマギウスの三人とは相性悪いよね絶対

  • 139二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 20:18:07

    >>138

    マギウスからしたら魔法少女でもないのに関わって邪魔するし、やたらと強いから対処にも手間取るしで目障りな男

    兄上からしたら魔法少女の解放とか別に興味無いし、いろは達が止めなかったら普通に殺してる程度には鬱陶しい連中

  • 140二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 22:27:21

    太陽が沈み月へと交代し約二時間が経過した頃だろうか。
    街の外れにある廃墟を訪れる者が現れたのは。

    「……」

    割れた窓から差し込んだ月光が照らすのは、三対六つの異形の貌。
    静まり返った屋内を奥へ奥へと進み、やがて目的の場所で足を止めた。
    僅かに吹き込む隙間風が髪をを揺らす。
    壁に寄り掛かり、黒死牟は一言も発さず待ちの姿勢に入る。

    嘗てはそれなりに繁盛していた旅館も経営難に陥ってからはあっという間だ。
    風情のあった内装は見るも無残な有様と化し、虫やネズミの住処へと変貌。
    壁には非行に走った少年少女の仕業か、落書きまでされている。
    そのような場所へ黒死牟が来た理由は一つ、ある人物とここで会う約束があるから。

    『彼女』と一対一で会う事に周りの反応は様々だった。
    眉をひそめる者、不安を顔に出す者、遠回しに反対を伝える者。
    そして、大丈夫だと臆さず言う者。

    黒死牟との邂逅を望んだのは向こうからだ。
    だが『彼女』を慕う者達はきっと、猛反対しただろう事は想像に難くない。
    何の用があってかは不明だが、強く断る理由も無く承諾した。
    仮にこちらを害する目的があったとしても、その時は捻じ伏せるまで。

  • 141二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 22:29:28

    数分後、黒死牟の耳が何者かの足音を拾った。
    コツコツと一定の間隔で響くそれは、間違いなくこちらへ近付いている。
    やがて足音の主の姿が暗闇の中に薄っすらと浮かび、黒死牟の前で止まった。

    「ごめんなさい、待たせたかしらぁ?」
    「いや……私もつい先刻……着いたばかりだ……」

    淡々とした言葉に対し、紅晴結菜は薄っすらと笑みを浮かべた。

    「一人か……」
    「ええ、そういう約束だったでしょぉ?」

    確かにその通りではある。
    結菜が望んだのは邪魔の入らいない場所で、黒死牟と二人で会うこと。
    であれば、彼女が同行者を連れて来ないのは当たり前の話。
    だがまさか本当に一人で来るとは黒死牟も思っていなかった。
    護衛として煌里ひかるくらいは連れて来ても不思議はないものだったが。

    「ひかるにはかなり反対されたわぁ。どうしても行く気なら自分も付いて行くって聞かなくてねぇ」

    困ったものだと言う割に、本気で疎ましくは思っていない表情。
    純粋に自分を慕ってくれる事への嬉しさと、心配をかけた事への申し訳なさがあった。

    「何の目的で……私を呼んだ……?」
    「少しあなたと話をしたいと思っただけよぉ」
    「あくまで……対話を望むだけか……」
    「そうよぉ?もしあなたを潰すつもりなら、こんな時間に私だけで来ないわぁ」

    魔法少女としての実力、二木市を纏めるカリスマ、キモチの争奪戦で幾度も神浜を苦しめた頭脳。
    プロミストブラッドのリーダーとして、結菜は申し分ない力を持っている。

  • 142二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 22:30:23

    そんな結菜からしても一対一で、それも夜という時間帯に黒死牟と戦うのが如何に無謀かは理解していた。
    固有の能力であったり頭脳面で厄介な魔法少女は数多くいる。
    だが単純な力という点で最も危険視すべきは誰かと聞かれたら、結菜は迷わず黒死牟と答える。
    結菜だけではなく、時女一族やネオマギウスの魔法少女達も同様の答えを返すだろう。
    黒死牟は強い。太陽という弱点を加味しても、要警戒する程の存在だ。

    そのような相手に一人で会いに行くと言ったのだ。
    プロミストブラッドの者達はさぞや泡を食ったに違いない。

    「まぁ、あんまり時間を取らせはしないわぁ。一つだけ答えて欲しいの」
    「……」

    無言で続きを促すと、了解したとばかりに続きを口にした。

    「あなたはこの先も環さんの味方でいるのか、それを聞きたくってねぇ」
    「…………」

    沈黙の理由は質問の意図を計りかねたが故。
    結菜が神浜市の魔法少女で唯一いろはだけは信用している。
    それは知っているが、だからと言って何故そのような事を聞くのだろうか。
    疑問を頭に浮かべても、結菜は答えようとはしない。
    六眼から視線を逸らさず、じっと黒死牟からの返答を待っている。

    沈黙が続き、ややあって先に言葉を発したのは黒死牟の方。

    「敵に回る理由が……無い限りはな……」

    偽りではなく本心だ。
    別に自分からいろはと敵対する理由も無く、いろはが自分の敵となる様子も全く見られない。
    ならば今の関係が続いたとしても、何か問題があるわけでもない。

  • 143二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 22:38:24

    「……そう。なら良いわぁ。時間を取らせたわねぇ」

    少しだけ考え込む素振りを見せたものの、今の答えで取り敢えず納得したらしい。
    益々以て黒死牟には訳が分からない。

    「お前は……そんなものを聞く為だけに……私と会おうと思ったのか……」
    「私にとっては大事なことよぉ」

    結菜から見て、いろはの支えになる仲間は多い。
    その中にあって黒死牟という男は異質だ。
    いろはと共に行動し、彼女の敵となる者へは容赦なく剣を向ける。
    しかし七海やちよ達と違い、いろはに全面の信頼を置いている訳でも、心の支えになる訳でもない。
    だから直接言葉を交わし、己の目で見極めてみようと思い至ったのである。

    だから「そんなもの」と扱われるのは心外だと言おうとした時、足音が聞こえた。
    いや、足音だけではない。
    ガヤガヤと騒がしい話し声に、時折下品な笑い声が混じっている。

    「ほんとに幽霊とか出んのかよー?ガセネタじゃね?」
    「つーかボッロ…。臭ぇし、浮浪者のジジイがクソでもしたんか?」
    「んだよ、肝試ししてぇっつったのお前だろ」

    声からして若い男が二人。
    遊び感覚でこの場所を訪れたらしい。
    少し面倒な事になったと考える結菜、その姿を若者たち持っていた懐中電灯が照らした。

  • 144二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 22:39:43

    「うわっ!?…あ?女の子?」
    「お前ビビり過ぎだろ、声デケぇって」

    結菜を発見し驚くも、相手が所謂この世のものではない存在ではないと分かれば恐怖は無い。
    代わりに浮かぶのは軽薄な笑みと、値踏みするような視線。

    「君こんなとこで何してんの?肝試し?なら俺らと一緒に行かね?」
    「っていうか君幾つ?もしかして女子高生?駄目だよ~、こんな夜遅くに一人でウロついてちゃ」
    「…そうねぇ。もう帰るから、そこどいてもらえる?」
    「いやいや、一人じゃ危ないっしょ。俺らが送ってやっから」

    下心丸出しの態度に冷めた目を向けるも、相手はお構いなし。
    懐中電灯を持った男が結菜の腕を掴もうと近付き、

    「ほーら、良いからこっち来て――」

    隣に佇む六眼の異形に気付いた。

    「あ、あ、あ、ば、ばけも…」
    「う、うわあああああああああああ!!??!」
    「あっ、おまっ、置いてくなよ!ふざけんなクソ!!」

    結菜への態度はどこへやら。
    悲鳴を上げて一目散に逃げ去り、その場には二人だけが残される。

    「っく、ふふ、凄い慌てようだったわねぇ」

    機嫌良さそうに笑う結菜とは反対に、黒死牟は相も変わらずの仏頂面。
    自分の容姿の醜悪さは自覚しており、若者達の反応も当然のものだろうとは分かっている。

  • 145二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 22:45:24

    「ふぅ、そろそろ帰るわぁ。またああいう連中に絡まれたくないもの」
    「そうか……」
    「環さんによろしく言っておいてぇ。それじゃあねぇ黒死牟さん」

    そう言い残し結菜も背を向けた事で、黒死牟だけが残される。
    結菜の用が済んだのなら、自分もこれ以上留まる理由は無い。
    それに結菜の言う通り、あの若者達のような者と遭遇しても面倒だ。
    早々に立ち去るのが吉である。

    廃墟を後にしみかづき荘へ向かう最中、黒死牟は結菜の事を考える。
    以前までの、神浜への復讐に燃えていた頃とは違いどこか憑き物が落ちた印象があるのが今の結菜だ。
    結菜を変えたのがいろはだと言うのに驚きは無い。

    「……」

    黒死牟から見た環いろはという娘は太陽だ。
    近付く者を照らし、暖め、凍り付いた心を包み込む。
    いろはに救われた魔法少女は少なくなく、結菜もその一人。

    だが黒死牟は知っている。
    太陽によって救われる者もいれば、焼き尽くされ消し炭となる者もいることを。
    黒死牟にとっての太陽とは決して祝福を齎す存在ではなかった。
    伸ばし続けた手を焼かれ、強く焦がれた心を焼かれ、後には何一つとして残させはしない。
    継国巌勝が継国縁壱という太陽に焼かれた結果が、黒死牟という鬼の誕生へ繋がった。

  • 146二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 22:47:40

    では黒死牟が環いろはという太陽と出会った事には、果たしてどのような意味があるのか。
    いろはとの出会いが何らかの変化を自分に齎したのか。
    考えたところで答えは出ない。

    「……」

    或いは、こんな事を考えている時点で何かが変わっているのだろうか。
    結局納得のいく答えの出ないままみかづき荘に到着し、すっかり見慣れた顔が桜色の髪を揺らしながら「おかえりなさい」と口にした。

    翌日、街外れの廃旅館に六眼の化け物が出たという噂がネットで囁かれ、事情を知る魔法少女一同から何とも言えぬ眼差しを向けられる事を黒死牟は知らない。

  • 147二次元好きの匿名さん23/01/04(水) 01:46:26

    偶に擬態して人間だった頃の顔でいると、知り合いの魔法少女に遭遇しても気付かれないとかはありそう

  • 148二次元好きの匿名さん23/01/04(水) 11:27:23

    保守はお任せください兄上

  • 149二次元好きの匿名さん23/01/04(水) 20:01:47

    >>10

    ななか経由でかこと知り合い、実家の古書房からたまに囲碁の本とかを買う兄上

  • 150二次元好きの匿名さん23/01/04(水) 23:04:01

    ワルプルギスと戦う時、あんなに巨大な相手を斬った事はないからちょっとワクワクしてそう

  • 151二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 00:02:52

    >>150

    一緒に見たアニメから取り入れた新しい月の呼吸の型を試しそうな兄上…

    月の呼吸 弐拾壱之型とか

    イタリア語とかラテン語とかドイツ語とかを取り入れたオシャレな呼吸の名前を楽しそうに考える兄上

  • 152二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 00:43:49

    >>151

    マミ「まぁ!黒死牟さんの技名とっても素敵ですね!センス抜群って感じで…」

    黒死牟「お前の技の名も……見事なものだ……参考になる……」


    杏子「おい、マミはともかくあの侍の旦那は止めなくて良いのかよ?」

    いろは「えぇっと…黒死牟さんも楽しそうだし、邪魔するのは気が引けるというか…」

    さやか「前に合った時と随分技名のセンス変わったなとは思ったけど、マミさんの影響だったとは…」

    まどか「ティヒヒ、マミさんとっても嬉しそうだね。やっぱり黒死牟さんは凄いなぁ」

    ほむら「(分からない…。黒死牟さん、怖い人だと思ったら色んな人に慕われてて、でも天然っぽい所もあって…どういう人なの…?)」

  • 153二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 11:53:27

    保守

  • 154二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 13:09:58

    >>152

    月の呼吸の弐拾番台の型の名前はマミさんと一緒に考えてそうな兄上

  • 155二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 18:38:51

    このレスは削除されています

  • 156二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 20:44:47

    >>147見て思い付いた話


    (最悪…)


    今日はとことんロクでもない日だと、水波レナはつくづくそう思った。


    まず朝から土砂降り。

    これに関しては前日の天気予報で知っていたし、一日の大半を学校内で過ごすのだから許容できる。

    水溜まりが跳ねてスカートが濡れるのは非常にムカつくが。


    次に放課後は補習で居残り。

    これに関しても自業自得なので、苛立ちのぶつけ所が不明。

    なるべく早く終わらせたいとは思うが、いつ終わるのかはレナ自身にも分からない。

    ももことかえでは行きつけのゲームセンターに先に向かっている。

    待ってるくらいはしても良いだろうと思う反面、長時間待たせるのは流石に悪いという気持ちもあって余計にむしゃくしゃした。


    最後、これが一番だ。

    ウザったいプリントを提出し、ももこ達の待つゲーセンに向かう途中の事だ。

    肩から下げていた学校指定のバッグが、偶然通行人の腕にぶつかった。

    勿論わざとではない。

    だから一言謝罪をすれば済む。普通はそう。

    運が悪い事に、相手は如何にもガラの悪い男。それも複数。

    高校生くらいの年齢だろうか。髪を染め、中にはピアスを付けた者もいる。

    バッグをぶつけられた直後は不機嫌そうに顔を顰めていたというのに、相手が少女だと分かると途端にニヤつき始めた。

  • 157二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 20:45:30

    (ああもう!ほんっと最悪!)

    ナンパ、と言うには下卑た内容の言葉をレナに投げかける少年達。
    相手が一人ならともかく、少年達はレナを囲むようにして逃げ道を塞いでいた。
    彼らの中では既にレナを「持ち帰る」つもりらしい。
    チラチラと様子を窺う通行人はいるものの、関わり合いになって余計な怪我をするのは御免と足早に去っていく。
    やがて痺れを切らした一人が、レナの腕を掴んで強引に引き寄せた。

    「ちょ、何してんのよ!気持ち悪い!」

    傘を落としたレナの抗議などどこ吹く風。
    周りの少年は口笛を吹き囃し立てる。
    魔女に殺されかけた時とは別の恐怖と嫌悪感がレナの全身を駆け巡る。
    魔法少女に変身すればこんな連中簡単に蹴散らせるが、そのような場面を誰に見られるかも分からないのに出来る筈がない。

    (何なのよこいつら…!ももこもかえでも何してんのよ…!)

    数少ない友人に助けを求めても、そう都合良く現れはしない。
    目尻に涙を浮かべ出したレナを揶揄いながら、腕を掴んだ少年は目当ての場所に連れて行こうとし、

    唐突に襟首を掴まれ投げ飛ばされた。

    濡れたアスファルトに叩きつけられ、ぐえっと潰れたような声を出す少年。
    いきなりの事に理解が追い付かない。
    それは他の少年達も、そしてレナも同じのようだ。
    皆一様に視線を同じ場所へと集めている。

  • 158二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 20:46:20

    「……」

    どこからか現れ、少年を投げ飛ばした男へと。

    黒い傘を差した長身の男だった。
    腰まで届く髪を結い、地面に倒れた少年をつまらなそうに見下ろしている。

    こいつが自分にふざけた真似をした。
    ようやく理解が追い付いた少年の顔が怒りで赤くなる。
    仲間達も同様に男を睨み、口々に罵声を飛ばす。

    男はそれら全てを冷めた目で見まわし、軽く睨みつけた。
    すると、あれだけ騒がしかった少年達は電池の切れた玩具のように静まり返ったではないか。
    蛇に睨まれた蛙という言葉が相応しく、青褪めた顔で凍り付いている。

    「消えろ……」

    短くそれだけを男が口にした途端、蜘蛛の子を散らしたように少年達は逃げ出した。
    それを至極どうでも良さそうに見ると、男は地面に落ちた傘を拾う。
    水色の女の子らしい傘。
    渡す相手は勿論、未だ固まったままのレナだ。

    「…あ、えっと……」

    差し出された傘をぎこちなく受け取る。
    状況に付いていけなかったが、自分はこの人物に助けられたらしい。
    威圧感のある、されど整った顔立ちの男。
    コミュニケーション能力がお世辞にも良いとは言えないレナにとって、初対面の男性との会話は礼を言うだけでも苦戦する。

  • 159二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 20:47:40

    「あ、あの、ありが」
    「見知った顔を見かけ……手が出ただけだ……礼は必要ない……」
    「は…?」

    無愛想に言われ固まる。
    というか見知った顔とはどういう意味だ。
    この男とは初対面のはず。
    脳内にクエスチョンマークが大量に浮かび上がった時、レナに声を掛ける者が現れた。

    「おーいレナ、こんなとこにいたのか」
    「あんまり遅いから心配しちゃったよぉ」

    聞き慣れた二つの声。
    ももことかえでがこちらにやって来るのが見える。
    ゲーセンで待ってはいたものの、一向にレナが現れない為迎えに来たらしい。
    と、そこでレナの傍にいる男へ二人も気付く。
    見知らぬ人物の存在に首を傾げるかえで、一方のももこは億する事無く平然と近付き話しかけた。

    「何だ、黒死牟さんも一緒だったのか?」
    「偶然ここで会った……共に行動していたのではない……」

    聞き覚えのある名前が、ももこの口から出た。

    「も、ももこ?今その人を何て…」
    「ん?何って…黒死牟さんだろ?」

    何でも無いようにその名を口にする。
    レナも、ももこと一緒に来たかえでも呆けた表情で男を見つめ、

  • 160二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 20:49:13

    「はぁ!?」
    「ふゆぅ…」

    片や驚愕し、もう片方はその声量に驚き身を竦ませた。

    ――――

    「あっはっはっは!いやー悪い、そういや言ってなかったっけ」
    「笑い過ぎよももこのバカ!驚くに決まってんでしょ!ってかもっと早くに言っときなさいよ!」

    愉快そうに笑うももこへ、顔を赤くしたレナが食って掛かる。
    あの後、雨降る屋外から調整屋へと場所を変えた四人。
    男の正体を知っていたももことみたまから説明を受け、今に至る。

    「レナちゃん達は黒死牟さんのこっちの顔を見るのは初めてだったわねぇ」
    「う、うん。だから最初はレナちゃんが知らない男の人と一緒で、ビックリしちゃった…」

    言いながら件の男…黒死牟を見るかえで。
    普段の着物姿とは違い黒一色のスーツを着こなしている。
    長身で体格もがっちりとしており、まるでボディーガードのような印象を受けた。
    何より一番の驚きは顔だろう。
    貼り付いた六眼は存在せず、瞳に浮かび上がる十二鬼月の証もない。
    唯一、額と顎の痣だけは変わらずあるが。

    「擬態…だったかしら?」
    「ああ……人間に見せかけているに過ぎん……肉体は鬼のままだ……」

    黒死牟ら上弦の鬼は顔を人間のように変化させる事ができる。
    嘗て遊郭を狩り場にしていた上弦の陸の片割れも人間の遊女に擬態し、数多くの命を喰ってきた。

  • 161二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 20:51:01

    今日は朝から雨が続き太陽は完全に隠れている。
    この大雨は深夜まで止む事は無いらしく、これ幸いと丁度用があった調整屋に出かけたのだ。

    「アタシがまだみかづき荘にいた時にも何回かその顔になった事があったなぁ」
    「懐かしいわねぇ。やちよさんと二人きりの時でいる時その顔になって…」
    「あー…あの時は事情を知らないみふゆさんがパニックになってたっけ…」
    「やっちゃんが家に男の人を連れ込んだー、って大騒ぎだったわね」

    当時を思い出してかももこは引き攣った顔に、みたまは楽しそうに笑う。
    黒死牟もその時を思い出してか少しばかり疲れたような表情を作り、立ち上がった。

    「私はもう行く……」
    「毎度どうも~」

    バイバイの形で手を振るみたまに背を向け、黒死牟は外へ出た。
    調整屋での用が済んだ以上、後はみかづき荘に帰るだけ。

    とっくに見慣れた道を進む途中、ふと水溜まりに映った己の顔を見る。
    日輪への執着で痣を発現させ、しかしそれ以上の力を得るには時間が足りないと知った時の絶望。
    あの時の自分に鬼という選択肢を与えた無惨は、比喩でも何でもなく救世主に思えた。
    当時の鬼殺隊の長であった産屋敷家の者の首を手土産に人間を捨て、超常の力を手に入れどうなったか。
    結局自分は鬼になっても縁壱を超えられず、そればかりか侍としての姿すら自分で捨ててしまう始末。
    つくづく己が無意味に生きて来たと知り、自嘲する気にもなれない。

    余計な考えを振り払うかのように、急ぎ足で帰って行った。

  • 162二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 20:53:38

    ――――

    「悪いね、急に押し掛けちゃって」
    「それは別に良いのだけれど…今日はどうしたの?」

    ももこ・レナ・かえでの三人がみかづき荘を訪れたのは翌日の事だった。
    紅茶を出しながら、やちよは不思議そうに尋ねる。
    来ること自体は構わないしいつでも歓迎するが、今日は遊びに来たとかではないらしい。
    何でも黒死牟に用があるとのことだが、本人に尋ねてみても何の用事かは見当が付かないと言う。

    「まぁ正確に言うと、黒死牟さんに用があるのはアタシじゃないんだけどさ」

    その言葉に首を傾げるやちよへ苦笑いを向けつつ、チラと隣を見る。
    視線が向かう先には、みかづき荘に来てからどうにも居心地悪そうにしているレナの姿。
    黒死牟に用があるのはレナということか。
    不思議な組み合わせにやちよの疑問は益々大きくなるばかり。

    「ほらレナちゃん。黙ってるだけじゃ伝わらないよ。こういう時は無口になるのズルいと思うな」
    「う、うるさいわね…。そんなに急かさなくても分かってるわよ…」

    レナ相手には意外とズバズバ言うのがかえでだ。
    言っている事は正論なので、レナの普段のように強気な姿勢で言い返せない。
    やがて覚悟を決めたのかキッと睨むかのように黒死牟を見据え、対する黒死牟は無言のままに言葉を待つ。

    「…き、昨日のこと!」
    「……?」
    「あ、あの連中から助けてくれたこと!その、お礼言ってなかったから!あ…ありがとう、ございます…」

    面と向かって素直に礼を口にするのは恥ずかしいのか、最後の方は小さくなる。
    それでも正面に居る黒死牟にはちゃんと聞こえていた。

  • 163二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 20:55:01

    和服じゃなくちゃっかりスーツ着こなしてるの面白いわ兄上

  • 164二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 20:55:20

    「礼は不要と……言った筈だが……」
    「なっ…そ、そこは素直に受け取りなさいよ!折角レナがこうして言いに来てあげたんだから…!」
    「ふゆぅ…。レナちゃんそういう態度は良くないよ…。昨日黒死牟さんにお礼ちゃんと言って無いの気にして、今日は朝からイライラしてたのに…」
    「かっ、かえで!適当な事言うんじゃないわよ!あーもう!とにかく用は済んだから!レナもう帰る!」

    怒りと羞恥で真っ赤になり、どたどたとみかづき荘を飛び出して行く。
    ももこ達が止める間も無い一瞬の事だった。

    「おいレナ!…ったく。悪い二人とも、レナを追いかけるからアタシらも行くよ。あ、紅茶ご馳走様!」
    「ご、ごめんなさい…!レナちゃんも本当は凄く感謝してると思うから…。私もごちそうさまでした!」

    そう言い残すとレナを追いかけみかづき荘を後にする。
    何とも騒がしい一時だったと黒死牟が思っていると、すぐ傍からくすくすという声。
    見るとやちよが頬を緩め笑っていた。

    「ごめんなさい。ただ、何だか嬉しくてつい、ね」
    「嬉しい……?」
    「ええ。黒死牟さんが困っている娘を助けて感謝されたんだもの」

    一体それの何が嬉しいのか。
    訳が分からず眉を顰める黒死牟とは反対に、やちよは笑みを浮かべたまま。
    対照的な表情の二人がいる居間へ、ただいまの声と共に住人が返って来た。

    「あの、今そこでレナちゃん達に会ったんですけど…。何かありましたか?」

    ちょこんと可愛らしく首を傾げるいろはに、やちよは上機嫌で件の出来事を話し始めるのだった。

  • 165二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 20:57:26

    >>163

    現パロで無惨様の秘書やってるし、スーツ姿が似合うようね

  • 166二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 21:09:12

    >>165

    傘を忘れたういを迎えに行く擬態したスーツ兄上の図が浮かんだ


    モブ「ういちゃんのお兄さんかっこいい~」

    うい「えへへ…(満更でもない」

    いろは「…黒死牟さん、わたしだってういのお姉ちゃんですからね?」

    黒死牟「何故……対抗意識を燃やす……」

  • 167二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 23:11:59

    >>166

    ういにお兄ちゃんって呼ばれるけど、縁壱に兄上と呼ばれてたのを思い出しまた勝手に曇る

  • 168二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 00:18:54

    >>167

    うい「あっ、ごめんなさい…。嫌、だったよね……(ションボリ」

    いろは「黒死牟さん?ういが悲しんでるんですけど、どういうことですか?」

    灯花「呼び方一つであんなに嫌がるなんてお侍さんは大人気ないにゃー」

    ねむ「そうだね、僕も今のは大人がすべき態度ではないと思うよ」

    桜子|ういを泣かせるなら容赦しない|


    黒死牟「………………好きに呼べ……」

    うい「!!うん!お兄ちゃん♪」

  • 169二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 01:04:09

    このレスは削除されています

  • 170二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 01:44:37

    兄上は魔法に興味持ちそうだけど、逆に呼吸に興味持つ魔法少女はいるかな

  • 171二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 12:02:05

    保守

  • 172二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 13:58:03

    衣装ストーリーでいろはから水着の感想を聞かれるけど露出趣味があるのかと勘違いする兄上

  • 173二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 14:50:03

    >>172

    いろは「あ、あの黒死牟さん。この水着どうでしょうか?やちよさん達は似合ってるって言ってくれたんですけど…」

    兄上「(何故ああも肌を晒す……堕姫でもあそこまででは……なかった筈だが……)」

  • 174二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 15:49:33

    >>173

    兄上は「は?何でこいつこんな格好してんの?」と思って見てるけど、あんまりじっと見つめるから変な勘違いされてフェリシアに「黒死牟ってそんなにいろはの水着が気に入ったのか」みたいなの言われる

  • 175二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 15:53:22

    >>173

    価値観の相違が……現代人は痴女ばかりになるな

  • 176二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 15:58:04

    公式でえろはちゃん呼ばわりされたから仕方ない

  • 177二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 21:34:20

    毎度思うけど瞳に漢数字ってめちゃくちゃインパクトあるよね
    初対面の時絶対突っ込まれそう

  • 178二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 22:38:10

    >>173>>174から膨らませた話

    他のレスのネタも拾ってます


    「どう、ですか…?」

    「……」


    どうも何も無いだろうと、黒死牟は思った。

    胸と秘部を桃色の薄い布で隠しただけの、非常に心許ない恰好。

    脚や腹部を大胆に露出させ、もじもじしながら感想を聞くいろはの姿がそこにあった。


    「……」


    居間に下りれば何やら姦しい声がやいのやいのと聞こえたので見てみると、上記のようにあられもない姿のいろはがいた。

    鶴乃が折角だから黒死牟の感想も聞かせて欲しいと言い、こうしていろはと対面している。

    だが感想も何も、一体何故そんな異様に肌を晒した格好なのか。

    いろはは健全な家庭で育った少女、花売りなどではないだろうに。

    上弦の陸の片割れの女とて、もう少しマシな恰好だったはず。

    益々以て訳が分からない。


    尤も、いろはが着ているのはただの水着。

    今度みかづき荘の皆と海水浴に行くので、その時に着る水着が変ではないか見てもらっていただけ。

    人数合わせで誘われた宝崎の中学時代とは違い、大切な友人達との思い出作りだ。

    いろはなりに気合を入れている。


    「……」

    「あ、あの…」


    しかし現代の少女の水着の感想を、大正時代で命を落とした男に聞くのも酷な話ではあるが。

    疑問は尽きず、さりとて自分で解決もできない。

    結果として無言のまま、六眼でじっと水着姿のいろはを見つめる構図が出来ていた。

  • 179二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 22:41:02

    「うぅ…」

    鬼とはいえ相手は異性、普段着とは違って肌を見せた姿を見られ続けるのには羞恥が生まれる。
    白い頬がカッカと赤くなり始めた時、傍らで様子を眺めていたフェリシアがこんな事を言った。

    「黒死牟のやつ、そんなにいろはの水着が気に入ったのか?」
    「ふぇっ!?」
    「……は?」

    何を言っているのか。
    いろはに向けていた目をフェリシアの方へと移す。
    だが直接疑問をぶつけるより先に、口を開く者が一人。

    「…流石にそれはどうかと思うわ、黒死牟さん」
    「やちよめっちゃ機嫌悪くなってる…」
    「あ、あの、落ち着いた方が…」

    隣にいた鶴乃とさなが軽く引いているのを無視し、不機嫌を露わに言うやちよ。
    この後、結局黒死牟にこれは水着というものだと説明し感想云々はお流れとなった。

    ――――

    「――…ってことが前にあってさー」
    「そうなんだぁ」

    ソファに並んで談笑するのはフェリシアとうい。
    会話の内容はういが住む前のみかづき荘での様々な出来事。
    その内の一つとして、いろはの水着に関してのエピソードを話していたのだった。

  • 180二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 22:41:54

    「そ、そんな事もあったね」

    近くでは会話を聞いていたいろはが、恥ずかしそうに目を泳がせている。
    姉の様子に気付かず、ういは顔を綻ばせ言う。

    「海水浴かぁ…良いなぁ…」

    長い入院生活に加え、少し前までイヴに囚われていたのだ。
    皆でどこかに遊びに行くというのには憧れがある。
    妹が羨ましがっているなら、叶えない訳がない。
    優しく微笑みいろはが言う。

    「なら今度はういも一緒に海水浴に行こうね」
    「うん!…あ、でも……」

    姉からの誘いに満面の笑みで返すも、不意に表情に翳りが差す。
    チラと見るのはこちらの会話に加わる事無く、読書に勤しむ黒死牟。
    会話に参加はしていなくとも内容自体は耳に入って来る。
    ういが何を言いたいのかもすぐに分かった。

    「私に構わず……行ってくれば良い……」

    本に目を落としたまま、何でもない事のように告げる。
    鬼である黒死牟は基本的に太陽が顔を出している間は外を出歩けない。
    必然的にみかづき荘のメンバーが出かけるときは、一人残って留守番となる。
    今に始まった事ではなく、不満を覚えた事は一度もない。
    近い内に海水浴へ行くというなら、これまでと同じくみかづき荘の留守を任されるのは決定だろう。
    丁度かこから薦められた本があるので、それを読んで時間を潰せば良い。

  • 181二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 22:43:06

    「そうだよね…お兄ちゃんも一緒は無理だよね…」

    仕方のない事だとは分かっても、ういの表情は晴れない。
    つい最近呼び名を変えた彼自身は全く気にしていないが、少しばかり空気が重いものとなる。
    するとその空気を変えるような明るい声がした。

    「それだったらさ、海じゃなくてここに行くのはどう?」

    そう言いながら鶴乃が携帯の画面を見せる。
    写っているのは何かのホームページ。
    見覚えのある名前にあっと言うのはさなだ。

    「これ…最近できた屋内プール、ですよね…?」
    「お?さなも知ってたんだ。そう!ここなら黒死牟さんが一緒でも大丈夫かなって」
    「ああ、そこ…。こないだ大学で聞いたけど、結構評判良いらしいわね」

    いつの間にかやちよも会話に加わっている。
    黒死牟以外は鶴乃のスマホ画面を覗き込み、あれやこれやと話し出す。

    「デッカいウォータースライダーもあんじゃん!なぁここ行こうぜ!」
    「でもプールに行くまではどうしましょう…晴れてる中を移動するのは…」
    「それならこの日はどう?夕方から次の日の朝まで雨みたいだし」
    「えっとここは…21時までやってるね。夕方に出かけて夜までプールを満喫!って感じかな?」
    「あんまり遅く帰るとお夕飯も遅くなっちゃう…あ、ご飯食べる所もあるんだ」
    「なーなー!オレこのハンバーグ食える店に行きてぇ!」
    「そうね…じゃあ夜はここで済ませちゃいましょうか」
    「外で食べるなら黒死牟さんも食べれるように、みたまさんから貰った液体を忘れずに持って行かないと」
    「確か、みたま汁…でしたっけ…?」
    「もっとマシな名前は無かったのかしら…」

  • 182二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 22:44:38

    女三人寄れば姦しいとは言うが、それ以上の人数がいるのだから賑やかなものだ。
    何の話題で盛り上がろうと構わないが、一つ黒死牟には見過ごせない事がある。
    どうも話の流れからして自分も彼女達に同行するらしい。
    別に行きたいとは思わないし、興味もない。
    それを伝えようとした時、バッとういがこちらへ振り向いた。

    「一緒にたくさん遊ぼうね!お兄ちゃん」
    「……」

    その顔は、今から楽しみで仕方ないと言わんばかりの期待に満ちていた。
    何故かは知らないがこの娘は自分に懐いている。
    適当に遊びの相手をしてやったくらいしかしてないが、それで気に入られたのだろうか。
    前まではさん付けで呼んでいたのが、今は兄と呼ぶようになる程だ。
    懐かれている理由はともかく、ういに「自分は行かない」と言うだけなら簡単。
    が、言って彼女を悲しませるとそれはもう面倒な事態になるのは確実。
    自分への呼び方を変えた際にも、姉・親友二名・ウワサの少女と一悶着あったのだから。

    「……」

    かこから薦められた本を読む機会なら幾らでもある。
    太陽の下を歩けないのも、雨の日かつ屋内ならば問題はない。
    子供のようにつまらない意地を張ってまで、行かないと断る理由も見当たらない。

    「ああ……」
    「えへへ…約束だよ!」

    先程よりも嬉しそうにいろは達との会話に戻っていったういを見て、黒死牟は思う。
    何故自分へああも懐くのか、嬉しそうにするのか。
    それは記憶の中の弟へ抱いた疑問と似ている。

  • 183二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 22:45:09

    戦国の時代、まだ黒死牟が継国家の長男として過ごしていた幼少の頃。
    母が死んだあの夜、別れ際に自分へかけた言葉。

    『いただいたこの笛を兄上だと思い、どれだけ離れていても挫けず、日々精進いたします』

    憐みで作ってやっただけのガラクタをさも大事そうに抱き、微笑んだ姿は今でも脳裏に焼き付いている。
    何がそれ程に嬉しいのか、弟が死に数百年もの時が経過した今でもとんと理解できない。

    (いや……理解が及ばぬのは……――)

    あの笛を、死した弟の懐から落ちた笛を後生大事に持ち続けていた自分もか。
    赤い月夜の再会、枯れ木の如き老爺となって尚も全盛期と変わらぬ剣技。
    脳を掻きむしりたくなるほどの憎悪に支配されたのは確か。

    だが、弟が涙を流す姿に何を思い、二つに断たれた笛を見て流した自分自身の涙に宿る感情の意味。
    それは黒死牟自身にも、未だ答えの出せない事だった。

  • 184二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 23:22:49

    >>177

    魔法少女の衣装も個性的だから揃いも揃って奇妙な服装だって兄上が言うけど、

    六つ目と漢数字の瞳も大概だから逆にツッコまれる

  • 185二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 00:00:36

    やちよさんがマカロンソング歌った時、今の世ではこういう歌が流行なのかと勘違いしそう

  • 186二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 09:47:40

    クソ真面目に歌詞の意味をやちよさんに聞く兄上

  • 187二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 13:59:50

    >>186

    兄上「わたしはマカロンとは……どういう意味だ……何故自分を……マカロンと名乗る……?」

    やちよ「あああああああ!知らない!もう何も聞かないで!」

    いろは「こ、黒死牟さんもうやめてあげてください…」

  • 188二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 14:27:41

    兄上「ふむ………では私は…月餅だろうか…?」

  • 189二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 15:21:13

    兄上は天然っぽいところがあるからそう言うし、無自覚にやちよさんの黒歴史を掘り返す

  • 190二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 15:25:17

    多分カミハ☆マギカの歌も大真面目に歌詞考察してそう

  • 191二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 16:04:58

    レナがさゆさゆの魅力を熱弁するのを黙って聞く兄上の図が浮かんだ

  • 192二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 16:22:33

    「!!!!!!?????!!」

    解読不能のナニカを叫ぶ異形。
    鎧にも似た胴体を持つが、それを支える二本の足は存在しない。
    見えない腕に抱えられているかのように、浮遊していた。
    右手に持つは両刃の斧。左手に持つは盾。
    どちらも、巨体に相応しいサイズがある。

    そんな姿をした魔女こそ、この日黒死牟が狩る相手だった。

    怒りか、或いは恐れか。
    巨体を震わせ両手の装備を打ち鳴らす。
    既に邪魔な使い魔は一掃されており、残すは魔女のみ。
    見上げる程の肉体には複数の傷が刻まれている。
    誰がやったかは説明するまでもない。

    「……」

    言葉は通じず、そもそも会話という選択肢自体が最初から存在せず。
    己が剣を以て魔女の魂を刈り取る以外に、黒死牟が考える事は無し。
    六眼に殺意だけを宿し、一直線に魔女へと駆け出した。

  • 193二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 16:23:17

    当然魔女とて黙って己の消滅を受け入れる気は皆無。
    抜き放たれた刀に対し、巨大な盾を構えようとする。
    肉体の強度はともかく手にした装備は硬い。
    月の呼吸にて放たれる斬撃相手だろうと、ある程度は耐えられる程だ。
    魔女がこれまで力を蓄えていた証拠。
    自身の体へ刃を到達はさせまいとし、

    「ストラーダ・フトゥーロ!」

    頭上から無数の矢が降り注いだ。
    眩い桃色の光を放ち、一本一本に十分な魔力を籠めている。
    予期せぬ方向からの攻撃に、魔女は咄嗟に盾を掲げた。
    雨霰と襲い来る矢は次々盾へとぶつかり、ギャリギャリと甲高い音が響く。

    防御は間に合ったおかげで矢は一本も当たっていない。
    だがそれは、もう一人の接近を許す事となる。
    魔女が失敗を悟った時にはもう遅い。
    慌てて斧を振るうも、無駄な足掻きでしかなかった。

    ――月の呼吸 弐ノ型 珠華ノ弄月

    刃の切っ先が地面を擦り、三つの斬撃が走る。
    斧を持った右腕が胴体から離れ、地へと落ちた。
    悲鳴を上げる暇すら魔女には与えられない。
    すかさず放つは、勝負を決める一撃。

    ――月の呼吸 捌ノ型 月龍輪尾

    速度・威力・範囲。
    その全てが必殺級の斬撃を真正面から受け、魔女は崩れ落ちた。

  • 194二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 16:24:30

    ――――

    「終わったみたいですね…」
    「ああ……」

    結界が消え、暗く薄汚れた路地裏へと戻る。
    黒死牟が刀を鞘に納めるその隣で、いろはも魔法少女の変身を解いた。
    グリーフシードも回収済みだ、長居する必要も無いだろう。
    早々に移動しようとした時、ふと黒死牟が口を開く。

    「あの攻撃……」
    「はい?」
    「頭上より放たれた矢……良い判断だった……」

    いろはが放った大技に魔女が気を取られた事で、決着は早められた。
    盾の破壊に手間を割かずに済んだのだ。
    黒死牟から見ても良い働きだったと素直に思える事である。

    最初に出会った当初はやちよが力づくで追い返そうとするのも納得がいく弱さだった。
    今では順調に経験を積み、黒死牟でも時折感心する動きに出る。
    いろはの成長を改めて実感し、何となしに手を伸ばす。

    「あっ…」

    くしゃりと、いろはの頭を撫でる。

  • 195二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 16:26:00

    絹のように柔らかな桜色の髪の感触が伝わり、そこで自分が何をしているのかに気付いた。
    頬を赤く染めたいろはがこちらを見上げている。
    勝利の余韻に中てられ、馬鹿な真似に出たか。
    己への呆れを抱きながら手を引っ込める。

    「おかしな真似に出た……忘れろ……」
    「…あ、えっと…おかしくなんてないです!ただビックリしただけで…」

    無理に弁明しなくて良いと返そうとするも、いろはの顔を見て止まる。

    「嬉しかったです…。ういが黒死牟さんをお兄ちゃんって呼ぶくらい大好きなのも分かるなぁって…」
    「……」

    顔を赤くしたままはにかむいろはに、黒死牟は黙り込む。
    やがて気恥ずかしさを誤魔化すように「帰りましょう」と言われ、黙って頷いた。

    とっくに歩き慣れた道を、見慣れた顔の娘と行く。
    今に始まった事ではない日常。
    点々と星が輝く夜空を見上げながら、言葉には出さず考える。

  • 196二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 16:28:08

    無限城で死んだ筈の自分が何故生きているのか。
    どうして大正の時代より遥か未来の世界に自分がいるのか。
    今でもその答えは分かっていない。

    悪鬼である己が地獄に落ちるのを免れたのは、正しい事なのか。
    この世界で魔女を狩る今の在り方に意味はあるのか。
    問いかけた所で返す者もいない。

    それでも。
    今の自分がこれで良いのかは分からなくとも。

    「黒死牟さん?どうかしましたか?」
    「いや……」

    この日々はそう悪いものではないのかもしれないと、何となくだがそう思った。

    並んで歩き、同じ場所へ帰る男と少女。
    そんな二人を、月が静かに見守っていた。

  • 197二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 16:29:20

    ということで兄上といろは達のSSは今回で最後となります。
    ここまで読んでくださりありがとうございました。

  • 198二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 17:22:37

    めっちゃ良かった終わっしまうのが本当に名残惜しい

  • 199二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 17:49:15

    乙でした。兄上とみかづき荘メンバーが仲良くて好きだった

  • 200二次元好きの匿名さん23/01/07(土) 17:54:48

    マギレコ詳しく知らないけど楽しめました、ありがとう

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