- 1二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 14:35:12
――アグネス部屋の朝は早い。
「やあデジタル君、おはよう。うん、今日も無事に心停止しているようだね」
アグネス部屋の朝は、生存確認から始まる。
タキオンは起床し、同室アグネスデジタルの脈がないことを確認するともぞもぞと引き出しからAED的なサムシングを取り出し、慣れた手付きでデジタルのパジャマの前をはだける。パッチをアグネスデジタルの日焼けを知らない白くすべすべとした柔肌に貼り付ける。
本来AEDは心房細動だかなにかに使うものだがタキオン印のAEDにはそんなことは関係ない。秋天で転倒して大ケヤキに犬神家したサイレンススズカを救いシニア期に消失したアストンマーチャンが溶けた海に電極を差し込んで電気分解の原理でアストンマーチャンを再生したAEDは、多少の死者くらいなら強制的に現世に召喚して体力を+70することくらい容易い御用だ。
ましてや相手はアグネスデジタル、タヒぬことにかけてはトレセン学園をきってのプロである。
「さあって、3,2,1――」
バシッッン!バシッッン!バックシンシーン!
タキオン印のAEDの毎秒30発電撃を受けたデジタルの肢体がベッドの上で跳ねる。触れれば折れてしまうのではないかと思われるほどに細く、だが触れればしなやかで身の詰まった筋肉のついたアグネスデジタルの白い腕がバラバラにダンスを踊る。これ以上なく安らかだったアグネスデジタルの目が見開かれ、半開きになった口元から涎が垂れる。
「ひゃうっ! はっ!」
電撃の余韻でびくびくと四肢を震わせながら、デジタルの焦点の合わない目がタキオンの顔を見上げる。
「やあ、お目覚めかい?」
「あ、タキオンしゃん――」
タキオンの顔を認識したアグネスデジタルは急速に覚醒して跳ね起きた。
「――たった今まで目の前で展開されていたチョクセンバンチョーさんとギンシャリボーイさんのケンカに見えてお互いのことをこれ以上なく理解しあった間柄でのみ成立するライバル対決は!? これからジャパンワールドカップだったんですよ!」
「君は相変わらず三女神に愛されているようだねぇ。どれもトレセン学園には在籍していないウマ娘の名前ばかりだ」
デジタルが跳ね起きたときの衝撃で跳ね飛ばされ、部屋の天井のシミとなったタキオンが、ずるり、とキラキラした光を帯びた液体となって落ちてくる。 - 2二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 14:35:29
「ああっタキオンしゃん! タキオンしゃんの残機が!」
「やあデジタル君、すまないがいつものやつを頼めるかな?」
「はいお任せください!」
足元でたぷたぷと揺れる液体から響く声にデジタルはぶんぶんと首を振ると、はだけっぱなしになっているパジャマの前を閉じるのもそこそこに本棚に並んだ本に偽装された複数の隠しスイッチを順番に叩く。ゲートの中でなんか聞いたことのあるような音楽とともに本棚全体が一度銀色に光ったあと、妙に聞き慣れた音を響かせながら本棚の色が金色、ついで虹色に輝いて真っ二つに割れる。
「おや、今日は☆3かい。幸先がいいねぇ」
「そうですね!ってそんな場合じゃないですよタキオン3!」
のんきな口調のタキオン(液体)を後目にゲートと化した本棚の中に飛び込んだデジタルは固有スキルを発揮させ、サポートカードを召喚する。デジタルの秘蔵コレクション(万が一のときのための焼却装置付き)や怪しげな試薬のなかから「いつもの」を数秒で選び出すと、ボトルを開けて足元のタキオンにとぽとぽと掛けた。
アグネス部屋が暗闇に包まれる。次いで、床に広がった液体が種種雑多な数式に変化し、次いでアグネスタキオンの姿となる。
「ふぅん、今日の数式はリーマン予想の証明式か。悪くない」
「すいませんタキオンさん! また残機使っちゃって……」
無事に蘇生したことを確認すると同時に土下座の体勢に移行したデジタルにタキオンは苦笑しながら己の足の具合を確かめる。
「うん、まあこれで1減ったけど、どのみち屈腱炎がかなり進行していて、そろそろリセットしないといけないと思っていたからね、大した問題ではないよ。さあ、済まないが蘇生したついでに生成された勝負服の隠蔽をお願いできるかな?」
「あ、はい。またこの前みたいにテイオーさんに焼却処分をおねがいすればいいでしょうか?」
「うーん、テイオー君にはこの前お願いしたばかりだからね……先頭の景色の先に捨ててきてもらうようスズカ君に頼んできてくれるかな?」
「了解です!今なら朝練に行く前のスズカさんを捕まえられると思うので行ってきます!」
「すまないね」 - 3二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 14:35:40
手早く脱ぎ捨てた191着目の勝負服を受け取ったデジタルがアグネス部屋を出ていくのを見送ると、タキオンはベッドの裏を探る。デジタルに万が一にも見られないよう、ベッドの裏に隠しておいたカウンターのボタンを押す。ダイヤルが周り、カウンターの示す数字が9に変わる。
それをじっと見つめたあと、タキオンは棚から取り出した試薬をカバンに移し始める。今日の試薬は、試薬を含んだ血液を光り輝やかせるものだ。これを飲んだウマ娘が脚が壊れるほど――屈腱炎を発症するほどに走れば、屈腱炎の原因となる出血部位が強く光るという仕掛けだ。ウマ娘用に調整しているから、ヒトが飲んだ場合全身が光ってあまり意味がなくなってしまうが。
試薬の支度を終えると、ジャージに袖を通す。
――さて、わたしの残機は残り9か。
カウンターの示す数字はタキオンの残機。トレセン学園入学時は200あったカウントも、これでとうとう2桁の大台を割ってしまっていた。
これまでに、191回試した。191回の行き止まりに――何回かは過労もあったがそれはそれとして――ぶつかってきた。挑戦できるのは、あと9回。
「これでは――プランAの完遂は不可能かもしれないな」
講義のサボり過ぎで退学勧告も出ている。トレーナーなどという厄介な大人の相手をする気などさらさらない。
ならば、残り9回の残機を使ってウマ娘の脚に潜む爆弾を可能な限り解体するほうが有望かもしれない。
「いや――」
頭を振ってそんな弱気を追い出す。
「――今日も、実験をすることとしよう」
――まだ、9回の残機はあるのだ。
たとえこれまで、191回うまくいかなかったのだとしても。 - 4二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 14:37:12
というわけで解熱剤飲んだら39度の熱が平熱に急降下したもののまだ病人扱いで暇なので書いたものでした!
- 5二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 14:57:27
ギャグ時空からいきなり育成シナリオのおつらい展開に急降下するんじゃない
- 6二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 15:00:42
温度差でグッピーが死んだんだが???
- 7二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 15:18:23
- 8二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 15:24:23
早くタキトレに出会ってくれ
- 9二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 15:25:01
高熱SSマン!!!お前もう休め!!!
- 10二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 15:25:53
- 11二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 15:39:08
つい最近までゴルタキと永世組と生徒会組のワチャワチャを書いてたひとかな?
- 12123/01/03(火) 16:00:03
- 13二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 18:38:17
高熱マンの残機使ったら高熱で復活して即グッピーやられない?
- 14二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 20:00:11
ギャグって言ったのに!!
- 15二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 20:02:46
ギャグ時空ってゆった!
ギャグ時空ってゆった!! - 16二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 20:12:18
- 17二次元好きの匿名さん23/01/03(火) 22:36:11
ギャグ時空であって本人たちもギャグだとはいってないから……いやだいぶ無理があるなこの理屈