【SS】皇帝の悪夢の話

  • 1二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 16:43:12

    当SSは、以下のスレ「俺は悪夢を見せる悪霊...」

    の概念を参考にしたSSです。若干のトレウマ及び曇らせ要素が若干あるので、ご了承のうえ、お読み下さい。


    俺は悪夢を見せる悪霊...|あにまん掲示板まず手始めに3年目にしてトレーナーが外野の心無い言葉によって壊れてトレーナーを辞める悪夢をシンボリルドルフに見せてやるぜ!bbs.animanch.com
  • 2二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 16:43:42

    シンボリルドルフは夢を見た。

    皇帝の歴史的大敗。
    民衆はその原因を探し
    私自身に、相手に、展開に
    あるいはレース場に。
    その理由を求めた。

    しかしそれらは、挙がるたびに否定され。
    最後に槍玉に挙がった「トレーナー」には
    …なぜか、否定する材料が、なかった。

    皇帝失墜の原因を、世間は格好の標的にした。
    心無い言葉に、悪意に晒され続け。
    同じ視座に立ってくれるはずの彼は、日に日に弱っていった。

    その彼に、とどめを刺したのは。

    彼を弁護せんと開いた会見で。

    彼への責任を、中傷を、否定しようとしたはずの。

    「―――今回の敗北の責任は、此方の担当トレーナーにあります」

    他ならぬ、自分の言葉だった。

  • 3二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 16:44:14

    私の口が、私の意志を無視して動く。

    「…当日のレースを予測できていたのなら、この指示は全く不可解で…」

    理論的に、誰の反論も許さぬ説得力と公平性をもって。あくまで理性的に。

    …やめろ。

    隣の彼を、否定し、貶め、嘲笑し、プライドを叩き折る。

    …やめて。

    終始、茫然と聞いていた彼は。

    …やめてくれ。

    私がマイクを置くと同時に、懐から、白い封筒を───

  • 4二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 16:45:29

    ここ数日、担当ウマ娘、シンボリルドルフの調子が悪い。

    生徒会の業務もこなし、トレーニングも異常はない。
    本来問題はないと言っていいのだが。

    三年間を乗り越えた相方へ感じた違和感。

    ことさらいつも通りを演じるような、不調を隠しているような。

    よくよく見れば目元がいつもより眠そうで。

    寝不足、なのだろうか。トレーニング後のミーティングで聞いてみることにした。

  • 5二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 16:49:17

    ……悪夢。それも自分の契約に関することとは。
    ルドルフの悩みは、少し意外だった。
    中傷に折れるほどヤワではない。そう否定もしたが、問題はそこではないと。

    ルドルフが言うには、夢は無意識が見せるもので。そんな夢を見るということは。

    いつか敗北し、その敗因が見当たらないとき。
    その原因をトレーナーにしてしまえばいいと、無意識に思っているということではないか。

    それを否定できないことを、深く、悩んでいるようだった。

    「情けない話だが……『敗北を君のせいにする』という発想があった、ということが、恐ろしいんだ」

    ルドルフはそう言うと、頭を抱えた。

    その姿は、普段の堂々たるものからはかけ離れていて。

    それは違う。咄嗟に否定した。

  • 6二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 16:49:59

    確かに夢を見せるのは無意識、なのかもしれない。
    だが、すべてを無意識の自分の考えだとするのは早計だ。

    妬んだ誰かの悪意による呪いとか。
    …悪霊が、困らせようと見せたとか。
    そんな可能性もあるかもしれない。

    「そんな可能性、荒唐無稽にすぎる。…慰めにもならないな」

    ならばと、話を聞いてからずっと頭にあった可能性をぶつける。
    荒唐無稽なそれらより、遙かにありうる仮説。

    ずっと隣にいたトレーナーの……こちらの考えを、不安を。
    ルドルフは無意識のうちに、読み取っていたんじゃないか。

    「…トレーナー君の?」

  • 7二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 16:51:00

    そうだ。
    思えば彼女と目指す『皇帝』への道は、敗北への不安と紙一重で。

    その中でいつしか考え、用意していた、万が一負けた時の方法。

    すべてを自分のせいにして、自分の首を誰かと挿げ替えて、また勝てば。

    敗北は『元トレーナーによるミス』となり、彼女自身の『絶対』は揺るがない。

    …いざという時、そうなることを望んでいたのは、むしろ自分の方で。

    三年の中で相手の機微を読めるようになったのは、こちらからだけでなく、ルドルフからもわかるようになっていたとしたら。

    こちらが思っていたことを、無意識に読み取って、夢に見たのではないか。

    …だから、悪夢を見せた『悪霊』は。

    ……他ならぬ、トレーナーの自分なのではないか。

  • 8二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 16:53:04

    話すうち、仮説は確信に変わっていて。

    気付けば悩みを聞いていたはずの自分が、謝りながら嗚咽を漏らし。

    悩みを話していたはずの彼女が、否定しながらこちらの背をさすっていた。

    ……相談の聞くはずだったのに、なんとも情けない姿を見せてしまったが、当のルドルフの表情は晴れやかで。

    「いや、君の仮説に安心したのさ。…君の不安を読み取れるほどに、以心伝心の仲になれていたということだろう?」

    「それがわかった今なら、悪夢に対しても、それを見せた君に対しても。確信を持って言えるからね」

    「君を手放す気は毛頭ない。……今後とも、よろしく頼むよ」

  • 9二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 16:56:41

    以上になります。お目汚し失礼しました。
    良概念ありがとうございました。皇帝はちょっと不安にさせるのが似合ってしまう。

  • 10二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 17:24:28

    会長とトレーナー君は二人揃ってやっと完成するんだよね……
    皇帝には侍従が必要なんですね

  • 11二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 19:53:39

    深夜に立てたクソスレから名作が生まれてる...ありがてぇ...

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