- 1二次元好きの匿名さん21/11/07(日) 08:06:07
毛氈の上に正座をするフラワーの目の前には、同じく正座をしながら微笑むグラスワンダーの姿があった。
フラワーにとって彼女はあくまでスカイの同期であってフラワー自身とはあまり関わりがなかった。
……要するに数えるほどしか話したことのない先輩と二人きりでいささか居心地が悪いのだ。
「フラワーさん?」
「は、はい!?なんでしょうか?」
フラワーは素っ頓狂な声をあげてしまった。
相変わらず微笑みを浮かべたままグラスは話を続ける。
「セイちゃんが来ないうちにお話ししたいことがありまして。いつもセイちゃんのそばにいてくれてありがとうございます」
そう言うと彼女はぺこりと頭を下げた。
「そんな、私がただスカイさんと一緒にいたいだけですから……」
あたふたするフラワー。
グラスは穏やかな笑みのまま茶を点てはじめた。
「フラワーさん、あなたはタキオンさんやタイキさんとも接する機会が多いですよね?」
フラワーは差し出された茶を一礼して受け取った。
ほんのりとした温かさが掌に伝わってくる。
「彼女たちは交友関係が広いです。性格は全然違いますけど」
でも、とグラスは眉を顰める。
心なしか表情も暗く見える。
「セイちゃんは私たち同期や自分のトレーナーさん以外との関わりが薄いというか……怖がっている節すらあるのかもしれません」
フラワーは茶を一口飲んだ。
苦味が口の中に広がる。
「だからこそ、フラワーさん」
グラスが再び柔らかな笑みを浮かべる。
「セイちゃんの隣にいるあなたの存在は彼女の心の支えになっていると思います。彼女の同期として、そして友人としてお礼を言わせてください」
「……恐縮です」
頬を赤らめながらフラワーは茶をもう一口飲んだ。
舌が慣れたのか苦味はさっきよりまろやかに感じた。 - 2二次元好きの匿名さん21/11/07(日) 08:06:42
少し沈黙が流れる。
時間にすればごくごくわずかなものだったかもしれない。
しかし、フラワーが気恥ずかしさに負けて口を開くには十分すぎるほどだった。
「なんだか、お友達というよりスカイさんのお母さんみたいですね」
「母親、ですか。ふふっ、ほかならぬフラワーさんに言われるとなんだか面映ゆいですね」
そんなことを話していると、聞きなれた声が風に乗ってやってきた。
「二人ともお待たせ~」
二人が雲のようにふわふわした声のほうを向くと、両手を後頭部で組みながらスカイが歩いてきていた。
「遅れたお詫びに和菓子買ってきたよ。フラワーこれ好きだったよね?」
差し出された羊羹は確かにフラワーの好物だった。
「ありがとうございます、スカイさん」
「それにしてもたくさん買ってきましたね……タイキさんやタキオンさんたちもお呼びしましょうか」
スカイは急にフラワーの肩を抱き寄せた。
「え~、セイちゃんはフラワーとグラスちゃんとお話ししたくて来たのに~」
口調は冗談めかしていたが耳は絞られていて、不機嫌なのは見るからに明らかだった。
グラスは困ったように微笑みながら一つ息をついた。
「……親の心子知らず、ですねえ」
「なにさ、グラスちゃん。セイちゃんを子ども扱いして」
「子どもですよ……私たちも含めて、ね」
そんなやり取りをフラワーはスカイの体温を感じながら見ていることしかできなかった。
- 3二次元好きの匿名さん21/11/07(日) 08:07:25
- 4二次元好きの匿名さん21/11/07(日) 08:10:17
良きッ!
- 5二次元好きの匿名さん21/11/07(日) 08:12:00
ほわほわ
- 6二次元好きの匿名さん21/11/07(日) 08:12:04
- 7二次元好きの匿名さん21/11/07(日) 08:12:50
朝からいい気分だ…ありがとう…
- 8二次元好きの匿名さん21/11/07(日) 08:31:01
グラスはタイキ”先輩”呼びじゃん…
腹を切ります… - 9二次元好きの匿名さん21/11/07(日) 08:43:23
朝からありがとう…