【CP?】ここだけRED後のルフィの夢に1羽のうさぎが出てくる世界線

  • 1二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 20:12:14

    眠りについたルフィの前に現れた、赤と白のツートンカラーのうさぎ
    うさぎも、自身の姿とルフィの夢の中に居る事に戸惑っている模様

    (なお関係性は不明だが、歌姫はレッドフォース号で眠り姫状態である)

  • 2二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 20:12:35

    なんだそのかわいいサムネ

  • 3二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 20:13:19

    建て直し?
    イラストかわいい

  • 4二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 20:15:56

    建て直しです…。サムネは急いで描きました

    「んぁ? なんだここ……夢か?」
    「!?」
    「ん?」
    「……??……!??」オロオロ
    「ウサギか…なんでこんなとk」
    「っ!!」脱兎
    「なッ!? おい、なんで逃げんだよ!」

  • 5二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 20:20:25

    「おい待てって! おーい!」
    「……ッ!」



    「なんだよ、そんな化け物と遭ったみたいな反応するなよな」ゴムゴムの拘束
    「………」(そういえば体伸びるんだった、と言いたげな顔)

  • 6二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 20:22:37

    >>1イラスト素敵です

  • 7二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 20:25:46

    「~~っ!」ジタバタ
    「ああ悪ィ悪ィ」パッ
    「…………」
    「お、逃げねェ--」
    「…………」ズリズリ
    「な……」
    「…………」ジィ…
    「……なんでおれ嫌われてんだ?」

  • 8二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 20:30:48

    「しっかし、おれとお前以外誰も居ないのな」
    「…………」キョロキョロ
    「特にこれといった物も無ェし」
    「…………」ジィ…
    「自分の手なんか見てどうした?」
    「…………」耳へたり
    「へんなやつだなァ~お前」
    「」ムッ

  • 9二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 20:41:50

    「っ!」足ダンダン
    「なんだなんだ? なんか言いてェのか?」
    「」プイッ
    「ん~~?」
    「…………」ピョンピョン
    「あっおい」
    「…………」
    「よく分かんねェけど拗ねんなって」
    「…………」
    「こっち来いよ。ここおれとお前しか居ないみたいだし。独りは寂しいだろ?」
    「…………」ジィ…
    「……餌で釣るか? うさぎって何食うんだ? 肉か?」
    「…………」(そんな訳ないでしょ、と言いたげな目)

  • 10二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 20:45:35

    長々1人で書いたけど、SSにする自信無いんでなんか良いシチュとかあったら自由に書き込んで下さい

  • 11二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 20:47:03

    おれはあにまん民のイマジネーションを信じてる

  • 12二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 20:56:00

    ルフィ
    エレジアの事件後から自分の夢に現れたうさぎが気になる様子。一緒に居ると懐かしい気持ちになるので気に入ってる
    うさぎ
    何故こういう状況になったかは本人にも分からない。ルフィに対して後ろめたい気持ちがあるのか距離を取りがち。歌が好き

    歌姫
    一命を取り留めるも眠り姫状態。
    眠りながら、時々優しい笑顔を浮かべたり、涙を流していたりする

  • 13二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 21:04:19

    ルフィ「ん~~」

    うさぎ「…?」耳ぴょこぴょこ

    ルフィ「よっ」
    (手で押さえてうさぎの耳下ろす)

    ルフィ「ほっ」
    (手を放す。反動でバネのように揺れる耳)

    ルフィ「うはははっ! 面白ェ~~」

    うさぎ「~~っ!」足ダンダン

  • 14二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 21:06:46

    孤独が嫌いなルフィと寂しいと死ぬうさぎか…

  • 15二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 21:13:35

    次第に夢でうさぎに会うのが楽しみになるルフィ
    日に日に元気を取り戻すのは嬉しいが無理をしてるんじゃないなと心配になる一味の面々

  • 16二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 21:17:13

    ルフィ「ウソップが言ってたんだけどよ、うさぎって寂しいと死ぬんだってよ」
    うさぎ「…………」
    ルフィ「おれも死にはしないけど、独りは嫌だな」
    うさぎ「…………」

  • 17二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 21:26:57

    このレスは削除されています

  • 18◆y/gVO9.qs6T.22/12/27(火) 22:55:23

    このままでもしょうがないので少しずつ書きます
    スレを建てたからには命掛けろよ

  • 19◆y/gVO9.qs6T.22/12/27(火) 22:58:25

    .
     私には新時代を創れなかった。

     大好きだった親を信じる事が出来ず。

     救いを求める人達の手を振り払う勇気も持てず。

     大切な幼馴染や周りの人を傷付けた。


     波の音が聞こえる。

     もう目を開ける力も残ってないから確証は持てないけど、もしかしたら私は今、シャンクス達の船に居るのかな。

     こんな私がシャンクスの船の上で死ぬ事が出来るなんて贅沢すぎる。


     ……身体が重く、冷たくなっていくのを感じる。思考する力も鈍ってきた。


     これが"死ぬ"って事なのかな。

    .

  • 20◆y/gVO9.qs6T.22/12/27(火) 23:04:42

    .
    --side.ルフィ


    「いつかきっと……これがもっと似合う男になるんだぞ」


     そう言って笑い掛けてきた幼馴染みは、棺の中で眠ったままシャンクスの船に乗って海の向こうへ消えていった。

     おれはまた、大事な存在を守れなかった。


    「……んぁ……」

     目を開くと、視界いっぱいに青空が映る。いつの間にか寝ていたようだ。ゆっくり体を起こした時、違和感を覚える。

    「どこだここ。サニー号じゃねェ」

     記憶が正しければおれはさっきまでサニー号に居た。エレジアを発ち、次の目的地を目指し海の上を進んでいた筈だ。

     でも今おれの目の前に広がる景色は、見渡す限りの草原と、そびえ立つ風車小屋。遥か遠くにはさっきまで渡っていた筈の大海原が見えた。

     ここは、おれが昔居た場所によく似ている。

    「……フーシャ村か……? いや、違うな」

    .

  • 21◆y/gVO9.qs6T.22/12/27(火) 23:05:57

    .
     一見おれの生まれ故郷のフーシャ村に似ているが、記憶の中の風景とは微妙に異なる。草木と風車小屋と遠くに見える海だけで、人の家らしきものが全く無い。なんだか景色として少しいびつだ。

     ここで、深く物事を考えるのが苦手なおれでも何となく察しがついた。

    「あ~、夢か。これ」

     悪魔の実の能力でもない限り、サニー号の上からこんな場所まで移動するのはあり得ない。直前まで寝ていたとなれば、夢と結論づける方が腑に落ちる。

    「どうせ夢なら肉でも食いたかったなァ~」

     座り込んでいてもつまらない。どうせ夢を見てるなら目が覚めるまで辺りを探索してみるか。とりあえず風車小屋を目指してみよう。

     そう決心して立ち上がった時だった。

     ガサガサッ

     おれ以外にも何か居たようだ。
     背後から聞こえた草の揺れる音に振り向くと、そこには--

    「……うさぎだ」

    「…………」

     耳をピンと立て、目を見開いてこっちを見つめる1羽のうさぎだった。
    .

  • 22◆y/gVO9.qs6T.22/12/27(火) 23:18:22

    .
     --side.うさぎ

     これは一体、どういう事だろう。

     私は地面に這いつくばったまま硬直していた。

     私は、間違いなく生を終えようとしていた。身体が動かなくなっていく感覚をまだ鮮明に覚えている。

     じゃあ何故今私はこうして動けているのだろうか。

     視界も意識もはっきりしてるし、呼吸も出来てる。身体も動くし--

     ……身体……?

     手元に違和感を覚え視線を下ろすと、そこにある筈の5本の指は、白いふわふわした塊になっていた。
    .

  • 23◆y/gVO9.qs6T.22/12/27(火) 23:34:29

    .
    「!!??」

     突然自分の身に起きた異変に驚きの声をあげたつもりだったけど、どういう訳か私の喉は声を出してくれない。

     違和感はそれだけではない。何もかも変だ。
     さっきから、這いつくばってるとはいえ、地面と視線の距離がやけに近いし、音の聞こえ方も違う。耳元を風が吹き更ける度、頭の上がむずむずする。

     ……私が無知なだけで、人は死ぬとこうなるのかな……?

     とりあえず、死んだか生きてるか曖昧なままではいられない。自分の現状を確認しないと、と立ち上がろうとしたのだが--

    「…………っ!!」

     足が思うように動かず、私は前のめりに倒れてしまった。
    .

  • 24◆y/gVO9.qs6T.22/12/27(火) 23:54:22

    .
     ガサガサッ

     思いっきり地面に顔から突っ込んでしまった。

     草がクッションになってくれたおかげで助かった……。

     なぜか今の私は2本足で立つ事が出来ないみたいだ。

     かといって動かない訳にもいかないので、少し恥ずかしいけど赤ちゃんのように四つん這いで草をかき分けて前へ進む。


     ここは一体どこなんだろう。
     いつだったか本で読んだ死んだ人が行く「黄泉の国」という場所だろうか。


    「……うさぎだ」
    .

  • 25二次元好きの匿名さん22/12/27(火) 23:56:14

    このレスは削除されています

  • 26◆y/gVO9.qs6T.22/12/27(火) 23:57:45

    ※一部分抜けてたので修正


    不意に前方から聞こえた声に、頭上の耳がピンと立つ。


     この声は……っ!?


     聞き間違える訳が無い。

     見間違える訳が無い。

     あの時、私が1人で暴走するのを止めてくれて。

     最期に"新時代"の願いを麦わら帽子と一緒に託した。

     シャンクスと同じくらい大切な存在。


     幼馴染のルフィが私の目の前に立っていた。
    .

  • 27◆y/gVO9.qs6T.22/12/28(水) 00:00:40

    .

    プロローグ(再会)終了です。
    もうちょっと書き溜めて、巻き添え規制食らわなければ明日にでも投下します

  • 28二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 07:10:31

    続きが気になる

  • 29二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 07:24:08

    楽しみにしてます!

  • 30二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 11:38:46

    期待

  • 31二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 12:05:08

    うーんかわいい

  • 32二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 12:16:30

    うさぎかわいい
    ルフィに抱っこされたら満更でもない顔してそう

  • 33二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 12:17:45

  • 34◆y/gVO9.qs6T.22/12/28(水) 12:44:14

    沢山の反応ありがとうございます
    今さらながら台本SSでも良かったな~~と後悔しながら投下します

  • 35◆y/gVO9.qs6T.22/12/28(水) 12:45:11

    .
    --side.???

     日は沈み、空も海も闇に覆われた。海の様子も穏やかで、わずかな波音しか聞こえてこない。

    「見てみろ、ウタ。今日は月が綺麗だぞ」

     返事は返ってこないと薄々分かっているものの、ベッドで眠り続ける娘に語り掛ける。

     今宵は満月だ。窓から月光が差し込み、赤と白の2色の髪が光を受けきらきらと輝いていた。まだウタが船に居た頃、おれとお揃いの髪色だと自慢気に笑っていたのを思い出す。
    .

  • 36◆y/gVO9.qs6T.22/12/28(水) 12:46:40

    .
    そっと頬を手でなぞる。映像越しやエレジアで何度か見てはいたが、こうしてまじまじと顔を見つめるのは久方ぶりだ。

     記憶の中のあどけない子どもが、随分綺麗なレディに成長したものだな、と1人感傷に浸る。

     こんなまだ若い娘が、一体どれほどの期待の重圧を背負っていたのだろう。
     何故自分は傍に居てやれなかったのだろう。後悔の念がふつふつと湧き続けて止まない。

    「……不甲斐ない父親ですまない」

     歌姫は変わらず静かに寝息を立てていた。

    .

  • 37◆y/gVO9.qs6T.22/12/28(水) 12:48:52

    .
      --side.うさぎ

     状況に頭の処理が追い付かない。

     船の上で死んだと思ったら全く見覚えの無い草原に居て、身体の様子もなんだかおかしくて、目の前には別れを告げた筈の幼馴染が居る。
     私は今どういう状態にあるのだろう。分かる人が居るなら今すぐ教えてほしい。

    「おれ以外にも生き物居たんだな~」

     ぐるぐると思考を巡らせていると、視界の端に、こちらへ向かってルフィが手を伸ばすのが見えたので慌てて後退する。

    「ん?」
    .

  • 38◆y/gVO9.qs6T.22/12/28(水) 12:49:54

    .
    何も分からない事だらけだけど、ひとつだけやるべき事が分かっている。それは……

    「……っ!!」

    「あっ、おい!?」

     今すぐルフィから逃げる事!

    「おい待てよ! なんで逃げんだ!?」
    .

  • 39◆y/gVO9.qs6T.22/12/28(水) 12:51:50

    .
    そんなの決まってる。あんな事しておいて、ルフィの心も散々傷付けて、今さら合わせる顔なんか無い。

     ……あと、最期だからって「帽子が似合う男になるんだぞ」とかちょっとカッコつけて言った後だから単純に恥ずかしいし。


     一目散に逃げるヒトの事を「脱兎のごとく」というらしいけど、今の私はまさにそれだ。
     いつの間にか速く走れるとか、この場所の事とか、私の生死とか、今はどうでもいい。早いところ逃げ出して身を隠そう。


     シュルルルルッ ガシッ

     そんな私の考えは、次の瞬間聞こえてきた鞭のような音によって砕かれた。
    .

  • 40◆y/gVO9.qs6T.22/12/28(水) 12:54:11

    .
     --side.ルフィ

     シュルルルルッ ガシッ

    「ひでェな~。そんな化け物と遭ったみたいな逃げ方しなくてもいいだろ」

     すごい勢いで逃げようとするうさぎに向かって右腕を伸ばして捕まえる。

     別に野生の生き物なんだから放っておいても良かったんだが、おれの心の奥底の何か本能のようなものが「こいつを手放すな」と言っている気がしたのだ。

    「…………」

     伸ばした手の先でうさぎが、「そういえばそうだった」と諦めた様子で項垂れている。

     何故そう思っているのか、それがおれに感じ取れるのか、よく分からないけどまあそこら辺は今は気にしてもしょうがない。腕を縮めてうさぎを手繰り寄せる。
    .

  • 41◆y/gVO9.qs6T.22/12/28(水) 12:56:08

    .
    「よっと」

     近くでまじまじと見てみると、変わった見た目をしているな……。

     熊みたいに大きくて凶暴な奴や、猫みたいに振る舞う青い奴に比べたら平凡な方だけど、赤と白の2色の毛並みにすみれ色の目を持つ奴はあまり見たことがない。

     それにおれはなんだかこの瞳を、どこかで見たことがあるような--

    「~~~~っ!!」

    「うおっ!?」

     ずっと掴まれたままなのがストレスだったのか、身をよじって暴れている。思わず手を離してしまった。

    「っ!」

    「あっ、悪ィ! 大丈夫か!?」
    .

  • 42◆y/gVO9.qs6T.22/12/28(水) 12:58:15

    .
     うさぎは手元から滑り、地面に落ちる。うさぎの骨は脆いって聞いた事があるから一瞬ひやりとしたが、下が柔らかい草の上で助かった。

     なんかすげーおれの事睨み付けてるけど。

    「悪かったって! せっかくだからよ、少し話そうぜ!」

    「…………」

    「おれはルフィ。よろしくな」

    「…………」

     互いに棒立ちでも何も進まないので、座り込んで目線を合わせ話しかけるが、訝しげな顔をして目をそらされてしまう。言葉は伝わっているのだろうか。

    「お前は? 言葉は喋れるか?」

    「…………」

     そう問い掛けるとうさぎは少しだけ口を開き、再びつぐんだ。やっぱり普通の動物だから喋れないのか、それとも口は利けるが喋りたくないのか。

    .

  • 43◆y/gVO9.qs6T.22/12/28(水) 13:02:02

    .
    「何話すかなー」

     細かい事は今は置いておこう。そう決めておれはしばらくうさぎにあれこれ話掛けた。

     海賊王になる為海を冒険してること。途中でたくさん面白いやつにあった事。その中で、頼りになる仲間と出会えた事。

     最初は困ったような顔をしていたうさぎも、おれがべらべらと喋る内におれの顔から視線を外さなくなった。真剣に聞いてくれているのだろうか。

     正直おれはどこかでこいつの事を「おれの夢の中で生まれた架空の存在」くらいの軽い認識しか持っていなかった。だがさっきから反応を見る限り、こいつもおれのように明確な意思を持っているのではないかと思えてきた。

    「なあ、お前って--」

     そう問い掛けた時、ふわりと身体に浮遊感が生じた。
    .

  • 44◆y/gVO9.qs6T.22/12/28(水) 13:03:28

    あー、ルフィって「ぜ」って言わないな。
    しつれいしました

  • 45◆y/gVO9.qs6T.22/12/28(水) 13:04:32

    .
    実際に体が浮いている訳ではない。体の感覚がぼやけてきて、意識がゆっくり霧がかかるように薄れていく。眠る前の時と近い感覚だ。

    だが今夢の中に居る場合、これは--

    「もう目が覚めるのか……?」

    「…………!」

    「おれ、まだお前のこと……聞いてな……」

    「…………」


     不安そうにおれの顔を覗き込むうさぎの顔を見つめながら、おれは意識を手放した。

    .

  • 46◆y/gVO9.qs6T.22/12/28(水) 13:07:22

    .

    再会その2終了です

  • 47二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 13:59:09


    うさウタ概念もっと増えてほしい

  • 48二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 15:47:16

    うさウタの足ダンかわいい

  • 49二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 15:48:39

    …良いな

  • 50二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 18:41:56

    うさウタ可愛すぎて思わず書いてしまった

  • 51二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 18:42:27

    >>50

    神絵師め!

  • 52二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 19:48:54

    >>50

    かわいい!

  • 53二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 21:53:20

    ほしゅ

  • 54二次元好きの匿名さん22/12/28(水) 23:49:58

    >>50

    すごい

  • 55二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 02:28:40

    来年は卯年だっけ
    紅白兎は縁起が良さそうだからうさウタはやれ

  • 56◆y/gVO9.qs6T.22/12/29(木) 07:53:02

    保守がてら出来てる部分だけ…
    肝心のうさウタ出てねえ!!

    イラスト嬉しいです。うさウタ流行れ

  • 57◆y/gVO9.qs6T.22/12/29(木) 07:53:35

     --side.ルフィ 朝

    「…………んが」

     ぱちりと目を開けると、いつもの見慣れた船内の男部屋の天井が目に入った。

    「…………」

     さっきまで一緒に居たうさぎは、と見回し探してみるも居るのはおれだけだった。
     もう一度ベッドに倒れ込む。

    「……やっぱ夢かァ」

     なんでおれはこんなに残念がっているんだろう。

  • 58◆y/gVO9.qs6T.22/12/29(木) 07:54:38

    ・・・・・


     次に目指す場所はまだまだ遠い。
     延々と続く海を渡る内にあっという間に日が沈んでしまった。

    「いやはや、綺麗ですねェ」

     階段に腰掛けバイオリンを演奏していたブルックが空を見上げながらぽつりと呟いた。

    「昔同じように夜空を眺めていたら、当時の船長にからかわれましたが……。芸術家はどうしても月に惹かれてしまうんですかね、なんて。ヨホホ」
     
     つられて見上げてみると空の上には太陽の代わりに顔を出した月や星達が輝いている。

    「おー、すげェでっけー月だな」

    「ルフィさん、月の模様は何に見えますか?」

    「もよう? ……あー、あれか!」

     ブルックの言葉を受けて、改めてじっくり月の模様を見てみる。昔コルボ山でエースとサボと暮らしていた時、何に見えるかでめちゃくちゃ言い争った記憶がある。

  • 59◆y/gVO9.qs6T.22/12/29(木) 07:56:11

    『絶対カブトムシだ! あの上の方のが角だ!』

    『どこをどう見たらそうなる。ありゃ角じゃなくてライオンの口だ。上を向いて吠えてるライオンだろうが』

    『カブトムシ!』

    『ライオンだ!』

    『『サボはどう思う!?』』

    『えーと……おれはワニかなァ』

    『ワニィ!? 新しい派閥作んなよ!』

    『しょうがないだろ、そう見えたんだから!』


     くだらないと笑われそうだが今となっては懐かしい思い出だ。

     そんな会話をした事を話すと、ブルックは嬉しそうに笑いながら仰け反った。

  • 60◆y/gVO9.qs6T.22/12/29(木) 07:57:16

    「ヨホホホ! いやァ、どこでも同じなんですねェ」

    「私の昔居た船でも、皆してアレに見えるコレに見える、いい歳した大人達がムキになって争ったものです。ちなみに私はエースさんと同じく吠えるライオン派でした」

    「ブルックもか!? ……どう見てもカブトムシだろ……」

    「そういえば、色々な意見の中で私の印象に残っているのは「餅をつく兎」でしたね」

    「うさぎ?」

    「臼と杵……要はもち米を潰して捏ねる道具なんですけど、それを使ってお餅を作っている兎に見えるらしいですよ。お伽噺みたいで可愛らしいですよね、ヨホホ」

    「うさぎ、か……」

     正直おれにはどう見ればうさぎが浮かび上がってくるのか分からないけど、面白い見方だなと感じた。

    「……今日もあいつに会えっかな」

     ブルックに聞こえないよう小さく呟く。

     夜の海にバイオリンの音がよく響き渡っていた。

  • 61◆y/gVO9.qs6T.22/12/29(木) 07:58:08

    とりあえずここまで
    自分でもこのSSがどこまで膨らむか怖い

  • 62二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 18:39:39

    夢でしか会えないかわいいうさぎ
    なんか良いよね

  • 63二次元好きの匿名さん22/12/29(木) 23:28:39

    これはいい概念

  • 64二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 03:34:49

    夜にブルックがバイオリンを奏でながらルフィと穏やかに会話する..いいね

  • 65◆y/gVO9.qs6T.22/12/30(金) 07:50:43

    やっと書き込めるようになったので念願(自分が)のうさパート
    保守本当にありがとうございます

  • 66◆y/gVO9.qs6T.22/12/30(金) 07:51:11

     --side.うさぎ

    「…………!」

     途絶えてた意識が覚醒する。ルフィが眠そうに倒れ込んだ後、私も眠ってしまっていたようだ。

     体を起こして辺りを見回すと、眠る前までとは全く異なる場所だった。一面に広がる草原ではなく、木々が生い茂る森の中に居る。


     それと、ルフィの姿が見当たらない。

     私が寝ている間に、入れ替わりで起きてどこかへ行ってしまったのだろうか。


    「!」

     あれこれ考えていると、向こうの方に池があるのを発見した。ぴょんぴょんと後ろ足で地面を蹴りながら駆け寄る。
     いつの間にか今の身体の使い方も慣れたものだ。

  • 67◆y/gVO9.qs6T.22/12/30(金) 07:53:18

    中を覗き込むとそこには、真っ白な体に赤い斑点、顔よりも大きくて長い耳を立てている生き物が映っていた。

     池の中の生き物に向かって手を振ると、その子もふりふりと小さな前足をこっちに振り返してくる。

    「…………」

     ……薄々予感はしていたけど、どうやら私はうさぎになってしまったみたいだ。

     我ながら随分可愛い姿になったなあ、とどこか冷静な気持ちで水面に映る自分を眺める。

     それと、いくつか気付いた事がある。

     今更かもしれないけど、ひとまずここは「黄泉の国」とかそういう類の世界ではないようだ。私はともかく、あのルフィがこんなに早く死ぬ訳が無い。ていうか死なないでいてほしい。

  • 68◆y/gVO9.qs6T.22/12/30(金) 07:55:11

    あの時ルフィが漏らしていた言葉。

    --『もう目が覚めるのか……?』

     多分ルフィには「夢を見ている」って自覚があるのだと思う。という事は、ここはルフィの夢の中の世界の可能性が高い。そう考えれば今の私の姿や、突然景色が変わったりしたのも少しは納得が行く。

     ただそうなると生まれる疑問は、なんで私がルフィの夢に入っているのかだ。

     最期にそんな事を願った覚えは無いし、ウタウタの力には、ウタワールドに人を呼び込む事は出来ても、私が人が見ている夢の中に入り込むなんてできない。

     ……てなると、死んだ私の魂が偶然ルフィの夢に入り込んでしまった……ってところかな?

  • 69◆y/gVO9.qs6T.22/12/30(金) 07:56:54

    「--おっ、居た! おーい! うさ男ー!」

     ウキウキとしたルフィの声によって私の思考は遮られた。満面の笑顔で手を振りながらこっちに走ってくる姿が見える。

     私の仮説が正しいなら、外の世界ではもう1日経って、ルフィはまた眠りについたのだろうか。


     ……今、何かおかしかったような……。


    「ここに居たのかうさ男ー!」

    「また会えたな! 起きたら昨日とは全然違うとこに居たからよ、もう会えないかと思った!」

     …………やっぱり聞き間違えじゃなかった。

     もしかしなくても「うさ男」とは私の事だ。うさぎだからうさ男って、安直にも程がある。ていうかそもそも私女だし!!

    「んっ? なんだ地団駄して。……ああ、名前の事か?」

    「夢とはいえおれ達2回も会えたんだからもう友達みたいなもんだろ。だからさっき考えた!」

  • 70◆y/gVO9.qs6T.22/12/30(金) 07:58:23

    そう言って眩しい笑顔を見せるけど、問題はそこじゃない。抗議しようと声をあげようとする。

    「……ブゥ、ブゥ…!」

     ……でもやっぱり今の私は、言葉はおろか鳴き声すら出ない。せいぜい鼻がぶぅぶぅとなるだけだ。

    「なんだなんだ? もしかして気に入らねーのか?」

    「……っ!」

     そうだよ、どうせ名前を付けるならもう少しまともなのにしてよ。そう伝える為強く何度も頷く。

    「良いと思ったんだけどなー。また考え直しかー」

    「……それと、さっきからずっと気になってたんだけどよ……なんでおれから妙に距離取るんだ?」

  • 71◆y/gVO9.qs6T.22/12/30(金) 07:59:29

    「…………」

     そりゃあ……。逃げるのは無駄だって分かってるからもうしないけど、やっぱり堂々とはルフィと顔を合わせづらい。

    「もっと傍に来いよ。今この場所はおれとお前の2人きりっぽいし!」


    「独りっきりは、寂しいだろ?」

     最後に小さく吐き出した言葉に、私の長い耳が反応して揺れた。


     なんだろう、この感じ。強い違和感を覚えた。

  • 72◆y/gVO9.qs6T.22/12/30(金) 08:00:50

     ほんの一言、一瞬だけだけど、いつもの明るいルフィのイメージとは違う低く重いトーンの声だった。

     目が合わないか怖かったけど、恐る恐る顔色を見てみる。変わらず笑顔のまま私をじっと見つめている。だけど……。

    「ん? ……おっ! なんだ、素直じゃねェなあ」

    「…………」

    「よーっし! それじゃ今日は少し歩いてみるか! ここら辺な、おれが昔暮らしてた山によく似てるんだ」

     私がルフィの足元まで距離をつめた事に気分を良くしたのか、上機嫌に鼻歌まじりで先を歩き始めた。

    「その山はコルボ山っていうんだけどな、おれが子どもの頃じいちゃんに--」


     ルフィの背中を追いながら、昔話に耳を傾ける。

     その一方で、さっきのルフィの様子がどうにも引っ掛かってた。

    『独りっきりは、寂しいだろ?』

     いつものルフィの無邪気な笑顔とは微妙に違って、どこか儚げで辛そうに見えたのは私の気のせいなのだろうか。

  • 73◆y/gVO9.qs6T.22/12/30(金) 08:01:43

    パート2日目終了です

  • 74二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 08:29:28

    うさ男は草
    まあルフィだもんな、とりあえずオスで考えそうというか何も考えずにオスだと思ってそう

  • 75二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 09:01:34

    今更なんだけど、スレ画のうさぎかわいい

  • 76二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 16:08:55

    hs

  • 77二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 19:58:30

    待機

  • 78二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 00:24:37

    待ってます

  • 79◆y/gVO9.qs6T.22/12/31(土) 08:05:03

    --side.ルフィ

    「そんで、ワニはちゃんと仕留めたけどおれが足滑らせて川に落ちちまってさァ」

     口を動かしながらどんどん山を登っていく。時折後ろに目をやると、うさぎは小さい体で木の根っこや岩を器用に避けながらついてきている。

     それにしても、うさぎにも言ったが今日の夢の風景は本当にコルボ山に似ている。昨日のフーシャ村もどきは随分ざっくりした印象だったのに。

    「……まるで本当に帰ってきたみたいだ」

  • 80二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 08:05:16

    何だこのスレは
    私に気ぶれと言いたいのか
    いいだろうお望み通り気ぶってやる
    (めちゃくちゃ好きです…うさウタ尊い)

  • 81◆y/gVO9.qs6T.22/12/31(土) 08:05:53

    やがて鬱蒼とした森を抜け、開けた場所に出た。おれの記憶が確かなら、ここで間違いない。

    「……おっ、あった! 確かここら辺に……」

    「?」

    「うはは! 居た居た」

     木の根元のうろを覗き込み、手を伸ばして探ると柔らかいものを握った感触がした。
     勢いよく引っこ抜き、うさぎの目の前に差し出す。


    「見ろ、バカでっけーカブトムシの幼虫!」

    「!!!??」

     ズダァンッ!!!

     どっから出たんだと問いたくなるくらい凄い音を立ててうさぎがひっくり返る。
     だよな。ビックリするよな。おれの掌からこぼれそうなくらいデカいもんコイツ。

  • 82◆y/gVO9.qs6T.22/12/31(土) 08:06:28

    なんの種類か分からないけど、夏の始め頃になるとまるで戦車みたいに立派な成虫になるんだよな。エースやサボと虫相撲で競った事を思い出す。

    「~~~~ッ!!」

    「ってイデェッ!! なんで思いっきり蹴るんだよ!?」

    「プィーッ! プィーッ!!」

    「な、なんか分からねェけど悪かったって。ホントの目的は別にあるよ」

     後ろ足をダンダン踏み鳴らして睨み付けるうさぎの勢いに負けて思わず謝る。幼虫も木のうろに渋々戻した。喜ぶと思ったんだけどな……。


    「今度こそ着いたぞ」

     記憶を辿るように歩き続けてやっと見つけた。

     周りの木々に比べて一際目立つ大木と、その上の方に建てられた木製の小屋。

     おれ達3人の秘密基地だ。

  • 83◆y/gVO9.qs6T.22/12/31(土) 08:08:02

    「なっつかしいなァ」

     しみじみとしながら幹を擦る。

     サボの船出の事件など思い出すとしんどくなる出来事もあったけど、それ以上にこの山には楽しい思い出が詰まっている。

     足元を見ると、うさぎは2本足で立って秘密基地をじぃと見つめていた。気のせいか、すみれ色の瞳が輝いている気がする。

    「どうせだったら入ってみるか?」

     瞬間、おれの顔を見て大きく頷いた。
     結構分かりやすい奴だよな、こいつ。


    「は~~、中までそのまんまだ」

     中に入ると、記憶の中と全く同じ光景が広がっていた。おれ達が居た頃から10年以上経ってるのに、ついさっきまで使われていたように物が乱雑に置かれていた。

     いくらリアルでも、こういう所でやっぱり夢だなって再認識する。

  • 84◆y/gVO9.qs6T.22/12/31(土) 08:09:02

    「なんか変な感じだな。サボとエースも居たら良かったのに」

     窓に頬杖をつきながら思わず呟いた言葉に、うさぎは首をかしげる。まるで2人の話をねだってるようだ。

    「2人の話が聞きてェのか? ……ってもさっき大体話したしな~……なんだ……」


    「……サボは割と優しい兄ちゃんって感じだったな。おれとエースは直接ぶつかりあう事が多かったけど、サボはどっちかってーとそれを止めてくれて……。でもたまにおれ達以上にやべー事思い付くんだよなァ。面白いけどヒヤヒヤする時もあった」

    「そんでエースは……結構おれ怒られてたっけな。出来ねェやれねェって泣き言言うと目ェつり上げて怒るンだよ。すぐカッてなるし、手が出るし。サボは勝負以外で手ェ出す事なんか無かった」

    「…………でも……色んな意味で強かった、な」

  • 85◆y/gVO9.qs6T.22/12/31(土) 08:10:26

    窓から見える景色はあの頃と全く変わらないのに。

     おれは昔より大分デカくなったし、傍にはサボもエースも居ない。

     それが何だか妙な感じがして、あまり口を開く気分にならなくなってしまった。

    「…………」

    「……ん」

     気を遣ってるのか、また足元にすり寄ってきたうさぎの頭を撫でる。気持ち良さそうに目を細める姿がなんだかおかしくて、思わずおれも笑ってしまった。

  • 86◆y/gVO9.qs6T.22/12/31(土) 08:12:08

    2日目終了? 知らないですね…

    保守本当に助かります
    せめて時系列揃えられるよう頑張ります

  • 87◆y/gVO9.qs6T.22/12/31(土) 08:27:22

    ちなみに建てた時はまったくのノープランだったので
    現在の方向性としては友情以上恋人未満て所です

    しててよかったCP?表記

  • 88二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 08:29:25

    良いです、
    そして心の声でルフィエミュできるの本当凄いです!

  • 89二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 08:34:22

    して良かったよ…少しでも2人が親密だとCPでは?って気持ちになる人間も居ると思うので

    ルフィとウタはなんぼでも寄り添えばええんですわ…これ世界の常識ナリ

  • 90二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 15:38:48

    幸せなルフィとウタはなんぼあってもいいですからね

  • 91◆y/gVO9.qs6T.22/12/31(土) 19:14:52

    --side.うさぎ


     …………夢を、見ている。

     さっきまでの自由な世界とは違う、まさに悪夢のような光景だ。


     至る所で物やヒトが吹き飛び、炎が燃え盛る。

     ヒトの形をとった黒いモヤのようなもの達が刀や銃を手に取り、互いに傷付け合っている。

     爆発、銃声、地割れの音、怒号、悲鳴……耳が千切れそうなくらい五月蝿いのに、それとは反対に、心臓の鼓動のような"命の音"がひとつ、またひとつと消えていく。

  • 92◆y/gVO9.qs6T.22/12/31(土) 19:15:31

    何も出来ずに蹲っている事しか出来なかったが、溶岩と炎を纏った一際大きなモヤが、麦わら帽子を被ったモヤに近づいていくのが目に入った。

    『……さまら……だけ……に逃がさん!!!』

     周りの音のせいか、全部は聞き取れなかったけど、麦わら帽子のモヤに対して強い敵意を持っているのだけは伝わった。

     危な--


    『ルフィ!!』


     麦わら帽子のモヤを庇った男の人のお腹を溶岩の拳が貫いた瞬間、辺り一面揺らめいていた炎が大量の黒い小さな音符になって飛散していく。

     勢いよく沸き上がる音符達が巻き起こす風によって、周りの景色が剥がれ落ち、真っ暗な闇が姿を現していく。

  • 93◆y/gVO9.qs6T.22/12/31(土) 19:16:19

    「…………っ!!」

     風圧に吹き飛ばされそうになるのをなんとか堪えていると、音符達の陰から見覚えのある顔が見えた。

     赤と白半々の髪に、白いワンピース、背中には一対の黒い翼。

     今にも泣き出しそうな顔で、麦わら帽子のモヤを見つめていた。


    「(……わたし……!?)」


     "私"に近付こうとしたけれど、さらに増え続ける音符の海に飲み込まれ2人の姿が見えなくなっていく。
     飲み込まれないよう必死にもがくけど、こんな小さな身体での抵抗は無力に等しかった。

     私の意識は再び途切れた。

  • 94◆y/gVO9.qs6T.22/12/31(土) 19:17:52

    今日中にもう少し書き込めたらいいなという願望

  • 95二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 20:31:04

    おや?ここにうさちゃんになったウタちゃんが居るはずなのに…おや?

  • 96二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 07:45:43

    保守

  • 97◆y/gVO9.qs6T.23/01/01(日) 15:34:51

    --side.シャンクス

    「ウタの調子はどうだ」

     用事を済ませ、ウタの眠る部屋に戻ってくる。
     診察を終えたホンゴウは、おれの問いに対してため息をつきながら首を横に振った。

    「相変わらず寝たままだ。体温も脈も正常なんだがな……」


     あの時、意識が朦朧としていたウタに半ば無理矢理予備の薬を投与したが、あと数分でも処置が遅れていたら取り返しのつかない事態になっていたらしい。

     一命は取り留めたものの、過剰な摂取を重ね蓄積されたネズキノコの毒は、想像よりもかなり身体を蝕んでいた。

    「そもそもあの段階で吐血までしていたか 
    らな。内臓なんかの器官にも相当な負担が掛かっている筈だ」

     診察に使ったのだろう医療道具を片付けながら話を続ける。
     ようやく赤みを取り戻し始めた肌の色もエレジアを出た直後は雪のように真っ白で、風前の灯のような命とも言える状態だった。

  • 98◆y/gVO9.qs6T.23/01/01(日) 15:36:42

    「考えられる可能性としては、損傷を受けた肉体自身が回復に全集中しているのか……もしくは、脳に……障害が……」

    「その可能性も覚悟はしておかないとな」

     堪えるように言葉を絞りだそうとするホンゴウに、無理して皆まで言わなくても良いと収める。

     医者としてあらゆる想定をしなければならないという責任感と、皆の大切な娘に起こりうる"最悪の可能性"を考えたくないという思いが拮抗しているのだろう。

     人間にはどうしても手を施せる領域の限界がある。今は寝ているだけだが、いずれおれ達にはどうしようも無い状態になってしまうかもしれない。残酷な選択を強いられるかもしれない。

     だが、それはまだあくまで可能性のひとつに過ぎない。

    「……ホンゴウばかりに任せてはいられない」

     ウタの額に手をそっと宛がう。

  • 99◆y/gVO9.qs6T.23/01/01(日) 15:38:18

    意識を集中すると、頭の中で微かに"気"が揺らめいているのを感じとれた。その揺れは時折大きく広がったり、凪のように穏やかになったり、まるで意思があるように不規則な動きをとっている。そして長い時間視ていると、稀にだがどこかの情景のようなものが伝わってくる事がある。

     ウタにはまだ意識が残ってる。仮に肉体の方に問題が無いとすれば、精神の方に何か障害が起きて目を覚ます事が出来ないのかもしれない。

     確証も医学的な根拠も無い。だがウタの能力のひとつである"ウタワールド"は精神が由来する力だ。まったくの暴論という訳でもない筈。

    「……ウタ、お前は今どんな夢を見ているんだ」

     思いつく限りの方法で足掻いて救ってみせる。それが、今まで娘の心を放ったらかしにしてしまった父親に出来る精一杯の愛情だ。

  • 100◆y/gVO9.qs6T.23/01/01(日) 15:39:37

    数分後無事だったらルフィ視点も投下します

  • 101二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 19:04:15

    無事だったらって、スレ主何する気なんや
    新年早々危ないことしちゃダメだぞ

  • 102二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 23:32:08

    お待ちしております

  • 103二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 07:10:57

    朝の保守

  • 104◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 09:17:12

    --side.ルフィ

    「…………」

    「おっ、やっと起きたか。お前にしては珍し……どうしたその仏頂面」

    「よく覚えてねェけどすっげーヤな夢見た気がする」

    「なんだ夢か。んなガキみたいな事言ってねェでさっさと食え。そこに残しといた」

    「ん」

     寝起きのせいであまり出ない声で答え、のっそりと椅子に座る。心配そうだったサンジも呆れながら再び皿洗い中の手を進める。

     たかが夢だろうが、おれにとっては最悪だったんだから少しくらい態度にだって出る。

     途中まではあのうさぎと懐かしい思い出に浸れてた筈なのに、そこから先の記憶があまり無い。
     悲しい、辛い、悔しいって気持ちだけが残っていて頭が鉛のように重い。

  • 105◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 09:18:18

    「…………」

     それともうひとつ気になる事がある。

     だけどおれは難しい事を考えたり言葉にして纏めて結論づけるのがあまり得意じゃない。漠然としたもやもやが腹の中に溜まり続けている。

    「そういやナミさんが、次着く町で生活品とか買い込むから荷物持ち手伝えって言ってたぞ」

    「お前はロビンちゃんとジンベエと一緒だとよ。おれの同伴相手は野郎しか居ねェってのにまったく羨ましいぜ……」

     サンジの恨めしそうな声と歯ぎしりを聞き流しながら熱々のスープに口をつけた。


    ・・・・・


    「--これで粗方必要なものは揃えたかのゥ」

    「そうね、あとは……」

     ジンベエとロビンがメモを確認しているのを後ろで眺めてると、どこからか歌声が聞こえてきた。

  • 106◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 09:19:51

    『♪どうして あの日遊んだ海のにおいは』

    「っ!!」

     歌声の主を探すと、町の中心にある噴水の近くで住人達が音貝を囲んで歌に浸っていた。
     近くを通りがかった何人かが、怪訝な顔をして集団に話しかける。

    「なァ、それ……例の歌姫のだろ? 国を転覆させようとしたって噂の……」

    「バカヤロッ! そんなの嘘に決まってるだろ。あの娘はただの歌手だぞ」

    「でもあの娘のやろうとしてた事は極端よ。永遠に夢の世界に居ようだなんて」

    「そりゃあ、あの娘のやろうとした事はちょっと……いやかなりヤバかったけどさ。そんな子1人に救ってくれなんてすがったアタシらも悪いんだ」

    「あの娘の歌、おれ大好きなんだ……。新曲とかもっと聞きたいよ」

    「……まァ……分からなくもないが……」

    「今どこで何してるのかしら。また配信してくれたら、おかえりって言ってあげたい」


    「相変わらずの人気じゃな」

    「それだけ彼女には惹き付けられる魅力があったのね」

    「……あいつは赤髪海賊団の歌姫だからな」

     いつの間にか、ロビンとジンベエはおれの隣に立っていた。
     その横顔を見ている内に、おれの中で少しだけ気持ちが固まる。

  • 107◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 09:21:10

    「なァ、ロビン。聞きたい事があるんだ」

    「! ……少し腰を落ち着けて話しましょうか。ジンベエも、大丈夫?」

    「船長からの相談事なら聞く他あるまい」


     人通りが激しい所から外れひっそりと置かれたベンチに腰掛け、おれは頭の中の気持ちを少しずつ吐き出す。

    「前、ロビンは夢について色々書いてある本読んでただろ」


     エレジアに着く少し前、ロビンが読む本をチョッパーが興味津々に覗き込んでいたのを思い出す。

    『なーなーロビン、今度は何読んでんだ?』

    『これは夢について書かれている本よ』

    『夢? 寝てる時に見る方か?』

    『そう。夢に纏わる伝承とか、医学的な観点から見てヒトが夢を見る意義の推測とか、とにかく夢に関係するアレコレを一冊に纏めてあるの』

    『へェ~~! それ、読み終わったらおれも借りても良いかな!?』

    『ええ、勿論』

     "医学"のワードに惹かれたのか、さらに目を輝かせるチョッパーと、そんなチョッパーをニコニコと笑いながら見つめているロビン。

     あの時は「楽しそうにしてんなァ」ぐらいにしか気に留めていなかったけど、今は違う。おれよりずっと色んな本を読んで、知識を持ってるロビンならおれの気持ちに答えを見つけてくれると思った。

  • 108◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 09:22:34

    「エレジアを出てから何日か経つけど、あれから同じような夢を続けて見るんだ。感覚的には"見ている"っていうか、"居る"ってのが近いか。夢の中なのに、まるで現実みたいに自由に動けて、少しだけど夢を思い通りに動かせて--」


     秘密基地で少し過ごしていた時、おれは口寂しさから何気なくこうぼやいた。

    『しっかし腹減ったな~。やっぱよ、どうせ夢なら腹一杯肉とか食いたいよな』

     その瞬間、ぽんっと軽い音と共に、近くのテーブルにオレンジジュースと皿に盛った骨付き肉が現れた。

    『は?』

     おれとうさぎは思わず顔を見合わせる。
     うさぎの方も驚いているようで、目を真ん丸にしておれと肉を交互に見ていた。

     望み通り肉が出てきた事よりも驚きの方が勝ってしまった。だって、「願うだけでモノが出てくる」なんてまるで--


    「……もうひとつ気になる事があるんだ。そこに出てくる、1匹のうさぎ」

    「兎?」

  • 109◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 09:24:16

    「最初は、夢の一部だと思ってそこまで気にしてなかったんだ。でも一緒に居る内にそいつも心があって生きてるように思えてきた」

     驚いている時、悲しそうな時、寄り添った時、態度に出さないけど瞳の中に「寂しい」って心が見えた時、おれの中でうさぎと1人の人間が重なった。


    「…………夢の中に、別の誰かの意識が紛れ込むってあり得る事なのか?」


     迷いに迷って、とうとう口に出してしまった。

     これを聞いた所で何になるというんだ。おれは何を望んでいるんだ。望んだ答えが帰ってこなかったらどうするんだ。

    どこを見る訳でもなく前の方を向いたまま動かないおれを見て、ロビンは特に大きなリアクションを見せずゆっくり話し始める。

    「そうね……昔から夢と魂は結びつけられる事が多かったみたい。非科学的な話になってしまうけど、例えば、寝言を言っている人に話しかけると魂が抜け出て戻らなくなる、先立った人が夢枕に立つ……といった具合に」

  • 110◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 09:26:18

    「私達の中の魂が、寝ている間肉体を離れて活動する、という考えを持っている人は多いみたいね。本来なら"シルバーコード"……身体でいえばへその緒みたいな管に繋がって魂が肉体から離れる事が無いけど、何らかの要因で離れてしまったら……」

    「……誰かの夢と繋がる?」

    「可能性は否定しないわ。「あり得ない」と決めつけては真実を見つける事が出来ないもの」

    「……それに、悪魔の実の力も関わっていれば、現実味も増すわ」

     思わず顔を向けると、ロビンもジンベエも優しく笑ってこっちを見ていた。

     とっくに気付かれてたか。

    「ルフィ、貴方はその仮説をどうしたいの」

    「……おれは……」

     目線を手元に落とす。

     もし、あのうさぎが夢だけの存在ではなく、どこかの誰かだったとして。あいつだったとして。おれはあいつと--

  • 111◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 09:28:21

    「決まったみたいじゃな」

     黙っておれの顔を見ていたジンベエはすくっと立ち上がり、おれの背中をばしっと叩いて活を入れる。

    「手の届く所に戻ってきてくれた好機を無駄にしないよう、しっかり向き合え。もしこっちで力が要るとなれば、わしらも全力でお前らを助ける」

    「……ロビン、ジンベエ、ありがとうな」

    「はっはっはっ! いつまでも萎れた船長を見てられんからのォ」

    「ふふっ、さあ帰りましょう。皆が待ってるわ」

     あいつに一欠片の希望が残っていているのか

     帰る場所はとうに無くなってしまっているのか

     まだ何も分からないけど

     おれはあいつともう一度話がしたい。

  • 112◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 09:30:40

    --side.うさぎ

     ザザァン…ザザァン…

    「…………」

     遠くで揺れる海の音を聞きながら、私は独り考えていた。


     あの時見た光景は、ルフィの心の奥底にある辛い記憶だったのだと思う。直接聞いた訳じゃないけど、多分あの男の人は今はもう会えないエースってお兄さん。それと……。

    「…………」

     最初は、混乱やあんな事をしておいて生きている後ろめたさの方が強かったけど、夢の中でルフィの話し相手でいるのも悪くないなって思い始めてしまっていた。

     でもやっぱり、私はここに居るべきじゃないのかもしれない。
     散々色んな人に迷惑を掛けて、ルフィの心も深く傷つけた疫病神はあいつの傍に居るのに相応しくない。

  • 113◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 09:33:34

    夢の中からどうすれば消えられるんだろう。声が出せない以上ウタウタの力は使えないし、この崖から海に身を投げれば消えるかな。でもルフィの夢で勝手に命を散らせて、何か悪い影響が出たらどうしよう。 

     簡単に死ぬ事が出来ないとなれば、せめてルフィの前から姿を消せばいいかな。

     ルフィが夢の中に来たら、本物の兎のように草木や物陰に身を隠して、現実に戻るまで待ってを繰り返して、そうしていつかこの体が消えるまでひっそりと生きていく。それが一番良いのかもしれない。

     私は悪い奴なんだ。このくらいしなければいけない。大丈夫、寂しくなんかない。

    『ウタ! 勝負だ!』

     寂しくなんか……。

    『なあウタ、またあの歌歌ってくれよ!』

     …………。

    『おれ達の新時代のマークにしよう!』

    「……ぃ……」

     本当に駄目な奴だなァ、私。

    「おーい! おーい!!」

     なんでこんな時にあいつの声が浮かぶんだろ。

  • 114◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 09:35:48

    「よかった、やっぱここに居たんだな!」

     まるですぐ近くに居るみたいに聞こえてくるな……。

    「……ん? おい、聞こえてるか?」

    「!?」

     突然後ろからひょいと持ち上げられ、心臓が跳ね上がる。見上げるとこちらを覗き込むルフィの顔がすぐ傍にあった。

    「なんだよ驚いた顔して。ホントに聞こえてなかったのか? こんなにでけェ耳してんのに」

     うるさいなァ、考え事してたの!

     不思議そうな目をしながら私の耳をにぎにぎと揉んでいるルフィの手を前足で振り払う。

     まったくルフィは相変わらずっていうか何て言うか……。

     ……ますます未練がましくなっちゃう。

  • 115◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 09:37:54

    「……お前にはまだ話してなかったけどさ、おれには、同じ夢を誓った奴が居たんだ」

     私の事を胸元に抱き寄せ、前へ一歩踏み出すルフィ。私の目線からだとあまり見えなかった景色が一気に見渡せた。
     オレンジ色に染まった空、夕陽を受けて光輝く海。あの日ルフィと2人で夢を語り合った場所そのものだった。

    「あいつは、世界を回って自分の歌で皆を幸せにするって言ってた。新しい時代を作るんだって」

     その約束を果たせなかった私への怒りからか、私を抱き締めるルフィの手に少し力がこもった。罪悪感に心臓が握り潰されたような気持ちになる。

     でも、次にルフィの口から出た言葉は私にも予想出来ないものだった。

    「なァ、知ってるか? 海賊は歌うんだぞ?」

    「……?」

     ニッと歯を見せ笑った後、息を深く吸い込んだ。一体何をするつもりなんだろう……。

  • 116◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 09:39:44

    「♪この風はどこからきたのと 問いかけても空は何も言わない」

    「……!!」

     ルフィが歌い始めたのは私が子どもの頃皆の前でよく歌っていた「風のゆくえ」だった。

     昔何度かルフィの歌は聴いた事があるけど、あの頃は調子外れで無茶苦茶だった。

    「♪この歌はどこへ辿り着くの 見つけたいよ自分だけの答えを」

     でも今は何というか……声の抑揚が不安定なのは変わらないけど、それが気にならないというか、むしろ力強くて、聞いているだけで心が躍るような……。

    「♪ただひとつの夢 決して譲れない」

     一言でいうなら、「自由すぎる」歌い方をしている。ルフィらしい歌声だ。

    「♪大海原を駆ける 新しい風になれ」

  • 117◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 09:41:30

    ワンコーラス歌い終えると小さく息をついたルフィ。私の方を見て、珍しく照れくさそうな顔で尋ねる。

    「ちゃんと歌ったのは初めてだから間違えたかもしんねェな……合ってたか?」

     問いかけの内容に私の心臓がまたドキリと跳ねる。恐る恐る頷くと、ルフィは呑気な調子で「そっか良かったァ」なんて笑ってる。

     ルフィの顔を見つめたまま動けない私の様子に気付くと、ルフィは顎に手を当て少し考えた後、私をゆっくり地面に下ろした。

    「それじゃまた、少し話すか。今度は……ちゃんとお前と2人で」


    「……? 何を言って--」

    「!? 私、喋れる……っ!?」

     思わず口に両手を当てて驚く。自分で声を発しているというよりは、伝えたいと思っている事がスピーカーから出ている、て感覚に近いけど……。
     今はそんな事や「何故ルフィが私の能力みたいな力を使えるのか」とか、細かい事気にしている場合じゃない。

    「……気付いてたの? 私だって……」

    「最初は分からなかったけど、段々な」

  • 118◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 09:43:37

    「…………ごめん」

    「なんで謝んだよ」

    「だって私、ルフィの夢の中にずけずけと上がり込んで……」

    「お前が望んでやったのか?」

    「違うけど……」

    「じゃあお前が謝る事じゃねえだろ。そうだったとしても別に気にしねェし」

    「でも……」

    「だァ~~っ!! おれがお前と話したいのは!! そんな事じゃねェんだよ!!」

     項垂れながらぐちぐち言う私をまだるっこしいと思ったのか、両腕をあげてルフィが吠える。そのあまりの勢いに圧され、固まってしまう。

    「直球に言う! 向こうの世界に戻るぞ、ウタ!!」

    「はァ!? 向こうって……、現実にって事?!」

    「それ以外にどこがあんだ」

     当然だ、と言わんばかりの真っ直ぐな態度に一周まわって惚れ惚れする。でも、それはきっと無理な話だ。

  • 119◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 09:45:43

    「そんなの、出来ないよ。きっと私の体はもう死んでる」

     自分で吐き出している言葉に、首を絞められているように息が苦しくなる。

    「第一私、皆からしたら大犯罪者でしょ。今更帰ってどうするの。私にはもう何も出来る事なんて無い」

     現実の世界に私の帰る場所なんて無い。それがあの時犯した過ちのけじめだから。

    「もう私の夢は、麦わら帽子と一緒にあんたに託した」

     新時代を創るのは、ルフィだ。

  • 120◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 09:47:37

    「おれが聞きたいのはそんな事じゃねェ」

    「え……っ」

    「おれは、お前に、帰りたいのかどうか聞いてるんだ」

    「……っ、だからっ!! 私には向こうで生きる資格なんて無いんだってば! 私がエレジアを滅ぼしたんだよ!?」

    「それはお前が望んでやった事じゃないだろ」

    「でも、あのライブの時は私自身の意思でトットムジカを呼び出した!」

    「キノコの毒でおかしくなってたからな」

    「ネズキノコを食べたのだって、私の意思で……!」

    「後に引けなかったんだろ」

    「……沢山の人を傷つけた……ッ」

    「お前の歌では誰も死なせてねェ」

    「…………っ」

    「お前はどうしたいんだよ」

  • 121◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 09:50:04

     ……そんなの……


    「…………帰りたい、よ」


    「私だって、帰りたい……。もし赦されるなら、歌いたい歌がいっぱいある! 伝え足りない言葉が山ほどある!」

    「直接顔を見てシャンクスやゴードンに謝りたい、ありがとうって言いたい!!」


    「なんで……死ぬのが怖いんだろう……私……ッ」


     色んな迷いが頭の中をかき乱して、言葉がうまく出てこない。視界も勝手に溢れ出る涙のせいでぼやけてきた。

     頭の上に何かが覆い被さる。
     見上げると、さっきまでの強ばった顔から一転して、どこか安心したような目が深く被った麦わら帽子の奥から覗き見えた。

     私の頭をやや乱暴に撫で回しながら、にししとルフィは笑う。

  • 122◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 09:52:38

    「やっと聞けたな。お前意地張り過ぎだろ」

    「別に、意地っぱりとかそういう問題じゃ……。第一、私が帰りたいって思っても、体が無いんじゃどうしようもないでしょ」

     あの時は飲む必要なんて無いと薬を拒んだ。恐らく私の体はもう手遅れになっている筈。

     でもルフィは、あっけらかんとした様子で否定する。

    「何言ってんだ、お前の体多分無事だぞ。確信持ってなきゃ「帰ろう」だなんて言わねェよ」

    「……えっ……!?」

  • 123◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 09:55:08

    「自分で聞こえないのか? お前の"音"」

     頭の上に乗せてた掌を今度は私の胸元に当てる。
    私も言われるがまま静かに集中して耳を傾ける。

     ドク…ッ、ドク…ッ、ドク…ッ

     真っ暗な視界の中、鼓動の音と連動するように小さな波紋が広がっていく。

     これは、私の心臓?

     私、生きてるの……?


     確かめるようにずっと意識を集中して聴き続けていると視界が乱れ、誰かの顔が映る。

     ……この人は……!?


    『--……ウタ?』

     晴れた視界に映ったシャンクスは、一瞬驚きを見せた後、何かを堪えるよう静かに笑った。

  • 124◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 09:58:05

    ひとまずここまで

    チョッパー「これは夢の中だから大丈夫だけど、よいこの皆は現実の兎の耳をむやみやたらに触ったら駄目だぞ!」

  • 125二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 10:06:29

    希望見えたな

  • 126二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 10:30:36

    ああすごくいい…

  • 127二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 11:29:11

    USAウタ、兎なのに表情コロコロ変わってそうですげぇ可愛い

  • 128二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 15:17:11

    ウサウタ概念、非常に良い

  • 129二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 15:24:17

    ルウタというわけじゃなくても、愛があるっていう感じがする
    はー尊い

  • 1302回行動!!◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 18:03:42

    --side.ルフィ

     …………。

     やんわりと意識が戻る。遠くの方からバタバタと騒がしく廊下を走る音が近付いてきて、男部屋のドアが開いた。

    「おっ、おいルフィ、起きろ!」

    「…………んあ?」

    「お前宛てに電話が来てる。大事な話があるって……!」

     酷く慌てた様子のウソップの言葉に、勢いをつけてベッドから跳ね起きる。

     電話の主の名前は聞いていないが、1人心当たりがあった。

  • 131◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 18:05:30

    「もしもし」

    『よお、久しぶりだな』

     おれの恩人であり、憧れの大海賊。
     世界で名を轟かせる四皇の1人。

     そして、ウタの父親。

    『突然すまない。少しツテを使ってお前の船の……いや、今はこんな事を言っている場合じゃないな』

    『対策は施しているつもりだが、いつ盗み聞かれるか分からない。手短に言うぞ、"あの子"の事だ』

    「……ああ」

    『恐らくお前の力が必要になる。場所は……言うまでもない筈だ。先に向かっている』

    「分かった。ありがとう」

     10数年ぶりの会話は簡潔に終わった。通話が終わり、眠りにつく伝電虫を見つめながら、おれはこれからすべき事を頭の中で整理した。

    「ねェ、ルフィ今のって……」

    「四皇の赤髪、だよな……?」

     いくつか挙がった候補の中で一番初めにするべき事は……。


    「皆に話さなきゃいけねェ事がある」

  • 132◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 18:06:25

    「…………」

     皆を集めたダイニングルームで、ここ数日おれ達に起きた出来事を一通り話し終え、テーブルの上で両手の指を組んだ。

    「…………つまり……ウタはまだ生きていて、ルフィの夢の中に居るの?」

    「そうだ」

    「で……お前はウタの魂を体に戻してやる為、エレジアに戻りたい。そう言いてェのか」

    「そこでシャンクス達が待ってるんだ」

    「…………」

    「頼む」

     皆はそれぞれ顔を見合わせ何も言葉を発さなくなる。

     エレジアを離れて日にちが経っている。戻るのはそう簡単ではない事はおれだって流石に分かっている。

     それでもおれはこの無茶を通さなければならない。

  • 133◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 18:07:47

     暫く黙り込んでいたが、何人かは大きく息を吐くと、固く決意した目付きになり椅子から立ち上がった。

    「航路変更ね。多少荒っぽいルートになるけど、最短で着くようにするから文句は言わないでよ」

    「歌姫サマの為だ! 風来バーストでスゥーパーかっ飛ばして行くぜ!!」

    「うォ~~! ウタを今度こそ助けるぞ~~!」

    「…………!」

     皆がそれぞれ自分の持ち場へ移動し始める中、ジンベエとロビンはおれの傍にやってきて、肩を叩いた。

    「希望が見えたみたいね」

    「ここからはわしらに任せておけ。お前さんはどんと構えて、夜になったら、夢の中の歌姫さんを安心させてやれ」

    「……ありがとう!」

     目的地を変更。目指すは音楽の国エレジア。

     今度こそおれは、掴んだ手を離さねェ。

  • 134◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 18:09:30

    .

    ・・・・・

     いつもの通り夢の世界にやってくる。

     外の世界は夜だが、夢の中は青空広がる真っ昼間。人は相変わらず居ないが、見覚えのある建物とそこかしこに建っている風車小屋にすぐピンと来た。

    「今日はフーシャ村の中か。最初とあんま変わらねェな」


    「ルフィ!」

     おれの姿を見るなりうさぎ……いや、ウタが嬉しそうに駆け寄ってくる。はじめは目すら合わせようとしてくれなかったのに、随分変わったと思う。

    「……なに? じっと見て」

    「別に。それよりウタ、今朝シャンクスから電話あったぞ」

    「!! なんて!?」

    「あんま話せてねェ。お前の体があるからエレジアに来いって」

    「そっか……エレジアに……」

  • 135◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 18:10:58

    本人は真面目だからあんまり触れない方が良いんだろうけど、ウタのリアクションに合わせてでっけー両耳が上がったり下がったりするのが面白くてずっと見てしまう。

     今思えばウタの頭の後ろの輪っかがこんな感じだったなァ。
     なんで気付かなかったんだろ、おれ。

    「…………ねェ、やっぱり見てるでしょ」

    「別に。それよりウタ、向こう着くまでやる事ねェから久々に勝負でもするか!」

    「えェッ! 私こんな状態なんだけど!?」

    「にしし、じゃあ不戦敗って事だな。おれの185連勝だ」

    「はァ~~あ? 私の185連勝の間違いでしょ? まァ今から186連勝目になるけど」

    「言ったな!」

    「そっちが先でしょ!」

     お決まりの煽り合いの後、いつも通り適当な種目で対決を始めた。

  • 136◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 18:13:10

    夢の中を自由に弄る力が今はおれにあるので、あの時のウタの真似をしていくつか小道具を出す。

    「なんで大食い対決でリンゴなんだ。肉出させろよ」

    「だって私今お肉食べられないんだもん。ほら、やるよ」

    「「3、2、1!」」

    「むぐぐぐ……っ」

    「ムゥ~…………あっ、シャンクス!」

    「むぐ!?」

    「……はい、私の勝ち~」

    「んなっ!? お前またおれの所に食い物移しただろ! ずるだ!」

    「にひひ、負け惜しみィ~」

  • 137◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 18:14:14

    「じゃあ次は駆けっこだ! 障害物越えて、あそこの丘まで行ったら勝ちだ!」

    「……今の体格差利用してない?」

    「してねェ! 行くぞ! 3、2、1!」

    「あっ、ちょっと!」

    「にしし、今度こそおれの勝ち--」

    「お先~~♪」

    「!? ぐぬぬ、負けるかァ~~!!」


    「…………引き分けかな」

    「…………なんでそんな小さい体で速ェんだ」

    「ふふん」

    「じゃあ最後は、身長対決な!」

    「はァ!? それこそずるでしょ! あんた今「そんな小さい体で」って--」


    「……元の体でも負けてたか、とっくに」

    「いつの間にかな」

  • 138◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 18:16:13

     2人して草原に寝そべり、空を見上げる。

     おれ達の会話以外、草の揺れる音と、風車がゆっくり回る音しか聞こえてこない。

     驚く程穏やかな時間だ。


    「……ウタ。おれさ、夢の世界も楽しくて気に入ってる。でもやっぱりおれ、ずっとはここに居られない」

    「…………それは、どうして? 好きな物思い通り出せて、お肉だって食べ放題だよ」

    「つまんねェから」

     ウタがおれの言葉に本気で噛みついてきた訳じゃないってのは分かってる。ただ単に、なんであの時皆が夢の世界を気に入ってくれなかったのか、知りたかったんだろう。
     まァこれはおれの理由に過ぎないが。

     ごろりと寝返り、ウタの方を見る。おれの一言にどう反応していいか分からないようで、目を丸くして固まってるが、そのまま話を続ける。

    「今までここで見た景色は、どれもこれもおれの中のものだけだ。おれが見た事無かったり、知らないもんは出てこない。そんなのいつか飽きるだろ」

    「…………」

     少なからず、思い当たる節があるようだ。耳が静かに垂れ下がっていく。 

    「向こうは、確かに腹立つ事もいっぱいあるけど、それ以上に面白ェものも山ほどある」

    「おれはそれを全部見てみたいんだ。そんで"新しい時代"を作りたい。そこには、おれの仲間や、サボやじいちゃん達や……お前が居てほしい」

  • 139◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 18:17:33

    「……随分欲張りだなァ」

    「おれは海賊だぞ。欲張りで何が悪い」

    「あっはは! ……そうだねっ」


     2人で笑い合っていると、次第に眠気が襲ってきた。瞼が重くなり、沸き上がってきた欠伸を吐き出す。

    「……ふぁぁ……」

    「"起きる"の?」

    「みたいだ」

    「おやすみ。またね」

    「……ああ。おやすみ」

  • 140◆y/gVO9.qs6T.23/01/02(月) 18:20:00

    自分で書いておいてなんだが、うさウタの負け惜しみぃとか絶対可愛い

    保守感想ありがとうございます
    1スレできれいに収まるよう頑張ります

  • 141二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 18:55:11

    無理しなくてイイんだぜスレ主!!
    次スレに続いたらそれはそれで楽しみだ!!

    うさウタちゃん可愛い…癒しだ…ありがとう…

  • 142二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 22:40:27

    続き楽しみに待ってるぜ

  • 143二次元好きの匿名さん23/01/02(月) 23:06:36

    うさウタの負け惜しみは耳がぴこぴこしてそう
    かわいい

  • 144二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 05:11:41

    期待

  • 145二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 09:26:51

    朝のほしゅ

  • 146二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 17:22:10

    夜の保守

  • 147二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 20:37:45

    待てます

  • 148◆y/gVO9.qs6T.23/01/03(火) 20:53:49

    .

    ・・・・・


     皆のおかげでサニー号は再びエレジアに戻ってきた。

     船を停め、辺りを見回しながら進んでいくと、奥の方から2人の男が歩いてきた。

    「待ってたぞ、ルフィ」

    「わざわざ来てもらってすまない」

     電話をくれたシャンクスと、このエレジアの王様だったゴードンって名前のおっさんだ。

    「シャンクス、おっさん……ウタは?」

    「ウタは今、近くの建物で寝かせている」

    「そっか……」

    「ルフィ君、シャンクスから多少事情は聞いているが……ウタが夢の世界に居るというのはどういう状況なんだ」

    「ああ、どこから話せばいっかな……」

     ウタの身体が眠っている場所に着くまで、かなり端折ってだけど今までの事を説明した。

  • 149◆y/gVO9.qs6T.23/01/03(火) 20:54:59

     シャンクスは何度かウタの夢から様子を視ようとしていたからおれの話もすんなり入ってきたみたいだ。おっさんの方も、何回か質問してきて、おれの答えを自分なりにかみ砕いていた。

    「ウタの命が消えかかっていた時、一番近くで眠っていたルフィの中に魂の一部が入り込んだのだろう」

    「……それによって、ピースが抜けたパズルのようになったウタの身体は、目を覚まさなくなってしまった……という事なのか?」

    「恐らくな」

     そう推測しながら、シャンクスとおっさんは足を止めた。着いた先には、他の半壊している廃屋に比べればいくらかキレイな小さな建物。
     この中にウタの身体があるのか。

     先に中に入っていく2人。おれ達も意を決して扉の無くなった門をくぐると、中にはボロボロのベッドの上に寝かされたウタが居た。

    「……っ!!」

    「あっ、ちょっとルフィ!」

     ナミの制止の声を無視して、ウタの身体に飛び込むように駆け寄る。

  • 150◆y/gVO9.qs6T.23/01/03(火) 20:56:27

     耳を澄ますと小さな寝息が聞こえ、それに合わせてゆっくりお腹が上下しているのを確認する。
     胸より少し下の辺りで組まれている手にそっと自分の手を寄り添わせると、ほのかに温かいのを感じた。


     ウタはまだ生きている。


    「なんだルフィ。ウタには「お前は生きてる」って言ったんだろ」

    「……やっぱ実際に見ると違うからよ」

    「はっはっはっ、そうだな」


    「……ウタは生きてる。負けないでいてくれたんだ」

     シャンクスははじめ子どものおれ相手のようなからかう口調だったけど、ウタの傍に立つと、しみじみ噛み締めるように重く呟いた。
     おれはそれに黙って頷く。

    「さて、これからどうしたものか。器と中身は揃ったが……」

     とりあえずおれがウタのすぐ傍に来ただけじゃ治らないのは分かった。

  • 151◆y/gVO9.qs6T.23/01/03(火) 20:57:57

     皆でウタとおれを見つめ、揃ってう~んと唸り声をあげる。

    「そうですねェ……こういうのって、御伽噺では王子様のキスが王道じゃないですか? 私は唇が無いので出来ませんが。ヨホホッ!」

    「キ……ッ!? バッキャロォブルックてめェこのやろ!!! 滅多な事言うんじゃねェ!! それァつまりウタちゃんとルフィがキ、キキキ……ッ!!」

    「あ゙あ゙~~!! サンジ落ち着け! 鼻血出すな!」

    「……おれ達外野は船に居た方が良かったんじゃねェのか」


    「…………」

    「ルフィ?」

    「なんとなくだけど、こっちのウタに呼ばれてる気がする」

    「! ウタの魂が、身体と呼応しているという事か?」

     「呼応」、なんとなくおっさんの表現がしっくり来た。

     おれ自身ではなく、おれの中に居るウタの魂と、今おれの目の前で眠っているウタの身体が磁石のように引っ張り合っている気がした。

     添えていただけの手を両手でぐっと握り込む。

    「今なら、ウタとウタを繋げられるかもしれねェ」

     あいつに会いに行かないと。

  • 152◆y/gVO9.qs6T.23/01/03(火) 20:59:20

    「それなら私の眠り唄にお任せをっ!」

     そういうとブルックはどこからともなくバイオリンを取り出し弾き始めた。

    「♪ちっちゃな手のひらは ネモフィラの花」

    「なんかいつものと違くねェか……?」

    「♪ぷっくりほっぺたは エリカのつぼみ」

    「グー……」

    「速っ!!」

     バイオリンのメロディに包まれ、おれの意識はウタの待つ夢の中に吸い込まれていった。

    ・・・・・


     目を開けると、おれとウタは淡い光が窓から差し込む少し古びた部屋に居た。
     ここは、こうなる前のウタと最後に会話した、エレジアの城の中だ。

    「……私だ」

     あの時と1つ違うのは、レッドフォース号から見えた、真っ白で大きな棺の中で眠る人間の姿のウタが居る事。

  • 153◆y/gVO9.qs6T.23/01/03(火) 21:00:46

     ウタはぴょんぴょんと跳ねながら駆け寄り、2本足で立って棺を覗き込もうとする。だが、圧倒的に背丈が足りない。

    「…………」

     ぐ~~っと背伸びをする。数センチ伸びただけだ。

    「…………るふぃ~」

    「ん」

     両手で持ち上げ、人間の方のウタの胸元に置く。
     暫く座り位置が安定しないのか、もぞもぞ動いていたが、真正面から向き合う位置に収まると、じっと顔を眺める。

    「……なんか、変な感じ。鏡を見るのとも違う」

    「まだ戻らなそうか?」

    「うん……なんか引っ張られるような感覚はあるけど……」

     ウタ本人もよく分かっていないようで、自分の耳を人間の方の体にくっつけて様子を見ている。

     夢に来るのは正解では無かったのか? と両腕を組んで考えていると、ウタが突然何かを思い出したのか両耳を立て、「あっ!!」と大声をあげる。

    「そうだウタウタの力。皆を元の世界に帰した時みたいに、もしかしたら私自身も戻せるかも」

     なるほど。難しい事は分からないが、確かにそれっぽいと確信を持てた。この間までは言葉を話せなかったが今なら試す事が出来る。

  • 154◆y/gVO9.qs6T.23/01/03(火) 21:02:17

    「さすがウタだな! 早速やってみるか!」

    「ん…………」


    「……ウタ?」

    「…………ごめん。これだけしてもらっておいて、今更怖くなってきた」

     ぴんと立っていた耳が次第に元気を無くしていく。よく見ると、その小さな身体は震えていた。


    「あれだけの事をしたんだもん。目が覚めたら、きっと私もお尋ね者の仲間入りだよ。ゴードンにこれ以上迷惑を掛けたくないからもうエレジアには居られない。そうしたら、私は……」

    「海に出ればいいじゃんか」

    「っえ?!」

    「海は広いからさ、追ってくる奴が居たってすぐに捕まりはしねェ」

    「そんな簡単な話じゃない! 海軍の偉い人たちが私の事を捕まえようとしてるんだよ?!」

    「シャンクス達の船でも、おれ達の船でも、どっちでも好きな方乗ればいい。お尋ね者だらけの船に1人増えた所で変わんねェよ」

     そう言って笑ってみせる。その場しのぎのでまかせなんかじゃない、シャンクスが今ここに居たら似たような事を言ってる筈だ。

    「お前の歌で新時代作ろう」

    「…………っ!」

  • 155◆y/gVO9.qs6T.23/01/03(火) 21:04:09

     あの日交わした誓い。

     お互いに思い描く「今とは全く違う新しい時代」。

     おれはウタの作りたい「皆が笑って暮らせる世界」を見てみたいし、おれの考える夢の果てにあるものをウタに見せてやりたい。

    「一緒に世界回って色んな物見よう。まだお前の見た事無いようなものだらけだぞ! わくわくすんだろ!」

    「そうだね……うん、私も色んな景色見たい!」


    「…………でも、もうあのバカみたいに大きい虫とかは見せなくていいから」

    「……根に持ってんなァ」


    「しっかし、うさぎのウタもこれでお別れか」

    「ふふんっ、この可愛い姿も見納めだよ」

    「まだ触りたんねェなー」


    「…………ふぅー……っ! よしっ!!」

     両手で頬を叩き、深く息を吸い込み、姿勢を伸ばす。どうやら戻る覚悟を決めたみたいだ。

  • 156◆y/gVO9.qs6T.23/01/03(火) 21:05:34

    .
    「…………ねえルフィ。一緒にさ、「風のゆくえ」また歌ってよ」

    「おれも?」

    「歌うのまだちょっと怖いっていうか……。なんとなく、その方が……効果? ありそうだし」

    「なんだそりゃ」

     まァ、面白そうだからやるけど。おれもウタの真似をして深呼吸し、背筋を伸ばす。

    「まさかルフィとデュエットする事になんて子どもの頃は考えもしなかったな」

    「デュエットじゃねェよ。歌唱対決だ」

    「……上等じゃん」

    「「3……、2……、1!」」


     「「♪この風は どこから来たのと……」」


     2人だけの夢が終わる


    .

  • 157◆y/gVO9.qs6T.23/01/03(火) 21:07:41

    --side.ウタ

     …………。

     ………………。

    「……う……っ、うぅん……」

     動かなくなっていた体に自由が戻る。

     横になったまま少し体を動かし、ゆっくり瞼を開いた。

     ずっと閉じていたせいかまだ視界がぼやけているけど、わずかに見える赤い髪の毛は、見間違える訳が無い。


    「…………シャン、クス…………」

    「ウタ……ッ!」

     名前を呼ぶや否や、シャンクスは私の背中に腕を回し力一杯抱き寄せた。
     その横ではゴードンが涙を滝のように流しながら私の頭を撫でてくる。

    「ウタ……! すまなかった……!」

    「ヴダ……良がっだ……! 君が生ぎでいでぐれで本当に良がっだ……ッ!!」

    「シャンクス、ゴードン、くるしい……」

     私、どれくらい寝てたんだろう。声がかすかすだ……。
     体も全身凝り固まっててあまり動かせない。どのみちこの状況じゃ無理そうだけど。

  • 158◆y/gVO9.qs6T.23/01/03(火) 21:09:51

    「おおおおっ! やった! ウタが目が覚めた!」

    「スゴいぞルフィ~~!!」

     視線だけ横にやると、ルフィの仲間の皆がまるで自分達の事にように私の目覚めを喜んでくれていた。
     ライブの時やトットムジカの件で散々迷惑を掛けたのに。このひとの良さは、流石ルフィについていく人達というか何というか……。

    「! そうだ、ルフィは……!?」


    「……おはようウタ。おれの189連勝だな」

     私の手元に置かれた手から視線を辿ると、同じく寝ぼけ眼のルフィが笑っていた。

     込み上げる感情が、涙腺を伝ってこぼれ落ちる。

    「……冗、談……っ! 私の189連勝だよ……!」

    「お前、何泣いてんだよお」

     自分でもなんでここまで流れ出て止まらないのか分からない。

     でも、シャンクスとゴードンの抱き締めてくれる感触が、温かさが、嬉しそうな皆の声が、夢の世界で感じたものよりはるかに鮮明に感じて心を揺さぶられる。
     ウタワールドは現実と変わらない筈なのに、なんでかな。

     今はまともに考えられず、ただシャンクスの胸元で涙を溢す事しか出来なかった。

    「あのね、シャンクス、ゴードン……伝えたい事が、いっぱい、いっぱいあるんだ……」

  • 159◆y/gVO9.qs6T.23/01/03(火) 21:12:29

    .

    ・・・・・


    「次の島が見えてきたぞー!!」

    「ホントか!? おい、早く行こうウタ!」

    「ちょっと待ってよ!」


     あれから日が暮れるまで皆と話した。
     言わなきゃいけない事が山ほどありすぎた。

     まずはルフィや仲間の皆に頭を下げて、それからゴードンにもエレジアの事、新時代の計画の事を謝った後、今まで12年間愛情を注いでくれた事と音楽を教えてくれた事へ心からの感謝の言葉を伝えた。ゴードンは体の水分全部無くなるのではというくらい泣いていた。

     1番話す量が多かったのはシャンクス。
     前も言ったけど、エレジアまで来て助けてくれた事。解毒薬で命を救ってくれた事への感謝。そして置いてかれた事への悲しみの気持ち。あの時は本当の事を隠していてくれたのは決して間違いではなかったと思う。でもやっぱり寂しかった。シャンクス達を信じたくても信じられなかった。


     ……そう、寂しかったんだ。ずっと。


     ぽつりと漏らしたら、シャンクスはまた力の限り私を抱き締めた。余計な一言だったかな。

  • 160◆y/gVO9.qs6T.23/01/03(火) 21:14:51

     その後は思い付く限り「これから」の話をした。ゴードンがエレジアをもう一度復興するとか、海軍の目をどう誤魔化すかとか、私はどちらの船に乗るかとか。

     ルフィ達もシャンクスもそれぞれこっちに来いって熱烈に誘ってくれたけど、私の今の状況上、お世話になるからには多大な迷惑を掛けてしまう。すぐには決められなかった。

     その場に居る皆で色々アイデアを出して、意見をぶつけ合って、悩んで、私なりに結論を出した。

    『ごめん、シャンクス。私、今は赤髪海賊団の船に戻らない』

    『そうか。……「今は」?』


     そう。あくまで"今は"。

     私は「赤髪海賊団の音楽家ウタ」として、ルフィの船にお邪魔する事にした。

     ルフィ達と色んな場所を旅して、たくさん新しい歌を作って、歌って、いずれ「救世主」ではなく「音楽家」として新時代を作り上げる。
     それが今の私の答え。

     シャンクスははじめに聞いた時、ぽかんと固まってしまったけどすぐに大笑いして私の頭を撫でた。

    『それがお前の意思なら、おれはそれを尊重する』

    『行ってこい、ウタ。おれ達の可愛い娘』

  • 161◆y/gVO9.qs6T.23/01/03(火) 21:16:59

    「…………」


    「おーい、ウター!」

    「分かってるってば!」

     新調したてのアームカバーに腕を通す。手の甲には勿論、あの日の誓いの証。

     ここから私の新しい一歩が始まる。今度はこっちで夢を叶えるんだ。


     怖くはない、不安はない。

     同じ誓いを立てた大切な親友が傍に居てくれるから。もう、大丈夫。



     寂しさから解放された1羽のうさぎは思いっきり地面を蹴り飛ばした。

    .

  • 162◆y/gVO9.qs6T.23/01/03(火) 21:18:03

    .


    以上です。ありがとうございました

  • 163二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 21:19:56

    めちゃくちゃ素敵な話でした!
    幸せな結末をありがとう!!

  • 164二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 21:20:46

    素晴らしい物語でした!!!
    これから世界を知って、幸せになってくれ!!!

  • 165◆y/gVO9.qs6T.23/01/03(火) 21:22:39

    全くノープランのSSも何とか着地出来て一安心
    ちょくちょくガバがあったのは反省点ですね

    おまけその①足ダンうさウタ

  • 166◆y/gVO9.qs6T.23/01/03(火) 21:24:40

    おまけその②うさウタ+うさルフィ
    ルフィのリクエストで再びうさ化

  • 167◆y/gVO9.qs6T.23/01/03(火) 21:27:02

    とりあえず今持ってる分は吐き出した
    うさウタ流行ってくれ

  • 168二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 21:31:40

    最高でした!

  • 169二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 21:39:50

    >>166

    「負け惜しみ~」うさver!?


    🔥🍢🍲🔥🐲

  • 170二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 22:45:06

    >>153

    届かなくて助け求めるウサウタかわいい

    お疲れ様でした!!

  • 171二次元好きの匿名さん23/01/04(水) 07:23:19

    バチクソ可愛い…ここがラフテル…

  • 172二次元好きの匿名さん23/01/04(水) 10:11:11

    完結乙です!
    うさウタとうさルフィかわいいな
    この姿でころころ転がりながらじゃれ合ってる光景とか見たら尊死する

  • 173二次元好きの匿名さん23/01/04(水) 12:21:53

    ルフィverの風のゆくえ聞いてみたいな
    一本通してひたすらうさウタが可愛かった
    乙です

  • 174◆y/gVO9.qs6T.23/01/04(水) 22:18:02

    >>172を見てどうしても抑えきれなくなってしまった

  • 175◆y/gVO9.qs6T.23/01/04(水) 22:53:14

    これからも対決しまくって下らない事で張り合っててほしい

  • 176二次元好きの匿名さん23/01/04(水) 22:54:40

    >>175

    >>174

    素敵なイラストです

  • 177二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 00:03:16

    >>174

    >>175

    めっちゃかわいい

    望んだ光景が見られたので尊死して黄泉の国から書き込んでます

  • 178二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 00:31:54

    こうして、うさぎは夢でも現実でも
    もっともっと高く飛ぶことを決めたのでした

  • 179二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 11:28:32

    保守

  • 180◆y/gVO9.qs6T.23/01/05(木) 13:41:53

    今度こそ最後の最後に

    細か~いミス修正を加えまとめました

    (まとめて)読みたいっつってんだろ!!という方どうぞ

    part1

    夢の中の兎(part1) 私には新時代を創れなかった。

     大好きだった親を信じる事が出来ず。


     救いを求める人達の手を振り払う勇気も持てず。


     大切な幼馴染や周りの人を傷付けた。


     波の音が聞こえる。


     もう目を開ける力も残ってないから確証は持てないけど、もしかしたら私は今、シャンクス達の船に居るのかな。


     こんな私がシャンクスの船の上で死ねるなんて、贅沢すぎる。


     ……身体が重く、冷たくなっていくのを感じる。思考する力も鈍ってきた。


     これが"死ぬ"って事なのかな。


     --ルフィside


    「いつかきっと……これがもっと似合う男になるんだぞ」


     そう言って笑い掛けてきた幼馴染みは、棺の中で眠ったままシャンクスの船に乗って海の向こうへ消えていった。

     おれはまた、大事な存在を守れなかった。


    「……んぁ……」


     目を開くと、視界いっぱいに青空が映る。いつの間にか寝ていたようだ。ゆっくり体を起こした時、違和感を覚える。


    「どこだここ。サニー号じゃねェ」


     おれの記憶が正しければ、さっきまでおれはサニー号に居た。エレジアを発ち、次の目的地を目指し海の上を進んでいた筈だ。…
    telegra.ph

    part2

    夢の中の兎(part2)--side.シャンクス

    「ウタの調子はどうだ」


     用事を済ませ、ウタの眠る部屋に戻ってくる。

     診察を終えたホンゴウは、おれの問いに対してため息をつきながら首を横に振った。


    「相変わらず寝たままだ。体温も脈も正常なんだがな……」


     あの時、意識が朦朧としていたウタに半ば無理矢理予備の薬を投与したが、あと数分でも処置が遅れていたら取り返しのつかない事態になっていたらしい。


     一命は取り留めたものの、過剰な摂取を重ね蓄積されたネズキノコの毒は、想像よりもかなり身体を蝕んでいた。


    「そもそもあの段階で吐血までしていたか 

    らな。内臓なんかの器官にも相当な負担が掛かっている筈だ」


     診察に使ったのだろう医療道具を片付けながら話を続ける。

     ようやく赤みを取り戻し始めた肌の色もエレジアを出た直後は雪のように真っ白で、風前の灯のような命とも言える状態だった。


    「考えられる可能性としては、損傷を受けた肉体自身が回復に全集中しているのか……もしくは、脳に……障害が……」


    「その可能性も覚悟はしておかないとな」


     堪えるように言葉を絞りだそうとするホンゴウに、無理して皆まで言わなくても良いと収める。…
    telegra.ph

    part3

    夢の中の兎(part3)--side.ルフィ

     …………。


     やんわりと意識が戻る。遠くの方からバタバタと騒がしく廊下を走る音が近付いてきて、男部屋のドアが開いた。


    「おっ、おいルフィ、起きろ!」


    「…………んあ?」


    「お前宛てに電話が来てる。大事な話があるって……!」


     酷く慌てた様子のウソップの言葉に、勢いをつけてベッドから跳ね起きる。


     電話の主の名前は聞いていないが、1人心当たりがあった。


    「もしもし」


    『よお、久しぶりだな』


     おれの恩人であり、憧れの大海賊。

     世界で名を轟かせる四皇の1人。


     そして、ウタの父親。


    『突然すまない。少しツテを使ってお前の船の……いや、今はこんな事を言っている場合じゃないな』


    『対策は施しているつもりだが、いつ盗み聞かれるか分からない。手短に言うぞ、"あの子"の事だ』


    「……ああ」


    『恐らくお前の力が必要になる。場所は……言うまでもない筈だ。先に向かっている』


    「分かった。ありがとう」


     10数年ぶりの会話は簡潔に終わった。通話が終わり、眠りにつく伝電虫を見つめながら、おれはこれからすべき事を頭の中で整理した。


    「ねェ、ルフィ今のって……」…
    telegra.ph

    改めて保守感想ありがとうございました

  • 181二次元好きの匿名さん23/01/05(木) 22:25:36

    良いssだった!ありがとう!

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