スカイ「へへーん、次もセイちゃんが勝たせて貰っちゃいますよ」

1二次元好きの匿名さん21/08/22(日) 22:15:58

かひゅー、かひゅー。
呼吸の音すら自分のものではないように感じるほど、肉体は疲れきっていた。
辛うじて両手を膝の上に置いて、ターフの上に私は立っている。
身も心も燃やし尽くして、小癪な策をいくつも練って、その上で掴んだ薄氷の勝利に、それでも勝者として胸を張ろうと。
だってそうして立っていないと、心根ごと地に伏してしまいそうで。

「セイちゃん……今日もすごかった！　負けちゃったのは悔しいけど……」

才能と努力の塊が歩いてくる。
すごくなんてない。才能のない私が限界まで全てを絞り尽くして、ほんのわずか、あなたを上回っただけ。
現に今の二人の姿がそれを物語っている。勝って精魂尽き果てた者と、負けても精気に満ち溢れたもの。いったいどちらが勝者の姿かわからないと、私は自嘲の笑みを浮かべる。

「また良い勝負をしよう！」

そう言って彼女が手を差し出してくる。急いで息を整えないと。表面すら取り繕えなくなるその前に。
──私の虚勢を、彼女の末脚が完膚なきまでに切り裂く日はそう遠くないだろうと思いながら。
私は彼女の手をとって、空っぽな笑顔を浮かべた。