- 1二次元好きの匿名さん23/01/04(水) 21:00:43
トレーナーとギムレットのSS書いてみた
※独自設定あり。まずかったら消します
俺はトレセン学園所属のトレーナーという事もあり忙しいけれども充実した毎日を送っている。この日は日曜という事で寮から出て買い物へと出かけていた。
街は人やウマ娘が歩いている。もうそろそろ有馬記念という事もあり、出走予定のウマ娘が写されたポスターもあちこちへ貼られてあった。
ポスターのセンターを飾るのはシンボリクリスエス。昨年の有馬記念を制したウマ娘でこのレースがラストランとなる。
「有馬記念誰が勝つだろうねー?」
「やっぱクリスエスでしょーモノが違うもん」
そんな声が聞えてきた時、俺の背中に何かがぶつかる音がした。
「あ…」
彼女の後ろ姿。勿論忘れてなどいない。俺は彼女を全力で引き留めた
「ーっギムレット!!」 - 2イッチ23/01/04(水) 21:16:52
黒いぶかぶかといたジャケットにへソ出しインナー、お尻が見える程の超ミニ丈のズボンに網タイツと黒いヒールの高いブーツを着た姿はまるでギャルのような雰囲気を出しているが、ウェーブがかった短髪に黒い眼帯は変わっていない。間違いなくかつての担当ウマ娘でダービーウマ娘・タニノギムレットだ。
「…トレーナー。」
ギムレットは驚いた様子でこちらを振り返った。
「ギムレット。久しぶりだな…元気か?」
ギムレットは無言だ。無理もない。俺は一旦場所を移動しようか?と提案すると彼女は黙って頷いた。…その様子はかつての饒舌に語る姿からは真逆の姿だった。
近くの公園まで移動すると俺はギムレットにホットのジンジャーエールをおごってやった。彼女はごくごくと飲んでいく。
「…やはり温まるな。」
「…だろ?」
「…」
何を話していいのか互いによく分からなかった。…んだと考える。
ここで俺とギムレットについて振り返ろうと思う。
※※※※
「あれがタニノギムレットか…」
彼女の走りは出会った当初から記憶に残る鮮烈なものだった。あの豪脚を見れば一瞬で忘れられなくなる。俺は紆余曲折合ってギムレットと契約する事になった。
彼女は饒舌でよく語るウマ娘であった。いつも強者として振る舞い、うろたえる事もない。最初こそ彼女の話す言葉の真意がくみ取れず、コミュニケーションを上手く取れなくて衝突したり彼女に迷惑をかけた事もあったが、徐々に強固な信頼関係を築けるようになっていった。
- 3イッチ23/01/04(水) 21:29:27
彼女は疾さと強さ…マイルと中距離に強いこだわりを見せていた。そこで俺はある提案をした。
「NHKマイルCとダービーどちらも狙ってみないか?」
そう伝えると彼女は喜んで了承した。かつてタニノの先輩も通った道なのだと彼女は言った。彼女はどんなに厳しいトレーニングに耐えたどころか更に己を極限にまで追い込み鍛えたのである。
こうして迎えたクラシック第一戦となる皐月賞では一番人気となったものの、結果は三着だった。
「惜しかったな…」
「ああ…」
気を取り直し挑んだNHKマイルC。疾さを極めたいとこだわりを見せていた一戦。
しかし結果はまたもや三着だった。
「また、三着か…」
その後。めげずに挑んだ日本ダービーにてここで彼女はようやく一着をもぎ取ったのである。俺はギムレットと勝利の喜びに浸ったのである。彼女が日本ダービーを勝った事は、トレーナーの俺にとっても初めてのG1制覇となった。
ただ、栄光もそう長くは続かなかった。
「屈腱炎です。」
秋。ギムレットは医者にそう診断を受けた。復帰は困難であると言われ、最終的にはトゥインクルシリーズからの引退を余儀なくされる事になった。引退したギムレットは急速に生気を失いモチベーションも尽きてしまったのか、トレセン学園も退学し俺の前から姿を消してしまったのである。
…そして今。こうして再開したのであった
「なあ、その…今は何してるんだ?」
「…高校に通ってる。トレセンとは全く関係ない所。」
ここでギムレットがようやく重い口を開いた。
- 4イッチ23/01/04(水) 21:37:37
「そうか。」
「トレーナー?」
「俺はまだトレーナー続けてるよ。」
そう答えたらギムレットは少し頷いたように見えた。
「一つ聞いて良いか?」
「何だ?」
「…未練はあるか?」
ギムレットはジンジャーエールを一気の飲み干すと俺に向かってはっきりと答えた。
「あるに決まってるだろ」
「俺はっ…まだもっと走りたい!ダービーだけでは満足できない!もっと極めたい!!クリスエスとの勝負もまだ納得はついてはいない!!なのにっ…」
「こんな所で、終わりたくは無かった!!」
「…っ!!」
いつの間にかギムレットの顔から涙があふれていた。
いつもは独特な言葉を用いるギムレット。それゆえに真意が読み取れない事もあった。しかし俺はここでようやく…皮肉にも彼女の正直な本音を聞く事が初めて出来たのである。
「俺、ようやく…お前の本当の言葉を聞けたかもしれない。」
「…トレーナー。」
「本当にすまなかった。申し訳ない!」
「謝るな。極限まで追い込んだのは俺の望んだ事だ。だけど…未練ばかりがこうして亡霊のように残っている。」
「だからレースから離れたかったのだ。お前は悪くない。」
- 5イッチ23/01/04(水) 21:42:32
ギムレットは立ち上がった。
「最後に。トレーナーともう一度会えてよかった。…もっと早くこうして本音をさらけ出して語るべきだったのかもしれない」
ギムレットはそう言い残し、手を振って踵を返す。公園のベンチには俺だけが一人残された。
「…」
残ったジンジャーエールを飲み干す。そして俺もベンチから立ち上がり、ギムレットとは真逆の方向へと歩き出した
師走の風は芯まで凍りそうなほど冷たかった。
以上となります
バッドエンドみたいになってしまってごめんなさい