[ウマ娘SS]汚泥に沈む貴方に青いバラを【閲覧注意】

  • 1二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 18:27:45

    注意事項
    トレ♂×ウマです。物語の展開上人が死にます。まだ書いている最中ですが「あっ重いなコレ」ってなるぐらい重いです(一応ハッピーエンドです)

  • 2121/11/04(木) 18:28:28

    「お兄さま…卒業式が終わったらお兄さまのお部屋に行ってもいい?」
    明日はトレセン学園の卒業式。
    ライスは3年間、ずっとそばで支えてくれたトレーナーさん(ライスはお兄さまって呼んでるけど)にそう言うとお兄さまは微笑みながら「いいよ」って言ってくれた。
    「ライス、せっかくだし夕飯食べて帰る?」
    「えっ…お兄さまいいの?」
    「うん。そろそろお別れだし…何か最後に俺も色々お話したいからね」
    そう。ライスがトレセン学園を卒業するということはライスはトレセン学園を離れて、お兄さまはここに残り続けるということだ。もう会えないかもしれない。だから最後に悔いが残らないようにこう言うつもりだ。

  • 3121/11/04(木) 18:30:05

    「お兄さま。貴方のことが世界で1番好きです。だからライスとお付き合いさせて下さい」と。

  • 4121/11/04(木) 18:32:49

    「はいライス、どうぞ」
    「あっ、いただきます!」
    卒業式が終わって、ノブロイさんやブルボンさんたちみんなとお別れを済ましたあとそのままの足でお兄さまのお部屋に行き、紅茶をご馳走してもらった。
    お兄さまのお部屋は物は少ないけれど家具の配置一つ一つが邪魔にならない位置に置いてあり、とても綺麗だった。
    本棚にはスポーツ関係の本や小説が置いてあって、その中にライスが1番好きな絵本の「しあわせの青いバラ」が目立つ位置に置いてあってなんだか自分が大事にされているような感じがして嬉しかった。

  • 5121/11/04(木) 18:36:27

    「…ごめんね、なんだか面白みのない部屋で」
    「えっ?あっ!ううん!とても素敵なお部屋だよ!」
    「あああライス、部屋を褒めてくれるのは嬉しいけど落ち着いて!紅茶まだ熱いから火傷に気をつけてね?」
    …顔が熱いのは季節外れの寒波に備えてつけてくれた暖房かそれとも紅茶によるものか、それとも…。
    恥ずかしくて頭がパンクしそうだ。このまま告白したら倒れてしまうかも。何か別のお話のして落ち着かなきゃ。
    「お、お兄さま!お兄さまの小さい頃はどうだったの?お父さまとお母さまと仲良しだった?」

  • 6121/11/04(木) 18:41:23

    そう聞くとお兄さまの笑顔が一瞬で無表情に変わり、額から物凄い量の汗が流れ出してきた。
    「…ラ、ライス…俺の昔話なんか…き、聞いても…面白くないと…思うよ…?」
    いつもの朗らかで優しい笑顔じゃなく、強張った作り笑顔で笑うお兄さま。顔色は白く、呼吸は浅く不規則で、カップを持つ手は震えソーサーがカチャカチャと音が鳴る。
    …ライス、もしかしたらお兄さまの触れてはいけないものに触れてしまったのでは?謝らなきゃ!

  • 7121/11/04(木) 18:46:28

    「お、お兄さまっ」
    「ライス!!!」
    ライスの声を遮るようにお兄さまの叫び声が部屋に響く。
    「…ライスは何も悪くないよ。…本当に面白くない話だから…気にしないで…」
    こんなぼろぼろになってもライスのことは悪くないと庇ってくれるお兄さま。けど、お兄さまをここまで追い詰めてしまったのはライスだから…!だから、お兄さまが少しでも安心できるようにレースの前にしてくれたように手を伸ばし、震える手を握った。
    「お兄さま…」
    「…っ…ライス…」
    お兄さまの手は氷のように冷たく、汗ばんでいた。けれどもライスが手を握ると震えが少し収まった。
    「…ごめん、せっかく来てもらったのに…少し横になりたいんだ…」

  • 8121/11/04(木) 18:51:50

    ふらつくお兄さまの体を寝室まで支え、ベッドに寝かしつけ、汗をタオルで拭く。いつもの余裕のある態度とは真逆の弱った姿が見ていて心が痛い。
    「お兄さま…小さい頃に何かあったの?」
    そう聞いてもお兄さまは首を小さく横に振るだけで何も答えない。
    「お願いお兄さま…何か言ってくれないとお兄さまは苦しいままだよ?ライスもそんなお兄さまを見ていて悲しいよ…」
    「………本当に言ってもいいんだね…?」
    生気のない目をこちらに向け、今まで聞いたことのない昏い声色出すお兄さまに一瞬怯むもそれでも目を見つめ頷く。

    「俺の両親は俺と3人で旅行の最中に事故に遭って亡くなった…俺だけを遺して」

  • 9121/11/04(木) 18:56:33

    「!!!」
    「あの日から…ずっと思うんだ…『どうして俺だけ遺されたんだ』『俺が旅行に行きたいって我儘を言ったから二人とも亡くなったんだ』とか…」
    「……っ」
    「そう思う度に死にたくなる」
    「っ!!」
    耐え切れなくなりお兄さまの胸に縋り付く。
    何が幸せのバラだ。
    何が『みんなを幸せにできる』だ。
    世界で1番好きな人が底無しの絶望を抱えているのに気づかずにそんなことを言っていた自分が情けない。
    「ああ…だから言いたくなかったんだ…こんなものを言ったら絶対に傷になるから…」
    「だって…だって…!お兄さまはライスを支えてくれたから…っ!ライスも少しでもお兄さまの力になりたいから…っ!」
    「ううん、もういいんだ、ライス」
    お兄さまが頭を撫でながらいつもの朗らかで優しい笑顔をこちらを向ける。

    泣いたところで二人は帰ってこないから

    口には出さないがそう言っているようだった。

  • 10121/11/04(木) 19:00:07

    書きだめ分は以上です。
    続きがんばるぞー。おー!

  • 11二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 19:02:18

    楽しみ

  • 12二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 19:03:30

    すき

  • 13二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 19:23:25

    つらい…

  • 14二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 19:30:07

    俺は辛い耐えられない
    続きが欲しい…

  • 15二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 19:42:48

    頑張れ

  • 16121/11/04(木) 20:38:34

    ちょっとだけど続き行きます

  • 17121/11/04(木) 20:39:24

    ふと枕元に置いてある電話が鳴り、お兄さまが反射的に受話器を取る。
    「もしもし…はい…ああ…そうですか…わかりました…今そちらに行きます…」
    「お兄さま…?今の電話は…?」
    「病院からだよ…両親が亡くなってから面倒を見てくれたじいちゃんがもうやばいって…」
    お願い神様。お兄さまはこんなに優しい人なのに、何も悪い事をしてないのにこれ以上何も奪わないで。これ以上はお兄さまが壊れちゃうよ。
    「本当にごめんね…ライス…お客さんなのに留守番よろしくね?」
    力無く立ち上がり、上着を羽織り、鞄を手に取るお兄さま。
    「遅くなるようだったら夕飯のビーフシチュー、好きなだけ食べてもいいよ?」
    それをただ見ているだけの自分。
    「器とスプーン、ここに置いておくね?」
    …このままでいいのだろうか?
    「ああ、シチューを温めるときは弱火にして熱が均等に通るように混ぜてね?」
    …よくない。
    「じゃあ…行ってきます」
    例え絶望に塗れても、お兄さまを独りにしたくはない!!
    「お兄さま!!」
    「!?」
    「ライスも…ついてく!」
    そう宣言した後に部屋を沈黙が支配する中、お兄さまの表情が作り笑顔から苦痛の表情に歪み、
    「頼む…」
    消え入りそうな声でそう返事をした。

  • 18121/11/04(木) 20:45:00

    倒れそうになるお兄さまの体を何度も支え、ようやくお兄さまのおじいさまがいる病院に到着した。
    個室にはお医者さんと看護師さん。その中央のベッドにはおじいさまが寝かされていた。
    「この人が…」
    「俺のじいちゃんだ。…数年前、脳出血で入院してからずっと寝たきりなんだ」
    「…おじいさま」
    おじいさまに声をかけようとするとお兄さまがライスを手で制す。
    「ムダだよ…入院して以来、あんな状態なんだ。…もう、誰が誰なのかわからないんだ」
    「…お兄さま。奇跡を起こそうよ」
    「…え?」
    「ダメダメだったライスがお兄さまがいてくれたおかげで沢山のレースに勝てて、みんなを幸せにできたんだよ?だから、諦めないで何度もおじいさまを呼ぼうよ。ライスがいるから、お兄さまも奇跡が起きるよ」
    「……!」
    お兄さまがライスから離れ、おじいさまに歩み寄る。その足取りは力強いものだった。

  • 19121/11/04(木) 20:51:22

    「じいちゃん、俺の声が聞こえる?俺ね、今日はじいちゃんに紹介したい人がいるんだ。あそこにいる黒髪の背の低いウマ娘がわかる?前に言ったライスシャワーって娘だよ。…俺が初めて担当した娘で今日が卒業なんだよ。あの娘はとても頑張り屋で、賢くて…みんなを幸せにできる凄い娘なんだ。じいちゃん、ライスの方を見てあげてよ。こんな俺でも誰かを支えることができたんだから…!」
    お兄さまがおじいさまの手を握り話しかける。

    ふとおじいさまの首が動き。
    ライスと目が合って。
    どこかお兄さまと似ている笑顔で微笑みながら、そのままゆっくりと眠った。

    「ライス…ありがとう…じいちゃん最期に…最期に笑ってくれたんだ…ライスを信じてよかった…ほんとうにありがとう…」

  • 20121/11/04(木) 20:52:43

    飯食ってきます。ところでこれウマ×トレ♂ですよね?

  • 21二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 20:56:00

    大丈夫、ウマ×トレ♂とトレ♂×ウマの区分はわからんけど心配するようなことは無いはず
    それはそれとして出力スピード予想より早かったのでビビった
    保守の必要性もなさそうか

  • 22121/11/04(木) 21:53:01

    痛恨の誤字発見。ロブロイさんをノブロイさんと書いてました。誤字脱字は読者を小説の世界に引き込めなくなるし第一キャラの名前間違いはそのキャラのファンに失礼なので気をつけていきたいです。

  • 23121/11/04(木) 22:31:52

    店出る前に待ち時間で書いた分載せます

  • 24121/11/04(木) 22:32:31

    「ライス、お待たせ。…外すっかり暗くなっちゃったね」
    病院の手続きを終えたお兄さまが戻ってきた。また歩みに力が無く…いや、むしろこの世から消えてしまいそうな雰囲気を出していた。出かけた時と同じようにお兄さまを支えるように横にくっつく。
    「お兄さま、大丈夫…?」
    「…ちょっと、いや、だいぶ辛いな」
    側から見れば仲睦まじいカップルに見えるかもしれない。けど、ライスはただ消えてしまいそうな人を支えてるだけなんだ。清い関係とは言えない。

  • 25121/11/04(木) 22:35:30

    病院の敷地外に出て数歩、お兄さまは足を止めて空を仰いだ。黒色の空には季節外れの雪が降っていた。
    「…俺、本当に独りぼっちになってしまった…」
    本当にお兄さまは独りぼっちになってしまった。もう誰もお兄さまの全てを語れる人はいなくなってしまった。
    「…これからどうやって生きていけば…っ」
    お兄さまが震えた声を出す。これからも人一人の身では抱えきれない絶望を胸に秘めたまま生きていくのだろう。
    ライスはそんなことはさせないと心に決めたんだ。でも、このやり方はお兄さまの心の傷に付け込むみたいで卑怯かもしれない。それでも。

    「お兄さま、ライスと家族になればもう独りぼっちじゃないよ?」

  • 26121/11/04(木) 23:47:54

    ラストスパートです。

  • 27121/11/04(木) 23:49:56

    「…ライス?君は何を言ってるかわかってる?」
    「うん…ライスシャワーは…貴方に結婚を申し込みます」
    「何のために?同情?やめときなよ…」
    「同情のためじゃないよ。貴方が…世界で1番好きな人だから…です」
    「ライス、結婚するってどういうことかわかってる!?パートナーの苦しみも…悲しみも…一緒になって背負うんだよ!?」
    「うん。その苦しみも悲しみも背負う覚悟があるよ」
    「…っ!…本当に俺なんかでいいの…?」
    ぼろぼろとお兄さまが涙を流す。悲しいお話を読んだ後も、ライスがURAファイナルズで優勝した時も、卒業式の時も、おじいさまが亡くなった時すら涙を流さなかったお兄さまが初めて泣いた。
    その表情は他の人から見ればみっともないかもしれない。けど、ライスには救いを求めている少年の様にも見えた。
    「本当に俺なんかでいいのかよ…っ!俺は祝ってくれる家族も…これから生きていく理由すら無くなった抜け殻みたいな奴なんだよ…っ!」
    何も言わずにお兄さまの顔を胸に抱き寄せるとお兄さまは跪き
    「ライス!!もうやめろよ!!そんなことされたら…っ もう離れたくなくなるだろぉ…っ!」
    そう泣き叫んだ。それでもお兄さまはライスを引き剥がそうとはしなかった。
    「ライスはお兄さまを離さないよ。これからも独りぼっちにさせないよ。もう、お兄さまが独りで苦しまないようにするよ」
    「…うああああっ!ライス!ライス!!俺はっ!…もう俺はっ…!嫌だ!!独りぼっちは嫌なんだ!もう俺を離さないでくれぇぇっ!」

    ──粉雪が舞う薄暗い広場で一人の男の慟哭が鳴り響く。悲鳴そのものの叫び声は、数十年も胸に溜まり続けた絶望を吐き出す音だった。

  • 28二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 00:23:11

    重い…けど好き…

  • 29121/11/05(金) 00:25:52

    「はぁー…あーあ。泣いた泣いた。こんなに泣いたのはいつぶりなんだろーなー」
    数十分後、泣き止んだお兄さまは声は枯れているけどどこかスッキリした表情でその場をブラブラとぶらついていた。
    「…で、本当に大丈夫なの?結婚」
    「うん!ライス、お兄さまを支えるって決めたんだよ!」
    「あー…そうじゃなくて…未成年との結婚って親の同意が無ければ認められないんだよ?」
    「あっ」
    そうだった…お兄さまのことを想うあまり、お父さまとお母さまのことが頭から抜け落ちてた。
    「『あっ』って…!もし『娘はやらん!』なんて言われたらどうするの?」
    「あっあぅあぅ…」
    「…その時は二人で何処か遠いところに行っちゃおうか?」
    後ろからそっと抱きしめられる。その腕は少しだけ震えていた。
    「あのね、お兄さま。お兄さまのことお父さまとお母さまに話したことがあるんだけど」
    「うん」
    「『素敵な人だね!一度会ってみたい!』って言ってたから…その…結婚も許されると思うよ?」
    「…なーんだ!俺の取り越し苦労じゃんかー!」
    そのままの体制で持ち上げられてぐるぐるとコマみたいに一緒にその場で回転する。お互い少し気持ち悪くなったので一旦その場でしゃがんで一休みをした。

  • 30121/11/05(金) 00:42:25

    「お兄さま」
    「うん?」
    「今…幸せ?」
    お兄さまにそう質問すると、俯いて黙ってしまった。お兄さまはまだ、自分が幸せになっていいのか迷っているのかな?
    でも大丈夫。少しずつでも、時間をかけてもいいから、お兄さまが幸せになれるように頑張るよ。
    どんな大地でも花が咲くように。お兄さまの心には絶望という泥がまだ残っているかもしれないけど、いつか幸せでいっぱいにするから。

    だから、もう泣かなくていいよ。

    「とりあえず、一旦家に帰ってビーフシチューを冷蔵庫に入れなきゃ!」
    「あれ?夕ごはんは?」
    「ライスのご両親にご挨拶するって予定ができた。明日、食べよっか?」
    「うん!明日食べようね!」
    「そうだね。また、明日」

    おしまい

  • 31二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 00:55:09

    良い…
    素晴らしいSSをありがとう

  • 32121/11/05(金) 00:57:17

    あとがき

    お兄さまがやってそうなこと|あにまん掲示板https://bbs.animanch.com/board/109465/このスレの逆バージョンです。お兄さまは紳士の嗜みでボクシングをやってそうbbs.animanch.com

    きっかけは自分が建てたこのスレで、みんなびっくりするほどのイケメン行動をするお兄さま像を作り出すのを見て、スレの140に「お兄さまって心の何処かに闇とか傷を抱えていそう」って書き込んだんです。そこから色々考えっていって思いついたのはのは「一見完璧超人イケメンだけど実はサバイバーズギルトでPTSD持ちお兄さまを救うライスのお話」でした。こう、完璧を演じ続けた男の人がボロボロになって自分より年下の女の子に泣き縋るのっていいですよね。そういう絵を描ける人は描いて欲しいし、作品があれば教えて欲しいです。

    かなり重たい作品になりましたが、見ていていただきありがとうございます。ロブロイさんとファンには申し訳ないことをしました。

  • 33121/11/05(金) 01:00:39

    あとお兄さまの声優さんは豊永利行さんで再生されます。

  • 34二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 01:02:48

    素晴らしいSSをありがとう

  • 35二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 02:15:24

    孤独なトレーナーの支えになってあげるライスの健気さにグッときました。ありがとう。

  • 36二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 06:31:41

    これはいいものだ

  • 37二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 11:30:39

    このレスは削除されています

  • 38121/11/05(金) 16:41:52

    エピローグが書きたくなったので書きます。

    「ひーっ、遅くなった遅くなった!」
    トレーナー会議が長引いて夜の10時になってしまった。
    愛する妻には遅くなるって連絡をしたが、あまりにも遅すぎだ。もう寝てしまってるかもしれない。
    小走りで家に着き、鍵を音を立てないようにゆっくり外し、そっとドアを開ける。部屋には電気がついていたが、ライスは椅子の背もたれに体を預けて眠っていた。
    「寝づらいだろうに…悪いことしちゃったなあ…」
    手を洗いながらそっと独り言を溢す。

  • 39121/11/05(金) 16:59:43

    とりあえず、ライスをベッドまで運ぼうとしようとしたとき、ふと彼女が手にしていた本に気付く。
    PTSDに関する心理医学の本を持っていた。それも何度も読んだことがあるのか表紙が少しよれていた。
    「ん…おかえりなさい…」
    「ライス…」
    ライスが目覚めてこちらに微笑みを向ける。そこには遅くなったことを責める意思が全くなかった。
    ……この娘は、俺に想いを伝えたときに、苦しみも悲しみも背負う覚悟があるって言った。その覚悟は本当だったんだな。
    ああ。俺は本当にこの娘に支えられてばかりだ。お互いに支え合うのが理想的だというのに何かこの娘の頑張りに報いなければいけない。
    …あの日以来、自分だけ生き残っておいてその気持ちになってはいけない。口にしてはいけない。烏滸がましいと縛り続けていたものがある。
    でも…もう赦してもいいだろう。この娘のためだ。

    「ライス。俺、すごく幸せだよ」

    おしまい

  • 40二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 19:44:20

    エピローグ来てる…
    2人共ずっと幸せでいてくれ…

  • 41二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 19:50:17

    永久の幸せを願うばかりだ…

  • 42二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 23:19:23

    やっぱライスとお兄さまのコンビ大好きだわ…

  • 43二次元好きの匿名さん21/11/06(土) 09:47:58

    あげ

  • 44121/11/06(土) 15:47:35

    なんだかこの設定でライスとお兄さまの新婚あまあま生活を不定期に書きたくなってきました。
    ネタとしてはライスとうまぴょいしたせいで腰をいわすお兄さまや一緒にポテトサラダを作る話を考えてます。

  • 45二次元好きの匿名さん21/11/06(土) 23:30:41

    >>44

    ありがてえ…

オススメ

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