トレフクSS「アップルボビング、やってみます?」

  • 1二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 20:19:02

     ※13レスほどあります

     トレーナーとの関係を進展させたい。
     マチカネフクキタルはよくそのようなことを考えている。
     目が覚めて、目覚ましをなる前に止めて。
     最初に浮かんだのがこういった考えであったことは、
     我ながらどうかとも思いもするのだが。
    (おはようございます。トレーナーさん)
     スマートフォンに触れて、壁紙に設定した彼の写真へと挨拶を送る。
     昨夜は遅くまで勉強していたのもあって、多少疲れが残っていたのだが。
     彼の顔を見るだけで、じんわりと体が暖かくなっていく。
    (……これだけで幸せな気持ちになれるんだから、仕方ないよね)
     そう自分に言い訳しながら、彼女はベッドから
     抜け出す──纏わりつく寒さすら、どこか心地よい。

    (とはいえ、温泉旅行に二人きりで行ったわけですし)
     ウマ娘の本懐は走ること。それは確かなのだが、
     トレーナーとかけがえない絆を感じたウマ娘ならば、
     深い関係になりたいと思うのも間違っていない。
     はずだ。きっと。おそらく。
     心の中で再び自分に言い訳しながら、彼女は身支度を整える。
    (最近は良く手をつないでお出かけもしてますし。もうひと押し……のハズです!)
     今日こそはと決意を新たにしつつ、
     着替え終わった彼女はテレビのリモコンを操作した。
     いつも通り、時刻は6時55分。
     ちょうど占いコーナーが始まる時間だ。

  • 2二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 20:21:01

    「さぁ、本日の星座占い! まず第十一位から八位まで──」
     十一位からずらっと表示された星座にふたご座が無かったことを安堵しつつ、
     フクキタルはじっと画面を見つめる──起床したルームメイトと
     挨拶を交わしているうちに占いは進行し──
    「今日の一位は……ラッキー! ふたご座のあなた!
     ラッキーアイテムは……ザザッ……真っ赤なりんご!
     親しい人と食べるといいことがあるかも? ……ザザッ……です!」
     最下位と一位が残された状態で先に発表されたのは、彼女の星座、ふたご座だった。
    「おおー! 今日はいい一日になりそうです!」

     一瞬画面が途切れたような気がしたのが気になったものの、
     喜色満面の笑みを浮かべたフクキタルは。両手を左右に挙げて
     そのままゆらゆらと左右に揺れる──珍妙な動きではあるが、
     本人としては大真面目に天に感謝を捧げているつもりである。
     隣で黙々と着替えているルームメイトは
     生暖かい視線を送ってきているがまぁそれはそれとして。
    「はて、りんごと言いますと何かあったような……」
     ふと何かを思いついて、フクキタルはスマートフォンの画面を見た。
     そこに表示されていたのは、10/31という文字。つまり──
     「閃きました! そうと決まれば急がないと! 開運ダーッシュ!!」
     ルームメイトの生暖かい視線を背後に、
     マチカネフクキタルは意気揚々と部屋を飛び出した。

  • 3二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 20:23:49

    「と、いうわけで、今日はトレーナーさんとアップルボビングをやろうと思うのです!」
     時は流れお昼過ぎ。食堂らを誘って昼食を取り終えた直後。
     マチカネフクキタルはりんごを取り出して、
     皆の前に掲げた──食堂で調理をしているお姉さま方に頼み込んで、
     十個ほどりんごを分けてもらったのだ。
     今度お礼を持っていかないと。などと思いつつフクキタルは友人らを見る。

    「アップルボビング……? ドーベルは知ってる?」
    「聞いたことはあるかな。確か、アメリカの風習だっけ」
     友人──サイレンススズカとメジロドーベルは、
     アップルボビングについて詳しく知らなかったようだったが。
    「イエース! りんごをタクサン、タラーイの水に浮かべて、マウスでゲットする遊びデス!
     懐かしいデスね……昔はよく、ファミリーやフレンズとやってマシタ」
     アメリカ出身のタイキシャトルは違ったようだった。
     手早くスマホを操作したかと思うと、皆に写真を見せてくる──家族だろうか。
     幼いタイキシャトルと他数人が大きなたらいの中に浮かんだリンゴに
     かぶりつこうとしているのが見える。

    「ふふ。かわいい……でも、リンゴをマウスでゲットって、なんだか大変そう」
    「……衛生的にどうなんだろ。これ」
    「も、もちろんきれいに洗ったリンゴと霊験あらたかなお水を使いますよ?」
    「今だと、水に濡れるのも寒そう……」
    「そうだね。夏にやるといいんじゃないかな」
    「むむむむ……ハロウィンの占いなんですが」
     残念なことに、スズカとドーベルはあまり興味がないようだった。
     仕方ないと無理に誘うことは諦めて。
     フクキタルはタイキへ両手をこすり合わせて拝み始める。
    「とにかく、この通りリンゴは用意済み! そしてタイキさん! お願いがあります!」
    「ホワッツ?」

  • 4二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 20:26:31

    「実はその、私もアップルボビングは初めてでして……コツなどを教えていただければと」
    「オーウ、面白ソウデス! たっぷり練習しまショウ!」
    「……占いの練習って良いのかな?」
    「フクキタルが納得してるなら、良いんじゃないかしら」
     友人二人の指摘はスルーして、フクキタルは立ち上がる。
     そしてそのまま、グラウンドへ向けて指を差した。
    「行きましょう! タイキ師匠! 早速トレーニングです!」
     タイキシャトルも立ち上がり、腕組みをしてうんうんと頷く。

    「イエス! 今日のワタシはフクキタルのシッショーになりマス!
     ビシバシ! ライクオーガに鍛えますヨー!」
    「ぬっふっふっふ…………今日の私は朝の占いで一位! つまり絶好調!
     更にラッキーアイテムがリンゴと来れば、どんな特訓でも耐えて見せましょう!
     それでは、失礼します!」
    「シツレイ! ヒアウィーゴー!」
    「あ……二人とも、明日の準備は…………」
     スズカが何か言いたげに声をかけたのだが。
     気づかずに、二人は元気よくグラウンドへと駆けていった。


    「二人はいつも元気だね……あれ、スズカ、どうしたの。変な顔して」
    「…………ええっと、フクキタルが言ってた朝の占いって、6時55分に始まるものよね?」
    「たぶんそうかな。毎回一位になるたび絶好調って言われるから覚えちゃったよね」
    「あの番組、私も見ていたんだけど……ふたご座のラッキーアイテムは別のものだったような」
    「…………そういえば、そうだったかも」
    「…………」
    「…………」

  • 5二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 20:29:05

     「アップルボビング、やってみます?」

     この言葉を出すまでにはまた、紆余曲折があった。
     多少改善されたとはいえ、フクキタルは自分に自信があるほうではなかったし、
     いくら占いによるものとはいえ、直接的な誘いをかけるともなると迷うところはあったのだ。
     しかし、占いの結果であることやタイキシャトル師匠、
     偶然通りがかったシーキングザパールの励ましに背中を押されて、
     どうにか誘いの言葉を口にすることができたのである。

    「水に浮かんだリンゴを口で取る占いで、その、恋占いらしいのですが」

    (声が上ずっちゃった。……変に思われてないかな)
     緊張で体をもじもじとさせながら、フクキタルは彼を見上げる──彼は少し、
     戸惑っているように見えた。
    「いいけど、どうして急に?」
    「イエ……ソノ……今日はハロウィンですから。
     ハロウィンの占いでトレーナーさんとお祝いしたいなーって……ダメ……ですか?」
    「駄目なわけ無いだろう?」
    「っ! はーっ。良かった。断られちゃったら五体投地もやむを得ない所でした」
     そんなことを言うはずもない。と言いたげに苦笑を浮かべる彼を尻目に、
     フクキタルは占いの準備を始めた。ブルーシートを広げ、
     底の浅い──その方がリンゴを取りやすいのだ──たらいを置く。

  • 6二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 20:31:44

    「何を持ってきたかと思えば……」
     呆れと笑いの混じった彼の呟きに反応することすらせずに、
     ゆっくりと、慎重に、フクキタルは水を注ぎはじめる。
     彼の温かい眼差しに包まれた沈黙はどこか心地よかったものの、
     むずむずとした感触に耐えきれずにフクキタルは口を開いた。
    「時にトレーナーさん、アップルボビングとはどのような占いか、ご存じですか?」
    「教えてくれる?」
     占いの解説ももはや慣れたものだった。
     空いた手でピンと人差し指を立て、フクキタルは解説を始める。

    「アップルボビングは別名、ダックアップルとも呼ばれていまして
     先ほど言った通り、水に浮かんだリンゴを口で取る占いです。
     一説によるとドルイドの邪悪な儀式が変容したものだとか。
     他にも、ハロウィンは様々な国の文化を取り入れているため、
     ローマの文化を取り入れた結果、りんごが使われるようになったって説もあるみたいです」

    「邪悪……」
    「あ、でも、今は違いますよ! 占いも人と時代で変化していくものですからね。
     アメリカだと主にハロウィンパーティーの余興として行われているみたいです。
     タイキさんは子供のころによく遊んでいたとか。
     そして……かつてのイギリスだと、その………恋占い、だったみたいです」
     顔がかぁっ、と熱くなるのを感じながら、フクキタルは恋占いという言葉を絞り出した。
     恋占いを二人きりでするという意図を、彼はわかってくれるだろうか。
     不安に思いながら、説明を続ける。

  • 7二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 20:33:59

    「好きな人のイニシャルが刻まれたりんごを、
     一回で咥えることができたら、その恋は成就する。って感じの占いです。
     失敗しちゃうと占いパワーが反転するせいか……その、
     付き合っても別れちゃったりとか、付き合うことができないみたいで」
    「リスク高すぎない?」
    「そ、そうかもしれませんが、それだけに成功したときのパワーは期待大です!
     喋喋喃喃、夫婦円満。比翼連理に屋烏之愛!」
    「……四字熟語、辞書で調べた?」
    「ハイ! ……って! それは言わないお約束ですよ~」
     一通り説明を終わると同時に水を注ぎ終えて。フクキタルはリンゴを手にした。
     成功しますように。そう祈りながら一つ一つ水に浮かべていく。

    「二つでいいんじゃないか?」
    「雰囲気です!」
    「そっか……」
     最後の一つに果物ナイフで小さく──彼に文字が見えないように──イニシャルを刻み込み、
     フクキタルはくわっ! っと目を見開いた。
     ぽちゃん。と最後のりんごが水に浮かぶ。
    「それでは、私が先に行っても良いでしょうか!!」
    「いいけど……肩に力が入り過ぎ」
    「そ、そうですね! 落ち着いてー………落ち着いたー……なむなむなむ……それでは……いざっ!」
     覚悟を決めて、目当てのりんごへと向けて、口を開ける。
     想い人の前で大きく口を開くことは流石に恥ずかしかったのだが。
     特訓の成果はあったようだった。照れをごまかし、目当てのりんごへと食らいつく!
    (シラオキ様にイギリスの神様にタイキ師匠……ご加護をっ!)

  • 8二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 20:35:59

     心の中で様々な祈りを捧げながらながら、フクキタルはリンゴに突撃した。
     肌に冷たさがまとわりつくと同時に、サクッという音ともに
     前歯がリンゴへ突き刺さった感触はあった。のだが。
    (むっ……と、どうしましょう。顔を上げると、滑っちゃうような)
     上の前歯はしっかりとリンゴにとらえているように思えたが、
     どうにも下の前歯の感触が心もとなかった。
     どうしようかと迷っていると
    「フクキタルなら出来る!」
     声が聞こえた。誰よりも信頼している。彼の声が。
    (なむなむーー!!)
     顔を上げる。目の前には、真っ赤な果実。

    「やったな!」
    「むーーーー!!! むむむっ! むーーーー!!!!」
     びしょびしょになった前髪がおでこに張り付いて少し変な感じだったが、
     両手を上げて、フクキタルは喜びを示す。
     そのままリンゴを手に取ろうとした、その瞬間。
     サクッ。という音とともに。赤い幸運が逃げていく。
    「あ…………」
     ぽちゃん。と音を立てて、りんごがたらいへと帰還した。
    「…………ああ、あああ…………」
     さぁっと、血の気が引くのを感じながら、
     フクキタルはごくんとりんごのかけらを飲み込んで、
     顔の水をぬぐうことすらせずに彼へと視線を向ける──気まずそうに眼をそらし、彼は言った。

  • 9二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 20:38:18

    「取れたってことでいいんじゃないか? しっかり歯形もついてるし」
    「そ、それはそうですけど……でも、なんというかその……」
    「……もう一回やる?」
    「そ、それは駄目です! ええっと、風水的にも良くないといいますか」
    「イギリスの占いなのに風水?」
     一回目で取ることができれば、その恋はかなう。
     二回目だと、しばらく付き合った後に別れてしまう。
     そうだと知って、もう一度行う勇気は、フクキタルには無かった。
    「うぅ……成功……いやしっぱ……いや成功……むむむむむむ」
     かといって取れたと思い込むのも難しく、
     ごにょごにょと小さな奇声を上げつつフクキタルは頭を抱える──と。


    「……それじゃあ、次は俺の番だな」
    「むむ……え……?」
    「果物ナイフ、借りるよ」
     トレーナーの声に顔を上げる。
     彼が手にしていたリンゴには、しっかりと歯形がついていた。
     幸か不幸か、刻み付けたイニシャルは削げ落ちているようだったが。
    「と、トレーナーさん!? それ、私が落としたリンゴじゃないですか!?」
    「同じリンゴを使っちゃいけないなんてルールは無いんだろう?」
    「え? えっと……どうなんでしょう。
     タイキさんはそこら辺、何も言ってませんでしたが」
    「なら、問題ないんじゃないか。ちゃんと反対側に噛みつくから大丈夫」

  • 10二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 20:40:08

     そう言って、彼が水に浮かべたリンゴに大きく書かれていたのは、
     紛れもないMの一文字。
     それに驚愕し、何かを言う間もなく。
    「よし……!」
     彼は大きく口を開け、迷うことなく、たらいに顔を突っ込んだ。
     舞い散る水しぶき。ぽけーっ、とフクキタルが眺めている中、
     彼がゆっくりと顔を上げる──彼の口には、幸運の証がしっかりと咥えられていた。
    「お、おおーーーーー!!! さっすがトレーナーさん!
     まるでカバのような素晴らしい口の開けっぷりでした!」
     フクキタルの暴言に余計なことを言うなと言いたげに、
     小さく眉をひそめたトレーナーだったが。
     しゃり。という音ともにリンゴを手に取り、フクキタルへ笑顔を向けた。

     心臓が、今までにない高鳴りを見せる。
     世界中の幸せが、自分の中に集まってしまったのではないか。
     そんな考えすら浮かんでしまう。
    「よっと……これで、二人とも一回で取れたってことでいいんじゃないかな」
     ──心の中の理性は、何か違うんじゃないか。と言っているような気もしたのだが、
    「な、なるほど…………さすがはトレーナーさん!
     あまりに聡明なそうめリスト……いえ、これだとゴロが悪いですね。
     とにかく、凄いです!」
     思わず抱き着いてしまいたくなるほどの多好感に耐えきれず、
     フクキタルは両手を上げて小さく飛び跳ねながら
     訳の分からないことを口にする──が、それも少しの間だけだった。

  • 11二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 20:42:28

     ふと、フクキタルは体を縮ませて両手を自らの腕へと押し当てた。
     ばく、ばく、という音は、室内中に聞こえているのではないかと思ってしまうほどだ。
    「あのぉ……ところで、その」
     思い出してしまったのだ。リンゴに書かれていた、Mの一文字に。
    「リンゴに書いてあったイニシャルって……わぷ」
     問いかけを最後まで口にする前に、そっとフクキタルの口が柔らかい感触で塞がれた。
    「フクキタル」
     いつの間に近づいたのか──彼がそっと、ハンカチを当ててきていたのだ。
     優しい感触が肌をくすぐり、額に貼り付いた前髪も丁寧に拭き取られていく。
    「焦らなくていい。……来年も、その次の年も、俺たちは一緒だ。そうだろう?」
     その言葉は、正直なところ、ごまかしているようにも聞こえたのだが。
     ハンカチが離れていくと同時に見えた、彼の顔はかすかに赤く染まっていて。
    「……ハイ! ずっと、ずっと一緒です!」
     この胸で高鳴る春雷を、彼が受け止めてくれる未来がある。
     それを確信することができただけで、フクキタルは満足だった。

    「いやぁ。今日のトレーナーさんはキメキメキメでしたね!
     もはやハルキタルを通り過ぎてナツキタルになっちゃいそうです!」
    「そのまま行くとすぐ秋になりそうだな」
    「駄目ですよ! 秋になるのは……駄目です! 秋は来ません!」
    「……とりあえず、このリンゴはどうしようか」
    「うーん。半分こにします? 本当は、枕の下に置くと
     いい夢が見られるらしいのですが。ばっちぃですし」
    「そうするか……」
    「あ、ほかのリンゴも私がむいちゃいますね。うさぎさんにします? 鶴にも亀にもできますよ!」
    「鶴?」
    「ハイ! ええっとですね。こうやって──」

  • 12二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 20:44:25

     翌日。朝の教室にて。
    「ふふふふふふふふ……」
     マチカネフクキタルは友人たちの隣で、
     奇声を上げつつ満面の笑みを浮かべていた。スズカもドーベルも慣れたもので、
     そんなフクキタルの様子を完全にスルーしつつ、
     他愛のない会話に花を咲かせていた──のだが。
    「ふふふふふふふふ……」
     いつまで立っても笑い続けているフクキタルをさすがに放っておけなかったのか、
     二人はフクキタルへと視線を向ける。

    「今日のフクキタルは一段と変ね」
    「変って言うか浮かれ過ぎって言うか……まぁ、成功したなら良いんじゃない?」
    「ふふふふふ……あの後もたーっぷりイチャイチャ出来ましたし!
     マチカネフクキタル。絶好調です! フハーハハハハッ」
     かつて増長してた時と同じように笑っていたフクキタルだったが。
    「イチャイチャね……え、もしかして、勉強してないの?」
     何か。何か取っても聞きたくなかった言葉が
     ドーベルの口から聞こえた気がして、フクキタルは笑いを止めた。
    「……ハイ?」
    「昨日言おうとしたんだけど…………ふふ、フクキタルらしいね」
    「あの、それって、どういう……あれ? そう言えば……」
     何で、私は一昨日、勉強していたんだっけ。

  • 13二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 20:46:02

     ガラガラという音ともに、教室の入り口が開いた。
     恐る恐るそちらを見ると、入ってきた教員の手には分厚い紙束が。
    「おっはよう! さっさとテスト始めたいから席についてー!」
    「はっ……! そういえば昨日はトレーナーさんとテスト勉強をする予定だったような!?」
     おそらくトレーナーもそのつもりだったはずなのだが──ひょっとして、
     彼もだいぶ浮かれていたのだろうか?
     今それを確かめることは出来そうにないが。
    「シラオキ様もテストのことを忠告してあげたらいいのにね……」
    「ちょ、ちょっと待ってください! これ以上赤点取ったらお叱りだとこの前エアグルーヴさんが!?」
    「……頑張って」
     無理だろうなぁ。という諦観をありありと感じ取れる応援の言葉を残し、スズカが去っていく。
    「シラオキ様鉛筆で頑張ってみたら?」
     冷淡な口調で、けれど口元の笑みを隠し切れていないドーベルも去っていく。

    「いやいや。今日は記述問題じゃないですか!」
     無論、二日前まで全く勉強していないというわけでも無いのだが。
     浮かれ切った頭の中には、勉強の成果など残っているはずもなく。
    「マチカネフクキタル! さっさと座った座った!」
    「ぎょわーー!!!」
     フクキタルの奇声──いや、断末魔の叫びがクラス中に響く。
     
     まぁいつものことなので、誰も気にしなかったのだが。

     後日。
     赤点を取ったことにより、トレーナー共々エアグルーヴにたっぷりと叱られたフクキタルであった。

  • 14二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 20:46:36

    終わりです。長すぎた

    あと>>3の二行目で誤字

    ×食堂ら

    〇友人ら

  • 15二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 20:51:02

    素晴らしいSSだった かわいいフクキタルだ...

  • 16二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 21:03:08

    同期組の絡み含めて素晴らしいssでしたわ…

  • 17二次元好きの匿名さん21/11/05(金) 21:25:43

    すごくいい…
    ふたご座のラッキーアイテムは紙とペンとかだったんだろうな…

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