- 1二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 21:54:27
- 2二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 21:55:00
ため息をつきながら、自然と笑みを零す。
コイツの声を聞くのは何ヶ月ぶりだったっけ。あっちから連絡は滅多にしてこないし、こっちから連絡するのも何だか少し気が引けていた。
昔は嫌ってほど聞き慣れていたはずなのに、今では恋しく思ってしまう。
「……それで?」
「それでって……クリスマスだぜ?連絡しなきゃな〜ってさ」
「……良かったわね、アタシに予定が無くて」
「………ん?予定無いのか?」
「無いわよ」
マーチャンだって、かつてのトレーナーや先輩だって、この日には別のヒトとの予定がある。
けれどアタシには無い。誘われたし、作ろうと思えば作れたけれど…何故だか、この電話の主の顔が浮かんで全て断ってしまった。
「へ〜…なんか意外だな。ありそうなのに」
「………まあ、色々あるのよ。生憎、そういう相手もいないし」
「作んねえのか?」
「………今は、いいかな」
「ふ〜ん」 - 3二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 21:55:54
どうでもよさそうな声。
昔からそうだった。
コイツはアタシのことなんかよりも、自分のことばかり。自分勝手だとか、そういうことじゃない。
ただ………アタシが、勝手にコイツに執着していただけ。
アタシがどれだけコイツのことを考えていても、コイツはアタシを通して自分の夢を追いかけていた。
アタシはこんなにアンタに頭の中ぐちゃぐちゃにされてるのに、なんでアンタはそうじゃないの、なんて、昔はそんなことで八つ当たりしたこともあったっけ。
……今も、そう思っているけれど。
「そういうアンタはどうなの?…まあ、アンタのことだし、いなさそうだけど」
目の前でカップルがハグしただけで真っ赤になって照れてたアイツ。
カッコつけで硬派ぶってるくせに、そういうのは苦手で、ちょっとだけかわいいと思っていた。……ちょっとだけね。
コイツも大人になって少し成長したとはいえ、まだそういうのが苦手なのは知っていた。
だからきっと、そういう相手もいないんだろうと思っていた。 - 4二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 21:56:29
「あー………それっぽいのは、いる、かも」
「え?」
「べ、別に、こ、こいびと……とかじゃねえよ?ただ、その……友達よりかは、仲がいいっていうか……」
声だけなのに、あの時みたいに真っ赤になって照れてる顔が浮かぶ。
それってつまり、そういうことじゃない。
アタシにはアンタのことなんてお見通しなんだから。
………そういう相手がいるだなんて、わからなかったけど。
「……そう、なんだ…」
「お、おう。けどまあ、クリスマスはあっちが仕事溜め込んでて忙しいからって、俺も特に予定はねえんだけどさ」
「……そのヒトのために、諸々の誘いは断ったってワケね」
「なんだよ、わかっちまうか?」
「何年の付き合いだと思ってんのよ」
「ははっ、だな!」 - 5二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 21:56:56
昔と変わらないコイツの声を聞きながら、平常心を保つ。
声は震わせないようにして。電話だとしても、ポーカーフェイスで。
…でもきっと、この耳は垂れ下がっているんだろう。
それだけはどうしても、隠しきれない。
「あーあ、お互い予定が無いんだったら、どうせなら会いたかったわ」
「俺にか?」
「うん」
「へー、ふふ、お前も素直になったな」
「……そりゃ、もう大人だもの」
「なら今からテレビ通話でもするか?そっちに帰るのは厳しいけど、顔見たいってだけなら、」
「それは駄目」
……口が勝手に動いていた。
今、コイツの顔を見て、平常心を保っていられる自信がなかった。ポーカーフェイスのつもりで、情けない顔をしてるアタシを見られたくなかった。
…おかしい、アタシがこんなことで弱気になるなんて。
震える両手で、携帯を持ち直した。 - 6二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 21:57:28
「……今、すっぴんだもの」
「はあ?なんだ、そういうことかよ。…そんな気にすることか?お前のすっぴん顔なんか見たって今さら何も思わねえよ、俺」
「アタシが嫌なの。アンタだって……あ、アンタはメイクとかしないか…」
「………するけど…」
「…するの?」
「………ちょ、ちょっとだけ、な。やっぱ、会う時はいつもより気合い入れた顔で会いたいだろ」
「…………そうね、恋人だもんね」
「はあ!?ば、ばかっ、こ、こいびととかじゃねえって言っただろ!」
「はいはい」
こっちの気も知らないで、ギャーギャーと騒ぐアイツ。
"いつもより気合い入れた顔で会いたい"……か。
それはアタシだって同じ。
アンタがそのヒトと会う時に気合い入れたいのと同じように、アタシだってアンタも会う時は気合いを入れたい。
……なんて、言うつもりは無いけれど。 - 7二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 21:58:22
「……ったく……あー、長電話しちまったな。そろそろ切るか?」
まだコイツの声を聞いていたい。次にいつ電話してくるかわからないから。
コイツの声は、心地いいから。
けれど、もうそのヒトとの話を聞きたくないアタシがいた。
眠気なんてとっくの昔に覚めていたけれど、眠いから、って嘘をつこう。 - 8二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 21:58:36
「もう、次はちゃんとこっちの時間も考えてよね」
「はいはい、悪かったよ。眠いだろ?おやすみな」
「うん。………またね」
「おう。また…………あ、年明けたら1回そっちに帰るかも」
「………ほんと?」
「うん。その……父ちゃんと母ちゃんに挨拶しないとだし」
「挨拶………そう」
「ま、まあ、察してくれよ。…でも、その前にお前と会おうかな」
「……なに、イチャイチャしてるの見せつけるつもり?」
「ち、ちがっ、そんなんじゃねえよ!…アイツのことは置いといて、やっぱりお前とは1番に会いたいじゃん。マーチャンも呼んでさ」 - 9二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 21:59:04
…バカ。なんでそういうこと言うのよ。
また期待しちゃうじゃない。もう無理だってわかっているのに。
アタシとアンタの想いが違うことなんて、昔からわかりきっていたはずなのに。
もう平常心は保つことは出来なかった。
「……あれ、泣いてんのか?」
「うう〜〜っ……違うわよっ、ばか……」
「…泣いてんじゃん。えー……意味わかんねー……」
「……ぐすっ………」
「何がお前の涙腺に来たのかはわかんねえけど……まあいいや、目、冷やしてから寝ろよな」
「……うん…」
「じゃあな、スカーレット。改めてメリクリだぜ」
「…………メリークリスマス、ウオッカ。またね」
「おう!」 - 10二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 21:59:32
通話画面から、ホームへと戻る。
携帯はすっかり熱くなって、思っていたよりも長く電話していたようだった。
「……はあ……もう、サイアク………」
でも、アイツの声を聞けたのは良かったのかな。
アタシはベッドから立ち上がると、目元を冷やすために洗面所へと向かった。
鏡には、情けなく目を晴らしたウマ娘が映っていた。
おわり - 11二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 21:59:57
以上供養でした
- 12二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 22:00:35
スカウオありがてえ…
- 13二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 22:01:11
良い……しっとりとしてしまった2人の関係もいいな…
だいぶ好き - 14二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 22:02:42
片想い百合…美しい…美しいが……!
わりぃ…やっぱつれぇわ… - 15二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 22:05:31
スカーレットからウオッカへの矢印はライバル感情以外の何かを感じることがある
- 16二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 22:19:25
- 17二次元好きの匿名さん22/12/25(日) 23:01:40
スカウオ片想いはやはり美しい
- 18二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 00:51:17
す…救いは無いのですかぁ…?
- 19二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 01:33:08
きつい
つらい
おれはくるしい - 20二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 02:48:26
スレ画がいい味出してるわ
- 21二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 13:05:02
一歩踏み出してウオッカを海外に行かせなければ可能性がまだあったのかも…
それにこのままなら近い未来に… - 22二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 13:22:02
顔かわいい
- 23二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 21:21:40
いいな…