【タキモルSS】タキオン「夢の国ねぇ」

  • 1◆6Z5L0Jfdg1k622/12/26(月) 17:31:35

    「…夢の国に行くために、早起きとはねぇ」
     朝を告げる涼やかな風を耳に受けながら、ウマ娘、アグネスタキオンは何度目かの欠伸をする。

     早朝のトレーナーからの容赦ないモーニングコールには「開園は9時だろう?なら9時に着けばいいじゃないか」などと苦言を呈したが。
    どうにか予定通りの時間に来てみれば、すでに先客たちが開園を待つ列を作っていた。

     随分早い到着になると思っていたが、これでも先頭でないとは。ファンの熱量が想定以上であることを実感する。

     朝食のおにぎりをトレーナーと食べ、何回か「まだかい」と聞いたころ、ようやく列が動き出した。予定より少し早い開園だが、たまにあることらしい。

     ふと振り返ると、前に立つ人々の何倍もの人の群れが、自分たちに着いてくるようだった。もし、9時に来ていれば、この群れの最後尾からだったのか。

    …これは朝の準備を手伝ってくれたデジタル君にも感謝しなければ。そんな事を考えて少し歩けば、もうゲートは目前で。

     レース直前の感覚と似た、未知へ挑む高揚感と、少しばかりの緊張を胸に、アグネスタキオンは、ついに夢の国への一歩を踏み出した。

  • 2◆6Z5L0Jfdg1k622/12/26(月) 17:32:55

     ことの始まりは、何月か前。春シーズンの終わりに遡る。

    「『夢の国』に行きたいねぇ」
     タキオンが呟いたのは、練習後のミーティングを終え、一息ついたときだった。
    彼女が言っているのは、千葉にある、世界的なアニメーション会社のテーマパークのことか。
    ……あるいは、何かの比喩?どちらにせよ、トレーナーはその発言に耳を疑った。

    「あぁ、もちろんテーマパークの方だとも」
     とりあえずの疑問は消えたが、疑念は残る。
    タキオンの発言は、普段の彼女からすれば突飛もないもので。もしや何か実験でも企んでいるのでは、などと身構えてしまう。

    「そんな露骨に警戒しなくてもいいじゃないか……いやね、トレーナー君は何度か行ったことがあると言っていただろう?」

     そういえば、少し前にそんなことも話した。
    あれは彼女が感情を研究テーマにしていた時、ポジティブな感情の例として、聞き取り調査を受けたときだったか。
    ……あのときは当時の感情や行動は細かく聞いていた割に、パーク自体にはさほど興味はなさそうだったが。

    「あのあとデジタル君にも聞いてみたんだが、君も彼女も楽しそうに話すものだからさ、だんだんと興味が湧いてきたのさ」
     なるほど、となると。

    「そういうわけで、案内してくれたまえよ、トレーナー君」
     こう来るだろうとは思っていた。

    「なんだよー、日程の選定も当日の進行も、あとチケットの確保も、どれも君が適任だろう?」

     提案者でありながら堂々と丸投げする姿勢に苦笑いしつつ、スケジュール帳を開く。
    レースや学校の日程、当日の混雑も考えた結果、夏合宿が終わった直後の秋の初めに日を定め、その日は解散となった。

    「まぁとにかく、全部任せるよ」
    こうして全部任されたのである。

  • 3◆6Z5L0Jfdg1k622/12/26(月) 17:34:08

     忙しく各々の目的地であるアトラクションやショーの待ち列へ向かう人々を尻目に、トレーナーとウマ娘はゆっくりと歩く。

     既にG1ウマ娘として有名になったタキオンは、簡単な変装こそしているが、おそらくあまり効果はないらしい。
    何名かは彼女に気づいているようだった。
    ……変装している意図を汲み取ってくれているらしい。助かる。

     一応、彼女が行くことについては事前に問い合わせたのだが、特に問題はないとの解答だった。
     見れば遠巻きにキャスト(園内のスタッフはこう呼ばれる)たちがさり気なく配置され、常に気を配ってくれている……ようにも見えた。

     当のタキオンはといえば、歩きながら周囲の人々の様子を観察しているようだった。視線の先を追えば、ベビーカーを押す母親と赤ん坊、向こうはウマ娘の二人組、あちらにもウマ娘……と思ったが耳が4つ。キャラクターのカチューシャか。時折興味深そうに頷いていた。

     そんな彼女でも、パークの中心である童話の城の姿を前にしたときは、ほう、と声をあげた。さすがに映像で見たこともあるようで。

    さぁ、まずはどこから行こうか。

  • 4水飛沫山◆6Z5L0Jfdg1k622/12/26(月) 17:35:12

     トレーナーが選んだアトラクションは、丸太の船に乗って、うさぎのキャラクターの旅を追体験する、というもの。
    途中と最後にある落下が目玉の、いわゆる急流滑りだ。

     隣に座るタキオンは、最初の落下の時こそ「なんだ、こんなものかい」などと余裕の表情だったが、どうやら3回目の落下が想定以上だったらしい。明らかに口数が減っている。

     ウサギが宿敵のキツネに捕まり、雲行きが怪しくなった旅路を横目に、二人の乗った船が、最後の落下に向けて坂を登り始める。

    「……思ったより高いぞ、これは」
    タキオンはさっきから笑顔を作ってはいるものの、手は前の安全バーを強く握りしめているし、しっぽはこちらの腰に巻き付いている。 

    いよいよ坂を登りきり、前へ、前へ。ゆっくりと、落ち………ず、少し止まる。

    「……おや……不具合か、な」

     …このアトラクションは、何回か訪れたことのある客でも新鮮な体験ができるように、落下の前にランダムで『フェイント』をかけることがある。

    「…え、ぁ 〜〜〜〜!?」

     運悪く初回にこれを引いたタキオンは、声にならない声をあげながら、滝壺へ吸い込まれていった。

     持ってきたタオルで髪や顔にかかった水飛沫を拭かれながら、タキオンはどこか誇らしげだった。

    「うーん!最終的にうさぎは滝壺に投げ込まれて助かった、我々もそれを追体験したということなんだろうが、前後でその補足が欲しいね。最終的に故郷が一番、というメッセージで大団円とは、物語としてはいささかベタではあるが、まあこんなものだろう。うん、満足だ」

     明らかに口数が増えている。出口でもう一度乗るか聞いてみると、君ひとりで乗りたまえよ、と真顔で断られた。 

  • 5幽霊屋敷◆6Z5L0Jfdg1k622/12/26(月) 17:36:04

     続いて、すぐ近くの洋館へ向かう。ここは99人の幽霊が潜んでいる館を、黒い卵型の乗り物と怪しげな家主の案内で巡る、いわゆるお化け屋敷…なのだが。

     床が下がっているか天井が上がっているのか、という大広間は「下がっているね」。

     半透明の幽霊が踊る大広間は「ガラスの反射を利用しているようだね」と看破し。

     最後に乗り込んでくるヒッチハイカーの幽霊も「ふゥん、ユニークだ」。

     出た後も、墓石に刻まれたジョークをひとつひとつ読み解く余裕さえあった。

    「作り物とわかっていればそう怖くはないよ、『どう驚かすか、不気味な雰囲気を出すか』という手法に興味が湧くくらいさ」

    ……楽しんでくれて何よりだが、さっきと違ってまったく怖がる様子がないのは、少し悔しい気もした。
    そこで、「もう“1000人目”はいるらしい」という噂を、なるべくおどろおどろしく伝えてみたものの。

    「その噂が本当なら、今度カフェに確かめてもらうのも面白そうだ」
    そう言って、悪戯っぽく笑うばかりだった。

  • 6茶会◆6Z5L0Jfdg1k622/12/26(月) 17:37:10

     珈琲が好きな友人を思い出したからか、昼食の前に「あれもいいかな」とタキオンが指差したのは、いわゆるコーヒーカップだった。

    先客たちの回転数を見ながら、どれくらい回すつもりか、一応聞いておく。
    「最速に決まっているだろう、全力で回そう!手伝ってくれたまえよ、モルモット君!」
    ……確か、分速40回転くらい、だったか。
    覚悟を決めた。

     案の定、タキオンは出走と同時に好奇心に任せ、全力で回し始める。そしてトレーナーにも回させれば、数十秒後にはトップスピードだ。

    「あっはははははは!回せ!もっと回すんだトレーナー君!見たまえ!手を離すと遠心力がわかるぞ!遠心力で!手が!ぺたーんってなるぞ!はははははは!」

    ……こうしてはしゃいだことを、約一分後に後悔する羽目になる。

    「なるほど……三半規管には…終わったときに『クる』んだな……トレーナー君は大丈夫……ではなさそうだ」

    ……昼食後にしなくて、本当によかった。

  • 7世界旅行◆6Z5L0Jfdg1k622/12/26(月) 17:39:01

     休憩代わりに選んだのは、すぐそばの「世界でいちばん幸せな船旅」のアトラクションだった。
     乗る前に「これは落ちないだろうね?」と念入りに確認してきた姿にくすりと笑う。
    安全ベルトもないし、小さい子も乗っているから大丈夫だと説得し、出発する。

     肝心の乗っている時の反応はといえば。
    「ヨーロッパ諸国だねぇ」
    「あ、日本だ」
    「アフリカだねぇ」
    「ほう、南米だね」
    「白いねぇ」
    といった報告が主で、楽しんでいたかは結局わからなかった。 

    …これは余談だが、後日、顕微鏡による何かの観察の合間に「ちいさーなーふーふーふん…」などと口ずさんでいたタキオンが目撃されたらしい。
     なお、その目撃者たるアグネスデジタルは、そのことを伝えてくれた直後に気絶し、自分が保健室まで運ぶこととなった。

  • 8米マックス◆6Z5L0Jfdg1k622/12/26(月) 17:40:09

     暫く歩くうち、次にタキオンが注目したのは、ケアロボットを主役にした映画をもとに作られた、遠心力による横滑りを中心とした動きの…他にないタイプの動きをするアトラクションだった。
     言うなればドリフト体験機、といったところか。スピードはさほどではないが、おお、と小さく声が出る程度の横滑りが新しい。

    「動きの奇抜さと、かかっているアップテンポのBGMと合わせることで、高揚感や興奮を誘発させる効果はあるかもしれないねぇ」

     乗ったタキオンの感想の通り、これは乗り物そのものもさることながら、常にかかっているBGMに中毒性があると、密かに話題になっていた。

    …これも余談だが、後日、何かの計測機を見ながら「きみのハピネスはかるよ〜いいかい?」などと口ずさんでいたタキオンが目撃されたらしい。
     なお、それを教えてくれたアグネスデジタルはまた気絶したため、保健室まで運ぶことになった。

  • 9宇宙山◆6Z5L0Jfdg1k622/12/26(月) 17:41:14

     この日最後と並んだのは、宇宙旅行を模したジェットコースターだ。暗闇の中をロケットで駆け抜ける、パークの中でももっともスリリングとも評されるアトラクションである。

     タキオンは…スピードが出始めたときから、笑っていた。高らかに。
    ときおり、こちらをちらと見ながら。

    そうして、宇宙を駆け抜けたあと。
    「うーん!一番速いときでも我々の全力疾走かそれより少し速い程度か。まぁそれは仕方ない。とはいえ、連続した急カーブと段階的な加速はなかなか新鮮だったとも」

    「……それから、もうひとつ。新鮮な体験ができる要因があったね。君にわかるかい?」

    ──走る事に集中しなくていいことかな。
     漠然とした質問に意図をつかみかねながら、当てずっぽうを言ってみる。

    「あぁ、それもあるが…なにより、君が隣にいたことさ、トレーナー君」
    ──隣に、自分が?
    思わず鸚鵡返しする。

    「いやね。我々は本番でも練習でも、並走することはなかっただろう?VRも仮想空間だしね」

    「……だから今日、君と並んで、実際に風を切ることができた。『並走』の疑似体験としては……悪くない、うん、悪くない経験だったね」

    いつものニヒルな微笑みより、少しだけ楽しそうに笑いながら、そう、締めくくった。

  • 10海賊◆6Z5L0Jfdg1k622/12/26(月) 17:42:00

     その後。混雑の中でおみやげをどうにか調達し、いよいよ帰る時間が迫ってきた。

     最後に、比較的入り口の近くにあるアトラクションに乗ることにした。海賊たちの冒険を垣間見る船旅だ。

    「舟に乗るのは今日で三度目だが、これはベルトもないし、おそらく落下はないね」
    乗る直前のタキオンの洞察に、曖昧に返事をする。出港から数分後。

    「おや?……おやおや、これも、これもかい?トレーナーく……」

     一日の最後に、タキオンの声にならない声が洞窟にこだました。

    ◇了◇

  • 11おしまい◆6Z5L0Jfdg1k622/12/26(月) 17:44:12

    一旦、以上です。お読みいただきありがとうございます。好きなものと好きなウマ娘を安直にクロスさせていく。

    考えたのは以上でしたが、おまけとして、某ランドのアトラクションで、タキオンに乗ってほしいものとかあったら、教えてください。

    もしかしたら、ゆっっくり、書いていくかも。

  • 12おまけ見本◆6Z5L0Jfdg1k622/12/26(月) 19:37:06

    多分リクエストが来ないだろうものから勝手に書いていきます。

    「鳥や柱が歌って……喋って?神様を呼ぶ?
    そこに悪戯好きの宇宙人が……どういうことだい?」

    実際そのとおりだから仕方ない。ガイドブックの説明に混乱しているタキオンをよそに、ステージが始まる。
    彼女と今いるのは、ハワイアン音楽をインコやオウム、果ては柱の彫刻や青い宇宙人が歌う、ショータイプのアトラクションだ。

    歌うのはもちろん本物の鳥たち…ではなく。
    「高精度で動く人形…オーディオ・アニマトロニクス、だったね」

    「うーん!まぁ最新の機材と比べるとどうしても粗が無いではないが、本当に喋って歌っている、と思わせる没入感はなかなかのものだね」
    ……私のも作れないだろうかねぇ、などとどこぞの歌劇王が言いそうなことも言っていたが。

    「囲むようなこの座席配置での、照明や視線誘導の仕方は、今後のグランドライブの参考になるかもしれないねぇ」
    一方で、思ったより真剣に学んでいると関心する。

    「それに、柱がコーラスをするのは斬新だったな。今度試しにモルモット君を柱の中に……」
    ……いや、何か無茶な方向に閃きが進んでいる。
    暴走しだした思考を中断させるように、次のアトラクションへと向かった。

  • 13二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 20:41:08

    >>11

    あれはランドじゃなくてシーだったかもしれないけどソアリンとか好きそう

  • 14二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 20:44:23

    ディズニー修学旅行以来行ってないな

  • 15おまけ見本2◆6Z5L0Jfdg1k622/12/26(月) 20:44:23

    次に乗ったのは、たまたま乗り場に到着していた、20世紀初頭の2階建てバスを模した乗り物。
    名前もそのまま『オムニバス』。
    ……今のバスの語源だ、という薀蓄はタキオンにとっては釈迦に説法だった。

    「二階建てというのが独自性なら、一階はただのバスじゃないのか?……下の座席を用意する意味はあるのかい?」
    のっけから失礼な事を言うタキオンと、二階席へ座る。

     お城の前の広場を大きく一周し乗り場へ戻ってくるコースを、ゆっくりと散歩するようなスピードで走る。
    少し高い目線から、パークを見下ろす。言ってしまえばそれだけの乗り物だ。

     だが遠くの景色は移り変わる。ここを中心に、円周上に、各テーマに沿った世界が広がっているからだ。
     正面ゲートのあるアーケード、未開のジャングル、西部の荒野、おとぎ話の世界、未来の都市……運転手の案内とあわせ、タキオンに簡単に説明する。

    「……なるほどねぇ。次はどうするんだい?」
    言いながら見渡す彼女の目は、心なしか好奇心に輝いて見えた。タキオンが気になったところにしよう、と返せば。

    「そうだな、少し興味がでてきたのは……」
    よし、次はそこにしよう。
    バスを降りた彼女の手を引き、新しくできた目的地へ向かうこととした。

  • 16おまけ◆6Z5L0Jfdg1k622/12/26(月) 20:52:06

    >>13

    「トレーナー君、『ソアリン』というのをデジタル君がオススメしてくれたのだが…このガイドブックには載ってないねぇ」


    ……なるほど。あれは隣にある、冒険と想像力の海の最新アトラクションだ。タキオン好みだとは思う。

    しかし。残念ながら今回は日帰り、また次回行こう。そう話せば。


    「……もうひとつ、ここみたいなのがあるのかい!?」


    そこからか。


    改めて2つのパークの説明をしながら、次のアトラクションへと向かったのだった。

  • 17二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 21:08:50

    なんだこのディズニーに行きたい気分にさせるスレは……。さてはスレ主はディズニーの回し者だな?
    それはそれとして、やっぱりアストロブラスターが好きだなぁ。下手くそだからあんま点数取れないけど、ワクワクするし
    昔お土産におもちゃのブラスター買ってもらったのが懐かしいや

  • 18光線銃◆6Z5L0Jfdg1k622/12/26(月) 22:05:50

    >>17

     タキオンと並んだのは、宇宙船に乗って、備え付けの光線銃で敵を撃ち、点数を競うアトラクションだ。おもちゃの宇宙船がそのまま飛んでいるような、SFアニメチックな世界観の中で、彼女は。

    「…この宇宙船で大気圏外に出るのは、あまり現実的ではないね、すぐに窒息……いや、野暮か」

    相変わらずだった。


     乗ってるマシンの向きは動かせることや、的の中心を撃たなければ得点にならない、などの基礎事項を教えた上で。

     ただ点数を比べるだけではつまらないと、彼女に勝負を持ちかけた。


    「負けた方が、次のアトラクションまで『あれ』を?……いいとも、耳が可愛くなるのは君だろうからねぇ」


     了承の上、勝負が始まった。

    「これは当たってるのかいトレーナー君?点数を見る……わかった!外れだ!……あたった!」


    「ぅあっ、動かしたなトレーナー君!狙っていたのに!」


    「……そこ、隠れた的があるのか!?ズルいぞ!私も撃つ!左に90度動かしたまえ!……次は右に30度だ!行き過ぎだ戻したまえ!」


     結構、熱中してくれたらしい。自分も真剣になってしまった。

    結果はふたりとも中の下、点数もどんぐりの背比べだったが。……勝ちは、勝ちだ。


     的が反応しなかったとか、トレーナーくんの動かし方が下手だったとかの負け惜しみを聞き流しながら、彼女にしては些かメルヘンな、ネズミの耳になる耳カバーを買って、着けさせ。


    少し頬を赤くした彼女の耳を褒めちぎりながら、次のアトラクションへ向かうのだった。

  • 19おまけ見本3◆6Z5L0Jfdg1k622/12/27(火) 00:28:43

    次のアトラクションへ向かう途中、タキオンが入り口を見つけ立ち寄ったのは、ツリーハウスだった。

    これは無人島に漂流した一家の映画に登場した漂着物や難破船を元に建てた家を、彼ら一家の留守中に見学する、というものなのだが。

    侵入者対策の落とし穴に、入り口に簡易跳ね橋、水車を利用した冷蔵庫。夜景を望めるベッドルームにテラス、リビングにはピアノ。机を見れば取ってきたフルーツ。
    ちょっと豪華な秘密基地、のような。

    「……材料の調達はともかく、0からこれを作れる一家とは、全員サバイバルの達人か、建築家か何かなのかい?」

    タキオンの指摘ももっともな豪邸だった。

     思えば、ここは小さい頃に登ったきりで、上からの景色しか覚えてなかったが。
    改めて見ると、撮影セットさながらに、家具のひとつ、小道具1つまで作り込まれていることに気付かされる。

     個人的に発見のあった寄り道もそこそこに、早々に飽きていた彼女に引っ張られるように家を出て、
    元々の目的地へ向かうこととした。

  • 20二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 09:24:01

    凄いな。さてはスレ主相当ディズニー好きだろ

  • 21熊劇場◆6Z5L0Jfdg1k622/12/27(火) 12:09:06

    (このままだとマイナーなアトラクションから順に乗ってくタキオンになっちゃうので、リクエストもお待ちしてます)

     次に入ったのは演奏会の劇場だ。
    「ハングリーベア・シアター、だったかな」
    ……正しくはカントリーベア。隣のレストランの名前と混ざっている。随分物騒なシアターになってしまう。

     入れば中央に大きなステージ。左右に2つずつ小さなステージがあり、代わる代わるクマのバンドやシンガーが歌う、という構成で。

     当初こそクマの顔なんて見分けつくのか 、など懐疑的に言っていたが。人間以上に個性豊かなメンバーと、どこか懐かしいナンバーに、気付けば隣で手拍子足拍子をしてくれていた。

    「いや、君がしていたからね。……言ってしまえば録音と人形劇、してもしなくてもパフォーマンスは変わらないはずだが…やってみると中々楽しいな、これは」

     ステージ後のちょっとしたトリビアとして、出口の廊下には出演したクマたちの楽屋への扉が並んでいる。
    ……これは司会の彼の部屋か、とか。
    三つ子の楽屋も三つ子なんだねぇ、などと話しながら、次のアトラクションへ向かうのだった。

  • 22二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 12:56:00

    せっかくランドに来たのにハニーハントに乗らないのは嘘だよね

  • 23二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 13:38:14

    ディズニーランド久しぶりに行きたくなった
    フィルハーマジックとかどうでしょう
    最近?リニューアルしたらしいけど

  • 24二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 15:01:52

    ディズニースピーカーBOTをフォローしてそうだなタキオンは…

    シンデレラ城を見ながら、結婚式場としても営業していることと賞金が余っているという事実を話して謎の圧力をかけるタキオンが見たいね

  • 25蜂蜜狩り◆6Z5L0Jfdg1k622/12/27(火) 15:24:36

    >>22

    次にこちらから乗りたいと提案したのは。


    くまのぬいぐるみが蜂蜜を探す旅を、蜂蜜の壺型の乗り物で追いかけるものだ。

    ファンからの評価も高い人気アトラクションなのだが。


    絵本の世界へそのまま入るような始まりも。

    台風の中てんやわんやの大騒ぎをする彼の仲間たちの質感も。

    …その中でも、個人的に好きな、ネガティブなロバも。

    乗り物と一緒に飛び跳ねるトラも。

    トラの捨て台詞をきっかけに見たサイケな夢を体験し、

    目を覚ませばクマは蜂の巣に着いていた、というオチも。


    「最後の方、ずいぶんとサイケデリックだったねぇ」

    作品に馴染みのないタキオンには、すべて説明しがたい。


    出口にて、趣味に巻き込んでつまらない思いをさせたと謝れば。

    「いいや。トレーナー君をそれだけ惹きつける作品という時点で、

    十分興味深かったとも……表情を見ていたが、ずいぶんと好きらしいね、君」

    バレていた。


    「あの青い…ずんぐりした彼が好きなのかい?」

    …そこまで見抜かれていたとは。思わず頬をかく。


    タキオンは推測が当たったことに満足そうに頷きながら、

    「また原作も見せてくれたまえ。順序は逆だが再現度の比較もしたい」

    そう締めくくったのだった。


    あの森の彼らを、彼女は気に入ってくれるだろうか。

    シリーズを見せる順番を考えながら、次のアトラクションへ向かうのだった。

  • 26筆者最好◆6Z5L0Jfdg1k622/12/27(火) 15:31:27

    >>23

    次にタキオンと向かったのは、魔法の帽子を勝手に被ったアヒルの悪戯に巻き込まれ、

    名作(の音楽)の世界を次々に尋ねていく、というもの。


    いわゆる『飛び出す映画』と言ってしまえばそれまでだが、

    視界一杯まで広がる専用の横長のスクリーンの迫力に加え、

    ごちそうが出る場面ではいい匂い、空を飛ぶときは向かい風と、視覚聴覚以外の五感もつかった体験をもって没入させる。


    オープン自体比較的新しめのアトラクションで、最近では前代未聞の「出演作品の追加」も話題になっていた。


    ……こういう飛び出す映像の常として。

    触れられないか手を伸ばしてみるのが恒例だが。

    冒頭に飛び出しながら此方に助けを求めるアヒルには、

    タキオンは一切手を伸ばしてなかった。非情だ。


    そして、観終わったタキオンは。

    「なるほど、私でも何となく知っている曲や場面があるものだね」

    「積極的に見たことがなくとも『知っている』とは、影響力の大きさを実感するよ!」

    …独特の関心の仕方をしていた。


    「あとは…映像で終わりと思っていたから、最後の『あれ』は驚いた。ああいう演出もあるのか」

    『あれ』は流石に彼女も驚いたらしい。

    初見では気付かない人もいるが、発見してくれたようでよかった。


    「…ただ、あの…仔ライオンや、骸骨の彼らの曲は知らないな、今度教えてくれたまえよ」


    どちらもまぎれもなく名作だ、見せることを約束する。


    …まんまと『布教』に成功したことに心の中のアグネスデジタルとハイタッチしながら、

    次のアトラクションへ向かったのだった。

  • 27番外◆6Z5L0Jfdg1k622/12/27(火) 16:43:00

    >>24

    「先ほど二人組が話していたんだがね。…あのお城で挙式ができるのかい?」


    「うん、結構有名だね。同性同士でも挙げたりとか…何見てるの?」


    「あぁ、予算も含めて今調べたんだが…今の我々なら、十分出せる金額だな、とね」


    「そうか、でももう1つの…海の方も見てから考えない?そっちの方も憧れあるんだよね」


    「……ふぅん?興味深いね」


    「あ、もう1つのほうが?」


    「君の解答自体が」

  • 28おまけ見本4◆6Z5L0Jfdg1k622/12/27(火) 18:50:01

    次に向かう途中、カートゥーンの街へ寄り道することにした。
    「君が最初に行ったときに楽しかったところを知りたい」とリクエストされたのだ。

    どんなところか説明してもよかったのだが、近いし折角だからと連れてきた先は。

    柔らかな床の上にパステルカラーのオブジェが配置された幼児向けの公園だ。
    今もちびっこたちが駆け回っている。

    「おい……君の『最初』は、いくつの時の話なんだい!?」

    彼女としては『小さい頃』と聞いて、てっきり小学生くらいと思っていたようだ。

    幼稚園児の私は、初めて家族と来た帰り道、母から『何が楽しかった?』と聞かれ、ここと即答したらしい。……記憶はないが。

    当時は身長制限のあるものは乗れないし、シアタータイプのものも、暗さや大きい音に怖がったとなれば、案外妥当なのかもしれない。

    彼女にも一応、遊ぶか写真でも撮るかと聞いてみたが。
    「いや、遠慮しておこう。ここは彼らの場所だ」

    駆け回る子どもたちの声を背に、次のアトラクションへ向かうこととした。

  • 29二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 21:03:14

    ジャングルクルーズが好きなんだよなぁ
    子供の頃はカバは機械だと分かってたのに食人族はどうしようもなく怖かった

  • 30二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 22:12:06

    23です
    ありがとうございます!いろんな作品を巡れるの楽しいよね
    布教できたようでなにより

  • 31密林航海◆6Z5L0Jfdg1k622/12/27(火) 23:16:30

    >>29

    次にタキオンと向かったのは、世界各地のジャングルを、陽気な船長と巡る船旅のアトラクションだ。


    乗る時に例によって「落ちないだろうね」と念入りに確認するタキオンの姿を……覚えられていたらしい。


    「この船旅と私のジョークは『オチ』ませんのでご安心くださ〜い!」

    船長の軽快な喋りと操舵で、危険なジャングルへ旅立つ。

    水浴び中のゾウの群れを突っ切ったり、

    サイに襲われた探検隊を見捨て…見守ったり。

    怪しげな遺跡に乗り込んだり。


    途中の「あぶなーいっ!」「ふせてーっ!」

    といった船長のフリを、タキオンはだいたい曖昧な笑みのままスルーしていたが。

    ゾウに水をかけられそうなときだけは、ぺたんと耳を畳んでいた。

    本人曰く

    「……水をかけるわけないとは、わかっていたとも、わかっていたよ」との事だった。


    船長(とタキオン)の動物の解説を聴きながら、

    子供の頃のもっとシビアで過酷なクルーズを思いだす。

    確かリニューアルしたのだったか。


    環境音が続いていた船旅に壮大なBGMが加わり。

    かつては最後まで不気味だった遺跡は、

    最後にプロジェクションマッピングで輝くようになり。

    「首狩りのサム」は、今では『お守り売りのサム』になっていた。


    タキオンなら、前のバージョンも好きだったかもなぁ、とも思ったが。

    最後の暗い遺跡に入るとき、少しだけ耳が怯えていたから、そうでもないかもしれない。


    奇跡的に全乗員を無事に帰還させた凄腕の船長に見送られ、次のアトラクションへ向かうこととした。

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