- 1二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 22:03:06
いったい、どこから来たのだろう。
目の前で繰り広げられている蹂躙劇に、目を奪われる。
どのウマ娘の追走すら許さない、制圧的で、圧倒的な逃げ切り。
着差にして、11バ身。
そんな絶望を、彼女は息も切らさず、他に叩きつける。
米国出身の、栗毛のウマ娘。
資料を覗くと、そのような情報が記載されていた。
長髪を靡かせ、ふぅ、と彼女は息を吐く。
この選抜レースは、まさに彼女のひとり舞台。
軽々と、鮮やかに逃げ切ってしまった。
周囲が騒がしくなれど、スカウトに取り囲まれても。
怪物は、目を瞑ったまま。
やがて目を開くと、
「……すみません、時間がないので」
そう告げて、彼女はこの場を立ち去る。
その際、一瞬だけ。ほんの一瞬だけだった。
彼女が周囲を見渡し、溜め息を吐く姿を見せたのは。
再度、資料に目を通す。
米国出身の、期待の新入生。
だけれどなぜか、僕はその名を知っている。
怪物の名──アファームドを。 - 2二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 22:06:01
なんか始まったな
- 3二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 22:07:22
(真横で死んだ目をするアリダー)
- 4二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 22:07:24
壮大な物語が始まる
- 5二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 22:10:24
- 6二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 22:13:47
"最強の好敵手"っていいよね
- 7二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 22:15:08
はいエディットでクソナーフ
- 8二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 22:17:10
- 9二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 22:20:32
お前サンタアニタでリベンジ食らっただろ
- 10123/01/06(金) 22:22:18
廊下を歩きながら、思考に浸る。
彼女──アファームドを、なぜだか名前だけ知っている。
面識も、なんならその名を聞いたこともないのに。
だというのに、名前だけ知っているのはおかしい。
過去に会ったことがあるのか──いくら記憶を探っても、ないという結論に至る。
彼女の走りを目の当たりにしたのも、選抜レースが初めて。
なぜこうも、こうも彼女を知り得るのか。
思考が深く、深く沈んでいく。
そんな僕を連れ戻したきっかけは、いつの間にか目の前にいた──彼女だった。
「──あの」
「ふぇっ、は、はいっ!?」
「…………」
廊下で、怪物とエンカウントしてしまうとは。
始まりの町で魔王にぶち当たった気分だ。
内心ではそんな気分だけれど……。
僕が変に驚いてしまったせいで、間に気まずさが漂う。
「すみません、ちょっとだけでいいです、お伺いしたいことが……」
一瞬、目を伏せて。
彼女は拳を握りしめ。
告げる。
「『バヌシ』さん、ですよね?」 - 11二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 22:36:40
お前も十分すぎるくらい強えんだけどなぁ
- 12二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 22:39:47
アリダーのウマ娘化はありだー?
- 13123/01/06(金) 22:45:28
「…………え? ……え?」
思わず二度聞き返す。
彼女の口から発せられた、『バヌシ』というワード。
こちらは聞いたことどころか、知りもしないワードだ。
「すみません……『バヌシ』とは、いったいなんだか……」
「そう、ですか……」
声音を落ち着かせ、アファームドは深く息を吸う。
がっくりと、肩を落としながら。
「……すみません、変なことを聞いてしまって」
「あ、ああ。大丈夫、ですよ!」
心底申し訳なさそうに頭を下げるアファームドに、罪悪感を感じてしまい、慌ててしまう。
「ま、まあ! そんなに頭を下げないでください! ほら、目立ちますから!」
「……本当、のようですね。失礼しました」
通りすがるウマ娘から視線を注がれている。
アファームドもようやくそれに気づいたようで、さっと頭を上げる。
「で、では! 僕はこれで!」
「あっ──」
一礼して、僕は歩いていた方向とは真逆に走りだす。
遠回りになるが仕方ない。
これ以上、彼女の側にいては……嫌な予感がする。
「……やっぱり、あなたですね」
あとはただ、廊下を駆け抜けるだけだった。 - 14123/01/06(金) 23:12:40
ああ……やっぱり。
あのトレーナーは、彼は。
彼こそは、そう、そう──。
「いたんだ……ワタシの……ワタシの……!
ワタシの、馬主さんが……!」
思うたび、胸が、鼓動が、心が弾む。
あなたのおかげで、ワタシは多くの栄光を手にして。
数多の強者と競えて。
覇を競える、最強の同期とも対面できて。
そして──ワタシを長く、長く、生き永らえさせてくれて。
ワタシというアファームドは、生涯を共にした者を忘れられない。
この世界に生を授かっても、想いは止まらない。
いや、止められない。
自然と、微笑が零れる。
彼と面向かって対面するのは、先が初めて。
人間──正確にはウマ娘というのだが──になるというのは、こういうことなのか。
今でも、信じられない。
「馬主さん……いえ、この世界ではトレーナー、ですか」
前世では、あなたに手を差し伸べられて日本に来た。
ならば今生ではそのお返しを。
今度は、ワタシがあなたに手を差し伸べる番なのです。 - 15123/01/06(金) 23:16:49
これにて締め括り!
最初は「ヤンデレ気味なウマ娘アファームドを書きたい!」という、ちょっとあれな妄想から生じて書き始めたのですが……やっぱり緊張で筆が思ったように動きませんでしたね。
投稿! 緊張! 投稿! 緊張! 今になってようやく緊張が収まる! といった状態でした……。 - 16二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 23:23:43
読んでいる側に期待させる良い文章に仕上がっていたから、これからも頑張って書いて欲しい
- 17二次元好きの匿名さん23/01/06(金) 23:32:02
ありがとうございます! 感想が身に染みます……。