- 1二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 23:14:16
とあるウマ娘と装蹄師の会話
「君と出会ってからもう11年になるね。」
男はウマ娘の前に跪きながら言った。彼はトレセン学園で装蹄師をしている。蹄鉄の交換はもちろん、足やシューズの状態を確かめ調整をし、日々トレーニングに励むウマ娘達を支えるのが彼の仕事だ。
「そんなになるんですね。」
ウマ娘はベンチに座り、足を彼に差し出しながら言った。男は彼女の足を触診しながら続ける。
「僕がまだ研修中の時だった。君もあの頃はもっとやんちゃだった。キツく当たられたこともあったね。」
彼女は照れくさそうに答える
「その節はご迷惑をおかけしました。あの頃は勝つために必死だったんです。いつもイライラしてて。未熟者でした。」
男は笑いながら言う
「今でもたまにちょっかいをかけてくるけどね。」
「それはあれですよ。信頼の表れってやつです。」
二人は互いに笑いあう。
「君は長いこと走ってきたけど足に関してはとても丈夫だった。苦労したことは一回もなかったね。あの過酷なレースの中で、とてもすごいことだよ。」 - 2二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 23:14:46
彼女は障害競走を専門に走る障害ウマ娘だった。ウマ娘のレースの中でも一際過酷なレース。長い距離を数多の障害を越えながら走り抜ける。レース中に転倒して負傷し、選手生命を絶たれてしまったウマ娘も多い。そんな過酷なレースを彼女は8年間走り続けた。男は蹄鉄をシューズに合わせながら言った。
「でも、足を診るのは今日で最後か。時間がたつのはあっという間だね。」
彼女は引退レースを3日後に控えていた。年の暮れに行われる中山大障害をもって長きにわたる競争生活に幕を下ろす。男はシューズに蹄鉄を打ち付ける。力強く、正確に、無事に帰ってきてほしいと願いを込めて。
最後の調整を終え、靴紐を結ぶと彼女は立ち上がり、男に向かって深々とお辞儀をした。
「今まで支えてくれて本当にありがとうございました。」
「こちらこそ、君と出会えて本当に良かった。」
別れの挨拶を終えると彼女はグラウンドに向かって歩いていく。その後ろ姿に向かって男は呼びかけた。 - 3二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 23:15:23
「――オジュウちゃん!」
そう呼ばれたウマ娘は振り返る。男は気合を入れるように言った。
「気を付けて!」
彼女は微笑みながら答えた。
「……ありがとう!」 - 4二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 23:16:56
【引退オジュウチョウサン特別企画】「無事に帰って来てと願いを込めて」11年の付き合いの装蹄師が最後の蹄鉄打ち《引退まであと2日》
この動画を見て衝動的に書きました。SSを書くのは初めてなので読みづらかったらすみません。
- 5二次元好きの匿名さん22/12/26(月) 23:33:24
1日遅れでいいプレゼントをもらいました……ありがとう