- 1二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 20:07:36
- 2二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 20:09:18
「今日はトレーニングは休みだよ?」
「オフコース、分かってるわ」
今日はトレーニング休みの日。
なのだが珍しいことに、私の担当、
シーキングザパールはずっとトレーナー室で寛いでいた。
もしやと思いカレンダーの日付と予定表を見直したが確かに今日は休みの日だ。
私の勘違いでは無いらしい。
「もしかしてお邪魔だったかしら?」
「ううん、そんな事無いけど…珍しいなって思って。ほら、いつも誰かを助けに行ってたりするから」
「今日はウインディは遠征よ、それに迷える子羊の声も聞こえないわ。
ワールドワイド・ウインディ初の休暇と言ったところね」
「ああ、ならゆっくりしていって」
「そうさせてもらうわ♪」
そう言って懐から本と飲み物を取り出して
読書を始めてしまった。
地球の模型を出した時から思ってたけど
何処に仕舞ってるんだろう? - 3二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 20:10:28
…しかしこうして一所に留まっている
パールは本当に珍しい。
いつも困ってる誰かの所へ駆けつける、
常に誰かを救いたいと思っている優しい子だ
それに大人しく本を読む顔は普段の思慮深さを裏付ける知性を感じさせる。
背も高いし正直私より大人っぽい…。
「…なぁにトレーナー、何か顔についてるかしら?」
「えっ…ごめん、なんだか珍しくて…」
「フフッ見惚れるのも当然ね、なんたって
私は最高級の…なんだかアンニュイな顔ね?トレーナー」
「えっ」
思わずたじろいてしまった…。
見て分かるほど私の寂寥は顔に出ていたのか、それともパールの鋭さが私の心中を見抜いたのだろうか。
単に顔に出やすいだけかも知れないが。
「ン〜悩み事なら私に話してみなさい、
でも言いにくい事だったら無理に話す必要は無いわ、ソングにダンスにポージング!
貴方が笑顔になるならなんだって付き合うわよ♪」
「パール…」
思いっきり心配されてしまった。
ここまで担当に心配され気遣われるなんて
大人として、トレーナーとしても恥ずべき事なのかもしれない。
でも実際のところ、ここで「大丈夫」と言える程私は大人じゃなかったしそんな心の余裕も無かった。
"なんだって付き合う"は今の私にとっては免罪符でしかなかった。
だからそう、魔が差したのだ。 - 4二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 20:11:07
「えっと…じゃあお願いしたい事があるんだけど…良いかな?」
「ええ、なんでもウェルカムよ!、貴方はパートナーだものね」
私は安物の椅子から立ち上がる。
長く動かしてなかった関節が僅かに痛んだが
そんな事は全く気にならない。
淀みなくパールの前へ歩み寄り
「?トレー…きゃっ!」
その長い鹿毛ごと抱き寄せた。
思ったより冷たいけど、
それでもとても暖かい。
私よりも大きな背中が、あまり嗅いだ事のない微かな匂いが、私の蝕みを洗い流した。
嫌がられる可能性なんて微塵も考えず、
より近づく為に抱き寄せる腕の力を強める。
パールは戸惑い、何かを話していたようだがやがてそっと私の背中に両手をまわしてくれた。
私の中の、満たされた事の無い何かが満たされていく。
…そのまま何分が経っただろうか。
抱き合ったままパールが口を開いた。
「スペシャルなランチでもエキサイティングなカラオケでも付き合うわよ?いいの?」
「いい、貴女だけで良い…」
「オーケー、ゴージャスな1日を約束するわ」
いつだってこの子は悩める人の所へ飛んで行ってしまう。
今だけはそれが怖くて、緩み始めた腕の力をもう一度強めた。 - 5二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 20:37:36
あなたが神か…素晴らしいSSをありがとうございます…
- 6二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 21:22:47
身長低めの♀トレーナーか…
良いものですね… - 7二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 21:32:36