【ここだけ】私が国中にウタの歌声を届けてしまったから……

  • 123/01/09(月) 23:17:53

    国は滅んでしまったので、次は間違えないように対策を練ろう

    まずはウタが落ち着いた後に音楽の指導を行おう
    指導後は経験を積ませるために外で歌わせたい
    歌う場所はエレジア以外がいいだろうから近隣の島へ赴き、酒場などの小さな舞台で歌い、とにかく経験を積んでいこう

    失敗してもいい
    少しずつ確実に経験と実績を積ませ、必ずやウタを世界一の歌い手に育て上げよう!

    あぁ、ウタウタの能力で疲れて寝てしまうのは困るので、能力のオンオフができるようにもなってもらわなければ…

  • 223/01/09(月) 23:20:30

    先日立てたものがうっかり落としてしまったので再建しました
    せめてウタに笑顔を少しでも取り戻したかったのに……
    お時間があればお付き合いください

  • 323/01/09(月) 23:23:10

    とりあえず本スレの主な内容について

    ・ゴードンさんは前向きに行動力マシマシ、なのでウタの能力は恐れません
    ・ウタちゃんへの歌の指導は17歳で終了、ウタウタ能力ON/OFF可能
    ・ここからエレジアを出て各島をゆっくりと回ります
    ・島を出たくない(シャンクスが迎えに来るかもしれない)ウタちゃんのために海岸付近にいくつか看板を立てて説得完了
    「本島の住人へ御用の方は下記番号までご連絡ください」
    ・映像電伝虫がないので口コミで評判がじわじわ広がる
    ・ゴードンさんは国王様だったので細々とですが人脈があります。

  • 4二次元好きの匿名さん23/01/09(月) 23:32:06

    このレスは削除されています

  • 523/01/09(月) 23:37:57

    ~エレジア・第一ホール~

    ウタ「~~♪~~~~~♬~~~~」

    ゴードン「素晴らしい!…ウタ、君は天性の歌声に加え様々な歌う技術を身に着けた。もう技術について教えることはない」

    ウタ「……じゃあ私はこれから何をすればいいの?」

    ゴードン「ウタ、君は技術を身に着けた。だが経験を積んでいない」

    ウタ「……経験?歌なら今も歌ったよ」

    ゴードン「違う、人前で歌う経験だ」
    ゴードン「来週巡回船が来るので、それに乗り近くの島へ行こう」
    ゴードン「その島の酒場にはだれでも演奏することができる小さな舞台があるんだ」
    ゴードン「…その……どうだろうか?」

    ウタ「………………………………わかった」


    ウタ17歳、色々悶着があるがエレジアを拠点に様々な島へ赴き歌声を届ける活動を始める

  • 623/01/09(月) 23:41:32

    ~初めての島出編~

    ゴードン「ウタ、先日話した目的の島へは片道2日、そこで2泊してから帰ってくる予定だが念のため7泊ほどの準備をしてほしい」

    ウタ「7……はく?」

    ゴードン「ウタ?どうかしたのか?」

    ウタ「ご、ゴードン。誰もいない時に、その…誰か船で来ちゃったらどうしよう」
    ウタ「誰もいないからすぐに帰っちゃったらどうしよう」

    ゴードン(……赤髪海賊団の船が来るかもしれないと思っているのだな)
    ゴードン「では海岸線沿いに私の電伝虫の番号を書いた看板をいくつか立てよう」
    ゴードン「船が来たら電伝虫にかけてくれるさ」
    ゴードン「この電伝虫は君が持っておくといい」

    ウタ「……うん」(輪しんなり)

    ゴードン「……あぁ、その、看板は目立たないと駄目だな。ウタ、君のセンスで看板に彩りを加えてくれるかい」

    ウタ「え、私が、でも…うん、考えてみる」

    ゴードン「彩はあとから加えるとして、看板を立て終えたら出発しよう」
    ゴードン(……今回の旅で何か前に向ける切欠があればいいのだが)

  • 723/01/09(月) 23:53:04

    ~エレジアを出発し、近隣の島に到着~

    ゴードン「ウタ、ここはエレジアに近いニアエレ島だ。小さいが漁業が盛んで良いところだ」
    ウタ「………(キョロキョロ)」

    ゴードンの後ろを歩きながらウタは辺りを見回し、恐る恐る島に足を踏み入れる
    船を降りた時、船着き場に止まっている小さな船を見てポツリと言葉をこぼす

    ウタ「……船だ」
    ゴードン「漁師の船だ。もう少し近くで見てみよう」
    ウタ「……うん」

    巡回船以外の船を見て、ウタの目に光が差した気がした
    やはり船という存在に思い入れはあるのだろう
    ウタは大小の船を見て、特に橋の近くに浮いていた樽を見つめていた気がする

    彼女の気が済み、島内へ入りしばらく歩くと目的地に到着した

    ゴードン「ここは島唯一の宿屋兼酒場でね、古いがいいピアノを持っているし料理もおいしい」
    扉を開けながら建物の説明をしていると奥から一人の男性が駆け寄ってきた

    宿主人「あっゴードンさん、久しぶり!」
    ゴードン「あぁ、久しぶり。ずっと連絡していなかったのに突然連絡してすまなかった」
    宿主人「いいんですよ、あんなことがあった後じゃ……久しぶりにあんたの演奏を聴けるってことでみんな楽しみにしてるんだ!よろしく頼むよ!」

    宿の主人と軽く会話をしてから部屋のカギを2つもらって、2階の客室へ向かう

    ウタ「ゴードン、ここに来たことあるの?」
    ゴードン「10年以上も前に酒場で何度か弾かせてもらったことがある」

  • 823/01/10(火) 00:07:15

    それぞれの部屋に荷物を置き、ウタに今後の予定を説明する
    今日は1泊し、明日の夜に歌い、明後日にはエレジアへ帰るため島を出発する

    そして歌う時の注意点をウタに説明する

    ゴードン「ウタ、ウタウタの能力のオンオフはできるようになっただろう」
    ウタ「うん」
    ゴードン「今回の舞台では能力を使ってはいけない」
    ウタ「どうして?」
    ゴードン「舞台は酒場だ。君が歌っている間も給仕の人が料理を運び、裏では料理人が料理を作っている」
    ゴードン「そこでウタウタの能力でみんなが寝てしまえば運ばれている途中の料理は落としてしまうし、料理用の火もついたままになってしまって危ないだろう」
    ウタ「……そっか、眠っちゃうと危ないこともあるんだ……」
    ゴードン「君が思いっきり歌える舞台を別に設けよう。だから今日は……」
    ウタ「うん、わかったよゴードン。能力は使わず私の歌をみんなに届けてみる」

  • 923/01/10(火) 00:19:44

    ここから主にゴードンやウタの独白となります

    ~ウタの歌披露編~
    島についてから1泊し、夜になった
    島唯一の酒場のステージ脇にある部屋で私とウタは控えていた
    ゴードン「ウタ、準備はいいかい?」
    ウタ「・・・・・・・・・え!でぁ、だいじょーぶ、だよ!」

    これはとても緊張している
    それもそうだろう、最後に人前で歌ったのは9歳のパーティ会場、以降は私とエレジアに8年間二人っきり
    その間はたくさん歌ったが全て授業だ、実践ではない
    さらに赤髪海賊団やエレジアでは望まれて歌った
    しかし今回は私の演奏を聴きにきたか、食事をしにきた島民達、誰もウタのことなんて知らない
    自分の歌を聴いてもらえるかの恐れで歌うことへの意欲が薄れてきている


    《コレ》が気休めにでもなってくれればいいのだが……

  • 10二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 00:23:40

    たて乙

  • 1123/01/10(火) 00:30:34

    ゴードンが心配そうな顔をしている
    ダメだ、私が自分で歌うって決めたのに困らしちゃっている

    ・・・笑え
    「いやぁ、人前で歌うのは久しぶりだなって」
    (なんで歌うことになったんだっけ。そうだ、経験を積むためにって・・・)

    ・・・心配させるな
    「…当たり前だけど知らない人ばっかりだね」
    (私が歌ってなんになるんだろう、今を楽しんでいる人達の邪魔にならない?)

    ・・・泣くな
    「……頑張って歌うね」
    (ねぇ、私の歌って必要なの?)

    ぐるぐる考える
    歌わなきゃ/そもそも歌って必要?/じゃあ歌う私は必要ない、いらない?
    だからおいていったの?

    喉がしまる、顔がひきつり唇が戦慄く
    心が沈む、心と共に身体も沈むように丸くなる

    こ え が で な い   う た え な い

  • 1223/01/10(火) 00:37:50

    肩を落とし、背を丸め、両手を喉に添え、目が何も見たくないと堅く閉じている
    見た目は17歳の女性なのに幼い少女が怖がっているように見えてしまう
    やはり外に出すのは早かっただろうか、もう少しエレジアの中で・・・

    そんな思いがよぎるが既に舞台は整っている、後戻りはできない
    堅く閉じた目を開けさせるために声をかける

    「ウタ、君は何を怖がっているのか分かるかい?」
    「………………」
    「君は酒場の主人や従業員とは緊張はしていたが話せていたね」
    「………………」
    「でも漁師の男性を前にすると君は私の後ろにずっと隠れていた」
    「………………」
    「ウタ、恐らく君は海に深く関わる人、つまり『海の男』を怖がっているのではないだろうか」

    「!?」

    私の言葉にウタは勢いよく顔をあげた

    昨日と今日、漁師の彼らと話をしていると潮の香りが漂ってきた
    毎日海に出ているのだから体に染み付いているのだろう

    それはシャンクス達も同じだったのではないだろうか?
    彼らは常に海の上で生活する男達でそこにウタもいた
    幼いウタには馴染み深く、大好きな父親達の香り
    そんな彼らに似た匂いを持つ男達が今は酒場に多く集まっている

    ここで歌い『海の男達』が『また』背を向けて去っていくことが怖いのだろう

    叫んでも泣いても何度名前を呼んでも、誰も振り向かなかった光景が怖いのだろう

  • 1323/01/10(火) 00:42:54

    顔をあげ今にも泣きそうなウタに《黒いヴェール》を差し出す

    「ウタ、これはエレジアに伝わる《魔法のヴェール》だ」
    「……ま…ほ?」

    《魔法》という言葉に少し興味を持ったウタを微笑ましく思う

    「そう、このヴェールを被ると目に魔法がかかって人が黒い人にしか見えなくなる」
    嘘だ、このヴェールは厚めにできていてるから人の形しか判別できなくなるだけだ

    「さらにこのヴェールを被ると背筋が伸び自信が溢れてくる」
    嘘だ、ヴェールがずれないようにするためには姿勢をよくしないといけないだけだ

    昔の私は嘘が苦手だった
    しかし燃え盛るあの日から私はウタに嘘をついている
    ウタのため、約束のためと思い嘘を教える
    おかげで息をするように嘘が言えるようになった

    「………ウタ、どうする?」
    出演の時間が迫ってきている
    歌えるのか問う
    これで歌う勇気が出ないのであれば、あと2年ほどエレジアでゆっくりしよう

    じっとヴェールを見つめるウタに私は何も言わず待つ





    小さく震える手がヴェールを掴んだ

  • 1423/01/10(火) 00:43:49

    ゴードンに手を引かれ舞台に向かう

    聞こえてくる音―食器が当たる音、グラス同士をぶつける音、多くの男性の笑い声―ずっと昔の宴で聞いた音に懐かしさで鼻の奥がツンとする

    いないと分かっているのに覚えのある声をつい探そうとするが、すぐに諦める
    人の記憶は『声』から忘れるのだと本で読んだ
    自覚はないけどもう忘れているのかもしれない、だから聞いてもわからないだろう
    それに私を利用して捨てた人達の声だ、私も捨ててもいいだろう


    (本当にいいの?)


    ??
    何故か疑問がわいたけど頭の隅に追いやり辺りを見渡す

    《魔法のヴェール》で目元を覆っているから大体の物の位置はわかるけど人の顔はわからない
    ゴードンが言っていた通り皆黒い人に見えている

    どの人が『海の男』かわからない
    わからないのだから気にしなくていい
    こっちを見ているかもしれないし見ていないかもしれない
    誰が立っていて座っていて、酒場に入って出ていっているかわからない

    個々を判別できなくなるだけで先程までの恐怖は小さく萎んでしまった
    《魔法のヴェール》はすごいなと感心してしまう

  • 1523/01/10(火) 00:53:08

    《魔法》
    そういえば、と思い出す
    幼い私を宥めるためにあの人達はよくその言葉を使っていた

    「この魔法の粉で緑色の火を見せてやろう」
    お城の図書室にあった本に書いてあった炎色反応の項目から正体はきっと銅粉
    「魔法の薬ですぐよくなるぞ」
    効果覿面だったがとにかく苦かった私のために調合された特性風邪薬
    「特別に魔法のシロップをかけてやろう」 
    拗ねに拗ねまくっていた私のパンケーキにかかった私専用の甘いハチミツ

    《魔法》という言葉を使えば幼い私の気を引けると思っていたんだろう
    色々な《魔法の○○》をいっぱい見せてもらった
    だが紐にくくりつけて水平にすると一定の方向を指す《魔法の棒》が最後となった
     ‐それ棒磁石じゃん!!魔法じゃない!!ウタに嘘ついた!!
    怒って泣いた私に配慮してか以降、誰も《魔法》という言葉は使われなくなった
    きっと魔法の正体がばれてしまうと思ったのだろう

    懐かしい記憶に自然と笑みがこぼれ肩の力が抜ける
    そういえば久しぶりに皆の顔を思い出した
    ずっと船の上にいる後ろ姿しか思い出していなかったことに今気づいた
    あの時の皆はどんな顔をしていたのだろう?

  • 1623/01/10(火) 00:54:10

    そんなことを考えていたらいつの間にかマイクの前に立たされていた
    すぐ近くでゴードンが椅子に腰掛け、ひとつ咳払いをしてからピアノに手をかける

       ♪~~♪ーー

    ゴードンの伴奏が聴こえてくる
    私が口ずさんでいた歌に伴奏をつけ、楽譜を作ってくれて、何度も一緒に練習した私の曲

    伴奏を聴くと私の頭は雑念を放り出して歌うための指令を身体へ送る
    私の身体は背筋が伸び、顎を引き、視線がまっすぐに前を向く
    息を吸い肺に空気を満たし、お腹へ適度な力を込める

    頭の天辺から爪先まで身体が歌う準備を整え、耳をすまし伴奏に集中する

    もうすぐ

    ここで息を吸う

    声を出すために喉を震わせる


    「どう~して~~♪ あの日遊んだう~みの~にお~いは~♪」

  • 17二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 01:42:25

    よかった、復活した
    保守し損ねて落としちゃったからうれしい

  • 1823/01/10(火) 08:30:35

    酒場全体にウタの歌声が”浸透している”


    エレジアでの練習時にはここよりも広い場所で何度も練習し、隅々まで響かせていた
    この酒場はそこまで広くはないが、人がたくさんいる
    人は音を吸収する
    人がいればいるほど音は遠くまで届かない
    だから控え室で歌い方を少し指導する予定だったが、あの子の心を落ち着かせることを優先して指導ができなかった

    1曲目は練習通りに歌っても遠くの席までは歌声が届かない、もったいないが仕方がないと思いながら2曲目の前に歌い方を少し指導する予定だった

    しかし予定は不要になった


    ウタは今まで私が教えた指導内容を十全に、いやさらに昇華させている
    肺に空気を取り込み、腹に力を込め、爪先から髪の毛先までの全身全てを用い、喉を震わせ、声を、歌を届けている

    声を響かせているのではなく”届けている”

    そう表現してしまうほど、この場にいる一人一人に歌が届いている

    ヴェールに隠されて見えてないが、あの紫の目はまっすぐ前をみているのだろう
    そして歌を聴いてくれている誰かのために、無意識に歌う舞台に合った歌い方をして、酒場に歌声を”浸透させている”

  • 1923/01/10(火) 08:31:37

    歌を邪魔しないように、されど間奏時には歌の雰囲気が続くように演奏する
    幾度も共に練習した伴奏は指が覚えており楽譜は必要ないので少し酒場内をサッと見渡す


    仕事終わりに酒を飲んでいた漁師、注文を受け配膳する給仕、食事に来ていた島民、酒場近くを通った通行人
    彼らは飲食や給仕や歩みを止め、じっと歌に耳を傾けている

    いつのまにか酒場の窓とドアは開放され、窓とドア付近には多くの島民が押しかけている
    しかしざわつきはない
    皆、ウタの声を聞き漏らさないよう静かに耳を傾けている

    聞こえるのはウタの歌声と私の伴奏



     音楽は『奏でる者』と『聴く者』がいることで完成する
     今までは私とウタの『奏でる者』しかいなかった
     だが今日、『聴く者』ができたことで《ウタの歌》は1つの完成を迎えた


    「暁の 輝く♪ 今日に~~♪」

       ♪~~♪ーー

    歌の最後の一音が空気に溶け、ウタがお辞儀をし、私の伴奏が終わる


    音が消え静寂はきっかり5秒
    皆が忘れていた呼吸を思いだし、詰めていた息を吸い込んだとき、酒場と酒場の外は拍手と喝采に包まれた
    誰かは手を叩き、誰かは涙を浮かべ、誰かは声をあげて思い思いに感動したことをウタに伝える

  • 2023/01/10(火) 08:32:10

    観客達の歓声と拍手と聞きながら、私は喜びに打ち震えていた


    あぁそうだ、そうだろう!
    彼女の、ウタの歌声は本当に天からの授かり物なんだ!
    みなへ等しく歌を届け、心を幸せにすることができるんだ!!
    そんな彼女はとても、とても優しい子なんだ



    赤髪海賊団のみんな、シャンクス
    ようやく、今日、君たちとの約束の一歩を踏み出せたよ


    必ず、必ずや!
    ウタを世界一の歌い手として育て上げ、世界中に彼女の歌声を響かせよう
    そしていつか大きな会場で彼女が歌う日には、あの日のように最前列に君達の席を用意することを私は私に誓おう

    そう新たな誓いを胸に私は溢れる涙を用意していたハンカチで拭い続けた

  • 21二次元好きの匿名さん23/01/10(火) 18:25:12

    復活したんか!
    保守せねば

  • 2223/01/10(火) 23:52:08

    歌い終わった
    ドクドクドクと心臓の音が大きく聞こえる

    伴奏が終わった
    ハッハッハッと息切れしているのが分かる

    1曲歌っただけで息切れするなんて悔しい
    練習では何曲も歌えていたのに、何てのは言い訳だ

    舞台に上がる前は震えていて情けない
    《魔法のヴェール》とゴードンに手を引かれなければ舞台にも上がれなかった

    ゴードンは技術は十分だと言ってくれていた、あとは経験だと言っていた
    よくわかった
    足りない、全っ然足りなかったんだ!!
    もっともっと練習を重ねなければ。もっともっと体力をつけなければ。

    こんなのでは、こんな弱い私じゃあ……【世界一の歌い手】になんてなれない
    誰にも気づいてもらえない
    誰も迎えになんてこない

    みんな離れて ひとりぼっちのまま


    悔しくて情けなくて怖くて悲しくて心がぐちゃぐちゃで、もうなにも聞きたく




    あれ?

  • 2323/01/10(火) 23:52:55

    ふと何かの音が聞こえたから顔をあげた

    酒場内の人達が拍手している、歓声をあげている

    どうかしたのかな?
    何かすごいことがあったのかな?

    「ウタ」
    ピアノの前にいたゴードンに呼ばれた
    声の方向に顔を向ける

    「素晴らしい歌だ。ここにいる彼らもとても感動している」

    素晴らしい?  歌?
    感動?  何に?歌に?
    誰が?  酒場にいる人達?

    顔を前に向ける
    こっち―私―を見て拍手している、泣いている、笑っている、歓声をあげている
    私の歌を聴いて感動して幸せそうな顔をしている

    さっきまでうるさかった心臓の音は高鳴るリズムを刻んでいる
    さっきまで息切れしていた呼吸は弾むようになり大きく息を吸える

    (聴いてくれた)

    酒場のあちこちから声が聞こえた
    「もう1曲歌ってくれ!!」「頼むよー」「素敵だったわ!」「ありがとう!」「良い曲だね!」

  • 2423/01/10(火) 23:57:11

    (私の歌でこんなにも喜んでもらえる)
    (もう1曲歌っていいんだ)

    暗かったに色が映る 耳からはアンコールを望む声が入り込む
    弾む息を整える 高鳴る鼓動を抑える 身体から余計な力を抜く

    うん、大丈夫
    私は、まだまだ歌える!

    次の曲のためにゴードンへ顔を向けて小さく手をあげる
    …さっきは気づかなかったけど泣いている、結構泣いている
    それでも迷いなく鍵盤に指を置いて演奏の準備万端なのはさすが私の先生だ

    前を向く
    酒場内の人達の顔を右から左へ確認する
    窓やドアから除いている人達の顔を左から右へ確認する

    みんなの目が、顔が、表情が私の歌を待っている

    歌おう
    私の目の前にいる、私の歌を待ってくれている人達のために歌おう
    精一杯、心を込めて歌を届けよう

      ♪ーー♪~~♪ーー♪~~



    その日のエレニア島は何もない日なのに大人も子どもも起きており、ある建物から歌声とピアノの音、歓声、拍手の音が夜が更けるまで響いていた

  • 25二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 00:34:11

    よかった……。一歩、踏み出せたんだね

  • 26二次元好きの匿名さん23/01/11(水) 12:14:29

    保守

  • 2723/01/11(水) 23:44:33

    ~舞台披露の翌朝~

    ふっと目が開いた


    天井が近いし、いつも見える模様がない
    あとベッドの布の手触りも違う

    横を向く
    視線の先にドアを見つける
    なんか部屋狭くなってない?ここどこだろ?

    なんとか考えようとするけど寝起きで頭の中はふわふわする
    いつも夢見が悪いからすぐ起きれるのに今日は微睡みが続いている


    エレジアじゃないよね、あっ喉かわいた、お腹もすいた?うん、すいてるー
    おきなきゃー?うーーん、いや寝ちゃおうよー二度寝はいいぞー
    昨日なにしたっけ?いつもどおりかなー?今日のレッスンは…………あっ


     ガバッッッ

    そうだ!!昨日歌ったよ!!!
    みんなが笑顔になってた!!!

    昨日の記憶が全て溢れだし、その時の感動とか嬉しさとか切なさとか高揚感とかの色々な感情もグワーーーーーーッと思いだし、布団を跳ね除けて、飛び起きて、床に足をつけて

  • 2823/01/11(水) 23:44:53

     ゴンッッッ!!!

    額を勢いよく床にぶつけた


    いつも使っているベッドより足が低いのに、いつものように起き上がろうとしたから転んだ
    なんとか手をつくことで顔面衝突は避けれたけど代わりに額が犠牲となってしまった

    「~~っっ!!あ゛ぐっーーうぅ~~」

    痛いという感覚を久しぶりに味わいながら床に転がる
    エレジアじゃ音楽のレッスンか海を眺める毎日だから怪我なんて全然しなかった
    加えて昨日久しぶりに人前で歌ったことで感覚が昔に戻っており、スルリと言葉が出てきた


    「シャンクスぅ、おでこぶつけ…………………………ぁ」


    呼吸が止まる

    痛みを忘れる

    現実を思い出す


    私の そばに 誰も いない

  • 2923/01/12(木) 01:22:21

    現実と呼吸を思い出して現在の感覚が戻ってくる

    床に転がり天井を見つめる

    額の痛みも思い出したけど、もう気にする気力もない
    じわじわ視界がにじんできたけど痛みによる生理的な涙だから仕方ない

    目を閉じる

    (大丈夫、大事なのは心で身体の痛みなんてへっちゃらなんだから)

    私の世界を考える
    平和で音楽が溢れる幸せな世界を考える

    目を閉じたまま少し息を吸って、


    ズキンッ

    額が痛むと同時に瞼の裏に人影が映る

    【お、おいウタ大丈夫か??デケェ音たててぶつけたな】
    【…赤くなっちまってるじゃねーか】
    【よーしよしよし、そんなに泣くな】
    【おーいホンゴウ、ウタがまーたころんじまった】

    【……痛いなら我慢せず泣いていいんだぞ】
    【…………ははっ】

    【そうか、俺の娘だから痛いのはへっちゃらか】

  • 30二次元好きの匿名さん23/01/12(木) 13:07:59

    保守

  • 31二次元好きの匿名さん23/01/12(木) 23:57:30

    保守

  • 3223/01/13(金) 00:04:13

    目を開けて閉じる
    清潔な部屋できれい好きな人が幼い私の額を診察している

    【あー赤くなっちゃあいるが血は出てねぇな】
    【ほら、シップ貼るから前髪あげて……よしできた】
    【ほんとウタは素直に治療させてくれるいい子だぜ】
    【ん?……ハハ、そうだ!船の上じゃ医者の言うことは絶対だ!!】

    【俺たちの娘はとっても優秀だな】


    また目を開けて閉じる
    煙草を咥えた人が幼い私を抱き上げる

    【おう、どうしたウタ?いつもの可愛い額が見えないじゃないか】
    【…転んで打ったが泣かなかったとは、えらいな】
    【………フ、そうだな。たとえ額にシップを貼っていても可愛いよ】

    【どんな格好でもお前は俺たちの可愛い娘だ】


    もう一回、と目を開けて閉じる
    100発100中の人がペンと鏡を持ってきて幼い私を椅子に座らせる

    【ウタ~聞いたぞ~。額に白いシップ貼ってるってな】
    【せっかくだ、何か絵を描いてやるよ】
    【………よーしっできたぞ!ほら鏡で見てみろよ】
    【俺たちのシンボルマーク、よ~く描けてるだろ】

    【このマークを選ぶなんてさすが俺たちの娘だぜ】

  • 3323/01/13(金) 01:05:31

    ゆっくりと目を開ける

    見えるのは木目の天井
    背中には揺れない床

    心は穏やかに彼らを思い出す

    昨日歌を聴いて喜んでもらえたこともあるが、本当に久しぶりによく寝たおかげで心に余裕がある
    いつも見るけど覚えていない夢にうなされることもなかった


    「…………8年も会ってないのに、声覚えてる」

    私は彼らの『声』を思い出す、一緒に『表情』も思い出す


    「……そういえば話すとき、いつも顔がよく見えてたなぁ」

    彼らと幼い私では身長がとても違ったけど、話しかけるといつも色々な方法で目線を合わせてくれていた
    私を椅子に座らせたり、抱き上げたり、樽の上に乗せたり、肩や腕に乗せてくれたりしていた
    目をしっかり合わせて私の話を聞いてくれていた

    必然と顔も近くなるから『声』はよく聞こえ、『表情』もよく見えていた
    『声』と一緒に『表情』も細部まで思い出す





    ………あぁ、嫌なことに気がついた、気がついてしまった

  • 3423/01/13(金) 01:46:01

    思い出した彼らの『表情』が昨日部屋の窓から見た人の表情にとてもよく似ている



    駆け寄ってきた子どもに対して、両手を広げて迎えて、抱き上げて

    ≪大切で愛しくてたまらないと笑う親の表情≫


    そんな表情をした父親らしき人と一緒の表情を、思い出の彼らは私に向けていた


    気づきたくなかった

    「わかんない…………わかんないよぅ」
    「なんでそんな優しい顔で私を見るの?私を利用するために?」

    額がズキズキと痛みを主張する
    額に両手を当てて、痛みに体を丸める


    赤髪海賊団が私を捨て、杯を上げる後ろ姿と笑い声がちらつく
    父親達が私を見て、優しい顔と甘やかしてくる声がちらつく


    一体何が真実なのだろう、一体何が間違えているのだろ
    考えるけどわからない

    わからないまま私は痛みに涙を流す

  • 35二次元好きの匿名さん23/01/13(金) 07:15:44

    復活してるだと?!ほしゅ!
    うっかりスレ落としちゃって落ち込んでたから復活嬉しい
    この世界線のウタちゃんとゴードンさんの関係性すこ

  • 36二次元好きの匿名さん23/01/13(金) 07:21:44

    ここからゴードンがどうケアするか

  • 37二次元好きの匿名さん23/01/13(金) 19:05:58

    保守

  • 38二次元好きの匿名さん23/01/14(土) 01:24:11

  • 39二次元好きの匿名さん23/01/14(土) 12:32:07

    待ち

  • 40二次元好きの匿名さん23/01/14(土) 22:10:54

    このレスは削除されています

  • 41二次元好きの匿名さん23/01/15(日) 09:14:56

    ほし

  • 42二次元好きの匿名さん23/01/15(日) 17:37:46

    ほしゅ

  • 4323/01/16(月) 01:13:50

    薄暗かった外が完全に明るくなったころ、ようやく涙が止まった

    たくさん涙を流したおかげで、頭はぼーっとするけど憑き物が落ちたかのようにすっきりしている
    まだ少しズキズキするけど額の痛みもましになった


    昨晩は楽しく歌って、ぐっすりと眠って、今は思いっきり泣いた

    そのおかげかいつも雁字搦めな思考は解き放たれ、澱んでいた心は澄み渡っている
    思考がすっきりしている今ならば、とずっとずっと思考の奥底に仕舞っていた疑問を取り出す


    (【あの夜】に本当は【何】があったんだろう)

    エレジアが滅んだ夜
    赤髪海賊団が私を捨てた夜
    初めて、みんなが私のことを振り返らなかった夜


    私が寝ている間に【何か】が起きた
    答えを知らなければいけない

    ずっと【何か】の答えを出すことを怖がっていた
    でももう8年だ
    答えを見つけなければ、私はきっと後悔する
    そんな予感がある

  • 4423/01/16(月) 01:32:35

    エレジアが滅んだ夜を思い出す


    起きたらそばに誰もいない
    外の騒がしく、急いで裸足のまま外へ出る

     ‐色彩が鮮やかだった町は襲い来る炎の赤に染まっている
     ‐綺麗な建物がいくつも崩れ落ちる音
     ‐立ち上る火柱から肌にあたる火の熱気
     ‐呼吸をすると口の中に入ってくる燃え尽きた灰の味
     ‐嗅ぎなれない不愉快で嗅ぎたくない何かが焦げた匂い


    全身の五感から入ってくる情報に呆然としながら、シャンクス達を探す
    見つけたゴードンさんに声をかける

    「騙されていた」  「利用されていた」

    到底信じられない言葉を拒否して港へ走る
    海を見る

     ‐遠ざかるレッド・フォース号の船尾と男達の背中
     ‐自分の叫ぶ声だけが聞こえ、笑い声は小さくなり離れていく
     ‐私の体を抑えるのは筋肉のついた太い腕ではなく、楽器を扱う細い腕
     ‐叫んで叫んで叫び続けた口の中に広がる涙と血の味
     ‐海に近いのに嗅ぎなれた潮の匂いはせず、焦げた嫌な匂いだけ

    残されたのは泣きじゃくる幼い私とゴードンさん

  • 45二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 07:20:30

  • 46二次元好きの匿名さん23/01/16(月) 18:48:34

    保守

  • 47二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 01:02:18

  • 48二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 06:58:57

    保守するぞ

  • 49二次元好きの匿名さん23/01/17(火) 17:13:00

    ほしゅ

  • 5023/01/18(水) 02:21:53

    それから8年経って今の私がいる

    ゴードンは「エレジアを滅ぼしたのは赤髪海賊団」としか教えてくれない
    それが事実なのだと私に言い聞かせるように何度も口にした
    しかしゴードンは「エレジアを滅ぼしたのは赤髪海賊団」と口にする時、私から顔をそらし声がだんだんと小さくなる

    そんな態度だから私は「嘘だ」「そんなはずない」と言って何度も何があったのか問い詰めた
    でも譲れない何かがあるのか口が堅く、本当のことは未だに教えてくれない
    だから1年くらいで問い詰めるのは諦めた
    それからは海を眺めて知っている船影を探すために海へ赴き、音楽を学ぶ日々を過ごしていた

    死なないために生きているだけの日々だった


    今回島を出てようやく気付いた
    教えてもらえないなら自分で真実を探せばいいじゃない!
    誰かに教えてもらうのを待つのではなく、私自身が動いて見つけよう

    まずエレジアに戻ったら、エレジアの歴史を調べよう
    エレジア自体を知ることで手掛かりの一つでもわかればいい
    そして集めた手掛かりをもとに真実が何か考えて、もう一度ゴードンに尋ねてみよう

    よし、頑張ろう!



    でもさ、
    本当にゴードンの言葉通りだとしたら?

    私は―――

  • 5123/01/18(水) 02:43:46

       ぐぅ~~~~


    「…そういえばお腹すいた」

    お腹の音でさっきまで感じていなかった空腹感に薄暗い考えが霧散する


    「うん、朝ごはんを食べてから考えよう」


    床に寝転んでいた身体を勢いをつけて起こし、寝間着を脱いで、動きやすい服に着替える

    昨日は人前に立つからと膝下まである白い清楚なワンピースを着ていたが、今日は動きやすいようにジーンズと黒のTシャツを着て髪をいつも通りに結ぶ


    顔を洗って鏡で顔色をチェック

    まあ泣いたから目元が赤い

    水に濡らしたタオルで目元を冷やしていると控えめなノック音が聞こえた


     コンコン

    「…ウタ、起きているだろうか?」


    「…おはよう、ゴードン」


    「あぁ、おはよう。朝食の準備ができているから下に降りて食べよう」

    控えめだけど私を気遣っているのが声色でわかる


     キィ


    「うん、せっかくだし一緒に行こ」

    ドアを開けてゴードンに顔を向ける


    「っ!!ぁ、あぁ一緒に行こう」

    私のほうを見て嬉しそうな声音で答えてくれるゴードンを不思議に思いながら一緒に1階へ向かう

  • 5223/01/18(水) 02:46:50

    (あぁ)

    (歌っている時以外にウタが笑う姿を見るのは8年ぶりだ)

  • 53二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 07:01:33

    よかったねゴードン

  • 54二次元好きの匿名さん23/01/18(水) 17:14:53

    がんばれウタ

  • 55二次元好きの匿名さん23/01/19(木) 00:44:58

    保守

  • 56二次元好きの匿名さん23/01/19(木) 07:00:21

    保守保守

  • 57二次元好きの匿名さん23/01/19(木) 18:38:22

    待機

  • 58二次元好きの匿名さん23/01/19(木) 21:19:25

    保守

  • 59二次元好きの匿名さん23/01/19(木) 21:21:03

    保守

  • 60二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 06:57:24

    ほしゅ

  • 61二次元好きの匿名さん23/01/20(金) 17:16:55

    ほす

  • 6223/01/21(土) 03:44:54

    ~宿屋1階 広間~

    1階の広間は明るいときは食堂、暗くなれば酒場として使用されている
    だから昨日の夜に立ったステージが日の光に照らされてよく見える

    昨日は暗くてわからなかったがステージは隅に配置され、面積は小さくピアノが大半を占めており、私が立っていた場所はさらに狭かった

    でも私は知っている
    たとえ小さくて狭い場所でも私が立って歌えば、私の歌声が届くすべてが私のステージとなる
    昨日の夜はこの広間だけでなく、建物周辺も私のステージだった

    (私のステージ、エレジアに戻ったら探してみようかな)

    昨日の余韻に浸りたくてステージがよく見える席にゴードンと一緒に座る
    間もなく宿の女将さんが二人分の朝食を持ってきてくれた

    「やぁおはようさん、よく眠れた?おや、目が赤いね、大丈夫かい?もしかして眠れなかった?枕とか変わると眠れないとかかい?それとも布団が悪かったかねぇ?」
    「あ、大丈夫、です。ぐっすり眠れました。その、目は、こすっただけなので…」
    「そりゃあよかった!さ、朝ごはんをしっかりお食べ。若いんだからいっぱい食べるだろ?おかわりもあるから遠慮なく言ってちょうだい!そうだ、果物も持ってこようか?ちょいと待ってておくれ!」
    「え…あ、じゅ、十分です!ありがとう、ございます」
    「そーかいそーかい。あ、今日の朝ごはんはね・・・・・・」

    勢いよく話しかけてくる女将さんに圧倒されながらも、ゴードンを挟まない会話を頑張る
    ゴードンはニコニコしながら私たちの会話を聞いている

  • 6323/01/21(土) 04:12:26

    (助けて、ゴードン!!)

    女将さんの話に終わりが見えない
    こちらは相槌しかしていないのに会話が続く続く
    現在の話題は2軒隣の雑貨屋に子犬が生まれた話
    ゴードン以外とこんなに長く会話(?)することに気力が削れ、目が濁ってくる
    これ以上は耐えられないと視線で助けを求める

    「(コホン)…そろそろ朝食をいただいてもいいだろうか?」
    「おや、あたしとしたことが話し込んでごめんね~。ゆっくり食べてってちょうだい」

    ずっと持っていた朝食をテーブルに置いて女将さんが遠ざかっていく

    「(ハァーーー)…もう少し早く助けてほしかった」
    「すまない。さぁ、朝食は1日の活力の源だ。しっかり食べよう」


       ~本日の朝食~
     ・葉物と魚のマリネを挟んだサンドイッチ
     ・コーンポタージュ
     ・オレンジジュース

  • 64二次元好きの匿名さん23/01/21(土) 13:45:52

  • 6523/01/22(日) 00:15:59

    エレジアにいた頃はナイフとフォークを使い、マナーを守って食事をしていた習慣でカトラリーを探す
    カトラリーはなくどうやって食べればいいか戸惑っていると、正面に座っていたゴードンがサンドイッチを素手で持ち、大口を開けてかぶりついた

    初めて見る姿に呆気にとられていると、口を動かしながらゴードンの目線が私とサンドイッチを行き来する
    口に含んでいた物を飲み込んで一言
    「このサンドイッチは一気に頬張るのが美味しく食べるコツだよ」

    緊張しながら大きく口を開けてサンドイッチにかぶりつく

    パンは焼きたてだからか小麦の香りが鼻を抜け、魚のマリネは生の切り身を使用しているが臭みは全くなくオリーブオイルの風味と少しの酸味が舌をくすぐる
    一緒に挟んである玉ねぎと名前のわからない葉っぱがシャキシャキするから何度も噛み締める
    口の中で別々の食材の味が噛む毎にどんどん一つになって、とても美味しい
    一口目を飲み込むと、お腹がもっとくれと主張してくるので二口目を頬張る
    そうして三口、四口と食べていくと一個目を食べ終わってしまったので、すぐに二個目のサンドイッチに手を伸ばす

    二つあったサンドイッチはすぐに食べ終わってしまった

    サンドイッチにより乾いた口内に、小さなカップに入ったコーンポタージュを流し込む
    熱すぎず温すぎず、すぐに飲める温度でふんわりとコーンの香りと甘味、滑らかな喉ごしに一息つく

    そこで女将さんがサンドイッチのおかわりを持ってきてくれたので、ありがたく二ついただいてゴードンと一緒に食べる

    三つ目のサンドイッチを口に含みながら、目の前で二つ目のサンドイッチにかぶりつくゴードンを見て考える
    普段エレジアではゴードンが食事を作ってくれて配膳もしてもらっているから、一緒のテーブルについて食べる機会が少ない
    一緒に食べる時でもテーブルが大きいから席が離れており会話もほぼなく、食器とカトラリーが当たる音が響くだけだった

    今は普通のテーブルに向かい合って座り、時々目線があって「美味しいね」と言い合える距離に心が暖まる

    (今度、食事の用意を手伝って、もっと席を近づけて、行儀が悪いかも知れないけど、話ながらごはんを食べてみようかな)

  • 66二次元好きの匿名さん23/01/22(日) 09:20:31

    飯おいしそうだなぁ

  • 67二次元好きの匿名さん23/01/22(日) 20:23:32

    保守

  • 68二次元好きの匿名さん23/01/22(日) 23:11:47

    ウタが元気になってよかった。

  • 69二次元好きの匿名さん23/01/23(月) 07:10:57

    保守保守

  • 70二次元好きの匿名さん23/01/23(月) 17:21:51

    ほしゅ

  • 71二次元好きの匿名さん23/01/24(火) 00:46:15

    このレスは削除されています

  • 72二次元好きの匿名さん23/01/24(火) 00:49:39

    このレスは削除されています

  • 7323/01/24(火) 00:50:41

    四つ目のサンドイッチを食べ終えると、お腹は満腹で満足
    最後にオレンジのいい匂いがするジュースが入ったグラスに口をつけ、勢いよく傾け……

    「(ゴクッ)んっ!?!?(ゴクゴクゴクッ ゴックン)……っぁ、にっがぁあ!!?!!」
    「「「「あっはっはっはっは!!」」」」

    ジュースを口に含んだ瞬間、オレンジの爽やかな香りと共に強烈な苦味が舌を突き抜けた
    吹き出しそうになったが気合いで我慢し、一気に飲みきって感想を告げると周囲の大人達が笑う

    色合いがキレイなオレンジ色だったし、グラスを持ったときにオレンジのいい匂いがしたから酸味のあるスッキリしたジュースだと思っていたのに……
    想像の味と現実の味に差がありすぎて余計に苦味を感じている気がする
    喉に違和感はないが、舌に苦味が残っていてじわじわと主張してくるから眉間に力が込もり、可愛くない顔をしているのはわかるけどけど可愛くない顔になってしまう

    そんな私を見て目の前のゴードンが肩を震わせながら説明してくれる

    「すまないウタ、このジュースは『オレンジモドキ』という果実を搾って作られているんだ   フフ」

    「『オレンジモドキ』?なにそれ?あ、知ってた?これ苦いって知ってたね??あと笑うなら隠さず笑いなよ」

  • 7423/01/24(火) 01:10:29

    「ごめんね~、『オレンジモドキ』ってこの島に自生してて、なーんにも世話してないのに生えてるから取り放題の果物なのよ~」

    水を持ってきた女将さんが笑いながら説明してくれる
    持ってきてもらった水を警戒しながら一口飲むと、普通の水だったので勢いよく飲み干した

    「見た目も匂いもオレンジなのに皮を剥くと房がなく一つの玉のみ、かじると果汁が溢れるがその汁がとにかく苦いから動物は食べない」

    宿の主人さんが水のおかわりを持ってきたので注いでもらい、今度はゆっくりと飲む
    水をちびちび飲みながらみんなの顔を見るとニヤニヤ寄りのニコニコ顔

    「しかし良薬口に苦しとも言うしな」

    「この苦さがね~癖になるのよ~」

    「まぁ大人になったら良さがわかる味だ、お嬢さんは気にすることはないぞ」

     ハハハハハハハハ


    むぅ~~
    この雰囲気、昔シャンクス達がお酒を「ガキにはまだ早い」「これは大人の飲み物だ」とか言って笑っていた時とおんなじだぁ
    大人ってこんな苦いの飲んで美味しいって思うの?
    甘い方が美味しいと思うのになぁ

  • 75二次元好きの匿名さん23/01/24(火) 12:08:36

    保守

  • 76二次元好きの匿名さん23/01/24(火) 21:43:02

    かわいい

  • 77二次元好きの匿名さん23/01/25(水) 07:17:03

  • 78二次元好きの匿名さん23/01/25(水) 18:17:14

  • 7923/01/26(木) 01:44:48

    サンドイッチを食べてウタが目を瞬かせた時

    「美味しい」と感想を言った時

    サンドイッチのおかわりをした時

    満腹だと示すようにお腹を擦った時

    苦いジュースに盛大に顔をしかめた時


    食事中のウタが表情を変える度に私の視界が滲み、鼻の奥がツンとなり、喉がキュウッと引き絞られた
    今も宿の夫妻と笑いながらも涙がこぼれないように気を付ける

    エレジアでは何を食べても表情は変わらず、残しはしないがおかわりもせず、焦がしてしまった料理を謝罪と共に出しても静かに食し、食事時に発する言葉は「いただきます」「ごちそうさまでした」のみだった
    私が教えた食事マナーを忠実に守っていたのだけれども一種の寂しさを感じてはいた
    マナーを気にしないように外でピクニックを、と思ったときもあったが海を眺めるウタの邪魔をしたくなかったため言い出せず、現状維持としていた

    しかし今ののびのびと食事をする姿はどこか幼く、出会った頃のウタの快活さを思い出させてくれる

    初めてのエレジアに緊張しながらも赤髪海賊団の音楽家だと自己紹介をしてくれた
    伝統の音楽祭では小さな体からは想像もつかない素晴らしい歌声を披露してくれた
    島や音楽院を案内したときは目を輝かせ、音楽について色々な質問をしてくれた

    ……最後だからとパーティーでは望まれるまま様々な曲を楽しそうに歌っていた姿が最後だった

  • 80二次元好きの匿名さん23/01/26(木) 13:23:04

    保守

  • 81二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 00:07:31

  • 82二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 06:55:12

    ほしゅっ

  • 83二次元好きの匿名さん23/01/27(金) 17:21:56

    ほっす

  • 8423/01/28(土) 02:55:06

    身体全体を使って楽しそうに笑って歌う小さな子どもは魔王によって一夜で奪われた

    そして私は………

     「あの日の夜、私が国中に歌声を響かせなければ…」
     「そうすればウタは今も彼らと一緒にいて笑えたのでは?」
     「エレジアは今も音楽が溢れる国でいれたのに…」

     「すべては私のせい、私の罪」

     「自国民が全員亡くなったのも、ウタが笑わないのも、赤髪海賊団に無実の罪を被せてしまっているのも………すべては私の業」

    何度、自責の念に押し潰されそうになったか
    何度、国が滅びる夜を夢見て夜中に飛び起きたか
    何度、国民達の後を追うために己の命を絶とうとしたことか


    そして何度、ウタの力を恐れ、音楽の指導を止めようとしたか


    だがシャンクスとの約束のためにと自分に発破をかけ、指導を続けていた
    そんな自責の念と約束に縛られながら過ごしていたある日、天気がいいからと初めて外で指導したことがあった

    澄みわたる青空と穏やかな海を背に、日の光に照らされたウタが私の合図で歌った

  • 8523/01/28(土) 02:58:27

    歌声が耳に届いた瞬間、全身が揺さぶられ、心に蓄積されていた澱みが止まらない涙となって流れ出ていくように感じた


    歌い終わったウタに震える声で何を思って歌ったのか聞いた

    疲れている私のため、少しでも元気が出てくればと思いながら歌ってみたと言っていた

    この日、確かに私はあの子の歌声に救われた

  • 86二次元好きの匿名さん23/01/28(土) 13:52:48

    保守

  • 87二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 01:20:03

    保守

  • 88二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 10:43:08

    保守!

  • 89二次元好きの匿名さん23/01/29(日) 21:28:50

  • 90二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 07:08:28

    守守

  • 91二次元好きの匿名さん23/01/30(月) 18:03:55

    hosyu

  • 9223/01/31(火) 01:44:58

    あの日私は君に救われると共に、音楽を愛する者として欲が出てしまった


    天使の歌声、そこから産み出される曲、そして音楽に対する優しい愛

    【ウタ】という存在がこの世界のどこまで広がり、どれだけの高みに昇り、この大海賊時代の人々に受けれ入れられるのか

    見てみたいという欲が出てきてしまった


    それからの私はウタの能力を外へ出すことを恐れるよりも、ウタの更なる成長を見たいという己の欲を優先させることにした

    国王であったときの人脈の中から特に音楽に対して真摯に愛している者のみに手紙を出し、将来性のある素晴らしい歌い手の卵の存在を知らせた
    彼ら彼女らはまずは私からの手紙を喜び、エレジア崩壊に関することには触れずにいてくれ、卵に興味を示す
    特にエレジア出身の音楽家に対してスポンサー歴のある富裕層は卵の実力について聞いてきた

    ゴードン王のお墨付きなら問題ないとは思うが念のため支援するに値するかどうか判断するために実力を示してほしい、という


    なのでウタの指導時に歌をこっそりテープに収録し、こっそり送付しておいた
    音響機材が一部壊れていたので音質が悪くて申し訳ないことを手紙に添えると、機材のリストがきたので今後のウタに必要になりそうな物をありがたく希望させてもらう

  • 93二次元好きの匿名さん23/01/31(火) 06:56:24

    保守

  • 94二次元好きの匿名さん23/01/31(火) 18:08:24

    保~

  • 9523/02/01(水) 01:51:27

    それから1年に1回、歌声を収録したテープと卵の成長内容(曲のレパートリー、高音の伸び良好、肺活量増加等)を手紙にて報告し、細々と支援を受け続ける
    ウタの名前も容姿も教えていないのにスポンサーとして支援を続けてくれている存在には感謝の念が絶えない

    だが滅びた国の国王とのやり取りが富裕層の彼ら彼女らにどのような影響を及ぼすかわからない
    もらった手紙は読めば燃やし、送った手紙とテープも最後は燃やされているだろう

    連絡は最小限、送付されてくる物資も最低限
    証拠は残さず、されど交流は絶やさず続ける

    いつかウタの歌声を世界に広めるために下準備と指導を続けている


    そして先日歌の技術を習熟し、どこで歌っても恥ずかしくない仕上がりとなった

    残る問題の経験不足は、昨日の小さな舞台を成功させたことで一歩踏み出せた
    島の人との交流も辿々しいができている

    この調子であれば、あと2,3回ほど別の島の小さな舞台を経験すればスポンサーへ実力を見せることも可能だ
    そうなると誰から紹介しようか

    彼か?彼女か?拠点が船のあの人はダメだな
    ……気が早いな、もう少し様子を見てから考えよう

  • 96二次元好きの匿名さん23/02/01(水) 06:45:00

  • 97二次元好きの匿名さん23/02/01(水) 17:55:11

    しゅ

  • 98二次元好きの匿名さん23/02/02(木) 03:09:27

    保守

  • 99二次元好きの匿名さん23/02/02(木) 14:12:13

  • 10023/02/03(金) 00:24:21

    笑って涙を誤魔化し、思いを巡らせていた過去と未来を心に箱にしまい、ひとつ深呼吸
    宿の夫妻が離れていったことを確認してからウタに話しかける

    「ウタ、昨日は楽しかっただろうか?」

    「……うん、すごく楽しかったよ。ゴードンは?」

    「私も楽しかった。舞台の出来は……昨日の観客の反応と私の評価は一緒さ」

    「みんな、笑ってくれてた」

    「あぁ、私も笑っていたよ」

    「でもベショベショに泣いていたよね?」

    「感動しすぎると涙は出てくるものだ。だから君の歌を聴くと涙があふれでてくる」

    「ふふ、なにそれ?……私の歌、感動した?」

    「感動したとも」

    「……どうだった?」

    「言葉で言い表すのは難しいが…あぁ、幸せだったよ」

    「幸せ?私の歌が?幸せってどんな感じ?」

  • 10123/02/03(金) 02:13:21

    「え?…あーーその、ううぅ~む……幸せの感じ方は人それぞれなので私個人の感覚になるが…」

    言い表すのが難しいと言ったのに聞いてくるウタを見ると、思いの外真剣な顔でジッと答えを待っているので昨日の感動に一番近い言葉を探す

    「まずこう……歌声を聴くと、もやが失くなって視界がひらいていく感じで……」

    「それで?」

    「あーー胸の中で……空が晴れて、花が咲いて、鐘の音が聞こえて、音楽が奏でられている…感じ、かと……思う」

    当てはまりそうな言葉を紡いでいくが、どうしてもあの時の『幸せ』に当てはまる言葉が見つからず、最後は肩を落として小声で答える

    「すまない、散々君の歌は素晴らしいと言いながら上手く言葉で表現できず申し訳ない」

    「…………………………」

    「ウタ?」

    「あ、その……ううん、難しいって言ってたのに教えてくれてありがとう」

    私の言葉を聞いて考え込むウタに声をかけると、何でもないと眉を下げてお礼を言われる
    何か失言しただろうか、考えてもわからない

  • 10223/02/03(金) 02:18:44

    「…そうだ、昨日の舞台だが改善すべき点がいくつかあったな」

    「もしかして3曲目の途中でブレスのタイミング間違えたこと?」

    「そこもだが、今回のような舞台では水分補給が大事で………………あと手拍子は………………」

    「なるほど……じゃあ腕のフリは………………間奏の時に………………」

    ウタの表情は気になるが深堀はせず話題を舞台で歌ったことで気になったこと、の話題に変える
    あーすれば良かった、こうして良かった等を話し合う
    音楽のことを話している間は雑念が消え、集中することができる
    だんだんと白熱してきたが船の時間が迫ってきたので一時解散する


    「私、またステージで歌ってもいいのかな?」

    「もちろんさ!!」

    「そっか……うん、もっともっと頑張ってみるよ!」

  • 103二次元好きの匿名さん23/02/03(金) 06:51:59

    しゅしゅ

  • 104二次元好きの匿名さん23/02/03(金) 17:03:51

    保守

  • 105二次元好きの匿名さん23/02/04(土) 01:41:18

    保守

  • 106二次元好きの匿名さん23/02/04(土) 08:26:08

    しゅ

  • 107二次元好きの匿名さん23/02/04(土) 19:59:03

    ほしゅ

  • 108二次元好きの匿名さん23/02/05(日) 01:25:47

  • 109二次元好きの匿名さん23/02/05(日) 12:06:01

    しゅ

  • 110二次元好きの匿名さん23/02/05(日) 23:00:07

    保守

  • 11123/02/06(月) 01:46:23

    私の歌でゴードンが感じた『幸せ』を教えてもらった
    その内容を聞いて思い出した風景がある

    そこでは朝方に時々濃霧が発生する
    でもその後はとてもよく晴れる兆しだから好きだと話してくれた

    音楽院と城の庭は色とりどりの花が咲いていてキレイだった
    王様だけど手ずから世話をしている内緒のエリアもあるとそっと教えてくれた

    朝、正午、夕方の3回鳴らされる城近くに建てられた鐘楼から響く鐘の音
    近くで聴くと身体全体に響き、遠くで聴くとつい耳を澄ませたくなる音色
    この音好きだなと呟くと、私もだよ、と優しく頷いてくれた


    これらの風景は今や荒廃して見れなくなった、栄えていた時の音楽の国 エレジア
    ほんの数日しか見れなかったけど、笑顔と音楽が溢れた優しい国

    それがゴードンにとっての幸せなんだろう


    でもその幸せを壊したのは赤髪海賊団
    財宝を奪うために私を利用したみんな


    ……………………みんな……

  • 112二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 02:06:12

    このレスは削除されています

  • 11323/02/06(月) 02:12:20

    ……そういえばゴードンはなんで私に優しくしてくれるのだろう?

    私はエレジアを滅ぼした赤髪海賊団が連れてきた子ども
    利用されていたとはいえ、幼いとはいえ、赤髪海賊団に育てられ関わっていた子ども

    たぶんだけど子どもでも身内というだけで怒りや憎しみの対象になると思う


    なんで?

    ゴードンは優しいから?

    でも国も国民も一夜で失くしたのに優しいだけでは説明できないと思う


    もしかしてゴードンは赤髪海賊団を、シャンクスに対して負の感情がない、とか?

    なんで?

    国を滅ぼされた
    国民みんないなくなった
    幸せが二度と戻ってこない

    辛いよね  怒るよね  悲しむよね  憎むよね  恨むよね

    それなのに負の感情を向けないということはないだろう
    だってゴードンは本に出てくるような聖人君子ではない

    涙もろくて料理上手で音楽が大好きな、ただの優しい人だもの

  • 11423/02/06(月) 02:21:49

    だから他の可能性を考える

    でもどれも腑に落ちない

    何故ともう一度考える

    出した答えはこれではないと心が答える

    わからない

    でもここで考えを中断するのはいけないと心が叫ぶ

    なにか他にはないかと考える

    ………………考えている途中で、ふと思った


    赤髪海賊団に対して負の感情がないのは、エレジアが滅んだ原因じゃないからだとしたら?

    ということは

    エレジアを滅ぼしたのは………………赤髪海賊団じゃない??


    じゃあ


    エレジアを滅ぼしたのは、壊したのは……………… ダ レ ?

  • 115二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 02:43:33

    お?

  • 116二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 07:03:51

    自力で辿り着くのか?

  • 117二次元好きの匿名さん23/02/06(月) 18:17:57

    保守

  • 118二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 00:37:56

    ほしゅ

  • 119二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 06:51:29

    ホシユホシユ

  • 120二次元好きの匿名さん23/02/07(火) 17:25:42

  • 12123/02/08(水) 01:31:59

     コンコン

    「ハッ!!」

    深く沈んでいた思考が一気に現実へ引き戻される
    心臓がバクバクと音をたて、短い呼吸音が耳につく


    「ウタ、荷物はまとめれたか?………………ウタ?」

    「ご、ごめん!もうすぐ終わるよ」

    考え事に没頭して止まっていた荷造りを再開させる

    吹き出た手汗を服の裾でぬぐう
    背中に流れた汗が急速に冷えて気持ち悪いが放置する

    元々広げた荷物は少なかったので荷造りはすぐに終わった

    バッグを持って、忘れ物が無いか部屋を見渡す

    エレジアの自室よりも小さい部屋
    でも隅々まで手入れが行き届いていて過ごしやすく優しい日差しが差し込む部屋

    たったの1泊だけどお世話になった部屋に一度頭を下げ、背を向けて扉を開ける

    「おまたせ」

  • 12223/02/08(水) 02:21:45

    扉を開けて近くに立っていたゴードンをジッと見る

    目はサングラスに隠されていてわからないけど……纏う雰囲気に嫌いとか、憎いとか、怒りとかは無い……と思う

    「…私の顔になにかついているか?」

    「ううん、なんにもないよ」

    「??そうか、では行こうか」

    そう言って先を歩くゴードンの後ろをついて行き、大きな背中を眺めながら考える


    《エレジアを滅ぼしたのは赤髪海賊団ではない別の誰か》


    いままで考え付かなかったこの仮定をもとに、エレジアに戻ったら色々と考えてみよう

    う~ん、でもシャンクス達が悪くないならなんで私を置いていったのだろう?
    私を連れていくと何か不都合な事情ができたのだろうか?

    あ、もしそうだったらシャンクス達が私を置いていったのは何か仕方のない理由があったのかもしれない!
    私を利用したとか、騙していたとか全部嘘かもしれない!
    ゴードンも何か理由があって赤髪海賊団が全部悪いって言ってたのかも!

  • 12323/02/08(水) 02:24:03

    だって当時の私はたった9才の子どもだったし

    みんなのように戦える訳でもないし強くもなかった

    エレジアでは歌って、いろんな施設を見学させてもらって、また歌うくらいしかしていない

    まぁウタウタの能力者だけど、能力は使うとすぐに眠っちゃうから特に関係ないかな


    あの日の夜、私が眠っている間に何が起こったんだろう
    それがわかればいいんだけどなぁ……

  • 124二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 06:54:08

  • 125二次元好きの匿名さん23/02/08(水) 18:48:37

    保守

  • 126二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 01:12:14

    守る

  • 127二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 06:49:47

    守る

  • 128二次元好きの匿名さん23/02/09(木) 17:23:39

    ☆ゅ

  • 129二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 02:19:42

  • 130二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 06:54:55

    守る

  • 131二次元好きの匿名さん23/02/10(金) 16:17:46

    保守

  • 13223/02/11(土) 01:16:58

    ~エレジア行きの商船、船尾~

    馴染みの商船が依頼の時間通りに島へ寄ってくれた
    島民と惜しみ惜しまれながらも別れを告げ、私とウタが荷物と共に船へ乗り込む
    船が動き出すとウタは船尾に移動し、人々の声が聞こえなくなるまで声を出し、島にある山頂が見えなくなるまで手を降り続ける

    とうとう水平線しか見えなくなるとウタは腕を下ろし、ジッと島の方角を眺めている
    結っている髪の毛がしょんぼりと下がっており、寂しいと背中が物語っている

    そんなウタの隣に二人分の距離を空けて一緒に水平線を眺める


    「……島、見えなくなっちゃった」

    「寂しいか?」

    「………うん、さみしい、かな」
    「でも楽しかったよ。私の歌でみんなが喜んでくれて嬉しかった」

    「そうか」

    「………………………」

    「………………………」

    会話が途切れ、波風の音と鳥の鳴き声が聞こえる
    エレジアでは生み出すことができなかった穏やかな空気に身を浸す

  • 13323/02/11(土) 03:01:58

    もう少しこの空気に浸っていたい気持ちを抑え、ひとつ咳払い

    「コホン、さて感傷はここまでにして皆からもらった物を整理しよう」

    「あーお土産いっぱいくれたもんね」

    そう言って、宿から船着き場へ向かう道中で会う人ほぼ全員から渡された様々な物が詰められた二つの木箱といくつかの紙袋を見る

  • 134二次元好きの匿名さん23/02/11(土) 12:27:40

    期待

  • 13523/02/11(土) 13:09:47

    島の人々は昨夜のウタの歌にいたく感動していたので、船着き場へ向かう歌い手のウタと奏者のゴードンの姿を見つけると昨日感じた感動を伝えようと話しかけ、離れた場所にいた人達も聞きつけたのかどんどんと人が集まって来た

    前に進めなくなるほど話しかけてくれることを嬉しく思いつつ船の時間が迫っているから通してほしいと伝えると、

    「じゃあこれ持っていきな。歌素敵だったよ」
    「船の中で食べてちょうだい!あんたの歌が今日の活力になってるんだ」
    「お花あげる!!音楽はよく知らないけどグッときたよ」
    「荷物が増えたね、この箱に入れなさい。ねぇまた来てくれると嬉しいな」
    「なら箱は台車で船着き場まで持ってってやる。昨日はありがとよ」
    「あ、箱が満杯になった、別の箱持ってくる。サイッコーな夜で楽しかったね」
    「ピカピカ!あげぅ!!おねーちゃんの歌好き!!!」

     ・・・・・・・・

    それぞれが感想とともに物を渡してくれ、船着き場につく頃には木箱二つといくつかの紙袋にまとまった

    島での生活は貧しいことはないが、余裕があるという訳でもない
    それでも言葉だけでなく、何かの形を渡したかったのだろう

    (嬉しいことだ)

    これ以外の言葉がでない

  • 13623/02/12(日) 00:21:47

    渡された物を一つ一つ確かめる

    食べ物は日持ちを考えて食べる順番を決める
    花は海の上では真水を用意できないので押し花にして残す
    木彫りの像や子どもが描いた絵等は壊れたりしないように脇へ避ける
    残せる物はエレジアに戻ったら空き部屋を掃除して飾ろうと提案すると、ウタは笑って賛成してくれた


    もらった花やきれいな貝殻を手に取り見つめるウタの眼差しは優しい

    「小さい子から大人まですごい人だったよね」

    「みんな感動したということさ」

    「…………うれしいなぁ」

    ポツリと無意識に溢れた言葉に微かに頷き、片付けを続ける

  • 13723/02/12(日) 02:23:12

    荷物を整理した結果、残せる物は紙袋3個にまとまった
    もらった魚や果物等は船で調理してもらえるか聞くため立ち上がる

    「ウタ、私はこの船の船長に会いに行くが……どうする?」

    「……もう少しここで海を見ていたいな」

    「わかった、では後で迎えに来るよ」

    「うん……まってる…………………………………………ィッテ…ラシャィ」

    目をそらしながら呟くように言ったウタが小さく手を振ってくる

    初めてこちらへ歩み寄るような言葉と行動に心がむずむずして、喉を痛めても構わないからワーーッと叫びたい衝動を抑え込み、大人の矜持で穏やかな笑みを浮かべ「いってきます」と答える

    答えた瞬間、恥ずかしくなったのかピャッ!と端の方へ走って行ってしまった

    なるほど
    ずっと落ち込んだ姿しか見れていなかったが、シャンクス達がウタを可愛い可愛いと言っていた理由がわかった
    あれは可愛いな

  • 138二次元好きの匿名さん23/02/12(日) 11:13:57

  • 13923/02/12(日) 22:46:35

    「~♪ー♪…………♪ー」


    船長と話し、食材は船て消費してくれることになったので、共に荷物を取りに来ると微かに音が聞こえてきた

    船の縁に持たれながら水平線を眺め、小さな声でメロディを口ずさむウタが見える

    「ー♪ー♪…………♪~~」

    立ち止まって耳を澄ます

    今までの練習では聴いたことのないメロディだ
    途切れ途切れだし、似たようなフレーズを何回も繰り返している

    新しい曲を作っているのだろう
    一緒に暮らしてからの8年間、作った曲は『世界のつづき』のみだったが……
    どうやら今回の旅がいい刺激になってくれたようだ

    邪魔をしてはいけない

    口に人指し指を当て静かに、というジェスチャーを船長へ向けると、彼は笑って頷いてくれる
    足音を立てないように荷物のもとに近づき、さっと荷物を持ち去る

  • 14023/02/13(月) 02:30:28

    「~~♪~♪…………ーー♪」

    よかった、気づいていない
    そろそろと離れていると今度は船長が立ち止まり、ジッと耳を澄ましている

    いつも眉間にシワを寄せる強面の顔が穏やかな顔つきになっているのはウタの影響か…
    まだまだ未完成な曲だが、これも素晴らしい曲として生まれるのだろう
    では、曲を形にするために…………

    「なぁ船長、紙とペンとインクは商品として積んであるだろうか?」

    「もちろんありますよぉ」

    「ではペンとインクは2セット、紙を十数枚買いたいのだが、よろしいだろうか?」

    「えぇえぇ、毎度あり!」

    ペンとインクの1セットはウタに、もう1セットは私が使おう

    どうやら私も色々と刺激を受けていたようだ
    頭の中で今の楽しい気持ちが音楽となって散らばっている
    エレジアに着くまである程度形にし、エレジアに着いたら清書してみよう

    そして私達は音楽家だ
    お互いに作った曲を披露し合って、感想を言い合うのもやってみよう

    もうウタは私の教え子ではなく、今回の旅で一人前の音楽家になっているのだから

  • 141二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 07:18:24

    しゅしゅ

  • 142二次元好きの匿名さん23/02/13(月) 19:09:52

  • 143二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 06:55:09

    ほしゆ

  • 144二次元好きの匿名さん23/02/14(火) 17:53:32

    HOSYU

  • 145二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 01:34:49

    しゅー

  • 146二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 06:49:37

    ほしほし

  • 147二次元好きの匿名さん23/02/15(水) 18:34:49

    保守

  • 148二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 04:16:56

  • 149二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 06:53:16

    保保

  • 150二次元好きの匿名さん23/02/16(木) 17:05:24

    保守

  • 15123/02/17(金) 02:30:33

    航海は順調に進み、エレジアに無事到着した
    1週間ほど留守にしたがエレジアに変わりはなく、私達は1日休んだ後、まずはお土産を飾るための部屋を探すことにした

    すぐに風通りと日当たりが良い部屋を見つけたが、長年人の手が入っていないため部屋の空気は淀み、廃れた状態だった

    2人で部屋の空気を入れ換え、掃除をし、机と棚を運び、お土産達を飾ったが……思ったよりパッとしない
    何故だ?と首をかしげていると、何かを取りに行っていたウタが戻ってきた
    戻るなり私の飾り付けを見て、あれ?という顔をして首をかしげる

    「なんというか……地味?」

    「地味………地味かぁ」

    「……ねぇ、私が飾り付けしてもいい?」

    ウタが伺うような、しかし以前であれば絶対に言うことはなかった能動的な言葉に笑って頷く
    少し緊張した面持ちでウタは部屋の中に入り、しゃがんだり立ったりしながら中をうろうろと検分している

    あとは任せようと思い、食事の準備に部屋を離れて1時間ほど
    食事ができたと呼びに戻ると、部屋が少し華やかになっていた

  • 15223/02/17(金) 02:35:45

    部屋の中央に置かれた武骨な丸机に白いテーブルクロスと花はないが綺麗に磨かれた蒼い花瓶
    花瓶の周囲には貰った花を押し花にするために挟んでいる本が数冊と貝殻と石が並べられている
    押し花ができたら栞にして一緒に並べるのだそうだ

    壁際の棚には木彫りの置物などが並べてあるが、それぞれ大きな葉の上に置かれ、角度を変えて飾られている
    角度を変えてみると、また違った物に見えておもしろい

    色々と工夫が凝らされている飾り付けをじっくりと眺めていると服が引っ張られる感触がして振り向く
    服の裾を摘まんだウタが俯きながらそわそわしている

    私は笑って声をかける

    「ウタ、君には音楽だけでなく美術の才能もあったようだ。本当に素晴らしい部屋に仕上がっている」

    ウタが顔をあげる

    「この部屋は君に任せるから好きなように飾り付けなさい。なにか必要なものがあったら用意するから遠慮なく言ってほしい」

    私の言葉に安心したように笑った

    「うん!任せてよ!」

  • 153二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 06:59:25

    hosy

  • 154二次元好きの匿名さん23/02/17(金) 18:38:05

    保守

  • 155二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 02:48:29

    保守

  • 156二次元好きの匿名さん23/02/18(土) 13:38:54

  • 157二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 00:52:37

    保守

  • 158二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 11:53:27

  • 159二次元好きの匿名さん23/02/19(日) 22:23:54

  • 160二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 07:22:30

    守る

  • 161二次元好きの匿名さん23/02/20(月) 18:58:58

    保守

  • 162二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 01:45:58

  • 16323/02/21(火) 03:24:33

    8年ぶりにエレジアの外に出て、久しぶりに人前で歌って、エレジアに戻ってきた
    1週間程留守にしていたけど誰も訪ねては来なかったみたい
    その事に気分が落ち込んでしまったけど、お土産を飾る部屋の掃除をして飾り付けをやってみると、ゴードンに飾り付けの内容を誉められた

    歌のこと以外で誉められたからビックリした
    そういえば8年間ずっと歌の指導ばかりだったから、歌う以外のことをするなんて思いもしなかった

    (…………あ、私は歌う以外のことできたんだ)

    飾り付けた部屋の中を見渡す
    さっきまで寂れた雰囲気だった部屋の一角は私が飾り付けたから色づいている
    ゴードンが部屋を任せてくれると言ってくれた

    (そうだよ…私歌う以外のこともできるんだよ!!)

    嬉しくて任せて、と力強く頷く

    誉めてもらえたこと、部屋を任せてもらえたことに段々とテンションが上がる
    飾り付け以外にもやりたいことが次々と浮かび上がってくる

     絵を描いてみたい  楽器を演奏してみたい  縫い物で可愛いもの作ってみたい
      歌いながらダンスを踊ってみたい  美味しいパンケーキを作ってみたい  他にも……

    (やっぱ歌うことが一番大好きだけど、他にもできることを増やしたい)

    夕食を食べたあとは自室の机でやってみたいことを紙に書いていく
    1枚の紙に書ききると達成感とともに疲労がのし掛かってきたのでもう寝ることにした

    (ふふ、何からできるかな)

  • 164二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 13:08:49

    保守

  • 165二次元好きの匿名さん23/02/21(火) 20:17:04

    このレスは削除されています

  • 16623/02/21(火) 20:27:35

    ーーーー   




    【忘レルナ】        【歌ウコトヲ】

              【歌エ】

        【見ツケテ】

    【最後マデ】   【歌エ】   【最終章ヲ】  【歌オウ】


     『お前の歌ハみんなヲ幸せにスル』

     『きみノ歌声はマサニ世界の宝だ』

        『『 ダ カ ラ 』』

    【ウタエ】  【歌エ】  【吟エ】 【唄エ】 【詩エ】 【謌エ】 【詠エ】

       【謳エ】  【唱エ】  【詠エ】  【謡エ】  【謳エ】 【謳エ】 【謳エ】


            【 ネ ェ 謳 ッ テ 】



    マッテル  ズット   

  • 167二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 06:59:08

    怖・・・

  • 168二次元好きの匿名さん23/02/22(水) 17:53:09

    保守

  • 169二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 01:49:39

    保守

  • 170二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 07:12:48

    保守保守

  • 171二次元好きの匿名さん23/02/23(木) 18:46:00

    保守

  • 172二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 00:28:22

    しゅ

  • 173二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 07:14:14

    ほす

  • 174二次元好きの匿名さん23/02/24(金) 17:49:10

    ☆ゅ

  • 17523/02/24(金) 22:41:57

    「っっっ!!!!」

      ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ ハッ

    深く深く沈んでいた意識が一気に覚醒する

    触れちゃダメだと感じるモノから何かを願われる夢

    体全てが夢の恐怖で満たされるなか、冷静な部分が体の状態を分析する

    浅い呼吸、跳ね打つ鼓動、硬直して指一本動かせない体

    震える瞼に力を込めて目を閉じ、息を吐くことを意識して浅い呼吸を徐々に深くする
    深く呼吸して、心臓をなだめる
    焦らずゆっくりと指先から動かし、固まっている間接を折り曲げて体を丸めて、冷えた手足を暖める

    体が動かせるようになったらベッドから起き上がって動きやすい服に着替える
    窓の外は暗いけど、もう眠ることはできない

      ”怖い”  ”嫌だ”  ”来ないで”  ”止めて”

        ”寂シイ”      ”行カナイデ”

    夢を見たあとはこんな気持ちが心に渦巻いているからもう眠れない
    そんなときは東の海岸へ向かい、水平線がよく見える場所に行って日の出を待つ

    暗い空が徐々に明るくなり、太陽が一筋の光を差し込む瞬間を見ると沸き上がる想い

     ”もう大丈夫”

  • 17623/02/25(土) 02:07:50

    こんな風に想うのは私が宝箱にいたからなんだろうな

    記憶にはないけど、なんとなく覚えている感覚

    周囲は真っ暗、外の音はくぐもって聞こえにくい
    体の下にある金貨や宝石は、柔らかな幼児には固くて冷たい寝心地が悪いベッド
    泣いても泣いても、冷たい暗闇にたった一人っきり
    どんなに手足をばたつかせて伸ばしても、触れるのは冷えた空気だけ

    何も見えなくて、怖くて、寂しくて、ただただ泣き続ける
    泣いても周りは暗いまま、誰も答えてくれない
    でも泣くことしかできなから、ずっと泣き続ける

    泣いて声を出し続ける

    そんな中、突然差し込まれた光と声
    体をすっぽりと覆ってくれる温もり

     ”大丈夫”  ”怖くない”  ”寂しくない”  ”一人じゃない”

    だから今でも暗闇を照らしてくれる光は、私にとって見るだけで安心できるモノとなった


    朝日を見つめていると心に渦巻いていた感情が落ち着いていくのを感じながら、眩しい光に目を細くする

    あぁ…

  • 17723/02/25(土) 02:18:44

    「会いたいなぁ……」
                   「歌、聴いてほしい……」
       「頭撫でて……」
                「手を繋いでお買い物……」
     「一緒に寝たい……」

    どんどん太陽が顔を出して眩しくて仕方ないから目を閉じて膝に顔を埋める

    「 ね ぇ 」

    シャンクスとの最後の会話を思い出す

    「たくさん、たくさん勉強したよ……」
    「でも、もっともっと勉強して経験を積んで…………」

    彼の言葉を思い出す

    「世界一の……歌い手、に……なったら……………………」

    「がんばって、なる、から…………」

    「……………………迎え、きて……くれるって…………」

    「言ってた……よね?」

    私と彼らを繋ぐのは【歌】だから、

    「…………もっと、もっと……………………謳うよ」

    うたわなきゃ

  • 178二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 13:31:56

    保守

  • 179二次元好きの匿名さん23/02/25(土) 16:36:09

    良い方向に向かってる感と不穏さがどっちもあってどう転ぶか分からん…

  • 180二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 01:18:36

    保守

  • 181二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 12:09:10

    保守!

  • 182二次元好きの匿名さん23/02/26(日) 23:46:43

    ほしゅ

  • 183二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 06:51:27

  • 184二次元好きの匿名さん23/02/27(月) 18:34:11

    保守

  • 18523/02/27(月) 23:48:04

    「ゴードン、話があるの」

    「………わかった、座って話をしよう」

    昼食の片付けを終えると真剣な表情をしたウタが話しかけてくる
    私は話をするために小さなテーブルを挟んで向かい合わせに座り、ウタが話し出すのを待つ

    ウタは座ってからしばらく俯いていたが、大きく深呼吸してから顔を上げ、緊張した面持ちで口を開く

    「私、もっともっと歌いたい」
    「私の歌をもっとたくさんの人に聴いてほしい」
    「どうせなら世界中の人が聴いてくれる…………『世界一の歌い手』になりたいの!!」

    瞳に微かな光を携えて想いを言い切った後、視線が逸らされ「それで…」と呟く

    「その……世界一になるためには何をすればいいのか考えてみたの」
    「…………でも、何をどうすればいいのか全然わからなくって……」
    「この間のステージだってゴードンが色々手配をしてくれたから、最初からあんなにも人が集まったんだってわかってる」
    「根回し?みたいなことや下準備にどんなことをしたのか、まったく想像つかないし…」
    「……私歌うことしかやったことないから………何が必要とか知らない、わからないの…」
    「だから、」

    逸らされていた視線が重なり、勢いよく頭が下げられる

    「これからは歌の指導以外にも色々なことを教えてほしいの!!」
    「お願いします!」

  • 18623/02/28(火) 01:51:15

    勢いよく頭を下げて教えを請うウタの姿に感慨深くて涙が出そうになる

    幼い少女が日々を海を見つめ続けて過ごすことは精神衛生上よくないと思い、料理や裁縫、釣りや山菜採り等に誘ったことがあった
    しかし言われたらからやるという感じで作業を行いはするが、2回目を自主的にすることはなく、また海を見続ける日々に自ら戻っていく

    色々な事に何度も誘いはしたが、歌に関すること以外に反応が示すことが無かったため、いつからか誘うことを止めていた

    そんなウタが自ら何かをしたいと、学びたいと願ってきたのだ
    ならば全力で支援しようではないか!


    「ウタ、世界を目指すと言うのならば知っておくべき事柄がいくつかある」

    まずは決して逆らってはいけない存在、天竜人について
    次に昨今の世界情勢、海軍、世界政府という組織について
    そして有名どころの海賊、政府に認めた海賊:王下七武海について

    最後に新世界に君臨するという四皇、その中でももっとも若い存在
    【赤髪海賊団】と【赤髪のシャンクス】について

    教えよう

    あの日の夜のこと以外であれば、なんでも教えよう
    私の知識、知恵、技術、経験、人脈、心得え……全てを渡そう

    ウタ、いつか君が『世界中を幸せにする歌い手』に至る糧となるように……

  • 187二次元好きの匿名さん23/02/28(火) 06:51:43

    age

  • 188二次元好きの匿名さん23/02/28(火) 18:16:29

    保守

  • 189二次元好きの匿名さん23/03/01(水) 00:23:22

  • 190二次元好きの匿名さん23/03/01(水) 07:21:15

    ほしゅ

  • 191二次元好きの匿名さん23/03/01(水) 18:52:17

    保守

  • 192二次元好きの匿名さん23/03/02(木) 06:27:05

  • 193二次元好きの匿名さん23/03/02(木) 17:42:58

    保守

  • 19423/03/02(木) 23:28:47

    ウタが願いを言った日、いや言った瞬間から私達の生活は一変した
    食事と指導時間以外はお互い自由時間として不干渉だったのが、『世界一』という共通の目標のために行動を共にすることが多くなった

    ウタに対しての指導を歌だけでなく、主な楽器の演奏方法や手入れの仕方も教えるようになった
    元々音楽の基礎はできていたことと音感が優れていたため大抵の楽器はすぐに弾けるようになり、手入れ方法を学ぶ事で楽器の構造を知ることで、より良い音を奏でることができるように指導を行う
    そしてウタ自身は楽器を演奏するためには体力と筋肉が必要だと実感してから、夜明け前と日の入りに走り込みを始め、体力作りを自主的に行うようになった

    他に話術、作法、表情や視線の使い方、各国の風習、慣習、暗黙の了解、種族:魚人、人魚、巨人、ミンク族の存在と特徴、種族差別の悲しい歴史、買い物の仕方、一般的な物価、有名な会社名や人物名など、踏み込んだ内容から一般常識を幅広く教える

    私が思い付く限り、そしてウタが望むものを教えていく
    正直教えを詰め込み過ぎてしまったかと思うときもあったが、ウタは躓きながらも貪欲に喰らいついてくる
    無理をしすぎて時々倒れることもあったが、乾いた大地に水が染み込む様にウタはどんどん、どんどん様々な事柄を学び、吸収し、身に付けていく

    以前よりも学びで頭を使い、体力作りで体を動かすようになってから嬉しいことにウタの食事量が増えてきた
    ウタもたくさん食べるようになったことからか料理の手伝いをしてくれるようになり、一緒に厨房に立つ機会が増えてくる
    そうするとお互いの好きな味付けや食べ物の話をポツポツとするようになり、出会ってから8年目にしてようやくウタの好きな食べ物が『ホイップましましパンケーキ』であると知ることができた

    今度材料を揃えて一緒に作ってみようか

  • 19523/03/03(金) 02:31:43

    「ねぇゴードン、音楽の国エレジアの建国の歴史を教えてほしいの!」

    「…………………わ、私が知っている部分であれば教えよう」
    (とうとうきたか)

    ・・・・・・

    「……ねぇゴードン、エレジアの歴史っていくつか空白部分があるけど、ここの辺って何かあったの?」

    「………………そ、そこらの詳しい記録は残っていないノダ」

    《エレジア》の建国から滅びの歴史の間に【Tot Musica】は所々で姿を現し、その度に大きな事件が起こっている
    なので事件の部分は記録がないと誤魔化して、当たり障りのない歴史のみを教えることにした
    もし本当の歴史を教えてしまえば、あの日の夜について何か気づくかもしれないので念のため教えないことにする

    「書庫の歴史書もなんだか薄いよね?すぐ読み終わっちゃうよ」

    「音楽歴の本ならあるが読むか?」

    「わっ面白そう!それにすっごく分厚くて読みごたえありそうだね」

    地上の書庫にある歴史書は簡単な年表と簡単な出来事しか書かれていない
    詳しく書かれたものは地下の書庫に置いてあり、そこにはエレジアの歴史書だけでなく他国の歴史書、自叙伝などもがある
    昔から音楽の糧になるかもしれないということで様々なジャンルの書物が集められてきたが、表に出せない書物は全て地下に追いやられている

    そしてあの地下の書庫に行くためには迷路のような複雑な通路を特定の道順で進まなければならない
    今やその道順を知るのは私だけ
    もし違う道順や手段で書庫に入室すれば防衛機能が働き、奥の石像が動いて侵入者を排除するらしいが、本当かどうかはわからない

    だからウタがエレジアの本当の歴史と【Tot Musica】のことを知ることはないだろう

  • 19623/03/03(金) 02:46:14

    朝の走り込みを終え、朝食をしっかりと食べた私は大きく伸びをする

    「今日はゴードンが1日電話するということで、久々の1日フリー!!」
    「何しよっかなー?この間の勉強の復習か、楽器達の細かいお手入れか、ウタワールドの修行か、企画書書くか、本を読むか……」
    「悩むな………………あれ?こんな道あったっけ?どこに繋がっているんだろう?」
    「気になる……えい、入っちゃえ!!」

    ・・・・・・
    「もーーーさっきから分かれ道ばっか!……こっちの道な気がする」

    ・・・・・・
     ギィッ
    「うわーーたくさん本がある、地下にこんな大きな書庫があったんだ」

    「ひゃっっ!!……び、びっくりしたー、石像かぁ」
    「大きな石像が奥にいっぱいある……動いたりしない?…………動かないかぁ」

    「明かり持ってくればよかった、薄暗くて奥の方は見えないや」
    「……色んな装飾の本があるけど……ん、この本の題名?の文字??」

        【ᛏᛟᛏ ᛗᚢᛋᛁᚲᚨ】

    「初めて見る形の文字だけど……………………【Tot Musica】かな?」
    「中身は…………読めないけど、なんだか気になる」

    「あれ、もうこんな時間?夕飯作らなきゃ」
    「……石像さん、この本借りるね!また返しに来るから!!」

    (【ᛏᛟᛏ ᛗᚢᛋᛁᚲᚨ】なんでこの文字だけ読めたんだろう?)
    (よし!次は明かりを持って、またあの地下に行ってみよう!)

  • 197123/03/03(金) 03:18:30

    もう終わりが近いのでダイジェストで締めようとしましたが……できませんでした

    このような自己満足のスレに長々とお付き合いいただき誠にありがとうございます(ほぼ2ヶ月)
    特に保守してくれた方々には感謝しかありません

    最初はもっと簡単に、外で歌って元気一杯なウタ!それを支える敏腕なゴードン!な話にしたかったのですが…
    「私の12年はなんだ!!」
    というシーンを映画で見るたびに、もっと虚無を、もっとしんど味を、もっと絶望を!!こんな簡単に立ち直れるわけがない!!
    ……おかげでどんどん長くなってしまいました

    続きはある程度書きためたら出そうと思います
    せめてあの日の電伝虫を拾って、絶望のドン底行って、身投げ1回くらいしてから、なんとか這い上がってきてほしいとは考えています



    なお地下の書庫には導かれたので正しい道順でたどり着きました
    そして最後の本は側に置いておくほど、どんどん中身が読み進めれるようになります
    そして例の夢を見る回数も増えるオマケ付き

  • 198二次元好きの匿名さん23/03/03(金) 06:49:32

    身投げ1回くらいしてから

    えっ?

  • 199二次元好きの匿名さん23/03/03(金) 18:14:38

    おつ

  • 200二次元好きの匿名さん23/03/04(土) 00:14:21

    To be continue?

オススメ

このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています