なぜ鎖国が行われたか知っているかい? モルモット君

  • 1「以前頂いたあだ名をお借りして21/11/06(土) 19:00:11

    やぁモルモット君、先日はすまなかったねぇ
    まさか、あの薬の効果が三日三晩も続くとは思わなかったよ
    君もずっと『自習室』に閉じ込められて大変だったろう
    え? なになに、この程度はトレーナーとして当然だから気にしないでくれ…って?
    そうかそうか。いやあ、モルモット君はまったく実にモルモット君だなぁ
    ま、私も少なからず恥を感じる心くらいはもっているからね
    せめてものお詫びに、今日は君のリクエストでも聞いてあげようじゃないか
    ほら、なにかあるだろう? 日常のなかでふと感じる疑問だったりなんだり
    え? とくに思いつかない?
    そんなことを言わずにとっとと何か思い付いてくれたまえ。せっかく珍しく私がお詫びをしようというのに
    ほらほら、はーやーくー
    お、ようやく答えが出たか。なになに? 日本が鎖国した理由?
    ふむ、なるほど。思ったより知的なテーマがきたね。しかし、鎖国のアイディアはいったいどこから……
    ……ああ! ひょっとしてクロフネからの連想かい?
    うん。そのテーマならOKだ。さっそく講義に入ろう、と言いたいところなんだが……
    実をいうと、鎖国というのはなかなか厄介な問題でね。鎖国を考えると必然に開国に行き着き、果てには産業革命まで扱う必要があるんだよ
    これがまた大変な問題でねぇ。文化やら経済やら様々な学問の領域を合わせて包括的に語る必要があるから、1スレ程度じゃとても話が収まらない
    だから、話を綺麗にまとめるためにも今回は扱うテーマを産業に絞って進めていきたいんだけども、それで問題ないかい?

    よし、了解だ
    それでは講義を始めていこうか

  • 2二次元好きの匿名さん21/11/06(土) 19:01:06

    文系にも詳しいタキオン

  • 3二次元好きの匿名さん21/11/06(土) 19:01:23

    諸大名に貿易させたくなかっただけだぞ

  • 4今回から文系タキオンと名乗らせ21/11/06(土) 19:01:23

    さて、さっそく産業の面から鎖国と開国を考えてみよう

    日本が明治維新を起こしてまで開国を進めたのは、産業を発展させるにはこれしかないと考えたからだが
    裏を返せば、開国の反対である鎖国が産業の発展には邪魔だとも思っていたためだろう
    とすると、鎖国というのは産業を衰退させるだけの間違った政策だったのだろうか?

    もちろん実際にはそうではない
    鎖国を行った当時の日本と、開国を行った当時の日本では置かれていた状況が違うだけのこと
    それを証明するためにも、歴史をさかのぼって鎖国以前の戦国時代を見ていこう

  • 5て頂きます」文系タキオン21/11/06(土) 19:02:20

    例えば、織田信長
    例えば、大友宗麟
    南蛮のポルトガルやスペインと交易して力をつけた戦国大名は多い
    西洋と気脈を通じる彼らの姿は、あるいは開国を進める維新の英傑たちとも重なるだろう

    ところがこれは後世の勝手なイメージでね
    実際には西洋との交易なんてほとんど存在しないのさ

    というのも、16世紀当時の西洋の生産力は貧弱そのもの
    アジアから香辛料を買うのはいいけど、代わりに売るモノがまるでないから新大陸の銀をせっせと横流しする始末

    これではわざわざ地球の裏側から輸入する品物なんてあるわけない
    売れる物なんて、せいぜい船に備え付けの大砲やら地球儀ぐらいのものなのさ

    しかし現実に日本へ南蛮船はやってくる
    では彼らは何を商うのかというと、これがなんと、明との『密貿易』なのだよ

  • 6文系タキオン21/11/06(土) 19:03:38

    当時の明は海禁政策、つまり鎖国をしていたのだね
    けれども当時の明は生産技術で最先端、彼らの作った物がなんとしてもほしい
    こんな需要に応えるのが、武器だけは最新の南蛮船というわけだ
    彼ら南蛮人は最新の武器を背景に、時には土地を不法占拠し通行税を巻き上げ、時には民間の商船を襲って品物を奪い取る

    もはや海賊と変わりない、とまで言うと言い過ぎだが、売れる商品を持たない彼らには、これしか利益を上げる方法はなかったんだ

    さて、つまりは南蛮渡来の貴重品などとはまやかしで、実際には南蛮貿易とは明国、今でいう中国との貿易に他ならないことになる

  • 7文系タキオン21/11/06(土) 19:04:04

    しかしだ。肝心なのは誰と交易するのかよりも何を交易するのか
    それでは日明貿易の中身を見ていこう

    日本から明への輸出は、主に銀や銅などの鉱物資源
    明から日本への輸入は、主に硝石や生糸などの加工製品

    当時の日本は石見銀山が凄かったように鉱山業が盛んだったからね
    明への輸出が鉱物なのは妥当なところだ

    明からの輸入のうち、硝石も頷ける
    当時、世界で一番たくさん鉄砲を抱えていた日本にとって、火薬の原料である硝石はたくさん必要だったからね

    問題なのは、当時の日本が【生糸を輸入】していたことだ

  • 8文系タキオン21/11/06(土) 19:05:12

    これは明治の日本から見るとまるで意味がわからない
    なんといっても、生糸の輸出は明治の産業革命の立役者だからね
    輸出するべきはずのものを、あろうことかわざわざ外国から輸入するとは何事だろうか?

    種明かしをすると、戦国時代の日本にはまだ質の高い養蚕の技術がなかったんだ

    日本で作った絹を使うとどうやっても高級な服は作れない
    それで仕方なく当時の豪商たちははるばる明から運んだ生糸を織って、高価な和服を作っていたというわけだ

    この状況に対処するためかはともかく、幕府は南蛮船の渡来をほとんど禁止
    金銀の流出を防いで国内の養蚕を奨励していくことになる

    つまり産業的に見た鎖国とは、明に対する【輸入代替政策】にほかならない

  • 9文系タキオン21/11/06(土) 19:05:48

    こうして幕府の取った鎖国政策が成功したことで日本の養蚕業は盛んになり、その後の開国で生糸を輸出できるようになったというわけだよ

    最後に今回の内容を3行でまとめよう
    ・当時の西洋貿易は実質的には日明貿易
    ・鎖国は中国に対する輸入代替政策
    ・開国するだけの産業基盤は鎖国によって育まれた

  • 10文系タキオン21/11/06(土) 19:06:36

    さてさて、どうだったかな?
    意外と世間のイメージというやつも当てにならないものだろう?
    これを機会に、君も私への根拠のない悪いイメージは払拭して……
    おや? もう眠ってしまったか
    やはり盛るのは睡眠薬に限るな
    まあ、今回は前のお詫びも兼ねていたことだしね
    ここは一つ、私自らが体を張って、可哀想なトレーナー君に一夜のロマンスというやつを……


    しまった! うまぴょい警察だ!!

  • 11二次元好きの匿名さん21/11/06(土) 19:24:11

    面白かった
    ありがとう

  • 12二次元好きの匿名さん21/11/06(土) 19:31:34

    鎖国を続けたことで西洋に武力で遅れをとったというイメージあるけど、そもそも当時の日本は仮想敵国が長いこと実質いなかったから仕方ない面が強い

  • 13二次元好きの匿名さん21/11/06(土) 20:42:15

    清じゃなくて明なの?

  • 14二次元好きの匿名さん21/11/06(土) 20:43:39

    >>13

    まだ江戸時代初期には明王朝が残ってた

    1630年代に清に滅ぼされるが…

  • 15二次元好きの匿名さん21/11/06(土) 20:48:12

    今回も面白かった…
    文系タキオンのまとめ等ってありますでしょうか…

  • 16二次元好きの匿名さん21/11/06(土) 21:02:10

    >>13

    明清交代は50年くらいかかったから…

  • 17二次元好きの匿名さん21/11/06(土) 21:03:37
  • 18二次元好きの匿名さん21/11/06(土) 21:09:14

    初めて見たけど普通に面白かったわ
    次も書いたら見るから頼むで!

  • 19二次元好きの匿名さん21/11/06(土) 21:17:22

    >>17

    ありがとうございます!

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