- 1二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 01:12:15
「ハローさん、あの人とはどこまでいってるんです?」
はい?と箸を置きながら聞き返す。
居酒屋に充満している油とアルコールの匂いを嗅ぎながら、『あの人』とやらが誰に該当するかを逡巡してみる。
次のステージのスタイリストの方だろうか。確かにあの女性はどのライブでも引っ張りだこで、まだ一度も打合せができていないけれど…
「まだ何も進んでいませんけど…でもちゃんと考えてますから!大丈夫です!」
「わぁっ、ハローさん本気なんですね!」
「? はい、本気じゃなきゃ何も進みませんから」
きゃあ、とスタッフの方々の黄色い声があがる。
そんなに次のライブが楽しみだったのだろうか?なら尚更頑張らないと。
「昨日のカウントダウンライブも大成功でしたし、次のライブもステージに立つウマ娘さんたちがキラキラできるよう企画を煮詰めてみますね!」
むん、と気合を入れる。それに茶々が入るかと思ったら、途端にシーンとしてしまった。
一拍置いた後、ライブの打ち上げに参加していた関係者全員、深いため息を吐く。
あ、あれ……? - 2二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 01:13:15
「ハローさん、そっちじゃないよ。PAさんもスタイリストさんもライブ関係者は今はもーどーでもいいの」
いや、どうでも良くはないでしょう。
そんな言葉も口にできないほど圧が強いステージマネジメントのウマ娘さんが、グラスに注がれているカクテルをぐいと煽って詰め寄ってくる。
「わたしたちが聞きたいのは、あの人。よくヘルプで設営とかドリンク用意したりしてくれる、中央のトレーナーさん」
突然出てきた人の名前に、条件反射みたいに彼の笑顔が脳裏に浮かぶ。
あのトレセン学園でトレーナーをしており、グランドライブ再建計画に快く協力してくれる好青年。
担当の面倒だけでも忙しいはずなのに、ステージに立つウマ娘たちのスケジュールを管理してくれて、告知ライブ前に「なにか手伝うことはありませんか?」と気遣ってくれる優しい人。
「へっ?あの、えと、トレーナーさんが…?」
「ぶっちゃけ男女の仲なんですか?」
男女の仲。
それはつまり、交際関係。 - 3二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 01:14:12
「そっ、そそそんなことありませんよ!わたしとトレーナーさんが、そんなっ、ないですないです!」
「慌てちゃって怪しいな~」
「いやっ、ほんとそんな関係じゃないです!協力いただいてる以上の関係性はありません!」
「でもたまに一緒にアイドルのライブとかおでかけとかしてるんでしょ?」
「あれはわたしのわがままに付き合ってもらってるだけですっ」
というかなんで知ってるんですか!?
「トレーナーさんはウマ娘のパフォーマンスを引き上げるプロですから、わたしも恩恵にあずかってるだけですよ!いうなればビジネス関係です!」
「へー、じゃあそれ以上の関係になりたいとは思ってないんです?」
「協力いただいてるだけで十分ですっ」
顔が熱い。これ以上詮索されたら変なこと口走りそうだ。
ただでさえ今日はライブの成功で気分がよく、弾みで何か言ってしまいそうなのだ。 - 4二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 01:14:36
とにかく会話を終わらせよう。手に持っていたグラスを飲み干し、店員さんに追加の注文を入れる。
その間、別のスタッフさんがステマネさんを小突いており、「調子に乗りすぎ」と小声で諫めていた。それに気付かないふりをして、空いてるグラスを回収し店員さんに引き渡す。
新しく注文したカクテルをゴクゴクと胃に流し込み、ダンッとテーブルを鳴らして言った。
「きょうはほんっとうにいいライブでしたね!つぎもみなさんよろしくおねがいします!」
そこから先はあまり記憶がない。 - 5二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 01:15:10
「きみのあいばが~♪」
ふわふわした心地のまま、街道を往く。
打上げ後のやり取りもそこそこに帰路についたけれど、ほぼ前後不覚。
帰り道かどうかも怪しい。
ただ気分のままに練り歩いているだけ。
「ふんふんふーん♪ふふふんふー-んっ♪」
本当に気分が良い。
ここに彼がいればもっとーーー
「ご機嫌ですね」
あ。
「あー!トレーナーさんっ!あけましておめでとうございまーす♪」
なんてタイミングだろう。狙ってたのかな? - 6二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 01:15:55
「明けましておめでとうございます。なんかふらふらしてますが、大丈夫ですか……?」
「えへへー。実は今まで年末ライブの打ち上げにさんかしてましてぇ……」
「それで酔ったと?」
あー、ちょっと呆れてますねこの人?
いい大人が羽目を外しすぎと思ってます?
良いでしょう。ちょっぴり大人なわたしが本当の羽目の外し方を教えてあげます。
「ぜんっぜん酔ってませんよぉ!元気元気~!なので、カラオケ行きましょ♪」
「……え?」
「だってだって~!カウントダウンライブに立ち会ったら、歌いたくなっちゃったんですよ~!」
ほんとうに昨日のライブは凄かったんですよ。今からでもトレーナーさんに見せたいくらい。
グランドライブは、もっと凄いステージにしてみせますから。
だからーーー
「い、今から、ですか?」
「はい。というわけで、GO~~☆」
「わっ、ちょっ、待ってくださうわ力強いッ!」
離しませんからね。
彼の腕を引っ張ってちょうど目と鼻の先にあったカラオケに突入する。
酒の勢いって怖い。
全てが醒めたから言えることだけれど、やらかしたことに悶絶する今はそう思わざるを得なかった。 - 7二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 01:25:17
いいね
- 8二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 01:30:26
(吐くなよ…?)
- 9二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 01:34:17
いったいどんなカラオケになったんだ…
- 10二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 01:40:35
新年からいいもん見れたわ
しかし誰かが見てないと危なっかしいなこのハローさん - 11二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 02:07:03
そうか正月を待ってたのか
それも含めていい話だった! - 12二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 11:44:13
ほう…続きは?
- 13二次元好きの匿名さん23/01/01(日) 11:47:24
いいよねこういう本編の舞台裏的なの