ロボットくん/すていないと

  • 1二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 20:19:49

    ロボットくんというのはかれのなまえです

    その名のとおりかれは体がきかいでできているのです

    ぎんいろのブロックをふたつくっつけて、そこに手足がはえただけのかんたんなつくりなのですが、あるとくしゅなぎじゅつによってまわりからはキチンとしたニンゲンに見えているのです

    だからロボットくんはニンゲンたちのなかにまぎれてせいかつできました
    ロボットくんはまいにち決まったじかんにおきて、決まったにっかをこなし、よくものぞみもなくひたすらひとだすけの日々を送ります

  • 2二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 20:22:13

    「ロボットくん 。 ストーブがこわれたからなおしてくれないかい?」
    「わかったよぼくにまかせて」

    「ロボットくん。ぼくのかわりにこれやっといて」
    「わかったよぼくにまかせて」

    「おいロボットくん、そうじやっておけよ」
    「わかったよぼくにまかせて」






    「ロボットくんおねがいしますあの子をたすけてください。 あの子はわたしのたからなんです」
    「わかったよぼくにまかせて」

    「ロボットくんおねがいしますこのむらをたすけてください。 あなたにはなにもかえせるものがありませんが、わたしたちはしにたくないのです」
    「わかったよぼくにまかせて」

    「ロボットくんおねがいしますあいつをころしてください。 あいつのせいでわたしたちはこんなせいかつをしいられているのです」
    「わかったよぼくにまかせて」

  • 3二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 20:23:57

    ある日、ひとだすけの日々をおくるロボットくんにこんなことをきくひとがいました



    「どうしてあなたはひとだすけをするのですか?」
    「ボクをつくったハカセからそのようにいのりをたくされました。 ハカセは正義の味方になりたかったのです」

    「ではあなたは、べつにひとだすけがしたくてやっているわけではないのですね」
    「よくわかりませんそれはどういうイミですか」

    「じぶんをすくうためにだれかをすくっているわけではないのですか」
    「フム、だれかをすくうことがジブンをすくうことにつながるというのはざんしんなしてんだなぁ。
    でも、ちがうとおもいます。 ただ、そのようにからだがうごくのです。 そのようにつくられたのです」

    「それっておかしいです」
    「おかしいですか?」
    「はいおかしいです」




    「でも─── こんなふうにしか生きられないのです」

  • 4二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 20:25:17

    ロボットくんはじぶんをかえりみることがありません
    いつでもだれかを助けることがさいゆうせんなので、しょっちゅううでやらあしがこわれます

    そのたびにだれかが泣いて、ロボットくんはおろおろしながらまとはずれなことばかりいうのです


    「泣かないでください。 こわいものをおみせしました。 でもだいじょうぶです。 すぐなおります。 がんじょうだけがとりえなのです」
    「ちがいますちがいます」

    「ではどうして泣くのですか」
    「あなたがジブンをたいせつにしないからです」

    「だってそれではひとだすけになりません」
    「ひとよりさきに救うものがあるでしょう」

    「ごめんなさい。 それはどういうイミでしょう? あの、どうか泣かないでください。 あの、しょくじでもつくりましょうか?」

  • 5二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 20:26:46

    ロボットくんはせかいじゅうを旅します。 もちろん、ひとだすけの旅です


    さばくのまち
    ごっかんのまち
    ころしあいでひとがしにたえたまち

    ロボットくんのやることはかわりません
    うでやらあしやらをふっとばし、時にはないぶのパーツをぶちまけながら、なまえもしらないあかのたにんをすくっていきます

    ロボットくんはなんのみかえりももとめません
    はじめこそひとは、かれをキュウセイシュだと言いました。 かれをセイジンのうまれかわりだとほめたたえました

    けれど、時がたつと、そのニンゲンばなれしたむよくさをひとびとはかえってキミわるがりはじめました

  • 6二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 20:28:45

    イノチをかけてたすけたあいてに、よけいなことをするなとにくまれたことがあった
    トモとよびあったニンゲンにうらぎられたことがあった
    サイガイからすくいだしたむらのにんげんたちからいしをなげられおいやられたことがあった
    イノチをねらわれるようなめにあったのはにどやさんどではきかない


    いつしか、ピカピカだったロボットくんのからだはすっかりサビつき、ガラクタのようになっていきました


    (もうヤめてしまえ)


    ロボットくんはつらい目にあうたび、かれはむねのなかでそうつぶやきました

    もうヤめてしまえ
    もうあきらめてしまえ
    いっそのこともうシんでしまえ

    しかしロボットくんはしぶとくいきのこり、こりもせずあきもせず、おなじことをくりかえします

  • 7二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 20:30:36

    旅をつづけるロボットくんは、ある時ユメをみました
    ロボットであるかれがユメなんてものをみるのはありえないのですが、なぜかきょうこのときだけはロボットくんはユメをみたのです


    「わぁ、キレイだなぁ」

    ユメのなかのせかいは、そらいちめんにホシが輝いています


    『やぁ、キミがロボットくんだね』
    「わっ。おどろいた あなたはだれですか?」

    『だれ、か。 フム、残念ながらまだ名前を明かすことはできないんだ。 ボクはつい我慢ができなくなってキミの物語に『夢』という形で割り込んだ迷惑なファンだからね。 夢である以上、キミにはなにも残せないんだよ』
    『まぁそもそもボクは夢魔であり人でなしだからね、夢から何かを奪うことはあっても夢に何かを残すことはしたことがないしできないんだ』


    インキュバス、となのるしろいせいねんのことばはロボットくんにはよくわからないものでしたが、ユメというものは整合性がないとききますし、それにこんなにキレイなホシゾラをみてたらそんなことはどうでもよくなりました

  • 8二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 20:32:47

    『ところでキミは、これからどこに行くんだい?あぁ、夢の中ではなく、キミが生きる現実の話だよ』
    「それはもちろん、たすけをもとめるひとびとのところです。 そのつぎのもくてきちも、そのつぎのもくてきちもです」

    『ハハハ。 キミの冗談は面白くないね。 そんな事をしていたらキミの旅は終わらないじゃないか』
    「いえ、その、おはずかしいはなしなのですが、じつはボク、旅のおわりをさだめてはいないのです
    なにをすればおわりなのか、どこにいけばゴールなのか、そういうのをきめずにでてきたものですから」

    『オイオイ、何だいそれは? 普通そういう事は旅立つ前に決めておくものさ。 キミの旅は実のところ始まってすらいない。 始まっていないものには終わりもない
    キミのやっている事はつまり──」

    しろいせいねんは、夜空のホシをゆびさして───


    『あのホシまで『歩いて』行きます…そう言っているようなものじゃないか』

  • 9二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 20:35:05

    ロボットくんはいいます

    「ホシはすきです」
    『ボクだって好きさ。 だから良く知っている。 アレはおよそ人間の目指す場所じゃない』


    ロボットくんはいいます


    「ホシがすきです」


    『目標にしてはいけないんだ。 ホシは眺めるものであって決して向かうべきものではない。 届くわけがないんだから
    ──どこにも辿り着けずに果てる人生なんて、虚しくはないのかい?」


    それでもロボットくんはいいます。 まるで、コワれたキカイのように/まばゆいものをみたニンゲンのように


    「星に──憧れたのです」

    「いつか、ホシをながめたのです。 とどかないホシです。 しょうじきどんなホシであったのかおぼえていないのですけれど、あこがれたことだけはおぼえているのです。 それでじゅうぶんなのです

    それをおいかけているだけで、もう、この生は満足で───」

  • 10二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 20:37:11

    ロボットくんはめをさましました

    ユメのなか、さいごのしゅんかん。 しろいせいねんはこまったようなえがおを浮かべていたような気がしましたが、ロボットくんは気にせずまたあるきはじめます


    ロボットくんはひとをたすけます/たすけられなかったひとがいた

    ロボットくんはひとをたすけます/たすけてとひっしにさけぶこどもをみすててなんじゅうというイノチをすくった

    ロボットくんはひとをたすけます/どうしてこのめにうつるすべてのにんげんをすくいたいというちいさなねがいがかなわないのだろう

    ロボットくんはあるきます/それでもーーこのあしは、うでは、ブリキのこころはうごくのをヤめてくれない

  • 11二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 20:39:00

    ながたびをへてロボットくんはとあるふんそうちたいーーひととひとがころしあいちをながしあう地へやってきました

    そして、ロボットくんはひさしぶりにまたユメをみました



    『やぁ、キミはまだ終わりのない旅を続けているんだね。 キミがその無意味な旅を続けている間、ボクもキミに当てられて無意味な計算をやっていたんだよ』
    『キミが歩き続けてあの一等輝く蒼いホシのもとへ辿り着くには、実に千五百年とんで三十五年という時間が必要なんだ』
    『キミがいくら人間ではないといっても千年稼働し続けるのは無理だ。 ーーまぁ、こんな事キミに言ったって、キミが諦めるわけがないって事は分かってるさ』
    『別にキミを説得しようなんて思っちゃあいない。 ぜひ、キミにはあのホシを目指してもらいたい
    ホシというものは届かないものであるということを、ぜひ、証明してくれ』
    『ちろちろと瞬いては消える。 六等星のようなキミが、あの蒼い星に果たして届くのか。 ボクは全く期待しないでこの塔で待ってるよ』

  • 12二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 20:39:54

    「でも私は知っています」

    「私はずっとあなたを見ていたから。 誰も知らない痛みを背負っても、私だけは、あなたの傷のぜんぶを知っていたから」

    「どんなに擦り切れても、傷ついても、あなたは歩き続けた。 そうして、旅の終わりの向こう側でーー」

  • 13二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 20:43:27

    ボロボロになったロボットくんが、草原に立っています
    かつて夢見た理想郷。 澄み渡った青空と、果ても見えないみどりの草原
    万人が想う理想郷をそのまま描き出したような場所


    ひとつの人影が、ロボットくんを迎えるようにやってきました
    美しい少女です。 美しい空色のドレス。 剣を持つにはあまりにも頼りない華奢なからだ。 風にたなびく、忘れようもないその金の髪

    ロボットくんは足を動かします。 とうに錆びついたその足は、ブリキの体は本来もう動くはずがありません
    でも、ここで彼の足が動かないはずはないのです
    何故なら、彼はいつもそうだったから、錆びついた足を、ブリキの体を動かし続けてきたのは、理想(ホシ)を美しいと思うその心だったのですから



    「───」

    少年は少女の前に辿り着きました
    終わらないと思っていた旅の終着地
    そこに辿り着いた少年は、でもまさか本当に終わるとは思っていなかったのか、少女に何と言葉をかければ全く考えていなかったようなのです

    いえ、考える必要はなかったのです。 何故なら、彼はずっとその言葉をたいせつに、たいせつに、胸の奥にしまっていたのですから

  • 14二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 20:46:55

    「ただいま、セイバー」
    「はい───おかえりなさい、シロウ」

  • 15二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 20:47:59

    終わりです

  • 16二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 20:49:08

    素晴らしい
    そんな言葉しか出てこない

  • 17二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 20:52:28

    いきなりこんな名作出してくるなよビックリするだろ

  • 18二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 20:53:15

    マジで素晴らしい。

  • 19二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 20:55:03

    美しいものを見た

  • 20二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 20:55:11

    マジできのこが書きそうな絵本って感じだしラストエピソードに繋がった瞬間泣いたし改めてスレ画像見るとラストエピソードのCGだし……もうっ!

  • 21二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 20:57:37

    解像度が高すぎる
    こんな所でこんな凄いものを読めるとは思わなかった

  • 22二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 20:57:47

    セイバーの画像が出るまでラスエピとは気づかなくて画像が出た瞬間変な声が出たのが…オレなんだっ

  • 23二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 21:01:05

    >>22

    俺もだ 士郎のことだろうなとは分かってたけどまさかラスエピとはこのリハクの目をもってしても……

  • 24二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 21:04:28

    まさかあにまんに野生のきのこがいるなんてな…

  • 25二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 21:04:34

    最ッッッ高でした…………やっぱりこの二人の関係は美しいです。

  • 26二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 21:05:45

    乙です
    一つの年があと少しで終わるという時に、美しい物を見れたことに感謝を

  • 27二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 21:06:38

    >>20

    あぁーっ! 奥の人影士郎とセイバーか……!!!

  • 28二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 21:07:13

    ちょっと待て
    これはあにまんで終わらせちゃいけない

  • 29二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 21:10:10

    たまに文豪が出没するから困るよね
    困らないけど

  • 30二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 21:14:10

    あにまんやってて泣くことがあるとは思わなかった

  • 31二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 21:17:10

    おらーっ 表でもまとめんかい管理人ーっ!

  • 32二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 21:17:34

    不愉快にさせたら申し訳ないんだけどこの内容どっかで見覚えあるんだよね、エレファント速報だかどっかのFateSSカテで

  • 33二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 21:25:26

    進むに連れて漢字や洒落た言い回しが多くなっていくのが大人になっていくみたいで素晴らしい…

  • 34二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 21:51:02

    エレファント速報で見た覚えがあるんだが再録か盗作かな?

  • 35二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 21:59:08

    >>34

    32なんだけどやっぱそうだよね?

  • 36二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 22:02:21
  • 37二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 22:06:00

    >>36

    うーん、あにまんなんか見てる人間だし…()

  • 38二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 23:10:57

    >>32

    >>34

    >>35

    >>36

    >>37

    後から来た人の感動台無しになりそうだから見なかった事にして消した方が良いと思います(被害者)

  • 39二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 23:13:32

    >>36

    世の中には知らなくて良いこともあるんだなって思いました

  • 40二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 23:15:53

    >>38

    消すんならこのスレを消すべきだよね

    パクリ指摘のレスじゃなくて

  • 41二次元好きの匿名さん22/12/30(金) 23:43:40

    >>38

    それは無理、戒め、晒し上げとして残します。

  • 42二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 00:02:34

    >>40

    >>41

    綺麗なまま終わって欲しかった

  • 43二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 00:08:22

    >>42

    じゃあこれ以上浮上させずにスレを消滅させましょうね〜

  • 44二次元好きの匿名さん22/12/31(土) 00:26:39

    このレスは削除されています

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