- 1二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 17:11:13
- 2二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 17:12:07
それからも私は、『死神』を追い払おうと手を尽くしました。時間の合間を縫って、私は何度も何度も『死神』に訴え続けました。
しかし…『死神』は一切の反応を見せません。
これまでしてきたようにあらゆる方法で追い払おうとしても…何の意味も為しませんでした。
『お友達』も、アレは自分でもどうにもできないと言っていました…。
あの夜から…『死神』は喋るどころか、ベンチから立ち上がりもしません…。
あの夜から6日…私の心は既に限界でした。
前例が一つあったからといって、トレーナーさんが死ぬという確証はない。しかし『死神』が口を開かない以上、いつトレーナーさんが死ぬかも分からない。
このまま何も起こらないかもしれない…今すぐに死んでしまうかもしれない…。
行く先の全く分からない闇に、私の精神は徐々にすり潰されていきます……。 - 3二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 17:13:42
「カフェさん?」
鬱々と寮を出ようとした私に、ユキノさんが声を掛けてきました。
「ユキノさん…」
「カフェさんってばどうしたんだべ?顔色がえらい悪いでがんすよ?」
「あっ……そう…ですか…」
(いけません…顔に出さないよう気をつけていたのですが…)
「もしかして明日の菊花賞で緊張してるんすか~?」
「えっ…?」
そうでした…明日は菊花賞。出走予定なのを忘れていました…。
「大丈夫でがんすよ!カフェさんならきっと一着取れるべ!」
「……ありがとうございます」
優しい優しいユキノさん…。
けれど…どんな人でも、トレーナーさんを助けることはできない…誰にも…理解できない……。
私にしか出来ないんです。
私…しか……出来ないんです……。
諦めたくない…諦めてはいけない…。私が諦めたら…トレーナーさんを救える人は…いなくなるのですから……。
私は…孤独に…戦い続けます……。 - 4二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 17:15:01
──放課後のトレーニングが終わりました。
これからトレーナー室で明日の打ち合わせですが、その前に私は、また『死神』の所へ向かいます。
「───あ」
なんと…ベンチに向かう道中に、『死神』がこっちを向いて浮かんでいました。
どうやら…私を待っていたようです。
やっと…糸口を掴めるかもしれない。
「…随分、無視してくれましたね」
私は『死神』を睨みつける。空気がざわつき、そのまま静寂が保たれます。
均衡を破ったのは、『死神』の方でした。
「……カレハ、明日、死ヌ」 - 5二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 17:16:00
「……え?」
今…なんて言った?カレって…トレーナーさん?
「な……え…」
言葉に詰まる私。『死神』は続けます。
「明日ノレース後、有力者ノアナタガ一着ヲ逃シ逆上シタ観客ニ、カレハ刺サレル」
「は……?」
レース後…?刺される…?
あまりの情報に困惑する。
けど…話の限り、私が一着を取れば… - 6二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 17:17:10
「アナタハ一着ヲ取レナイ。ワタシガ一人ノウマ娘ニ取リ憑クカラ」
「……!?」
取り憑く…?この『死神』が走るということ…?
「アナタハワタシニハ勝テナイ。見エテイテモ、所詮タダノウマ娘。『死神』ノ魂ニハ届カナイ」
「そん…な……」
「アナタガレースニ出ナクテモ、別ノ出来事デカレハ死ヌ。ソレハ変ワラナイ」
「っ…ふざけないで!!」
私は叫ぶ。怒りが頂点に達した。
「ようやく口を開いたと思えば!勝手なことばかり言って!あなたの気まぐれで、どうしてトレーナーさんが死ななくちゃいけないの!!トレーナーさんの何が悪いの!!……ッ…ケホッ…ケホッ…!」
慣れない大声に咳き込んでしまう。
『死神』は変わらず淡々と話す。
「カレガ死ヌコトハ、運命デ決マッタコト。カレハ“死”ニ選バレタ。『死神』ハソレニ従ウマデ」
「運命ハ変エラレナイ…ドウスルコトモデキナイ…マシテヤ生身ノ肉体ガ変エルコトナド不可能ダ」 - 7二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 17:18:47
…もう私は、何も言えなかった。
突きつけられる現実……私が何をしたところで…最初から全て…無駄でした…。
「アナタニカレハ…救エナイ」
風と共に『死神』は消える。昇りたての月の光が、嘲笑うかのように私を照らします。
ドサッ・・
私は膝から崩れ落ちる。
果てしない絶望に…打ちひしがれる。
私に出来ることは…ただ…トレーナーさんが死ぬ時を…待つだけ……。
「トレーナーさん……トレーナーさん……トレーナーさん………」
脳裏に浮かぶのは、大好きなトレーナーさんの…あの優しい笑顔。
もう明日には…見ることは叶わなくなる…。
「うぅ……ああああああああああああああああ………!」
私は…トレーナーさんを救えない…。
トレーナーさんは…明日……死ぬのです──── - 8二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 17:19:15
以上です、ありがとうございました。
- 9二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 17:26:25
四部作中2作目ですね、回避しようもない正に運命なんですね、トレーナーさんが死ぬのは。
- 10二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 18:06:00
いやだ…
- 11二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 18:12:31
先の展開を思うともう苦しくてたまらない…