- 1二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 00:03:29
美しい芦毛を靡かせながら歩く少女 メジロマックイーンが学園の中にある広場を歩いているとガヤガヤとした活気のある声が耳に飛び込んできた。
ウマ娘特有の鋭敏な聴力を備えた耳が音の聞こえた方角をしっかりと捉え、マックイーンがそちらの方に視線を送ると…
歴史の教科書で見たような年季の入った寿司の屋台とそれを囲むウマ娘達の姿…そして、その中心で寿司を握るこれまた芦毛のウマ娘 ゴールドシップの姿があった。
その姿を見たマックイーンは(なぜ、こんなことを? というか許可は取っていますの? あの方はこんなことまで出来るの…? ………)
など、様々な思考が脳を駆け巡り、動きを止める。
そして動きがかたまったマックイーンが視線に止まったのか、ゴールドシップが声をかける
「おーい、マックちゃん!おめぇも食えよ〜! 今日アタシが釣った鯛とか朝の市場で仕入れた魚食わせてやるから〜!」
「何やってますの貴女は〜!」
いろんな感情の混ざった叫び声がトレセンに響き渡った。 - 2二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 00:05:42
バラムツあるかーい?
- 3二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 00:18:38
叫んだことで周りのウマ娘や、屋台の前に居たウマ娘達もこちらを見ていたが、良くも悪くも目立つ二人組のいつもの奇行だと言うこともあり、すぐに元の位置に視線を戻していた。
周囲の視線を避けるように俯いていたマックイーンは自らの方に向く視線の気配が消えたことを確認し、顔をあげると視線の先でゴールドシップが大きく手を振っているのが見えた。
(何故か…あの方の誘いは断りづらいんですのよね…)
ため息を1つ吐くと、すこし頭を振りそちらの方に歩いていった。
「いやぁ~、どうしたんだよマックイーン、すげぇ元気いいじゃねぇか!」
「誰のせいだと… ふぅ…いえ、いいですわ ところで貴女はここで何をしてらっしゃるの?」
「おいおい、見りゃ分かんだろ! 寿司屋だよ!」
「そ う で は な く! なぜ、こんなところで寿司を握ってるのか聞いているんです!」
「そりゃあ、愚問ってやつだな… そこにすし屋帯が出来そうな場所があるからだ!」
「意味が分かりませんわ!」
どうやらまともな回答は返ってこなさそうなので、マックイーンはゴールドシップとの対話をやめ、屋台の周りを囲むウマ娘達の姿を見る
(オグリさんに…スペシャルウィークさん…それ以外にもこんなに沢山…)
「はぁ~…地元の魚も美味しかったけど、ゴールドシップさんのお寿司も美味しいべ〜…」
「もぐ…もぐ…このマグロのヅケも美味しいな…いくらでも食べられそうだ」
「こりゃあいい仕事した江戸前の寿司ってやつだな! てぇしたもんだねぇ!」
(………美味しそう…ですわね)
自分以外のウマ娘達はゴールドシップが次々と握る寿司に舌鼓を打っている。
その姿を見たマックイーンはつい…
グゥ…
とお腹を鳴らしてしまったのだった。 - 4二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 00:41:13
「なぁんだ、マックちゃんカリカリしてると思ったら腹減ってたのかよ〜!」
「…う、そういうわけではなかったのですが…」
「いいっていいって! 遠慮すんなよ! よっしゃ、じゃあまずこれだ!」
ゴールドシップはそう言うと、酢と水を混ぜた手酢を手につけると、シャリの入った桶に手を伸ばす
適量のシャリをこなれた手付きで整えていくと、保冷剤で冷やされていたバットからネタを取り出す。
その中から1つ取り出すと形を整えていたシャリと軽く合わせ、寿司下駄の上に乗せ、醤油をハケで塗ってマックイーンの前に置く
「これは…」
「コハダの握りだ! 寿司屋の実力を見せるっつったらこれだよな!」
「そうですの…?…まぁ、いいですわ…頂きます」
マックイーンはそういうと出されていた箸で寿司をつまみ上げる。
(なるほど…少し身が白っぽいですけれど…これは酢じめしてあるのかしら?)
「…あむっ」
(これは…! コハダの身から程よく水分が抜かれ旨味が強くなっている…そこに酢が入ることでともすればクドくなるその強い旨味を引き締められている…そして、このシャリ…ポロポロと崩れることはないけれど、口に含むとほろりと解ける素晴らしい握り具合ですわ…)
「…中々やりますわね…」
「へへっ、随分うまそうに食ってくれるんだなマックちゃん!」
「まぁ…確かに美味しかったですわ」
ゴールドシップのニヤニヤとした顔にマックイーンは少しツンとした表情で返答するが、ゴールドシップはその態度を見てどこか微笑ましいようなものを見るような顔になった - 5引く=刺し身の状態に切る意味23/01/09(月) 01:06:00
「次は昆布じめした鯛の寿司だ!」
昆布で挟まれた鯛を取り出すと、繊維を断つように柳刃で薄く引き、シャリとあわせる
「これはアタシが今朝釣って〆た鯛だからな!鮮度は抜群だぜ!」
「貴女、本当に何でもできますのね…では…あむっ…」
(なるほど…これも恐らく1回塩で水分を抜いているんですわね…水気を含んだ鯛と比べて旨味が強くなりつつも、身は噛み切りやすい食感になっていて…美味しい…)
「へへっ、旨いだろ! にしても、マックイーンは顔にも尻尾にも出ておもしれぇな!」
「むぅ…」
「じゃあ次は漬けマグロだ!」
ゴールドシップは濃い赤色のヅケのマグロを少し厚めに引くと、鮫皮でおろした本わさびをシャリに多めに付け、握った。
「あの…ワサビかなりたっぶりというつけていませんでした?」
「あぁ、そうだな! でも、心配すんなって 本わさびはそんなに辛くねぇから!」
(ここまでゴールドシップさんは美味しいものを作ってくれているわけですし…信じないのも悪いですわね)
「でしたら…あむっ」 - 6二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 01:17:58
(…確かに辛味はあまりないですわね…けれど山葵特有のキリッとした爽やかさはあって…まったりとした味の漬けマグロを引き締めてくれていますわ…それにしてもこのマグロ…厚く切られているとは思えないほどほろりと噛み切れる柔らかさですわね…)
これまでに余り経験したことのないワサビやマグロの一面に、マックイーンはしきりに感動し、寿司を咀嚼する。
1つ噛むたびに尻尾を緩やかに揺らし、美味しいと感じたことを口よりわかりやすくつたえる
それをちらりと見たゴールドシップはにっこり笑うと他のウマ娘のお客に寿司を握っていた。
「……ふぅ…」
「おっ、マックイーン食べ終わったか」
「えぇ…美味しかったですわ」
「そりゃ良かった! そうだ、まだ食いたいのあるか?」
「そうですわね… では、ゴールドシップさんの一番自信のあるお寿司を貰えるかしら?」
「おっ、マックイーンからの挑戦状ってところか?」
「ふふっ…そうですわね それを食べればゴールドシップさんが、何を考えて寿司を握っているか分かる気がしますから」