イブールファンスレ

  • 1二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:11:56

    原作ではぽっと出で影の薄い中ボスだったが小説版では……

  • 2二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:12:21

    大きな改変としてイブールはかつての名をイーブといいエルへブン出身の元人間で主人公リュカの母マーサとスライム(後のナイト)のピエールの幼馴染という設定になっており戦闘時以外は人の姿をとっている
    以下に小説版の設定と描写を書く(以下「台詞」‘地の文’とする)

  • 3二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:13:08

    中巻1 望まれしもの (DQV本編の数十年前……マーサが7歳の頃)
    あるときイーブはマーサに意地悪したことで喧嘩になり…そこでマーサの力の一端に触れたことでイーブはマーサのことを意識しだす
    ‘ふと、マーサとイーブの目があった。大宇宙をまるごと飲みこんだような、マーサの瞳。イーブは硬直した。あたりの空気が一瞬にして真空になった。からだじゅうを目に見えぬ閃光が走った。~中略~あの瞬間、イーブはマーサに飲まれた。イーブはマーサの一部になった。それは……はがゆく口惜しい体験でもあったが、同時に、ことばにできぬほどの歓びでもあった。はるかに偉大で尊いものに自分をゆだねる感触……自我の檻も肉体のくびきもすべて失い、深宇宙にあまねく広がる何かとつながる安らぎ……遠く去った余韻を思いだそうとするだけで、イーブの膝は震えた。いまはまだ、ほかの少年には理解できないだろう。マーサほどではないとしても、かなり鋭敏で力のあるイーブであるからこそ、逆に、彼女の秘めた力を感じずにいられないのだった。が、その気になって鍛錬を積めば、やがては、彼女は、魂を持つものすべてと融和し、意識を持つもののすべてを共鳴させずにはおかぬだろう。そして、あらゆるものが彼女の前に額ずくだろう……。’
    「……マーサ……」
    ‘イーブはつぶやいた。’
    「おまえは強い。おまえはすごい。……ああ、ちくしょう!俺は、負けたくない。おまえが妬ましい。だが、俺は……俺はまた、おまえになりたい!」

  • 4二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:13:56

    2 騎士の誕生 (DQV本編の数十年前……マーサが12歳の頃)
    マーサの祖母でありエルへブン先代大巫女モーリアン(オリジナルキャラ)の葬式の後…帰りの舟に乗り合わせるマーサとイーブ
    祖母を失い悲しみに暮れ大巫女の座を引き継ぐどころでないマーサに対し自分も引き継ぐ立場になることばかり考えるイーブはあろうことか次の葬式の話をしだしマーサを怒らせてしまう
    「~前略~次に誰かに渡されるのは、生命の指輪だな。バセルの爺さま(オリ…)は年だし。モーリアン様の介抱で、さんざん力を使っちまったはずだ。後を追うように、とっととくたばって、またすぐもう一度葬式が出ることになっても不思議はねぇやな」
    「おまえ、どっちだと思う?次に指輪を預かるのって。力からいって、エリーサ(オ…)か俺か、たぶん、どっちかじゃねぇ?だが、エリーサはもう婆ぁだ。前の冬にも関節が痛いって寝てばっかりだった。おい、マーサ。なぁ、もし誰かに相談されたら俺を推…」
    「……おねがい……やめて……!」
    舟を降りるなり一人で行ってしまうマーサの背に何か叫ぼうとしてやめるところで過去編の彼の出番は終了
    これ以降は現代(リュカ一行…神の塔帰り)までピエールが話の中心になる
    ピエールもまたマーサに恋をし彼女を守りたい一心で騎士の芽(ナイト部分)を生やすことになるがそれはまた別の話

  • 5二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:14:23

    ピエールのイーブ評「生意気な口きくだけあって、けっこう勉強はデキるだろ。乱暴な呪文ばっかり得意でさ。ほかの子供と比べたら、あいつとマーサはダンチに強いもん。だから、あいつ、マーサのことを、すげぇ意識してんだ。」
    マーサのイーブ評「彼はね、あたしのこと、好きなの。おとなになったら、あたしのこと、お嫁さんにしたいみたい。だから、ほんとうにひどいことなんか、絶対にするわけがないのよ」

  • 6二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:14:53

    (以下小説版で直接描写がなかったシーン…ピエールが騎士の芽を生やすため山籠もりしている間にマーサはパパスと駆け落ちする
    この事件によりエルへブンは混乱しイーブはこの際に脱走し生命の指輪を持ち出す
    その後マーサを失ったピエールは自暴自棄になり死にかけたところをソルジャーブルに拾われ以降マーサを自分から奪った人間に復讐するため戦い続け…マーサの子リュカと出会いマーサ救出のため彼の仲間に加わる
    その際聞かされた教祖の名前からピエールはイーブとイブールの関係性を疑わずにはいられなかった…)

  • 7二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:16:13

    5 墜ちた神(リュカ一行…カボチ~サラボナ間)
    まさかのイブールのソロパート
    ヘンリーがマリアとの結婚を公表し迎えの使者を出した直後のラインハットにすでに光の教団の教祖となったイブールが直接演説に来る
    その時の描写が……
    ‘とりまきのひとりが、八百屋の店先から木箱をかっさらって台に為すと、教祖は台にのぼった。伸びっぱなしの髪が、風をはらんでふわりとなびいた。するとその冷たく冴えた瞳と、浅黒い肌があらわになった。痩せぎすな頬、高い鼻、薄く引き締められた唇。毒持つ花の美のような、一種、殺気だって研ぎ澄まされた容貌だった。ついさっき、王の使者の凛々しい儀仗兵姿にうっとり見とれた娘たちの中には、こっちのほうがむしろ男らしい、高貴らしい、と考えて、甘い吐息を洩らすものもなくはない。’
    (まさかの美形設定…元の見た目とはえらい違いだ)
    神はいなくなり世界は滅びると吹聴するイブール
    「……目を覚ませ……思いだせ!」
    「修羅の巷を見しものたちよ……なぜまた、享楽の渦中に身を持ち崩さんとするのか?」
    「もう忘れてしまおうというのか。おまえたちは、もう少しで、愛するものたちを永遠に失うところだったではないか。信じたものが粉々に砕け散る瞬間を見せられるところだったではないか。忙しなく過ぎていく日常のうちにいつしか道を踏みはずし、ふたたびあの恐ろしい日々が来ても、かまわないのか?」
    「かつて」
    「わたしもまた、愛するものを奪われた。まだ、希望の甘い香りにうつつを抜かしていた少年のころのことだった。わたしは国を捨て、一族の反対を振りきって、彼女を追った。世界じゅうをめぐる必死の捜索にもかかわらず、彼女の行方は知れなかった。わたしは、ある場所に出向き、天空城の竜の神の元に至るといわれる塔へのぼった。しかし……塔は朽ち果て、魔物どもの巣くう場所となっていた……そして、塔にのぼり……」
    「わたしは見た!天空城など、すでにありはしないことを!この目で確かめて、わたしは識った!竜の神は、もはやどこにもいないことを!」
    聴衆はどよめき野次を飛ばすがイブールは怯まず演説を続ける。
    「見たのだ。確かに神はいない。……神は、城とともに墜ちたのだ!それゆえ……見よ、世界は暗黒の闇の時代へと、坂道を転がり落ちるように動きはじめているではないか‼」

  • 8二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:16:25

    そんな時、1人の老婆が当てつけのごとく祈りのおまじないをして演説の邪魔をし始めた。しかしイブールは笑い…「気の毒だが、祈っても意味はないのだ、おっかさん。なぜなら、神はいないのだから。お前さんの祈りを聞き入れるものはいないのだから」と諭す
    そしてなお罵りの言葉をあげ詰めよろうとする老婆にただ笑いかけ…こっそり死の呪いをかけた
    倒れた老婆に駆け寄る人々に対してイブールは自分が呪いをかけたくせに「見ろ!」
    「あれほど信心深いものさえ、神は守ろうとはしない!これほど確かな証拠があろうか?」
    と叫び自分の正当性の主張の材料にしたのだった
    この光景を見て不安を抱いただれかがつぶやいた「……では……だとしたら……いったいどうしたらいいんだ……?」という言葉を聞き逃さなかったイブールは「望むなら、わたしとともに来るがいい。……わたしは砦、わたしは城だ。わたしは光の国を造る。この世が闇におおわれるときにも、我が神殿にて、わたしとともにあれば、闇に飲まれることはない」
    「信じぬなら、それでいい。信じぬものは惨たらしく死ぬ。それだけのことだ」といい、感化されてしまった人々を連れて去っていった
    酔ったようなあるいは青ざめたような顔をしてイブールについていく人々そして「……あ……悪魔……あの男は悪魔じゃ……」と言い残して絶命した老婆を目の当たりにしてもはやまともに口もきけなくなった者たちを残して…

  • 9二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:17:12

    7 遥かなる故郷 (リュカ一行…結婚直後~テルパドール)
    ゲマから2つのリングが人間の手に渡ったことを知らされ取り戻そうとするイブール
    しかしゲマに阻止される
    「……取り戻せ!」
    「その必要はございますまい」
    「指輪は三つそろわなければただのガラクタ。そう言ったのは、あなたではありませんか。一の指輪をそうしてあなたが持っておられる限り、何の心配がありましょう?」
    イブールの目的は魔界へ行ってマーサに会うことで出来るなら自分で指輪を揃え魔界に行くことを狙っていた…しかしそれを条件に働かせているミルドラース及びゲマにとって勝手な行動はしてほしくなかったわけである
    闇の太主の復活を早めるためなどの建前を躱していくゲマ
    そのうちにイブールはマーサの名を出してしまう
    「だが、あと二つの指輪があれば、わたしはマーサを迎えに」
    「マーサ!なるほど、そうでしたね。ええ、いずれお返しいたしますとも。でも、あなたは契約したはず」
    ‘ゲマが大蜘蛛の脚のような指をひらめかせると、不気味に輝く霧が湧いた。霧はさらに何か言い返そうとしたイブールのからだを包みこみ、ちかちかと明滅しながら漂った。’
    「お忘れなきよう、教祖さま。天空の城は堕ち、先の神は死んだのです……ゆえに、あなたは、新しい神と新しい契約を結ばれた。いま、あなたが祈りを捧げられるべき相手はただひとり……やがて来る時代に君臨する暗黒の太主、われらが魔王……あなたのつとめは?」
    「……い……祈ること……」 
    ‘イブールはあえいだ。霧が、鼻腔に、口に、肺の中にまで侵入した。全身が、ぶるぶる震え、瞳は赤い炎を灯した。顔や手のむきだしの肌は、すぐ下にたくさんの虫でも這っているかのようにぴくぴくと蠢き、引き攣った。が、つぶやく声は恍惚と甘い。’
    「祈りを束ね、強めること……それがエルへブンの宿命、神に従い、草の民に奉仕し……
    世界を破滅と頽廃から守ること……」
    「さよう。あなたはそれができる。それだけの力がある。ゆえに、わたしはあなたが大好きなのですよ」
    ゲマの幻術により恍惚と自分の役割を復唱させられるイブール
    (それにしてもオリジナル描写で全身を蹂躙され甘い吐息を洩らすアラフォー男性を書く作者って……)

  • 10二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:17:27

    正気に戻ったイブールはマーサの無事を知らされる
    しかし今もミルドラースに従わないマーサに言うことを聞かせる為にもっと人質をかき集めようとするゲマに対し「人質?なぜだ……もう充分ではないか。おまえたちはもはやこれほどの信者を得た。マーサに、このものたちを見捨てることができるとは思えない」…と抗議するイブールだったが「“おまえ”たち?よそでは間違えないでくださいよ。“あなた”が教祖さま、でしょう」…と冷たく言い払われる
    苦悩するイブールに侮蔑的な薄笑いを浮かべ「あなたも彼女も、所詮は人間ですからね……では、さらば」と言い残しゲマは去っていきイブールは思い悩むのだった……
    ‘魔物の去った暗がりに、教祖はそのままじっと座り続けていた。神が死んだと知ったとき、彼は先の名を捨てた。新しい神に、新しい名を受けた。だが、この世でもっとも素晴らしいと思う女への愛は、まだ捨てることができなかった。’ 「……マーサ……」‘イーブはつぶやいた。’ 「マーサ……俺は正しいと思うことをやった……正しいと思うことをやり通そうとしている……だがなぜ?なぜ、おまえは別の道をゆく?おまえは俺を許さない?われらが手を取って進めば、人は伸び、人は育ち、神なき世も平らかに暮らしてゆけるものを……ああ、俺はどこか間違っているのか?教えてくれ……マーサ……!」‘かき毟る頭髪の合間に、金でも銀でもない指輪が、鈍く光っている。’

  • 11二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:18:14

    小説版ゲマはミルドラースの神の一房のような分身体であり実態を持たず不死身だが決まった人格を持たないミルドラースが自分の一部にゲマという地上侵略のための役割と人格を与えた存在でありイブールにとっては部下であり上司であるゲマに頭が上がらない
    原作ではイブールがいのちのリングを魔界に送ってしまえばその時点でミルドラースの勝利だったのにしなかったという矛盾をマーサが好きで彼女に会うための鍵としてそして自分と彼女を結ぶ唯一の形あるものとして持っていたという{影の薄いキャラに個性と存在感を与え}{原作の矛盾を解消する}というノベライズにおいてかなり理想の独自設定ではないだろうか?なお1章のイーブのつぶやきとこの章のイブールのつぶやきはどちらもハードカバー版の左ページであり「……マーサ……」の部分がほぼ重なるようになっている…まさかそこまで計算して…?
    ちなみに多くの人々に強烈なインパクトを与えたゲマだが以外にも追加されたオリジナルシーンはここだけだったりする…がイブールを喘がせパパスを殺されたリュカをも魅了する幻術を操り原作以上に悪辣さに磨きがかかっている…リメイクで無理に出番増やさなくても存在感増やせるじゃないか…

  • 12二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:18:50

    下巻7 セントベレス山の戦い
    原作での本来の出番であり小説版イブールの真骨頂
    ついにリュカ一行と激突するイブール
    その描写が・・・
    ‘無骨な鉄の角灯がささやかな太陽のように燃える下、ひんやりとした静寂の内に、男がひとり立っていた。この世で最も高い岩山の遥か雲を突き抜けた頂から、神殿の地下の最奥部であるこの場所まで、分厚く堆積した土砂の重みが、闇そのものを凝縮し、抽出し、ひとの姿にしたかのような男だった。
     肌は青黒く、垢じみたローブの肩に振り分けられた灰色の髪は、もつれて紐のようにねじれていた。男は背が高く、骨ばった全身に疲労と倦怠を滲ませていた。非常な年寄りのように見え、同時に、青くさい若造のようにも見えた。だが、濃い陰翳の中から注がれる錐の先のようにとがった視線には、なお底知れぬ力があった。
     堅く錠を下ろした扉を壊されたというのに、男は慌てた様でもなく、殺気だちもせず、ただ長いこと、刃物のようなまなざしで、じっと、リュカを眺めていた。’
    (・・・・・・・大物感増し増しじゃないか)

  • 13二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:19:09

    以下全文原文ママ(地の文も‘’なしで)

  • 14二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:19:43

    「教祖イブールか」
    「いかにも」
    男の声は地を這い、闇を揺すった。
    「かけたまえ、マーサの息子」
    ローブを揺すって痩せた手を出し、古びた木の卓と小さな二つの椅子を示す。卓の上には、切り子ガラスの盃がふたつ、瓶がひとつ、用意されている。イブールは腰をおろし、両手を卓に乗せて、リュカを待った。
    「おまえの盃は受けない」
    リュカは椅子にかけはしたが、手は伸ばさなかった。
    「おまえは、善良なひとびとに邪悪な教えを吹きこんだ。何百という生命を犠牲にして、こんな恐ろしい砦を造り上げた。ぼくの子供たちをさらおうとして失敗すると、今度はビアンカを人質にとった。彼女を盾にして、我が母であるマーサに、おまえの欲望の手伝いをさせたのだろう!」
    「なんと卑しいことを考えてくれるのだ」
    イブールは酒を嘗めた。
    「そうではない。マーサはもうずっと前から、ここにいないよ。お前の母は、自らすすんで暗黒の魔界へ、大魔王ミルドラースさまのもとに赴いたのだ」
    「……なんだって?魔王?」
    「だから、あの愚かなラマダにマーサのふりをさせておかなければならなかったんじゃないか」
    イブールは深々とため息をついた。
    「マーサの息子よ、いったい、どう言ったらわかってくれるだろう?わたしはマーサを愛している。そなたが生まれるよりも前から、ずっと変わらずにだ。そのマーサの子であるおまえと、できることなら、争いたくなどなかった。だから、なんとかおまえを遠ざけ、その手の届かぬところでことを成し遂げたかった。だが、おまえは、こんなところまでやって来てしまった!……あのジャミというあわれな馬魔を覚えておろう?おまえと妻があいつの呪いによって石くれとなり果てたとき、わたしはほんとうにホッとしたんだよ。これで、おまえを殺さずにすむと。おまえたちを新しい世界につれてゆけば、きっとマーサが喜ぶだろうと」
    「新しい世界だと?」
    リュカは目を細めた。
    「それは闇の支配する世の中か?邪教の信者だけが生き残るという世界のことか?イブール、おまえは狂っている。思いあがっている。信者だの、奴隷だの。おまえが力づくでかきあつめたのは、自分を崇めてくれるもの、讃えてくれるものばかりだ。おまえは生まれながらの負け犬だ。だから、力あるマーサを妬んだ。神を嫉妬したんだ!」

  • 15二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:20:38

    「神?」
    イブールは席を蹴り、怒ったように歩き回った。
    「なんと。おまえはまだ神を信じているのか?……バカめ!いいか、これまでに世界中に起こったことがらは、すべて、神の責任、神の筋書きどおりなのだぞ。いちど、落ち着いて考えてみろ!神は世を三つに分けた。天界と地上、そして魔界だ。天界をはみだしたものは地上に堕ち、地上を追い払われたものは魔界に満ちるというわけだ。おかげで天界はきれいさっぱりかたづいたが、地上ときたらこのとおり、さらに魔界は?暗黒の魔界はどうなった?」
    イブールは盃に酒を注いだ。どぶどぶと、溢れるままに。
    「……こうだ!いずれこうなることは、わかりきっているじゃないか。全知全能の神ともあろうものがそのぐらいのことを考えなかったはずがない!」
    こぼれた酒を手で払って、イブールは方で息をついた。
    「お前は魔物使いではないか。マーサ同様、魔物たちを、魔物であるからといって悪しざまに言うただの人間どもとは違うではないか。なぜ、魔物たちを哀れまぬ?魔界はさっさと満杯になってしまい、多くのものが行き場を失って、しかたなく地上をうろつきまわった。地上のひとびとは困り果てた。そんなときのために、神は門をつくったはずだ。門番としての特別の人間たちを、我々エルへブンの民を生んだはずだ!」
    イブールは卓に両手をつき、リュカを見下ろした。
    「だが、ならばマーサはなんだ?望まれしものとしてのマーサとは、いったいなんなのだ?獣も鳥も、魔物さえ、彼女にとっては、等しく同じだけ価値のある愛しいものなのだ。彼女が大巫女の座につけば、門などもはや、意味はない。魔界と地上はごたまぜになってしまうだろう。そんな彼女を、マーサの息子よ、教えてくれ!神は、いったい、何のために生んだのだ?」
    リュカが答えぬと、イブールはますます早口になって執拗に言い募った。

  • 16二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:21:15

    「終局さ。…違うか?これは全て、予め設定されていた終焉の筋書きなのだ。神は、地上と魔界を混沌とさせ、お前や俺を遊戯の駒になした。
    天界の無事を守るため、地上と魔界を相争わせて、対消滅させ、一から、白紙から、やり直すつもりなんだよ。
    …そのことに、私は、遥かな昔に気がついた。そなたの父がマーサを誘拐した時にな。あの時も、長老どもはただおろおろと途方にくれるばかりだった。
    数百年の歴史を持つエルヘブンも、いざ終末にめぐりあった時には、何をすればいいのか理解しえなかった!
    こうなったら、なんとかして魔界と結託しなければならないと、わたしは彼らに言ったよ、虐げられた魔界の連中としっかり力をあわせれば、
    神と交渉することができるかもしれない。地上が、人間が、このまま為す術もなく滅びるのを、食い止めることができるかもしれないと!
    すると、あの無知なものたちは、私を裏切り者と呼び、幽閉しようとした。閉じ込められる訳にはいかなかった。何とかしてマーサを取り戻し、ふたりそろって、魔王に同盟を迫らなければならなかった!
    すると…ゲマが現れた!魔王もまた、わたしを求めていたのだよ!神がそのままの姿では地上に降り得ぬのと同様、魔王もまたその存在のあまりの大きさ故に特別の御座を必要とする。
    わたしは名を捨て、名を変えた、神にいただいたイーブという名を、闇の神、魔王に仕えるものイブールと改めるを誓いとして、神殿を起こした!
    誰かが教える必要があった。神ではなく魔王に仕えるための心構えを。誰かが救う必要があった。神なき世に暮らすひとびとを!
    わたしは努力した。だが、わたしはおのが力の限界をも知る誠実な男だ。だから、わたしはマーサを求めた。彼女の大いなる力を…ああ、けしてわたし自身の為にではない。人々の為に!欲したのだ。
    たとえ、結果として、この手が血赤に染まろうと…故郷のひとびとを裏切り、我が神を奉じぬ奴隷たちを、多く死に至らしめることになるとしても…
    わたしは、わたしのさだめをなさなければならなかった!大いなる天数の前には、たかが人間一匹、逆らうことなどできはしない!だが…。
    私がやっとの思いでマーサの居場所をつきとめ、この手に無事に取り戻したとき……彼女はすでに、リュカ、お前を生み落としていたのだな。…ふふ…ははは…あーっはははは!」

  • 17二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:21:30

    イブールは笑いだした。卓を揺すり、まるで何か毒にでも当たったかのように狂笑した。
    「神は、なんと巧妙だったのだろう!わたしがただひとり奔走してる間に、おまえたち神の走狗は、すっかり準備を整えてしまった。とんとだまされてしまったな。神ははじめから、いなくなってなどいなかった。思いもかけぬような布石を投じながら、神は、ただ魔王をその隠れ場から引きずりだし、時の至るのを待っていたのだ!」
    リュカの周囲に黒闇が激しく渦巻き、稲光が轟きわたった。
    「さぁ、勝負だ……マーサの息子!わたしは神を憎む。こんな茶番にひきずりこんだやつを憎む!そんな神など欲しくない、神なき世をこそ選択する!……だから、おまえたちを魔界に送るわけにはいかない。大魔王ミルドラースさまの邪魔をさせるわけにはいかぬ!そして光の時代は終わり、闇の時代が訪れるのだ!」

  • 18二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:22:24

    言い終わらぬうちに、イブールは、ぶきみな怪物に変わった。人間の形の中に眠っていた忌まわしいもの……腐りかけたゼリーのようにてらてらし、硫黄臭い息を吐く怪物が姿を現したのだ!

  • 19二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:22:55

    ……以上
    長い長い台詞
    DQシリーズでここまで長台詞を追加されたキャラもそうはいまい
    前口上だけで実に約2,300字!原作の同シーンの前口上の15倍もの台詞量でありオリジナルシーン含めた台詞の約半分も占める
    その内容も主にマーサへの想いとマスタードラゴンへの憤りであり特にマスタードラゴンは批判を多く受けているキャラであり彼に不満や怒りを覚えている人にとってイブールの台詞は留飲を下げるものではないだろうか?

  • 20二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:23:10

    SFCだとイエッタ一人に完封される程度のボスな上、ミルドラースからの扱いがアレだったのにすげえ存在感増したなって小説版見て思ったわ。
    後小説版はミルドラースが何て言うかイベントボス感あるせいで結果的に最大の敵だった気がする。

  • 21二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:23:25

    なんだこのスレ怖っ……

  • 22二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:23:44

    かくして戦いになるのだがこいつ戦闘力も盛られかなりの強敵と化す
    原作での実質無駄行動だった防御はスカラに変わりスカラとマホカンタでガチガチに固めつつイオナズンや吹雪で迎撃するというスタイルをとりリュカ一行10名以上を相手にして互角以上の勝負を繰り広げる
    しかし勇者ティミーのフバーハとキラーパンサープックルの凍てつく波動で形勢を逆転されさらにイオナズンをマホカンタで反射された隙にリュカティミーピエールの同時攻撃を仕掛けられるも迎撃を試みる
    ゲマが炎を天空の盾で防がれ死神の大鎌を取り出す暇もなく3人同時攻撃を直撃して倒されたのに比べると大健闘であった
    しかし……リュカとティミーは払いのけたがピエールの剣だけが執拗な防御を掻い潜りイブールを切り裂いた!刺さった剣を抜こうとしてイブールは気づく…このスライムナイトがかつてエルへブンでの顔なじみだったあのスライムだということに……

  • 23二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:24:11

    「お……お? おまえは?……」
    ‘イブールは呻いた。怪物の口には、ひとの言葉は馴染まぬのか、のろのろと、まるでひとりごとでも言うように。’「……し、知っているぞ!……おまえは、確か、マーサのスライム……エルへブンの……」
    「そうだ。わたしはピエール」
    ‘両手で剣をつかんだまま、ピエールはきっぱりと胸を張った。’
    「“イーブ”、おまえから、マーサを守るために。わたしは騎士の芽を生やした。そして、邪悪の手のものたちから、マーサを取り戻すために。ずっと、リュカと共に戦ってきたのだ!」
    「騎士の……芽を?……」
    ‘血走り乱れた瞳の中に……膨大な絶望に闇をのみ見つめていた瞳の中に……ぽつりと小さな空隙が生じた。空隙はちらちら瞬く光の点。飢えた暗黒に、邪悪な魔物の姿形に、なお飲みこまれずに残っているイーブ本来の生命。涙。’
    「……あの小さな、踏めば潰れてしまうようなスライムが……マーサの……ために……こんなに……こんなに!つ、強くなったと……いう……のか?……」

  • 24二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:24:23

    SFC版だとHP無限バグがあったから無駄にインパクトあったし

    リメイクだとお飾り小物な残念キャラが強調されてるから印象は強いぞ

    何よりコイツがマリア奴隷にさえしなきゃ主人公助かってなかったから間接的に大戦犯だし

  • 25二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:24:37

    この隙をティミーに突かれついに倒れるイブール
    「……わたしは……つ……強くなりたかった……」
    ‘きらめく光の一条が、爛れたような頬の上を滑り落ちる。’
    ‘蝙蝠の幕のような大きく垂れた翼を痙攣させながら、イブールはぜいぜいと耳障りな音を漏らした。うつろな視線でリュカを見上げ、色を失った唇を引き攣らせる。’
    「……おまえは……おまえたちは、暗黒の魔界へ行くのだな。マーサに逢いに行くのだな!このわたしには……け、けして許されなかったというのに……ふ、ふふふ。こうなることが、う、運命だったのかもしれない……だがな、マーサの息子よ……おまえたちにも、もはや大魔王ミルドラースさまを……とっ、止めることはできまい!」
    イブールの手が震えながら伸び上がった。
    「……何もかも、すべて……ミルドラースさまの予言どお……!」
    ‘イブールが手を開いた。小さな銀色の塊がひとつ、乾いた音をたてて卓の上に転がり出た。鱗指で虚空をつかんだまま、イブールは動かなくなった。砕けた氷のごとく煌めいていた瞳から力が失われた。淡灰色の月長石(ムーン・ストーン)そっくりな瞳孔のない瞳は、生きていたときよりも、むしろ、死んだいまにこそふさわしかった。リュカは無言のまま手を伸ばして、哀れな狂信者のまぶたを瞑らせ、その手から零れたものを取り上げた。’

  • 26二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:25:15

    以上が小説版イブールの出番である
    なおリュカは本来は腐った死体のスミスが仲間にしてくれと伸ばした手を何のためらいもなく握りしめるほどの優しい男でありそれは某使徒ですらここまでは言わないだろう暴言を吐くほど憎んだイブールの瞼を閉じたことからも窺がえる
    そしてミルドラースは彼について「じゃあ、やっぱり、イブールはだめだったんだね?」とだけコメントしている

  • 27二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:25:46

    ……それにしてもなぜ作者の久美沙織はこんなぽっと出の中ボスにこれほどまでに入れ込み設定容姿描写戦闘能力出番を盛りに盛ったのだろう…?
    結果として非常に濃いキャラクター性を獲得したのは確かでここまでしてようやく1ボスから登場人物の一人になったとも言えるが

  • 28二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:28:03

    小説版の出番全部言うより、魅力何点もあげて興味引かせた方がよかったんじゃ?
    少なくとも最後まで読む人は少ないと思う。俺は読んでない

  • 29二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:28:33

    いいイメージはないけど影薄くはない気がする

    ボスとしても弱すぎて逆にインパクトあるし

    大分前に倒したゲマが2回行動するのに、コイツは1回行動だし、
    しかもダメージ喰らう攻撃してくるのが2ターンに1回とか言うユルケツローテーション

  • 30二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:31:57

    言うほど影薄くないよね。星ドラ除けば他にない固有グラだし

  • 31二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:33:20

    凍てつく波動してくるイメージしかなかった
    影薄くはないけど緑のワニっていうインパクトの方が先にくるから…

  • 32二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:34:06

    >>27

    割とドラクエ5のボスって、ゲマが存在でか過ぎるのに、少なくともSFC版のゲマってあくどいだけの中間管理ポジだからドラマ性盛れるのはイブールの方ってみたのかもしれない。

    立ち位置は黒幕なのに、本編だと背景なんもないから優秀なフリー素材感あるし。

  • 33二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:35:26

    やっぱりシュワッチゎ変えた方がいいかな まで読んだ

  • 34二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:36:25

    >>33

    すごいな

    俺はウルトラマンだって死ぬときわ射精するんだよ

    までしか読めなかったわ

  • 35二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:37:49

    不勉強の馬鹿だから知らないんだけど、小説の引用ってどこまでセーフなん?

  • 36二次元好きの匿名さん21/11/04(木) 22:41:44

    何?小説コピペOKなの?

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